特許第6904771号(P6904771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904771
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ及び携帯型端末
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20210708BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B41J2/32 C
   B41J3/36 T
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-86806(P2017-86806)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2018-183925(P2018-183925A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 仁久
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−076164(JP,A)
【文献】 特開平02−281984(JP,A)
【文献】 特公平01−011472(JP,B2)
【文献】 特開2003−200624(JP,A)
【文献】 実開平02−139750(JP,U)
【文献】 特開昭58−187382(JP,A)
【文献】 特開平07−314845(JP,A)
【文献】 特開2015−044353(JP,A)
【文献】 米国特許第04685815(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第102225665(CN,A)
【文献】 米国特許第06183148(US,B1)
【文献】 特表2000−506077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
第1方向回りに回転可能に前記フレームに支持されるとともに、前記第1方向における第1側端部に駆動源からの動力が伝達される伝達部を有するプラテンローラと、
前記フレームに支持されたヘッド支持板と、
前記ヘッド支持板に固定されるとともに、前記第1方向に直交する第2方向において前記プラテンローラとの間に記録紙を挟み込み、前記記録紙に対して印刷を行うサーマルヘッドと、を備え、
前記フレームは、前記第1方向回り、及び前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向回りに揺動可能に前記ヘッド支持板を支持する揺動支持部を有し、
前記サーマルヘッドは、前記ヘッド支持板のうち、前記揺動支持部に対して前記第3方向の第1側に位置する部分に固定され、
前記ヘッド支持板における前記揺動支持部に対して前記第3方向の第2側に位置する部分と、前記フレームと、の間には、前記サーマルヘッドが前記プラテンローラに接近する向きに前記ヘッド支持板を付勢する付勢部材が介在し
前記フレームは、
ベース部と、
前記ベース部のうち前記ヘッド支持板を間に挟んで前記プラテンローラと反対側に位置する部分から前記第2方向に突出した前記揺動支持部と、を備え、
前記フレームにおける前記揺動支持部に対して前記第1方向の少なくとも第1側に位置する部分には、前記第3方向回りの前記ヘッド支持板の揺動に伴う前記ヘッド支持板と前記ベース部との接触を避ける逃げ部を構成している
ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記揺動支持部における前記第1方向の長さは、前記ヘッド支持板における前記第1方向の長さの半分以上に設定されている請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサーマルプリンタと、
前記サーマルプリンタが搭載されたケーシングと、を備えている携帯型端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタ及び携帯型端末に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙(感熱紙)に対して印刷を行うプリンタとして、サーマルプリンタが知られている。サーマルプリンタは、発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間に記録紙を挟み込んで紙送りするプラテンローラと、サーマルヘッド及びプラテンローラを支持するフレームと、を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
上述したサーマルヘッドは、ヘッド支持板に固定された状態で、付勢部材によってプラテンローラに向けて付勢されている。これにより、サーマルヘッドは、プラテンローラの外周面に対して所定の押圧力で押し付けられている。
この構成によれば、プラテンローラの回転により記録紙が紙送りされる過程で、サーマルヘッドの発熱素子を適宜発熱させることで、記録紙に対して各種情報を印刷できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−044353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーマルプリンタの印字品質を確保するためには、プラテンローラの外周面のうち、サーマルヘッドにより押し潰された領域(ニップ部分)に発熱素子が配置されている必要がある。そのため、ニップ部分は、プラテンローラの軸方向の全体(少なくとも発熱素子が配列された発熱部全体)に亘って所望の幅であることが好ましい。
しかしながら、仮にプラテンローラが、サーマルヘッドに接近離間する方向に傾いた状態でフレームに支持されると、プラテンローラとサーマルヘッドとの間に作用する荷重が軸方向で不均一になる。その結果、ニップ部分の幅が軸方向で不均一になり易い。具体的に、ニップ部分の幅が所望の幅よりも大きくなると、プラテンローラ及びサーマルヘッドと、記録紙と、の間の摩擦抵抗が大きくなる。その結果、プラテンローラを駆動するためのモータに掛かる負荷が大きくなる。一方、ニップ部分の幅が所望の幅よりも小さくなると、記録紙と発熱素子との接触が不十分になる。その結果、印字不良(カスレ等)に繋がるおそれがある。
【0006】
ここで、プラテンローラは、フレームに形成されたローラ収容溝内に収容された状態で、位置決め機構(ロックアーム)によって保持される場合がある。この場合には、フレームに対するプラテンローラの位置決めが確実に行われるため、上述した傾きが生じ難いものと考えられる。
しかしながら、位置決め機構を設けることで、コストアップや構成の複雑化に繋がるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、低コスト化や構成の簡素化を図った上で、印字品質に優れたサーマルプリンタ及び携帯型端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係るサーマルプリンタは、フレームと、第1方向回りに回転可能に前記フレームに支持されるとともに、前記第1方向における第1側端部に駆動源からの動力が伝達される伝達部を有するプラテンローラと、前記フレームに支持されたヘッド支持板と、前記ヘッド支持板に固定されるとともに、前記第1方向に直交する第2方向において前記プラテンローラとの間に記録紙を挟み込み、前記記録紙に対して印刷を行うサーマルヘッドと、を備え、前記フレームは、前記第1方向回り、及び前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向回りに揺動可能に前記ヘッド支持板を支持する揺動支持部を有し、前記サーマルヘッドは、前記ヘッド支持板のうち、前記揺動支持部に対して前記第3方向の第1側に位置する部分に固定され、前記ヘッド支持板における前記揺動支持部に対して前記第3方向の第2側に位置する部分と、前記フレームと、の間には、前記サーマルヘッドが前記プラテンローラに接近する向きに前記ヘッド支持板を付勢する付勢部材が介在している。
【0009】
本態様によれば、プラテンローラとサーマルヘッドとの間に作用する第2方向の荷重が第1方向で不均一になると、プラテンローラとサーマルヘッドとの間に作用する第2方向の荷重に応じて、ヘッド支持板がサーマルヘッドとともに第3方向回りに揺動する。これにより、プラテンローラが、第2方向でサーマルヘッドに接近離間する方向に傾いた状態でフレームに保持された際に、ヘッド支持板がプラテンローラの傾きに倣って傾くことになる。そのため、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に作用する荷重が第1方向の全体に亘って均一になり易い。その結果、プラテンローラにおけるニップ部分の幅を第1方向の全体に亘って一様に維持し易い。
しかも、本態様では、ヘッド支持板の揺動によりニップ部分の幅を一様に維持できるので、ロックアーム等の位置決め機構を用いてプラテンローラをフレームに保持する必要がない。そのため、低コスト化や構成の簡素化を図ることができる。
その結果、低コスト化や構成の簡素化を図った上で、印字品質に優れたサーマルプリンタを提供できる。
また、ニップ部分の幅を確保するために、プラテンローラの大径化やモータの大型化する必要もないので、サーマルプリンタの小型化も図ることができる。
【0010】
上記態様のサーマルプリンタにおいて、前記フレームは、ベース部と、前記ベース部のうち前記ヘッド支持板を間に挟んで前記プラテンローラと反対側に位置する部分から前記第2方向に突出した前記揺動支持部と、を備え、前記フレームにおける前記揺動支持部に対して前記第1方向の少なくとも第1側に位置する部分には、前記第3方向回りの前記ヘッド支持板の揺動に伴う前記ヘッド支持板と前記ベース部との接触を避ける逃げ部を構成していてもよい。
本態様では、プラテンローラの伝達部に作用する荷重によってプラテンローラにおける第1方向の第1側がサーマルヘッドに接近するように傾いたとしても、フレームとヘッド支持板との接触を避けることができる。これにより、プラテンローラの傾きに倣ってヘッド支持板を揺動させ易くなるので、ニップ部分の幅を第1方向の全体に亘って一様に維持し易い。
【0011】
上記態様のサーマルプリンタにおいて、前記揺動支持部における前記第1方向の長さは、前記ヘッド支持板における前記第1方向の長さの半分以上に設定されていてもよい。
本態様では、非印刷時等、ヘッド支持板が第3方向回りに傾いていない状態(例えばプラテンローラの着脱時)において、揺動支持部とヘッド支持板との接触領域を確保できる。そのため、揺動支持部によってヘッド支持板を安定して支持できる。
【0012】
本発明の一態様に係る携帯型端末は、上記態様のサーマルプリンタと、前記サーマルプリンタが搭載されたケーシングと、を備えている。
この構成によれば、上記態様のサーマルプリンタを備えているため、低コスト化や構成の簡素化を図った上で、印字品質に優れた携帯型端末を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、低コスト化や構成の簡素化を図った上で、印字品質に優れたサーマルプリンタ及び携帯型端末を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る携帯型端末の斜視図である。
図2】実施形態に係るサーマルプリンタの斜視図である。
図3】実施形態に係るサーマルプリンタの分解斜視図である。
図4図2のIV−IV線に相当する断面図である。
図5図4のV部に相当する拡大断面図である。
図6】ヘッドブロックを−Y方向から見た斜視図である。
図7図5のVII−VII線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[携帯型端末]
図1は、携帯型端末1の斜視図である。
図1に示すように、携帯型端末1は、例えばユーザにより携帯可能とされた決済端末である。携帯型端末1は、ケーシング11と、入力表示部12と、サーマルプリンタ13と、を有している。
【0016】
ケーシング11は、ケーシング本体15と、プリンタカバー16と、を有している。
ケーシング本体15は、平面視長方形状の箱型に形成されている。ケーシング本体15の先端部には、記録紙P(感熱紙)を収容する記録紙収容部17が形成されている。記録紙Pは、ロール状に巻回された状態で記録紙収容部17内に収容されている。
プリンタカバー16は、図示しないヒンジ部を介してケーシング本体15に回動可能に連結されている。プリンタカバー16は、記録紙収容部17を開閉する。ケーシング11のうち、記録紙収容部17の開口縁とプリンタカバー16の先端縁との間には、記録紙Pを外部に排出する排出口18が形成されている。
入力表示部12は、ケーシング11の表面に配置されている。入力表示部12は、例えばタッチパネルである。入力表示部12は、画面上に各種情報を表示するとともに、画面上に表示される情報を操作可能とされている。
【0017】
<サーマルプリンタ>
サーマルプリンタ13は、ケーシング11内において、排出口18に隣接した位置に搭載されている。サーマルプリンタ13は、記録紙収容部17から送り出される記録紙Pに対して情報を印刷するとともに、排出口18を通して記録紙Pを排出する。
【0018】
図2は、サーマルプリンタ13の斜視図である。図3は、サーマルプリンタ13の分解斜視図である。
図2図3に示すように、サーマルプリンタ13は、サーマルヘッド21を有するヘッドユニット22と、プラテンローラ23と、を備えている。図1に示す例において、ヘッドユニット22はケーシング本体15に組み付けられている。プラテンローラ23は、プリンタカバー16に組み付けられ、プリンタカバー16に回転自在に支持されている。プリンタカバー16は、図1の下部に支軸を持ち、図1の左手前側に開く。その時、プラテンローラ23は、プリンタカバー16に追従して移動する。これにより、プラテンローラ23とヘッドユニット22との連結が解除され、記録紙Pはフリーとなる。逆に、プリンタカバー16が閉じられると、プラテンローラ23もプリンタカバー16に追従して動く。この時、プラテンローラ23は、サーマルヘッド21に接触する位置に復帰する。このように、ヘッドユニット22及びプラテンローラ23は、プリンタカバー16の開閉に伴い分離可能に組み合わされる。そして、ヘッドユニット22及びプラテンローラ23は、プリンタカバー16の閉位置において、上述した排出口18を挟んで対向する。なお、以下の説明では、プラテンローラ23の軸線方向をX方向(第1方向)とし、X方向に直交する2方向をそれぞれY方向(第2方向)、Z方向(第3方向)として説明する。また、以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印方向をプラス(+)方向とし、矢印とは反対の方向をマイナス(−)方向として説明する。
【0019】
図3に示すように、ヘッドユニット22は、フレーム30と、フレーム30に支持されたヘッドブロック31と、を有している。
フレーム30は、X方向に延びる基部32と、基部32におけるX方向の両端部に連設された第1側板部33及び第2側板部34と、を備えている。
基部32は、基部32のうち+Y方向に位置するガイド壁35と、ガイド壁35に対して−Y方向に位置する背面板36(図4参照)と、を有している。ガイド壁35における+Y方向を向く面は、+Z方向に向けて記録紙Pを案内する通紙面を構成している。通紙面は、−Y方向に向けて凸の湾曲面とされている。
【0020】
図4は、図2のIV−IV線に相当する断面図である。
図4に示すように、背面板36は、ガイド壁35に対してY方向に間隔をあけて対向配置されている
【0021】
図3に示すように、第2側板部34は、基部32(ガイド壁35及び背面板36)における+X方向端部に連設されている。第2側板部34のうち、基部32に対して+Z方向に突出する部分には、第2ローラ収容溝38が形成されている。第2ローラ収容溝38は、第2側板部34における+Z方向端縁から−Z方向に窪んで形成されている。第2ローラ収容溝38の内周縁のうち、+Y方向に位置する部分には、−Y方向に向けて突出する第2フック部39が形成されている。
【0022】
第1側板部33は、基部32における−X方向端部に連設されている。第1側板部33のうち、基部32に対して+Z方向に突出する部分には、第1ローラ収容溝42が形成されている。第1ローラ収容溝42は、第1側板部33における+Z方向端縁から−Z方向に窪んで形成されている。第1ローラ収容溝42の内周縁のうち、+Y方向に位置する部分には、−Y方向に向けて突出する第1フック部43が形成されている。
第1側板部33のうち、基部32に対して−Z方向に突出する部分は、モータ支持部44を構成している。
【0023】
プラテンローラ23は、サーマルヘッド21との間に記録紙Pを挟んで記録紙Pを排出口18に向けて搬送する。具体的に、プラテンローラ23は、プラテン軸51と、ローラ本体52と、を備えている。
プラテン軸51は、X方向に延在している。プラテン軸51におけるX方向の両端部には、第1軸受53及び第2軸受54がそれぞれ装着されている。各軸受53,54は、上述したローラ収容溝38,42内に各別に保持されている。これにより、プラテンローラ23は、X方向に延びる軸線周りに回転可能に、かつフレーム30に対して着脱可能にフレーム30に支持されている。なお、各フレーム30のうち、プラテンローラ23を回転可能に支持する部分は、ローラ収容溝38,42に限られない。
【0024】
プラテン軸51のうち、第1軸受53に対して−X方向に位置する部分には、従動ギヤ(伝達部)56が設けられている。従動ギヤ56は、プラテンローラ23がローラ収容溝38,42内に保持された状態において、第1側板部33よりも−X方向に位置している。
【0025】
ローラ本体52は、ゴム等により形成されている。ローラ本体52は、プラテン軸51のうちX方向の両端部以外の部分に外装されている。ローラ本体52の外周面は、上述したサーマルヘッド21に接触している。
【0026】
上述したフレーム30のモータ支持部44に対して+X方向に位置する部分には、モータ(駆動源)61が配置されている。モータ61は、回転軸(不図示)を−X方向に突出させた状態で配置されている。モータ61は、フレキシブル基板45等を介して制御部に接続されている。
【0027】
X方向におけるモータ61とモータ支持部44との間には、モータ61の動力を減速する第1減速機構62が配置されている。第1減速機構62は、例えば遊星歯車機構等である。第1減速機構62には、−X方向に向けて出力ギヤ63が突設されている。出力ギヤ63は、モータ支持部44に形成された貫通孔44aを通してモータ支持部44に対して−X方向に突出している。
【0028】
上述した第1側板部33に対して−X方向に位置する部分には、第2減速機構65が配置されている。第2減速機構65は、2段ギヤ等を含む輪列機構である。第2減速機構65は、第1減速機構62の出力ギヤ63と、プラテンローラ23の従動ギヤ56と、の間を接続している。なお、図2に示すように、第2減速機構65は、ギヤカバー66によって−X方向から覆われている。
【0029】
図5は、図4のV部に相当する拡大断面図である。図6は、ヘッドブロック31を−Y方向から見た斜視図である。
図5図6に示すように、ヘッドブロック31は、ヘッド支持板71と、ヘッド支持板71に支持されたセンサホルダ72、及び上述したサーマルヘッド21と、を主に有している。
【0030】
ヘッド支持板71は、Y方向を厚さ方向とする板状とされている。ヘッド支持板71は、背面板36に形成された支持部(揺動支持部)70を支点にしてX方向回り及びZ方向回りに揺動可能に支持されている。なお、支持部70の構成については後述する。
【0031】
ヘッド支持板71は、ヘッド支持板71におけるZ方向の中央部に位置する屈曲部75と、屈曲部75に対して−Z方向に位置する付勢部76と、屈曲部75に対して+Z方向に位置するヘッド取付部77と、を有している。
屈曲部75は、ヘッド支持板71が+Y方向に向けて膨出するように屈曲されて構成されている。屈曲部75は、ヘッド支持板71において、X方向の全域に亘って直線状に延在している。
【0032】
図4に示すように、付勢部76は、上述した基部32のうち、ガイド壁35と背面板36とにより画成された組付孔78内に配置されている。付勢部76の−Z方向端部と、ガイド壁35と、の間には、付勢部材79が介在している。
【0033】
付勢部材79は、Y方向を軸方向とする円筒コイルばねである。付勢部材79は、付勢部76とガイド壁35とをY方向で離間させる向きに付勢している。本実施形態において、付勢部材79は、X方向に間隔をあけて2ヵ所に設けられている。組付孔78内において、X方向で隣り合う付勢部材79同士の間には、上述したフレキシブル基板45がZ方向に引き回されている。但し、付勢部材79の数やレイアウト等は、適宜変更が可能である。なお、付勢部材79は、円筒コイルばねに限らず、円錐コイルばねや板ばね等を用いても構わない。
【0034】
図5図6に示すように、ヘッド取付部77は、屈曲部75から+Z方向に連なっている。ヘッド取付部77は、上述した屈曲部75や付勢部76に比べてX方向の幅が長くなっている。ヘッド取付部77におけるX方向の両端部には、係合部81(図6参照)が連設されている。係合部81は、フレーム30に形成された図示しない被係合部(不図示)に、少なくともZ方向で係合している。これにより、フレーム30に対するヘッドブロック31のZ方向への移動が規制されている。なお、ヘッド支持板71の形状は、適宜変更が可能である。例えばヘッド支持板71は、全体が直線状(屈曲部75を有さない形状)に形成されていても構わない。
【0035】
図3図4に示すように、サーマルヘッド21は、上述したヘッド取付部77に+Y方向から貼付固定されている。サーマルヘッド21は、X方向に延びる板状とされている。サーマルヘッド21の+Y方向を向く面(以下、「ヘッド面」という。)には、複数の発熱素子21a(図5参照)がX方向に間隔をあけて配列されている。サーマルヘッド21のヘッド面は、上述した付勢部材79の付勢力によってプラテンローラ23(ローラ本体52)の外周面に圧接される。
【0036】
これにより、プラテンローラ23は、ローラ本体52がヘッドブロック31によって+Y方向に押圧されることで、軸受53,54がローラ収容溝38,42内で、対応するフック部39,43に−Z方向から係合した状態で、フレーム30に組み付けられる。すなわち、本実施形態では、ローラ収容溝38,42の溝形状と、ヘッドブロック31の押圧力によってプラテンローラ23がフレーム30に組み付けられている。そして、上述した記録紙Pは、サーマルヘッド21のヘッド面と、ローラ本体52の外周面と、の間に挟み込まれた状態で、プラテンローラ23の回転により搬送される。なお、本実施形態において、サーマルヘッド21のヘッド面は、ヘッドユニット22とプラテンローラ23とが組み合わされた状態で、Z方向に対して傾いて(具体的には、+Z方向に向かうに従い−Y方向に延在するように)配置されている。
【0037】
サーマルヘッド21は、フレキシブル基板45を介して図示しない制御部等に接続されている。サーマルヘッド21では、サーマルヘッド21上に搭載された図示しないドライバICが制御部からの信号に基づいて発熱素子21aの発熱が制御される。そして、記録紙Pが発熱素子21aを通過する際に、記録紙Pに対して印刷が行われる。
【0038】
センサホルダ72は、ヘッド支持板71に対して+Y方向から組み付けられている。具体的に、センサホルダ72は、取付部83(図4参照)と、取付部83に対して+Z方向に連なるカバー部84と、を有している。
取付部83は、組付孔78内における付勢部材79よりも+Z方向に位置する部分において、上述した付勢部76に組み付けられている。すなわち、センサホルダ72は、ヘッド支持板71とともにフレーム30に対して揺動可能に構成されている。
【0039】
カバー部84は、ガイド壁35に対して+Z方向に位置している。カバー部84は、取付部83における+Z方向端縁から+Y方向に延在した後、+Z方向に延在している。カバー部84における+Y方向を向く面は、記録紙Pをサーマルヘッド21に案内するガイド面を構成している。ガイド面は、ガイド壁35の通紙面と、サーマルヘッド21のヘッド面と、の間を滑らかに接続している。
【0040】
図3に示すように、カバー部84における+X方向端部には、カバー部84を貫通する通過孔89が形成されている。通過孔89の開口縁のうち、−Z方向に位置する部分には、−Y方向に突出する台座部90が形成されている。台座部90には、記録紙センサ91が支持されている。記録紙センサ91は、例えば反射型のPIセンサである。記録紙センサ91は、発光部から出射された光が記録紙Pで反射することで、その反射光を受光部で検出可能に構成されている。記録紙センサ91は、フレキシブル基板45を介して制御部に接続されている。制御部は、記録紙センサ91の受光部で反射光を検出した場合に、記録紙Pが記録紙センサ91の検出範囲内に存在していると判定する。
【0041】
図7は、図4のVII−VII線に相当する断面図である。
ここで、図5図7に示すように、上述した支持部70は、背面板(ベース部)36の+Z方向端部から+Y方向に突出している。具体的に、支持部70は、背面板36におけるX方向の両端部を除く領域(X方向の中央部)において、X方向に延在している。支持部70は、ヘッド支持板71における付勢部76の+Z方向端部に−Y方向から当接している。これにより、ヘッド支持板71は、支持部70を起点にX方向回りに揺動可能に構成されている。なお、ヘッド支持板71における支持部70の当接位置は、屈曲部75やヘッド取付部77等であっても構わない。
【0042】
図6に示すように、支持部70のX方向の長さL1は、ヘッド支持板71のうち支持部70の当接部分におけるX方向の長さL2(本実施形態では付勢部76の長さ)よりも短くなっている。そのため、図6図7に示すように、付勢部76におけるX方向の両端部は、支持部70に当接していない。したがって、ヘッド支持板71は、支持部70における例えば−X方向端部を支点にしてZ方向回りに揺動可能に構成されている。すなわち、本実施形態のヘッド支持板71は、X方向回り及びZ方向回りに揺動可能に支持部70に支持されている。なお、支持部70のX方向の長さL1は、ヘッド支持板71のX方向の長さL2の半分以上に設定されていることが好ましい。但し、支持部70は、ヘッド支持板71の少なくとも一部に当接していれば構わない。
【0043】
フレーム30において、支持部70に対してX方向の両端部は、支持部70に対して−Y方向に窪む逃げ部(第1逃げ部95及び第2逃げ部96)を構成している。逃げ部95,96は、ヘッド支持板71がZ方向回りに揺動した際、背面板36との接触を避けるように構成されている。なお、本実施形態において、各逃げ部95,96とX方向で同位置に上述した付勢部材79が配置されている。
【0044】
図7に示すように、第1逃げ部95のX方向の長さQ1は、第2逃げ部96のX方向の長さQ2に比べて長くなっている。したがって、支持部70は、付勢部76のX方向の中心に対して非対称に形成されている。但し、各逃げ部95,96のX方向の長さは、適宜変更が可能である。
【0045】
[作用]
次に、本実施形態のサーマルプリンタ13及び携帯型端末1の作用について説明する。以下の説明では、まずプラテンローラ23の着脱操作時におけるヘッド支持板71の動作を説明する。
図4図5に示すように、プリンタカバー16の閉動作において、プラテンローラ23のローラ本体52がサーマルヘッド21を介してヘッド支持板71を−Y方向に押圧する。すると、ヘッド支持板71は、支持部70との接触部分を支点として、付勢部材79の付勢力に抗する方向(ヘッド取付部77が−Y方向に移動する方向)にX方向回りに回動する。これにより、プラテンローラ23の軸受53,54がローラ収容溝38,42内に進入していく。
【0046】
そして、プラテンローラ23の軸受53,54がフック部39,43の頂部を乗り越えると、ヘッド支持板71が支持部70との接触部分を支点として、付勢部材79の復元する方向(ヘッド取付部77が+Y方向に移動する方向)にX方向回りに回動する。これにより、プラテンローラ23は、ヘッド支持板71の復元力によってサーマルヘッド21により+Y方向に押し付けられた状態で、フレーム30に組み付けられる。この際、フック部39,43がプラテンローラ23の軸受53,54に+Z方向から係合することで、フレーム30に対するプラテンローラ23の+Z方向への移動が規制されている。なお、プリンタカバー16の開動作時には、上述した動作と逆の動作が行われる。
【0047】
次に、上述した携帯型端末1の動作方法について説明する。なお、以下の説明において、プラテンローラ23とサーマルヘッド21との間には、記録紙Pの先端部が挟み込まれているものとする。
携帯型端末1においては、入力表示部12を操作することで、記録紙Pへの印刷が開始する。具体的には、フレキシブル基板45等を介して制御部からモータ61に信号が出力されることで、モータ61が回転する。モータ61の動力は、第1減速機構62及び第2減速機構65で減速された後、従動ギヤ56に伝達される。これにより、プラテンローラ23が回転する。すると、プラテンローラ23の外周面とサーマルヘッド21との間に挟まれた記録紙Pが、排出口18に向けて送り出される。
【0048】
プラテンローラ23の回転により記録紙Pが送り出される過程において、フレキシブル基板45を介して制御部からサーマルヘッド21に信号が出力されることで、サーマルヘッド21の発熱素子21aが適宜発熱する。これにより、記録紙Pに対して各種の情報が印刷される。そして、排出口18から排出された記録紙Pは、切断してレシート等に使用される。
【0049】
ところで、サーマルプリンタ13の印刷動作時において、プラテンローラ23には、上述したように従動ギヤ56を介してモータ61の動力が伝達される。この際、プラテンローラ23には、第2減速機構65から従動ギヤ56に伝達される回転力の分力が−Y方向(以下、「Y方向分力」という。)に作用する。
【0050】
Y方向分力が付勢部材79の付勢力よりも大きい場合には、サーマルヘッド21を介してヘッドブロック31を−Y方向(付勢部材79の付勢力に抗する方向)に押し返すことで、軸受53,54がローラ収容溝38,42内を−Y方向に移動するおそれがある。この際、Y方向分力は、従動ギヤ56から離れるに従い(−X方向から+X方向に向かうに従い)小さくなる。そのため、プラテンローラ23の−X方向端部(軸受53側)の移動量が、+X方向端部(軸受54側)の移動量に比べて大きくなる。その結果、プラテンローラ23が、−X方向から+X方向に向かうに従い+Y方向に延在した状態で、傾いて保持されるおそれがある。この場合には、サーマルヘッド21とローラ本体52との間に作用する荷重が、X方向において不均一になる。すると、ローラ本体52におけるニップ部分の幅がX方向で不均一になる。
【0051】
そこで、本実施形態では、ヘッドブロック31が支持部70を起点にしてZ方向回りに揺動する構成とした。
この構成によれば、プラテンローラ23とサーマルヘッド21との間に作用するY方向の荷重に応じて、ヘッドブロック31がZ方向回りに揺動する。具体的に、プラテンローラ23が、−X方向から+X方向に向かうに従い+Y方向に延在した状態で傾くことで、ヘッドブロック31が支持部70における−X方向端縁を起点に揺動する。これにより、ヘッドブロック31がプラテンローラ23の傾きに倣って延在することで、サーマルヘッド21とローラ本体52との間に作用する荷重がX方向の全体に亘って均一になり易い。その結果、ローラ本体52におけるニップ部分の幅をX方向の全体(発熱素子21aが配列された発熱部に対向する部分の全体)に亘って一様に維持し易い。
しかも、本実施形態では、ヘッドブロック31の揺動によりニップ部分の幅を一様に維持できるので、ロックアーム等を用いてプラテンローラ23をフレーム30に保持する必要がない。そのため、低コスト化や構成の簡素化を図ることができる。
その結果、低コスト化や構成の簡素化を図った上で、印字品質に優れたサーマルプリンタ13を提供できる。
【0052】
また、ニップ部分の幅を確保するために、ローラ本体52の大径化やモータ61の大型化する必要もないので、サーマルプリンタ13の小型化も図ることができる。
【0053】
本実施形態では、支持部70が背面板36から+Y方向に突出しているため、支持部70に対して−X方向に位置する部分を、フレーム30とヘッド支持板71との接触を避ける第1逃げ部95として利用できる。これにより、プラテンローラ23の傾きに倣ってヘッドブロック31を揺動させ易くなる。その結果、ニップ部分の幅をX方向の全体に亘って一様に維持し易い。
【0054】
本実施形態では、支持部70に対して+X方向に位置する部分に、第2逃げ部96が形成されているため、例えば材料コストの削減や軽量化等を図ることができる。
しかも、本実施形態では、第1逃げ部95の長さQ1が第2逃げ部96の長さQ2よりも長くなっている。そのため、ローラ本体52とサーマルヘッド21との間に作用する荷重により、ヘッドブロック31における−X方向端部を−Y方向に積極的に傾けることができる。
【0055】
本実施形態では、支持部70の長さL1が、ヘッド支持板71の長さL2よりも短くなっている構成とした。
この構成によれば、非印刷時等、ヘッドブロック31がZ方向回りに傾いていない状態(例えばプラテンローラ23の着脱時)において、支持部70とヘッド支持板71との接触領域を確保できる。その結果、支持部70によってヘッド支持板71を安定して支持できる。
【0056】
そして、本実施形態の携帯型端末1では、上述したサーマルプリンタ13を備えているため、低コスト化や構成の簡素化を図った上で、印字品質に優れた携帯型端末1を提供できる。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
上述した実施形態では、携帯型端末1の一例として決済端末を用いた場合について説明したが、この構成のみに限らず、種々の携帯型端末に本発明の構成を適用しても構わない。
【0059】
上述した実施形態では、支持部70がX方向に沿って延在する構成について説明したが、ヘッドブロック31がZ方向回りに揺動可能な構成であれば、この構成のみに限られない。支持部70は、X方向に間欠的に形成されていても構わない。
上述した実施形態では、支持部70に対してX方向の両側に逃げ部95,96が形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。少なくとも第1逃げ部95(従動ギヤ56寄りの逃げ部)を有していれば構わない。
上述した実施形態では、支持部70が、付勢部76のX方向の中心に対して非対称に形成されている構成について説明したが、この構成のみに限られない。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1…携帯型端末
11…ケーシング
13…サーマルプリンタ
21…サーマルヘッド
21a…発熱素子
23…プラテンローラ
30…フレーム
36…背面板(ベース部)
56…従動ギヤ(伝達部)
61…モータ(駆動源)
70…支持部(揺動支持部)
71…ヘッド支持板
79…付勢部材
95…第1逃げ部(逃げ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7