特許第6904840号(P6904840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904840
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/06 20060101AFI20210708BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   F16D48/06
   F16D25/12 E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-148963(P2017-148963)
(22)【出願日】2017年8月1日
(65)【公開番号】特開2019-27537(P2019-27537A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知樹
【審査官】 古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−068432(JP,A)
【文献】 特開2004−225767(JP,A)
【文献】 特開平05−340410(JP,A)
【文献】 特開平10−115329(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0133058(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0152985(US,A1)
【文献】 特開2014−202350(JP,A)
【文献】 特開平07−269600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
F15B 11/06
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源のシャフトと変速機のシャフトとを断接可能に接続するクラッチと、
作動流体の給排に応じて動作する流体圧式のアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの動作を前記クラッチに伝達するクラッチレバーと、
前記アクチュエーターに作動流体を供給する供給部と、
前記アクチュエーターに対する作動流体の給排を切り替える切替部と、
前記アクチュエーターに供給される作動流体の圧力を検出する圧力センサーと、
前記アクチュエーターの動作量を検出する動作量センサーと、
前記切替部を制御することで前記クラッチの断接を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力と前記動作量とを取得し、
前記取得した圧力が正常でなくとも、前記取得した動作量が正常であれば、前記切替部を通じた前記クラッチの断接の切り替えを継続して行い、
前記取得した圧力が正常であり、かつ、前記取得した動作量が正常でない場合、前記クラッチを接続状態に制御する
クラッチ装置。
【請求項2】
動力源のシャフトと変速機のシャフトとを断接可能に接続するクラッチと、
作動流体の給排に応じて動作する流体圧式のアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの動作を前記クラッチに伝達するクラッチレバーと、
前記アクチュエーターに作動流体を供給する供給部と、
前記アクチュエーターに対する作動流体の給排を切り替える切替部と、
前記アクチュエーターに供給される作動流体の圧力を検出する圧力センサーと、
前記アクチュエーターの動作量を検出する動作量センサーと、
前記切替部を制御することで前記クラッチの断接を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力と前記動作量とを取得し、
前記取得した圧力が正常でなくとも、前記取得した動作量が正常であれば、前記切替部を通じた前記クラッチの断接の切り替えを継続して行い、
前記取得した圧力が正常でなく、かつ、前記取得した動作量が正常でない場合、前記ク
ラッチを接続状態に制御する
クラッチ装置。
【請求項3】
動力源のシャフトと変速機のシャフトとを断接可能に接続するクラッチと、
作動流体の給排に応じて動作する流体圧式のアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの動作を前記クラッチに伝達するクラッチレバーと、
前記アクチュエーターに作動流体を供給する供給部と、
前記アクチュエーターに対する作動流体の給排を切り替える切替部と、
前記アクチュエーターに供給される作動流体の圧力を検出する圧力センサーと、
前記アクチュエーターの動作量を検出する動作量センサーと、
前記切替部を制御することで前記クラッチの断接を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力と前記動作量とを取得し、
前記取得した圧力が正常でなくとも、前記取得した動作量が正常であれば、前記切替部を通じた前記クラッチの断接の切り替えを継続して行い、
前記取得した圧力が正常であり、かつ、前記取得した動作量が正常でない場合、前記クラッチを接続状態に制御し、
前記取得した圧力が正常でなく、かつ、前記取得した動作量が正常でない場合、前記クラッチを接続状態に制御する
クラッチ装置。
【請求項4】
前記アクチュエーターは、作動流体が排出状態にあるときに前記クラッチを接続状態に維持し、
前記切替部は、当該切替部に対する電力の供給が遮断されることにより前記アクチュエーターを排出状態に切り替える
請求項1〜3のいずれか一項に記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記作動流体が圧縮空気である
請求項1〜4のいずれか一項に記載のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチの断接を自動的に制御するクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、エンジンやモーターなどの動力源の出力は、トランスミッションなどの変速機を有する動力伝達システムを介して駆動輪に伝達される。動力伝達システムとしては、例えば特許文献1のように、動力源の出力シャフトと変速機の入力シャフトとを断接可能に接続するクラッチを自動的に制御するクラッチ装置を備えたものが知られている。こうしたクラッチ装置は、例えば、流体圧式のアクチュエーターによってクラッチの断接が切り替えられるように構成されており、シフトスケジュールに基づいてアクチュエーターに対する作動流体の給排が制御されることでクラッチの断接が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−25779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したクラッチ装置においては、アクチュエーターに供給される作動流体の圧力が正常でなければ圧力不足によりクラッチの断接を切り替えることができない。そのため、クラッチ装置では、作動流体の給排が確実に制御できるように作動流体の圧力をセンサーで検出し、その検出値が正常であるか否かを判定している。しかしながら、例えば、圧力センサーの検出値が正常でなくとも当該異常が圧力センサーそのものに起因する場合、アクチュエーターには正常な圧力の作動流体が供給可能である。そのため、クラッチ装置は、生じた異常によってはクラッチの制御が継続されることが好ましい。
【0005】
本発明は、アクチュエーターを用いてクラッチの断接が自動的に制御されるクラッチ装置において、異常が生じた場合にその異常に応じてクラッチを制御することのできるクラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するクラッチ装置は、動力源のシャフトと変速機のシャフトとを断接可能に接続するクラッチと、作動流体の給排に応じて動作する流体圧式のアクチュエーターと、前記アクチュエーターの動作を前記クラッチに伝達するクラッチレバーと、前記アクチュエーターに作動流体を供給する供給部と、前記アクチュエーターに対する作動流体の給排を切り替える切替部と、前記アクチュエーターに供給される作動流体の圧力を検出する圧力センサーと、前記アクチュエーターの動作量を検出する動作量センサーと、前記切替部を制御することで前記クラッチの断接を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記圧力と前記動作量とを取得し、前記取得した圧力が正常でなくとも、前記取得した動作量が正常であれば、前記切替部を通じた前記クラッチの断接の切り替えを継続して行う。
【0007】
上記構成によれば、例えば圧力センサーに異常が生じて作動流体の圧力を正しく検出できない場合であってもアクチュエーターの動作が正常である場合にはクラッチの断接の切り替えが継続して行われる。その結果、クラッチ装置に生じた異常に応じてクラッチの制御を継続して行うことができる。
【0008】
上記構成のクラッチ装置では、前記アクチュエーターは、作動流体が排出状態にあるときに前記クラッチを接続状態に維持し、前記切替部は、当該切替部に対する電力の供給が遮断されることにより前記アクチュエーターを排出状態に切り替えることが好ましい。
上記構成によれば、例えば、切替部への電力の供給が遮断されたとしてもクラッチを接続状態に維持することができる。
【0009】
上記構成のクラッチ装置において、前記制御部は、前記取得した圧力が正常であり、かつ、前記取得した動作量が正常でない場合、前記切替部への電力の供給を遮断することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、作動流体の圧力が正常であってもアクチュエーターが正常に動作していない場合に、切替部への電力の供給を遮断してクラッチを接続状態に制御することが可能である。
【0011】
上記構成のクラッチ装置において、前記制御部は、前記取得した圧力が正常でなく、かつ、前記取得した動作量が正常でない場合、前記切替部への電力の供給を遮断することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、作動流体の圧力およびアクチュエーターの動作量の双方に異常が生じている場合に、切替部への電力の供給を遮断してクラッチを接続状態に制御することが可能である。
上記構成のクラッチ装置において、前記作動流体が圧縮空気であることが好ましい。
上記構成のように作動流体として圧縮空気を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】クラッチ装置の一実施形態を備えた動力伝達システムの概略構成を示す図。
図2】モード選択処理の手順の一例を示すフローチャート。
図3】圧力および動作量の可否に対する判定結果、および、その判定結果に対する制御モードを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図3を参照して、クラッチ装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、クラッチ装置10は、変速機であるトランスミッションTMとともに動力伝達システムを構成する。クラッチ装置10は、クラッチ11、アクチュエーター20、供給部25、切替部28、クラッチレバー29、圧力センサー31、動作量センサー32、および、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。なお、このECU50は、動力伝達システムを統括制御する制御装置であり、クラッチ装置10におけるクラッチの断接のほか、トランスミッションTMにおける変速を制御する。
【0015】
クラッチ11は、エンジンやモーターなどの動力源の出力シャフト12とトランスミッションTMの入力シャフト13との断接可能に接続している。クラッチ11は、出力シャフト12の端部に連結されたフライホイール14にクラッチプレート15が押圧されることにより接続され、クラッチプレート15がフライホイール14から離間することにより切断される。フライホイール14に対するクラッチプレート15の押圧は、クラッチカバー16に形成されたダイヤフラムスプリングの付勢力によって具現化される。クラッチ11は、アクチュエーター20の動作がクラッチレバー29を介してクラッチ11に伝達されることにより断接が制御される。
【0016】
アクチュエーター20は、作動流体の給排に応じてロッド21を伸縮させる流体圧式のアクチュエーターである。アクチュエーター20は、例えば、作動流体が圧縮空気であるエアシリンダーである。アクチュエーター20は、図示されない圧力室に作動流体が供給される供給状態においてロッド21を伸長させ、当該圧力室から作動流体が排出される排出状態においてロッド21を収縮させる。アクチュエーター20には供給部25によって作動流体が供給されており、また、アクチュエーター20に対する作動流体の給排は切替部28によって切り替えられる。
【0017】
供給部25は、作動流体である圧縮空気を貯留したタンク26と、タンク26とアクチュエーター20とを接続する供給通路27とを有している。タンク26は、図示されないコンプレッサーによって設定圧力Psまで圧縮された圧縮空気が供給可能に構成されており、タンク26内の圧力が設定圧力Psよりも低くなると圧縮空気が補充される。
【0018】
切替部28は、アクチュエーター20の圧力室と供給通路27とを連通させる連通状態と、アクチュエーター20の圧力室を大気開放する開放状態とを有する電子制御式の制御バルブである。切替部28は、ECU50によって、電源装置35からの電力が通電状態にあるときに連通状態に制御され、電源装置35からの電力が遮断状態にあるときに開放状態に制御される。
【0019】
クラッチレバー29は、アクチュエーター20の動作をクラッチ11に伝達する。クラッチレバー29は、アクチュエーター20のロッド21が伸長すると、ダイヤフラムスプリングの付勢力に抗してクラッチプレート15がフライホイール14から離間するようにクラッチ11を作動させる。また、クラッチレバー29は、アクチュエーター20のロッド21が収縮すると、ダイヤフラムスプリングの付勢力によってクラッチプレート15がフライホイール14に押圧されるようにクラッチ11を作動させる。
【0020】
こうしたクラッチ装置10を備える動力伝達システムは、各種センサーを備えている。クラッチ装置10は、供給通路27における圧縮空気の圧力Pを検出する圧力センサー31、および、アクチュエーター20におけるロッド21の動作量Lを検出する動作量センサー32を備えている。動作量Lは、ロッド21が完全に収縮した状態を0とした正の値で示されるロッド21のストローク量である。また、動力伝達システムは、ドライバーが操作するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度ACCを検出するアクセル開度センサー33、および、図示されないエンジンの回転数であるエンジン回転数Neを検出する回転数センサー34を備えている。各センサー31〜34は、検出対象の検出値を示す信号をECU50に出力する。
【0021】
ECU50は、プロセッサ、メモリ、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続されたマイクロコントローラーを中心に構成される。ECU50は、各センサー31〜34が出力した各種の情報を入力インターフェースを介して取得する。そしてECU50は、その取得した各種の情報、および、メモリに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行し、これらの各種の処理を通じて制御対象を制御する。
【0022】
ECU50は、各種処理の1つとして、トランスミッションTMの変速と切替部28の制御とを行う変速処理を実行する。ECU50は、アクセル開度ACCとエンジン回転数Neとで示されるシフトスケジュールをトランスミッションTMの変速段ごとにメモリの所定領域に保持している。そして、ECU50は、そのシフトスケジュールに基づいてトランスミッションTMを制御するとともにトランスミッションTMの変速時に切替部28を連通状態に制御することでクラッチ11を一時的に切断状態に制御する。
【0023】
また、ECU50は、各種の処理の1つとして、クラッチ装置10における異常の有無を判定し、その判定結果に基づいて切替部28およびトランスミッションTMの制御モードを選択するモード選択処理を実行する。ECU50は、上記変速処理を実行する通常モードと変速処理を禁止する変速禁止モードとから制御モードを選択する。
【0024】
図2を参照して、ECU50が実行するモード選択処理の手順の一例について説明する。ECU50は、トランスミッションTMの変速時、すなわち切替部28を開放状態から連通状態に切り替えたときにモード選択処理を実行する。またECU50は、トランスミッションTMの非変速時、すなわち切替部28を開放状態に制御しているときは所定間隔ごとにモード選択処理を実行する。
【0025】
図2に示すように、モード選択処理において、ECU50は、まず、圧力センサー31の検出した圧力Pを取得する(ステップS11)。次に、ECU50は、動作量センサー32の検出した動作量Lを取得する(ステップS12)。このステップS12において、ECU50は、モード選択処理の開始から設定時間経過したタイミングで動作量Lを取得する。設定時間は、切替部28が連通状態に切り替えられた場合に、クラッチ装置10に異常が生じていなければクラッチ11が切断状態にあるタイミングまでの時間である。
【0026】
次に、ECU50は、それら取得した圧力Pと動作量Lとに基づいてクラッチ装置10に異常が生じているか否か、また、異常が生じている場合にはその異常の種別を判定する(ステップS13)。
【0027】
ステップS13の判定において、ECU50は、圧力センサー31の検出した圧力Pが正常圧力Pnであるか否か、および、アクチュエーター20の動作量Lが正常動作量Lnであるか否かを判断する。正常圧力Pnは、圧力Pが正常である場合に取り得る範囲を示す値である。正常動作量Lnは、切替部28が連通状態にあるときにはクラッチ11の確実な切断を示す第1動作量L1以上の範囲を示す値であり、切替部28が開放状態にあるときにはクラッチ11の確実な接続を示す第2動作量L2(<L1)以下の範囲を示す値である。そして、ECU50は、ステップS13の判定結果に基づいて制御モードを選択し(ステップS14)、一連の処理を一旦終了する。
【0028】
図3に示すように、圧力Pが正常圧力Pnであり、かつ、動作量Lが正常動作量Lnである場合、ECU50は、ステップS13の判定結果として「正常」を得る。そしてECU50は、ステップS14において変速処理を実行する通常モードを選択する。
【0029】
圧力Pが正常圧力Pnであり、かつ、動作量Lが正常動作量Lnでない場合、ECU50は、ステップS13の判定結果として「第1異常」を得る。第1異常は、切替部28やクラッチレバー29など、クラッチ装置10において機械的な異常が生じている場合に得られる判定結果である。
【0030】
判定結果が第1異常であった場合、ECU50は、第1異常が生じていることをメモリの所定領域に格納するとともに、ドライバーが視認可能な警報ランプ51(図1参照)を点灯させることでクラッチ装置10に異常が生じていることをドライバーに通知する。また、ECU50は、ステップS14において変速処理が禁止される変速禁止モードを選択する。変速禁止モードにおいてECU50は、トランスミッションTMの変速段を所定の変速段に維持するとともに、電源装置35から切替部28への電力の供給を遮断することにより、クラッチ11が接続状態に維持されるように切替部28を開放状態に制御する。
【0031】
圧力Pが正常圧力Pnでなく、かつ、動作量Lが正常動作量Lnである場合、ECU50は、ステップS13の判定結果として「第2異常」を得る。第2異常は、圧力センサー31の検出値が異常であるもののアクチュエーター20への圧縮空気の供給が正常であることから、圧力センサー31に異常が生じている場合に得られる判定結果である。
【0032】
判定結果が第2異常であった場合、ECU50は、第2異常が生じていることをメモリの所定領域に格納するとともに、警報ランプ51を点灯させることでクラッチ装置10に異常が生じていることをドライバーに通知する。そして、ECU50は、ステップS14において、圧力センサー31に異常が生じているもののトランスミッションTMの変速が行えることから、変速処理を実行する通常モードを選択する。
【0033】
圧力Pが正常圧力Pnでなく、かつ、動作量Lが正常動作量Lnでない場合、ECU50は、ステップS13の判定結果として「第3異常」を得る。第3異常は、例えば、アクチュエーター20に圧縮空気が供給されていない場合に得られる判定結果である。
【0034】
判定結果が第3異常であった場合、ECU50は、第3異常が生じていることをメモリの所定領域に格納するとともに、警報ランプ51を点灯させることでクラッチ装置10に異常が生じていることをドライバーに通知する。そして、ECU50は、ステップS14において変速禁止モードを選択する。
【0035】
上記実施形態のクラッチ装置10および動力伝達システムによれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)作動流体の圧力Pが正常でなく、かつ、アクチュエーター20の動作量Lが正常である場合、圧力センサー31の異常を示す第2異常が生じているものとして、クラッチ11の制御が継続して行われる。すなわち、クラッチ装置10に異常が生じているものの、その異常がアクチュエーター20の動作に直接的に関わるものでない場合にアクチュエーター20が継続して制御される。その結果、例えば、圧力センサー31の異常のみで変速処理が禁止される場合に比べて、クラッチ装置10の異常に起因してドライバビリティが低下する頻度を抑えることができる。
【0036】
(2)アクチュエーター20は、作動流体が排出状態にあるときにクラッチ11を接続状態に制御する。また、切替部28は、当該切替部28に対する電力の供給が遮断状態にあるときにアクチュエーター20を排出状態に制御する。こうした構成によれば、例えば、切替部28の電気系統に異常が生じて切替部28への電力の供給が強制的に遮断されたとしてもクラッチ11が接続状態に維持されることから、車両を走行可能な状態に維持することができる。
【0037】
(3)ECU50は、圧力Pが正常であり、かつ、動作量Lが正常でない場合、クラッチ装置10において機械的な異常が生じていることを示す第2異常判定を行う。そしてECU50は、電源装置35から切替部28への電力の供給を遮断して、切替部28を開放状態に維持する。こうした構成によれば、例えば、クラッチ装置10の機械的な異常が突如解消されたとしてもアクチュエーター20が供給状態に制御されることがない。
【0038】
(4)ECU50は、圧力Pおよび動作量Lの双方が正常ではない場合、アクチュエーター20に作動流体が供給されていないことを示す第3異常判定を行う。そしてECU50は、電源装置35から切替部28への電力の供給を遮断して、切替部28を開放状態に維持する。こうした構成によれば、例えば、アクチュエーター20に対する作動流体の供給が突如回復したとしてもアクチュエーター20が供給状態に制御されることがない。
【0039】
(5)ECU50は、モード選択処理の開始から、切替部28が連通状態に切り替えられた場合にクラッチ11が切断状態にあるタイミングまでの時間である設定時間だけ経過してから動作量Lを取得する。こうした構成によれば、動作量Lの異常の有無をより確実に検出することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・アクチュエーターは、作動流体に圧縮空気を用いたエアシリンダーに限らず、作動油を用いた油圧式の油圧シリンダーであってもよい。こうした構成において、供給部は、作動油を貯留する貯留部と、貯留部からアクチュエーターに作動油が流れる供給通路と、供給通路に配設されてアクチュエーターに作動油を圧送する圧送部と、アクチュエーターから貯留部に作動油が流れる排出通路と、で構成される。この場合、切替部は、供給通路を開閉する第1開閉弁と、排出通路を開閉する第2開閉弁とによって構成される。また、圧力センサーは、供給通路における圧送部の下流の圧力を検出する。
【0041】
・切替部は、通電状態になるとアクチュエーターを排出状態に切り替え、遮断状態になるとアクチュエーターを供給状態に切り替える構成であってもよい。
・切替部は、作動状態に応じてアクチュエーターを排出状態と供給状態との間で切り替える切替弁と、該切替弁の作動状態を外部から切り替え可能な作動部をさらに備える構成であってもよい。この作動部は、該作動部の外部から供給される電気信号により切替弁の作動状態を切り替えるモーターからなる構成であってもよい。
【0042】
・アクチュエーターは、作動流体の給排に応じて動作するものであればよい。アクチュエーターは、例えば、第1圧力室への作動流体の供給と第2圧力室からの作動流体の排出とによってロッドが伸長し、第1圧力室からの作動流体の排出と第2圧力室への作動流体の供給とによってロッドが収縮する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
TM…トランスミッション、10…クラッチ装置、11…クラッチ、12…出力シャフト、13…入力シャフト、14…フライホイール、15…クラッチプレート、16…クラッチカバー、20…アクチュエーター、21…ロッド、25…供給部、26…タンク、27…供給通路、28…切替部、29…クラッチレバー、31…圧力センサー、32…動作量センサー、33…アクセル開度センサー、34…回転数センサー、35…電源装置、50…ECU、51…警報ランプ。
図1
図2
図3