(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、枠体内の開口が大きい(障子の幅寸法が大きい)建具に対して、上述した引寄せ機構を設けた場合には、以下に示す問題がある。
戸先側及び戸尻側に上述した第1,第2引寄せ機構をそれぞれ設けた場合には、障子の戸先側及び戸尻側については、当該障子の面外方向の一方側(例えば、室内側)に引き寄せることができる。しかしながら、障子の幅寸法が大きいため、障子の戸先側及び戸尻側の中央部分については、当該一方側に引き寄せることができない。すなわち、障子全体を当該一方側に引寄せることができない、という第1の問題がある。
また、第1の問題を解決するために、上述した第1,第2引寄せ機構の離間距離を狭めることが考えられる。しかしながら、第1,第2引寄せ機構は、上枠の長手方向に平行な同一の直線上にそれぞれ配設されている。このため、障子を移動する際に、第1,第2引寄せ機構の一方の引寄せ機構のころが他方の引寄せ機構のガイド片に干渉してしまう。すなわち、障子を円滑に移動することができない、という第2の問題がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、障子全体を当該障子の面外方向の一方側に引き寄せることができるとともに、当該障子を円滑に移動することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、複数の枠材が枠組みされた枠体と、当該枠体内に移動可能に配置された障子とを備えた建具であって、前記複数の枠材のうち第1の枠材及び前記障子には、当該障子が前記枠体内の開口を閉塞する閉位置に移動する際に、当該障子を当該障子の面外方向の一方側にそれぞれ引き寄せる第1引寄せ機構及び第2引寄せ機構が設けられ、前記第1引寄せ機構及び前記第2引寄せ機構は、当該建具の見込み方向の異なる位置にそれぞれ設けられているとともに、前記第1の枠材の長手方向の異なる位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0007】
以下では、説明の便宜上、障子の面外方向の一方側を「第1の方向」と記載し、当該一方側とは逆方向を「第2の方向」と記載する。
本発明では、第1,第2引寄せ機構は、建具の見込み方向の異なる位置にそれぞれ設けられているとともに、第1の枠材の長手方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。このため、枠体の開口が大きい建具に対して当該第1,第2引寄せ機構を設ける場合に、障子全体を第1の方向に引き寄せるために、当該第1,第2引寄せ機構の離間距離を狭めることができる。具体的に、第1,第2引寄せ機構が第1の枠材の長手方向に平行する異なる2つの直線上にそれぞれ配置されているため、当該第1,第2引寄せ機構の離間距離を狭めた場合であっても、障子を移動する際に、第1,第2引寄せ機構が互いに干渉することがない。
したがって、本発明に係る建具によれば、障子全体を第1の方向に引き寄せることができるとともに、当該障子を円滑に移動することができる。
【0008】
また、本発明は、上述した建具において、前記第1の枠材には、前記長手方向に沿って延在し、前記障子の移動を案内する案内溝が設けられ、前記第1引寄せ機構は、前記障子に設けられた突起部と、前記第1の枠材に設けられた第1受け部材とを備え、前記突起部は、前記障子から前記第1の枠材に向けて突出して前記案内溝内に挿入され、前記第1受け部材は、前記案内溝内に設けられ、前記障子が前記閉位置に移動する際に、前記突起部に当接して当該突起部を前記一方側に案内する第1案内面を有し、前記第2引寄せ機構は、前記案内溝外に設けられていることを特徴とする。
本発明では、第1引寄せ機構は、案内溝内に挿入される上述した突起部と、案内溝内に設けられる上述した第1案内面とを備える。一方、第2引寄せ機構は、案内溝外に設けられる。このため、障子を移動する際に、第1,第2引寄せ機構が互いに干渉することをより確実に防止することができる。
【0009】
また、本発明は、上述した建具において、前記突起部は、前記障子が前記閉位置以外の位置で移動する際に、前記案内溝内を摺動して当該障子の移動を案内し、前記第1受け部材は、前記案内溝に対して当該案内溝の延在方向に連通する引寄せ溝を有し、前記第1案内面は、前記引寄せ溝の側面であることを特徴とする。
本発明では、突起部は、障子が閉位置以外の位置で移動する際に、案内溝内を摺動して当該障子の移動を案内する。すなわち、障子を第1の方向に引き寄せる機能(以下、引寄せ機能と記載)の他、障子の移動を案内する機能(以下、ガイド機能と記載)を突起部に持たせることができる。このため、引寄せ機能を有する部材とガイド機能を有する部材とを別個に設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
また、突起部は、障子が閉位置以外の位置で移動する際に、案内溝内を摺動する。このため、当該突起部が設けられた障子の部位において、当該障子が閉位置以外の位置で移動する際に、当該障子が当該障子の面外方向にがたつくことを抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、上述した建具において、前記第2引寄せ機構は、前記障子に設けられた引寄せ片と、前記第1の枠材に設けられた第2受け部材とを備え、前記引寄せ片は、前記一方側とは逆方向に突出する凸部を有し、前記第2受け部材は、前記障子が前記閉位置に移動する際に、前記凸部に当接して当該凸部を前記一方側に案内する第2案内面を有することを特徴とする。
本発明では、第2引寄せ機構は、上述した引寄せ片と上述した第2受け部材を備える。このため、第2引寄せ機構の構成を簡素化することができる。
【0011】
また、本発明は、上述した建具において、前記第1の枠材には、前記枠体の内周側に突出し、前記長手方向に沿って延在するレールが設けられ、前記レールには、前記長手方向に沿って延在し、前記障子の移動を案内する案内溝が設けられ、前記第2受け部材は、前記レールにおける前記案内溝外の外面に設けられ、前記凸部は、前記障子が前記閉位置以外の位置で移動する際に、前記外面上を摺動することを特徴とする。
本発明では、凸部は、障子が閉位置以外の位置で移動する際に、レールにおける案内溝外の外面上を摺動する。このため、引寄せ片が設けられた障子の部位において、当該障子が閉位置以外の位置で移動する際に、当該障子が第2の方向にがたつくことを抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、上述した建具において、前記第1の枠材及び前記障子には、当該障子が前記閉位置以外の位置に位置する際に、当該障子の前記一方側への移動を規制するガタ防止機構が設けられ、前記ガタ防止機構は、前記第1引寄せ機構及び前記第2引寄せ機構とは前記見込み方向の異なる位置に設けられていることを特徴とする。
本発明では、第1の枠材及び障子には、当該障子が閉位置以外の位置に位置する際に、当該障子の第1の方向への移動を規制するガタ防止機構が設けられている。このため、ガタ防止機構が設けられた障子の部位において、障子が閉位置以外の位置で移動する際に、当該障子が第1の方向にがたつくことを抑制することができる。
また、ガタ防止機構は、第1,第2引寄せ機構とは建具の見込み方向の異なる位置に設けられている。このため、障子を移動する際に、第1,第2引寄せ機構及びガタ防止機構が互いに干渉することを抑制し、障子を円滑に移動することができる。
【0013】
また、本発明は、上述した建具において、前記ガタ防止機構は、前記障子に設けられた摺動機構と、前記第1の枠材に設けられた第3受け部材とを備え、前記摺動機構は、前記障子に固定される支持部材と、前記支持部材に対して回動可能に軸支され、回動することで前記第1の枠材に当接して前記障子の前記一方側への移動を規制する摺動位置、及び、前記第1の枠材から離間する非摺動位置にそれぞれ位置付けられる摺動片と、前記摺動片を前記摺動位置に向けて付勢する付勢部材とを備え、前記第3受け部材は、前記障子が前記閉位置に移動する際に、前記摺動片に当接し、前記付勢部材の付勢力に抗して当該摺動片を前記非摺動位置に回動させる第3案内面を有することを特徴とする。
本発明では、ガタ防止機構は、上述した摺動機構と上述した第3受け部材とを備える。すなわち、摺動片は、障子が閉位置に移動する際には、第3案内面により、付勢部材の付勢力に抗して非摺動位置に位置付けられる。このため、第1,第2引寄せ機構による障子の第1の方向への引き寄せが可能となる。一方、摺動片は、障子が閉位置以外の位置に移動する際には、付勢部材により、摺動位置に位置付けられる。このため、摺動片による障子の第1の方向への移動規制が可能となる。したがって、障子の位置に応じた摺動片の回動位置の変更を簡素な構成で容易に実現することができる。
【0014】
また、本発明は、上述した建具において、前記第1の枠材には、前記枠体の内周側に突出し、前記長手方向に沿って延在するレールが設けられ、前記レールには、前記長手方向に沿って延在し、前記障子の移動を案内する案内溝が設けられ、前記第3受け部材は、前記レールにおける前記案内溝外の外面に設けられ、前記摺動片は、前記障子が前記閉位置以外の位置で移動する際に、前記付勢部材にて前記摺動位置に位置付けられ、前記外面上を摺動することを特徴とする。
本発明では、摺動片は、障子が閉位置以外の位置で移動する際に、付勢部材にて摺動位置に位置付けられ、レールにおける案内溝外の外面上を摺動する。このため、摺動片が設けられた障子の部位において、当該障子が閉位置以外の位置で移動する際に、当該障子が第1の方向にがたつくことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る建具によれば、障子全体を第1の方向に引き寄せることができるとともに、当該障子を円滑に移動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0018】
〔建具の概略構成〕
図1は、本実施の形態に係る建具1を室内側から見た図である。
図2は、建具1の縦断面図である。
図3は、建具1の横断面図である。
なお、以下で記載する「見込み方向」は、
図2,
図3の矢印Arで示すように、建具1の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った平面については、見込み面と称し、見込み方向に直交する平面については、見付け面と称する。
建具1は、片引き窓で構成され、枠体2と、障子3と、固定面材4とを備える。
【0019】
枠体2は、上枠21、下枠22、障子3の戸先側に位置する戸先側縦枠23、及び障子3の戸尻側に位置する戸尻側縦枠24を四周枠組みすることによって構成され、建物の開口部(図示略)の縁部に沿うように取り付けられる。また、枠体2は、上枠21及び下枠22に架け渡された方立枠25(
図3)を備える。そして、上枠21、下枠22、戸先側縦枠23、及び戸尻側縦枠24で構成される開口Opは、方立枠25により、第1,第2開口Op1,Op2の2つの開口に区画される。なお、第1開口Opは、本発明に係る開口に相当する。
これら各枠材21〜25は、木材、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂材料、アルミニウム等の金属材料等で構成されている。
【0020】
ここで、上枠21は、本発明に係る第1の枠材に相当する。そして、上枠21における下方側の見込み面21aの室内側には、上レール部26(
図2)が固定されている。
上レール部26は、本発明に係るレールに相当する。この上レール部26は、基部261と、内突出部262と、外突出部263とを備える。
基部261は、上枠21と略同一の全長を有する長尺状の平板で構成され、見込み面21aに固定される部分である。
内突出部262及び外突出部263は、基部261の下方側の面からそれぞれ突出するとともに当該基部261の長手方向の略全長に亘ってそれぞれ延在する。なお、外突出部263は、内突出部262に対して室外側に位置し、当該内突出部262に対して見込み方向に互いに対向する。
そして、基部261、内突出部262、及び外突出部263で囲まれる溝部は、障子3の移動を案内する本発明に係る案内溝264として機能する。
【0021】
また、下枠22において、上レール部26に対向する位置には、下枠22と略同一の全長を有し、障子3の移動を案内する下レール部27(
図2)が設けられている。
さらに、第1開口Op1を形成する上枠21、下枠22、及び戸先側縦枠23には、枠体2の内周側(上枠21では下方側、下枠22では上方側、戸先側縦枠23では
図3中、右側)に突出する対向部211(
図11A参照),221(
図15A参照),231(
図3)がそれぞれ設けられている。
これら対向部211,221,231における室内側の見付け面211a,221a,231a、及び方立枠25における室内側の見付け面25aは、同一平面上に位置するとともに、互いに連結されて一繋がりとなる。そして、当該見付け面211a,221a,231a,25aは、障子3が第1開口Op1を閉塞する閉位置に位置した状態(
図1,
図3に示した状態)で、障子3に対して見込み方向に対向する。また、当該見付け面211a,221a,231a,25aには、無端状のシール材Sが取り付けられている。本実施の形態では、シール材Sとして、シール基部S1の室内側にチューブ状の圧接部S2を有した定形のものを採用している。
また、第2開口Op2を形成する上枠21、下枠22、戸尻側縦枠24、及び方立枠25には、固定面材4を固定するための固定部212,222,241,251がそれぞれ設けられている。
【0022】
障子3は、開口OP内において、固定面材4及び方立枠25に対して室内側に位置し、上,下レール部26,27に沿って
図1,
図3中、左右方向に移動可能に取り付けられている。この障子3は、ガラス材等の面材31と、框部材32とを備える。
框部材32は、上框33と、下框34と、戸先框35と、召合せ框36とを框組みすることにより構成され、内部で面材31の外周縁部を保持する。
これら各框材33〜36は、木材、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂材料、アルミニウム等の金属材料等で構成されている。
【0023】
ここで、障子3の上端(上框33、戸先框35、及び召合せ框36の上端)には、障子3の幅方向(
図1中、左右方向)の全長に亘って延在し、上レール部26が挿入される溝部37(
図2)が設けられている。
また、下框34には、当該下框34から一部が下方に突出し、下レール部27上を転動する戸車38(
図2)が設けられている。本実施の形態では、戸車38は、下框34の長手方向に平行な軸を中心として回動可能とし、下レール部27に対して傾斜可能に構成されている(
図15A,
図15B参照)。
さらに、戸先框35には、グレモン錠L1(
図3)が設けられている。また、戸先框35における室内側の見付け面35aには、グレモン錠L1を操作する操作ハンドルL2が設けられている。そして、障子3が閉位置に位置した状態で、操作ハンドルL2を操作すると、グレモン錠L1は、戸先側縦枠23に設けられた錠受けL3に係合する。これにより、障子3は、第1開口Op1を閉塞した状態に保持される。
【0024】
また、召合せ框36及び方立枠25には、障子3が閉位置に位置した際に、互いに係合する係合構造L4(
図3)が設けられている。
係合構造L4は、召合せ框36に設けられた係合片L5と、方立枠25に設けられた係合受け部L6とを備える。
係合片L5は、断面U字形状を有し、召合せ框36における室外側の見付け面36aから室外側に突出するとともに、U字形状の開口部分が戸先側を向く姿勢で、見付け面36aに固定される。
係合受け部L6は、平板状の基部L61と、当該基部L61における戸尻側の縁部から室内側に屈曲して延在した案内片L62とを備える。
そして、障子3を閉位置に移動させると、係合片L5は、案内片L62に当接するとともに当該案内片L62にて室外側に引き寄せられ、基部L61が当該係合片L5内に位置することで、係合受け部L6に係合する。
【0025】
固定面材4は、ガラス材等で構成され、四方の周縁部が各固定部212,222,241,251にそれぞれ固定される。そして、固定面材4は、第2開口Op2を閉塞する。
【0026】
図4A及び
図4Bは、上レール部26、障子3、第1,第2引寄せ機構5,6、及びガタ防止機構7の位置関係を示す図である。なお、
図4Aは、障子3が閉位置に位置している状態を示している。
図4Bは、障子3が閉位置以外の位置に位置している状態を示している。
本実施の形態では、上枠21及び上框33には、障子3が閉位置に移動する際に、当該障子3を室外側に引き寄せる第1,第2引寄せ機構5,6が設けられている。また、上枠21及び上框33には、障子3が閉位置以外に位置する際に、当該障子3の室外側への移動を規制するガタ防止機構7が設けられている。
以下、第1,第2引寄せ機構5,6及びガタ防止機構7の構成について順に説明する。
【0027】
〔第1引寄せ機構の構成〕
図5は、第1引寄せ機構5を示す斜視図である。
第1引寄せ機構5は、障子3に設けられたガイドピン51と、上枠21に設けられた第1受け部材52とを備える。
ガイドピン51は、ベース部511と、ピン本体512と、ローラ513とを備える。
ベース部511は、平面視矩形状の平板で構成され、各板面が上下方向にそれぞれ向く姿勢で上框33における面材31に臨む見込み面33aに固定される(
図2)。
ピン本体512は、ベース部511の上方側の板面に立設された円柱形状を有する。そして、ピン本体512は、上框33を貫通し、溝部37内に突出するとともに、先端が案内溝264内に挿入される(
図2)。
ローラ513は、案内溝264の幅寸法と略同一の直径を有する円環形状を有し、ピン本体512の先端に対して、当該ピン本体512の中心軸と同軸となり、当該中心軸を中心として回動可能に取り付けられている。そして、ローラ513は、障子3の移動に応じて案内溝264内を回転しながら摺動する。
以上説明したピン本体512及びローラ513は、本発明に係る突起部に相当する。
【0028】
図6は、第1受け部材52を示す斜視図である。
第1受け部材52は、ベース部521と、第1溝形成ヒレ部522と、第2溝形成ヒレ部523とを備える。
ベース部521は、長尺状の平板で構成され、各板面が上下方向にそれぞれ向き、その長手方向が上レール部26の長手方向に合致する姿勢で基部261の下方側の面(案内溝264内)に固定される。
第1溝形成ヒレ部522は、ベース部521の室外側の縁部から室外側に延在し、さらに、下方側に屈曲して延在した部分である。この第1溝形成ヒレ部522は、ベース部521の長手方向に沿って延在し、当該ベース部521と略同一の全長を有する。この第1溝形成ヒレ部522において、室内側の面には、当該第1溝形成ヒレ部522の長手方向の略中央部分から室内側に膨出する膨出部524が設けられている。この膨出部524の室内側の面は、第1溝形成ヒレ部522の長手方向の略中央部分が室外側に窪み、当該長手方向に沿ってなだらかに延在する凹曲面524aで構成されている。
以下、第1溝形成ヒレ部522において、膨出部524に対して、当該第1溝形成ヒレ部522の長手方向の両側部分をそれぞれ張出部525と記載する。
そして、第1溝形成ヒレ部522は、一対の張出部525が外突出部263の室外側の面に当接するとともに、外突出部263に形成された切欠き部265(
図4A,
図4B)から膨出部524が案内溝264内に位置する状態で配置される。この際、凹曲面524aは、外突出部263の室内側の面に対して、段差なく連続する。
【0029】
第2溝形成ヒレ部523は、ベース部521の室内側の縁部から下方側に屈曲して延在し、第1溝形成ヒレ部522に対向する部分である。この第2溝形成ヒレ部523は、ベース部521の長手方向の略中央部分に位置する。この第2溝形成ヒレ部523において、室外側の面は、凹曲面524aに倣い、室外側に突出して、ベース部521の長手方向に沿ってなだらかに延在する凸曲面523aで構成されている。
そして、第2溝形成ヒレ部523は、室内側の平面が内突出部262の室外側の面に当接した状態で配置される。この際、凸曲面523aは、内突出部262の室外側の面に対して、段差なく連続する。
以上説明したベース部521、凹曲面524a、及び凸曲面523aで囲まれる溝部は、案内溝264の長手方向に連通し、本発明に係る引寄せ溝526に相当する。なお、引寄せ溝526の幅寸法は、案内溝264の幅寸法と略同一に設定されている。また、凹曲面524a及び凸曲面523aは、本発明に係る第1案内面に相当する。
【0030】
〔第2引寄せ機構の構成〕
図7は、第2引寄せ機構6を示す斜視図である。
第2引寄せ機構6は、障子3に設けられた引寄せ片61と、上枠21に設けられた第2受け部材62とを備える。
引寄せ片61は、ベース部611と、凸部612とを備える。
ベース部611は、長尺状の平板で構成され、各板面が上下方向にそれぞれ向き、その長手方向が上框33の長手方向に合致する姿勢で、上框33の上端において、上レール部26に対して室外側に固定される。
凸部612は、ベース部611の室内側の側面において、当該ベース部611の長手方向の略中央部分に位置し、室内側(溝部37内)に突出した部分である。この凸部612の先端は、ベース部611の長手方向に沿ってなだらかに延在する凸曲面で構成されている。
【0031】
第2受け部材62は、ベース部621と、案内片622とを備える。
ベース部621は、長尺状の平板で構成され、各板面が上下方向にそれぞれ向き、その長手方向が上レール部26の長手方向に合致する姿勢で、見込み面21aに固定される。より具体的に、基部261において、外突出部263に対して室外側の部位には、切欠き部(図示略)が形成されている。そして、ベース部621は、当該切欠き部を介して、見込み面21aに固定される。すなわち、ベース部621(第2受け部材62)は、案内溝264外に設けられている。
案内片622は、ベース部621における下方側の面から下方に突出した部分である。この案内片622において、室外側の面は、室外側に突出して、ベース部621の長手方向に沿ってなだらかに延在する凸曲面622aで構成されている。
そして、案内片622は、室内側の平面が外突出部263の室外側の面に当接した状態で配置される。この際、凸曲面622aは、外突出部263の室外側の面に対して、段差なく連続する。
なお、凸曲面622aは、本発明に係る第2案内面に相当する。
【0032】
〔ガタ防止機構の構成〕
ガタ防止機構7は、障子3に設けられた摺動機構8と、上枠21に設けられた第3受け部材9とを備える。
図8A、
図8B、
図9A、及び
図9Bは、摺動機構8を示す図である。なお、
図8A及び
図9Aは、障子3が閉位置以外の位置に位置している場合での摺動機構8の状態を図示したものである。
図8B及び
図9Bは、障子3が閉位置に位置している場合での摺動機構8の状態を図示したものである。
摺動機構8は、支持部材81と、回動軸82と、摺動片83と、コイルバネ84とを備える。
【0033】
支持部材81は、各部材82〜84を支持しつつ、上框33の上端において、上レール部26に対して室内側に固定される。この支持部材81は、支持部材本体811と、一対の固定部812とを備える。
支持部材本体811は、室内側に位置する室内側壁部811aと、当該室内側壁部811aにおける戸先側及び戸尻側の両縁部から室外側に屈曲して延在する一対の対向壁部811bと、当該室内側壁部811Aの上方側の縁部から室外側に屈曲して延在する上壁部811cとを備える。そして、支持部材本体811は、室内側壁部811a及び一対の対向壁部811bで囲まれるU字状の開口が溝部37内に臨む姿勢で配置される。
一対の固定部812は、一対の対向壁部811bの上方側の縁部から互いに離間する方向に延在し、上框33の上端にそれぞれ固定される部分である。
【0034】
回動軸82は、円柱形状を有する。そして、回動軸82は、一対の対向壁部811b間に架け渡され、摺動片83を回動可能に軸支する。
摺動片83は、平面視矩形状の板体で構成されている。この摺動片83において、室外側には、回動軸82が挿通される挿通孔831が形成されている。そして、摺動片83は、回動軸82に対して回動可能に軸支され、上方側に回動して上壁部811cに当接することで摺動位置(
図8B,
図9B)に位置付けられ、下方側に回動することで非摺動位置(
図8A,
図9A)に位置付けられる。
コイルバネ84は、本発明に係る付勢部材に相当する。このコイルバネ84は、回動軸82が挿通されるとともに、一端が室内側壁部811aに当接し、他端が摺動片83に当接する。そして、コイルバネ84は、摺動片83を摺動位置に向けて付勢する。
【0035】
図10は、第3受け部材9を示す斜視図である。
第3受け部材9は、ベース部91と、案内片92とを備える。
ベース部91は、長尺状の平板で構成され、各板面が上下方向にそれぞれ向き、その長手方向が上レール部26の長手方向に合致する姿勢で、見込み面21aに固定される。より具体的に、基部261において、内突出部262に対して室内側の部位には、切欠き部261a(
図14A,
図14B参照)が形成されている。そして、ベース部91は、切欠き部261aを介して見込み面21aに固定される。すなわち、ベース部91(第3受け部材9)は、案内溝264外に設けられている。
案内片92は、ベース部91における下方側の面から下方に突出し、ベース部91の長手方向に沿って延在する平板状に形成されている。この案内片92には、戸先側に向かうにしたがって下方に傾斜した傾斜面921が形成されている。なお、傾斜面921は、本発明に係る第3案内面に相当する。
【0036】
以上説明した第1,第2引寄せ機構5,6及びガタ防止機構7は、見込み方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。また、ガイドピン51、引寄せ片61、及び摺動機構8は、上框33の上端において、戸先側から戸尻側にかけてガイドピン51、引寄せ片61、及び摺動機構8の順にそれぞれ設けられている。さらに、第1〜第3受け部材52,62,9は、見込み面21aにおいて、戸先側から戸尻側にかけて第1〜第3受け部材52,62,9の順にそれぞれ設けられている。すなわち、第1,第2引寄せ機構5,6及びガタ防止機構7は、上枠21や上框33の長手方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。
【0037】
〔第1,第2引寄せ機構及びガタ防止機構の動作〕
次に、上述した第1,第2引寄せ機構5,6及びガタ防止機構7の動作について順に説明する。
図11A及び
図11Bは、第1引寄せ機構5の動作を示す図である。なお、
図11Aは、障子3が閉位置以外の位置に位置している場合での第1引寄せ機構5の動作を戸尻側から見た縦断面図である。
図11Bは、障子3が閉位置に位置している場合での第1引寄せ機構5の動作を戸尻側から見た縦断面図である。
障子3が閉位置以外の位置で移動している場合には、ローラ513は、案内溝264内を回転しながら摺動する(
図11A)。すなわち、当該場合には、障子3の上部における戸先側は、ローラ513により、室内側及び室外側へのがたつきが抑制される。
一方、障子3が閉位置に移動する際には、ローラ513は、案内溝264から引寄せ溝526内に移動し、凹曲面524a及び凸曲面523aにより、室外側に案内される(
図11B)。すなわち、障子3の上部における戸先側は、室外側に引き寄せられる。
【0038】
図12A及び
図12Bは、第2引寄せ機構6の動作を示す図である。なお、
図12Aは、障子3が閉位置以外の位置に位置している場合での第2引寄せ機構6の動作を戸尻側から見た縦断面図である。
図12Bは、障子3が閉位置に位置している場合での第2引寄せ機構6の動作を戸尻側から見た縦断面図である。
障子3が閉位置以外の位置で移動している場合には、凸部612は、外突出部263の室外側の面上を摺動する(
図12A)。すなわち、当該場合には、障子3の上部における戸尻側は、凸部612により、室内側へのがたつきが抑制される。
一方、障子3が閉位置に移動する際には、凸部612は、外突出部263の室外側の面から凸曲面622aに乗り上げ、室外側に案内される(
図12B)。すなわち、障子3の上部における戸尻側は、室外側に引き寄せられる。第1,第2引寄せ機構5,6により障子3の上部における戸先側及び戸尻側が室外側に引き寄せられることで、障子3の上部は、見付け面211aとの間でシール材S(圧接部S2)を押し潰す(
図11B,
図12B)。そして、障子3の上部と見付け面211aとの間で室内側への漏水が防止される。
【0039】
図13A、
図13B、
図14A、及び
図14Bは、ガタ防止機構7の動作を示す図である。なお、
図13A及び
図14Aは、障子3が閉位置以外の位置に位置している場合でのガタ防止機構7の動作を戸尻側からそれぞれ見た縦断面図及び斜視図である。
図13B及び
図14Bは、障子3が閉位置に位置している場合でのガタ防止機構7の動作を戸尻側からそれぞれ見た縦断面図及び斜視図である。
障子3が閉位置以外の位置で移動している場合には、摺動片83は、コイルバネ84の付勢力により摺動位置に位置付けられ、内突出部262の室内側の面上を摺動する(
図13A,
図14A)。すなわち、当該場合には、障子3の上部における戸尻側は、摺動片83により、室外側への移動が規制される(室外側へのがたつきが抑制される)。また、当該場合には、ローラ513及び摺動片83により障子3の上部における戸先側及び戸尻側の室外側への移動を規制することで、障子3の上部は、シール材Sに対して所定の隙間を確保しつつ、移動する。
一方、障子3が閉位置に移動する際には、摺動片83は、傾斜面921に当接し、コイルバネ84の付勢力に抗して非摺動位置へと回動する(
図13B,
図14B)。そして、第1,第2引寄せ機構5,6による障子3の上部の室外側への引き寄せが可能となる。
【0040】
なお、障子3の戸先部は、当該障子3が閉位置に位置している状態において、グレモン錠L1を錠受けL3に係合させることにより、室外側に引き寄せられる。そして、障子3の戸先部は、見付け面231aとの間でシール材S(圧接部S2)を押し潰す(
図3)。
また、障子3の召合せ部は、当該障子3が閉位置に移動する際に、係合片L5が係合受け部L6に係合することにより、室外側に引き寄せられる。そして、障子3の召合せ部は、見付け面25aとの間でシール材S(圧接部S2)を押し潰す(
図3)。
図15A及び
図15Bは、戸車38の動作を示す図である。なお、
図15Aは、障子3が閉位置以外の位置に位置している場合での戸車38の動作を示す縦断面図である。
図15Bは、障子3が閉位置に位置している場合での戸車38の動作を示す縦断面図である。
さらに、障子3の下部は、当該障子3が閉位置に位置している状態において、当該障子3の上部、戸先部、及び召合せ部の室外側への引き寄せに連動(従動)して戸車38が下レール部27に対して傾斜することで、室外側に引き寄せられる(
図15B)。そして、障子3の下部は、見付け面221aとの間でシール材S(圧接部S2)を押し潰す。
【0041】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態では、本発明に係る建具1を片引き窓で構成していたが、これに限らない。2枚以上の障子が左右方向にスライドする引違い窓や両袖片引き窓や引き分け窓、障子が上下方向に移動する上げ下げ窓等の各種の建具に本発明を採用しても構わない。
上述した実施の形態において、第1,第2引寄せ機構5,6及びガタ防止機構7の戸先側から戸尻側への配置順序は、上述した実施の形態で説明した順序に限らず、その他の配置順序を採用しても構わない。例えば、第2引寄せ機構6及びガタ防止機構7を上枠21や上框33における長手方向の同一位置に設けても構わない。
上述した実施の形態では、本発明に係る「障子の面外方向の一方側」を室外側としていたが、これに限らず、室内側としても構わない。