(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明に係る通過確認装置の実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。本発明は、通過確認装置一般に適用することができる。
【0013】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る通過確認装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る通過確認装置1は、被検体の消化管内に導入されるカプセル型医療装置が該消化管を通過可能であるか否かを確認する通過確認装置である。カプセル型医療装置は、例えばカプセル型内視鏡である。超音波発生装置10は、通過確認装置1に超音波11を照射して、通過確認装置1を崩壊させるための装置である。
【0015】
通過確認装置1は、粒子2と、粒子2が混ぜられている本体部3と、本体部3の表面を被覆する被覆部4と、を備える。
【0016】
粒子2は、外部から照射された超音波によるキャビテーションを発生可能な微小気泡を有する媒質を内包している。具体的には、粒子2は、リン脂質等からなる皮膜を有し、該皮膜に微小気泡を有する媒質としての酸性液が内包されている。粒子2の大きさは、例えば直径2μmであるが、特に限定されない。
【0017】
皮膜は、超音波造影剤においてマイクロバブルのシェルとして用いられる材料からなる。例えば、皮膜として、レシチン、セファリン等のリン脂質、変性アルブミン、生分解性ポリマー(PLGA:Poly Lactic−co−Glycolic Acid)を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
媒質は、被検体に悪影響を及ぼさない生体適合性を有し、かつ微小気泡を有するpHが1〜5程度の酸性液である。具体的には、媒質は、製剤に用いられる微小気泡を有する有機酸又はホウ酸である。例えば、媒質として、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸、又はホウ酸等の無機酸を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、媒質は、生体内で代謝される材料であることが好ましい。
【0019】
微小気泡は、超音波造影剤において用いられる微小気泡であってよく、超音波11を照射するとキャビテーションが発生する。例えば、微小気泡として、空気、フッ化炭素、フッ化硫黄を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
また、微小気泡は、超音波造影剤としても機能する。通過確認装置1を崩壊させる超音波11より十分音圧が小さい超音波を通過確認装置1に照射することにより、微小気泡を共振又はわずかに崩壊させることにより、通過確認装置1の位置を確認することができる。
【0021】
本体部3は、短手方向の外径がカプセル型医療装置の短手方向の外径と略等しい。すなわち、短手方向の断面形状がカプセル型医療装置と略等しいため、カプセル型医療装置が被検体の消化管内を通過可能であるか否かを確認することができる。なお、本体部3は、カプセル型医療装置と同じ大きさであることが好ましい。
【0022】
また、本体部3は、超音波の照射による粒子2の破裂にともなって、媒質によって崩壊する材料からなる。具体的には、本体部3は、酸性液である媒質により溶解する材料からなる。例えば、本体部3として、ポリビニルアセタールジエチル、アミノアセテート、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、ポリビニルアミノアセタールを用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
被覆部4は、製剤で用いられる腸溶性の材料からなる。具体的には、被覆部4は、腸溶性の高分子膜である。例えば、被覆部4として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、セルロースアセテートマレアート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチルコポリマー、メタアクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー等のメタアクリル酸系共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコールフタレート、ポリビニルアセタールフタレート、シェラック等を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
なお、本体部3及び被覆部4には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、凝集防止剤、コーティング性及び膜形成性等を改善するための可塑剤、界面活性剤、静電気防止剤、光の透過性を調整する添加剤、着色剤等、通常製薬の分野で常用される種々の薬効がない配合剤を配合してもよい。
【0025】
超音波発生装置10は、超音波を発生可能な装置であれば特に限定されない。超音波発生装置10は、通過確認装置1に超音波11を照射する際に、超音波11の走査範囲を通過確認装置1に絞って照射してもよい。
【0026】
次に、通過確認装置1を用いて、カプセル型医療装置が被検体の消化管内を通過可能であるか否かを確認する方法を説明する。まず、被検体が通過確認装置1を嚥下すると、被覆部4が腸溶性であるため、通過確認装置1は、食道及び胃を通過して、小腸まで溶解せずに消化管内を通過する。
【0027】
続いて、通過確認装置1が小腸に入り所定の時間が経過すると、被覆部4が溶解する。これに対して、本体部3は、酸溶性であるから、腸液では溶解しない。
【0028】
その後、通過確認装置1が被検体の消化管内を通過可能である場合、通過確認装置1は、被検体の小腸及び大腸を通過し、肛門から体外に排出される。
【0029】
一方、通過確認装置1が被検体の消化管内を通過可能ではない場合、通過確認装置1は、被検体の消化管内の狭窄している部位に滞留する。
【0030】
医療従事者が通過確認装置1の位置を確認し、通過確認装置1が消化管内で滞留していると判断した場合、医療従事者は、超音波発生装置10から通過確認装置1に超音波11を照射する。
【0031】
通過確認装置1に超音波11を照射すると、微小気泡にキャビテーションが発生し、粒子2が破裂する。すると、粒子2内にあった酸性液により本体部3が溶解する。その結果、通過確認装置1全体が崩壊する。
【0032】
以上説明したように、通過確認装置1は、超音波11を照射することにより崩壊させることができるので、医療従事者の判断により直ちに崩壊させることができる通過確認装置である。
【0033】
なお、医療従事者は、定期的に通過確認装置1の位置を確認することにより、通過確認装置1が消化管内で滞留しているか否かを判断してもよい。また、医療従事者は、所定の時間が経過した後に、通過確認装置1が体外に排出されない場合に、通過確認装置1の位置を確認して、通過確認装置1が消化管内で滞留しているか否かを判断してもよい。
【0034】
また、従来の通過確認装置では、被検体の消化管内を通過可能であるか否かを確認するため、消化管内に狭窄がない場合には体外に排出されるまで通過確認装置が溶解しないことが求められる。その結果、消化管内に狭窄がある場合には、通過確認装置が長時間にわたって被検体の消化管内に滞留するため、被検体への負担が大きいだけでなく、通過確認装置により閉塞が起こるリスクがあった。これに対して、通過確認装置1では、医療従事者が被検体の消化管内に通過確認装置1が滞留していると判断したら、直ちに通過確認装置1を崩壊させることができるため、被検体の負担を最小限にすることができ、閉塞が起こるリスクもない。
【0035】
さらに、従来の通過確認装置では、被検体の体内環境(pH、水分量、病変の状態等)に依存して通過確認装置が溶解するまでの時間が変わるため、通過確認装置が溶解するまでにかかる時間にばらつきが生じていた。これに対して、通過確認装置1では、医療従事者の判断によって通過確認装置1を崩壊させることができるため、このようなばらつきが生じない。
【0036】
また、従来の通過確認装置では、通過確認装置の位置を確認するために、X線を用いていたため、被検体が被爆するという課題があった。これに対して、通過確認装置1では、超音波により位置を確認することができるため、被爆することがない。また、クローン病の患者は被爆の影響を受けやすいため、通過確認装置1は、クローン病の患者に用いるのに好適である。
【0037】
同様に、従来の通過確認装置では、通過確認装置の位置を確認するために、X線を用いるため、被検体が硫酸バリウム等の造影剤を含有した通過確認装置を飲む必要があった。硫酸バリウムは、アレルゲンであるため、硫酸バリウムを飲むと被検体に悪影響を及ぼす場合がある。これに対して、通過確認装置1では、通過確認装置1の微小気泡が超音波造影剤として機能するため、被検体が造影剤を飲む必要がない。
【0038】
(変形例1)
図2は、実施の形態の変形例1に係る通過確認装置の構成を示す模式図である。
図2に示すように、通過確認装置1Aは、一般的な薬剤に用いられる腸溶性のカプセルである被覆部4Aを備える。例えば、被覆部4Aとして、ゼラチン、プルラン、HPMC(HydroxyPropyl MethylCellulose)等を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
カプセルを用いることにより、通過確認装置1の製造工程を簡易にすることができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0040】
(変形例2)
図3は、実施の形態の変形例2に係る通過確認装置の構成を示す模式図である。
図3に示すように、通過確認装置1Bは、本体部3に内包された素錠5Bを備える。
【0041】
素錠5Bは、例えば賦形剤である。例えば、素錠5Bとして、白糖、乳糖、でんぷん、結晶セルロース、崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)等を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本体部3の内部に素錠5Bを配置することにより、本体部3の厚さが薄くなり、通過確認装置1が崩壊するまでにかかる時間を短縮することができる。また、本体部3の内部に素錠5Bを配置することにより、通過確認装置1の製造コストを削減することができる。
【0043】
なお、本体部3は、素錠5Bに代えて空洞を内包していてもよい。
【0044】
(変形例3)
図4は、実施の形態の変形例3に係る通過確認装置の構成を示す模式図である。
図4に示すように、通過確認装置1Cは、被覆部4Aと、本体部3に内包された素錠5Bと、を備える。
【0045】
通過確認装置1Cでは、変形例1及び変形例2と同様に、通過確認装置1が崩壊するまでにかかる時間を短縮することができるとともに、通過確認装置1の製造コストを削減することができる。
【0046】
(変形例4)
図5は、実施の形態の変形例4に係る通過確認装置の構成を示す模式図である。
図5に示すように、通過確認装置1Dは、粒子2Dと、粒子2Dが混ぜられている本体部3Dと、を備える。また、通過確認装置1Dは、被覆部を有しない。
【0047】
粒子2Dの媒質は、例えば微小気泡を有する水等の液体中に入れられた微生物や酵素からなる。例えば、媒質として、キチナーゼ、キトサナーゼ、乳酸菌、レンサ球菌、偏性嫌気性菌、バクテロイデス属、ユーバクテリウム、ビフィズス菌、クロストリジウム属等を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。粒子2Dの皮膜、微小気泡は実施の形態と同様の構成であってよい。
【0048】
本体部3Dは、生分解性材からなる。例えば、本体部3Dとして、キトサン、キチン、生分解性ポリマー(PLGA)等を用いることができる。また、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
通過確認装置1Dでは、超音波11を照射すると粒子2D内にあった微生物又は酵素により本体部3Dが分解される。その結果、通過確認装置1D全体が崩壊する。通過確認装置1Dのように、被覆部を有しない構成であってもよい。
【0050】
ただし、通過確認装置1Dでは、生分解性材からなる本体部3Dが、超音波11を照射しなくても大腸で分解してしまうため、食道から小腸までの開通性しか確認することができない。また、通過確認装置1Dが体外に排出されないため、医療従事者は、超音波により通過確認装置1Dの位置を確認して、通過確認装置1Dが消化管内で滞留しているか否かを判断する必要がある。
【0051】
(変形例5)
図6は、実施の形態の変形例5に係る通過確認装置の構成を示す模式図である。
図6に示すように、通過確認装置1Eは、粒子2Dと、本体部3Dと、素錠5Bと、を備える。
【0052】
変形例4と同様の構成において、本体部3Dの内部に素錠5Bを配置することにより、通過確認装置1の製造コストを削減することができる。
【0053】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。