(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷台に荷積降用プラットフォームが車両荷役装置により昇降可能に設けられ、車両に搭載されたバッテリーから電動モータに給電することで上記車両荷役装置を駆動する車両荷役装置の給電制御装置であって、
上記電動モータの駆動時に上記バッテリーからの駆動電流が流れる給電電路と、
上記給電電路内に配置され、該給電電路を開閉するコンタクタと、
上記給電電路内に配置され、該給電電路を開閉する電界効果トランジスタと、
上記コンタクタの開閉および上記電界効果トランジスタのON/OFFを制御することで、前記給電電路の開閉を制御する開閉制御部と、
上記給電電路を流れる電流を検出する検出部と、
上記検出部によって検出される電流に基づいて、上記車両荷役装置の異常の有無を判定する異常判定部と、
上記開閉制御部および上記異常判定部におけるデータを記憶する記憶部と、
上記記憶部のデータを外部装置に出力する出力部とを備えており、
上記異常判定部は、上記コンタクタが閉じられており上記電界効果トランジスタがOFFされている期間に、上記検出部によって上記給電電路を流れる電流が検出された場合には上記電界効果トランジスタに異常有りと判定する構成を有し、
上記期間に上記異常判定部が異常有りと判定した判定データを上記記憶部が記憶することで、上記出力部は上記判定データを出力可能とされることを特徴とする車両荷役装置の給電制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような車両荷役装置を備えた車両(例えば、トラック)は、さまざまな作業現場にて使用されるため、車両荷役装置のパワーユニットや電動モータも厳しい使用環境(高温環境や低温環境、水気の多い環境等)にさらされる。そのため、電動モータ等の電気部品や電気回路自体に短絡等の異常が生じることがあり、そのような異常が生じた状態のままで電動モータに給電を行うと、部品破損やバッテリーの異常放電といった更なる不具合を引き起こすといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電動モータ等に異常が生じた状態で給電を行うことで発生する更なる不具合を防止できる車両荷役装置の給電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷台に荷積降用プラットフォームが車両荷役装置により昇降可能に設けられ、車両に搭載されたバッテリーから電動モータに給電することで上記車両荷役装置を駆動する車両荷役装置の給電制御装置であって、上記電動モータの駆動時に上記バッテリーからの駆動電流が流れる給電電路と、上記給電電路内に配置され、該給電電路を開閉するコンタクタと、上記給電電路内に配置され、該給電電路を開閉する電界効果トランジスタと、上記コンタクタの開閉および上記電界効果トランジスタのON/OFFを制御することで、前記給電電路の開閉を制御する開閉制御部と、上記給電電路を流れる電流を検出する検出部と、上記検出部によって検出される電流に基づいて、上記車両荷役装置の異常の有無を判定する異常判定部とを備えている構成であることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、検出部によって給電電路を流れる電流を検出し、異常判定部が検出される電流に基づいて給電電路の異常の有無を判定することで、車両荷役装置の電動モータや油圧回路等に異常が生じた状態で給電を行うことで発生する更なる不具合を防止できる。
【0011】
また、上記給電制御装置では、上記開閉制御部は、上記電動モータへの給電を開始する時には、上記コンタクタを閉じた後、所定時間後に上記電界効果トランジスタをONする制御を行うと共に、上記所定時間内に短時間だけ上記電界効果トランジスタをONする制御を行うものであり、上記異常判定部は、上記電界効果トランジスタを短時間ONした時に、上記検出部によって検出された電流と第1の閾値とを比較し、検出された電流が該第1の閾値を越えた場合には異常有りと判定する構成とすることができる。
【0012】
また、上記給電制御装置では、上記開閉制御部は、停止状態の上記電動モータに一定時間以上継続して給電を行うことで上記電動モータを連続回転させることが可能な場合に、上記一定時間よりも短い上記短時間だけ上記電界効果トランジスタをONする制御を行う構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、検出部による検出電流が第1の閾値を越えていれば、給電電路のどこか(例えば、電動モータ)に短絡等の異常があると判定できる。この場合、回路における異常検出を報知し、異常発見のための検査等を促すことができる。また、異常判定のために電界効果トランジスタをONする時間は短時間でよいため、給電電路に過剰な電流が長時間流れることを防止できる。
【0014】
また、上記給電制御装置では、上記異常判定部は、上記コンタクタが閉じられており上記電界効果トランジスタがOFFされている期間に、上記検出部によって上記給電電路を流れる電流が検出された場合には異常有りと判定する構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、コンタクタを閉じたのみで電流が流れれば、電界効果トランジスタにおいて漏電が生じていることになり、電界効果トランジスタに異常があると判定できる。この場合、電界効果トランジスタの異常を報知し、電界効果トランジスタの部品交換等を促すことができる。
【0016】
また、上記給電制御装置では、上記異常判定部は、上記コンタクタが閉じられており上記電界効果トランジスタがONされている期間に
おける上記検出部
の検出値に基づいて前記異常の有無を判定する構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、
検出部の検出値に基づいて、例えば検出電流が第2の閾値を越えた場合には、
給電電路において油圧回路の動作不能等の重大な異常が生じていると判断できる。
この場合、回路における異常検出を報知し、異常発見のための検査等を促すことができる。
【0018】
また、同様に上記の課題を解決するために、本発明は、
荷台に荷積降用プラットフォームが車両荷役装置により昇降可能に設けられ、車両に搭載されたバッテリーから電動モータに給電することで上記車両荷役装置を駆動する車両荷役装置の給電制御装置であって、上記電動モータの駆動時に上記バッテリーからの駆動電流が流れる給電電路と、上記給電電路内に配置され、該給電電路を開閉するコンタクタと、上記給電電路内に配置され、該給電電路を開閉する電界効果トランジスタと、上記コンタクタの開閉および上記電界効果トランジスタのON/OFFを制御することで、前記給電電路の開閉を制御する開閉制御部と、上記開閉制御部による前記給電電路の開閉の制御に応じた前記バッテリーから前記電動モータへの給電状況を検出する検出部と、上記検出部による前記給電状況に基づいて、上記給電電路における部品交換を必要とする異常の有無、または上記給電電路における部品交換を必要としない異常の有無を判定する異常判定部とを備えている構成であることも特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、
バッテリーから電動モータへの給電状況を開閉制御部による給電電路の開閉制御に応じて検出することができるため、その給電状況に基づいて異常の有無を単に判定するだけでなく、その異常の対象が給電電路における部品の交換を必要とするものか、または部品の交換を必要としないものかを示すことができる。
【0020】
また、上記給電制御装置では、
上記異常判定部によって判定される異常判定結果を記憶する一時記憶部と、上記一時記憶部に記憶された異常判定結果を外部解析装置に出力する出力部とを有している構成とすることができる。
【0021】
上記の構成によれば、
異常検出結果は一時記憶部に記憶され、記憶された異常検出結果は出力部を介して外部解析装置に出力することができる。これにより、外部解析装置を用いて、車両荷役装置の稼働状況、メンテナンスが必要な部位及びメンテナンス履歴を解析することが容易に行える。
【0022】
また、上記給電制御装置では、
上記バッテリー、上記電動モータ、上記コンタクタ、及び上記電界効果コンタクタの異常の検知信号が入力される入力部を有し、上記一時記憶部には、上記入力部も接続されており、上記出力部は、前記異常判定結果、および上記入力部に入力された前記異常の情報も出力可能となっている構成とすることができる。
【0023】
上記の構成によれば、
各種異常が検出された場合にも、出力部を介して外部解析装置に出力することができる。これにより、メンテナンス対象の把握をさらに容易に行える。
【発明の効果】
【0024】
本発明の車両荷役装置の給電制御装置は、検出部によって給電電路を流れる電流を検出し、異常判定部が検出される電流に基づいて車両荷役装置の異常の有無を判定することで、車両荷役装置の電動モータや油圧回路等に異常が生じた状態で給電を行うことで発生する更なる不具合を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜
図4は本発明の実施形態にかかる車両荷役装置の給電制御装置10を有する車両としてのバン車Aの後端部分を示す。図中、1はバン車Aの車幅方向両側で車体前後方向に延びるシャシフレーム、3は車幅方向に延びる横補強部材5と、車体前後方向に延びる縦補強部材7とが底面に固定された箱形の荷台であり、この荷台3は横補強部材5及び縦補強部材7を介してシャシフレーム1に搭載されている。
【0028】
荷台3の車体後端で床面3a下方には、車両荷役装置9が架装されている。この車両荷役装置9は、トップパネル11a、ミドルパネル11b及びボトムパネル11cをヒンジで折畳及び展開自在に連結した3枚折れタイプの荷積降用プラットフォーム11を備えた床下格納式であり、この荷積降用プラットフォーム11(ボトムパネル11c)基端の車幅方向両端寄りは、リフトアーム13、リフトシリンダ15、コンプレッションアーム17及びチルトアーム19を備えた2組の平行リンク機構21により片持ち支持されている。なお、荷積降用プラットフォーム11は2枚折れタイプや1枚物であってもよい。
【0029】
シャシフレーム1の後端側には、2本のスライドレール23が車体前後方向に延びるようにそれぞれ水平に配設され、このスライドレール23には、車幅方向に延びる閉断面形状のメカニズムフレーム25がスライドシリンダ27の伸縮作動により車体前後方向に移動可能に支持されている。このメカニズムフレーム25に平行リンク機構21の基端がブラケット29を介して支持されている。そして、スライドシリンダ27の伸縮作動により荷積降用プラットフォーム11を折り畳んだ状態で荷台3の床面3a下方に対して出し入れするようになっている(
図2及び
図3参照)。
【0030】
メカニズムフレーム25の車幅方向左端(
図1下端)には、
図2及び
図5に示すように、パワーユニット35が配設され、このパワーユニット35により車両荷役装置9を駆動するようにしている。実際には、このパワーユニット35には、リモートスイッチとしての押しボタン式リモコンスイッチ36(
図7参照)が付設され、パワーユニット35はこの押しボタン式リモコンスイッチ36と共に筐体内に収容されているが、
図1〜
図4では便宜上、これらをまとめてパワーユニット35として表している。
【0031】
このパワーユニット35には、
図1にも示すように、モータ駆動用給電電路としてのバッテリーコード37、アース線としてのシャシアースコード39、キャブ内主電源スイッチコード(以下、キャブ内メインスイッチコードという)41A、及び庫内リモコンコード43の4本の電気配線の一端側がコルゲートチューブ44内に挿入されて所定長さに亘って集束され、この集束状態で各々の一端が荷台3の床面3a下方でパワーユニット35に接続されている。これら集束された4本の電気配線の他端は、横補強部材5に固定されたステー51に縦補強部材7に沿って車体後方に延びるように配索されてクリップ53で取り付けられ、シャシフレーム1の車幅方向内側に延びている。
【0032】
上記4本の電気配線のうちバッテリーコード37及びキャブ内メインスイッチコード41Aの2本の電気配線は、
図1に示すように、そこから先がシャシフレーム1の車幅方向内側でこのシャシフレーム1に沿って車体前方に延びるように配索されている。他の2本の電気配線のうちシャシアースコード39の他端は、車幅方向左側のシャシフレーム1に接続されている。残り1本の庫内リモコンコード43の他端は、荷台3内に設けられた車両荷役装置9を駆動するための押しボタン式リモコンスイッチ57に接続されている。
【0033】
一方、車幅方向左側のシャシフレーム1の荷台3前方寄りには、
図1に示すように、バッテリー45が搭載され、このバッテリー45にバッテリーコード37の他端が接続されている。キャブ内メインスイッチコード41Aの他端は、荷台3前方のキャブ(図示せず)に設けられたキャブ内主電源スイッチ(以下、キャブ内メインスイッチという)55に接続されている。バッテリーコード37の他端側には、ヒューズボックス47が介設され、キャブ内メインスイッチ55には、別のキャブ内メインスイッチコード41Bの一端が接続され、このキャブ内メインスイッチコード41Bの他端は、ヒューズボックス47を経てバッテリーコード37と共にバッテリー45に接続されている。
【0034】
車体後端寄りにおける横補強部材5の車幅方向左端(
図2左端)には、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を備えた制御回路としてのコントロールボックス49がブラケット59を介して取り付けられ、このコントロールボックス49は、キャブ内メインスイッチコード41Aに介設されている。
【0035】
キャブ内メインスイッチ55は、積み降ろし作業をしないときにはOFF状態になっており、積み降ろし作業を開始する際に、作業者の手動操作によりON状態に切り換えられるようになっている。
【0036】
そして、
図2に示すように、バッテリー45(
図1参照)からパワーユニット35に給電し、荷台3側の押しボタン式リモコンスイッチ57又はパワーユニット35側の押しボタン式リモコンスイッチ36を作業者が押すことでコントロールボックス49を介して操作指令信号をパワーユニット35に出力して車両荷役装置9を駆動するようになっている。
【0037】
上述したように、車両荷役装置9はパワーユニット35によって駆動されるが、パワーユニット35は車両荷役装置9を駆動するための油圧回路を有している。
図5にその油圧回路図を示す。具体的には、
図5に示す油圧回路では、電動モータ30で駆動された油圧ポンプ28により圧油が発生し、ソレノイドバルブ34を介してリフトシリンダ15及びスライドシリンダ27に送られるようになっている。ソレノイドバルブ34は、SOL−1〜SOL−4の4つからなり、押しボタン式リモコンスイッチ36または57がONされた場合に、コントロールボックス49からの信号を受けて切り換えられるようになっている。
【0038】
詳細な説明は省略するが、コントロールボックス49は、
図6に示すような組み合わせによるSOL−1〜SOL−4の制御をおこない、リフトシリンダ15及びスライドシリンダ27を駆動し、バン車Aに対して荷物を積み降ろしする。つまり、2組の平行リンク機構21のリフトシリンダ15を同期駆動して荷積降用プラットフォーム11を地面Gと荷台3の床面3a高さとの間で昇降させる(
図4参照)一方、スライドシリンダ27を駆動して荷積降用プラットフォーム11を荷台3の床面3a高さから若干下がった位置で床面3a下方に対して出し入れするようになっている(
図2及び
図3参照)。
【0039】
図7は、本実施形態にかかる給電制御装置10における電気系統の回路図である。
図7に示すように、給電制御装置10は、バッテリー45から電動モータ30への給電を制御するものであり、電動モータ30の給電をON/OFFするために、第1開閉器としてのコンタクタ31と、第2開閉器としてのFET32とを有している。コンタクタ31は、電磁石の動作によって電路を開閉する有接点方式の電磁接触器であり、図示しない電磁コイルが励磁している間のみ接点が動作するように構成されている。FET32は、無接点方式のスイッチング装置である。また、FET32は、複数のFETを並列に配置し、大電流に対応可能とされたものが使用されることが好ましい。電動モータ30、コンタクタ31、及びFET32は、ソレノイドバルブ34と共に、パワーユニット35内に備えられている。
【0040】
FET32は、バッテリー45と電動モータ30との間に配置され、バッテリーコード37を介してバッテリー45に接続されると共に、連結コード48を介して電動モータ30に接続されている。コンタクタ31は、モータアースコード46を介して電動モータ30に接続されると共に、シャシアースコード39により接地されている。尚、
図7の構成では、電動モータ30の上流側(バッテリー側)にFET32が配置され、電動モータ30の下流側(アース側)にコンタクタ31が配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。電動モータ30、コンタクタ31およびFET32は、これらが直列に接続されていれば、その接続順序は特に限定されない。
【0041】
さらに、電動モータ30への駆動電流が流れる直流回路には、該回路を流れる駆動電流を測定するために、シャント抵抗60と検流回路62とが接続されている。
図7の例では、シャント抵抗60は、バッテリーコード37の途中(バッテリー45とFET32との間)に接続されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記直流回路の何れの位置に接続されていてもよい。検流回路62は、シャント抵抗60に対して並列に接続されている。検流回路62は、パワーユニット35内に設けられていてもよく、またはコントロールボックス49内に設けられていてもよい。
【0042】
また、コンタクタ31には、コントロールボックス49からの第1信号線40が接続されている。FET32には、コントロールボックス49からの第2信号線42が接続されている。すなわち、コンタクタ31およびFET32は、それぞれ、第1信号線40および第2信号線42を介してコントロールボックス49から送られる制御信号によってON/OFF制御されるようになっている。
【0043】
給電制御装置10は、最初にキャブ内メインスイッチ55がON状態に切り換えられることで動作可能状態となる。そして、この動作可能状態において、押しボタン式リモコンスイッチ36または57が操作されると、車両荷役装置9の状態および操作指示内容に応じて、電動モータ30の給電制御、およびソレノイドバルブ34の開閉制御(油圧回路制御)を行う。なお、
図7には、押しボタン式リモコンスイッチ57を記載していないが、この押しボタン式リモコンスイッチ57は、押しボタン式リモコンスイッチ36と同等の役割を果たす。
【0044】
特に、電動モータ30の給電制御においては、電動モータ30への給電開始時には、コンタクタ31を閉じた後、所定時間(例えば100ms)経過後にFET32をONするようになっている。この場合、コンタクタ31を閉じる時には回路に電流は流れず、FET32のON時に電流が流れる。また、電動モータ30への給電停止時には、FET32をOFFした後、所定時間(例えば5s)経過後にコンタクタ31を開くようになっている。この場合、FET32のOFF時に電流が遮断され、コンタクトタ31を開く時には回路に電流は流れていない。すなわち、コンタクタ31の開閉切替では回路電流は変化しないため、有接点方式の電磁接触器であるコンタクタ31の開閉時に接点間に放電が生じ、コンタクタ31の接点が溶着したり、コンタクタ31の摩耗が生じたりすることを防止できる。その結果、給電制御装置10の寿命低下を抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る給電制御装置10は、コンタクタ31の開閉とFET32とのON/OFFタイミングのずれを利用してコンタクタ31の接点間の放電を防止できるだけでなく、このタイミングずれ期間を利用しての異常判定を行う点に特徴を有している。以下、この特徴について詳細に説明する。
【0046】
図8は、電動モータ30の給電制御におけるタイミングチャートであり、(a)はコントローラ入力、(b)はコンタクタ制御信号、(c)はFET制御信号を示している。ここでのコントローラ入力とは、押しボタン式リモコンスイッチ36または57が作業者によって操作されることによって生じるコントロールボックス49への入力である。すなわち、荷積降用プラットフォーム11の出し入れ、または荷積降用プラットフォーム11の上昇のために押しボタン式リモコンスイッチ36または57がON操作されると、コントローラ入力はONとなる。また、コンタクタ制御信号およびFET制御信号は、コントロールボックス49から第1信号線40および第2信号線42を介してコンタクタ31およびFET32にそれぞれ送られる制御信号である。
【0047】
先ず、時刻t1においてコントローラ入力がONになると、同時にコンタクタ制御信号がONとされ、コンタクタ31が閉じられる。そして、時間T1後の時刻t2においてFET制御信号がONとされ、FET32がONとなって電動モータ30への給電が開始される。
【0048】
この時、第1の異常判定として、時間T1の間(コンタクタ31が閉じられており、FET32がOFFの期間)に、検流回路62によって回路電流が流れていることが検出されると、異常有りと判定される。すなわち、時間T1の間は、FET32がOFFであるため、正常であれば給電電路(電動モータ30の駆動時に駆動電流が流れる電路)に電流は流れない。したがって、コンタクタ31を閉じたのみで電流が流れれば、FET32において漏電が生じていることになり、FET32に異常があると判定できる。この場合、FET32の異常を報知し、FET32の部品交換等を促すことができる。尚、異常の報知方法としては、例えば、車両の任意の箇所に異常報知ランプを設け、この異常報知ランプを点灯させるなどの方法が考えられる。また、第1の異常判定において異常有りと判定された場合、異常判定されると即座にコンタクタ31を開いて、給電を停止させて回路を保護する。
【0049】
第2の異常判定としては、時刻t1でコンタクタ31が閉じられた後、時刻t2でFET32がONされる前(すなわち、時間T1の間)に、短時間だけFET制御信号をONとし、給電電路に短時間だけ電流を流す。そして、この時に検出される電流値を第1の閾値と比較し、検出電流が第1の閾値を越えていれば、異常有りと判定される。すなわち、この時の検出電流が閾値を越えていれば、給電電路のどこか(例えば、電動モータ30)に短絡等の異常があると判定できる。この場合、回路における異常検出を報知し、異常発見のための検査等を促すことができる。また、上記異常判定のためにFET32をONする時間は短時間でよいため、給電電路に過剰な電流が長時間流れることを防止できる。また、第2の異常判定において異常有りと判定された場合、異常判定されると即座にFET32をOFFにして、給電を停止させて回路を保護する。尚、この時、FET32をOFFにして給電を停止するのは以下の理由による。第1に、コンタクタ31を開いて給電を停止する場合に比べ、FET32をOFFにする方が素早く給電を停止でき、その分、回路に過電流が流れる時間を短くして、回路に与える悪影響を最小限にすることができる。第2に、コンタクタ31を開いて給電を停止すると、コンタクタ31の接点間に放電(スパーク)が発生する虞があるが、FET32をOFFにして給電を停止することで放電(スパーク)の発生を防止できる。
【0050】
電動モータ30を停止状態から連続回転させる場合、一定時間(例えば10ms)以上継続して給電する必要があるが、第2の異常判定における短時間の給電では、この一定時間よりも短い時間(例えば1ms)だけ給電を行う。この短時間の給電は、もし回路等に異常が生じていてもその状態で長時間行うものではないので、部品破損等が生じない。なお、第1の閾値は、正常回路の場合の検出電流値よりも大きな値として設定される。
【0051】
時刻t2でFET32がONされると、コンタクタ31およびFET32の両方がONとなり、電動モータ30への給電が開始される。この時、FET制御信号は、最初の期間でFET32をPWM(パルス幅変調)制御し、電動モータ30の駆動電流を徐々に上昇させることが望ましい。
図8(c)では、時刻t2からt3の期間が、上記PWM制御期間を示している。尚、
図8(c)におけるPWM制御期間は制御結果をイメージで示したものであって、このPWM制御期間では実際にはパルス幅を変化してさせて電流もしくは電圧のON・OFFを繰り返す制御を行っている。
【0052】
時刻t4においてコントローラ入力がOFFになると、同時にFET制御信号がOFFとされ、FET32がOFFとなって電動モータ30への給電が停止される。この場合も、FET制御信号は、FET32をPWM(パルス幅変調)制御し、電動モータ30の駆動電流を徐々に下降させることが望ましい。
図8(c)では、時刻t4からt5の期間が、上記PWM制御期間を示している。そして、時刻t5から時間T2後の時刻t6においてコンタクタ制御信号がOFFとされ、コンタクタ31が開かれることで給電制御が完了する。
【0053】
第3の異常判定としては、電動モータ30への給電実施時(具体的には時刻t3からt4の間)に検出される電流値を第2の閾値と比較し、検出電流が第2の閾値を越えていれば、異常有りと判定される。尚、第2の閾値は、上述の第1の閾値よりも大きな値に設定される。
【0054】
ここで例えば、車両荷役装置9の正常動作時(荷積降用プラットフォーム11の載せられた荷物の質量が規定質量内の場合の動作時)における電流値が100A以下であり、油圧回路内のリリーフバルブ33(
図5参照)のリリーフ時の電流値が150Aの場合、第2の閾値は例えば200Aに設定される。尚、荷物の質量と電流値とは比例関係にある。車両荷役装置9の油圧回路には、通常、車両荷役装置9の荷重オーバー状態での使用により、油圧が規定値以上に上昇して油圧回路が破損することを防止するためのリリーフバルブ33が設けられており、油圧が規定値以上に上昇した場合にはリリーフバルブ33を開いて油圧を下げるようになっている。
【0055】
すなわち、検出電流が第2の閾値を越えた場合には、油圧回路の動作不能等(例えばリリーフバルブの故障)の重大な異常が生じていると判断され、その状態で電動モータ30への給電を継続すると、電動モータ30におけるコイル焼け焦げ等の二次被害を生じる恐れがある。そのため、このような場合には、コントロールボックス49は即座にFET32をOFFにして電動モータ30への給電を停止する。尚、第3の異常判定で異常有りと判定された場合にFET32をOFFにして給電を停止するのは、第2の異常判定で異常有りと判定された場合にFET32をOFFにして給電を停止するのと同じ理由である。
【0056】
図9は、電動モータ30の給電制御における他の例を示すタイミングチャートである。本実施の形態の給電制御では、電動モータ30への給電を停止する時、FET32をOFFした後、所定時間経過後にコンタクタ31を開くようになっている。また、この場合の所定時間は、比較的長い時間(例えば5s)とされており、コントローラ入力がOFFされた後(時刻t11またはt13)、コンタクタ制御信号がOFFとなる前に再びコントローラ入力がONされる(時刻t12またはt14)こともあり得る。これは、荷積降用プラットフォーム11の高さの微調整のために、作業者が押しボタン式リモコンスイッチ36または57の短期間の操作を繰り返し行う場合などに起こり得る。
【0057】
そして、コントローラ入力がOFFされた後、コンタクタ制御信号がOFFとなる前に再びコントローラ入力がONされた場合には、コントローラ入力がONになると同時にFET制御信号がONとされる。これにより、荷積降用プラットフォーム11の高さの微調整を行う場合などには、コンタクタ31は閉じたまま、FET32のON/OFFのみで電動モータ30への給電を制御することができる。
【0058】
図10は、電動モータ30の給電制御におけるさらに他の例を示すタイミングチャートである。車両荷役装置9では、様々なエラー検出を行っており、コントロールボックス49には、
図10(d)に示すような外部からのエラー検知信号も入力される。コントロールボックス49は、入力されるエラー検知信号がONとなった場合(何らかのエラーが検知された場合)に、コントローラ入力のON/OFFに関わらず、電動モータ30への給電を即座に停止するようにしてもよい。この場合、時刻t2でエラー検知信号がONとなると同時にFET制御信号をOFFとし、FET32を即座にOFFとすればよい。そして、時間T2後の時刻T22にコンタクタ制御信号をOFFとし、コンタクタ31を開くようにすればよい。
【0059】
尚、外部入力されるエラー検知信号としては、例えば以下の(A)〜(E)のようなものが挙げられる。
(A)モータ連続運転異常:車両荷役装置9では電動モータ30の連続運転(連続給電)時間に上限を設けており、この時間を越えて運転が行われた場合には異常とする。そのため、コントローラ入力が例えば20秒以上ONしている場合には、異常として検出する。
(B)FET温度異常:FET32は高温度になると破壊が生じやすくなるため、FET32の温度が閾値(例えば100℃)を越えると、異常として検出する。具体的には、FET32の温度をサーミスタで検出し、この検出温度が閾値を越えた場合に異常を検出する。
(C)過電流検知(上述の第3の異常判定):電動モータ30への給電実施時に検流回路62によって検出される電流値が過電流(第2の閾値以上)となった場合に異常を検出する。
(D)パワーオンエラー:キャブ内メインスイッチ55のON時にコントローラ入力がONされたまま(押しボタン式リモコンスイッチ36または57の操作信号がONのまま)であれば、これを異常として検出する。この場合、押しボタン式リモコンスイッチ36または57の故障(短絡等)が考えられる。
(E)バッテリー電圧異常:バッテリー45の電圧が低下した場合に異常を検出する。具体的には、電動モータ30がONされた後、所定時間(例えば1s)経過後のバッテリー45の電圧が閾値(例えば20V)以下となった場合に異常を検出する。
【0060】
本実施の形態に係る給電制御装置10では、ヒューズボックス47内のヒューズが切れる前に、第1〜第3の異常判定により過電流が流れることを防止できる。したがって、異常判定されて給電停止された後、ヒューズの交換なしで復帰させることが可能となる。また、ヒューズは、一般的に切れる(とぶ)時の入力電流や入力時間にばらつきが大きく、ヒューズが切れるまでの間に過電流が数秒間流れ、部品破損やバッテリーの異常放電が発生する虞がある。本実施の形態に係る給電制御装置10による第1〜第3の異常判定によって給電停止を行えば、そのような虞は無い。
【0061】
尚、これらの異常が検出された場合、上述したモータ給電停止制御を行うだけでなく、異常検出結果をメンテナンス情報として記憶したり、記憶された異常検出結果を解析したりできるようにすることが望ましい。そのための構成について、
図11を参照して説明する。
【0062】
図11は、コントロールボックス49の構成を示すブロック図である。
図11に示すように、コントロールボックス49は、CPU(開閉制御部、異常判定部)491,RAM(一時記憶部)492,ROM493,制御信号出力回路494,制御信号入力回路495,USBインターフェース(出力部)496等を備えている。
【0063】
CPU491は、メインコントローラとして車両荷役装置9の制御や異常判定を行うものであり、具体的には、コンタクタ31の開閉制御およびFET32のON/OFF制御や、油圧回路におけるバルブ制御や、検流回路62による検出電流値に基づく異常判定を行う。RAM492は、CPU491の制御や判定において必要なデータ等を記憶する。ROM493には、制御プログラム等が格納される。
【0064】
制御信号出力回路494は、コンタクタ31の制御信号およびFET32の制御信号を生成して出力する手段である。制御信号入力回路495は、作業者による各種操作入力や、検流回路62による検出電流値をコントロールボックス49に取り入れるためのインターフェースである。USBインターフェース496は、コントロールボックス49に携帯情報端末である携帯用パソコン70を接続し、データのやり取りを行うためのインターフェースである。尚、携帯情報端末は、携帯用PCに限定されるものではなく、PDA、携帯電話機、モバイルツールなどの表示装置を備えたものであればよい。また、携帯情報端末との接続に使用するインターフェースもUSBに限定されるものでなく、他の任意のインターフェースを用いることができる。
【0065】
車両荷役装置9において、上述した各種異常が検出された場合、その異常検出結果はコントロールボックス49にメンテナンス情報として記憶される。尚、記憶された異常検出結果(メンテナンス情報)は、車両荷役装置9が一定期間使用された後で外部装置に取り出すことが想定される。このため、異常検出結果(メンテナンス情報)を例えばRAM492に記憶するのであれば、RAM492にバックアップ電源を備え、電源OFFにしても記憶内容が保たれるようにする必要がある。記憶された異常検出結果は、USBインターフェース496を介して接続された携帯用パソコン70にて読み込み、解析できるように構成されている。具体的には、携帯用パソコン70は、記憶されていた異常検出結果を解析し、車両荷役装置9の稼働状況、メンテナンスが必要な部位及びメンテナンス履歴を解析する。また、携帯用パソコン70は、印刷装置を備え、解析した結果を印刷可能に構成されていてもよい。
【0066】
また、コントロールボックス49は、異常検出結果以外の情報も記憶し、携帯用パソコン70はそれらの情報を利用して解析を行ってもよい。例えば、検流回路62による検出電流を情報として記憶し、この検出電流から荷重を推定して、荷重オーバーとなる使用の有無を解析したり、推定荷重を履歴としてメンテナンス情報に活用することも考えられる。
【0067】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。