特許第6904714号(P6904714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904714
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20210708BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210708BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B41J2/17 201
   B41J2/01 451
   B41J2/165 203
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-5193(P2017-5193)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-114626(P2018-114626A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】高田 淳
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−065157(JP,A)
【文献】 特開2008−238614(JP,A)
【文献】 特開2004−074556(JP,A)
【文献】 特開2012−158017(JP,A)
【文献】 特開2004−066665(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0066749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのクリーニング動作を行うクリーニング手段と、
前記インクジェットヘッドのクリーニング動作による廃液を吸収する廃液吸収部材と、
前記廃液吸収部材の廃液吸収量を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記廃液吸収部材の廃液吸収量が初めて警戒レベルに達していることが検出された場合、前記廃液吸収部材の許容追加廃液量に応じた前記廃液吸収部材の予測交換日をユーザに通知し、廃液量を低減するようクリーニング動作の設定変更を行うか否かの選択を受け付け、クリーニング動作の設定変更を行うことが選択された場合、廃液量を低減するようクリーニング動作の設定変更を行う制御手段と
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記廃液量を低減するためのクリーニング動作の設定変更として、クリーニング動作の実行頻度、およびクリーニング動作において前記インクジェットヘッドからインクを排出させるパージを行う際のパージ圧の少なくともいずれか一方を変更することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、クリーニング動作の実行頻度を変更する場合、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数および電源遮断期間の少なくともいずれか一方を変更することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドからインクを吐出して印刷するインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドに付着したゴミの除去やノズル内のインクの物性安定化等のため、インクジェットヘッドのクリーニング動作が行われる。クリーニング動作は、例えば、所定の印刷枚数ごとに行われる。
【0003】
インクジェットヘッドのクリーニング動作の一つとして、ノズルからインクを強制的に排出させる、いわゆるパージを行った後、ワイパでノズル面上をワイプする一連の動作が知られている。
【0004】
このようなクリーニング動作において、パージによりインクジェットヘッドのノズルから排出されたインクは廃液となる。この廃液は、例えば、装置内に設けられた廃液タンクに貯蔵される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、スポンジ等の廃液吸収部材に廃液を吸収させて貯蔵するインクジェット印刷装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−121229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した廃液吸収部材に廃液を貯蔵するインクジェット印刷装置において、廃液吸収部材の廃液吸収量が限界に達した状態で装置の使用を継続すると、クリーニング動作により廃液が発生した際に、廃液吸収部材に吸収されない廃液が装置から漏れるおそれがある。
【0008】
そこで、このようなインクジェット印刷装置では、廃液吸収部材の廃液吸収量が限界に達すると、廃液吸収部材が交換されるまでは、印刷不可能としている。すなわち、廃液吸収部材の交換時において、インクジェット印刷装置で印刷できない期間が生じる。このため、廃液吸収部材の廃液吸収量が限界に達するまでの期間を延ばして、廃液吸収部材の交換頻度を低減することが望ましい。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、廃液吸収部材の交換頻度を低減できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのクリーニング動作を行うクリーニング手段と、前記インクジェットヘッドのクリーニング動作による廃液を吸収する廃液吸収部材と、前記廃液吸収部材の廃液吸収量を検出する検出手段と、前記検出手段により検出される廃液吸収量が警戒レベルに達した場合、廃液量を低減するようクリーニング動作の設定変更を行う制御手段とを備えることにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記制御手段は、前記廃液量を低減するためのクリーニング動作の設定変更として、クリーニング動作の実行頻度、およびクリーニング動作において前記インクジェットヘッドからインクを排出させるパージを行う際のパージ圧の少なくともいずれか一方を変更することにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記制御手段は、クリーニング動作の実行頻度を変更する場合、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数および電源遮断期間の少なくともいずれか一方を変更することにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、制御手段は、検出手段により検出される廃液吸収材の廃液吸収量が警戒レベルに達した場合、廃液量を低減するようクリーニング動作の設定変更を行う。これにより、クリーニング動作による廃液量が低減し、廃液吸収材の廃液吸収量が限界レベルに達するまでの期間が延びるので、廃液吸収部材の交換頻度を低減できる。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、制御手段は、廃液量を低減するためのクリーニング動作の設定変更として、クリーニング動作の実行頻度、およびクリーニング動作におけるパージ圧の少なくともいずれか一方を変更する。このように、廃液量と関連する、クリーニング動作の実行頻度およびパージ圧の少なくともいずれか一方を変更することで、効果的に廃液量を低減できる。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、制御手段は、クリーニング動作の実行頻度を変更する場合、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数および電源遮断期間の少なくともいずれか一方を変更する。これにより、印刷枚数および電源遮断期間の少なくともいずれか一方をクリーニング動作の実行条件として採用しているインクジェット印刷装置において、容易にクリーニング動作の実行頻度を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の要部正面図である。
図3図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の要部平面図である。
図4図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の斜視図である。
図5図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の平面図である。
図6図1に示すインクジェット印刷装置の廃液スポンジおよび廃液検出部の斜視図である。
図7図1に示すインクジェット印刷装置の制御ブロック図である。
図8】第1実施形態におけるクリーニングモードテーブルの一例を示す図である。
図9】ベルトプラテン部およびメンテナンス部が待機位置にある状態を示す図である。
図10】ベルトプラテン部が待機位置にあり、メンテナンス部が退避位置にある状態を示す図である。
図11】ベルトプラテン部が印刷位置あり、メンテナンス部が退避位置にある状態を示す図である。
図12】ベルトプラテン部およびメンテナンス部がクリーニング位置にある状態を示す図である。
図13】クリーニングモード設定処理のフローチャートである。
図14】クリーニングモード設定処理のフローチャートである。
図15】第2実施形態におけるクリーニングモードテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0018】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の要部正面図である。図3は、印刷部の要部平面図である。図4は、図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の斜視図である。図5は、メンテナンス部の平面図である。図6は、図1に示すインクジェット印刷装置の廃液スポンジおよび廃液検出部の斜視図である。図7は、図1に示すインクジェット印刷装置の制御ブロック図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0020】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙Pが搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。
【0021】
図1図7に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、インク循環機構部4と、上面搬送部5と、排紙部6と、反転部7と、メンテナンス部8と、廃液スポンジ(請求項の廃液吸収部材に相当)9と、廃液検出部(請求項の検出手段に相当)10と、操作パネル11と、制御部(請求項の制御手段に相当)12と、各部を収納または保持する筐体13とを備える。
【0022】
給紙部2は、印刷部3に用紙Pを給紙する。給紙部2は、外部給紙台21と、外部給紙ローラ22と、複数の内部給紙台23と、複数の内部給紙ローラ24と、複数対の縦搬送ローラ25とを備える。
【0023】
外部給紙台21は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。外部給紙台21は、一部が筐体13の外部に露出して設置されている。外部給紙ローラ22は、外部給紙台21から用紙Pを1枚ずつ取り出すとともに、後述のレジストローラ26へ向けて用紙Pを搬送する。
【0024】
内部給紙台23は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。内部給紙台23は、筐体13の内部に配置されている。内部給紙ローラ24は、内部給紙台23から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSへと送り出す。縦搬送ローラ25は、内部給紙ローラ24により内部給紙台23から取り出された用紙Pを給紙経路RSに沿ってレジストローラ26へ向けて搬送する。
【0025】
印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を印刷する。印刷部3は、レジストローラ26と、ベルトプラテン部27と、ラインヘッド28C,28K,28M,28Yとを備える。なお、ラインヘッド28C,28K,28M,28Yの符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0026】
レジストローラ26は、給紙部2または反転部7から搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、ベルトプラテン部27に向けて搬送する。
【0027】
ベルトプラテン部27は、レジストローラ26から搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持しつつ搬送する。ベルトプラテン部27は、図示しないモータにより昇降可能に構成されている。これにより、ベルトプラテン部27を、図1におけるベルトプラテン部27の位置である印刷位置、待機位置(図9参照)、およびクリーニング位置(図12参照)に配置できるようになっている。
【0028】
ラインヘッド28C,28K,28M,28Yは、ベルトプラテン部27により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。ラインヘッド28C,28K,28M,28Yは、ベルトプラテン部27の上方に配置されている。ラインヘッド28C,28K,28M,28Yは、それぞれシアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。ラインヘッド28C,28K,28M,28Yは、図3に示すように、それぞれ6個のインクジェットヘッド29を有する。
【0029】
各ラインヘッド28において、6個のインクジェットヘッド29は、千鳥配置されている。すなわち、各ラインヘッド28において、前後方向に沿って配列された6個のインクジェットヘッド29が、左右方向における位置を交互にずらして配置されている。
【0030】
インクジェットヘッド29は、主走査方向(前後方向)に沿って配置された複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。インクジェットヘッド29の下面であるノズル面29aに、ノズルが開口している。
【0031】
インク循環機構部4は、インクを循環させつつラインヘッド28のインクジェットヘッド29にインクを供給する。インク循環機構部4は、各色のインクごとのインク循環経路(図示せず)を有し、各色のインクを循環させつつ、ラインヘッド28C,28K,28M,28Yに各色のインクを供給する。インク循環機構部4は、各色のインクをそれぞれのインク循環経路に沿って循環させるための圧力を生成する圧力生成機構(図示せず)を有する。この圧力生成機構により、後述するクリーニング動作におけるパージの際のパージ圧をインクジェットヘッド29に生成できるようになっている。インク循環機構部4は、請求項のクリーニング手段の一部を構成する。
【0032】
上面搬送部5は、ベルトプラテン部27により搬送されてきた用紙Pを排紙部6または反転部7へ搬送する。上面搬送部5は、複数対の上昇搬送ローラ31と、複数対の水平搬送ローラ32とを備える。
【0033】
上昇搬送ローラ31は、ベルトプラテン部27により搬送されてきた用紙Pを上方の水平搬送ローラ32へ搬送する。水平搬送ローラ32は、上昇搬送ローラ31により搬送されてきた用紙Pを排紙部6または反転部7へ搬送する。
【0034】
排紙部6は、印刷済みの用紙Pを排紙する。排紙部6は、切替部36と、排紙ローラ37と、排紙台38とを備える。
【0035】
切替部36は、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。排紙ローラ37は、切替部36によって排紙経路RDへと導かれた用紙Pを搬送して排紙台38へ排紙する。排紙台38は、排紙ローラ37により排紙された印刷済みの用紙Pが積載されるものである。
【0036】
反転部7は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを反転させて印刷部3へ再給紙する。反転部7は、反転ローラ41と、スイッチバック部42と、再給紙ローラ43と、切替ゲート44とを備える。
【0037】
反転ローラ41は、水平搬送ローラ32により搬送されてきた用紙Pをスイッチバック部42に一時的に搬入した後に搬出して、再給紙ローラ43へ搬送する。スイッチバック部42は、反転ローラ41が用紙Pを一時的に搬入するための空間である。スイッチバック部42は、排紙台38の下部に形成されている。再給紙ローラ43は、反転ローラ41により搬送されてきた用紙Pをレジストローラ26へ搬送する。切替ゲート44は、水平搬送ローラ32により搬送されてきた用紙Pを反転ローラ41へとガイドする。また、切替ゲート44は、反転ローラ41によりスイッチバック部42から搬出される用紙Pを再給紙ローラ43へとガイドする。
【0038】
メンテナンス部8は、インクジェットヘッド29のクリーニング動作において、ノズル面29aをワイプする。メンテナンス部8は、請求項のクリーニング手段の一部を構成する。
【0039】
メンテナンス部8は、図示しないモータにより、図1に示すメンテナンス部8の位置である退避位置と、後述の待機位置(図9参照)との間で移動可能に構成されている。また、メンテナンス部8は、クリーニング時には、後述のクリーニング位置(図12参照)に配置される。
【0040】
図4図5に示すように、メンテナンス部8は、インク受け部材46と、ワイパユニット47と、ワイパ駆動部48とを備える。なお、図4図5は、メンテナンス部8がクリーニング位置に配置されている状態における図である。
【0041】
インク受け部材46は、クリーニング動作においてインクジェットヘッド29のノズル面29aから除去されて落下するインク等を受けるものである。インク受け部材46は、直方体形状に形成されている。インク受け部材46の中央部には、インクを受けるための凹部46aが形成されている。凹部46aは、平面視にて、ラインヘッド28C,28K,28M,28Yのインクジェットヘッド29が配置されている領域よりも大きくなるように形成されている。インク受け部材46の上側は、開口されている。
【0042】
ワイパユニット47は、インクジェットヘッド29のノズル面29aをワイプする。ワイパユニット47は、取付台49と、8枚のワイパ50とを備える。
【0043】
取付台49は、ワイパ50が取り付けられるものである。取付台49は、直方体形状に形成されている。取付台49には、ネジ孔49a,49bが形成されている。ネジ孔49a,49bには、後述のネジ歯車54A,54Bがそれぞれ貫通され、かつ螺合されている。ネジ歯車54A,54Bの回転により、取付台49は、前後方向に移動する。
【0044】
ワイパ50は、インクジェットヘッド29のノズル面29aをワイプする部材である。ワイパ50は、弾性変形可能なゴム等の材料からなり、矩形の板状に形成されている。ワイパ50の下端部は、図示しない固定具によって取付台49に固定されている。図5に示すように、8枚のワイパ50は、メンテナンス部8がクリーニング位置に配置されている状態において、千鳥配置のインクジェットヘッド29の前後方向に沿う各列の延長線上に位置するように配置されている。
【0045】
メンテナンス部8がクリーニング位置に配置されている状態において、ワイパ50の上端が、インクジェットヘッド29のノズル面29aよりも高い位置にある。ワイパ50は、前後方向に移動されてインクジェットヘッド29と接すると、弾性変形されて上端部がノズル面29aを摺動(ワイプ)する。
【0046】
ワイパ駆動部48は、ワイパユニット47を前後方向に移動させる。ワイパ駆動部48は、ワイパモータ51と、駆動ベルト52と、駆動プーリ53A,53Bと、ネジ歯車54A,54Bとを備える。
【0047】
ワイパモータ51は、ワイパユニット47を移動させるための回転駆動力を発生する。ワイパモータ51は、インク受け部材46の後壁の外側に配置されている。ワイパモータ51は、出力ギア51aを有する。出力ギア51aは、駆動ベルト52にワイパモータ51の回転駆動力を伝達する。出力ギア51aは、駆動ベルト52の中央部に配置されている。
【0048】
駆動ベルト52は、ワイパモータ51から伝達された回転駆動力を駆動プーリ53A,53Bへと伝達する。駆動ベルト52は、駆動プーリ53Aと駆動プーリ53Bとに掛け渡されている。
【0049】
駆動プーリ53A,53Bは、駆動ベルト52から伝達された回転駆動力をネジ歯車54A,54Bへと伝達する。駆動プーリ53Aと駆動プーリ53Bとは、左右方向に互いに離間して、同じ高さに配置されている。駆動プーリ53A,53Bは、インク受け部材46の後壁に回転可能に支持されている。
【0050】
ネジ歯車54A,54Bは、駆動プーリ53A,53Bから伝達された回転駆動力によってワイパユニット47を前後方向に移動させる。ネジ歯車54A,54Bは、前後方向における凹部46aの略全長にわたって延びている。ネジ歯車54A,54Bの後端は、それぞれ駆動プーリ53A,53Bに固定されている。ネジ歯車54A,54Bの前端は、インク受け部材46の前壁に回転可能に支持されている。これにより、ネジ歯車54A,54Bは、それぞれ駆動プーリ53A,53Bとともに回転する。
【0051】
廃液スポンジ9は、インクジェットヘッド29のクリーニング動作による廃液を吸収するスポンジである。メンテナンス部8が退避位置に退避したとき、インク受け部材46が傾くことにより、インク受け部材46内の廃液が落下し、廃液スポンジ9に吸収される。廃液スポンジ9の色は、白系の色である。廃液スポンジ9は、筐体13の底板13aに形成された凹部13bに配置されている。廃液スポンジ9は、直方体形状に形成されている。
【0052】
廃液検出部10は、廃液スポンジ9の廃液吸収量を検出するためのものである。廃液検出部10は、4つの汚れセンサ61を有する。4つの汚れセンサ61は、平面視における廃液スポンジ9の4つの角部の上方にそれぞれ配置されている。汚れセンサ61は、発光部および受光部(いずれも図示せず)を有する反射型の光センサからなる。汚れセンサ61は、発光部が発した光の廃液スポンジ9による反射光を受光部で受光する。廃液スポンジ9の廃液吸収量が多いほど、廃液スポンジ9の汚れの度合いが大きくなり、汚れセンサ61の受光部による受光量が低くなる。このため、汚れセンサ61の受光部による受光量から、廃液スポンジ9の廃液吸収量を判定できる。
【0053】
操作パネル11は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル11は、表示部66と、入力部67とを備える。
【0054】
表示部66は、各種の入力画面等の画像を表示する。表示部66は、液晶表示パネル等を有する。
【0055】
入力部67は、ユーザによる入力操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。入力部67は、各種の操作キー、タッチパネル等を有する。
【0056】
制御部12は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部12は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0057】
制御部12は、図8に示すクリーニングモードテーブル71を記憶している。クリーニングモードテーブル71は、インクジェット印刷装置1においてクリーニングモードとして設けられた通常モードおよび抑制モードと、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数と、クリーニング動作におけるパージ圧とを関連付けたテーブルである。
【0058】
通常モードは、標準の頻度でインクジェットヘッド29のクリーニング動作を実行するモードである。図8の例では、通常モードでは、1000枚の印刷枚数ごとにクリーニング動作が行われる。また、通常モードでは、インクジェットヘッド29のクリーニング動作で行われるパージにおけるパージ圧を「強」とする。
【0059】
抑制モードは、通常モードよりもクリーニング動作による廃液量を低減するモードである。図8の例では、抑制モードでは、通常モードの場合よりも多い3000枚の印刷枚数ごとにクリーニング動作が行われる。これにより、抑制モードでは、通常モードよりもクリーニング動作の実行頻度が抑えられ、廃液量が低減する。また、抑制モードでは、パージ圧を「弱」とすることによっても、通常モードより廃液量が低減する。
【0060】
ここで、通常モードにおける「強」のパージ圧は、インクジェットヘッド29のノズル内の増粘インク等をインクとともに排出するのに十分なパージ圧として設定されたものである。抑制モードにおける「弱」のパージ圧は、通常モードにおける「強」のパージ圧よりも小さいパージ圧として設定されたものである。パージ圧が小さいほど、パージにおいて排出されるインク量が少なくなるので、クリーニング動作における廃液量が少なくなる。
【0061】
制御部12は、廃液検出部10により検出される廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達するまでは、クリーニングモードを通常モードに設定する。廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達した場合において、ユーザにより抑制モードが選択された場合、制御部12は、クリーニングモードを抑制モードに変更する。すなわち、この場合、制御部12は、廃液量を低減するためのクリーニング動作の設定変更として、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数を抑制モードにおける印刷枚数に変更するとともに、パージ圧の設定を「強」から「弱」に変更する。
【0062】
次に、インクジェット印刷装置1の印刷動作について説明する。
【0063】
印刷動作を開始する前の待機状態では、ベルトプラテン部27およびメンテナンス部8は、それぞれ図9に示す待機位置に配置されている。ベルトプラテン部27の待機位置は、ラインヘッド28C,28K,28M,28Yの下方であって、図1に示すベルトプラテン部27の位置である印刷位置よりも下方にある。メンテナンス部8の待機位置は、待機位置にあるベルトプラテン部27上の位置である。
【0064】
図9の状態から、まず、制御部12は、図10に示すように、メンテナンス部8を退避位置へ移動させる。次いで、制御部12は、図11に示すように、ベルトプラテン部27を上昇させて印刷位置へ移動させる。これにより、メンテナンス部8が退避位置へ退避し、ベルトプラテン部27が印刷位置に配置された状態となる。
【0065】
ベルトプラテン部27が印刷位置に配置された後、給紙部2の外部給紙台21および複数の内部給紙台23のいずれかから未印刷の用紙Pがレジストローラ26へ搬送され、レジストローラ26により用紙Pがベルトプラテン部27へ搬送される。そして、用紙Pは、ベルトプラテン部27により搬送されつつ、ラインヘッド28C,28K,28M,28Yから吐出されるインクにより印刷される。印刷された用紙Pは、ベルトプラテン部27から上面搬送部5へ搬送され、上面搬送部5において上昇搬送ローラ31および水平搬送ローラ32により搬送される。
【0066】
ここで、片面印刷の場合、用紙Pは、排紙部6の切替部36により通常経路RCから排紙経路RDへ導かれる。そして、用紙Pは、排紙ローラ37により排紙台38へ排紙される。
【0067】
一方、両面印刷の場合、用紙Pは、排紙部6の切替部36により通常経路RCから反転経路RRへ導かれる。反転経路RRへ導かれた用紙Pは、反転部7において、切替ゲート44により反転ローラ41へ導かれ、反転ローラ41によりスイッチバック部42へ搬入される。その後、用紙Pは、反転ローラ41によりスイッチバック部42から搬出されるとともに、切替ゲート44により再給紙ローラ43へ導かれる。そして、用紙Pは、再給紙ローラ43によりレジストローラ26へ搬送され、レジストローラ26によりベルトプラテン部27へ搬送される。
【0068】
ここで、用紙Pは、反転部7により反転されているので、未印刷面が上向きになっている。用紙Pは、ベルトプラテン部27により搬送されつつ、ラインヘッド28C,28K,28M,28Yから吐出されるインクにより未印刷面が印刷される。そして、両面印刷された用紙Pは、上面搬送部5により排紙部6へ搬送され、排紙部6において排紙台38へ排紙される。
【0069】
指定枚数分の印刷が終了すると、制御部12は、ベルトプラテン部27を印刷位置から待機位置へ移動させる。この後、制御部12は、メンテナンス部8を退避位置から待機位置へ移動させる。
【0070】
次に、インクジェット印刷装置1におけるインクジェットヘッド29のクリーニング動作について説明する。
【0071】
クリーニング動作は、前回のクリーニング動作からの累積の印刷枚数が、クリーニングモードとして現在設定されている通常モードまたは抑制モードにおけるクリーニング動作の実行条件とする印刷枚数に達すると、実行される。
【0072】
クリーニング動作を行う際、制御部12は、ベルトプラテン部27およびメンテナンス部8をクリーニング位置に配置する。具体的には、制御部12は、ベルトプラテン部27を印刷位置から待機位置へ下降させる。次いで、制御部12は、メンテナンス部8を退避位置から待機位置へ移動させる。そして、制御部12は、ベルトプラテン部27を上昇させて、ベルトプラテン部27およびメンテナンス部8を図12に示すクリーニング位置へ移動させる。
【0073】
ベルトプラテン部27のクリーニング位置は、待機位置の上方で、印刷位置の下方にある。メンテナンス部8のクリーニング位置は、クリーニング位置にあるベルトプラテン部27上の位置である。
【0074】
ベルトプラテン部27およびメンテナンス部8をクリーニング位置に配置すると、制御部12は、パージを実行する。具体的には、制御部12は、クリーニングモードとして現在設定されている通常モードまたは抑制モードにおけるパージ圧をインクジェットヘッド29に生成してノズルからインクを排出させるようインク循環機構部4を制御する。これにより、インクジェットヘッド29のノズルからインクが押し出され、ノズル面29aにインクが付着した状態となる。
【0075】
次いで、制御部12は、ワイプ動作を実行する。具体的には、制御部12は、ワイパモータ51を駆動させて、ワイパユニット47の前方への移動を開始させる。ここで、メンテナンス部8がクリーニング位置へ移動したとき、ワイパユニット47は、最も後方のインクジェットヘッド29より後方の初期位置にある。
【0076】
ワイパユニット47が前方へ移動し、ワイパ50がインクジェットヘッド29に接触すると、ワイパ50はインクジェットヘッド29に押圧されて弾性変形する。この状態でさらにワイパユニット47が前方へ移動すると、ワイパ50の上端部がノズル面29aを摺動(ワイプ)する。これにより、ノズル面29aに付着したインクが、ノズル面29a上のゴミ等とともに除去される。ワイプ動作によりノズル面29aから除去されたインク等は、インク受け部材46に廃液として受け取られる。
【0077】
ワイパ50が最も前方のインクジェットヘッド29より前方まで移動すると、制御部12は、ワイパモータ51を停止する。これにより、ワイパユニット47が停止する。これにより、ワイプ動作が終了するとともに、クリーニング動作が終了となる。
【0078】
クリーニング動作の終了後、印刷動作を再開する場合、制御部12は、メンテナンス部8を退避位置へ移動させるとともに、ベルトプラテン部27を印刷位置へ移動させる。具体的には、まず、制御部12は、ベルトプラテン部27を下降させて、ベルトプラテン部27およびメンテナンス部8をクリーニング位置から待機位置へ移動させる。また、制御部12は、ワイパモータ51を駆動させて、ワイパユニット47を初期位置へ移動させる。次いで、制御部12は、メンテナンス部8を待機位置から退避位置へ移動させる。そして、制御部12は、ベルトプラテン部27を上昇させて待機位置から印刷位置へ移動させる。この後、印刷動作が再開される。ここで、メンテナンス部8が退避位置へ移動した際に、インク受け部材46が傾くことにより、インク受け部材46内の廃液が落下し、廃液スポンジ9に吸収される。
【0079】
印刷動作の再開がない場合、制御部12は、クリーニング動作の終了後、ベルトプラテン部27を下降させて、ベルトプラテン部27およびメンテナンス部8をクリーニング位置から待機位置へ移動させる。また、制御部12は、ワイパモータ51を駆動させて、ワイパユニット47を初期位置へ移動させる。これにより、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。この場合、次に印刷動作が行われる際に、メンテナンス部8が退避位置へ移動することで、インク受け部材46内の廃液が落下し、廃液スポンジ9に吸収される。
【0080】
次に、インクジェット印刷装置1におけるクリーニングモード設定処理について説明する。
【0081】
クリーニングモード設定処理は、廃液スポンジ9の廃液吸収量を参照してクリーニングモードを通常モードまたは抑制モードに設定する処理である。なお、インクジェット印刷装置1の初期状態では、クリーニングモードは通常モードに設定されている。
【0082】
図13図14は、クリーニングモード設定処理のフローチャートである。このフローチャートの処理は、廃液量確認タイミングになると開始される。廃液量確認タイミングは、例えば、インクジェット印刷装置1の電源が投入されたタイミングや、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されたタイミングに設定されている。
【0083】
図13のステップS1において、制御部12は、廃液検出部10の4つの汚れセンサ61の受光量に基づき、廃液スポンジ9の廃液吸収量が限界レベル(最大吸収量)未満であるか否かを判断する。ここで、制御部12は、受光量が閾値以上である(汚れの度合いが小さい)汚れセンサ61が少なくとも1つある場合、廃液スポンジ9の廃液吸収量が限界レベル未満であると判断する。換言すれば、制御部12は、すべての汚れセンサ61の受光量が閾値未満である場合、廃液スポンジ9の廃液吸収量が限界レベルに達していると判断する。
【0084】
廃液スポンジ9の廃液吸収量が限界レベル未満であると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部12は、4つの汚れセンサ61の受光量に基づき、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達しているか否かを判断する。ここで、制御部12は、受光量が閾値未満である汚れセンサ61の数が2つまたは3つである場合、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達していると判断する。
【0085】
廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達していると判断した場合(ステップS2:YES)、ステップS3において、制御部12は、ニアフルフラグが「0」であるか否かを判断する。
【0086】
ここで、ニアフルフラグは、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達しているか否かを示すものである。廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達している場合、ニアフルフラグは「1」であり、廃液吸収量が警戒レベル未満である場合、ニアフルフラグは「0」である。ニアフルフラグは、制御部12に記憶されている。
【0087】
ニアフルフラグが「0」であると判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部12は、ニアフルフラグを「1」に変更する。
【0088】
ここで、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達しており(ステップS2:YES)、かつニアフルフラグが「0」である(ステップS3:YES)ことは、直近の廃液スポンジ9の交換後、今回の廃液量確認タイミングにおいて初めて廃液吸収量が警戒レベルに達していることが検出されたことを意味する。この場合、今回の廃液量確認タイミングにおいて廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達していることが検出された時点では、クリーニングモードは通常モードに設定されている。
【0089】
次いで、ステップS5において、制御部12は、廃液スポンジ9の交換予測日を算出する。廃液スポンジ9の交換予測日は、通常モードにおいて廃液吸収量が限界レベルに達することが予測される日である。
【0090】
具体的には、制御部12は、インクジェット印刷装置1における1日当たりの平均印刷枚数と、通常モードにおけるクリーニング動作の実行条件とする印刷枚数とに基づき、クリーニング動作の周期を算出する。次いで、制御部12は、クリーニング動作の周期と、通常モードでの1回のクリーニング動作における廃液量と、受光量が閾値未満の汚れセンサ61の数に応じた廃液スポンジ9の許容追加廃液量とに基づき、廃液吸収量が限界レベルに達するまでの期間を算出する。そして、制御部12は、廃液吸収量が限界レベルに達するまでの期間と、現在の日時とに基づき、廃液スポンジ9の交換予測日を算出する。
【0091】
次いで、ステップS6において、制御部12は、算出した廃液スポンジ9の交換予測日を、表示部66に表示させることによりユーザに通知する。
【0092】
次いで、ステップS7において、制御部12は、クリーニングモード選択画面(図示せず)を表示部66に表示させる。クリーニングモード選択画面は、通常モードおよび抑制モードのいずれかをユーザに選択させるための画面である。クリーニングモード選択画面が表示部66に表示されると、ユーザが、入力部67に対する操作により通常モードおよび抑制モードのいずれかを選択する。
【0093】
ここで、抑制モードでは、通常モードよりもクリーニング動作の実行頻度が抑えられるとともにパージ圧が小さいことで、インクジェットヘッド29のクリーニングが不十分となってノズルからのインクの不吐出等の不具合が解消できないおそれが生じる。このため、抑制モードが設定されている場合、通常モードの場合よりも、印刷画質が低下するおそれがある。そこで、抑制モードでは通常モードの場合よりも印刷画質が低下するおそれがあることをクリーニングモード選択画面中に表示して、ユーザに通知するようにしてもよい。
【0094】
また、制御部12は、抑制モードに変更した場合における廃液スポンジ9の交換予測日を算出し、その交換予測日をクリーニングモード選択画面中に表示させてもよい。
【0095】
次いで、ステップS8において、制御部12は、ユーザの操作により抑制モードが選択されたか否かを判断する。
【0096】
抑制モードが選択されたと判断した場合(ステップS8:YES)、ステップS9において、制御部12は、クリーニングモードを通常モードから抑制モードに変更する。具体的には、制御部12は、クリーニングモードテーブル71を参照して、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数の設定を、通常モードの印刷枚数から抑制モードの印刷枚数に変更する。また、制御部12は、クリーニング動作におけるパージ圧の設定を「強」から「弱」に変更する。これにより、クリーニングモード設定処理が終了となる。
【0097】
通常モードが選択されたと判断した場合(ステップS8:NO)、ステップS10において、制御部12は、クリーニングモードを通常モードで維持する。これにより、クリーニングモード設定処理が終了となる。
【0098】
ステップS1において、廃液スポンジ9の廃液吸収量が限界レベルに達していると判断した場合(ステップS1:NO)、図14のステップS11において、制御部12は、廃液スポンジ9の交換を指示する画面を表示部66に表示させる。この画面を確認したユーザがサービスマンに通知することで、サービスマンにより廃液スポンジ9の交換作業が行われる。
【0099】
ここで、制御部12は、廃液スポンジ9の廃液吸収量が限界レベルに達していると判断した時点から、インクジェット印刷装置1を印刷不可能な状態とする。
【0100】
次いで、ステップS12において、制御部12は、廃液スポンジ9の交換が終了したか否かを判断する。制御部12は、例えば、サービスマンによる入力部67に対する廃液スポンジ9の交換終了を知らせる操作に基づき、廃液スポンジ9の交換が終了したことを判断できる。廃液スポンジ9の交換が終了していないと判断した場合(ステップS12:NO)、制御部12は、ステップS12を繰り返す。
【0101】
廃液スポンジ9の交換が終了したと判断した場合(ステップS12:YES)、ステップS13において、制御部12は、ニアフルフラグを「0」にリセットする。
【0102】
また、制御部12は、廃液スポンジ9の交換が終了したと判断した時点で、インクジェット印刷装置1を印刷可能な状態に復帰させる。
【0103】
次いで、ステップS14において、制御部12は、クリーニングモードとして通常モードが設定されているか否かを判断する。ここで、この時点(廃液スポンジ9の交換終了時点)において設定されているクリーニングモードは、交換前の廃液スポンジ9において廃液吸収量が警戒レベルに達していることが初めて検出されたときに選択されたモードである。
【0104】
通常モードが設定されていると判断した場合(ステップS14:YES)、ステップS15において、制御部12は、クリーニングモードを通常モードで維持する。これにより、クリーニングモード設定処理が終了となる。
【0105】
抑制モードが設定されていると判断した場合(ステップS14:NO)、ステップS16において、制御部12は、クリーニングモードを通常モードに戻す。具体的には、制御部12は、クリーニングモードテーブル71を参照して、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数の設定を、抑制モードの印刷枚数から通常モードの印刷枚数に戻す。また、制御部12は、クリーニング動作におけるパージ圧の設定を「弱」から「強」に戻す。これにより、クリーニングモード設定処理が終了となる。
【0106】
図13のステップS2において、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達していないと判断した場合(ステップS2:NO)、制御部12は、そのままクリーニングモード設定処理を終了する。
【0107】
ここで、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達していない場合、クリーニングモードとしては通常モードが設定されている。このため、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達していないと判断した場合(ステップS2:NO)、制御部12は、通常モードを維持してクリーニングモード設定処理を終了する。
【0108】
ステップS3において、ニアフルフラグが「1」であると判断した場合(ステップS3:NO)、制御部12は、現在設定されているクリーニングモードを維持してクリーニングモード設定処理を終了する。
【0109】
ここで、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達しており(ステップS2:YES)、かつニアフルフラグが「1」である(ステップS3:NO)ことは、前回の廃液量確認タイミング以前において、廃液吸収量が警戒レベルに達していたことを意味する。この場合、現在設定されているクリーニングモードは、現在の廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達していることが初めて検出されたときに選択されたクリーニングモードである。
【0110】
以上説明したように、第1実施形態では、制御部12は、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達した場合において、ユーザにより抑制モードが選択された場合、クリーニングモードを抑制モードに変更する。これにより、抑制モードにおいて、クリーニング動作による廃液量を低減し、廃液スポンジ9の廃液吸収量が限界レベルに達するまでの期間を延ばすことができる。この結果、廃液スポンジ9の交換頻度を低減できる。
【0111】
また、制御部12は、抑制モードにおいて、クリーニング動作の実行頻度を通常モードにおける実行頻度から変更するとともに、パージ圧を通常モードにおけるパージ圧から変更することで、クリーニング動作による廃液量を低減している。このように、廃液量と関連する、クリーニング動作の実行頻度およびパージ圧を変更することで、効果的に廃液量を低減できる。
【0112】
また、制御部12は、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数を変更することで、クリーニング動作の実行頻度を変更している。これにより、印刷枚数をクリーニング動作の実行条件として採用しているインクジェット印刷装置1において、容易にクリーニング動作の実行頻度を変更できる。
【0113】
また、制御部12は、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達した場合でも、ユーザにより通常モードが選択された場合、抑制モードへのクリーニングモードの変更を行わない。これにより、抑制モードによってインクジェットヘッド29のクリーニングが不十分になることによる印刷画質の低下を回避したいユーザの要望に対応できる。
【0114】
(第2実施形態)
次に、上述した第1実施形態の一部を変更した第2実施形態について説明する。
【0115】
第2実施形態は、上述した第1実施形態のクリーニングモードテーブル71を、図15に示すクリーニングモードテーブル72に置き換えたものである。
【0116】
クリーニングモードテーブル72は、上述した第1実施形態のクリーニングモードテーブル71におけるクリーニング動作の実行条件である印刷枚数を、電源遮断期間に変更したものである。電源遮断期間は、インクジェット印刷装置1の電源が遮断されている期間である。
【0117】
図15の例では、通常モードでは、電源遮断期間が4時間以上の場合に、インクジェット印刷装置1の電源投入時にクリーニング動作が行われる。また、抑制モードでは、電源遮断期間が6時間以上の場合に、インクジェット印刷装置1の電源投入時にクリーニング動作が行われる。このように、抑制モードでは、クリーニング動作の実行条件とする電源遮断期間が通常モードの場合よりも長いことで、クリーニング動作の実行頻度が抑えられ、廃液量が低減する。
【0118】
制御部12は、クリーニングモードを通常モードから抑制モードに変更する場合、クリーニング動作の実行条件とする電源遮断期間を抑制モードにおける電源遮断期間に変更するとともに、パージ圧の設定を「強」から「弱」に変更する。
【0119】
クリーニングモード設定処理は、第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、図13図14のフローチャートの手順で行われる。
【0120】
ここで、第2実施形態では、図13のステップS5における廃液スポンジ9の交換予測日の算出は、次のように行われる。まず、制御部12は、インクジェット印刷装置1において通常モードにおけるクリーニング動作の実行条件とする電源遮断期間以上の電源遮断が行われる頻度と、通常モードにおける1回のクリーニング動作における廃液量と、受光量が閾値未満の汚れセンサ61の数に応じた廃液スポンジ9の許容追加廃液量とに基づき、廃液吸収量が限界レベルに達するまでの期間を算出する。そして、制御部12は、廃液吸収量が限界レベルに達するまでの期間と、現在の日時とに基づき、廃液スポンジ9の交換予測日を算出する。
【0121】
また、図13のステップS9において、クリーニングモードを通常モードから抑制モードに変更する際、制御部12は、クリーニングモードテーブル72を参照して、クリーニング動作の実行条件とする電源遮断期間の設定を、通常モードの電源遮断期間から抑制モードの電源遮断期間に変更する。また、第1実施形態と同様に、制御部12は、クリーニング動作におけるパージ圧の設定を「強」から「弱」に変更する。
【0122】
また、図14のステップS16において、クリーニングモードを抑制モードから通常モードに戻す際、制御部12は、クリーニングモードテーブル72を参照して、クリーニング動作の実行条件とする電源遮断期間の設定を、抑制モードの電源遮断期間から通常モードの電源遮断期間に戻す。また、第1実施形態と同様に、制御部12は、クリーニング動作におけるパージ圧の設定を「弱」から「強」に戻す。
【0123】
以上説明したように、第2実施形態では、クリーニング動作の実行条件とする電源遮断期間を変更することで、クリーニング動作の実行頻度を変更している。これにより、電源遮断期間をクリーニング動作の実行条件として採用しているインクジェット印刷装置1において、容易にクリーニング動作の実行頻度を変更できる。
【0124】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明は第1および第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0125】
上述した第1および第2実施形態では、廃液量を低減するためのクリーニング動作の設定変更として、クリーニング動作の実行頻度およびパージ圧を変更した。しかし、廃液量を低減するためのクリーニング動作の設定変更として、クリーニング動作の実行頻度およびパージ圧のうちの一方のみを変更するようにしてもよい。すなわち、クリーニング動作の実行頻度およびパージ圧の少なくともいずれか一方を変更すればよい。
【0126】
また、上述した第1実施形態では、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数を変更することで、クリーニング動作の実行頻度を変更した。また、第2実施形態では、クリーニング動作の実行条件とする電源遮断期間を変更することで、クリーニング動作の実行頻度を変更した。しかし、クリーニング動作の実行条件として印刷枚数および電源遮断時間の両方を採用し、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数および電源遮断時間の両方を変更することで、クリーニング動作の実行頻度を変更するようにしてもよい。すなわち、クリーニング動作の実行条件とする印刷枚数および電源遮断期間の少なくともいずれか一方を変更することで、クリーニング動作の実行頻度を変更するものであればよい。
【0127】
また、上述した第1および第2実施形態では、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達した場合において、ユーザにより抑制モードが選択された場合に、クリーニングモードを抑制モードに変更した。しかし、廃液スポンジ9の廃液吸収量が警戒レベルに達すると、無条件で通常モードから抑制モードに変更するようにしてもよい。
【0128】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0129】
1 インクジェット印刷装置
2 給紙部
3 印刷部
4 インク循環機構部
5 上面搬送部
6 排紙部
7 反転部
8 メンテナンス部
9 廃液スポンジ
10 廃液検出部
11 操作パネル
12 制御部
28,28C,28K,28M,28Y ラインヘッド
29 インクジェットヘッド
46 インク受け部材
47 ワイパユニット
48 ワイパ駆動部
61 汚れセンサ
71,72 クリーニングモードテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15