(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンクリート層と該コンクリート層を挟む外側断熱層及び内側断熱層とを有する外壁と、該外壁よりも屋内側に位置し該外壁と隣り合う位置に設けられた床と、を備えた複数階建ての建物の建設方法であって、
前記建物における二階以上の階の前記床を構成するスラブを設置し、
前記外側断熱層及び前記内側断熱層を備えるとともに前記外側断熱層と前記内側断熱層との間に前記コンクリート層を形成するためのスペースが設けられた外壁基材を、前記スラブの設置位置と隣り合うように配置し、
前記外壁基材の配置後に前記スペース内へコンクリートを打設し、
前記スペース内のコンクリートが硬化することで形成された前記コンクリート層が前記外壁基材の前記外側断熱層及び前記内側断熱層と一体化して前記外壁を構築し、
前記外壁基材を配置する際には、前記外壁基材の上端が予め設定された長さ以上、前記スラブの上面よりも上方に位置するように前記外壁基材を配置することを特徴とする複数階建ての建物の建設方法。
前記外壁基材を前記スラブの設置位置と隣り合うように配置する際には、前記外壁において外側で露出する化粧面材を前記外側断熱層よりも外側に備えた前記外壁基材を配置し、
前記スペース内のコンクリートが硬化することで前記コンクリート層が形成されると、該コンクリート層は、前記外側断熱層、前記内側断熱層及び前記化粧面材とともに前記外壁を構築することを特徴とする請求項1に記載の複数階建ての建物の建設方法。
前記外壁基材を前記スラブの設置位置と隣り合うように配置する際には、前記内側断熱層が位置する側とは反対側で前記外側断熱層と隣接している外側フレームと、前記外側断熱層が位置する側とは反対側で前記内側断熱層と隣接している内側フレームと、前記スペースの厚みを保持するためのセパレータと、を備えた前記外壁基材を配置し、
前記セパレータのうち、前記内側断熱層を貫いている端部が前記内側フレームに留められた状態で前記スペース内にコンクリートを打設することを特徴とする請求項1又は2に記載の複数階建ての建物の建設方法。
前記スペース内にコンクリートを打設する際には、前記スペースの上端開口を通じてコンクリートを打設することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複数階建ての建物の建設方法。
前記外壁基材を配置する際には、前記外壁基材の上端が800mm以上、前記スラブの上面よりも上方に位置するように前記外壁基材を配置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の複数階建ての建物の建設方法。
前記スペース内にコンクリートを打設する際には、前記スラブの端を前記スペース内に臨ませ、前記コンクリート層が前記スラブと連結するようにコンクリートを打設することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の複数階建ての建物の建設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数階建ての建物の建設工事では、各階の床を構築し、各階の床と隣り合う位置に外壁を構築する。外壁を構築するにあたり、特許文献1のように型枠兼用の外壁基材(特許文献1の「建材パネル」に相当する部材)を用いれば、上述のようにコンクリート打設後の型枠解体作業が不要となる。ここで、外壁基材を配置する際には、床(厳密には床を構築するスラブ)との関係で好適な位置に配置するのが好ましく、特に、安全上、適切な位置に外壁基材を配置するのが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、型枠兼用の外壁基材を用いて外壁を構築する複数階建ての建物の建設方法として、外壁基材が床のスラブとの関係で適切な位置に配置されるような建設方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の複数階建ての建物の建設方法によれば、コンクリート層と該コンクリート層を挟む外側断熱層及び内側断熱層とを有する外壁と、該外壁よりも屋内側に位置し該外壁と隣り合う位置に設けられた床と、を備えた複数階建ての建物の建設方法であって、前記建物における二階以上の階の前記床を構成するスラブを設置し、前記外側断熱層及び前記内側断熱層を備えるとともに前記外側断熱層と前記内側断熱層との間に前記コンクリート層を形成するためのスペースが設けられた外壁基材を、前記スラブの設置位置と隣り合うように配置し、前記外壁基材の配置後に前記スペース内へコンクリートを打設し、前記スペース内のコンクリートが硬化することで形成された前記コンクリート層が前記外壁基材の前記外側断熱層及び前記内側断熱層と一体化して前記外壁を構築し、前記外壁基材を配置する際には、前記外壁基材の上端が予め設定された長さ以上、前記スラブの上面よりも上方に位置するように前記外壁基材を配置することにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の複数階建ての建物の建設方法では、型枠として兼用される外壁基材を、床のスラブと隣り合う位置に配置する。この際、外壁基材の上端が予め設定された長さ以上、スラブの上面よりも上方に位置するように外壁基材を配置する。これにより、床のスラブ上で作業を行う作業者がスラブの端位置から落下してしまうのを外壁基材によって防止することが可能となる。すなわち、外壁基材のうち、スラブの上面よりも上方に位置する部分が転落防止措置として機能するようになる。
【0009】
また、上述した複数階建ての建物の建設方法において、前記外壁基材を前記スラブの設置位置と隣り合うように配置する際には、前記外壁において外側で露出する化粧面材を前記外側断熱層よりも外側に備えた前記外壁基材を配置し、前記スペース内のコンクリートが硬化することで前記コンクリート層が形成されると、該コンクリート層は、前記外側断熱層、前記内側断熱層及び前記化粧面材とともに前記外壁を構築すると、好適である。
上記の方法では、化粧面材を備えた外壁基材をコンクリート打設用の型枠として用いる。このため、コンクリートを打設した後に化粧面材を取り付ける手間を要さない。また、化粧面材を取り付けるための足場を設置する必要がない。この結果、外壁基材の外側で作業空間を確保し難い状況でも、化粧面材を備えた外壁を容易に構築することが可能となる。
【0010】
また、上述した複数階建ての建物の建設方法において、前記外壁基材を前記スラブの設置位置と隣り合うように配置する際には、前記内側断熱層が位置する側とは反対側で前記外側断熱層と隣接している外側フレームと、前記外側断熱層が位置する側とは反対側で前記内側断熱層と隣接している内側フレームと、前記スペースの厚みを保持するためのセパレータと、を備えた前記外壁基材を配置し、前記セパレータのうち、前記内側断熱層を貫いている端部が前記内側フレームに留められた状態で前記スペース内にコンクリートを打設すると、より好適である。
上記の方法では、外壁基材において外側断熱層と内側断熱層との間の間隔をセパレータによって保持した状態で外壁基材が配置される。これにより、外壁基材内のスペースの厚みを保持しながら当該スペースにコンクリートを打設することが可能となる。この結果、外壁を構築する際に、規定の厚みを有するコンクリート層を適切に形成することが可能となる。
【0011】
また、上述した複数階建ての建物の建設方法において、前記スペース内にコンクリートを打設する際には、前記スペースの上端開口を通じてコンクリートを打設すると、さらに好適である。
上記の方法では、外壁基材の配置後に外壁基材内のスペースにコンクリートを打設する際、スペースの上端開口を通じて打設する。これにより、スペース内に簡単且つ適切にコンクリートを打設することが可能となる。
【0012】
また、上述した複数階建ての建物の建設方法において、二階以上である下方階の前記床を構成する前記スラブを設置し、前記下方階の前記床を構成する前記スラブの設置位置と隣り合うように前記外壁基材を配置し、前記下方階の前記床を構成する前記スラブの設置位置と隣り合うように配置された前記外壁基材の、前記スペース内にコンクリートを打設し、前記下方階の前記床を構成する前記スラブの設置位置と隣り合うように配置された前記外壁基材の、前記スペース内に打設したコンクリートが硬化して前記コンクリート層が形成された後、前記下方階の直上階である上方階の前記床を構成する前記スラブを設置し、前記上方階の前記床を構成する前記スラブの設置位置と隣り合うように前記外壁基材を配置し、前記上方階の前記床を構成する前記スラブの設置位置と隣り合うように配置された前記外壁基材の、前記スペース内にコンクリートを打設すると、より一層好適である。
上記の方法では、下方階の床を構成するスラブを設置し、そのスラブと隣り合う位置に外壁基材を配置し、当該外壁基材内のスペースにコンクリートを打設してコンクリート層を形成する。その後、下方階の直上に位置する上方階の床を構成するスラブを設置し、そのスラブと隣り合う位置に外壁基材を配置し、当該外壁基材内のスペースにコンクリートを打設してコンクリート層を形成する。以上のように階毎にスラブの設置、外壁基材の配置及びコンクリートの打設を繰り返し行うことにより、三階以上の階を有する建物を比較的簡単に建設することが可能となる。
【0013】
また、上述した複数階建ての建物の建設方法において、前記外壁基材を配置する際には、前記外壁基材の上端が800mm以上、前記スラブの上面よりも上方に位置するように前記外壁基材を配置すると、尚一層好適である。
上記の方法によれば、外壁基材の上端が800mm以上、スラブの上面よりも上方に位置するように外壁基材を配置する。すなわち、外壁基材は、スラブの上面から800mm以上、上方に突出した状態で配置される。これにより、外壁基材のうち、スラブの上面から突出した部分を法規上の「手すり」として取り扱うことが可能となる。そして、「手すり」としての外壁基材により、床のスラブ上で作業を行う作業者がスラブの端位置から落下してしまうのを効果的に防止することが可能となる。
【0014】
また、上述した複数階建ての建物の建設方法において、前記スペース内にコンクリートを打設する際には、前記スラブの端を前記スペース内に臨ませ、前記コンクリート層が前記スラブと連結するようにコンクリートを打設すると、益々好適である。
上記の方法によれば、スラブの端が外壁基材中のスペースに臨んだ状態でスペース内にコンクリートを打設することにより、外壁中のコンクリート層が床(スラブ)と連結させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の複数階建ての建物の建設方法によれば、型枠として兼用される外壁基材を、床のスラブと隣り合う位置に配置する際に、外壁基材の上端が予め設定された長さ以上、スラブの上面よりも上方に位置するように配置する。これにより、床のスラブ上で作業を行う作業者がスラブの端位置から落下してしまうのを外壁基材によって防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る複数階建ての建物の建設方法について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、当然ながら本発明にはその等価物が含まれ得る。
【0018】
なお、以降の説明中、各建材の位置や姿勢(取り付け姿勢)については、特に断る場合を除き、完成した建物における位置や姿勢を説明することとする。
【0019】
本実施形態に係る建設方法によって建設する複数階建ての建物(以下、建物B)の構造について説明する。建物Bは、複数階建て(例えば五階建て)のRC構造の建物であり、
図1A及び
図1Bに示すように、建物Bの外表面を構成する外壁2と、各階の床3とを有する。
図1A及び
図1Bは、建物Bの外観を示しており、
図1Aが建物Bの正面図であり、
図1Bが建物Bの背面図である。
【0020】
床3は、外壁2よりも屋内側に設置され、建物Bにおいて外壁2と隣り合う位置で水平に設けられている。なお、床3は、スラブ30(コンクリートスラブ)の上に不図示のフローリング材を載置することで構成されている。
【0021】
外壁2は、
図2に示すように積層構造の壁体である。具体的に説明すると、同図に示すように、外壁2の厚み方向の中間部分には、コンクリートからなる層(コンクリート層14)と、その層を挟む2つの断熱層(以下、外側断熱層13及び内側断熱層15)とが存在する。
図2は、外壁2の縦断面図であり、
図1AのX−X断面を示す図である。
【0022】
ここで、外壁2は、建物Bの建設過程で構築されることになっている。詳しく説明すると、外側断熱層13及び内側断熱層15の間のスペースにコンクリートを打設し、打設したコンクリートが硬化してコンクリート層14が形成されることで外壁2が構築される。
【0023】
また、外壁2のうち、最も屋外側に位置して露出する部分は化粧面材11によって構成されている。化粧面材11は、外壁2において外側断熱層13よりも外側に配置されている。本実施形態に係る化粧面材11は、窯業系サイディングからなる。ただし、化粧面材11を構成する材料については、特に限定されるものではない。
【0024】
外壁2について
図2を参照しながら更に詳しく説明すると、外壁2は、屋外側から化粧面材11、外側フレーム12、外側断熱層13、コンクリート層14、内側断熱層15及び内側フレーム16を有する。
【0025】
外側フレーム12は、屋外側(換言すると、外側断熱層13から見て内側断熱層15が位置する側とは反対側)で外側断熱層13と隣接している枠体であり、本実施形態ではアルミ製の角パイプからなる。ただし、外側フレーム12の材質については、金属に限定されず、樹脂材料や木材であってもよい。また、外側フレーム12は、化粧面材11の下地材として兼用されており、外側フレーム12の外側表面には留付金具19aを介して化粧面材11が固定されている。
【0026】
なお、外側フレーム12をなす角パイプは、化粧面材11と外側断熱層13との間の空間において一定間隔毎に配置されている。一方、化粧面材11と外側断熱層13との間の空間のうち、上記の角パイプが配置されていない領域は、外壁2の通気層19を形成している。通気層19は、外壁2内に入り込んだ空気を排出するための空間(隙間)である。
【0027】
外側断熱層13及び内側断熱層15は、若干の厚みを有しており、本実施形態ではスタイロフォームによって構成されている。ただし、外側断熱層13及び内側断熱層15の材質については、特に限定されるものではない。
【0028】
内側フレーム16は、屋内側(換言すると、内側断熱層15から見て外側断熱層13が位置する側とは反対側)で内側断熱層15と隣接している枠体である。より具体的に説明すると、鉛直方向に延びた縦端太16aと、水平方向に延びた横端太16bとを格子状に組み付けることで内側フレーム16が構成されている。
【0029】
以上までに説明した外壁2及び床3を有する建物Bは、一階から上方階に向かって建設される。より詳しく説明すると、建物Bの建設工程では、
図3に示すように、下方階の床3を構成するスラブ30を設置してから当該スラブ30と隣り合う位置に外壁2を構築する。その後、直上の階の床を構成するスラブ30を設置し、当該スラブ30と隣り合う位置に外壁2を構築する。このようにスラブ30の設置及び外壁2の構築を建物Bの階数に応じた回数だけ繰り返すことで建物Bが建設される。
図3は、建物Bの建設工事中の外壁2や床3に関する作業の流れを示す図である。
【0030】
また、外壁2を構築する際には、前述したように、外壁2のコンクリート層14を形成するためにコンクリートを打設する。この際、外壁2の基材をなす大型パネル部材(以下、外壁基材20)を配置し、この外壁基材20をコンクリート打設用の型枠として用いる。外壁基材20は、
図4に示すように、化粧面材11、外側フレーム12、外側断熱層13、内側断熱層15及び内側フレーム16を有する。つまり、コンクリート層14を除く外壁2中の各層は、ユニット化されて外壁基材20を構成している。
図4は、本実施形態に係る建設方法にて用いられる外壁基材20の平面図である。
【0031】
ここで、外壁基材20において外側断熱層13と内側断熱層15との間には、コンクリート層14を形成するためのスペースSが設けられている。つまり、このスペースS内にコンクリートが打設され、当該スペースS内のコンクリートが硬化することでコンクリート層14が形成される。そして、コンクリート層14が外壁基材20の各層(化粧面材11、外側フレーム12、外側断熱層13、内側断熱層15及び内側フレーム16)と一体化することで外壁2が構築される。
【0032】
そして、外壁2が構築された後、外壁基材20は、外壁2の一部としてそのまま残置される。すなわち、本実施形態では、外壁2中のコンクリート層14を形成するために用いた型枠を外壁2の一部として利用するので当該型枠を解体する必要がない。この結果、型枠解体用の足場等が不要となり、解体作業の手間を省くことが可能となる。なお、本実施形態に係る外壁基材20を用いて外壁2を構築することは、外壁2よりも外側に足場を設置する必要がなくなるので、例えば、隣接する建物との間隔が比較的小さくなるような場所(狭小地)に建物Bを建設する場合において特に有効となる。
【0033】
また、
図4には、外壁基材20には、スペースSの厚みを保持するためのセパレータ17が設けられている。このセパレータ17は、一般的な型枠用のセパレータと略同様の構成となっている。具体的に説明すると、セパレータ17は、スペースS内に配置されて外側断熱層13や内側断熱層15と当接する一対のコーン17aと、各コーン17aを貫通してコーン17a間を連結する連結軸17bと、を有する。
【0034】
連結軸17bの両端部のうち、外側断熱層13と当接しているコーン17aを貫く一端部は、
図4に示すように外側断熱層13及び外側フレーム12を貫通している。また、連結軸17bの一端部の先端には、矩形プレート状の留付金具19aが固定されている。留付金具19aは、外側フレーム12の屋外側端面によって係止されている。これにより、連結軸17bの一端部が抜けてセパレータ17が外れてしまうのを回避することが可能となる。
【0035】
連結軸17bのうち、内側断熱層15と当接しているコーン17aを貫くもう一方の端部は、
図4に示すように内側断熱層15及び内側フレーム16を貫通している。そして、連結軸17bのうち、内側断熱層15及び内側フレーム16を貫通した端部は、所定の留め具18(具体的には、フォームタイ(登録商標))によって内側フレーム16に留められている。
【0036】
以上のセパレータ17が外壁基材20に設けられていることで、外壁基材20のスペースS内にコンクリートを打設してコンクリート層14を形成する際に、コンクリート層14の厚みが規定の厚みとなるようにコンクリート層14を形成することが可能となる。
【0037】
以上までに説明してきた外壁基材20は、外壁2を構築する上で所定位置(外壁2が構築される位置)に配置される。また、本実施形態では、高さが異なる複数種類の外壁基材20が用いられており、以下では、より低い高さの外壁基材20を「低背の外壁基材20」と呼び、より高い高さの外壁基材20を「高背の外壁基材20」と呼ぶこととする。ちなみに、本実施形態では、低背の外壁基材20の高さが800mm〜1000mmに設定されており、高背の外壁基材20の高さが2700mm〜30000mmに設定されている。
【0038】
なお、高背の外壁基材20では、
図2に示すように、内側断熱層15及び内側フレーム16の各々の上端部が基材上部断片20Xをなしている。この基材上部断片20Xは、基材本体(高背の外壁基材20中、基材上部断片20X以外の部分)から分離されている。
【0039】
次に、外壁基材20を用いた建物Bの建設方法について既出の
図3、並びに
図5乃至
図7を参照しながら説明する。
図5乃至
図7は、建物Bの建設工程の様子を示す模式図である。なお、建設工程は、
図5、
図6、
図7の順に進められる。また、
図5乃至
図7の各図では、図示の都合上、各建材を幾分簡略化して図示している。
【0040】
先ず、建物Bの建設工事は、通常の建物の建設工事と同様、基礎工事から開始され、その後に躯体工事及び外装工事が行われる。その中で、床3が設置され、外壁2が構築される。具体的に説明すると、
図3に示すように、先ず、一階の床3を構成するスラブ30が設置される(S001)。その後、
図5に示すように一階の床3を構成するスラブ30の縁部の上方に、低背の外壁基材20を配置する(S002)。この際、外壁基材20において化粧面材11が最も屋外側に位置して露出するように外壁基材20を配置する。
【0041】
低背の外壁基材20を上記のように配置した後、外壁基材20中のスペースS内に生コンC(コンクリート)を打設する(S003)。この際、
図5に示すように、スペースSの上端開口を通じて生コンCを打設する。また、生コンCを打設している間、外壁基材20に設けられたセパレータ17の一端部は、その先端に設けられた留付金具19aが外側フレーム12に係止されることで固定されている。他方、セパレータ17のうち、もう一方の端部は、留め具18によって内側フレーム16に留められている。これにより、生コンCを打設する間、スペースSの厚みがセパレータ17により適切に保持される。
【0042】
その後、打設した生コンCが硬化してコンクリート層14を形成すると、当該コンクリート層14が低背の外壁基材20と共に外壁2を構築する。つまり、コンクリート層14が、その両脇に位置する外側断熱層13及び内側断熱層15と一体化して外壁2を構築する。なお、上記の工程S002、S003で構築される外壁2は、建物Bの中で最も下方に位置する外壁2であり、以下、最下部の外壁2と呼ぶこととする。
【0043】
最下部の外壁2を構築した後、二階の床3を構成するスラブ30が設置される(S004)。その後、
図6に示すように、二階の床3を構成するスラブ30の設置位置と隣り合うように高背の外壁基材20を配置する(S005)。より具体的に説明すると、最下部の外壁2の直上位置に高背の外壁基材20を配置する。この際、外壁基材20において化粧面材11が最も屋外側に位置して露出するように外壁基材20を配置する。
【0044】
より厳密に説明すると、本実施形態では、基材上部断片20Xが取り外された状態の外壁基材20(すなわち、基材本体)を最下部の外壁2の上に配置する。このとき、二階の床3を構築するスラブ30の下方に基材本体中の内側断熱層15及び内側フレーム16が潜り込むように、当該基材本体を配置する。その後、
図6に示すように、二階の床3を構築するスラブ30の上面に基材上部断片20Xを載せて固定する。これにより、二階の床3を構成するスラブ30の屋外側端部が、上下方向において基材上部断片20Xと基材本体との間に挟み込まれ、外壁基材20中のスペースSに臨むようになる。
【0045】
高背の外壁基材20を上記のように配置した後、
図6に示すように、外壁基材20中のスペースS内に生コンCを打設する(S006)。この際、ステップS003と同様に、スペースSの上端開口を通じて生コンCを打設する。また、生コンCの打設期間中、セパレータ17の一端部は、その先端に設けられた留付金具19aが外側フレーム12に係止されることで固定されており、もう一方の端部は、留め具18によって内側フレーム16に留められている。これにより、生コンCを打設する間、スペースSの厚みがセパレータ17により適切に保持される。
【0046】
なお、本実施形態では、二階の床3を構成するスラブ30の屋外側端がスペースSに臨んだ状態で生コンCを当該スペースS内に打設する。したがって、スペースS内に生コンCが充填されると、上記のスラブ30の屋外側端に生コンCが接するようになる。
【0047】
その後、打設した生コンCが硬化することでコンクリート層14が形成され、高背の外壁基材20と共に外壁2を構築する。つまり、コンクリート層14は、その両脇に位置する外側断熱層13及び内側断熱層15と一体化して外壁2(以下、二段目の外壁2)を構築する。また、本実施形態では、上述のように二階の床3を構成するスラブ30の屋外側端に接するように生コンCが打設されたため、コンクリート層14が上記のスラブ30と連結するようになる。この結果、二段目の外壁2中のコンクリート層14が二階の床3と一体化するようになる。
【0048】
二段目の外壁を構築した後には、その直上階(すなわち、三階)の床3を構成するスラブ30が設置される(S007)。ここで、三階の床3を構成するスラブ30は、二階の床3を構成するスラブ30との関係で『上方階の床を構成するスラブ』に該当し、二階の床3を構成するスラブ30は、三階の床3を構成するスラブ30との関係で『下方階の床を構成するスラブ』に該当する。
【0049】
三階の床3を構成するスラブ30を設置した後、
図7に示すように、三階の床3を構成するスラブ30の設置位置と隣り合うように高背の外壁基材20を配置する(S008)。より具体的に説明すると、二段目の外壁2の直上位置に高背の外壁基材20を配置する。この際、外壁基材20において化粧面材11が最も屋外側に位置して露出するように外壁基材20を配置する。なお、本実施形態では、二段目の外壁2を構築したときと同様に、外壁基材20中の基材本体を二段目の外壁2の上に配置した後、
図7に示すように、三階の床3を構築するスラブ30の上面に基材上部断片20Xを載せて固定する。これにより、三階の床3を構成するスラブ30の屋外側端部が外壁基材20中のスペースSに臨むようになる。
【0050】
高背の外壁基材20の配置後、
図7に示すように、外壁基材20中のスペースS内に生コンCを、スペースSの上端開口を通じて打設する(S009)。また、生コンCの打設期間中、セパレータ17の一端部は、その先端に設けられた留付金具19aが外側フレーム12に係止されることで固定されており、もう一方の端部は、留め具18によって内側フレーム16に留められている。これにより、生コンCを打設する間、スペースSの厚みがセパレータ17により適切に保持される。
なお、本実施形態では、三階の床3を構成するスラブ30の屋外側端がスペースSに臨んだ状態で生コンCを当該スペースS内に打設する。
【0051】
その後、打設した生コンCが硬化することでコンクリート層14が形成され、高背の外壁基材20と共に外壁2を構築する。つまり、コンクリート層14は、その両脇に位置する外側断熱層13及び内側断熱層15と一体化して外壁2を構築する。また、本実施形態では、三階の床3を構成するスラブ30の屋外側端がスペースSに臨んだ状態で生コンCが打設されたため、外壁2のコンクリート層14が上記のスラブ30と連結する結果、外壁2中のコンクリート層14が三階の床3と一体化するようになる。
【0052】
以降、四階以上の各階に関して、その階の床3を構成するスラブ30を設置する工程、スラブ30と隣り合う位置に高背の外壁基材20を配置する工程、及び外壁基材20内のスペースSに生コンCを打設する工程が、上述した要領にて繰り返し行われる(S010)。ここで、上下に並ぶ二つの階において、より下方に位置する階の床3を構成するスラブ30が『下方階の床を構成するスラブ』に該当し、より上方に位置する階の床3を構成するスラブ30が『上方階の床を構成するスラブ』に該当する。
【0053】
そして、上記の工程S007〜S009が建物Bの階数(厳密には、三階以上の階数)に応じた数だけ繰り返された時点で、すべての階において、床3を構成するスラブ30が完成し、当該スラブ30と隣り合う位置に建物Bの外壁2が構築される。
【0054】
ところで、本実施形態では、外壁基材20を配置する工程(詳しくは、高背の外壁基材20を配置する工程S005、S008)において、外壁基材20の上端が予め設定された長さ以上、当該外壁基材20と隣り合うスラブ30の上面よりも上方に位置するように外壁基材20を配置する。厳密に説明すると、外壁基材20の上端が800mm以上、当該外壁基材20と隣り合うスラブ30の上面よりも上方に位置するように外壁基材20を配置する。
【0055】
つまり、本実施形態では、外壁基材20(厳密には、高背の外壁基材20)がスラブ30の上面から所定量(800mm)以上、上方に突出した状態で配置される。そして、外壁基材20中、スラブ30の上面から上方に突出した部分は、転落防止措置として機能するようになる。具体的に説明すると、二階以上の床3を構成するスラブ30上で作業者が内装作業等を行っている状況において、
図8に示すように、スラブ30の端位置付近に外壁基材20が配置されている。さらに、外壁基材20は、スラブ30の上面から幾分(具体的には800mm以上)上方に突出している。なお、
図8は、スラブ30と外壁基材20との位置関係を示す図である。
【0056】
以上の状況では、スラブ30上の作業者がスラブ30から落下してしまうのを外壁基材20によって防止することが可能となる。なお、外壁基材20がスラブ30の上面から上方に800mm以上突出している場合、その突出部分は、安全衛生法上の「手すり」として認められる場合がある。かかる場合には、二階以上の床3を構成するスラブ30上で作業者が作業を行うにあたり、高所作業用の手すりを別途設置する必要がなくなる。
【0057】
以上までに本発明の複数階建ての建物の建設方法について具体例を挙げて説明したが、上述の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられる。例えば、上述の実施形態では、二階以上の床3を構成するスラブ30を設置した後、当該スラブ30と隣り合う位置に外壁基材20(厳密には、高背の外壁基材20)を配置することとした。ただし、これに限定されるものではなく、外壁基材20を配置した後に当該外壁基材20と隣り合うように床3のスラブ30を設置してもよい。
【0058】
また、上記の実施形態に係る外壁基材20は、化粧面材11、外側フレーム12、外側断熱層13、内側断熱層15及び内側フレーム16を有し、さらに、セパレータ17を備えていることとした。ただし、外壁基材20の構成については、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、外壁基材20に上述した層以外の層が含まれてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態に係る外壁基材20(厳密には、高背の外壁基材20)は、基材本体と基材上部断片20Xに分かれており、基材上部断片20Xは、基材本体から分離していることとした。ただし、これに限定されるものではなく、外壁基材20が、分離した複数の機器からなるものではなく、一ユニット(一つの機器)として構成されていてもよい。かかる構成を採用する場合、外壁基材20をスラブ30と隣り合う位置に配置する際に、内側フレーム16がスラブ30の屋外側端と隣接するように外壁基材20を配置することになる。