(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載のインクジェットインクでは、精密な画像を無機基材上に好適に描画することが困難であったため、更なる改良が望まれていた。具体的には、紙や布などと異なり、陶磁器やセラミックタイルなどの無機基材は吸水性が非常に低いため、特許文献1のように有機溶媒などを使用したインクを無機基材上に定着させることが困難である。このため、無機基材上に付着させたインクが滲んだり、当該インクの厚みが不足して画像の色が薄くなったりすることがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させ、所望の画像を精密に印刷することができる無機基材用インクジェットインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するべく、ここで開示される無機基材用インクジェットインクが提供される。
【0009】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクは、焼成を伴う無機基材に使用される。かかる無機基材用インクジェットインクは、金属化合物を含む無機顔料と、光硬化性樹脂と、光重合開始剤と、分散剤とを含んでいる。
そして、ここで開示される無機基材用インクジェットインクでは、光硬化性樹脂に一個の官能基を有する一官能モノマーと、二個の官能基を有する二官能モノマーとが少なくとも含まれていると共に、分散剤がカチオン系分散剤である。さらに、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率が25wt%〜75wt%であり、かつ、無機顔料の重量に対するカチオン系分散剤の重量比率が1.9wt%〜20wt%であることを特徴とする。
【0010】
本発明者は、上記した課題を解決するために種々の検討を行った結果、無機基材を加飾対象とするインクジェットインクには、光硬化性インクが適していると考えた。かかる光硬化性インクは、上記した従来技術のような有機溶媒や水系溶媒を殆ど含んでおらず、光硬化性樹脂に顔料や光重合開始剤を分散させたインクであり、紫外線(UV光)を照射された際に光重合開始剤が活性化して光硬化性樹脂が硬化する。この光硬化性インクを用いれば、吸水性に乏しい無機基材が加飾対象の場合であっても、十分な厚さのインクを滲むことなく無機基材上に定着させることができる。
【0011】
しかしながら、上記したように、無機基材用インクジェットインクでは、焼成処理時の変色(又は消色)を防止するために、顔料に無機顔料を使用することが求められる。このような無機顔料を光硬化性インクの顔料として使用すると、インクジェット装置の吐出口からインクを吐出させることが困難になり、吐出口の詰まりや画像の掠れ等が生じて所望の画像を精密に描画できなくなるという新たな問題が生じた。
そこで、本発明者は、無機顔料と光硬化性樹脂とを含む無機基材用インクジェットインクを、インクジェット装置の吐出口から好適に吐出させることができるように、さらに実験と検討を重ねた。
【0012】
具体的には、本発明者は、先ず、光硬化性インクの主成分である光硬化性樹脂の組成について検討した。上記した光硬化性インクの硬化には、光硬化性樹脂に含まれるモノマーの官能基数が影響しており、当該官能基数が増加すると紫外線照射時に硬化しやすくなる。一方で、かかるモノマーの官能基数はインクの粘度にも影響しており、当該官能基数が増加するとインクの粘度が高くなって吐出性が低下する。本発明者は、かかるトレードオフの関係を考慮し、一官能モノマーと二官能モノマーという比較的に官能基数の少ないモノマーを光硬化性樹脂の主成分とした上で、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率を好適な値に調整することができれば、光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂を得ることができると考え、種々の実験を行った。その結果、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率を25wt%〜75wt%に設定することによって、光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂が得られることを見出した。
【0013】
しかし、かかる組成の光硬化性樹脂を無機基材用インクジェットインクに実際に使用した場合でもインクの詰まりや掠れが生じることがあり、十分な吐出性が得られているとは言い難かった。本発明者は、かかる点についてさらに検討を重ね、無機基材用インクジェットインクに含まれる無機顔料は、光硬化性樹脂に好適に分散させることが難しく、無機顔料が凝集することによってインクの吐出性が低下していると考えた。そして、無機顔料を光硬化性樹脂に好適に分散させるために、光硬化性樹脂に添加される分散剤について検討した。
【0014】
かかる検討の結果、無機顔料を光硬化性樹脂に分散させる場合には、分散剤としてカチオン系分散剤を使用する必要があることを見出した。かかるカチオン系分散剤は、酸塩基反応によって無機顔料の表面に効率良く付着するため、無機顔料を光硬化性樹脂に好適に分散できるようになる。そして、かかるカチオン系分散剤の含有量(重量比率)を無機顔料の重量に応じて設定することを考えて種々の実験を行った。その結果、無機顔料の重量に対するカチオン系分散剤の重量比率を1.9wt%〜20wt%にすると、無機顔料の凝集による吐出性の低下を抑制し、掠れのない精密な画像を描画できることが分かった。
【0015】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクは、上述知見に基づいてなされたものである。
かかる無機基材用インクジェットインクは、光硬化性樹脂と光重合開始剤とを含んだ光硬化性インクであるため、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させることができる。そして、かかる無機基材用インクジェットインクでは、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率が適切に設定されており、光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂が用いられている。さらに、分散剤としてカチオン系分散剤が使用されており、当該カチオン系分散剤の無機顔料に対する重量比率が適切な値に設定されているため、無機顔料の凝集による吐出性の低下を好適に抑制することができる。
従って、ここで開示される無機基材用インクジェットインクによれば、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させ、所望の画像を精密に印刷することができる。
【0016】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、一官能モノマーおよび二官能モノマーの官能基がアクリル基である。
種々の光硬化性樹脂の中でも官能基がアクリル基であるモノマーは、無機顔料の分散性がよく、かつ、好適な光硬化性を有しているため、特に好ましく用いることができる。
【0017】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、官能基を除いた一官能モノマーの残基の炭素数が3〜11であることを特徴とする。
官能基を除いたモノマーの残基の炭素数が多くなると、インクの粘度が上昇して吐出性が低下する虞がある。本態様は、かかる知見に基づいたものであり、炭素数3〜11の残基を有する一官能モノマーを用いている。これによって、インク粘度の低下を抑制して好適な吐出性を発揮することができる。
【0018】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、官能基を除いた二官能モノマーの残基が炭素数6〜11の直鎖アルカンであることを特徴とする。
本態様についても上記した知見に基づいたものであり、炭素数6〜11の直鎖アルカンを残基として含む二官能モノマーを用いることによって、インク粘度の低下を抑制して好適な吐出性を発揮することができる。かかる残基として炭素数6〜11の直鎖アルカンを有する二官能モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートや1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが挙げられる。
【0019】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、光硬化性樹脂に含まれる樹脂材料の一次刺激性インデックスが5以下であることを特徴とする。
光硬化性樹脂に使用されるモノマーには、人体の皮膚に対する刺激性が強いものがあり、生産現場における作業者の健康面を考慮すると、このような皮膚刺激性が強い光硬化性樹脂の使用は避けた方が好ましい。本態様の無機基材用インクジェットインクでは、一次刺激性インデックス(P.I.I.)が5以下(好ましくは3以下)という低刺激性の樹脂材料を用いているため、作業者に掛かる負担を軽減させることができる。
なお、上記した一次刺激性インデックス(P.I.I.)とは皮膚感作性の程度を示す指標であり、小さいほど皮膚刺激性が弱くなる。かかる一次刺激性インデックスは、ISO 10993−10[Biological Evaluation of Medical Devices−Part10](2010)で求められる。
【0020】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、無機顔料がZr系複合金属酸化物であることを特徴とする。
かかるZr系複合金属酸化物は、高温耐久性が高く、焼成処理時の変色(又は消色)の発生を好適に防止することができるため、無機基材用インクジェットインクの顔料として特に好適に用いることができる。
【0021】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、無機顔料の微粒子側から累積100個数%に相当する粒径であるD100粒径が1μm以下である。
一般的なインクジェット装置の吐出口の径は20μm〜30μm(例えば25μm)程度であるため、D100粒径が1μm以下に微粒化された無機顔料を用いることによって、より好適な吐出性を発揮させることができる。
なお、上記したD100粒径は、動的光散乱法による粒度分布の測定結果おける無機顔料の微粒子側から累積100個数%に相当する粒径を指すものである。
【0022】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、カチオン系分散剤がアミン系分散剤であることを特徴とする。
かかるアミン系分散剤は、立体障害により無機顔料が凝集することを防止すると共に、当該無機顔料を安定化させることができる。また、無機顔料の粒子に同一の電荷を付与することができるため、この点においても、無機顔料の凝集を好適に防止することができる。
【0023】
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの好ましい一態様では、光重合開始剤がα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤であることを特徴とする。
かかるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、高い反応性を発揮してインクの硬化速度を向上させることができ、薄膜硬化性や表面硬化性に優れているため、特に好ましく用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0026】
1.無機基材用インクジェットインク
本実施形態に係るインクは、焼成を伴う無機基材に使用されるインクジェットインク(無機基材用インクジェットインク)である。かかる無機基材用インクジェットインクは、金属化合物を含む無機顔料と、光硬化性樹脂と、光重合開始剤と、分散剤とを含んでいる。以下、かかる無機基材用インクジェットインクに含まれる各材料について説明する。
【0027】
(1)無機顔料
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクに含まれる顔料は、主成分として金属化合物を含む無機顔料である。かかる無機顔料は、耐熱性に優れているため、無機基材上に付着させた後、800℃以上(例えば、1000℃〜1100℃)の焼成処理を行った際に変色(又は消色)することを防止することができる。
【0028】
かかる無機顔料の具体例としては、Zr、Ti、Pr、Cr、Sb、Ni、Co、Al、Cdからなる群のうち、少なくとも一つ以上の金属元素を含む複合金属化合物が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点からZrを主として含むZr系複合金属酸化物(例えば、ZrSiO
4)を特に好ましく用いることができる。例えば、一般的なインクジェット印刷では、シアン、イエロー、マゼンダの3色のインクを組み合わせて所望の色の画像を描画する。上記したZr系複合金属酸化物を無機顔料として使用する場合には、当該Zr系複合金属酸化物に所定の金属元素をドープすることによって、上記した3色の無機顔料を得ることができる。例えば、シアンのZr系複合金属酸化物としてはZrSiO
4−V、イエローのZr系複合金属酸化物としてはZrSiO
4−Pr、マゼンダのZr系複合金属酸化物としてはZrSiO
4−Feが挙げられる。また、インクジェット装置によっては、上記した3色以外にブラックのインクが用いられることがある。かかるブラックのインクに用いられる無機顔料としては、例えば、FeCr系の複合金属化合物が好ましく用いられる。
なお、本実施形態における無機顔料には、従来から使用されている無機顔料を特に制限なく使用することができ、上記したZr系複合金属酸化物に限定されない。
【0029】
また、インクの総重量に対する無機顔料の重量比率(無機顔料の含有量)が多くなると、無機顔料同士が凝集してインクの粘度が上昇しやすくなる一方で、少なくなるとインクの色が薄くなって所望の画像を描画することが難しくなる。かかる観点から、無機顔料の含有量は、20wt%以上(好ましくは25wt%以上、例えば30wt%以上)、かつ、50wt%以下(好ましくは45wt%以下、例えば40wt%以下)の範囲内に設定すると好ましい。
【0030】
また、無機顔料の粒子径は、後述するインクジェット装置の吐出口の直径を考慮して適宜調整すると好ましい。無機顔料の粒子径が大きすぎると無機顔料が吐出口に詰まってインクの吐出性が低下する虞がある。詳しくは後述するが、一般的なインクジェット装置の吐出口の直径は15μm〜60μm(例えば25μm)程度であるため、粒径が小さい側から累積100個数%に相当するD100粒径が5μm以下(好ましくは1μm以下)となるように無機顔料を微粒子化すると好ましい。なお、上記したD100粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定に基づいて測定される値である。
【0031】
(2)光硬化性樹脂
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクは、光硬化性樹脂と後述の光重合開始剤とを備えた光硬化性インクである。光硬化性樹脂は、紫外線によって活性化した光重合開始剤によって重合(又は架橋)して硬化する樹脂材料である。かかる光硬化性樹脂を含む光硬化性インクを使用することによって、吸水性に乏しい無機基材を対象とした場合であっても、十分な厚みのインクを滲むことなく定着させることができる。
【0032】
そして、本実施形態における光硬化性樹脂では、紫外線照射時の光硬化性とインクジェット装置の吐出口からの吐出性とを好適に両立させるために、一官能モノマーと二官能モノマーとが所定の割合で含まれている。以下、各モノマーについて具体的に説明する。
【0033】
(a)一官能モノマー
一官能モノマーは、一個の官能基と、当該官能基を除く残基とから構成されており、当該官能基が重合することによって光硬化性樹脂が硬化する。一官能モノマーの残基の構造は、特に限定されず、直鎖構造であってもよいし、環状構造であってもよい。但し、一官能モノマーの残基の炭素数が増加するに伴ってインクの粘度が高くなるため、吐出口からの吐出性を考慮して一官能モノマーの残基の炭素数を決定すると好ましい。例えば、直径25μmの吐出口からインクを好適に吐出させるためには、一官能モノマーの残基の炭素数を3〜11にすると好ましい。
また、無機顔料の分散性や光硬化性を考慮すると、官能基としてアクリル基を有する一官能モノマーが好ましく用いられる。かかるアクリル基を有する一官能モノマーの具体例としては、イソボルニルアクリレート(下記式(1)参照)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(下記式(2)参照)、メトキシエチルアクリレート(下記式(3)参照)、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、(2ーメチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。なお、本実施形態における一官能モノマーには、上記したアクリル基を有するモノマー以外の一官能モノマー(例えば、エポキシモノマー)を用いることもできる。
【0037】
(b)二官能モノマー
二官能モノマーは、二個の官能基と、当該官能基を除く残基とから構成されており、上記した一官能モノマーと同様に、官能基が重合することによって硬化する。また、二官能モノマーの残基の構造についても、特に限定されず、直鎖構造であってもよいし、環状構造であってもよい。なお、吐出口からの吐出性を考慮すると、二官能モノマーの残基は、炭素数が6〜11(例えば炭素数9)の直鎖アルカンであると好ましい。このような残基を有する二官能モノマーを用いることによって、好適な吐出性を有するインクを提供することができる。
また、二官能モノマーについても、無機顔料の分散性や光硬化性の観点から、官能基としてアクリル基を有する二官能モノマーが好ましく用いられる。かかるアクリル基を有した二官能モノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(下記式(4)参照)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(下記式(5)参照)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(下記式(6)参照)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAEO3.8モル付加物ジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物などが挙げられる。
なお、上記したアクリル基を有する二官能モノマーの中でも、残基の炭素数が12を超えるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートは、インク粘度が上昇し易く吐出性が低下し易い。一方、炭素数が6〜11の直鎖アルカンを残基として有している1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートは、特に優れた吐出性を有し、精密な画像を描画する場合であってもインクの掠れを好適に防止することができるため、特に好ましく用いる事ができる。
【0041】
(c)他の光硬化性樹脂
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの光硬化性樹脂には、上記した一官能モノマーと二官能モノマー以外の樹脂材料(例えば、三官能以上のモノマー、オリゴマーなど)が含まれていてもよい。但し、これらの三官能以上のモノマーやオリゴマーが多量に含まれていると、光硬化性樹脂の粘度が大きく上昇して吐出性を低下させる虞がある。このため、三官能以上のモノマーやオリゴマーを含む光硬化性樹脂を用いる場合には、光硬化性樹脂の総重量に対する三官能以上のモノマーとオリゴマーの合計重量を少量(例えば20wt%以下、好ましくは10wt%以下)にすると好ましい。
【0042】
また、光硬化性樹脂に使用されるモノマーには、人体の皮膚に対する刺激性が強いものがあり、生産現場における作業者の健康面を考慮すると、このような皮膚刺激性が強いモノマーの使用は避けた方が好ましい。このため、光硬化性樹脂に含まれる各々の樹脂材料には、一次刺激性インデックス(P.I.I.)が5以下(好ましくは3以下、例えば2以下)の樹脂材料を好ましく用いることができる。これによって、作業者に掛かる負担を好適に軽減させることができる。なお、上記した一次刺激性インデックスとは皮膚感作性の程度を示す指標であり、小さいほど皮膚刺激性が弱くなる。かかる一次刺激性インデックスは、ISO 10993−10[Biological Evaluation of Medical Devices−Part10](2010)で求められる。
【0043】
(3)光重合開始剤
光重合開始剤は、従来から使用されている光重合開始剤を適宜選択し得る。かかる光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤やアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤などのラジカル系光重合開始剤が挙げられる。かかるアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなど)が好ましく用いられる。また、アルキルフェノン系光重合開始剤の他の例として、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなど)を用いることができる。
上記した種々の光重合開始剤の中でも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(下記式(7)参照)などのα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、高い反応性を発揮してインクの硬化速度を向上させることができ、薄膜硬化性や表面硬化性に優れているため、特に好ましく用いることができる。
【0045】
(4)分散剤
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、分散剤としてカチオン系分散剤が用いられる。かかるカチオン系分散剤は、酸塩基反応によって無機顔料の表面に効率良く付着するため、リン酸系分散剤などの他の分散剤と異なり、上記した無機顔料の凝集を抑制して好適に分散させることができる。かかるカチオン系分散剤の一例としてアミン系分散剤が挙げられる。かかるアミン系分散剤は、立体障害により無機顔料が凝集することを防止すると共に、当該無機顔料を安定化させることができる。また、無機顔料の粒子に同一の電荷を付与することができるため、この点においても、無機顔料の凝集を好適に防止することができる。このため、インクの粘度を好適に低下させて吐出性を大きく向上させることができる。かかるアミン系分散剤の例としては、脂肪酸アミン系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤などが挙げられ、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYK−168など好ましく用いることができる。
【0046】
(5)その他の添加物
また、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクには、上記した材料以外に種々の添加物を添加することができる。かかる添加物としては、例えば、焼成処理において無機顔料と無機基材とを付着させるためのガラスバインダや粘度調整用に微量添加される有機溶媒などが挙げられる。
【0047】
(6)インク組成
無機基材用インクジェットインクは、上記した各材料を所定の割合で混合することによって調製される。このとき、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、光硬化性樹脂の総重量に対する二官能モノマーの重量比率と、無機顔料の重量に対するカチオン系分散剤の重量比率とが所定の範囲内に設定されている。これによって、無機基材上に適切に定着させることができると共に、好適な吐出性を有するインクを得ることができる。以下、各々の重量比率について説明する。
【0048】
(a)二官能モノマーの重量比率
一般に、官能基数が多いモノマーが光硬化性樹脂に多く含まれていると、インクの光硬化性が向上して当該インクの滲みを好適に防止することができる一方で、インクの吐出性が低下して画像を精密に描画することが難しくなる。
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、上記したトレードオフの関係を有する光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂を得るために、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率が所定の範囲に設定されている。
具体的には、本実施形態に係るインクでは、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率の下限値が25wt%以上(好ましくは30wt%以上、例えば45wt%以上)に設定され、上限値が75wt%以下(好ましくは70wt%以下、例えば60wt%以下)に設定される。これによって、光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂を得ることができる。
【0049】
(2)カチオン系分散剤の重量比
また、無機基材用インクジェットインクでは、上記したように、焼成処理において変色(又は消色)が生じないように無機顔料が使用されているが、かかる無機顔料は、光硬化性樹脂中に好適に分散させることが難しく、当該無機顔料が凝集することによって吐出性が低下する虞がある。
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、上記した無機顔料の凝集による吐出性の低下を抑制するために、無機顔料の重量に対して所定の割合でカチオン系分散剤が添加されている。
具体的には、本実施形態に係るインクでは、無機顔料の重量に対するカチオン系分散剤の重量比率の下限値が1.9wt%以上(好ましくは3wt%以上、例えば10wt%以上)に設定され、上限値が20wt%以下(好ましくは18wt%以下、例えば15wt%以下)に設定される。これによって、無機顔料の凝集による吐出性の低下を抑制し、掠れのない精密な画像を描画することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクは、光硬化性樹脂と光重合開始剤とを含んだ光硬化性インクであるため、十分な厚みで滲むことなく無機基材上に定着させることができる。そして、かかる無機基材用インクジェットインクに用いられる光硬化性樹脂は、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率が適切に設定されているため光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立している。さらに、分散剤としてカチオン系分散剤が使用されており、当該カチオン系分散剤の無機顔料に対する重量比率が適切な値に設定されているため、無機顔料の凝集による吐出性の低下を好適に抑制することができる。従って、本実施形態によれば、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させ、所望の画像を精密に印刷することができる。
【0051】
2.無機基材用インクジェットインクの製造方法
次に、上記した実施形態に係る無機基材用インクジェットインクを製造する方法について説明する。
図1は無機基材用インクジェットインクの製造に用いられる撹拌粉砕機を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明は、ここで開示される無機基材用インクジェットインクを限定することを意図したものではない。
【0052】
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクを製造するに際には、先ず、上述した各々の材料を秤量して混合し、当該インクの前駆物質であるスラリーを調製する。
次に、
図1に示すような撹拌粉砕機100を用いて、スラリーの撹拌と当該スラリー中の無機顔料の粉砕を行う。具体的には、上記したスラリーに粉砕用ビーズ(例えば、直径0.5mmのジルコニアビーズ)を添加した後に、供給口110から撹拌容器120内にスラリーを供給する。この撹拌容器120内には、複数の撹拌羽132を有したシャフト134が収容されている。かかるシャフト134の一端はモータ(図示省略)に取り付けられており、当該モータを稼働させてシャフト134を回転させることによって複数の撹拌羽132でスラリーを送液方向Aの下流側に送り出しながら撹拌する。このとき、スラリーに添加されている粉砕用ビーズによって無機顔料が粉砕され、微粒化した無機顔料の表面に分散剤が付着する。これによって、各々の無機顔料が凝集することを防止して、光硬化性樹脂中に好適に分散させることができる。
【0053】
そして、送液方向Aの下流側まで送り出されたスラリーは、フィルター140を通過する。これによって、粉砕用ビーズや微粒化されなかった無機顔料がフィルター140によって捕集され、無機顔料が微粒化された状態で好適に分散された無機基材用インクジェットインクが排出口150から排出される。
【0054】
3.無機基材用インクジェットインクを用いた印刷
次に、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクを用いて、無機基材に画像を描画する手順を簡単に説明する。
図2はインクジェット装置の一例を模式的に示す全体図である。
図3は
図2中のインクジェット装置のインクジェットヘッドを模式的に示す断面図である。
【0055】
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクは、
図2に示すインクジェット装置1のインクジェットヘッド10内に貯蔵される。かかるインクジェット装置1は、4個のインクジェットヘッド10を備えており、各々のインクジェットヘッド10には、ブラック(K)、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)の異なる4色の無機基材用インクジェットインクが貯蔵される。そして、各々のインクジェットヘッド10は、印刷カートリッジ40の内部に収容されている。かかる印刷カートリッジ40は、ガイド軸20に挿通されており、当該ガイド軸20の軸方向Xに沿って往復動するように構成されている。また、図示は省略するが、このインクジェット装置1は、ガイド軸20を軸方向の垂直方向Yに移動させる移動手段を備えている。これによって、無機基材Wの所望の位置に向けてインクジェットヘッド10からインクを吐出することができる。
【0056】
また、
図2中のインクジェットヘッド10には、例えば、
図3に示すようなピエゾ型のインクジェットヘッドが用いられる。かかるピエゾ型のインクジェットヘッド10には、ケース12内にインクを貯蔵する貯蔵部13が設けられており、当該貯蔵部13が送液経路15を介して吐出部16と連通している。この吐出部16には、ケース12外に開放された吐出口17が設けられていると共に、当該吐出口17に対向するようにピエゾ素子18が配置されている。そして、かかるインクジェットヘッド10では、ピエゾ素子18を振動させることによって、吐出部16内のインクを吐出口17から無機基材W(
図2参照)に向けて吐出する。
このとき、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、好適な吐出性を発揮することができるように、二官能モノマーの重量比率とカチオン系分散剤の重量比率とが設定されているため、インクの掠れや吐出口17の詰まりなどを生じさせることなく、無機基材Wに精密な画像を描画することができる。
【0057】
そして、
図2に示すインクジェット装置1のガイド軸20には、UV照射手段30が取り付けられている。かかるUV照射手段30は、印刷カートリッジ40に隣接するように配置されており、印刷カートリッジ40の往復動に伴って移動し、無機基材Wに紫外線を照射する。これによって、無機基材Wに付着させた直後にインクを硬化させることができるため、吸水性に乏しい無機基材Wを対象とした場合であっても、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材W上に定着させることができる。
【0058】
そして、所望の画像が描画された無機基材Wは、800℃以上(例えば1000℃〜1100℃)で焼成処理が施される。このとき、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、耐熱性に優れた無機顔料が顔料として使用されているため、かかる焼成処理によって顔料が変色(又は消色)することを防止できる。
【0059】
なお、上述した印刷方法に関する説明では、ここで開示される無機基材用インクジェットインクの用途を制限するものではない。
具体的には、上記の説明では、印刷方法の一例として、無機基材の表面に直接インクを付着させて画像を描画する方法を挙げている。しかし、ここで開示される無機基材用インクジェットインクを用いて画像を描画するに際しては、必ずしも無機基材の表面に直接吐出しなくてもよい。例えば、所定の転写紙にインクを付着させて画像を描画した後に、当該転写紙に描画された画像を無機基材に転写してもよい。このように、転写紙を使用して無機基材を加飾する場合でも、ここで開示されるインクを用いることによって、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させ、所望の画像を精密に印刷することができる。
【0060】
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、かかる試験例は本発明を限定することを意図したものではない。
【0061】
本試験例においては、組成の異なる28種類のインクジェットインク(試験例1〜試験例28)を作製し、各試験例のインクジェットインクを用いて、適切な模様を無機基材に描画できるか否かを調べた。以下、具体的に説明する。
【0062】
1.各試験例
本試験例においては、所定の材料を混合したスラリーに粉砕用ビーズ(直径0.5mmのジルコニアビーズ)を添加した後、
図1に示す撹拌粉砕機100を用いて撹拌・粉砕することによって試験例1〜試験例28のインクジェットインクを作製した。以下、各試験例のインクジェットインクの材料を説明する。
【0063】
(1)光硬化性樹脂
表1に示すように、試験例1〜試験例3においては、一官能モノマーのみからなる光硬化性樹脂を使用した。
具体的には、光硬化性樹脂(一官能モノマー)として、試験例1ではイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:IBXA)を使用し、試験例2ではテトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:THFA)を使用し、試験例3ではメトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:2−MTA)を使用した。また、試験例1〜試験例3では、インクジェットインクの全重量に対する一官能モノマーの重量比率を60.7%に設定した。
【0064】
一方、試験例4〜試験例28においては、一官能モノマーと二官能モノマーとを含む光硬化性樹脂を使用した。
具体的には、試験例4〜試験例28では、一官能モノマーとしてイソボルニルアクリレート(IBXA)を使用した。そして、試験例4〜試験例13、試験例16、および試験例18〜試験例28では、二官能モノマーとして1,9−ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:1,9−NDDA)を使用した。また、試験例14および試験例15では、二官能モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製:A−DCP)を使用し、試験例17では1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:HDDA)を使用した。
なお、試験例4〜試験例28では、インクジェットインクの全材料の重量に対する各モノマーの重量比率を表1に示すように設定した。そして、試験例4〜試験例28においては、光硬化性樹脂の全重量(一官能モノマーと二官能モノマーの合計重量)に対する二官能モノマーの重量比率(二官能モノマー/光硬化性樹脂)を計算した。計算結果を表1および
図4に示す。
【0065】
(2)無機顔料
表1に示すように、試験例1〜試験例22においては、ZrSiO
4−Prを含むイエローの無機顔料を使用した。また、試験例23〜試験例27においては、ZrSiO
4−Vを含むシアンの無機顔料を使用し、試験例28においては、ZrSiO
4−Feを含むマゼンダの無機顔料を使用した。そして、インクジェットインクの全重量に対する無機顔料の重量比率を表1に示すように設定した。
【0066】
(3)分散剤
表1に示すように、本試験では、試験例6を除く全ての試験例において、アミン系分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製:DISPERBYK−168)を使用した。一方、試験例6では、直鎖リン酸系の分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製:DISPERBYK−111)を使用した。そして、インクジェットインクの全重量に対する無機顔料の重量比率を表1に示すように設定した。
なお、各々の試験例において無機顔料の重量に対する分散剤の重量比率(二官能モノマー/光硬化性樹脂)を計算した。計算結果を表1および
図4に示す。
【0067】
(4)光重合開始剤
本試験例においては、光重合開始剤として、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤である2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(豊通ケミプラス株式会社製:IIRGACURE907)を使用した。そして、インクジェットインクの全重量に対する光重合開始剤の重量比率を表1に示すように設定した。
【0068】
2.評価試験
上記した各試験例のインクを、インクジェット装置(富士フィルム株式会社製:マテリアルプリンター DMP−2831)を使用し、主成分が骨灰、カオリン、長石などからなる陶磁器の表面に模様を描画した。試験例5のインクを用いて模様を印刷した陶磁器の写真を
図5に示し、試験例16インクを用いて模様を印刷した陶磁器の写真を
図6に示す。
そして、陶磁器に印刷された模様について適切に描画されているか否かを目視で評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1中の「吐出不可」は、インクジェットヘッドからインクが吐出されず、模様が印刷できなかった場合を示しており、「掠れ」は
図5中のPに示すように模様に掠れが生じた場合を指す。そして、「良好」は、一時間継続して印刷しても
図6に示すように模様の掠れが生じなかった場合を指す。
【0070】
表1および
図6に示すように、試験例16〜試験例28のインクジェットインクを用いた場合、吐出口の詰まりを防止する事ができるとともに、模様の掠れを抑制することができたことが確認された。
このことから、無機基材を加飾対象とする無機基材用インクジェットインクを作製する場合には、試験例16〜試験例28のように、二官能モノマーの重量比率とカチオン系分散剤の重量比率とを
図4中の点線で囲まれた範囲内(すなわち、二官能モノマーの重量比率が25wt%〜75wt%、カチオン系分散剤の重量比率が1.9wt%〜20wt%の範囲内)に設定すればよいことが分かった。
【0071】
さらに、残基の炭素数が12であるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A−DCP)を使用した試験例14,15では、インク粘度が上昇して適切な吐出を行うことが困難になった。一方、1,9−ノナンジオールジアクリレート(1,9−NDDA)を使用した試験例16および試験例18〜試験例28と、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を使用した試験例17のように、炭素数6〜11の直鎖アルカンを残基として有した二官能モノマーを用いた場合、好適な吐出性を発揮して、模様の細部に掠れがない非常に精密な模様を吐出口の詰まりなく描画できることが確認された。
【0072】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。