(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904770
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ウエブの冷却装置
(51)【国際特許分類】
D06C 7/00 20060101AFI20210708BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20210708BHJP
B05C 5/02 20060101ALN20210708BHJP
B05C 9/14 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
D06C7/00 Z
B05C9/12
!B05C5/02
!B05C9/14
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-86631(P2017-86631)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-184676(P2018-184676A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(72)【発明者】
【氏名】新子 延和
(72)【発明者】
【氏名】松田 宣亨
【審査官】
櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−534132(JP,A)
【文献】
米国特許第05639305(US,A)
【文献】
特開2003−260391(JP,A)
【文献】
特開2004−358296(JP,A)
【文献】
特開平10−309876(JP,A)
【文献】
特開2003−245585(JP,A)
【文献】
特表平09−511682(JP,A)
【文献】
特開2014−184364(JP,A)
【文献】
特開平06−134379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06C 7/00− 7/04
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔よりなる長尺状のウエブの片面のみにストライプ状に塗工部と非塗工部よりなる塗工面が形成され、
搬送路に沿って上流から下流に走行する前記ウエブの前記塗工面において、前記非塗工部である前記金属箔には接触させず前記塗工部の表面のみに冷却ロールを接触させて、前記ウエブを冷却する、
ウエブの冷却装置。
【請求項2】
前記冷却ロールは、前記ウエブに塗工された前記塗工部を乾燥させる熱処理装置の下流に設けられている、
請求項1に記載のウエブの冷却装置。
【請求項3】
前記冷却ロールは、駆動式で回転するか、又は、他動式で回転するかである、
請求項1に記載のウエブの冷却装置。
【請求項4】
前記冷却ロールの表面温度は、前記ウエブの温度以下である、
請求項1に記載のウエブの冷却装置。
【請求項5】
前記冷却ロールは、筒状の金属製のロール本体と、前記ロール本体の両端から突出した左右一対の筒状の軸と、前記ロール本体内部の空間からなり、前記空間に一方の前記軸から温水を流入させ、前記空間の前記温水を他方の前記軸から流出させる、
請求項1に記載のウエブの冷却装置。
【請求項6】
前記冷却ロールと前記ウエブが接触する抱き角は、10°以上である、
請求項1に記載のウエブの冷却装置。
【請求項7】
前記冷却ロールの下流に第2の冷却ロールが設けられ、
前記第2の冷却ロールの表面温度は、前記冷却ロールの表面温度より低い、
請求項1に記載のウエブの冷却装置。
【請求項8】
前記冷却ロールの下流に第2の冷却ロールが設けられ、
前記第2の冷却ロールは、前記ウエブの非塗工面を冷却する、
請求項1に記載のウエブの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブの冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、充電池の電極に用いられる金属箔のウエブに塗工液をストライプ塗工し、その後に熱処理装置で塗工液を乾燥させている。そして、ウエブを冷却するために、冷却ロールにウエブを走行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−343753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属箔であるウエブの両面をストライプ塗工している場合には、従来の冷却ロールで冷却しても、ウエブの表面と裏面とに温度差がないため、皺が発生にくい。
【0005】
しかし、金属箔であるウエブの表面のみにストライプ塗工して従来の冷却ロールで冷却すると、ウエブの裏面は全く塗工されていないため、ウエブの表面における塗工部の比熱量と非塗工部の比熱量に大きな差がでてくる。
【0006】
そのため、ウエブを冷却ロールで冷却する過程において、比熱量の小さい非塗工部と比熱量の多い塗工部とで冷却時間と冷却温度が大幅に異なり、その結果、ウエブの幅方向での熱収縮差により、ウエブに皺が発生するという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、金属箔よりなるウエブの片面のみに塗工液をストライプ塗工して乾燥させた後に冷却する場合に、ウエブに皺を発生させないウエブの冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属箔よりなる長尺状のウエブの片面のみにストライプ状に塗工
部と非塗工
部よりなる塗工面が形成され、搬送路に沿って上流から下流に走行する前記ウエブの
前記塗工面において、前記非塗工部である前記金属箔には接触させず前記塗工部の表面のみに冷却ロールを接触させて、前記ウエブを冷却する、ウエブの冷却装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却ロールをウエブの塗工面に直接接触させ、比熱量の大きい塗工部のみを冷却することで非塗工部との冷却時間と冷却温度の差を緩和させ熱収縮差を小さくし、ウエブに皺を発生させない。
【0010】
また、冷却ロールの表面には、塗工部との厚み差から非塗工部は接触しないため、冷却ロールの接触によるウエブの拘束が発生せず、熱収縮差での皺の発生をより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態を示す冷却装置を含む製造装置の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態のウエブ1の冷却装置10を用いた製造装置5について
図1〜
図3を参照して説明する。本実施形態における長尺状のウエブ1は、充電池の電極に用いられる金属箔であって、この金属箔には塗工液がストライプ塗工されている。「ストライプ塗工」とは、
図2に示すようにウエブ1の幅方向において塗工部2と非塗工部3とが交互に形成されたものを意味する。
【0013】
(1)ウエブ1の製造装置5の全体的構成
ウエブ1を製造する製造装置5の全体的構成について
図1を参照して説明する。製造装置5は、塗工装置6、熱処理装置7、冷却装置10より構成されている。ウエブ1は、上流から下流に一定の走行速度Vで走行する。
【0014】
塗工装置6は、バックアップロール8、ダイ9、ガイドロール11とよりなる。バックアップロール8は、ウエブ1を走行速度Vで走行させる。ダイ9は、バックアップロール8の側方に設けられ、バックアップロール8によって走行するウエブ1の片面(塗工面)にのみストライプ状に塗工液を塗工して塗工部2と非塗工部3を形成する。ガイドロール11は、ウエブ1をバックアップロール8から熱処理装置7に案内する。
【0015】
熱処理装置7は、塗工装置6の下流に設けられ、断熱性を有する熱処理室12の内部にウエブ1の搬送路が水平に設けられている。搬送路の上方には、複数の上ノズル14が所定間隔毎に設けられ、搬送路の下方には、複数の下ノズル16が所定間隔毎に設けられている。熱処理室12の搬入口18から搬入されたウエブ1は、上ノズル14と下ノズル16からそれぞれ熱風が吹き付けられ、塗工部2の乾燥処理が行われ、搬出口20から搬出され、熱処理装置7の下流にある冷却装置10に案内される。
【0016】
(2)冷却装置10
冷却装置10について
図1〜
図3を参照して説明する。冷却装置10は、上流から順番にガイドロール22、第1冷却ロール24、第2冷却ロール26を有する。熱処理室12の搬出口20から搬出されたウエブ1は、ガイドロール22を経て第1冷却ロール24によって塗工部2が冷却され、第2冷却ロール26によってさらに塗工部2が冷却される。第1冷却ロール24と第2冷却ロール26は、ウエブ1の走行速度Vと同じ速度で駆動させてもよく、又は、他動でもよい。
【0017】
ガイドロール22は、
図1に示すように、ウエブ1の塗工面側に配置され、ウエブ1の塗工部2と接触してウエブ1が第1冷却ロール24に搬送されるように調整する。ガイドロール22は、熱処理室12から搬出されたウエブ1とほぼ同じ温度であり、ウエブ1の塗工部2と線接触をしている。そのため、ウエブ1の塗工部の温度が下がったり、ウエブ1に皺が発生しない。ガイドロール22を経たウエブ1は、第1冷却ロール24に至る。
【0018】
第1冷却ロール24は、
図3に示すように、筒状の金属製のロール本体28とロール本体28から突出した左右一対の筒状の軸32,34を有している。ロール本体28内部には、空間30が設けられている。不図示のポンプによって温水が、
図3における一方の筒状の軸32から空間30に流入し、他方の筒状の軸34から流出する。温水の温度は、ウエブ1の塗工部2の温度よりも若干低く設定され、かつ、ロール本体28が金属製であるため熱伝導性が高いので、第1冷却ロール24の表面温度は、ウエブ1の温度と同じか、又は、低くなる。第1冷却ロール24の表面に、ウエブ1のストライプ塗工された塗工部2が直接接触する。この場合に、塗工部2には厚さがあるため、ウエブ1の非塗工部3、すなわち金属箔自身には第1冷却ロール24の表面が接触しない。したがって、ストライプ状の塗工部2のみが冷却される。なお、第1冷却ロール24がウエブ1を抱く角度である抱き角は、10°以上が好ましい。これは、ウエブ1の冷却を確実に行うためである。さらに、冷却ロール24の表面温度は、ウエブ1の温度以下であればよく、同じ温度でも冷却効果はある。第1冷却ロール24を経たウエブ1は、第2冷却ロール26に至る。
【0019】
第2冷却ロール26の構造は、第1冷却ロール24と同じ構造であるが、流れ込む温水の温度は、第1冷却ロール24よりも低い温度に設定され、ウエブ1をさらに冷却できる。そして、この第2冷却ロール26においては、ウエブ1の塗工面ではなく、非塗工面が接触するように配置されている。
【0020】
なお、ガイドロール22でウエブ1に皺が発生する場合には、このガイドロール22を設けず、ウエブ1が第1冷却ロール24に直接搬送されるようにしてもよい。
【0021】
また、第2冷却ロール26を通過してもウエブ1の温度が、周囲環境温度+25℃以下にならない場合には、さらに一乃至複数の冷却ロールを追加してウエブ1を冷却させてもよい。
【0022】
(3)効果
本実施形態によれば、熱伝導性の高い第1冷却ロール24をウエブ1の塗工部2に直接接触させ、比熱量の大きい塗工部2のみを積極的に冷却することで冷却時間、冷却温度の差を緩和でき、また、非塗工部との熱収縮差を緩和できる。このため、ウエブ1に皺が発生し難い。
【0023】
また、ウエブ1の塗工部2には厚みがあるため、非塗工部3、すなわち金属箔自身には、第1冷却ロール24の表面が接触せず、ロール接触によるウエブ1の拘束が発生せず、熱収縮差で皺の発生もより抑制できる。
【0024】
また、第2冷却ロール26は、第1冷却ロール24よりもさらに低い温度に設定されているため、ウエブ1は順番に冷却される。そのため、第2冷却ロール26の表面にウエブ1を直接接触させても、熱履歴によってウエブ1の材料(金属箔)へのストレスを低減でき、皺が発生し難い。
【0025】
(4)変更例
上記実施形態では、第2冷却ロール26は、ウエブ1の非塗工側を接触させたが、これに代えて第1冷却ロール24と同様にウエブ1の塗工面側、すなわち塗工部2に接触させてもよい。
【0026】
上記実施形態における塗工装置6と熱処理装置7は一例であり、他の構造であってもよい。
【0027】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・ウエブ1、2・・・塗工部、3・・・非塗工部、7・・・熱処理装置、10・・・冷却装置、24・・・第1冷却ロール、28・・・ロール本体