(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図11を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
(実施形態)
図1は本発明の実施形態に係る排水栓1を含む浴槽8の外観を示す斜視図であり、
図2は排水栓1の分解斜視図である。浴槽8は、底部81に排水口9(
図2参照)が設けられており、排水口9の下方に設けた排水管等に接続されている。浴槽8の排水口9には排水栓1が設置されている。排水栓1は、開状態で浴槽8内の湯水を排水管側へ排出し、閉状態で排水口9を塞ぎ浴槽8に湯水を溜める。
【0011】
排水栓1は、皿部2および蓋部3を備え、排水口9に設置される。排水口9は、浴槽8の表裏に貫通する孔であり、皿部2を収容する収容孔部91と、蓋部3を嵌める嵌合孔部92を備える。収容孔部91は、底部において内側に張り出すフランジ部91aが形成されている。皿部2は、底面をフランジ部91aに接触させて配設される。嵌合孔部92は、内径が収容孔部91より大きく、収容孔部91に連続する底部92aを有する。蓋部3は、底面を皿部2に接触させ、皿部2の浴槽8側を覆うように配設されており、該底面と底部92aとの間は僅かに接触するか、微小な隙間が空いている。
【0012】
皿部2は通流孔部21を有し、蓋部3は貫通孔部31を有する。蓋部3は、皿部2に対して、浴槽8の底部81における内面(底面)に略垂直に交差する軸まわりに回転可能である。排水栓1は、蓋部3の回転によって通流孔部21と貫通孔部31とが重なって連通するときに、開状態となる。また、排水栓1は、蓋部3の回転によって通流孔部21と貫通孔部31とがずれた位置となるときに、閉状態となる。
【0013】
図3は皿部の平面図であり、
図4は
図3に示すA−A線による皿部2の断面図である。皿部2は、厚みのある円形板状をなし、蓋部3に対向する一面2aから穿つように形成された通流孔部21を有する。通流孔部21は、中心角が略90度の扇状をなし、皿部2の中心に対して対称に2箇所に設けられており、底部21aには、表裏に貫通する多数の通流孔22を有する。
【0014】
皿部2の中心には、一面2aから突起し、一面2aに略垂直な軸方向を有する円柱状の軸体23が設けられている。皿部2の一面2aにおいて、軸体23の周囲部分、および、軸体23の周方向に見た2つの通流孔部21の間の部分は、貫通孔が設けられていない平坦部24となっている。
【0015】
皿部2の一面2aにおける周縁部には、軸体23を中心とする円弧状の凸条25および26が一面2aから突起するように形成されている。凸条25は、軸体23に対して対称に平坦部24における2箇所に設けられている。凸条26は、軸体23に対して対称に通流孔部21の周縁部における2箇所に設けられている。凸条25は、凸条26よりも周方向の長さ寸法を大きくしてある。凸条25および凸条26それぞれの端部25aおよび26aは、各凸条の高さ方向に傾斜するテーパ状としてある。
【0016】
皿部2は、外周面2bの全周に亘ってパッキンが嵌められており、該パッキンが排水口9における収容孔部91の内周面91b(
図2参照)に接触する。皿部2の外周と収容孔部91の内周がパッキンによって水密に封止されることで、浴槽8内からの排水経路は、通流孔部21となる。蓋部3は、皿部2の一面2aに被さり、2つの通流孔部21を開閉するように機能する。
【0017】
図5は蓋部3の平面図、
図6は
図5に示すB−B線による蓋部3の断面図、
図7は蓋部3の底面図である。蓋部3は、厚みのある円形板状をなし、表裏に貫通する貫通孔部31が中心に対して対称に2箇所に設けられている。貫通孔部31は、浴槽8側における浴槽8の内部を臨む一面3aにおける開口が、所定の半径方向寸法を有する中心角が略90度の円弧状の形状であり、蓋部3の周縁部寄りに形成されている。貫通孔部31は、他面3bにおける開口が、中心角を略90度とする扇状の形状であり、蓋部3の半径方向の中途部に形成されている。
【0018】
貫通孔部31は、一面3aにおける開口の外周側部分と、他面3bにおける開口の外周側部分とが外側傾斜部31aによって接続されている。また、貫通孔部31は、一面3aにおける開口の中心側部分と、他面3bにおける開口の中心側部分とが内側傾斜部31bによって接続されている。外側傾斜部31aおよび内側傾斜部31bによって湯水の流路が形成される。蓋部3の一面3aにおける貫通孔部31以外の面は、蓋部3の表面32となっている。表面32は、蓋部3の中心から半径方向の中途部までの円形部分、および、周方向に見た2つの貫通孔部31の間の部分からなり、中央部が湾曲してやや膨らみを持ち、ユーザが触れる面となっている。一面3aにおける貫通孔部31の開口面積は、貫通孔部31の開口部分を除く一面3a、即ち表面32の面積よりも小さい。
【0019】
蓋部3の他面3bの中心には、他面3bに穿つようにして設けた軸穴33が設けられている。軸穴33は、皿部2の軸体23に嵌め合わされる。他面3bにおいて、軸穴33の周囲部分、および、軸穴33の周方向に見た2つの貫通孔部31の間の部分は、平坦状であり、貫通孔が設けられていない閉塞部34を形成している。
図7中の一点鎖線で示すように、軸穴33を境にした扇状の2つの経路Pにパッキンが配設されている。
【0020】
経路Pに配設されたパッキンは、皿部2の通流孔部21と蓋部3の閉塞部34とが重なるときに、通流孔部21を囲んで周縁部に接触する。皿部2の軸体23の先端部の外周に凹状に切欠部分を設け、通流孔部21と閉塞部34とが重なるときに該切欠部分に嵌め合わされるように蓋部3の軸穴33の底部に突起部分を設けてあってもよく、この場合、排水栓1の開閉時にクリック感が得られる。
【0021】
蓋部3の他面3bにおける半径方向の中途部やや外周寄りの部分には、軸穴33を中心とする円弧状の段差部35および溝36が他面3bに穿つように形成されている。段差部35は、軸穴33に対して対称に貫通孔部31の周縁部における2箇所に設けられている。溝36は、軸穴33に対して対称に閉塞部34における2箇所に設けられている。段差部35は、溝36よりも周方向の長さ寸法を大きくしてある。段差部35および溝36の周方向の長さ寸法は、皿部2の凸条25および26と同一またはやや大きい。段差部35および溝36それぞれの端部35aおよび36aは、高さ方向に傾斜するテーパ状としてある。
【0022】
皿部2の凸条25および26は、皿部2の通流孔部21と蓋部3の閉塞部34とが重なるときに、蓋部3の段差部35および36に嵌め合わされる。皿部2の凸条25および26は、皿部2の通流孔部21と蓋部3の閉塞部34とが重なっていないときは、蓋部3の他面3bに接触した状態となる。
【0023】
次に排水栓1の動作について説明する。排水栓1は、皿部2を浴槽8の排水口9における収容孔部91に配置する。皿部2の外周面2bの設けたパッキンが収容孔部91の内周面91bに接触し、皿部2の外周と収容孔部91の内周がパッキンによって水密に封止される。蓋部3は、軸穴33を皿部2の軸体23に嵌め合わせ、皿部2に被せるようにして排水口9の嵌合孔部92に嵌め合わせる。蓋部3は、軸体23まわりに回転させることができる。
【0024】
図8は、開状態の排水栓1を示す平面図である。排水栓1は、皿部2の通流孔部21と蓋部3の貫通孔部31とが重なった状態の回転位置において、通流孔部21と貫通孔部31とが連通し、開状態となる。浴槽8の湯水は、貫通孔部31を通って、皿部2の通流孔部21へ流れ込み、通流孔22から排水管へと排出される。皿部2の通流孔部21では、髪の毛や異物が引っ掛かり、除去できるようになっている。蓋部3の一面3aにおける貫通孔部31の開口面積は、貫通孔部31の開口部分を除く一面3aの面積、即ち表面32の面積よりも小さい。これにより、排水栓1は、ユーザが視認したときに蓋部3に大きな孔が開いているとの違和感が低減化されている。また、蓋部3の一面3aの面積に対する貫通孔部31の開口面積の比率が小さくなることで、浴槽8の底面と連続する部分が多くなり、シームレスにユーザの身体に接触する部分の面積を広く確保することができる。
【0025】
排水栓1が開状態となっているとき、皿部2の凸条25および26は、蓋部3の他面3bに接触した状態となり、蓋部3の他面3bにおける経路Pに配設されたパッキンは、皿部2の一面2aに僅かに接触しているか浮いた状態となっている。これにより、蓋部3に配設されたパッキンに常時荷重が加わらず、パッキンの劣化を抑制することができる。
【0026】
図9は、閉状態の排水栓1を示す平面図である。排水栓1は、蓋部3を開状態から軸穴33の軸まわりに90度回転した回転位置において、閉状態となる。排水栓1が閉状態となったとき、皿部2の凸条25および26は、蓋部3の段差部35および溝36に嵌め合わされ、蓋部3が自重によって皿部2に接近する。蓋部3の他面3bに配設されたパッキンは、排水栓1が閉状態となったときに、通流孔部21の周縁部に接触し、蓋部3の自重で弾性変形して、通流孔部21の周縁部に密着して通流孔部21を塞ぐ。
【0027】
排水栓1は、閉状態から90度回転した回転位置において、
図8に示す開状態となる。排水栓1は、蓋部3を軸穴33の軸まわり、即ち浴槽8の内面に略垂直な軸まわりに回転させることで開閉することができ、浴槽8の内面(底面)から突出しないようにすることができる。
【0028】
排水栓1は、開状態および閉状態で蓋部3が回転するだけで、浴槽8の内面側の表面の変化が少ない。また、排水栓1は、蓋部3を途中の回転位置で止めることによって、開き度合が変化し、排水速度を可変することができる。
【0029】
皿部2の凸条25および26が、蓋部3の段差部35および溝36に嵌め合わされ、また、嵌め合わせが外れることで、蓋部3が軸穴33の軸方向、即ち、浴槽8の内面に略垂直な軸方向に動く。この蓋部3の動きは、排水量を高めるために蓋部を軸方向に大きく動かすものではなく、パッキンによる封止性を高めるためのものであり、動きを小さくすることで、蓋部3が浴槽8の内面から突出することを抑制することができる。これにより、排水栓1は、開状態および閉状態において、浴槽8の内面から蓋部3が突出することを抑制できるので、ユーザが排水栓1に触れても違和感が生じ難く利便性が良い。
【0030】
皿部2に設けた凸条25および26の端部25aおよび26a、並びに、蓋部3に設けた段差部35および溝36の端部35aおよび36aは、高さ方向に傾斜するテーパ状としてあるため、閉状態から開状態への動き出しが滑らかになる。尚、端部におけるテーパは、凸条側にのみ設けてもよく、また、段差部および溝側にのみ設けてよく、いずれの場合にも蓋部3の動き出しを滑らかにすることができる。
【0031】
次に、実施形態の排水栓1の特徴を説明する。
本発明の実施形態の排水栓1は、浴槽8の排水口9に配設される。排水栓1は、排水口9に嵌め合わされ、通流孔部21が形成された皿部2と、皿部2の浴槽8側を覆うように設けられており、皿部2に対する浴槽8の内面(底面)に沿う動きによって通流孔部21を開閉する蓋部3とを備える。これにより、排水栓1は、開状態および閉状態において、浴槽8の内面から蓋部3が突出することを抑制できるので、ユーザが排水栓1に触れても違和感が生じ難く利便性が良い。
【0032】
また排水栓1は、蓋部3が浴槽8の内面(底面)に交差する軸のまわりに回転し、回転位置に応じて通流孔部21を開閉する。これにより、排水栓1は、開状態および閉状態において、浴槽8の内面側の表面の変化を少なくすることができる。
【0033】
また排水栓1は、蓋部3が開状態において通流孔部21に連通する貫通孔部31を有し、貫通孔部31の開口面積が、貫通孔部31の開口部分を除く蓋部3における浴槽8の内部に臨む一面3aの面積、即ち表面32の面積よりも小さい。これにより、排水栓1は、ユーザが視認したときに蓋部3に大きな孔が開いているとの違和感が低減化されている。また、蓋部3の一面3aの面積に対する貫通孔部31の開口面積の比率が小さくなることで、浴槽8の底面と連続する部分が多くなり、シームレスにユーザの身体に接触する部分の面積を広く確保することができる。
【0034】
また排水栓1は、皿部2および蓋部3における互いに対向する面のいずれか一方に凸条が、他方に凸条に嵌め合わされる嵌合部が形成されている。即ち、排水栓1は、皿部2の一面2aに凸条25および26が形成されており、蓋部3の他面3bに嵌合部としての段差部35および溝36が形成されている。凸条25および26、並びに、段差部35および溝36は、軸体23および軸穴33を中心とする円周上に部分的に形成されており、凸条25が段差部35に、凸条26が溝36に嵌め合わされた状態で通流孔部21が閉状態となる。これにより、排水栓1は、皿部2と蓋部3との間のパッキンによる封止性を高めることができる。
【0035】
また排水栓1は、凸条25および26の端部25aおよび26a、若しくは、段差部35および溝36の端部35aおよび36bが、高さ方向に傾斜するテーパ状に形成されている。これにより、排水栓1は、閉状態から開状態への動き出しが滑らかになる。
【0036】
(変形例)
図10は、変形例に係る排水栓1の外観を示す側面図である。この変形例では、蓋部3の他面3bに細長い吊り具37を設け、吊り具37を皿部2に設けた貫通孔(図示略)に通してある。吊り具37は、例えば可撓性を有する樹脂製であり、先端部に拡幅する係止部37aが設けられている。係止部37aは、蓋部3を皿部2から離間させたときに皿部2の前記貫通孔の縁に係る。これにより、蓋部3を皿部2から離間させることで皿部2を排水口9から取り外すことができる。
【0037】
図11は、別の変形例に係る排水栓1の断面図である。この変形例に係る排水栓1は、皿部2に縞状に通流孔部21を設け、通流孔部21の底部に通流孔22を形成している。蓋部3は、皿部2の通流孔部21のピッチと同じ縞状に貫通孔部31を設けている。排水栓1は、蓋部3を浴槽8の内面に沿う動き、即ち平行移動によって、ずらすことにより、開閉することができる。これによって、排水栓1は、開状態および閉状態において、浴槽8の内面から蓋部3が突出することを抑制できるので、ユーザが排水栓1に触れても違和感が生じ難く利便性が良い。
【0038】
上述の実施形態および変形例では、皿部2の外周面2bにパッキンを配設してあるが、皿部2の一面2aと反対側の他面に配設し、収容孔部91のフランジ部91aに接触させるようにしてもよい。また、排水栓1は、皿部2にパッキンを設けず、蓋部3の他面3bの周縁部に全周に亘ってパッキンを設けてもよい。また、
図7に示すように、蓋部3の他面3bにおいて経路Pにパッキンを配設しているが、経路Pを含むように板状のパッキンを配設してもよい。
【0039】
また、上述の実施形態および変形例では、皿部2の通流孔部21および蓋部3の貫通孔部31の形状を説明したが、これらの形状は、扇状や円弧状に限られるものではなく、楕円形状、多角形状などとしてもよい。また、皿部2の通流孔部21および蓋部3の貫通孔部31は、2つであることに限られず、1または3以上あってもよい。
【0040】
また、上述の実施形態および変形例では、皿部2に凸条25および26を設け、蓋部3に段差部35および溝36を設けているが、皿部2に段差部や溝を設け、蓋部3に凸条を設けても良い。また、上述の実施形態および変形例では、皿部2に軸体23を設け、蓋部3に軸穴33を設けているが、皿部2に軸穴を、蓋部3に軸体を設けても良い。尚、蓋部3を回転させるためには、軸穴および軸体による形態の他、別の形態としてもよく、さらに、蓋部3は嵌合孔部92に嵌め合わされているので、皿部2と蓋部3との間に軸穴および軸体を設けなくてもよい場合もある。
【0041】
また、上述の実施形態および変形例では、浴槽8の底部81に排水栓1を設ける例を示したが、排水栓1は、浴槽8の内側面に設けてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。