(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原子炉炉心を整備する方法であって、前記原子炉炉心からの少なくとも1つの使用燃料棒を、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む水溶液を含む貯蔵プールに収容する工程を含む、方法。
前記多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの前記少なくとも一方が、溶解された第I族塩又はアンモニウム塩によって提供される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示を実施するのに有用な水溶液は、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む。多面体水素化ホウ素アニオンは、ホウ素及び水素原子のみを含む。カルボランアニオンは、炭素、ホウ素及び水素原子のみを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、アニオンは、多面体水素化ホウ素アニオンである。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
10H
102−、B
11H
14−、又はB
12H
122−のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
10H
102−又はB
12H
122−のうちの少なくとも一方を含む。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
10H
102−を含む。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
11H
14−を含む。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
12H
122−を含む。多面体水素化ホウ素アニオンは、典型的には、第I族塩、第II族塩、アンモニウム塩、又はアルキルアンモニウム塩を溶解した水溶液で提供され、ここで、アルキルは、エチル又はメチルである。アルキルアンモニウム塩は、モノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、又はテトラアルキルアンモニウム塩であってよい。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素アニオンは、第I族塩、アンモニウム塩、又はテトラアルキルアンモニウム塩、いくつかの実施形態では第I族塩、を溶解した水溶液で提供される。適切な塩の例には、Li
2B
10H
10、Na
2B
10H
10、K
2B
10H
10、(NH
4)
2B
10H
10、[(C
2H
5)
3NH]
2B
10H
10、LiB
11H
14、NaB
11H
14、KB
11H
14、NH
4B
11H
14、Li
2B
12H
12、Na
2B
12H
12、K
2B
12H
12、及び(NH
4)
2B
12H
12が挙げられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、アニオンは、カルボランアニオンである。いくつかの実施形態では、カルボランアニオンには、CCB
11H
12−が含まれる。カルボランアニオンは、典型的には、第I族塩、第II族塩、アンモニウム塩、又はアルキルアンモニウム塩の溶解による水溶液で提供され、ここで、アルキルは、エチル又はメチルである。アルキルアンモニウム塩は、モノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、又はテトラアルキルアンモニウム塩であってよい。いくつかの実施形態では、カルボランアニオンは、第I族塩、アンモニウム塩、又はテトラアルキルアンモニウム塩、いくつかの実施形態では第I族塩、を溶解した水溶液で提供される。適切な塩の例には、LiCB
11H
12、NaCB
11H
12、KCB
11H
12、NH
4CB
11H
12が挙げられる。
【0018】
本開示を実施するのに有用な水溶液は、これらの実施形態のいずれかにおいて前述されたアニオン又は塩の任意の組み合わせを含むことができる。また、本開示を実施するのに有用な水溶液は、典型的には、有機高分子を含まない。
【0019】
多面水素化ホウ素塩は、既知の方法により調製することができる。例えば、金属水素化ホウ素又はMB
3H
8出発物質からMB
11H
14塩を調製する方法は、米国特許第4,115,520号、同第4,115,521号及び同第4,153,672号(各々Dunksら)に見出すことができる。
【0020】
B
10H
102−アニオンの塩を提供するために、様々な条件下のテトラアルキルアンモニウム水素化ホウ素塩の熱分解が報告されている。例えば、(1)W.E.Hillら「Boron Chemistry 4」Pergamon Press,Oxford 1979,p 33、(2)Mongeotら、Bull.Soc.Chim.Fr.385,1986、及び(3)米国特許第4,150,057号及び同第4,391,993号(これらは両方ともSaylesに譲渡された)を参照されたい。テトラアルキルアンモニウム水素化ホウ素出発物質(R
4NBH
4)は、水溶液又はアルコール溶液中で水素化ホウ素ナトリウムを1モル当量以上のテトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラアルキルアンモニウム硫酸水素塩)と接触させることによって調製されうる。米国特許第7,524,477号(Spielvogelら)で報告されたように、温度を(例えば、正確な内部温度の読み取り、反応混合物の冷却方法、及び特定のランプ及び等温プロファイルの使用によって)調整することによって、テトラアルキルアンモニウム水素化ホウ素塩の熱分解により、B
10H
102−及び/又はB
12H
122−アニオンの塩を高い収率で提供することができる。例えば、B
10H
102−、B
9H
9−、B
11H
14−及び/又はB
12H
122−を調製するいくつかの方法では、R
4NBH
4が、少なくとも約100℃の沸点を有する溶媒で溶解、懸濁又は混合されて、加熱される。有用な溶媒の例には、n−ドデカン及びn−デカンとn−ドデカンとの混合物を含む、C
8〜C
18アルカン又はC
8〜C
18アルカンの混合物が挙げられる。B
10H
102−、B
9H
9−、B
11H
14−及び/又はB
12H
122−を調製する他の方法では、R
4NBH
4とトリアルキルアミンボラン付加物の混合物が熱分解される。トリアルキルアミンボランに対する水素化ホウ素の比率は、典型的には、約1:3〜約3:1であり、この比率は1:1であってよい。これらの方法では、約185℃の温度での熱分解により、典型的には、テトラアルキルアンモニウムB
10H
102−塩とテトラアルキルアンモニウムB
12H
122−塩との、比率約1.4:1の混合物が提供される。例えば、イオン交換法によって、多面体水素化ホウ素塩の種々のカチオンを提供することができる。
【0021】
B
12H
122−塩を調製する更なる方法は、例えば、ルイス塩基がある状態で金属水素化物をホウ酸アルキルと反応させて、熱分解してB
12H
122−塩となるルイス塩基ボラン複合体を生成することについて述べた米国特許第7,718,154号(Ivanovら)と、金属水素化ホウ素とXBH
3との反応(Xは、置換アミン、置換ホスフィン又はテトラヒドロフランである)について述べた米国特許第7,563,934号(Banavaliら)に報告されている。
【0022】
CB
11H
12−塩の合成についても知られている。例えば、Knoth,W.H.,Journal of the American Chemical Society,1967,vol.89,1274ページ;Jelinek,Tら、Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1986,vol.51,819ページ;及びFranken,Aら、Collection of Czechoslovak Chemical Communications,2001,vol.66,1238〜1249ページを参照されたい。
【0023】
ホウ素(
11Bと
10B)の2つの天然同位体のうちの
10Bは、約3800バーン(3.8×10
−24m
2)の熱中性子吸収断面を有する優れた中性子吸収体である。したがって、いくつかの実施形態では、前述の塩のいずれかを含む多面体水素化ホウ素アニオンは、
10Bに富む。
10Bに富む多面体水素化ホウ素塩の合成には様々な処理が利用できる。一般に、合成は、水素化ホウ素塩に変換できる
10B濃縮ホウ酸で始まる。例えば、濃縮水素化ホウ素を前述の方法のいずれかと使用して、
10B濃縮塩を提供することができる。いくつかの実施形態では、前述の熱分解混合物に含まれるテトラアルキルアンモニウム水素化ホウ素塩又はトリアルキルアミンボラン付加物のうちの少なくとも一方は、
10Bに富む。同位体濃縮ホウ酸からの同位体濃縮B
11H
14−は、米国特許第7,641,879号(Spielvogel)に記載されている。
【0024】
10B濃縮塩を含む塩(例えば、Li
2B
10H
10、Na
2B
10H
10、K
2B
10H
10、(NH
4)
2B
10H
10、LiB
11H
14、NaB
11H
14、KB
11H
14、NH
4B
11H
14、Li
2B
12H
12、Na
2B
12H
12、K
2B
12H
12、及び(NH
4)
2B
12H
12)の少なくともいくつかは、Boron Specialties LLC,Valencia,PAから市販されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンは、Li
2B
10H
10、LiB
11H
14、LiCB
11H
12、又はLi
2B
12H
12を溶かした水溶液で提供される。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素塩は、Li
2B
10H
10である。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素塩は、Li
2B
12H
12である。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素塩は、LiB
11H
14である。いくつかの実施形態では、カルボラン塩は、LiCB
11H
12である。リチウムの原子質量が低いため、そのような塩は、他の多面体水素化ホウ素塩又はカルボラン塩と比較して最も高い重量パーセントのホウ素を有することがある。更に、後でより詳しく述べるように、リチウム塩は、最も高い水への溶解度の多面体水素化ホウ素塩のうちのいくつかを有することがある。
7Liは、原子の92.5パーセントを占める最も一般的なリチウム同位体である。しかしながら、
7Liは中性子透過性であり、いくつかの実施形態では、
7Liに富むLi
2B
10H
10、LiB
11H
14、LiCB
11H
12、又はLi
2B
12H
12のいずれか1つに有用なことがある。
7Liの濃縮は、市販の水中の
7LiOHにより、前述の方法によって調製された(Et
4N)
2B
10H
10、Et
4NB
11H
14、(Et
4N)
2B
12H
12、又はカルボラン塩を処理することによって行われうる。
【0026】
多面体水素化ホウ素及びカルボラン塩は、例えばその一般的に高いホウ素含有量のために、本明細書に開示される方法及び貯蔵プール内で有用である。ホウ酸は17.5重量%のホウ素しか含まないが、典型的には、本開示を実施するのに有用な多面体水素化ホウ素及びカルボラン塩は、塩の全分子量を基準にして、少なくとも25重量パーセントのホウ素を有する。例えば、Cs
2B
10H
10は、28重量%のホウ素である。他の例では、Li
2B
10H
10、Na
2B
10H
10、及び(NH
4)
2B
10H
10はそれぞれ、81.9重量%、65.9重量%、及び70.1重量%のホウ素である。更なる例では、Li
2B
12H
12、Na
2B
12H
12、及び(NH
4)
2B
12H
12はそれぞれ、81.9重量%、65.9重量%、及び70.1重量%のホウ素である。更に他の例では、LiCB
11H
12、NaCB
11H
12、及びKCB
11H
12はそれぞれ、79.3重量%、71.6重量%、及び65.3重量%のホウ素である。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素塩又はカルボラン塩は、塩の全分子量を基準にして、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、又は65重量パーセントのホウ素を有する。
【0027】
多面体水素化ホウ素及びカルボラン塩はまた、例えば水への溶解度が高いので、本明細書に開示される方法及び貯蔵プール内で有用である。ホウ酸は、20℃で溶液100グラム当たり約4.7グラムしか水に溶解しないことが報告されており、典型的には、本開示を実施するのに有用な多面体水素化ホウ素塩は、20℃で溶液100グラム当たり少なくとも15グラムの溶解度、又はホウ酸の水溶解度の少なくとも3倍の溶解度を有する。いくつかの実施形態では、本開示を実施するのに有用な多面体水素化ホウ素塩は、20℃で溶液100グラム当たり少なくとも20、25、30、35、40、45又は少なくとも50グラムの水溶解度を有する。また、特定のカルボラン塩も、有用な水溶解度を有すると予想される。CB
11H
12−は、例えば、きわめて弱い配位のアニオンである。様々な塩の水溶解度とこれらの溶解度を決定する方法は、以下に例で報告される。
【0028】
本開示による貯蔵プールは、例えば、核燃料棒を原子炉炉心の外部に格納するために有用である。貯蔵プールは、一般に、電気が生成される反応器側にあり、炉心内で使用後に取り出される、使用済み燃料棒であってもよい、浸漬された使用燃料棒、原子炉炉心内でこれから使用される浸漬された新品燃料棒、他の浸漬された反応器構成要素、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。中性子吸収体である多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む水溶液は、貯蔵プール内の非制御の核分裂反応を抑制することができる。貯蔵プール内の水溶液はまた、放射性燃料棒からの放射線遮蔽物として、また燃料内の放射能減衰同位体の熱を吸収する冷却材として働く。本開示を実施するのに有用な水溶液は、塩の溶解限度までの任意の有効濃度で前述の実施形態のいずれかによる溶解塩を含んでもよい。いくつかの実施形態では、多面体水素化ホウ素塩又はカルボラン塩は、水溶液100グラム当たり少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は少なくとも50グラムの濃度で存在する。
【0029】
貯蔵プールは、オペレータを保護する特別の遮蔽なしに安全マージンを提供しかつ燃料集合体操作を可能にするために、浸漬した燃料棒の上に少なくとも約20フィート(6.1メートル)の水溶液を有してもよい。少なくとも20フィート(6.1メートル)の他の深さが可能であるが、いくつかの実施形態では、貯蔵プールは、深さが少なくとも約30又は40フィート(9.1又は12.2メートル)である。いくつかの実施形態では、貯蔵プールは、コンクリートで作成される。貯蔵プールが、静止水の集合体であり、それ自体は原子炉炉心ではないことを理解されたい。
【0030】
いくつかの実施形態では、貯蔵プールは、原子炉炉心からの燃料棒又は燃料集合体を保持するように設計された格納ラックを含む。格納ラックは、炭化ホウ素を金属又は高分子マトリクス中に含むことがある。格納ラックは、プールの約14フィート(4.3メートル)の深さにあってもよい。燃料棒は、原子炉炉心内で使用されるときにそれらの構成と類似の構成でラック内に格納されてもよいが、他の構成も有用なことがある。本開示による方法及び貯蔵プールは、燃料棒がラック内に格納されないときにも有用である。例えば、自然災害又は事故の後に、燃料棒がプールの底で異常を起こすことがある。燃料棒の少なくともいくつかが、破砕又は破壊されるか、クラッディングの一部分を失うことがある。
【0031】
本明細書に開示される原子炉炉心の外部に核燃料を格納する方法では、前述の実施形態のいずれかにおける溶解塩が、核燃料棒又はその一部分が浸漬されるまで貯蔵プール内にあってもよい。あるいは又は加えて、少なくとも1つの多面体水素化ホウ素塩又はカルボラン塩が、核燃料棒の少なくとも一部分が既に浸漬されている水の貯蔵プールに追加されてもよい。多面体水素化ホウ素塩又はカルボラン塩の追加により、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方の水溶液が提供される。多面体水素化ホウ素塩又はカルボラン塩の既存のプールへの追加は、自然災害、原子力の緊急事態、又は臨界の脅威がある他の状況(例えば、使用済み又は新品の追加の核燃料をプールに追加する必要がある)の後に有用なことがある。
【0032】
本開示はまた、原子炉炉心からの少なくとも1つの使用燃料棒を、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンの少なくとも1つを含む水溶液を含む貯蔵プールに収容することを含む、原子炉を整備する方法を提供する。整備は、例えば、遮断又は燃料補給操作の一部でよい。場合によっては、使用された燃料集合体は、ラックに入れて、炉心から貯蔵プールに水路の底に沿って移動される。原子炉に燃料が補給される実施形態では、使用燃料棒は、典型的には使用済みであり、本方法は、少なくとも1つの新品核燃料棒を貯蔵プールに収容する工程を含むことができる。しかしながら、新品燃料及び使用済み燃料は、同じ貯蔵プール内にある必要はない。典型的には、原子炉炉心に燃料が補給されるとき、新品燃料は、炉心内の使用済み燃料の一部分と置き換わり、炉心からの使用済み燃料は、使用済み燃料貯蔵プールに格納される。新品燃料は、新品燃料輸送キャスクから新品燃料プールに送られ、そこから原子炉炉心内に移されてもよい。
【0033】
ホウ酸のいくつかの特性は、使用済み燃料プール及び/又は新品燃料プール内でその有用性を制限する。前前述のように、水中のホウ酸の溶解度は、典型的には、20℃で溶液100グラム当たり約4.7グラムであることが報告されている。貯蔵プール内の低濃度の可溶性ホウ素は、大量の燃料が存在するときに臨界を抑制するためにその有用性を制限することができる。また、付着によるホウ酸腐食は、ラック及び関連システムの完全性を損なう可能性がある。また、ホウ酸を使用すると弱酸性pHとなり、それにより、燃料棒クラッディングが腐食する可能性がある。pHを許容可能なレベルにするために、
7LiOHを水に加えてもよい。しかしながら、LiOHが多すぎると、核燃料棒クラッディングが腐食することもある。クラッディングの腐食を更に防ぐために、燃料クラッド材料と相互作用する減損酸化亜鉛を加えてもよい。多面体水素化ホウ素塩と特定の多面体カルボラン塩の溶解度が高いので、貯蔵プール内で、ホウ酸が使用されるときより高濃度の可溶性ホウ素が存在することができ、核分裂反応の制御性を高めて、より大量の燃料の存在が可能になる。また、この高い溶解度によって、多面体水素化ホウ素塩と特定の多面体カルボラン塩が付着しにくくなり、付着が起きた場合に同じ腐食性はないと予想される。多面体水素化ホウ素及びカルボラン塩はpH中性であり、それにより、本開示による方法及び貯蔵プール内の高価なLiOH及び減損酸化亜鉛の必要性を低減するか又は不要にすることがある。
【0034】
更に、多面体水素化ホウ素及びカルボランアニオンは、典型的には、熱的に安定しており無毒である。多面体水素化ホウ素及びカルボランアニオンは、そのケージ構造によってきわめて化学的に安定しており、それにより長期保存を可能にする。これらの塩を含む水溶液は、必要なときにすぐに使用できる。また、水溶液中の多面体水素化ホウ素塩を使用すると、従来存在しない任意の追加の原子又は後で崩壊する核種が一般的水化学反応に導入されない。
【0035】
本明細書に開示される方法により格納又は収容され、かつ/又は本開示の貯蔵プール内に存在しうる燃料棒は、任意のタイプの原子炉炉心からのものであってよい。いくつかの実施形態では、原子炉炉心は、軽水炉、沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉、小型モジュール原子炉、又は重水炉の構成要素である。いくつかの実施形態では、原子炉炉心は、沸騰水型原子炉であっても加圧水型炉であってもよい軽水炉の構成要素である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法により格納又は収容され、かつ/又は本開示の貯蔵プール内に存在しうる燃料棒は、軽水炉からのものである。軽水炉では、一次冷却材は、H
2Oであり、H
2Oは、熱を抽出して蒸気を生成するか又は何らかの他の有用な目的のために炉心内を流れる。発電では、蒸気は、発電機用タービンを駆動するために使用される。サーマル原子炉では、一次冷却水は、また、中性子を熱化する中性子減速材として働き、核分裂物質の反応性を高める。機械式制御棒及び可溶性中性子毒を含む一次冷却材の化学的処理などの種々の反応制御機構が、反応度及び得られる熱生成を調整するために使用される。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法により格納又は収容され、かつ/又は本開示の貯蔵プール内に存在しうる燃料棒は、沸騰水型原子炉(BWR)からのものである。BWRは、前述の軽水炉の一種であり、一次冷却材水が沸騰して蒸気を生成する。一次冷却材水は、典型的には、炉心も含む原子炉圧力容器内に維持される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法により格納又は収容され、かつ/又は本開示の貯蔵プール内に存在しうる燃料棒は、加圧水型原子炉(PWR)からのものである。PWRは、前述の軽水炉の一種であり、一次冷却材水が、炉心も収容する密封圧力容器内に過熱状態で維持される。この場合、この温水(沸騰しない)は、熱を、蒸気になってタービンを駆動する二次低圧給水系統と交換する。PWRでは、一次冷却材水の圧力と温度の両方が制御される。いくつかの実施形態では、本開示の方法に従いかつ/又は貯蔵プール内に格納されうる燃料棒は、重水炉(HWR)からのものである。HWRは、PWRと同様に動作するが、一次冷却水は、H
2OではなくD
2Oである。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法により格納又は収容され、かつ/又は本開示の貯蔵プール内に存在しうる燃料棒は、小型モジュール炉からのものである。そのような反応器は、典型的には、500メガワット(MW)未満の電力出力を有する。モジュール炉は、中央工場の場所で製造され組み立てられ、次に設置のために新しい場所に送られるように設計されている。小型モジュール炉は、軽水冷却式であっても重水冷却式であってもよく、沸騰水型原子炉であっても加圧水型原子炉であってもよい。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態
第1の実施形態では、本開示は、原子炉炉心の外部に核燃料を格納する方法を提供し、この方法は、
多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む水溶液を含む貯蔵プール内に核燃料棒の少なくとも一部分を浸漬する工程、又は、
多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンを含む塩を、水と、中に浸漬された核燃料棒の少なくとも一部分とを含む貯蔵プールに加える工程のうちの少なくとも一方を含み、塩を加える工程は、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む水溶液を提供する。
【0041】
第2の実施形態では、本開示は、第1の実施形態の方法を提供し、この方法は、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む水溶液を含むプール内に核燃料棒の少なくとも一部分を浸漬する工程を含む。
【0042】
第3の実施形態では、本開示は、第1の実施形態の方法を提供し、
この方法は、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンを含む少なくとも一方の塩を、水と、中に浸漬された核燃料棒の少なくとも一部分とを有するプールに加える工程を含む。
【0043】
第4の実施形態では、本開示は、
多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む水溶液と、
水溶液に浸漬された核燃料棒の少なくとも一部分と、を含む貯蔵プールを提供する。
【0044】
第5の実施形態では、本開示は、第1から第4の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、核燃料棒又はその一部分は、使用済み燃料棒又はその一部分である。
【0045】
第6の実施形態では、本開示は、第1から第4の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、核燃料棒又はその一部分は、新品燃料棒又はその一部分である。
【0046】
第7の実施形態では、本開示は、第1から第4の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、核燃料棒又はその一部分は、使用燃料棒又はその一部分である。
【0047】
第8の実施形態では、本開示は、第1から第7の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方は、
10Bに富んでいる。
【0048】
第9の実施形態では、本開示は、第1から第8の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方は、溶解された第I族塩又はアンモニウム塩によって提供される。
【0049】
第10の実施形態では、本開示は、第9の実施形態の方法又は貯蔵プールを提供し、第I族塩又はアンモニウム塩は、少なくとも25重量パーセントのホウ素を有する。
【0050】
第11の実施形態では、本開示は、第9の又は第10の実施形態の方法又は貯蔵プールを提供し、第I族塩又はアンモニウム塩は、20℃で溶液100グラム当たり少なくとも15グラムの水溶解度を有する。
【0051】
第12の実施形態では、本開示は、第1から第11の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、アニオンは、B
10H
102−、B
11H
14−、又はB
12H
122−のうちの少なくとも1つを含む多面体水素化ホウ素アニオンである。
【0052】
第13の実施形態では、本開示は、第12の実施形態の方法又は貯蔵プールを提供し、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
10H
102−又はB
11H
122−のうちの少なくとも一方を含む。
【0053】
第14の実施形態では、本開示は、第13の実施形態の方法又は貯蔵プールを提供し、多面体水素化ホウ素アニオンは、Li
2B
10H
10、Na
2B
10H
10、K
2B
10H
10、(NH
4)
2B
10H
10、Li
2B
12H
12、Na
2B
12H
12、K
2B
12H
12、(NH
4)
2B
12H
12、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される溶解塩からのものである。
【0054】
第15の実施形態では、本開示は、第14の実施形態の方法又は貯蔵プールを提供し、Li
2B
10H
10又はLi
2B
12H
12は、
7Liに富んでいる。
【0055】
第16の実施形態では、本開示は、第12の実施形態の方法又は貯蔵プールを提供し、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
11H
14−を含み、多面体水素化ホウ素アニオンは、LiB
11H
14、NaB
11H
14、KB
11H
14、(NH
4)B
11H
14及びこれらの組み合わせからなる群から選択される溶解塩からのものであり、必要に応じて、LiB
11H
14は、
7Liに富んでいる。
【0056】
第17の実施形態では、本開示は、第1から第11の実施形態のいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、アニオンは、カルボランアニオンであり、カルボランアニオンがCB
11H
12−を含み、カルボランアニオンが、LiCB
11H
12、NaCB
11H
12、KCB
11H
12、NH
4CB
11H
12及びこれらの組み合わせからなる群から選択される溶解塩からのものであり、必要に応じて、LiB
11H
12は、
7Liに富んでいる。
【0057】
第18の実施形態では、本開示は、第1から第17の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、貯蔵プールは、核燃料棒又はその一部分が格納されるラックを更に含む。
【0058】
第19の実施形態では、本開示は、第1から第18の実施形態のうちのいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、貯蔵プールは、核燃料棒又はその一部分の上に少なくとも20フィート(6.1メートル)の水溶液を有する。
【0059】
第20の実施形態では、本開示は、第1から第19の実施形態のいずれか1つの方法又は貯蔵プールを提供し、貯蔵プールは、軽水炉、沸騰水型原子炉、加圧水炉、小型モジュール炉、又は重水炉のうちの少なくとも1つを含む更に場所に配置される。
【0060】
第21の実施形態では、本開示は、原子炉炉心を整備する方法を提供し、この方法は、原子炉炉心からの少なくとも1つの使用燃料棒を、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方を含む水溶液を含む貯蔵プールに収容する工程を含む。
【0061】
第22の実施形態では、本開示は、第21の実施形態の方法を提供し、使用核燃料棒は、使用済み燃料棒である。
【0062】
第23の実施形態では、本開示は、第21又は第22の実施形態の方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの新品核燃料棒を貯蔵プールに収容する工程を更に含む。
【0063】
第24の実施形態では、本開示は、第21から第23の実施形態のうちのいずれか1つの方法を提供し、貯蔵プールは、少なくとも1つの使用核燃料棒が配置されるラックを更に含む。
【0064】
第25の実施形態では、本開示は、第21から第24の実施形態のうちのいずれか1つの方法を提供し、貯蔵プールは、少なくとも1つの使用核燃料棒の上に少なくとも20フィート(6.1メートル)の水溶液を有する。
【0065】
第26の実施形態では、本開示は、第21から第25の実施形態のいずれか1つの方法を提供し、原子炉炉心は、軽水炉、沸騰水型原子炉、加圧水炉、小型モジュール炉、又は重水炉の構成要素である。
【0066】
第27の実施形態では、本開示は、第21から26の実施形態のうちのいずれか1つの方法を提供し、原子炉炉心を整備する工程は、原子炉炉心に燃料を補給する工程を含む。
【0067】
第28の実施形態では、本開示は、第21から26の実施形態のうちのいずれか1つの方法を提供し、原子炉炉心を整備する工程は、原子炉炉心を遮断する工程を含む。
【0068】
第29の実施形態では、本開示は、第21〜28の実施形態のうちのいずれか1つの方法を提供し、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方は、
10Bに富んでいる。
【0069】
第30の実施形態では、本開示は、第21〜29の実施形態のうちのいずれか1つの方法を提供し、多面体水素化ホウ素アニオン又はカルボランアニオンのうちの少なくとも一方は、溶解された第I族塩又はアンモニウム塩によって提供される。
【0070】
第31の実施形態では、本開示は、第30の実施形態の方法を提供し、第I族塩又はアンモニウム塩は、少なくとも25重量パーセントのホウ素を有する。
【0071】
第32の実施形態では、本開示は、第30又は第31の実施形態の方法を提供し、第I族塩又はアンモニウム塩は、20℃で溶液100グラム当たり少なくとも15グラムの水溶解度を有する。
【0072】
第33の実施形態では、本開示は、第21から第32の実施形態のうちのいずれか1つの方法を提供し、アニオンは、B
10H
102−、B
11H
14−、又はB
12H
122−のうちの少なくとも1つを含む多面体水素化ホウ素アニオンである。
【0073】
第34の実施形態では、本開示は、第33の実施形態の方法を提供し、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
10H
102−又はB
12H
122−のうちの少なくとも一方を含む。
【0074】
第35の実施形態では、本開示は、第34の実施形態の方法を提供し、多面体水素化ホウ素アニオンは、Li
2B
10H
10、Na
2B
10H
10、K
2B
10H
10、(NH
4)
2B
10H
10、Li
2B
12H
12、Na
2B
12H
12、K
2B
12H
12、(NH
4)
2B
12H
12、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される溶解塩からのものである。
【0075】
第36の実施形態では、本開示は、第35の実施形態の方法を提供し、Li
2B
10H
10又はLi
2B
12H
12は、
7Liに富んでいる。
【0076】
第39の実施形態では、本開示は、第33の実施形態の方法を提供し、多面体水素化ホウ素アニオンは、B
11H
14−を含み、多面体水素化ホウ素アニオンは、LiB
11H
14、NaB
11H
14、KB
11H
14、(NH
4)B
11H
14及びこれらの組み合わせからなる群から選択される溶解塩からのものであり、必要に応じて、LiB
11H
14は、
7Liに富んでいる。
【0077】
第38の実施形態では、本開示は、第21から32の実施形態のいずれか1つの方法を提供し、アニオンは、カルボランアニオンであり、カルボランアニオンがCB
11H
12−を含み、カルボランアニオンが、LiCB
11H
12、NaCB
11H
12、KCB
11H
12、NH
4CB
11H
12、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される溶解塩からのものであり、必要に応じて、LiCB
11H
12は、
7Liに富んでいる。
【0078】
以下の特定の、非限定な例は、本開示を説明するものである。
【実施例】
【0079】
以下の表の塩は、上記の実施形態のいずれかにおける本開示による方法及び貯蔵プールに有用なことがある。
【0080】
以下の表に示される塩溶解度は、以下の手順によって決定された。既知の量の水(25グラム又は50グラム)を、温度計及び磁気撹拌プレート上の攪拌バーを備えた2口丸底フラスコに加えた。溶液の温度を測定しながら、溶質(塩)を分析的に秤量して約0.1gずつ溶媒に加えた。加えて撹拌した後に、溶液に濁りが観察されるまで溶質を加えた。次に、溶液100グラム当たりの溶解度(グラム)を計算して、以下の表に示した。測定された温度範囲は、18℃〜21℃であった。
【0081】
【表1】
【0082】
本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく、当業者は、本開示の種々の修正及び変更を行うことができ、また、本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態に不当に限定されるべきではないと理解すべきである。