特許第6904734号(P6904734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904734
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】電気コネクターおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20210708BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01R11/01 501G
   H01R43/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-39846(P2017-39846)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-147632(P2018-147632A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】堀田 真司
(72)【発明者】
【氏名】土屋 昌俊
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−213186(JP,A)
【文献】 特開平09−035789(JP,A)
【文献】 特開2012−204285(JP,A)
【文献】 特開2000−243486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/00 − 11/32
H01R 43/00 − 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一デバイスの接続端子と、第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する電気コネクターであって、
貫通孔を有する絶縁部材と、前記絶縁部材の表裏面から突出した状態で前記貫通孔に嵌合され、前記第一デバイスの接続端子と前記第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する導電部材と、を備え、
前記絶縁部材は、弾性体と、前記弾性体の少なくとも一方の主面全面に積層された樹脂製のシート状部材とからなり、
前記貫通孔は、前記絶縁部材を、厚み方向に対して斜めに貫通することを特徴とする電気コネクター。
【請求項2】
前記シート状部材は、耐熱性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクター。
【請求項3】
前記シート状部材は、厚み方向に形成された切欠きを有することを特徴とする請求項1または2に記載の電気コネクター。
【請求項4】
前記弾性体は、厚み方向に形成された切込みまたは切欠きを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクター。
【請求項5】
弾性体の少なくとも一方の主面に樹脂製のシート状部材を積層し、前記弾性体と前記樹脂製のシート状部材とからなる絶縁部材を形成する工程と、
前記絶縁部材に、厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記絶縁部材の表裏面から一部が突出するように、前記貫通孔に導電部材を嵌合する工程と、を有することを特徴とする電気コネクターの製造方法。
【請求項6】
前記貫通孔を形成する工程と前記導電部材を嵌合する工程との間に、前記シート状部材の厚み方向に切欠きを形成する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の電気コネクターの製造方法。
【請求項7】
前記貫通孔を形成する工程と前記導電部材を嵌合する工程との間に、前記弾性体の厚み方向に切込みまたは切欠きを形成する工程を有することを特徴とする請求項5または6に記載の電気コネクターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクターおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の半導体パッケージと回路基板の検査を行う場合、または表面実装型の半導体パッケージと回路基板を接続する場合には、圧接型のコネクターが用いられている。
このようなコネクターとしては、例えば、複数の導電線の向きを揃えて互いに絶縁を保って配線された複数のシートが、導電線の向きを一定にして積層され、得られた積層物の複数枚が、導電線の向きを揃えて、一定の角度で階段状に配列積層一体化してブロック体とされ、得られたブロック体がスライス用基板面に接着され、その基板面に平行にかつ導電線を横切る平行な2面で切断されてなる圧接型コネクター(例えば、特許文献1参照)が知られている。また、貫通孔を有する絶縁部材と、絶縁部材の表裏面の少なくとも一方の面から突出した状態で貫通孔に嵌合し、第一デバイスの接続端子と第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する導電部材と、を備え、導電部材は、絶縁性を有する弾性体と、金属線とを備えており、弾性体の高さ方向に、金属線が貫通するように埋設され、導電部材を貫通孔に嵌合した状態では、導電部材と貫通孔との間の少なくとも一部に隙間を備えている電気コネクター(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2787032号公報
【特許文献2】特許第5995740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている圧接型コネクターは、導電線を挿入するための樹脂層を形成するシリコーンゴムが露出している。そのため、検査を繰り返し行うと、シリコーンゴムが摩耗して、検査結果がばらつくことがあった。また、この圧接型コネクターは、導電線と、半導体パッケージや回路基板の接続端子とがランダムに接続するため、接続が不安定である上に、接続に寄与しない導電線によるインダクタンスが発生したり、荷重が増加したりすることがあった。さらに、シリコーンゴムは引き裂き強度が低いため、薄型化が難しい上に、耐熱性が低いという課題があった。
また、特許文献2に記載されている電気コネクターは、金属線が弾性体に対して垂直に配置されているため、半導体パッケージや回路基板の接続端子に対して、金属線から過剰な力が加えられて、接続端子が損傷することがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、半導体パッケージや回路基板の接続端子と接触する導電部材を固定するための弾性体を薄型化することが可能であり、接続端子に対して導電部材から過剰な力が加えられることがなく、耐熱性に優れ、安定した接続を可能とする電気コネクターおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]第一デバイスの接続端子と、第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する電気コネクターであって、貫通孔を有する絶縁部材と、前記絶縁部材の表裏面から突出した状態で前記貫通孔に嵌合され、前記第一デバイスの接続端子と前記第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する導電部材と、を備え、前記絶縁部材は、弾性体と、前記弾性体の少なくとも一方の主面に積層された樹脂製のシート状部材とからなり、前記貫通孔は、前記絶縁部材を、厚み方向に対して斜めに貫通する電気コネクター。
[2]前記シート状部材は、耐熱性樹脂からなる[1]に記載の電気コネクター。
[3]前記シート状部材は、厚み方向に形成された切欠きを有する[1]または[2]に記載の電気コネクター。
[4]前記弾性体は、厚み方向に形成された切込みまたは切欠きを有する[1]〜[3]のいずれかに記載の電気コネクター。
[5]弾性体の少なくとも一方の主面に樹脂製のシート状部材を積層し、前記弾性体と前記樹脂製のシート状部材とからなる絶縁部材を形成する工程と、前記絶縁部材に、厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔を形成する工程と、前記絶縁部材の表裏面から一部が突出するように、前記貫通孔に導電部材を嵌合する工程と、を有する電気コネクターの製造方法。
[6]前記貫通孔を形成する工程と前記導電部材を嵌合する工程との間に、前記シート状部材の厚み方向に切欠きを形成する工程を有する[5]に記載の電気コネクターの製造方法。
[7]前記貫通孔を形成する工程と前記導電部材を嵌合する工程との間に、前記弾性体の厚み方向に切込みまたは切欠きを形成する工程を有する[5]または[6]に記載の電気コネクターの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体パッケージや回路基板の接続端子と接触する導電部材を固定するための弾性体を薄型化することが可能であり、接続端子に対して導電部材から過剰な力が加えられることがなく、耐熱性に優れ、安定した接続を可能とする電気コネクターおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の電気コネクターの概略構成を示す断面図である。
図2】第1の実施形態の電気コネクターの製造方法の概略を示す断面図である。
図3】第1の実施形態の電気コネクターの概略構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
図4】第2の実施形態の電気コネクターの製造方法の概略を示す断面図である。
図5】第3の実施形態の電気コネクターの概略構成を示す断面図である。
図6】第3の実施形態の電気コネクターの製造方法の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電気コネクターおよびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
[電気コネクター]
図1は、本実施形態の電気コネクターの概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の電気コネクター10は、絶縁部材20と、導電部材30と、を備える。
電気コネクター10は、図示略の第一デバイスの接続端子と、図示略の第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するためのものである。デバイスとしては、例えば、半導体パッケージや回路基板が挙げられる。
【0011】
絶縁部材20は、弾性体40と、弾性体40の一方の主面(図1において上面)40aに積層された樹脂製のシート状部材50とからなる積層体である。
絶縁部材20は、その厚み方向に貫通する貫通孔21を有する。すなわち、貫通孔21は、弾性体40とシート状部材50を、その厚み方向に貫通する。また、貫通孔21は、絶縁部材20を、その厚み方向に対して斜めに貫通する。さらに、絶縁部材20の貫通孔21は、弾性体40をその厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔41と、シート状部材50をその厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔51とからなる。
【0012】
貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度、すなわち、弾性体40の一方の主面40aに垂直な線と貫通孔21が交わる角度(図1に示す角度θ)は、10°〜85°であることが好ましい。貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度は、電気コネクター10(詳細には、貫通孔21に嵌合された導電部材30)によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
【0013】
絶縁部材20において、貫通孔21を設ける位置、すなわち、絶縁部材20における貫通孔21の配置は、特に限定されず、電気コネクター10(詳細には、貫通孔21に嵌合された導電部材30)によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
【0014】
貫通孔21の形状、すなわち、貫通孔21の長手方向と垂直な断面の形状は、特に限定されず、貫通孔21に嵌合する導電部材30の長手方向の断面の形状において適宜調整される。貫通孔21の形状としては、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、五角形以上の多角形等が挙げられる。
【0015】
貫通孔21の孔径は、特に限定されず、貫通孔21に嵌合される導電部材30の直径(外径)に応じて適宜調整される。貫通孔21の孔径は、例えば、0.05mm〜0.3mmであることが好ましい。
【0016】
また、貫通孔21の孔径は、絶縁部材20の表面(弾性体40の一方の主面40a側の面)20aの孔径よりも、絶縁部材20の裏面(弾性体40の他方の主面40b側の面)20bの孔径を小さくすることが好ましい。これにより、貫通孔21に嵌合された導電部材30は、少なくとも絶縁部材20の裏面20b側において、貫通孔21に強固に嵌合するため、導電部材30が、絶縁部材20の裏面20b側から脱落することを防止できる。
【0017】
絶縁部材20、弾性体40およびシート状部材50の厚みは、特に限定されず、貫通孔21に嵌合された導電部材30に要求される弾性に応じて適宜調整される。絶縁部材20の厚みは、例えば、0.05mm〜2.0mmであることが好ましい。弾性体40の厚みは、例えば、0.03mm〜1.0mmであることが好ましい。シート状部材50の厚みは、例えば、0.01mm〜1.0mmであることが好ましい。
【0018】
本実施形態の電気コネクター10において、導電部材30に要求される弾性とは、電気コネクター10を、図示略の第一デバイスの接続端子と、図示略の第二デバイスの接続端子との間に配置した場合に、導電部材30の両端(一方の端部30a、他方の端部30b)と、2つのデバイスの接続端子とが電気的に接続した状態を保つために、それぞれの接続端子に対する導電部材30の両端の押圧力が十分に得られるとともに、その押圧力によって、接続端子が損傷しない程度のものである。
【0019】
導電部材30は、絶縁部材20の貫通孔21に嵌合されている。導電部材30は、貫通孔21に嵌合された状態で、その一方の端部30aが絶縁部材20の表面(弾性体40の一方の主面40a側の面)20aから突出し、その他方の端部30bが絶縁部材20の裏面(弾性体40の他方の主面40b側の面)20bから突出している。これにより、導電部材30は、絶縁部材20を、その厚み方向に対して斜めに貫通するように配置されている。
【0020】
導電部材30の一方の端部30aおよび他方の端部30bの絶縁部材20からの突出量は、特に限定されず、電気コネクター10によって電気的に接続する2つのデバイスの接続端子の形状、配置等に応じて適宜調整される。
【0021】
導電部材30としては、2つのデバイスの接続端子同士を電気的に接続することができるものであれば特に限定されない。導電部材30としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、コバルト、チタン、ベリリウム、亜鉛、アルミニウム等の金属もしくはこれらの合金、およびこれらの複合体からなる金属線、中空体(筒状の金属線)、板状の部材等が挙げられる。電気コネクター10を高周波電流用途のデバイス同士の接続に用いる場合、導電部材30は、表面積が大きい中空体であることが好ましい。高周波電流は、デバイスの表層を流れるため、導電部材30の表面積が大きいことが好ましいからである。
【0022】
弾性体40の材質としては、弾性体40とした場合に弾性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴム等が挙げられる。これらの中でも、高弾性で耐熱性に優れる点から、シリコーンゴムが好ましい。
【0023】
シート状部材50の材質としては、シート状部材50とした場合に耐熱性および寸法安定性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリイミド(PI)、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリブタジエン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルフォン(PES)等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性および寸法安定性に優れる点から、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)が好ましい。
なお、シート状部材50としては、これらの樹脂からなる不織布であってもよい。
【0024】
本実施形態の電気コネクター10によれば、絶縁部材20が、弾性体40と、弾性体40の一方の主面40aに積層された樹脂製のシート状部材50とからなるから、絶縁部材20の厚みを薄くしても、絶縁部材20によって強固に導電部材30を保持することができる。これにより、絶縁部材20に貫通するように配置されている導電部材30の長さを短くすることができる。その結果、電気コネクター10を高周波電流用途のデバイス同士の接続に好適に用いることができる。また、絶縁部材20によって保持された導電部材30は適度な弾性を有するため、接続端子に対して導電部材30から過剰な力が加えられることがなく、接続端子が損傷することを防止できる。また、絶縁部材20は、弾性体40とシート状部材50から構成されるため、弾性体のみから構成されるものよりも、耐熱性や寸法安定性に優れ、デバイス同士を安定に接続することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、絶縁部材20が、弾性体40と、その一方の主面40aに積層されたシート状部材50とかなる場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、絶縁部材20が、弾性体40と、その一方の主面40aに積層されたシート状部材50と、その他方の主面40bに積層されたシート状部材とから構成されていてもよい。この場合、弾性体40の他方の主面40bに積層するシート状部材は、弾性体40の一方の主面40aに積層するシート状部材と同様のものが用いられる。弾性部材40の一方の主面40aおよび他方の主面40bにシート状部材を積層することにより、絶縁部材20の表面20aと裏面20bにおける耐熱性や寸法安定性が同一となる。その結果、絶縁部材20はより耐熱性や寸法安定性に優れたものとなる。
【0026】
[電気コネクターの製造方法]
本実施形態の電気コネクターの製造方法は、弾性体の少なくとも一方の主面に樹脂製のシート状部材を積層し、弾性体と樹脂製のシート状部材とからなる絶縁部材を形成する工程(以下、「工程A」と言う。)と、絶縁部材に、レーザー加工または切削加工により、厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔を形成する工程(以下、「工程B」と言う。)と、絶縁部材の表裏面から一部が突出するように、貫通孔に導電部材を嵌合する工程(以下、「工程C」と言う。)と、を有する。
【0027】
以下、図2(a)〜図2(d)を参照して、本実施形態の電気コネクターの製造方法を説明する。
図2(a)〜図2(d)は、本実施形態の電気コネクターの製造方法の概略を示す断面図である。
図2(a)に示すように、弾性体40を用意する。
弾性体40としては、上述のものが用いられる。
【0028】
次いで、図2(b)に示すように、弾性部材40の一方の主面40aに、樹脂製のシート状部材50を積層し、弾性体40とシート状部材50とからなる絶縁部材20を形成する(工程A)。
この工程Aでは、弾性部材40の一方の主面40aに、接着材を介して、シート状部材50を接着してもよいし、弾性部材40の一方の主面40aに、シート状部材50を熱溶着してもよい。あるいは、弾性部材40とシート状部材50を一体成形して、弾性部材40とシート状部材50からなる積層体を成形してもよい。
シート状部材50としては、上述のものが用いられる。
【0029】
次いで、図2(c)に示すように、工程Aで得られた絶縁部材20に、レーザー加工または切削加工により、絶縁部材20の厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔21を形成する(工程B)。
工程Bにおいて、貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度(図2(c)に示す角度θ)を、10°〜85°とすることが好ましい。
また、工程Bにおいて、レーザー加工を行う場合、絶縁部材20に照射するレーザー光の強度は、特に限定されず、絶縁部材20の材質や厚み、貫通孔21の形状や孔径等に応じて適宜調整される。また、レーザー加工によれば、孔径が小さい貫通孔21を形成することができる。一方、切削加工によれば、貫通孔21を形成する時間が短い上に、発熱しないため、加工における寸法安定性に優れる。
【0030】
次いで、図2(d)に示すように、絶縁部材20の表面20aおよび裏面20bから、その一方の端部30aが絶縁部材20の表面20aから突出し、その他方の端部30bが絶縁部材20の裏面20bから突出するように、貫通孔21に導電部材30を嵌合する(工程C)。
工程Cにおいて、貫通孔21に導電部材30を嵌合する際に、冶具が用いられる。
【0031】
以上の工程A〜工程Cにより、図1に示す電気コネクター10が得られる。
【0032】
本実施形態の電気コネクターの製造方法によれば、工程Bにて、弾性体40と弾性体40の一方の主面40aに積層されたシート状部材50とからなる絶縁部材20に、レーザー加工により、絶縁部材20の厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔21を形成する場合、レーザー加工時にビームローテーターを用いる貫通孔21の貫通方向の孔径を調整し、順テーパー孔、ストレート孔、くびれ孔等に形成することができる。すなわち、導電部材30を容易に固定できるため、得られた電気コネクター10は、導電部材30による2つのデバイスの接続を安定に行うことができる。
【0033】
なお、本実施形態では、工程Aにて、弾性部材40の一方の主面40aに、シート状部材50を積層して絶縁部材20を形成する場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、弾性部材40の一方の主面40aおよび他方の主面40bにそれぞれ、シート状部材50を積層して絶縁部材20を形成してもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
[電気コネクター]
図3は、本実施形態の電気コネクターの概略構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、図3において、図1に示した第1の実施形態における電気コネクターと同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の電気コネクター100は、絶縁部材20と、導電部材30と、を備える。
【0035】
本実施形態の電気コネクター100では、絶縁部材20を構成するシート状部材50が、貫通孔21の周辺領域53とその他の領域(貫通孔21が設けられていない領域)との間に、シート状部材50の厚み方向に形成された切欠き55を有する。ここで、シート状部材50における貫通孔21の周辺領域53とは、貫通孔21に嵌合された導電部材30を、シート状部材50によって十分に固定するために、シート状部材50に求められる固定力を発揮することができる大きさ(面積)を有する領域のことである。また、周辺領域53とは、貫通孔21に導電部材30を嵌合した状態で、上述の導電部材30に要求される弾性が得られる領域のことである。周辺領域53の大きさは、導電部材30の直径や材質、シート状部材50の厚みや材質等に応じて適宜調整される。また、周辺領域53を平面視した場合の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形等が挙げられる。
【0036】
切欠き55のシート状部材50の厚み方向に対する角度、すなわち、シート状部材50の一方の主面50aに垂直な線と切欠き55が交わる角度は、特に限定されないが、貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度と等しいことが好ましい。すなわち、切欠き55のシート状部材50の厚み方向に対する角度(図3に示す角度θ)は、10°〜85°であることが好ましい。「貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度θ」=「切欠き55のシート状部材50の厚み方向に対する角度θ」である場合、後述する工程Bと工程Dを同一の工程で行うことができるため、工程の削減や位置ずれの発生を抑制することができる。切欠き55のシート状部材50の厚み方向に対する角度は、電気コネクター100によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
【0037】
切欠き55の形状は、平面視でループ状の他、コの字状等舌片状であってもよい。切欠き55の形状がこれらの形状をなすことにより、予め切欠き55を形成したシート状部材50を用いることで、工程Dを削除することができ、切欠き55の深さを調整する必要がなくなる。また、そのような電気コネクター100を使用すると、弾性体40に過度な負荷をかけずに低荷重で変形する。そのため、デバイスに対する電気コネクター100の位置の調整を可能とするとともに、電気コネクター100の耐久性が向上する。
【0038】
切欠き55の幅、すなわち、周辺領域53とその他の領域の間隔は、特に限定されず、電気コネクター100によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
【0039】
切欠き55の深さ、すなわち、シート状部材50の一方の主面50aから他方の主面50bに向かう長さは、特に限定されず、電気コネクター100によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。図3では、切欠き55がシート状部材50の厚み方向に貫通している場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。
【0040】
本実施形態の電気コネクター100によれば、絶縁部材20を構成するシート状部材50が、貫通孔21の周辺領域53とその他の領域との間に、シート状部材50の厚み方向に形成された切欠き55を有するため、デバイスの形状に応じて変形することができる。その結果、電気コネクター100は2つのデバイス同士を低荷重で安定に接続することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、絶縁部材20が、弾性体40と、その一方の主面40aに積層されたシート状部材50とからなる場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、絶縁部材20が、弾性体40と、その一方の主面40aに積層されたシート状部材50と、その他方の主面40bに積層されたシート状部材とから構成されていてもよい。この場合、弾性体40の他方の主面40bに積層されたシート状部材にも、上記の切欠きが形成されていることが好ましい。
【0042】
[電気コネクターの製造方法]
本実施形態の電気コネクターの製造方法は、弾性体の少なくとも一方の主面に樹脂製のシート状部材を積層し、弾性体と樹脂製のシート状部材とからなる絶縁部材を形成する工程(以下、「工程A」と言う。)と、絶縁部材に、レーザー加工または切削加工により、厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔を形成する工程(以下、「工程B」と言う。)と、シート状部材の厚み方向に切欠きを形成する工程(以下、「工程D」と言う。)と、絶縁部材の表裏面から一部が突出するように、貫通孔に導電部材を嵌合する工程(以下、「工程C」と言う。)と、を有する。
【0043】
以下、図4(a)〜図4(e)を参照して、本実施形態の電気コネクターの製造方法を説明する。
図4(a)〜図4(e)は、本実施形態の電気コネクターの製造方法の概略を示す断面図である。なお、図4(a)〜図4(e)において、図2(a)〜図2(d)に示した第1の実施形態における電気コネクターの製造方法と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図4(a)に示すように、弾性体40を用意する。
【0044】
次いで、図4(b)に示すように、弾性部材40の一方の主面40aに、樹脂製のシート状部材50を積層し、弾性体40とシート状部材50とからなる絶縁部材20を形成する(工程A)。
【0045】
次いで、図4(c)に示すように、工程Aで得られた絶縁部材20に、レーザー加工または切削加工により、絶縁部材20の厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔21を形成する(工程B)。
【0046】
次いで、図4(d)に示すように、レーザー加工、切削加工等により、シート状部材50の厚み方向に切欠き55を形成する(工程D)。
工程Dにおいて、切欠き55のシート状部材50の厚み方向に対する角度(図4(d)に示す角度θ)は、特に限定されないが、貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度と等しくすることが好ましい。また、切欠き55の深さは、特に限定されず、電気コネクター100によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
また、工程Dにおいて、レーザー加工を行う場合、シート状部材50に照射するレーザー光の強度は、特に限定されず、シート状部材50の材質や厚み、切欠き55の形状、孔径、深さ等に応じて適宜調整される。また、レーザー加工によれば、幅が小さい切欠き55を形成することができる。一方、切削加工によれば、切欠き55を形成する時間が短い上に、発熱しないため、加工における寸法安定性に優れる。
【0047】
次いで、図4(e)に示すように、絶縁部材20の表面20aおよび裏面20bから、その一方の端部30aが絶縁部材20の表面20aから突出し、その他方の端部30bが絶縁部材20の裏面20bから突出するように、貫通孔21に導電部材30を嵌合する(工程C)。
【0048】
以上の工程A〜工程Dにより、図3に示す電気コネクター100が得られる。
【0049】
本実施形態の電気コネクターの製造方法によれば、工程Dにて、シート状部材50の厚み方向に切欠き55を形成するため、デバイスの形状に応じて変形することが可能な電気コネクター100を作製することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、工程Aにて、弾性部材40の一方の主面40aに、シート状部材50を積層して絶縁部材20を形成する場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、弾性部材40の一方の主面40aおよび他方の主面40bにそれぞれ、シート状部材50を積層して絶縁部材20を形成してもよい。この場合、弾性体40の他方の主面40bに積層されたシート状部材にも、上記の切欠きを形成することが好ましい。
【0051】
(第3の実施形態)
[電気コネクター]
図5は、本実施形態の電気コネクターの概略構成を示す断面図である。なお、図5において、図1に示した第1の実施形態における電気コネクターと同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態の電気コネクター200は、絶縁部材20と、導電部材30と、を備える。
【0052】
本実施形態の電気コネクター200では、絶縁部材20を構成する弾性体40が、厚み方向に形成された切込み45を有する。切込み45を形成する位置は、特に限定されず、電気コネクター10によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
【0053】
切込み45の弾性体40の厚み方向に対する角度、すなわち、弾性体40の一方の主面40aに垂直な線と切込み45が交わる角度は、特に限定されないが、貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度と等しいことが好ましい。すなわち、切込み45の弾性体40の厚み方向に対する角度(図5に示す角度θ)は、10°〜85°であることが好ましい。切込み45の弾性体40の厚み方向に対する角度は、電気コネクター200によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
【0054】
切込み45の深さ、すなわち、弾性体40の一方の主面40aから他方の主面40bに向かう長さは、特に限定されず、電気コネクター200によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
【0055】
本実施形態の電気コネクター200では、上記の切込み45の替わりに、弾性体40に、上述の第2の実施形態の電気コネクター100における切欠き55と同様の形状の切欠きを形成してもよい。切込み45や切欠きを設けることにより、弾性体40の熱膨張の変化を抑制することができる。
【0056】
本実施形態の電気コネクター200によれば、絶縁部材20を構成する弾性体40が、厚み方向に形成された切込み45を有するため、デバイスの形状に応じて変形することができる。その結果、電気コネクター200は2つのデバイス同士を低荷重で安定に接続することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、絶縁部材20が、弾性体40と、その一方の主面40aに積層されたシート状部材50とかなる場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、絶縁部材20が、弾性体40と、その一方の主面40aに積層されたシート状部材50と、その他方の主面40bに積層されたシート状部材とから構成されていてもよい。
【0058】
[電気コネクターの製造方法]
本実施形態の電気コネクターの製造方法は、弾性体の少なくとも一方の主面に樹脂製のシート状部材を積層し、弾性体と樹脂製のシート状部材とからなる絶縁部材を形成する工程(以下、「工程A」と言う。)と、絶縁部材に、レーザー加工または切削加工により、厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔を形成する工程(以下、「工程B」と言う。)と、弾性体の厚み方向に切込みまたは切欠きを形成する工程(以下、「工程E」と言う。)と、絶縁部材の表裏面から一部が突出するように、貫通孔に導電部材を嵌合する工程(以下、「工程C」と言う。)と、を有する。
【0059】
以下、図6(a)〜図6(e)を参照して、本実施形態の電気コネクターの製造方法を説明する。
図6(a)〜図6(e)は、本実施形態の電気コネクターの製造方法の概略を示す断面図である。なお、図6(a)〜図6(e)において、図2(a)〜図2(d)に示した第1の実施形態における電気コネクターの製造方法と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図6(a)に示すように、弾性体40を用意する。
【0060】
次いで、図6(b)に示すように、弾性部材40の一方の主面40aに、樹脂製のシート状部材50を積層し、弾性体40とシート状部材50とからなる絶縁部材20を形成する(工程A)。
【0061】
次いで、図6(c)に示すように、工程Aで得られた絶縁部材20に、レーザー加工または切削加工により、絶縁部材20の厚み方向に対して斜めに貫通する貫通孔21を形成する(工程B)。
【0062】
次いで、図6(d)に示すように、レーザー加工、切削加工、ナイフ等の刃物による加工等により、弾性体40の厚み方向に切込み45を形成する(工程E)。
工程Eにおいて、切込み45の弾性体40の厚み方向に対する角度(図6(d)に示す角度θ)は、特に限定されないが、貫通孔21の絶縁部材20の厚み方向に対する角度と等しくすることが好ましい。また、切込み45の深さは、特に限定されず、電気コネクター200によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整される。
また、工程Eにおいて、レーザー加工を行う場合、弾性体40に照射するレーザー光の強度は、特に限定されず、弾性体40の材質や厚み、切込み45の深さ等に応じて適宜調整される。また、レーザー加工によれば、小さい切込み45を形成することができる。一方、切削加工や刃物による加工によれば、切込み45を形成する時間が短い上に、発熱しないため、加工における寸法安定性に優れる。
【0063】
また、工程Eにおいて、上記の切込み45を形成する替わりに、弾性体40に、上述の第2の実施形態の電気コネクター100における切欠き55と同様の形状の切欠きを形成してもよい。
【0064】
次いで、図6(e)に示すように、絶縁部材20の表面20aおよび裏面20bから、その一方の端部30aが絶縁部材20の表面20aから突出し、その他方の端部30bが絶縁部材20の裏面20bから突出するように、貫通孔21に導電部材30を嵌合する(工程C)。
【0065】
以上の工程A〜工程Dにより、図5に示す電気コネクター200が得られる。
【0066】
本実施形態の電気コネクターの製造方法によれば、工程Eにて、弾性体40の厚み方向に切込み45を形成するため、デバイスの形状に応じて変形することが可能な電気コネクター200を作製することができる。
【符号の説明】
【0067】
10,100,200 電気コネクター
20 絶縁部材
21 貫通孔
30 導電部材
40 弾性体
41 貫通孔
45 切込み
50 シート状部材
51 貫通孔
53 周辺領域
55 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6