(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づき、本発明に係るスリットランプ顕微鏡を詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態に係る装置光学系において、最も被検者側に位置するレンズ(対物レンズ)から被検者に向かう方向を前方向とし、その反対方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向とする。前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。以上の方向の定義を前提として説明を行う。
【0021】
[全体構成]
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の全体構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。スリットランプ顕微鏡1には、コンピュータ100が接続されている。コンピュータ100は、各種の制御処理や演算処理を行う。
【0022】
なお、顕微鏡本体(光学系等を格納する筐体)とは別にコンピュータ100を設ける代わりに、顕微鏡本体に同様のコンピュータを搭載した構成を適用することも可能である。
【0023】
スリットランプ顕微鏡1はテーブル2上に載置される。なお、コンピュータ100は他のテーブル上またはその他の場所に設置されていてもよい。基台4は、移動機構部3を介して水平方向に移動可能に構成されている。基台4は、操作ハンドル5を傾倒操作することにより移動される。操作ハンドル5を軸周りに回転することで支持部15は基台4に対して上下に移動される。
【0024】
基台4の上面には、観察系6および照明系8を支持する支持部15が設けられている。
また、本実施の形態にあっては、支持部15には、
図2に示す背景照明系20が支持されている。
【0025】
支持部15には、観察系6を支持する支持アーム16が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16の上部には、照明系8および背景照明系20を支持する支持アーム17が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16、17は、それぞれ独立に同軸で回動可能とされている。
【0026】
観察系6は、支持アーム16を手動で回動させることで移動される。照明系8および背景照明系20は、支持アーム17を手動で回動させることで移動される。
【0027】
なお、各支持アーム16、17は、電気的な機構によって回動されるように構成されていてもよい。その場合、各支持アーム16、17を回動させるための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、たとえばステッピングモータ(パルスモータ)により構成される。伝達機構は、たとえば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。
【0028】
照明系8は、被検眼Eに照明光を照射する。照明系8は、前述のように、回動軸を中心に左右方向に旋回することができる。それにより被検眼Eに対する照明光の照射方向が変更される。照明系8は上下方向にも旋回するように構成されていてもよく、照明光の仰角や俯角を変更できるように構成されていてもよい。
【0029】
照明光の強度の変更は、基台4上に設けられた照明強度操作部18を用いて行われる。なお、背景照明系20により被検眼Eに照射される背景照明光の強度についても、照明強度操作部18を用いて行えるように構成されていてもよい。
また、照明光や背景照明光の強度の変更を、他の操作部材により行えるように構成することも可能である。他の操作部材としては、スリットランプ顕微鏡1の筐体に設けられた操作部材や、コンピュータ100に設けられた操作部材がある。
【0030】
観察系6は、照明光(および背景照明光)の被検眼Eからの反射光を案内する左右一対の光学系を有する。この光学系は鏡筒本体9内に収納されている。鏡筒本体9の終端は接眼部9aである。検者は接眼部9aをのぞき込むことで被検眼Eを肉眼で観察する。
【0031】
前述のように、支持アーム16を回動させることにより鏡筒本体9を左右方向に回動させることができる。それにより被検眼Eに対する観察系6の向きを変更することができる。
なお、照明光の反射光には、たとえば散乱光のように被検眼Eを経由した各種の光が含まれるが、これら各種の光を含めて「反射光」と呼ぶ。
【0032】
鏡筒本体9に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
【0033】
鏡筒本体9の側面には、観察倍率を変更するための観察倍率操作ノブ11が配置されている。更に、鏡筒本体9には、被検眼Eを撮影するための撮像装置13が接続されている。
撮像装置13は撮像素子を含んで構成されている。
撮像素子は、光を検出して電気信号(画像信号)を出力する光電変換素子である。画像信号はコンピュータ100に入力される。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。照明系8の下方位置には、照明系8から出力される照明光束を被検眼Eに向けて反射するミラー12が配置されている。また、ミラー12は、背景照明系20から出力される背景照明光を被検眼Eに向けて反射する。
【0034】
[光学系の構成]
スリットランプ顕微鏡1の光学系の構成について、
図2を参照しながら説明する。スリットランプ顕微鏡1は、観察系6と、照明系8と、背景照明系20とを有する。
【0035】
〔観察系〕
観察系6は左右一対の光学系を備えている。左右の光学系は、ほぼ同様の構成を有する。操作者は、この左右の光学系により被検眼Eを双眼で観察することができる。なお、
図2には、観察系6の左右の光学系の一方のみが示されている。符号O1は観察系6の光軸(観察光軸)である。
【0036】
観察系6の左右の各光学系は、対物レンズ31、変倍光学系32、絞り33、結像レンズ35、プリズムユニット36および接眼レンズ37を有する。ビームスプリッタ34は、左右の光学系の一方にまたは双方に設けられる。接眼レンズ37は接岸部9a内に設けられている。符号Pは、結像レンズ35により観察部位の像が結像する位置を示している。この像を接眼レンズ37を介して観察する。符号Ecは被検眼Eの角膜を、符号Epは虹彩を、符号Erは眼底をそれぞれ示している。符号Eoは検者眼を示している。
【0037】
変倍光学系32は、複数(たとえば2枚)の変倍レンズ32a、32bを含んで構成される。この実施形態では、観察系6の光路に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群が設けられている。
これら変倍レンズ群は、それぞれ異なる倍率を付与するように構成されている。観察系6の光路に配置された変倍レンズ群が変倍レンズ32a、32bとして用いられる。それにより、被検眼Eの接眼レンズによる観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更できる。倍率の変更、即ち観察系6の光路に配置される変倍レンズ群の切り替えは、観察倍率操作ノブ11を操作することにより行われる。また、図示しないスイッチ等を用いて電動で倍率を変更するように構成してもよい。
【0038】
ビームスプリッタ34は、観察光軸O1に沿って進む光を二分割する。ビームスプリッタ34を透過した光は、結像レンズ35、プリズムユニット36および接眼レンズ37を介して検者眼Eoに導かれる。プリズムユニット36は、2つの光学素子36a、36bを含み、像を反転すると共に検者の眼幅に合わせて左右観察光軸の幅を変更することができる。
【0039】
他方、ビームスプリッタ34により反射された光は、リレーレンズ41およびミラー42を介して、撮像装置13の撮像素子43に導かれる。撮像素子43は、この反射光を検出して画像信号を生成する。
【0040】
〔照明系〕
照明系8は、光源51、リレーレンズ52、照明絞り56、コンデンサレンズ53、スリット部54、視野絞り部60、および結像レンズ55を有する。符号O2は、照明系8の光軸(照明光軸)を示す。
【0041】
光源51は照明光を出力する。なお、照明系8に複数の光源を設けてもよい。たとえば、定常光を出力する光源(ハロゲンランプ、LED等)と、フラッシュ光を出力する光源(キセノンランプ、LED等)の双方を光源51として設けることができる。また、角膜観察用の光源と眼底観察用の光源とを別々に設けてもよい。光源51は、可視光を出力する可視光源を少なくとも含む。光源51への印加電力の大きさにより光度が変更可能に構成されている。
【0042】
〔光束制御部〕
本実施の形態にあっては、照明系8は光源51の照明光が通過する開口部71の面積を変更可能な光束制御部70を有しており、光束制御部70を通過することにより面積を制限した観察光を被検眼Eに照射する。
【0043】
即ち、本実施の形態にあっては光束制御部70は、スリット部54と、視野絞り部60と、スリット部54及び視野絞り部60により形成される開口部71の面積を検知する開口面積検知部59とを有しており、制御部101は開口面積検知部により検知された開口面積に基づき光源51の光度を制御する。
【0044】
<スリット部>
スリット部54は、スリット光(観察光)を生成するために用いられる。スリット部54は、互いに所定間隔をおいて対向して配置された一対のスリット刃54a、54bを有する。これらスリット刃54a、54bの配置間隔(スリット幅)を変更することによりスリット光の幅が変更される。手動操作により任意にスリット刃54a、54bの配置間隔を調整することができる。この場合、スリット刃54a、54bを電動により開閉するように構成してもよい。
【0045】
<視野絞り部>
図2、
図3及び
図4に示すように、視野絞り部60は、スリット部54の反光源51側においてスリット部54に近接して配置され、異なる大きさ及び形状の複数の開口62を有し、回転中心66を中心として回転動するターレット61を有している。
【0046】
図3及び
図4に示すように、本実施の形態にあっては、ターレット61は照明光軸02に対して直交する方向において回転可能に配置された円盤状部材であって、開口62は、同心円上に配置された4つの円形開口部63a、63b、63c、63dと単一の湾曲涙滴状開口部64とからなる。円形開口部63a、63b、63c、63dは、それぞれ異なる径に形成され、時計回り方向に次第に大径となるように、互いに開口中心が等間隔となるように配置されている。
従って、ターレット61を適宜回転させることにより任意の開口62の中心を照明光軸02に合わせることにより観察面の照明範囲を適宜制限することが可能となる。
【0047】
最小の円形開口部63aが照明光軸02上に配置された場合には、照明光束65の径よりも最も小径の絞り光を形成することができ、最大の円形開口部63dが照明光軸02上に配置された場合には、照明光束65の径と同一の最大径の絞り光を形成することができる。
【0048】
また、前記湾曲涙滴状開口部64は、大径円弧端部64aと、大径円弧端部64aに同心円の円周方向に対向して配置された小径円弧端部64bと、前記大径円弧端部64aから小径円弧端部64bにかけて徐々に幅寸法が小さくなるように形成された湾曲輪郭部64c、64dとにより形成されており、
図4に示すように、湾曲涙滴状開口部64はスリット部54を通過した光束の幅を連続的に変更制御しうるように構成されている。
【0049】
図3に示すように、ターレット61は、複数の開口62の中心を照明光軸02に合致させて配設されており、検者はターレット61を適宜回転させることにより所望の開口62を、スリット部54を開放した状態で照明光軸02に対して選択的に配置することにより、被観察部を円形に照明することができる。また、スリット部54を、スリット刃54a、54bの間隔を狭めた状態で、視野絞り部60と併せて使用することにより、被観察部を小判状に照明することもできる。
【0050】
従って、ターレット61を回転することにより、任意の大きさの開口62を選択的に照明光軸02上に配置することで、被観察面における照明範囲を制限し、スリット部54のスリット刃54a、54bの幅と視野絞り部60の開口62の径を組み合わせることで幅と長さを制限した観察光を被観察面に照射することができる。
【0051】
また、
図4に示すように、湾曲涙滴状開口部64に関しては、スリット部54の間隔を狭めた状態で照明光軸02上に配置し、ターレット61を大径円弧端部64aと小径円弧端部64bとの間において回動させることにより、スリット部54により形成されるスリット間隔の長さLを制限し、スリットの長さの絞りを連続的に行うことができる。
【0052】
本実施の形態にあっては、ターレット61は手動操作により回転駆動させるように構成されている。ターレット61には、各円形開口部63の中心が照明光軸02に一致する位置に適宜構成のクリック部(図示せず)が設けられており、検者は、操作部を操作することにより、クリック部に合わせるようにしてターレット61を回転操作することにより所望の円形開口部63を照明光軸02上に配置固定することができる。
【0053】
湾曲涙滴状開口部64にあっては、大径円弧端部64a及び小径円弧端部64bの中心が照明光軸02に一致する位置にクリック部(図示せず)が設けられている一方、大径円弧端部64aと小径円弧端部64bとの間においてはクリック部は設けられておらず、大径円弧端部64aと小径円弧端部64bとの間の任意の位置においてターレット61の回転を停止させることが可能である。従って、大径円弧端部64aと小径円弧端部64bとの間の任意の位置において停止させて連続的にスリットの長さを絞ることができる。
【0054】
また、ターレット61は電動により回転するように構成してもよい。この場合には、ターレット61を駆動するアクチュエータとしてのステッピングモータ及び適宜の駆動力伝達機構が設けられる。制御部101は、ステッピングモータのステップ数を計測することによりターレット61の回転角度を光検知手段、例えば、フォトインタプラタにより検知するように構成する。
【0055】
<開口面積検知部>
本実施の形態に係るスリットランプ顕微鏡1はスリット部54のスリット刃54a、54bの配置間隔及び視野絞り部60のターレット61の回転角度を検知する検知手段を備えた開口面積検知部59を有している。制御部101は開口面積検知部59により検知されたスリット幅及びターレット61の開口62により形成される開口面積に基づき光源51の最大光度値光度を決定する。
【0056】
開口面積検知部59は、スリット部54のスリット刃54a及びスリット刃54bの幅及び視野絞り部60の開口部62の開口径を各々検出する。
スリット部54の幅については、回転操作可能に形成されたスリット操作部としてのスリット開閉ノブ(図示せず)の回転量を、エンコーダにより検知して検知情報を制御部101に送信する。
【0057】
この場合、開口面積検知部59を、一対のスリット刃54a、54bの移動量適宜の検知手段により検知することによりスリット幅値を検知するように構成してもよい。例えば、スリット刃54a、54bを駆動するアクチュエータの駆動軸の回転数を検知することによりスリット刃54a、54bの移動量を計測することもできる。
【0058】
視野絞り部60に関しては、上記のように、複数の開口62を有するターレット61の回転角度を、手動操作による場合には光検知手段により、また電動操作の場合には適宜の検知手段によりステッピングモータのステップ数を計測することにより検出し、当該回転角度に対応した各開口部63a、63b、63c、63d、64を特定して開口径を得る。
その結果、開口面積検知部59は、スリット部54のスリット幅とターレット61の回転角度から得られた視野絞り部60の開口62の開口径の組み合わせから、複合された開口面積を得ることができる。
【0059】
また、開口面積検知部59において、観察系6に配置された撮像装置43により取得された前眼部画像の開口像に基づき開口面積を検知するように構成してもよい。この場合には、変倍系の倍率を検知してフィードバックすることが必要となる。
【0060】
照明絞り56は、その透光部のサイズを変更可能に構成されている。照明絞り56は、特に眼底観察において有効である。たとえば、照明絞り56には、角膜Ecや水晶体による照明光の反射を低減させ、照明光の明るさを調整する等の用途がある。
【0061】
〔背景照明系〕
背景照明光20は、被検眼Eに背景照明光を照射する。背景照明光は、照明系8による被検眼Eに対する照明光の照射領域の周囲の領域に照射される。なお、背景照明光の照射領域は、少なくともこの周囲領域を含むものであればよい。たとえば、背景照明光の照射領域は、照明系8による照射領域の少なくとも一部と重複していてもよい。
【0062】
背景照明系20は、光源(背景光源)を含む。背景光源は、可視光を出力する可視光源を少なくとも含む。この可視光は、たとえば肉眼観察や撮影に用いられる。背景光源は、赤外光を出力する赤外光源を含んでいてもよい。この赤外光は、たとえばマイボーム腺の観察や撮影に用いられる。
【0063】
背景照明系20が可視光源と背景光源の双方を含む場合、これら光源はたとえば択一的に使用される。背景照明系20は、背景光源から出力された光を集束させる1つ以上のレンズを含んでいてもよい。符号O3は、背景照明系20の光軸(背景照明光軸)を示す。
【0064】
背景光源から出力された光は、(上記レンズによって集光された後、)ミラー12により反射されて被検眼Eに照射される。この背景照明光の照射領域は、照明系8による被検眼Eの照射領域の周囲の領域を含む。
【0065】
[制御系の構成]
スリットランプ顕微鏡1の制御系について、
図5を参照しながら説明する。
スリットランプ顕微鏡1の制御系は、制御部101を中心に構成されている。なお、制御系の構成の少なくとも一部がコンピュータ100に含まれていてもよい。
【0066】
〔制御部〕
制御部101は、スリットランプ顕微鏡1の各部を制御する。
制御部101は、観察系6の制御、照明系8の制御、背景照明系20の制御を行う。観察系6の制御としては、変倍光学系32の制御、絞り33の制御、撮像素子43の電荷蓄積時間、感度、フレームレート等の制御などがある。照明系8の制御としては、光源51、光源光度検知部58、光束制御部70を構成するスリット部54、視野絞り部60及び開口面積検知部59、照明絞り56の制御などがある。背景照明系20の制御としては、背景光源の制御などがある。
【0067】
制御部101は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。ROMやハードディスクドライブ等の記憶装置には、制御プログラムがあらかじめ記憶されている。制御部101の動作は、この制御プログラムとハードウェアとが協働することによって実現される。制御部101は、スリットランプ顕微鏡1の装置本体(たとえば基台4内)やコンピュータ100に配置される。
【0068】
〔表示部〕
表示部102は、制御部101の制御を受けて各種の情報を表示する。表示部102は、LCD等のフラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成される。表示部102は、スリットランプ顕微鏡1の装置本体に設けられていてもよいし、コンピュータ100に設けられていてもよい。
【0069】
〔操作部〕
操作部103は、操作デバイスや入力デバイスを含んで構成される。操作部103には、スリットランプ顕微鏡1に設けられたボタンやスイッチ(たとえば操作ハンドル5、照明強度操作部18等)や、コンピュータ100に設けられた操作デバイス(マウス、キーボード等)が含まれる。また、操作部103は、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてもよい。
【0070】
図5では、表示部102と操作部103とを別々に表しているが、これらの少なくとも一部を一体的に構成することも可能である。その具体例として、タッチスクリーンを用いることができる。
【0071】
〔光源光度検知部〕
光源51の光度は印加電力にほぼ相関するため、印加電力を制限することで光源51の光度を制御することもできるが、
図2に示すように、本実施の形態に係るスリットランプ顕微鏡1においては、光源51の光度を測定検知する光源光度検知部58が設けられている。
この光源光度検知部58は、光源51の光度を直接モニタするように構成されており、このように光量を直接にモニタすることで光源のバラツキや、光源の劣化による光量低下が起きた場合であっても、適切な照度のスリット像を投影することができる。
【0072】
この場合、光源光度検知部58をフォトディテクターにより構成し、光源51の近傍に配置し、光源51の散乱光成分を受光するように構成してもよく、また、光源51の近傍に光ファイバの一方端部を配置し、光ファイバの端面から光源の散乱光を取り込み、他方端部近傍にフォトディテクターを配置しても良い。さらに、光路02中に光束の一部を反射するミラーを配置し、反射光をフォトディテクターにより受光するようにしても良い。
【0073】
〔開口部の開口面積による光源の光度制御〕
以下に、本発明における「スリット幅及び視野絞り径に基づく光源の最大光度値制御」の趣旨及び意義について説明する。
【0074】
光源51からの照明光はコンデンサレンズで53により集光され、スリット部54と視野絞り部60の組み合わされた開口部71を透過して結像レンズ55からミラー12の近傍に光源像を結像する。
光源像はミラー12を介して被検眼Eの眼底Er付近に結像する。前記開口部71の像は結像レンズ55によりミラー12を介して観察部位に結像する。角膜Ecを観察する場合は角膜Ecがこの観察位置に合致するようにアライメントを行う。
【0075】
光源51の光度が一定の場合には開口部71の開口の面積を変化させた場合であっても角膜Ec上に結像する開口像の照度は変化しない。しかしながら、眼底Er上の光源像の照度は開口面積が狭くなると低くなり、開口面積が広がると高くなる。
【0076】
開口部71の開口面積はスリット部54の幅と視野絞り部60の径の組み合わせからなり、観察部位や観察方法によって検者が任意に設定する。観察部位をよりよく、詳細に観察しようとする場合、光源51の光度を上げ(明るくして)被検部上の開口像の照度を高めて観察することとなる。
この時、照射した光束のほとんどは角膜Ecを透過して眼底Erに達し、眼底Erを照明してしまうため、従来は、どのような照明条件であっても眼底照度の安全値を超えないよう光量ボリュウムに制限がかけられているか、又は警告を報知するように構成されたものも存在した。
【0077】
しかしながら、光源51の光度が一定であっても開口部71の開口面積を変更すると眼底照度は変化するため、ある開口面積の時、眼底照度が安全値の上限に達していた場合であっても、開口面積を狭めれば眼底照度は安全値に対して余裕を持つことができる。この場合に、更に角膜Ec上を明るく観察したいという場合には光源51の光度を上げて角膜Ec上の開口像の照度を上げることができる。逆に、開口面積を拡大した場合は眼底照度が安全値を超えてしまうため、光源51の光度を下げなければならない。
【0078】
従来においては、開口を最大に開いた状態で眼底Erの照度を安全値以下に抑えるように光源51の光度を設定していたため、スリット部54を狭めた状態で眼底安全値に対して余裕がある状態であっても明るく観察することができなかった。
そこで、本件発明にあってはスリット部54の幅及び視野絞り60の径を各々検出して、検出され複合された開口面積に応じて光源51の最大光度を可変にするものである。
【0079】
本実施の形態に係るスリットランプ顕微鏡1にあっては、検者によってスリット幅及び視野絞り径が操作設定された場合には、制御部は開口面積検知部59により検知されたスリット部54のスリット幅と視野絞り60において選択された視野絞り径に基づき複合して得られる開口部71の開口面積を求め、前記光源51の最大光度値を設定すると共に、光源51の光度値は最大光度値を超えては設定できないように構成されている。
【0080】
図5に示すように、制御部101は記憶部101aを有し、記憶部101aは、検者が設定したスリット幅の値と視野絞り径とにより、開口面積に対応した観察光が被検眼Eの眼底Erに照射された場合であっても被検眼眼底に対する安全照度を超えない適切な光源の最大光度値からなるデータをあらかじめ格納している。
制御部101は、開口面積検知部59により検知された、スリット幅及び選択された視野絞り径からなる開口面積に基づき、記憶部101aのデータを参照して光源51の最大光度値を決定する。
【0081】
従って、検者は、診察において、必要に応じ適宜スリット部54の開閉及び視野絞り部60の開口径を操作して観察を行うが、検者により設定されたスリット部54の幅と視野絞り部60の開口径からなる開口面積に応じて、制御部101により開口面積値に対応する光源51の最大光度値が決定され、検者は、最大光度値以下であれば適宜、光源51の光度を操作変更して必要な観察、検査を行うことができ、かつ、決定された開口面積値に対応する最大光度値以上には光源51の光度を上げることはできないように構成されている。
【0082】
検者が最大光度値以上に光源51の光度を設定しようとした場合には、「最大光度値に達している」旨の警告を表示部102に表示するか、又は音声により検者に警告してもよい。
【0083】
〔作動説明〕
本実施の形態に係るスリットランプ顕微鏡1を使用して検眼するに際し、開口面積に基づく光源51の光度制御を行う場合の手順について
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0084】
操作者は、スリットランプ顕微鏡1を使用するに際し、検眼の個別具体的事情に応じてスリット部54の幅、及び視野絞り部60の視野絞り径を設定または変更する(S1)。
【0085】
次に、開口面積検知部59は、設定または変更されたスリット幅、及び視野絞り径を検知し、検知信号を制御部101へ送る(S2)。
【0086】
次に、制御部101はスリット幅と視野絞り径を複合した開口面積を求め、記憶部101aに格納されている、設定された開口面積と、当該開口面積に対応した前記観察光が被検眼の眼底に照射された場合であっても眼底照度の安全値を超えない適切な光源の最大光度値とからなるデータテーブルから、上記得られた開口面積に対応する光源51の最大光度値を取得する(S3)。
【0087】
次に、制御部101は光源光度検知部58により光源51の、設定または変更された実際の光度を検知し、光度を取得する(S4)。そして、制御部101は、S4において検知、取得された光源51の光度がS3において記憶部101aから取得された最大光度値以下であるか否か、を判断する(S5)。
【0088】
制御部101は、光源51の光度がS3において記憶部101aから取得された最大光度値以下であると判断した場合には、検者により設定または変更された光度を許容し決定して制御を終了する(S6)。
【0089】
一方、制御部101は、光源51の光度がS3において記憶部101aから取得された最大光度値以下ではない、と判断した場合には、光源51の光度を、設定または変更された当該開口面積に対応する光源の最大光度値に設定して制御を終了する。
【0090】
本実施の形態にあっては、背景照明系20が設けられている場合を例に説明したが、上記実施の形態に限定されず、背景照明系20が設けられていなくてもよい。