特許第6904908号(P6904908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904908角膜拡張症(CORNEAL ECTATIC DISORDERS)の診断および予後診断のためのバイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904908
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】角膜拡張症(CORNEAL ECTATIC DISORDERS)の診断および予後診断のためのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20210708BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210708BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   C12Q1/68
   G01N33/53 D
   G01N33/53 M
   !C12N15/09 Z
【請求項の数】22
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-561040(P2017-561040)
(86)(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公表番号】特表2018-510651(P2018-510651A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016053293
(87)【国際公開番号】WO2016131840
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年1月30日
(31)【優先権主張番号】15382060.0
(32)【優先日】2015年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517286630
【氏名又は名称】ウニヴェルシダーデ デ サンティアゴ デ コンポステーラ
(73)【特許権者】
【識別番号】517285909
【氏名又は名称】セルヴィソ ガレゴ デ サウーデ (エッセエエルヘアエッセ)
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】レマ ヘスト マリア イサベル
(72)【発明者】
【氏名】カスティーリョ サンチェス ホセ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ソブリノ モレイラス トマス
(72)【発明者】
【氏名】カンポス ペレス フランシスコ
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 日本眼科学会雑誌,2003年,Vol. 107,p. 216,167
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 − 1/70
G01N 33/50 − 33/98
C12N 15/00 − 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における角膜の拡張性疾患、但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される、の診断を援助するためのインビトロの方法であって、以下を含む:
a)前記被験者からの結膜および角膜組織から選択されるサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および
b)前記発現レベルを、健康な被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルである基準値と比較すること;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、被験者が角膜の拡張性疾患に罹患していることを示す。
【請求項2】
請求項1に記載のインビトロの方法であって、前記発現レベルが、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定することを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載のインビトロの方法であって、タンパク質レベルが、免疫組織化学、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、またはELISAから、選択される方法により決定される、方法。
【請求項4】
ジオプトリ、角膜厚と角膜エレベイションから選択された、少なくとも一つパラメータを決定することをも含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインビトロの方法。
【請求項5】
被験者の角膜の拡張性疾患、但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される、の発症の危険性の決定を援助するためのインビトロの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からの結膜および角膜組織から選択されるサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および
b)前記発現レベルを、健康な被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルである基準値と比較すること、
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、被験者が角膜の拡張性疾患を発症する高い危険性を有することを示す。
【請求項6】
被験者が以前に屈折欠陥を有すると診断されている、請求項5に記載のインビトロの方法。
【請求項7】
前記被験者が、眼のかゆみ、眼をこする、生体顕微鏡の徴候および結膜充血から選択される以前の眼病変を発症したことがある、請求項5または6のいずれかに記載のインビトロの方法。
【請求項8】
角膜の拡張性疾患、但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される、に罹患している被検者の臨床転帰の決定を援助するためのインビトロの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からの結膜および角膜組織から選択されるサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および
b)前記発現レベルを、健康な被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルである基準値と比較すること、
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、負の臨床転帰を示す。
【請求項9】
角膜の拡張性疾患、但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される、の治療法で治療される被験者の選択を援助するインビトロの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からの結膜および角膜組織から選択されるサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、健康な被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルである基準値と比較する、
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが前記基準値よりも高い場合、前記被験者は、角膜の拡張性疾患の治療法で処置される候補であることを示す。
【請求項10】
前記治療が、角膜架橋、角膜内リングおよび屈折矯正手術から選択される、請求項9に記載のインビトロの方法。
【請求項11】
請求項5乃至10のいずれか1項に記載のインビトロの方法であって、前記発現レベルが、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定する工程または、TLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定する工程を含む方法。
【請求項12】
タンパク質レベルが、免疫組織化学、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、またはELISAから選択される方法によって決定される、請求項11に記載のインビトロの方法。
【請求項13】
屈折欠陥を罹患した被験者が、屈折矯正手術治療の候補であるか否かの決定を援助するインビトロでの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からの結膜および角膜組織から選択されるサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、健康な被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルである基準値と比較する、
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、前記被験者は、前記屈折欠陥のための屈折矯正手術で処置されるべき候補ではないことを示す。
【請求項14】
下記のための、TLR2および/またはTLR4のマーカーとしての使用であって、
被験者における角膜の拡張性疾患の診断の決定を援助するためのマーカー;
被験者における角膜の拡張性疾患を発症する危険性の決定を援助するためのマーカー;
角膜の拡張性疾患を罹患した被験者の臨床転帰の決定を援助するためのマーカー;または、
角膜の拡張性疾患の治療法で治療される被験者の選択を援助するためのマーカー、
但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される、の使用。
【請求項15】
特異的に、TLR2および/またはTLR4に結合する、抗体、プライマーおよび/またはプローブを含む、角膜の拡張性疾患、但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される、の診断のための組成物。
【請求項16】
特異的に、TLR2および/またはTLR4に結合する、抗体、プライマーおよび/またはプローブを含む、角膜の拡張性疾患、但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される、を診断するためのキット。
【請求項17】
以下のための、請求項16に記載のキットの使用。
被験者における角膜の拡張性疾患の診断の決定を援助するため;
被験者における角膜の拡張性疾患を発症する危険性の決定を援助するため;
角膜の拡張性疾患を罹患した被験者の臨床転帰の決定を援助するため;または、
角膜の拡張性疾患の治療法で治療される被験者の選択を援助するため、
但し、前記角膜の拡張性疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、およびペルーシド辺縁変性から選択される。
【請求項18】
前記発現レベルが、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定、することを含む、請求項13に記載のインビトロの方法。
【請求項19】
免疫組織化学、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、またはELISAから選択される方法により、タンパク質レベルが決定される、請求項18に記載のインビトロの方法。
【請求項20】
被験者が、屈折矯正手術の後に、拡張症を罹患する危険性の決定を援助するためのインビトロの方法であって、以下を含む:
a)前記被験者からの結膜および角膜組織から選択されるサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、健康な被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルである基準値と比較する、
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値よりも高い場合、前記被験者は、屈折矯正手術後の拡張症に罹患する高い危険性を示す指標である。
【請求項21】
前記発現レベルが、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定、することを含む、請求項20に記載のインビトロの方法。
【請求項22】
免疫組織化学、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、またはELISAから選択される方法により、タンパク質レベルが決定される、請求項21に記載のインビトロの方法。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、病理のための(pathologies)、分子診断および予後診断の分野に関する。特に、本発明は、被験者における角膜の拡張性疾患の診断を決定するための方法、被験者における角膜の拡張性疾患の進行の危険性を決定するための方法、角膜の拡張性疾患を罹患している被験者の臨床転帰を決定するための方法、および、Toll様受容体(TLR)である、TLR2および/またはTLR4のマーカーの発現レベルの決定に基づいて、角膜の拡張性疾患の治療法で治療すべき被験者を選択することに関する。本発明はまた、角膜の拡張性疾患の診断および予後診断のマーカーとして、TLR2および/またはTLR4の使用に関する。
[発明の背景]
角膜拡張症は、角膜の構造的完全性(structural integrity)に、悪影響を与える進行性疾患である。衰弱した(weakened)角膜が膨らみ(bulges)、そして、大きな打撃を与える(crippling)不揃いな乱視(irregular astigmatism)を発症し始める。乱視は、視力を低下させ、そして、病気が進行するにつれて、角膜の瘢痕化(scarring)が発生する。角膜拡張症(Corneal ectasia)は、円錐角膜(keratoconus)、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)、屈折矯正術後拡張症(post−refractive surgery ectasia)ならびに球状角膜(keratoglobus)のような他の稀な疾患を含む。
UV光およびリボフラビンを使用する、角膜コラーゲン架橋のような、角膜拡張症の治療のための新しい様式が、角膜を強化し(stiffen)、そして、疾患の進行を停止(halt)するために、開発されてきた。視力が(vision)、不揃いな乱視(astigmatism)または瘢痕化によって、低下(degraded)する前に、非常に早い段階で、病気の進行を停止することが望ましい。それらの患者の視力を脅かす、屈折矯正術後拡張症(post−refractive surgery ectasia)の最も一般的な原因は、従来からの現在の診断技術によっては検出されなかった初期の拡張症の患者に屈折矯正手術を行っていることである。本件は、彼らを、そのような致命的な(devastating)合併症から救助するために、これらの早期の患者を検出するために使用することができる、特異的かつ敏感な徴候の必要性をハイライトする。
【0002】
角膜の形状および厚さが、拡張症の現在の診断基準の一つである。それらの使用は、一般集団間のそれらの変動によって複雑になる。角膜の厚さの正常範囲は広く、そして、通常の薄い角膜と早期拡張症患者間の重なりが、拡張症の早期診断例では、この基準の使用を複雑にする。
このように、特異性の欠如は、拡張症の診断のために、角膜肥厚を使用することの重大な制限である。拡張症(Ectasia)の診断に使用される角膜の形状は、角膜の薄さと同じ制限をシェアする。不揃いの乱視が、正常被験者および、拡張症患者に見られ、診断を行うため、特に軽症例では、その使用を複雑にする。研究の革新的な適応は、被験者の角膜拡張症を診断するため、および、前記疾患の発症および進行の危険性を決定するために、バイオマーカーを提供するというこの文脈において必要である。
【0003】
[発明の簡単な説明]
第1の態様において、以下を含む、被験者における角膜の拡張性疾患を診断するための、インビトロの方法であり、
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;そして、
b)前記発現レベルを、基準値と比較することを含み、
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、被験者は、角膜の拡張性疾患に罹患していることを示す。
別の局面において、本発明は、以下を含む、被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する危険性を決定するためのインビトロの方法に関する。
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および、
b)前記発現レベルを、基準値と比較すること;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値よりも高い場合、被験者が角膜の拡張性疾患(ectatic disease of the cornea)を発症する危険性が高いことを示す。
別の局面において、本発明は、以下を含む、角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患している被検者の臨床転帰を決定するためのインビトロの方法に関する。
a)前記被験者由来のサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および
b)前記発現レベルを基準値と比較すること;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値よりも高い場合、負(negative)の臨床転帰(clinical outcome)を示す。
【0004】
別の局面において、本発明は、角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療される被験者を選択するためのインビトロの方法に関し、以下を含む。
a)前記被験者由来のサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および
b)前記発現レベルを基準値と比較すること;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、前記被験者が角膜拡張性疾患の治療法で治療される候補であることを示す。
別の態様において、本発明は、被験者の角膜の拡張性疾患の診断を決定するためのマーカーとしてのTLR2および/またはTLR4の使用に関する。
別の局面において、本発明は、被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する危険性を決定するためのマーカーとして、TLR2および/またはTLR4の使用に関する。
別の態様では、本発明は、角膜の拡張性疾患に罹患している被験者の臨床転帰を決定するためのマーカーとしてのTLR2および/またはTLR4の使用に関する。
最後に、別の局面において、本発明は、角膜の拡張性疾患のための治療法で治療される被験者を選択するためのマーカーとしてのTLR2および/またはTLR4の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、コホートAの研究グループによる、角膜細胞におけるTLR2の発現レベルの中央値[四分位数]を示す。対照被験者と比較して、TLR2の発現の漸増が、円錐角膜としての角膜拡張症において、観察される:対照<無症状の円錐角膜<円錐角膜。
図2図2は、コホートAの研究グループによる、角膜細胞におけるTLR4の発現レベルの中央値[四分位数]を示す。対照被験者と比較して、TLR4の発現の漸増が、円錐角膜としての角膜拡張症において、観察される:対照<無症状の円錐角膜<円錐角膜。
図3図3は、コホートBの研究グループによる、角膜細胞におけるTLR2の発現レベルの中央値[四分位数]を示す。TLR2の発現の漸増が観察される:対照<親族(Relatives)<円錐角膜。同様に、円錐角膜(KC)の患者は、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)(PMD)患者よりも、角膜細胞において、TLR2のより高い発現を示した。
図4図4は、コホートBの研究グループによる、角膜細胞における、TLR4の発現レベルの中央値[四分位数]を示す。TLR4の発現の漸増が観察される:対照<親族(Relatives)<円錐角膜。同様に、円錐角膜(KC)の患者は、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)(PMD)患者よりも、角膜細胞において、TLR4のより高い発現を示した。
図5図5は、コホートBの研究グループによる、結膜細胞のTLR4の発現レベルの中央値[四分位数]を示す。TLR4の発現の漸増が観察される:対照<親族(Relatives)<ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)。しかし、円錐角膜(KC)の患者は、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)(PMD)患者よりも、結膜細胞において、TLR4と同等の発現を示した。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明の発明者らは、拡張症プロセスが免疫応答と関連していることを発見した。この点で、本発明者らは、予想外に、TLR2およびTLR4タンパク質の発現レベルが、円錐角膜またはペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)のような拡張症と診断された被験者において増加していることを見出した。
また、本特許出願の発明者らは、TLR2とTLR4の増大した発現レベルと、前記疾患の進行と関連している特定のパラメーターとの間の相関関係を示した。したがって、これは、病気の診断マーカーとしてだけでなく、該疾患の発症や進行の危険性を予測する代理マーカーとしても、TLR2とTLR4の使用を可能にする。
これらの知見に基づいて、本発明者らは、以下に詳細に説明する異なる実施形態において本発明の方法を開発した。
【0007】
被験者における角膜拡張症を診断するための方法
第1の態様において、本発明は、被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患を診断するためのインビトロの方法に関し、以下、「本発明の第1の方法」と言い、以下を含む。
a)前記被験者由来のサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および、
b)前記発現レベルを、基準値と比較すること;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合は、被験者が角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患していることを示す。
【0008】
本明細書で使用する用語「診断」は、被験者における可能性のある疾患を、決定および/または同定しようとするプロセス、すなわち、診断手順、および、このプロセスによって到達した意見、すなわち、診断意見の両方を指す。このように、個人の状態を、治療および予後に関する医学的判断を可能にする別々の別個のカテゴリーに分類する試みと見なすこともできる。当業者には理解されるように、そのような診断は、それが好ましいものの、診断する被験者の100%について正確ではないかもしれない。この用語は、しかしながら、このような病理(本件の場合、角膜拡張症)に罹患している被験者の統計学的に有意な集団を特定することができる必要がある。当業者は、一団が、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt−検定、マンホイットニーなどによって、よく知られている様々な統計的評価ツールを用いて統計的に有意であるかどうかを決定することができる。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%である。p値は、0.05,0.025,0.001またはそれ以下であることが好ましい。
【0009】
本明細書で用いられる用語「角膜の拡張性(ectatic)疾患」または「角膜拡張症」は、従って、角膜曲率(corneal curvature)の変化を生じさせる、その構造的完全性(structural integrity)に影響を与える、角膜の厚さの漸進的な薄化を含む状態を指す。衰弱した角膜は膨らみ(bulges)、そして、不揃いな乱視の大きな打撃が発生し始める。角膜拡張症は、円錐角膜(無症状円錐角膜および臨床円錐角膜に分類することができる)、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)、球状角膜(keratoglobus)および角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)を含む。
角膜の曲率は、以下のような、角膜の曲率に関連するいくつかのパラメータを決定することを許容する、ビデオケラトグラフィ(videokeratography)のような角膜トポグラフィー方法(corneal topography method)によって決定することができる。
−K1:中央3mmのゾーン内で測定し、そして、ジオプトリ(diopters)(D)で表わされた、角膜の前面(anterior surface)の弱主経線の曲率力(the curvature power of the flat meridian)を決定する。
−K2:中央3mmのゾーン内で測定し、そして、ジオプトリ(diopters)(D)で表わされた、角膜の前面の強主経線の曲率力(the curvature power of the steep meridian)を決定する。
−Kc:頂点の最大度数(maximum diopter power of the apex)を決定する
−Km:ジオプトリ(diopters)(D)で表わされた、中央3mmのゾーン内の角膜の前面の平均曲率力(mean curvature power)を決定する。
−Kmax:ジオプトリ(diopters)(D)で表わされた、角膜の全前面の最大曲率力(maximum curvature power)を決定する。
−最も薄い場所(Thinnest location):角膜の厚い領域と最薄点の位置を決定する(μm)。
−後面角膜エレベーション(Posterior corneal elevation)(μm)。
【0010】
健康な被験者で測定された前記パラメータは、以下のように纏めることができる。
K1(中央のジオプトリ):41.8〜45.3Dの間;
K2:42.2〜45.3Dの間;
後面角膜エレベーション(elevation);0.024〜0.036μmの間
最薄の部位:513.5〜567μmの間。
【0011】
特定の実施形態において、本発明の第1の方法は、角膜の拡張性(ectatic)疾患を診断するための方法に関し、ここで、角膜の拡張性(ectatic)疾患は、無症状円錐角膜、臨床円錐角膜、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)および角膜屈折矯正術後拡張症(post−refractive corneal ectasia)からなる群から選択される。
本明細書で使用する用語「円錐角膜」は、角膜が、その内部構造におけるコラーゲン線維変化に起因する、不揃いの円錐形状を採用し、弱視を引き起こす角膜の進行性疾患を意味する。ほとんどの場合、両側性であり、そして、進行は非対称である。円錐角膜の主要な解剖学的症状は、中央または中心旁(paracentral)の領域の薄化であり、すなわち、円錐角膜が発達するにつれて角膜が薄くなり、円錐角膜が進行するにつれて視力が低下する。円錐角膜は、Rabinowitz & McDonnellによって提案された、ビデオケラトグラフ(videokeratographic)のガイドラインに従って分類することができ、下方―上方度数非対称性(inferior−superior dioptric asymmetry)が1.4Dよりも大きいが、1.9D未満であり、シミュレートされた中央角膜屈折力(central corneal power)が、47.2D以上で、48.7D未満の場合、「無症状円錐角膜」として、眼を分類することが可能である。48.7Dを超える中心角膜曲率、並びに、1.9D以上の下方―上方度数非対称、を示す眼は、「臨床円錐角膜」として分類することができる;2)1.0の値(補正なし、あるいは球面および/または円柱補正をして<1.50D)を有する、無症状円錐角膜眼の距離視力(distance visual acuity)(DVA)。
【0012】
本明細書で使用する用語「ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)」または「PMD」とは、場合によっては一眼にのみ影響を与えるが、角膜の下方および周辺領域に、クリアな両眼が薄くなっていることによって特徴付けられる変性角膜の状態を指す。円錐角膜とは異なり、痛みは一般的には、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)には存在せず、そして、視力喪失を除いて、いかなる症状も病態に伴わない。しかし、まれに、PMDは、突然の視力喪失の発症と耐え難いほどの眼の痛みを提示することがあり、角膜の薄化が穿孔につながる場合に発生する。通常、PMDは、角膜の血管新生、瘢痕化、または脂質の沈着を伴わない。
本明細書で使用する用語「球状角膜(keratoglobus)」は、角膜内の構造変化が、角膜を非常に薄くし、そして、その通常の緩やかな曲線よりも、より球形に変化させる、眼の変性の非炎症性疾患を指す。最初は、周辺で(at the margin)、角膜の薄層化が起こり、球形でわずかに拡大した眼を齎す。
本明細書で使用する用語「角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)」は、手術中に起こる角膜の内側の層の弱体化による病態を指す。近視や乱視の増加により、視力がぼやけて歪む。
本明細書で使用される場合、用語「TLR2」または「Toll様受容体2」は、ヒトにおいて、TLR2遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。TLR2はまた、CD282(表面抗原分類(cluster of differentiation)282)として指定されている。TLR2は、Toll様受容体の1つであり、そして、免疫系において役割を果たす。特に、ヒトTLR2タンパク質の配列は、NCBIデータベースエントリー、NP_003255(2014年5月25日のバージョン)で提供されている。
本明細書で使用される、用語「TLR4」または「Toll様受容体4」は、ヒトにおいて、TLR4遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。TLR4はまた、CD284(表面抗原分類(cluster of differentiation)284)として指定されている。TLR4の分子量は、約95kDaである。特に、ヒトTLR4タンパク質の配列は、NCBIデータベースエントリー、NP_003257(2014年5月25日のバージョン)に提供されている。
本明細書で使用される用語「被験者」は、哺乳類として分類されるすべての動物を意味し、そして、例えば、家畜および農場動物、霊長類およびヒト、たとえば、人間、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類を含み、これらに限定されない。好ましくは、被験者は、任意の年齢または人種の男性または女性のヒトである。
本発明において、用語「サンプル」または「生物学的サンプル」は、被験者の眼から単離された生物学的材料を意味する。生物学的サンプルは、所望のバイオマーカーを検出するのに適した任意の生物学的材料を含むことができ、そして、被験者の細胞および/または非細胞材料を含むことができる。好ましい実施形態では、サンプルは、角膜組織からの細胞を含む任意のサンプルである。他の好ましい実施形態では、サンプルは、結膜組織からの細胞を含む任意のサンプルである。サンプルは、当技術分野で公知の任意の従来の方法を用いて単離することができる。簡潔には、角膜上皮細胞は、
無菌角膜スクレーパーを用いた機械的創傷清拭(debridement)によって、
印象細胞診(impression cytology)によって、または、
眼をこすることによって、標準技術を使用してマイクロピペットを用いて収集され、または既知の他の任意の技術によって、涙液膜(tear film)中に放出される角膜上皮細胞などの懸濁された涙サンプルである細胞を採取することによって、
被験者から得ることができる。サンプルが結膜組織由来の結膜細胞である場合、それらはマイクロトレフィン(micro trephine)を用いてサンプリングされた組織のような既知のサンプリング技術を用いて得ることができる。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明の第1の方法は、診断される被験者からのサンプルにおけるTLR2の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第1の方法は、診断される被験者由来のサンプルにおけるTLR4の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第1の方法は、診断される被験者由来のサンプルにおけるTLR2およびTLR4の発現レベルを決定することを含む。
本明細書で使用される、用語「発現レベル」は、特定の遺伝子または対応するポリペプチドの発現の程度を測定するパラメータの値を指す。特定の実施形態では、前記値は、目的の遺伝子またはその断片のmRNAレベルを測定することによって、または、目的の前記遺伝子またはその変異体によってコードされるタンパク質の量を測定することによって決定することができる。したがって、本発明の文脈において、特定の実施形態において、前記発現レベルは、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定すること、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定することを含む。
遺伝子の発現レベルを検出および定量するための実質的に任意の従来の方法を、特定の遺伝子の発現レベルを検出および定量するために、本発明の枠組み内で使用することができる。
非限定的な例として、遺伝子の発現レベルは、前記遺伝子のmRNAレベルを定量することによって、または、前記遺伝子によってコードされるタンパク質のレベルを定量することによって、決定することができる。mRNAの量を測定するための方法は、技術水準において周知である。例えば、試験下の被験者からの眼のサンプルのような、サンプルに含まれる核酸を、従来の方法に従って抽出する(例えば、溶菌酵素、化学溶液または定着樹脂を用いることによって)。抽出されたmRNAは、ハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット分析またはmRNAを標識cDNAに変換した後に、DNAまたはRNAアレイ(マイクロアレイ)によって)、および/または酵素連鎖反応による増幅によって検出することができる。一般に、定量的または半定量的な酵素増幅法が好ましい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または定量的リアルタイムRT−PCRまたは半定量的RT−PCR技術が特に有利である。プライマー対は、cDNA増幅を、ゲノムDNA(gDNA)からのコンタミネーションと区別するために、イントロンを重畳する目的で設計されることが好ましい。2つのエキソンの間に位置する領域に特異的にハイブリダイズする、好ましくは、例えば蛍光で標識された、追加のプライマーまたはプローブは、cDNA増幅を、gDNAからのコンタミネーションと区別するために任意に設計される。所望であれば、前記プライマーは、おおよそ、5’末端から、プライマーの全長の半分までを含むヌクレオチドが、関心のあるエキソンの1つにハイブリダイズするように、および、おおよそ、3’末端から前記プライマー全長の半分までを含むヌクレオチドが他の目的のエキソンとハイブリダイズするように設計することができる。適切なプライマーは、当業者によって容易に設計され得る。他の増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)および核酸配列に基づく増幅(NASBA)が含まれる。mRNAの量は、定量的または半定量的に測定することが好ましい。遺伝子の発現レベルを定量するための従来の方法についての関連情報は、例えば、Sambrookら、2001年〔Sambrook、J.ら、「分子クローニング:実験室マニュアル」第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、1−3巻]に見出すことができる。
異なるサンプルにおける1つの遺伝子の発現値を正規化するために、試験下の被験者物からのサンプルにおける目的の遺伝子(すなわち、TLR2および/またはTLR4)のmRNAレベルを、対照のRNAレベルと比較することは可能である。本明細書で使用される、「対照のRNA」は、遺伝子の発現レベルが、被験者が、角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患しているか否かに依存して異ならない、当該遺伝子のRNAである;対照のRNAは、好ましくは、構造的に(constitutively)発現され、かつ、必須の細胞機能(essential cell functions)を果たすタンパク質をコードするハウスキーピング遺伝子に由来するmRNAである。本発明における使用のためのハウスキーピング遺伝子の、例示的な非限定的な例は、GUSB(β−グルクロニダーゼ)、PPIA(ペプチジル−プロリルイソメラーゼA)、β−2−ミクログロブリン、GAPDH、PSMB4(プロテアソーム サブユニット ベータ型4)、ユビキチン、トランスフェリン受容体、18−SリボソームRNA、シクロフィリン、チューブリン、β−アクチン、3−モノオキシゲナーゼ/トリプトファン 5−モノオキシゲナーゼ チロシン 活性化タンパク質(YWHAZ)等を含む。TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、試験下の被験者からのサンプルにおける前記遺伝子の転写産物(mRNA)の発現レベルを測定することにより決定されるならば、サンプルは、追加の分析のために、核酸を調製するために、細胞内成分を、水性または有機溶液に放出する目的で、物理的または機械的に、組織または細胞の構造を破壊するように処理することができる。抽出プロセス中に、RNA分解を防止するように注意することが好ましい。
本発明の特定の好ましい実施形態において、遺伝子の発現の増加は、通常、対応するタンパク質の量の増加を伴うため、TLR2の発現レベルは、TLR2遺伝子またはその変異体によってコードされるタンパク質の発現レベルを決定する手段によって決定される、ことも可能である。
【0014】
本明細書で使用する「変異体」という用語は、他の種において天然に現れるヒトTLR2のそれらの変異体、すなわち、TLR2のオルソログ(orthologues)に関する。そのような変異体は、何らの制限なく、以下を含む。
マウスTLR2:NCBIデータベースに、2014年5月25日付の受託番号NP_036035の配列に対応する、
ブタTLR2:NCBIデータベースに、2014年1月10日付の受託番号NP_998926の配列に対応する、
マカクTLR2:NCBIデータベースに、2014年3月2日付の受託番号NP_001123897の配列に対応する、
ラットTLR2:NCBIデータベースで、2014年8月10日付の受託番号NP_942064の配列に対応する。
【0015】
本発明の他の特定の好ましい実施形態では、TLR4の発現レベルは、TLR4の遺伝子またはその変異体によってコードされるタンパク質の発現レベルを決定することによって決定される。前記変異体は、制限されず、以下を含む:
マウスTLR4:NCBIデータベースに、2014年5月4日付の受託番号NP_067272の配列に対応する;
ブタTLR4:NCBIデータベースに、2014年6月7日日付の受託番号NP_001280245の配列に対応する;
マカクTLR4:NCBIデータベースに、2014年2月26日付の受託番号NP_001032169の配列に対応する;
ラットTLR4:NCBIデータベースに、2014年8月10日付の受託番号NP_062051の配列に対応する。
本発明における使用に適したTLR2および/またはTLR4の天然の変異体はまた、1つ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失によって、前記配列に由来し、そして、天然の対立遺伝子、別の処理から生じる変異体および天然に現れる切断型(truncate forms)を含む。
用語「変異体」もまた、TLR2および/またはTLR4のフラグメント、アイソフォーム、および類似体または誘導体を含む。好ましくは、TLR2および/またはTLR4の変異体は、
(1)1つ以上のアミノ酸残基が、保存または非保存のアミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)によって置換されているポリペプチド。そして、そのような置換されたアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされていても、されていなくてもよい。
(2)たとえば、置換された結合によって修飾された残基のような、一または複数の修飾されたアミノ酸残基がある、ポリペプチド、
(3)類似のmRNAの代替的なプロセシングから生じるポリペプチド、
(4)ポリペプチド断片および/または
(5)TLR2および/またはTLR4融合から生じるポリペプチド、または、分泌リーダー配列(secretory leader sequence)または、精製(例えば、Hisタグ)または、検出(例えば、Sv5エピトープタグ)について使用される配列のような、他のポリペプチドを有する、(1)乃至(3)に規定されたぺプチド、
である。
断片には、オリジナルの配列のタンパク質分解切断(多部位タンパク質分解を含む)によって生成されたポリペプチドが含まれる。変異体は、翻訳後または化学的に改変されていてもよい。そのような変異体は、当業者には明らかであると考えられる。
本発明による変異体は、オリジナルのアミノ酸配列と、少なくとも60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%、または95%同様または同一であるアミノ酸配列を含む。2つのタンパク質間の同一性の程度は、当業者に広く知られている、コンピュータアルゴリズムおよび方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好適には、BLASTPアルゴリズム[BLASTManual、Altschul、S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、Md.289494、Altschul、S.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)]を用いることにより決定される。
【0016】
タンパク質は、翻訳後に修飾することができる。例えば、本発明の範囲内に入る翻訳後修飾には、シグナルペプチド切断、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、タンパク質分解性ミリストイル化、タンパク質フォールディングおよびタンパク質分解処理などが含まれる。さらに、タンパク質は、翻訳後の修飾によってまたは翻訳中に非天然アミノ酸を導入することによって形成される非天然のアミノ酸を含むことができる。
特定の遺伝子の発現に対応するタンパク質の量の決定は、例えば、イムノアッセイなどのタンパク質検出および定量のための任意の従来の方法を用いて行うことができる。非限定の例として、決定すべきタンパク質に特異的に結合する能力を有する抗体(またはその抗原決定基を有するその断片)、およびその後、抗原−抗体複合誘導体の定量を用いて、前記決定を行うことができる。抗体は、例えば、ポリクローナル血清、ハイブリドーマ上清またはモノクローナル抗体、抗体断片、Fv、Fab、Fab‘およびF(ab‘)2、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ヒト化抗体等であることができる。前記抗体は、マーカーで標識されていてもいなくてもよい。本発明で使用することができるマーカーの例示的で非限定的な例には、放射性同位元素、酵素、フルオロフォア、化学発光試薬、酵素補因子、酵素基質、酵素阻害剤などが含まれる。例えば、ウエスタンブロットまたはイムノブロット技術、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、EIA(酵素イムノアッセイ)、DAS−ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫組織化学的手法(immunocytochemical)またはフローサイトメトリーのような、免疫組織化学(immunohistochemical)技術に基づくアッセイのような、本発明で使用することができる、広い範囲の周知のアッセイがある。
タンパク質を検出および定量する他の方法は、アフィニティークロマトグラフィー、リガンド結合アッセイ技術、粒子増強比濁イムノアッセイ(particle−enhanced turbidimetric immunoassay)(PETIA)等を含む。特定の実施形態において、TLR2および/またはTLR4タンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学またはELISAまたはタンパク質アレイによって行われる。好ましい実施形態において、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、フローサイトメトリーによって決定される。簡潔には、フローサイトメトリーは、毎秒数千の粒子までの物理的および化学的特性の同時マルチパラメトリック分析を可能にするレーザーベースの生物物理学(biophysical)技術である。典型的には、細胞上または内の、ターゲットの特徴を認識する、抗体に結合している蛍光標識またはフルオロフォアを使用することに基づいているので、それらはまた、細胞膜または別の細胞構造に対する親和性を有する化学物質に結合され得る。各フルオロフォアは、特徴的なピーク励起および発光波長を有しており、そして、発光スペクトルはしばしば重なる。結果として、使用可能な標識の組み合わせは、蛍光色素(fluorochromes)を励起するために使用されるランプまたはレーザーの波長および利用可能な検出器に依存する。
所望であれば、異なるサンプル間の、一つのタンパク質、すなわち、TLR2および/またはTLR4の発現値を、正規化するために、試験下の被験者(subject object)からのサンプルにおける目的のタンパク質のタンパク質レベルを、対照タンパク質レベルと比較することが可能である。特定の一の実施形態において、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、すなわち、サンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の濃度を提供することによって、絶対的に決定される。別の特定の実施形態において、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、サンプルにおける全タンパク質量に対して相対的に測定される。
【0017】
本発明の第1の方法の第2ステップは、基準値と、前記方法の第1ステップで得られたTLR2および/またはTLR4の発現レベルを比較することを含む。本明細書で使用する用語「基準値」は、被験者から得られたサンプルから得られた値/データのための基準として使用される実験室値を指す。基準値(または基準レベル)は、絶対値、相対値、上限および/または下限を有する値、一連の値、平均値(average value)、中央値、平均値(mean value)、または対照または基準値を参照することによって、表わされた値であることができる。基準値は、例えば、試験下の被験者(subject object)から得られたサンプルから得られた値、ただし、以前の時点で得られた値、のような、個々のサンプルから得られた値に基づくことができる。基準値は、試験下の被験者(subject object)の母集団において得られた値と一致する、実年齢群(chronological age)の被験者の母集団において得られた値のような、多数のサンプルに基づいてもよいし、または、分析されるサンプルの選択または除外のサンプルのセット(a set of inclusion or exclusion samples)に基づいてもよい。
基準値は、疾患状態または特定の表現型を有さない、健康な被験者からのサンプルから得られた、比較されるべきマーカーの発現値に基づくことができる。例えば、基準値は、角膜拡張症に罹患していない被験者から得られた、好ましくは、いかなる角膜外傷または角膜−結膜疾患または、いかなる眼疾患に罹患していない、健常被験者から得られた、分析されるべきマーカーの発現レベルに基づくことができる。好ましい実施形態において、基準値は、健康な被験者または角膜拡張症の前病歴のない被験者からのサンプルまたはサンプルのセットから得られる。
基準値は、また、特定の表現型を有する被験者からのサンプルから得られた、比較すべきマーカーの発現値に基づくこともできる。
基準値が、一旦、確立されると、試験下の被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、基準値と比較される。この比較の結果として、被験者からのサンプルにおける、関心のあるマーカーの発現レベル(例えば、本発明の第1の方法におけるTLR2および/またはTLR4)が、前記遺伝子についての前記基準値に対して、「より大きい」、「未満」または「等しい」とすることができる。
【0018】
本発明の文脈において、前記遺伝子についての基準値と比較したとき、例えば、5%、10%、25%、50%、100%またはそれ以上増加した場合、または、前記マーカーについての基準値と比較したときに、たとえば、少なくとも1.1倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍またはそれ以上増加した場合、被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルは、前記マーカーについての基準値に対して、「より大きい」または「より高い」と考えられる。本発明の文脈では、また、被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記マーカーの基準値と比較して、例えば、5%、10%、25%、50%、75%、または100%減少したとき、被験者からのサンプルにおける目的のマーカー(例えば、本発明の第1の方法におけるTLR2および/またはTLR4)の発現レベルは、前記マーカーの基準値「未満」であるとも考える。
本発明の文脈では、また、被験者からのサンプルにおける、目的のマーカー(すなわち、本発明の第1の方法におけるTLR2および/またはTLR4)の発現レベルは、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、実質的に、基準値に対して不変であるとき、前記マーカーの基準値「と等しい」と考えられる。たとえば、レベルが0.1%以下、0.2%以下、0.3%以下、0.4%以下、0.5%以下、0.6%以下、0.7%以下、0.8%以下、0.9%以下、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、または、決定で使用される実験方法に関連したエラーと同じであるパーセンテージ値を超えない範囲で、相違するとき、試験下の被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、基準値「と等しい」と考えられる。
一旦、比較が、被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルと、前記マーカーの基準値の間で、行われると、本発明の第1の方法は、前記基準値より、TLR2および/またはTLR4の発現レベルがより高いことに基づいて、被験者は、角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患していると決定することを可能にする。
【0019】
本発明の第1の方法の特定の実施形態では、無症状の円錐角膜に罹患している被験者を診断することを目的としている。その場合、基準値は、健常者からの被験者のサンプル、好ましくは角膜拡張症を持っていない被験者から、好ましくは、いかなる角膜外傷または角膜−結膜疾患または、いかなる眼疾患に罹患していない健常者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルに対応する。好ましい実施形態において、基準値は、健康な被験者または角膜拡張症の前病歴のない被験者からのサンプルまたはサンプルのセットから得られる。この特定の実施形態では、一旦、比較が、被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルと、前記マーカーの基準値の間で、行われると、本発明の第1の方法は、前記基準値より、TLR2および/またはTLR4の発現レベルがより高いことに基づいて、被験者は、無症状の円錐角膜に罹患していると決定することを可能にする。本出願の実施例に示されるように、健常被験者の結膜組織において、フローサイトメトリーによって測定されたTLR2の値は、約213(90〜295)AUF(任意蛍光単位Arbitrary Fluorescence Units)である。健常被験者の角膜組織において、フローサイトメトリーにより測定されたTLR2の値は、約185(113〜286)AUFである。健常被験者の結膜組織においてフローサイトメトリーで測定されたTLR4値は、約1581(1281〜2265)AUF(任意蛍光単位Arbitrary Fluorescence Units)である。健常被験者の角膜組織において、フローサイトメトリーによって測定されたTLR4の値は、約1654(1134〜2587)AUFである。したがって、所望であれば、前記の値は、本発明の第1の方法の第2ステップでの基準値として使用することができる。
【0020】
別の特定の実施形態において、本発明の第1の方法は、臨床円錐角膜を罹患している被験者を診断することを目的とし、この場合、基準値は、無症状円錐角膜に罹患している被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルに対応する。この特定の実施形態では、一旦、比較が、被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルと、前記マーカーの基準値の間で、行われると、本発明の第1の方法は、前記基準値より、TLR2および/またはTLR4の発現レベルがより高いことに基づいて、被験者は、臨床性円錐角膜疾患に罹患していると決定することを可能にする。本出願の実施例に示されるように、無症状円錐角膜に罹患している被験者の結膜組織において、フローサイトメトリーにより測定されたTLR2値は、約207(124〜398)AUFであり、無症状円錐角膜を患っている被験者の角膜組織においてフローサイトメトリーにより測定したTLR2の値は、約977(647〜1330)AUFである。無症状円錐角膜に罹患している被験者の結膜組織において、フローサイトメトリーにより測定したTLR4値は、約1922(1574から2778)AUF(任意蛍光単位)であり;無症状円錐角膜に罹患している被験者の角膜組織において、フローサイトメトリーで測定したTLR4の値は、約2569(2071〜3808)AUFである。したがって、所望であれば、前記の値は、本発明の第1の方法の第2ステップにおける基準値として使用することができる。
【0021】
さらに別の特定の実施形態では、本発明の第1の方法は、基準値が、健康な被験者からのサンプルにおいて、測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルに対応する場合に、被験者は、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)に罹患していると診断することを目的とする。この特定の実施形態では、一旦、比較が、被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルと、前記マーカーの基準値の間で、行われると、本発明の第1の方法は、前記基準値より、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、より高いことに基づいて、被験者は、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)に罹患していると決定することを可能にする。本出願の実施例に示されるように、健康な被験者の結膜組織において、フローサイトメトリーにより測定されたTLR2値は、約733(560〜946)AUFであり;健康な被験者の角膜組織において、フローサイトメトリーにより測定した、TLR2の値は、約580(413〜976)AUFであり;健康な被験者の結膜組織においてフローサイトメトリーにより測定された、TLR4値は、約2380(1781〜3283)AUF(任意蛍光単位)であり;健康な被験者の角膜組織において、フローサイトメトリーによって測定されたTLR4の値は、約1572(949〜2353)AUFである。したがって、所望であれば、前記の値は、本発明の第1の方法の第2ステップでの基準値として使用することができる。特定の実施形態において、本発明の第1の方法は、角膜組織におけるTLR2の発現レベルが前記基準値より高いならば、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)に罹患していると、被験者を診断することを目的とする。
【0022】
別の特定の実施形態では、本発明の第1の方法は、前記基準値よりも、角膜または結膜、好適には、結膜組織における、TLR4の発現レベルが高い場合に、被験者は、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)に罹患していると診断することを目的とする。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の方法はまた、ジオプトリ(diopter)、角膜厚と角膜エレベーション(corneal elevation)から選択される、少なくとも一つのパラメータを決定することを含む。
本明細書で使用される、用語「ジオプトリ(diopter)」は、レンズまたはレンズ系の倍率(magnifying power)の単位を指す。レンズの度数(power of a lens)は、焦点距離で割った単位(1)に比例するので、ジオプトリのレンズの度数は、メートルでの焦点距離で割った1メートルに数値的に等しい。拡大能(magnifying power)の代数符号(algebraic signs)は、レンズが、平行光線の入射光束(incident pencil)を収束(converge)させるか、または発散(diverge)させるかどうかを示す。したがって、1メートルの焦点距離を有する発散レンズは、−1ジオプトリのパワーを有する。ジオプトリは、また、メートルで測定された半径の逆数(reciprocal)に等しい曲率の測定として使用することができる。
【0023】
被験者における、角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する危険性を決定するための方法
第2の態様において、本発明は、被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する危険性を決定するためのインビトロの方法に関し、以下、下記を含む、本発明の第2の方法」という:
a)前記被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;そして
b)前記発現レベルを、基準値と比較する、
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、被験者は、角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する高い危険性有することを示す。
本明細書で使用される場合、表現「危険性の決定」または「危険性の予測」または同様の表現は、表現「危険性評価」または「危険性の評価」の同義語であり、本発明は、角膜の拡張性(ectatic)疾患を被験者が発症する危険性を、予測、推定または評価を可能にすることを意味する。危険性の予測は、一般的に、危険性が増加または減少するいずれかのことを意味する。当業者であれば、理解されるように、予測(または危険性)は、評価すべき角膜の拡張性(ectatic)疾患を患っている被験者の100%について正確であることは好ましいが、その必要はない。この用語は、しかし、統計学的に有意な部分、被験者が、角膜の拡張性(ectatic)疾患を有する増加確率を有するとして同定され得ることを必要とする。被験者が統計的に有意であるかどうかは、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定等の、様々な周知の統計評価ツールを使用して、当業者によって更なる混乱(ado)をすることなく決定することができる。詳細は、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1983年のDowdy and Wearden,研究のための統計(Statistics for Research)で見つけることができる。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、好ましくは、0.05,0.025,0.001,0.0001またはそれ以下である。
【0024】
本発明の第2の方法は、前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定することを含む。
好ましい実施形態において、本発明の第2の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第2の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR4の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第2の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2およびTLR4の発現レベルを決定することを含む。
【0025】
用語「被験者」、「サンプル」および「角膜の拡張性(ectatic)疾患」は、以前に、本発明の第1の方法の文脈において定義され、そして、本発明の第2の方法にも等しく適用され得る。
特定の実施形態では、前記被験者からのサンプルは、結膜および角膜組織から選択される。結膜および角膜組織からサンプルを得るための方法は、本発明の第1の方法に詳述されている。
【0026】
別の特定の実施形態では、拡張性(ectatic)疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)、球状角膜(keratoglobus)および角膜角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)から選択される。
用語「無症状の円錐角膜」、「臨床円錐角膜」、「ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)」、「球状角膜(keratoglobus)」および「角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)」は、以前に定義した。
用語「TLR2」、「TLR4」および「発現レベル」は、以前に定義された。特定の実施形態において、前記発現レベルは、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定、またはTLR2および/またはTLR4のタンパク質のレベルを決定することを含む。TLR2および/またはTLR2の発現レベルを決定するための方法は、本発明の第1の方法との関連で詳述し、そして、本発明の第2の方法にも同様に適用され得る。
特定の実施形態では、TLR2および/またはTLR4のタンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学またはELISAまたはタンパク質アレイによって行われる。好ましい実施形態では、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、フローサイトメトリーによって決定される。
【0027】
本発明の第2の方法の第2のステップは、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを、基準値と比較することを含む。用語「基準値」は、先に、本発明の第1の方法の文脈において、以前に定義された。
一旦、比較が、研究被験者の被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルと基準値の間で行われると、本発明の第2の方法は、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値よりも高い場合に基づき、被験者は、角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する高い危険性を有するか否か決定することを可能にする。用語「より高い」「より少ない」および「に等しい」は、以前に定義した。
【0028】
特定の実施形態において、本発明の第2の方法は、以前、屈折欠陥を有すると診断された被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する危険性を決定することを目的とする。
本明細書で使用する、用語「屈折欠陥」は、眼による、網膜上の光の収束における誤りを意味し、屈折欠陥は以下を含む:
−遠くの距離からの光の平行光線が、通常どおり、網膜自体の代わりに、網膜の前方に位置する焦点に収束する、眼の屈折の欠陥を指す、近視。
−眼の2つの経線間の異なる屈折率によって特徴付けられる眼の欠陥を指し、明確にに焦点を結ぶのを妨げ、そして、一般に、角膜のフロント曲率における欠陥のせいである,乱視。
−眼の不完全性に起因する視力の欠陥(多くの場合、眼球が短すぎる場合、またはレンズが十分に丸くならない)であり、近いオブジェクト(objects)物体に焦点を結ぶのが困難である、遠視(hyperopia)(または遠視(hypermetropia))。
−眼が、近くのオブジェクト(objects)に焦点を合わせる能力が徐々に減少を発揮する、加齢に伴う状態である、老眼。
【0029】
好ましい実施形態において、被験者は、以前に、無症状の円錐角膜を有すると診断された(シミュレートされた中央角膜屈折力((simulated central corneal power)は、47.2Dより大きく、しかし、48.7D未満で、下方―上方度数非対称(inferior−superior dioptric asymmetry)が1.4Dよりも大きく、1.9D未満である)。
【0030】
本発明の別の特定の実施形態では、試験下の被験者は、眼のかゆみ、眼をこする、生体顕微鏡における徴候および結膜充血から選択される、以前の眼病態を発症した。
用語「眼のかゆみ」は、本明細書で使用する場合、とりわけ、アトピー性角結膜炎(keratoconjunctivitis)、春季角結膜炎(keratoconjunctivitis)、アレルギー性結膜炎およびアトピー性皮膚炎によって引き起こされ得る眼の掻痒(pruritus)を指す。他の原因は、ドライアイ症候群、マイボーム腺機能不全、眼瞼炎(blepharithis)、コンタクトレンズ誘起結膜炎、巨大乳頭結膜炎および接触皮膚眼瞼炎(dermatoblepharithis)を含む。
用語「生体顕微鏡における徴候」は、本明細書で使用する場合、瞼、結膜、虹彩、レンズ、強膜(sclera)および角膜を含む眼の前部における領域の異常を指す。網膜や視神経にも見ることができる。
用語「結膜充血」は、本明細書で使用する場合、炎症反応による結膜の血管の充血(engorgement)を指す。
【0031】
角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患している被験者の臨床転帰を決定するための方法
第3の局面において、本発明は、角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患している被検者の臨床転帰を決定するためのインビトロの方法に関し、以下、「本発明の第3の方法」といい、以下を含む。
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定すること;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較すること;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値よりも高い場合には、負の臨床転帰(negative clinical outcome)を示す。
【0032】
用語「予後を決定する」または「結果を予測する」は、本明細書では、正または負の特定の臨床転帰を、患者が有するであろう可能性を意味するために使用される。本発明の予測方法は、任意の特定の患者のために最も適切な治療法(treatment modalities)を選択することによって、治療決定を行うために臨床的に使用することができる。本発明の予測方法は、患者がこのような屈折矯正手術のような、治療計画に有利に応答する可能性があるかどうかを予測する貴重なツールである。予測は、予後因子を含むことができる。
当業者によって理解されるように、予測は、評価されるべき被験者の100%について正確であることが好ましいが、その必要はない。しかし、この用語は、被験者の統計学的に有意な部分が、所与の結果を有する増加した確率を有すると同定することができることを必要とする。被験者が、統計的に、有意か否かは、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、交差検定分類率(cross−validated classification rates)等のような、種々の周知の統計学的評価のツールを、当業者が、使用することによって更に面倒にならずに、決定することができる。詳細は、DowdyとWeardenの、「研究のための統計」(Statistics for Research)、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1983年に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%である。p値は、好ましくは、0.01、0.005またはそれ以下である。
【0033】
本発明の第3の方法は、前記被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定することを含む。
好ましい実施形態では、本発明の第3の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第3の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR4の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第3の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおける、TLR2およびTLR4の発現レベルを決定することを含む。
【0034】
本発明の第3の方法の第1ステップは、試験下の被験者のサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定することを含む。
用語「被験者」、「サンプル」および「角膜の拡張性(ectatic)疾患」は、以前に、本発明の第1の方法の文脈において定義され、本発明の第3の方法に等しく適用される。
特定の実施形態では、前記被験者からのサンプルは、結膜および角膜組織から選択される。結膜および角膜組織からサンプルを得るための方法は、本発明の第1の方法において詳述されている。
別の特定の実施形態では、拡張性(ectatic)疾患は、無症状の円錐角膜、臨床円錐角膜、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)、球状角膜(keratoglobus)および角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)から選択される。用語「無症状の円錐角膜」、「臨床円錐角膜」、「ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)」、「球状角膜(keratoglobus)」および「角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)」は以前に定義されている。
用語「TLR2」、「TLR4」および「発現レベル」は、以前に定義されている。特定の実施形態において、前記発現レベルは、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定することを含む。TLR2および/またはTLR2の発現レベルを決定するための方法は、本発明の第1の方法の文脈で詳述され、そして本発明の第三の方法に等しく適用され得る。
特定の実施形態では、TLR2および/またはTLR4のタンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学またはELISAまたはタンパク質アレイで実行される。好ましい実施形態では、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、フローサイトメトリーによって決定される。
【0035】
本発明の第3の方法の第2ステップは、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを、基準値と、比較することを含む。用語「基準値」は、以前に定義されている。特定の実施形態において、前記基準値は、健康な被験者または角膜拡張症の既往歴のない被験者からのサンプルまたはサンプルのセットから得られる。
【0036】
別の特定の実施形態では、前記基準値は、時間のより早い時点で得られた前記被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4mp発現レベルを意味する。したがって、本発明の第3の方法は、第1の時点で得られた角膜の拡張性(ectatic)疾患を患っている被験者からのサンプルにおいて決定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルが、第2の時点で得られた角膜の拡張性(ectatic)疾患を患っている被験者からのサンプルにおいて決定された、TLR2および/またはTLR4の発現レベルと比較される。
第2の時点での被験者のサンプルは、第1の時点の後、いつでも、例えば、最初の被験者のサンプル後、1日、1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年またはそれ以後、採取することができる。
最後に、被験者は、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、基準のサンプルの前記発現レベルよりも高い場合、負の結果を有するものとして分類される。
【0037】
角膜の拡張性(ectatic)疾患に関連した用語「正の結果」は、角膜の変性が進んでいないことを意味する。この用語はまた、角膜変性率の低下を含む。
角膜の拡張(ectatic)疾患に関連した、用語「負の結果」は、角膜の変性が進行していることを意味する。
【0038】
角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療される被験者を選択する方法
第4の局面において、本発明は、角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療される被験者を選択するためのインビトロの方法に関し、以下、「本発明の第4の方法」といい、以下を含む。
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが前記基準値より高い場合、前記被験者が、角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で処置される候補であることの指標となる。
【0039】
治療のために被験者を選択」という用語が、本明細書で使用される場合、疾患を治癒し、または、1つ以上の疾患または状態に関連する症状を緩和するように設計された、治療のための被験者の特定に関する。角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療の特定の場合には、角膜拡張症に関連する症状を、消失、遅延または減少する、任意の治療と理解される。
本発明に従って、角膜の拡張性(ectatic)疾患を治療するために、使用することができる適切な治療法は、角膜架橋(corneal crosslinking)、角膜内リング(intracorneal rings)と屈折矯正手術が挙げられる。
角膜架橋は、角膜における化学結合を強化し、そして、それによって角膜の剛性を高めるために、紫外光または、青色スペクトルの光および光増感剤(photosensiziter)を使用する技術である。
基質内(Intrastromal)角膜リングまたは角膜内リングは、視力を矯正するために、眼に移植する小さなデバイスである。角膜リングを使用する典型的な視力矯正は、眼科医が眼の角膜に小さな切開部を作り、そして、瞳孔(pupil)の各側に1つずつ、角膜実質(corneal stroma)の層の間に、2つの三日月形または半円形リングセグメントを挿入することを含む。角膜内にリングを埋め込むことで、角膜を平らにし、そして、眼へのその途中で角膜を通過する光の屈折を変化させる効果を有する。
屈折矯正眼科手術は、眼の屈折状態を改善し、そして、眼鏡やコンタクトレンズへの依存を、減少または排除するために使用される。これは、角膜の外科的リモデリングの様々な方法を含めることができる。自動化層状角膜移植(Automated Lamellar Keratoplasty)(ALK)、レーザー支援インサイチュ角膜曲率形成術(Laser−assisted in situ Keratomileusis)(LASIK)、またはReLExのような、今日、最も一般的な方法は、角膜の曲率を再形成するために、エキシマレーザーを使用する。
【0040】
本発明の第4の方法は、前記被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定することを含む。
好ましい実施形態では、本発明の第4の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第4の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるのTLR4の発現レベルを決定することを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の第4の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2およびTLR4の発現レベルを決定することを含む。
本発明の第4の方法の第1ステップは、試験下の被験者のサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定することを含む。
用語「被験者」、「サンプル」および「角膜の拡張性(ectatic)疾患」は、以前に、本発明の第1の方法の文脈において定義され、そして、本発明の第4の方法に等しく適用される。
特定の実施形態において、前記被験者からのサンプルは、結膜および角膜組織から選択される。結膜および角膜組織からサンプルを得るための方法は、本発明の第1の方法に詳述されている。
別の特定の実施形態では、拡張性(ectatic)疾患は、無症状円錐角膜、臨床円錐角膜、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)、球状角膜(keratoglobus)および角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)から選択される。用語「無症状円錐角膜」、「臨床円錐角膜」、「ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)」、「球状角膜(keratoglobus)」および「角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)」は、以前に定義されている。
用語「TLR2」、「TLR4」および「発現レベル」は、以前に定義されている。特定の実施形態において、前記発現レベルは、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定することを含む。TLR2および/またはTLR2の発現レベルを決定するための方法は、本発明の第1の方法との関連で詳述し、そして本発明の第3の方法に等しく適用され得る。
特定の実施形態では、TLR2および/またはTLR4のタンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学またはELISAまたはタンパク質アレイによって行われる。好ましい実施形態では、TLR2および/またはTLR4発現レベルは、フローサイトメトリーによって決定される。
本発明の第四の方法の第2ステップは、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを、基準値と比較することを含む。用語「基準値」は、以前に定義された。特定の実施形態において、前記基準値は、健康な被験者または角膜拡張症の既往歴がない被験者からのサンプルまたはサンプルのセットから得られる。
一旦、比較が、試験下の被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルと、基準値との間で行われると、本発明の第4の方法は、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが前記基準値より高い場合、角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療されるべき被験者を選択することを許容する。「より高い」、「未満」および「に等しい」という用語は以前に定義した。
【0041】
屈折欠陥を患っている被験者のための治療としての、屈折矯正手術を選択する方法
第5の局面において、本発明は、屈折欠陥を患っている被験者が、以下を含む屈折矯正手術治療のための候補者であるかどうかを決定するためのインビトロでの方法に関する:
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、前記被験者は、前記屈折欠陥のための屈折矯正手術で処置されべき候補者ではないことを示す。
好ましい実施形態では、本発明の第5の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2およびTLR4の発現レベルを決定することを含む。
用語「屈折矯正手術」は、本明細書で使用する場合、角膜の曲率のリモデリングに基づいて、眼の屈折状態を改善するために使用される任意の眼科手術を指す。
本発明の第5の方法の第1ステップは、試験下の被験者のサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定することを含む。
用語「被験者」、「サンプル」および「屈折欠陥」は、以前に、本発明の第1の方法の文脈において定義され、そして、本発明の第5の方法に等しく適用され得る。
特定の実施形態において、前記被験者からのサンプルは、結膜および角膜組織から選択される。結膜および角膜組織からサンプルを得るための方法は、本発明の第1の方法に詳述されている。
特定の実施形態において、TLR2および/またはTLR4タンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学またはELISAまたはタンパク質アレイによって行われる。好ましい実施形態において、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、フローサイトメトリーによって決定される。
本発明の第5の方法の第2ステップは、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを、基準値と比較することを含む。用語「基準値」は、以前に定義した。
一旦、比較が、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルと、基準値との間で行われると、本発明の第4の方法は、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療される被験者を選択することを許容する。「より高い」、「未満」および「に等しい」という用語は以前に定義した。
【0042】
本発明の使用
第6の態様は、本発明は、角膜の拡張性(ectatic)疾患の診断を決定するためのマーカーとしてのTLR2および/またはTLR4の使用に関する。
第7の態様は、本発明は、被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する危険性を決定するためのマーカーとしての、TLR2および/またはTLR4の使用に関する。
第8の局面において、本発明は、角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患している被検者の臨床転帰を決定するためのマーカーとしての、TLR2および/またはTLR4の使用に関する。
最後に、本発明は、角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療されるべき被験者を選択するため、または屈折欠陥に罹患している被験者のための治療法として屈折矯正手術を選択するためのマーカーとしての、TLR2および/またはTLR4の使用に関する。
用語「TLR2」、「TLR4」、「診断」、「危険性を決定する」、「臨床転帰を決定する」、「治療法で治療されるべき被験者を選択する」、「角膜の拡張性(ectatic)疾患」およびそれらの、特定のおよび好ましい実施形態は、以前に、本発明の第1、第2、第3および第4の方法の文脈において定義されており、そして、本発明の用途にも同様に適用可能である。
【0043】
屈折矯正手術に続いて、患者が拡張症を罹患するという危険性を決定するための方法
他に態様において、本発明は、以下を含む、屈折矯正手術に続いて、患者が拡張症を罹患する危険性を決定するためのインビトロの方法に関する。
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値よりも高い場合に、前記被験者は、屈折矯正手術後に、拡張症に罹患する高い危険性を示すという指標である。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2およびTLR4の発現レベルを決定することを含む。
用語「屈折矯正手術」は、本明細書で使用する場合、角膜の曲率のリモデリングに基づいて、眼の屈折状態を改善するために使用される任意の眼科手術を指す。
本発明の第5の方法の第1ステップは、試験下の被験者のサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定することを含む。
用語「被験者」、「サンプル」および「屈折欠陥」は、以前に、本発明の第1の方法の文脈において定義され、そして、本発明の第5の方法に等しく適用され得る。
特定の実施形態において、前記被験者からのサンプルは、結膜および角膜組織から選択される。結膜および角膜組織からサンプルを得るための方法は、本発明の第1の方法に詳述されている。
特定の実施形態において、TLR2および/またはTLR4タンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学またはELISAまたはタンパク質アレイによって行われる。好ましい実施形態において、TLR2および/またはTLR4の発現レベルは、フローサイトメトリーによって決定される。
本発明の第5の方法の第2ステップは、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを、基準値と、比較することを含む。用語「基準値」は、以前に定義されている。
一旦、比較が、試験下の被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルと基準値の間で行われると、本発明の第4の方法は、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが前記基準値より高い場合には、角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療される被験者を選択することができる。「より高い」、「未満」と「に等しい」という用語は、以前に定義した。
【0044】
本発明はまた、下記に関する:
1.被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患を診断するためのインビトロの方法であって、以下を含む:
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、被験者が角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患していることを示す。
2.態様1に記載のインビトロでの方法であって、前記角膜の拡張性(ectatic)疾患が、無症状円錐角膜(subclinical keratoconus)、臨床円錐角膜(clinical keratoconus)、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)、球状角膜(keratoglobus)および角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)から選択される。
3.態様2に記載のインビトロの方法であって、前記角膜の拡張性(ectatic)疾患が、無症状円錐角膜(subclinical keratoconus)であり、その場合、基準値が、健康な被験者からのサンプルにおいて測定した、TLR2および/またはTLR4の発現レベルに一致する方法。
4.態様2に記載のインビトロでの方法であって、前記角膜の拡張性(ectatic)疾患が、臨床円錐角膜(clinical keratoconus)であり、この場合、基準値が、無症候の円錐角膜を患っている被験者からのサンプルにおいて測定されたTLR2および/またはTLR4の発現レベルに一致する方法。
5.態様2に記載のインビトロの方法であって、前記角膜の拡張性(ectatic)疾患が、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)であって、その場合、基準値が、健康な被験者からのサンプルにおいて測定された、TLR2および/またはTLR4の発現レベルに一致する方法。
6.態様1〜5に記載のインビトロの方法であって、前記被験者由来のサンプルが、結膜および角膜組織から選択される、方法。
7.態様1〜6に記載のインビトロの方法であって、前記発現レベルが、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定することを含む、方法。
8.態様7に係るインビトロの方法であって、タンパク質レベルが、免疫組織化学、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、またはELISAにより決定される、方法。
9.ジオプトリ(diopters)、角膜厚と角膜エレベーション(corneal elevation)から選択された、少なくとも一つのパラメータを決定することをも含む、態様1〜8のいずれかに記載のインビトロの方法。
10.被験者の角膜の拡張性(ectatic)疾患の発症の危険性を決定するためのインビトロでの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが、前記基準値より高い場合、被験者が角膜の拡張性(ectatic)疾患を発症する高い危険性を有することを示す。
11.被験者が、以前に、屈折欠陥を有すると診断されている、態様10に記載のインビトロでの方法。
12.前記被験者が、眼のかゆみ、眼のこすり、生体顕微鏡の徴候および結膜充血:から選択される以前の眼病変を発症したことがある、態様10または11に記載のインビトロでの方法。
13.角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患している被検者の臨床転帰を決定するためのインビトロでの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からのサンプルにおける、TLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが前記基準値より高い場合、負の臨床転帰を示す。
14.角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療されるべき被験者を選択するインビトロの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが前記基準値よりも高い場合、前記被験者が角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で処置される候補者であることを示す。
15.前記治療が、角膜架橋、角膜内リングおよび屈折矯正手術から選択される、態様14に記載のインビトロの方法。
16.屈折欠陥に罹患した被験者の治療法として、屈折矯正手術を選択するためのインビトロでの方法であって、以下を含む方法。
a)前記被験者からのサンプルにおけるTLR2および/またはTLR4の発現レベルを決定する;および
b)前記発現レベルを、基準値と比較する;
ここで、TLR2および/またはTLR4の発現レベルが前記基準値よりも高い場合、前記被験者は、前記屈折欠陥のための、屈折矯正手術で治療すべき候補者ではないことを示す。
17.態様10〜16のいずれかに記載のインビトロでの方法であって、前記角膜の拡張性(ectatic)疾患が、無症状円錐角膜(subclinical keratoconus)、臨床円錐角膜(clinical keratoconus)、ペルーシド辺縁変性(pellucid marginal degeneration)、球状角膜(keratoglobus)および角膜屈折矯正術後拡張症(ectasia post−refractive corneal surgery)から選択される方法。
18.前記被験者からのサンプルが、結膜および角膜組織から選択される、態様10〜17のいずれかに記載のインビトロの方法。
19.態様10〜18のいずれかに記載のインビトロの方法であって、前記の発現レベルが、TLR2および/またはTLR4遺伝子からコードされるmRNAのレベルを決定する工程、またはTLR2および/またはTLR4タンパク質のレベルを決定する工程を含む方法。
20.タンパク質レベルが、免疫組織化学、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、またはELISA方法によって決定される、態様19に記載のインビトロの方法。
21.以下のマーカーとしての、TLR2および/またはTLR4の使用。
被験者における角膜の拡張性(ectatic)疾患の診断を決定するためのマーカー;
被験者における角膜の拡張(ectatic)疾患を発症する危険性を決定するためのマーカー;
角膜の拡張性(ectatic)疾患に罹患した被験者の臨床転帰を決定するためのマーカー;または、
角膜の拡張性(ectatic)疾患の治療法で治療される被験者を選択するためのマーカー。
【0045】
以下の実施例は、単なる例示として提供され、そして、本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【0046】
実施例
【0047】
材料および方法
私たちは、患者の2つの異なるコホート(cohorts)を含んだ:
1)コホートAに、我々は、病理学的(pathological)または臨床円錐角膜を有する患者の、角膜上皮と眼球結膜の細胞における、TLR2およびTLR4の発現は、無症状円錐角膜よりも大きく、かつ、対照被験者からのサンプルよりも高いか否かを試験するために、片側(without correction or with spherical and /or cylindrical compensation < 1.50D)円錐角膜患者(unilateral KC patients)と対照被験者を含めた。
2)コホートBに、我々は、病理学的または臨床円錐角膜を有する患者の角膜上皮と眼球結膜の細胞における、TLR2およびTLR4の発現が、それらの親族よりも大きいか、および対照被験者からのサンプルにおけるよりも高いか試験するために、両側円錐角膜患者、患者の親族、PMD患者および対照被験者を含めた。同様に、我々は、PMD患者の角膜上皮および眼球結膜の細胞におけるTLR2とTLR4の発現が対照被験者よりも大きいかどうかを試験した。
【0048】
コホートAの患者と対照被験者
私たちは、50人の片側円錐角膜患者(50円錐角膜と50の無症状円錐角膜眼)と19人の対照被験者(38眼)が登録された、前向き横断調査(prospective,cross sectional study)を設計した。片側円錐角膜患者(64%の男性;平均年齢33.3±9.5年)を、Servizo Galego de Saude、Complexo Hospitalario de Santiago de Compostela、スペイン、での円錐角膜患者のデータベースから選択した。私たちは、それぞれの患者または対照被験者の両眼を研究した。患者は、研究に先立って、一週間、彼らのコンタクトレンズを着用しないよう求められた。対照(45.9パーセントの男性;平均年齢28.5±4.7歳)の被験者は、円錐角膜、または、眼をこする、の既往歴はなく、形状の変化はなかった。すべての患者と対照被験者は、この研究の目的のために明確に集められ(expressly cited)、そしてすべての試験は、同じ研究者によって行われた。収集されたデータは、性別、年齢、患者の眼の履歴、病歴(アレルギー、眼をこする)、および円錐角膜の既往歴を含んだ。本研究は、世界医師会(2008年)のヘルシンキ宣言に従って行われ、そして、Servizo Galego de Saudeでの研究の倫理委員会によって承認された。インフォームドコンセントは、手順の完全な説明の後に、各患者または対照被験者から得た。
【0049】
包含基準は以下の通りであった:
1)非対称円錐角膜患者(1つの円錐角膜眼と1つの無症状円錐角膜眼)
Rabinowitz/McDonnell基準は、円錐角膜の診断のために使用された(Rabinowitz YS、円錐角膜、Surv Ophthalmol 1998;42:297〜319)。Rabinowitz & McDonnellによって提案されたビデオケラトグラフィ(videokeratographic)ガイドラインによれば、シミュレートされた中央角膜屈折力(simulated central corneal power)が、47.2Dより大きく、しかし48.7D未満で、下方―上方屈折非対称(inferior−superior dioptric asymmetry)が、1.4Dより大きく、しかし、1.9D未満の場合、無症状円錐角膜として、眼を分類することができる。
48.7Dを超える中心角膜曲率、並びに1.9Dより大きい、下方―上方屈折非対称(inferior−superior dioptric asymmetry)を示す眼は、「真円錐角膜」として分類することができる。
2)1.0(補正なし、または球形および/または円柱補償<1.50Dを有する(without correction or with spherical and /or cylindrical compensation < 1.50D))の値を持つ無症状円錐角膜眼の距離視力(distance visual acuity)(DVA)。
【0050】
除外基準は、以下を含む:
それらは、自然免疫の分子マーカーの研究の結果を妨げる可能性があるので、
1)前眼部(anterior segment)の以前の外科的介入、または小児期角膜外傷または角膜結膜疾患;
2)活性または全身性炎症、または眼疾患、の存在、または全身的または局所的抗炎症薬による現在の治療;
3)肝臓、腎臓、血液、および免疫疾患、甲状腺機能の障害、制御されない糖尿病、サンプル収集に先行する日に感染および固形腫瘍。
【0051】
コホートBにおける患者と対照被験者
我々は、53人の両側円錐角膜患者(106の円錐角膜眼)、24人の親族(48眼)、13人のPMD患者(26眼)および34人の対照被験者(68眼)が登録された、前向き、横断研究を設計した。両側円錐角膜患者(56%男性;平均年齢33.3±8.4歳)およびPMD患者(69%男性;平均年齢47.7±8.9歳)を、Servizo Galego de Saude、Complexo Hospitalario de Santiago de Compostela,スペインで、拡張性(ectatic)角膜患者のデータベースから選択した。親族(52%の男性;平均年齢は、26.7±9.9歳)の被験者は、円錐角膜の家族歴を有したが、形状の変更(topographic alterations)はなかった。
対照被験者(41%の男性;平均年齢30.5±9.6歳)は、円錐角膜や眼をこする、のような家族歴はなく、および形状変化もなかった。私たちは、各円錐角膜やPMDの患者、親族または対照被験者の両眼を研究した。患者、親族および対照被験者は、試験前一週間、彼らのコンタクトレンズを着用しないよう求められた。すべての患者と対照被験者は、この研究の目的のために、明示で、集められ、そして、同じ研究者がすべての検査を行った。収集されたデータは、性別、年齢、患者の眼の履歴、病歴(アレルギー、眼をこする)、および円錐角膜の家族歴を含んだ。この研究は、世界医師会のヘルシンキ宣言(2008)に従って行われ、Servizo Galego de Saudeでの研究の倫理委員会によって承認された。インフォームドコンセントは、手順の完全な説明の後に、各患者または対照被験者から得た。
選択基準は以下の通りであった:
1)両側円錐角膜患者(2つの円錐角膜眼)。Rabinowitz/McDonnell基準は、円錐角膜の診断のために使用された(Rabinowitz YS、円錐角膜、Surv Ophthalmol 1998;42:297〜319)。Rabinowitz & McDonnellによって提案された、ビデオケラトグラフ(videokeratographic)ガイドラインによれば、シミュレートされた中央角膜屈折力(simulated central corneal power)が47.2Dより大きく、48.7D未満であり、下方―上方屈折非対称(inferior−superior dioptric asymmetry)が1.4Dより大きく、1.9D未満の場合、無症状円錐角膜として、眼を分類することができる。48.7Dを超える中心角膜曲率、並びに1.9Dより大きい、下方―上方屈折非対称を提示する眼は、「真円錐角膜」として分類することができる。
2)1.0(補正なし、あるいは球形および/または円柱補償<1.50Dを有する)の値を持つ無症状円錐角膜眼の距離視力(distance visual acuity)(DVA)。
2)PMD患者(2つの円錐角膜眼)。我々は、重度の倒乱視(against−the−rule astigmatism)を有する、垂直軸に沿った、明らかな中央の角膜平坦化、および明らかな下方の周辺角膜の急勾配を識別すると、PMDを考慮し、PMDは、典型的に、カニ爪パターンを示す。
3)親族:拡張性(ectatic)障害(PMDまたは円錐角膜)を有するが、形状変化(topographic alterations)のない患者の第1親等。
【0052】
除外基準は以下を含む:
それらは、自然免疫の分子マーカーの研究の結果を妨げる可能性があるので、
1)前面部の以前の外科的介入、または小児期角膜外傷または角膜結膜疾患。
2)活性または全身性炎症、または眼疾患の存在、または全身的または局所的抗炎症薬による現在の治療;
3)肝臓、腎臓、血液、および免疫疾患、甲状腺機能の障害、制御されない糖尿病、サンプル収集に先行する日に感染および固形腫瘍。
【0053】
臨床的変数
− 疫学的変数:年齢、性別、円錐角膜の診断の年、個人および家族の病歴、
− 治療変数:抗ヒスタミン薬、全身または局所抗炎症または抗生物質。
− 円錐角膜に関連する変数:眼のかゆみおよびその強度、眼のこすりおよびその強度、光学補正の有無におけるAVLおよびAVP、生体顕微鏡(biomicroscopical)の徴候、結膜充血スケール(conjunctival hyperemia scale)、シルマー試験(Schirmer test)、コンタクトレンズの着用。
− 形状の(Topographic)変数:PDC(simK)、K max、K min、K1、K2、Ka、Dk、MPDおよび中心までの距離。円錐角膜グレード用のKrumeichの分類およびCLEKの分類、エレベーションおよび誤差測定器の値(Elevation and aberrometric values)
【0054】
試験群
比較分析のために、我々は次の群を規定した:
コホートA:
グループ1:角膜の形状の改変していない(without topographical alterations)対照。
グループ2:無症状の円錐角膜。
グループ3:円錐角膜。

コホートB:
グループ1:角膜の形状の改変していない(without topographical alterations)対照。
グループ2:両側(Bilateral)円錐角膜。
グループ3:PMD。
グループ4:角膜の形状の改変していない(without topographical alterations)親族。
これらのグループは、円錐角膜またはPMDの発症または進行の危険性のバイオマーカーとしてのTLRの的中率(的中率)を決定するために確立された。
【0055】
装置
基本的な検査器具は、トプコン生体顕微鏡、トプコンの屈折カラム(Topcon refraction column)およびアルファベットのスネレン視力検査であった。具体的な検査器具として、我々は、TOPCON CA−100システム(トプコン メディカル システムズ株式会社、NJ、米国)、およびOrbscan II角膜トポグラファー(Orbscan II corneal topographer)(Orbtek社、ユタ州、米国)を使用した。
【0056】
手順
私たちのプロトコルは、以下の情報を収集した:第1の眼における、円錐角膜の診断からの経過時間、左右差(laterality)、かゆみや擦り、円錐角膜およびアレルギーの家族病歴。
最良の補正を取得した後、生体顕微鏡検査は、円錐角膜の兆候を検出すべく行われた。角膜形状の研究は、トプコンとOrbscanのトポグラファー(topographers)を用いて行った。次の五つの定量的形状のパラメーターを分析した:
シミュレートされた角膜曲率測定(keratometry)(K)の読み(readings)、
後面エレベイション(posterior elevation)および、
角膜厚の最も薄い点の角膜圧測定(thinnest point pachymetry of the cornea)。
【0057】
TLR2とTLR4の発現解析
TLR2および4の発現分析は、PVA発泡体手術用槍(PVA foam surgical spear)(SOFT CELL(登録商標)、OASIS(登録商標)、CA、USA)の手段によって、全ての対照被験者と無症状円錐角膜患者から得た、結膜および角膜細胞におけるフローサイトメトリーにより行った。TLR2およびTLR4の発現分析のために、結膜および角膜細胞を、それらの前方および側方散乱信号特性(their forward and side scattering signal characteristics)によって分離した。FITC−TLR2抗体(IMMUNOSTEP、サラマンカ、スペイン)およびPE−TLR4抗体(IMMUNOSTEP、サラマンカ、スペイン)は、TLRの発現を定量するために使用した。サンプルは、FACSAriaフローサイトメーター(BD Biosciences社、NJ、USA)で分析した。細胞蛍光は、染色直後に測定し、そして、データを、FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences社、NJ、USA)を使用して分析した。コホートAについて、結膜(1250件のイベント(events))および角膜細胞(500イベント(events))における、TLR2およびTLR4の中間発現値を分析し、そして、AFU(任意蛍光単位)として表した。コホートBについて、結膜(2000件のイベント(events))および角膜細胞(1000イベント(events))における、TLR2およびTLR4の中間発現値を分析し、そして、AFU(任意蛍光単位)として表した。
【0058】
統計分析
結果は、それぞれ、カテゴリ変数について、百分率として、そして、それらの正規分布に依拠、または依拠しない連続変数については、平均(SD)または中央値[四分位]として、表した。コルモゴロフ−スミルノフ検定(Kolmogorov−Smirnov test)は、分布の正規性を試験するために使用した。グループ間の連続変数は、スチューデントのt−(正規分布の変数)またはマン−ホイットニー(Mann−Whitney)検定(非正規分布の変数)と比較し、割合は、カイ二乗検定(chi−square test)を用いて比較した。ANOVAは、試験群と、角膜や結膜細胞におけるTLR2とTLR4との間の関係を分析するために使用された。受信者動作特性(Receiver operating characteristic)(ROC)曲線は、円錐角膜またはPMDの出現または進行の危険性を所望により予測した、角膜および結膜細胞におけるTLR2およびTLR4のカットオフポイントを確立するように構成された。P<0.05の値は統計的に有意であると考えられた。統計分析は、Mac用のSPSS 16.0を用いて行った。
【0059】
実施例1
コホートAについての臨床的特徴
性別関連の統計的な差は、研究群間で検出されなかった。しかし、円錐角膜の患者はより高齢であり、そして、円錐角膜のより頻繁な病歴を作った(sowed)(表1)。円錐角膜の眼と最初に診断されてからの経過時間は、1〜30年(平均、8.3±6.2年)に亘った。23人の円錐角膜患者(46%)と19人の対照被験者(51.4%)は、アレルギー疾患を、そして、15人の円錐角膜患者(30%)は、円錐角膜の家族歴を報告した。13人の対照被験者(35.1%)と31人の患者(62%)は、眼のかゆみを報告した。眼のかゆみを報告した患者では、71%が、円錐角膜の眼を、頻繁に激しくこすることを認めた。13人の対照被験者(35.1%)も、また眼の擦りを報告した。
【0060】
表1は、全ての研究群の平均K2の値を示す。平均K2は、他の研究群に対して、円錐角膜の眼において、より高かった(P<0.0001)。
【0061】
コホートAにおける、角膜および結膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現
円錐角膜、無症状円錐角膜および対照群の、角膜および結膜細胞の両方における、TLR2およびTLR4の発現のレベルも、また、表1に示される。角膜および結膜細胞の両方における、TLR2およびTLR4発現は、円錐角膜群の方が、より高かった。また、TLR2およびTLR4の発現が高くなれはなるほど、円錐角膜の進行もより高くなった(表1)。しかし、対照群と、無症状円錐角膜および円錐角膜群の、TLR発現の主な違いは、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現について見いだされた。そのため、予測分析は、角膜細胞におけるTLR2とTLR4の発現にのみフォーカスした。
【0062】
コホートAについて、円錐角膜の発症および進行の危険性についての、角膜細胞における、TLR2およびTLR4の発現の的中率(predictive value)
ROC解析によれば、角膜上皮細胞におけるTLR2の発現は、高い感度と特異性をもって、対照と比較して、円錐角膜(無症状円錐角膜および円錐角膜共に)の可能性を予測することができる(曲線下面積0.995、95%信頼区間(95%CI):0.987〜1.000;P<0.0001)。同様に、角膜細胞におけるTLR2の発現もまた、高い感度と特異性をもって、対照と比較して、無症状円錐角膜の可能性を予測するために有用である(曲線下面積0.989、95%信頼区間(95%CI):0.975〜1.000;p<0.0001)。最後に、角膜のTLR2の発現も、また、高い感度および特異性をもって、円錐角膜と比較して、無症状の円錐角膜でない可能性を予測する(曲線下面積0.893、95%信頼区間(95%CI):0.834〜0.953;p<0.0001)。要約すると、表2は、円錐角膜の発症および進行の危険性を検出するために、角膜細胞におけるTLR2の発現のためのいくつかのカットオフポイント(cut−off points)の有用性について、感度と特異性を示す。
【0063】
他方、ROC解析によれば、角膜上皮細胞におけるTLR4の発現も、また、対照と比較して、高い感度と特異性をもって、円錐角膜(無症状円錐角膜および円錐角膜の両方)の可能性を予測することができる(曲線下面積0.846、95%信頼区間(95%CI):0.776〜0.915;P<0.0001)。同様に、角膜細胞におけるTLR4の発現も、また、高い感度と特異性をもって、対照と比較して、無症状円錐角膜の可能性を予測するのに有用である(曲線下面積0.756、95%信頼区間(95%CI):0.653から0.860;p<0.0001)。最後に、角膜のTLR4発現もまた、高い感度および特異性をもって、円錐角膜と比較して、無症候の円錐角膜でない可能性を予測する(曲線下面積0.767、95%信頼区間(95%CI):0.673〜0.860;p<0.0001)。表3は、円錐角膜の進行の発症の危険性を検出するために、角膜細胞におけるTLR4の発現のための、いくつかのカットオフポイント(cut−off points)の有用性についての感度と特異性を示す。
結論として、角膜細胞におけるTLR2の発現は、TLR4の発現より、円錐角膜の発症および進行の危険性を検出するための、より高い的中率(predictive value)を示した。
【0064】
【0065】
コホートAについて、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現と、円錐角膜の進行の臨床パラメータ(K2およびkc)との間の相関
円錐角膜の進行に関連する2つの定量的なパラメータ、すなわちK2およびKcについて、臨床的および無症状円錐角膜の患者からの角膜細胞において、TLR2およびTLR4の発現レベルを分析した。ピアソン検定(Pearson test)で二変量の相関を計算して、より単純な線形回帰分析が行われた。結果は、相関係数rとして表される。
K2
TLR2;r=0.525;p<0.0001
TLR4;r=0.359;p<0.001
Kc
TLR2;r=0.439;p<0.0001
TLR4;r=0.379;p<0.0001
これらの結果は、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現と、無症状のおよび臨床円錐角膜の進行および重症度との間の関連性を確認する。
【0066】
実施例2
コホートBについての臨床的特徴
性別関連の統計的な差は、試験群間で検出されず、しかし、PMDを有する患者は、より高齢であり、そして、円錐角膜患者は、対照被験者とPMD患者より、拡張症(ectatic)障害のより頻繁な履歴を示した(表4)。28人の円錐角膜患者(65%)、6人のPMD患者(46%)、9人の親族(39%)および14人の対照被験者(41.2%)が、アレルギー疾患を報告した。同様に、円錐角膜患者の88%、PMD患者の84%、親戚の39%および対照被験者の26%が、眼のかゆみを報告した。眼のかゆみを報告した患者について、円錐角膜患者の76%、PMD患者の76%、親戚の35%および対照被験者の35%が、円錐角膜の眼を、頻繁におよび激しく眼をこすることを認めた。
【0067】
表4は、すべての試験群についての、中央値K2、中央K(central K)、最小厚点(minimum thickness point)および後面エレベイション値(posterior elevation values)を示す。中央値K2および中央Kは、他の試験群より、円錐角膜の眼においてより高かった(P<0.0001)。同様に、後面エレベイション(posterior elevation)は、対照と親族被験者(relative subjects)より、円錐角膜およびPMD眼において高かった(P<0.0001)。対照的に、最小厚点は、他の群と比較して、円錐角膜およびPMD眼についてより低かった(P<0.0001)。
【0068】
コホートBについて、角膜および結膜細胞における、TLR2およびTLR4の発現
円錐角膜、PMD、親族および対照群において、角膜および結膜細胞の両方における、TLR2およびTLR4の発現のレベルも、また、表4に示される。角膜および結膜細胞の両方における、TLR2およびTLR4の発現は、他のグループに対して、円錐角膜群において、より高かった。さらに、PMD群も、また、対照群より、角膜細胞におけるTLR2、および角膜および特に結膜細胞の両方におけるTLR4についてより高い発現を示した(表4)。興味深いことに、親族は、対照被験者よりも、角膜および結膜細胞の両方において、TLR2およびTLR4のより高い発現を示したが、この発現は、円錐角膜の患者よりも、はるかに低い(表4)。しかし、対照群と、円錐角膜群のTLR発現の主な違いは、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現について発見された。他方、対照群と、PMD群におけるTLR発現の主な違いは、結膜細胞におけるTLR4の発現について発見された。そのため、予測分析(predictive analyses)は、円錐角膜の角膜細胞におけるTLR2とTLR4、および、PMDについての結膜細胞における、TLR4の発現についてのみ、焦点があてられた。
【0069】
コホートBについて、円錐角膜の発症および進行の危険性に対する、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4発現の的中率(Predictive value)
ROC解析によれば、角膜上皮細胞におけるTLR2の発現は、対照と比較して、高い感度と特異性をもって、円錐角膜の可能性を予測することができる(曲線下面積0.874、95%信頼区間(95%CI):0.815〜1.000;p<0.0001)。同様に、角膜細胞におけるTLR2の発現も、また、高い感度および特異性をもって、親族と比較して、円錐角膜の可能性を予測するために有用である(曲線下面積0.802;95%信頼区間(95%CI):0.723〜0.882;P<0.0001)。要約すると、表5は、円錐角膜の発症および進行の危険性を検出するために、角膜細胞におけるTLR2の発現のためのいくつかのカットオフポイントの有用性についての、感度と特異性を示す。
他方、ROC解析によれば、角膜上皮細胞におけるTLR4の発現も、また、対照と比較して、高い感度と特異性をもって、円錐角膜の可能性を予測することができる(曲線下面積0.877、95%信頼区間(95%CI):0.818〜0.936;p<0.0001)。同様に、角膜細胞におけるTLR4の発現も、また、高い感度と特異性をもって、親族と比較して、円錐角膜の可能性を予測するために有用である(曲線下面積0.882、95%信頼区間(95%信頼区間(95%CI));0.821〜0.943;P<0.0001)。
【0070】
【0071】
表6は、円錐角膜の進行の発症の危険性を検出するための、角膜細胞におけるTLR4の発現のためのいくらかのカットオフポイント(cut−off points)の有用性について、感度および特異性を示す。
【0072】
結論として、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現は、円錐角膜の発症および進行の危険性を検出するための高い的中率(predictive value)を示した。
【0073】
【0074】
コホートBについての、PMDの発症や進行の危険性のための、結膜細胞におけるTLR4の発現の的中率(Predictive value)
最後に、ROC解析によれば、対照被験者と比較して、結膜上皮細胞におけるTLR4の発現は、高い感度および特異性をもって、PMDの可能性を予測することもできる(曲線下面積0.823、95%信頼区間(95%CI):0.733〜0.913;p<0.0001)。表7は、円錐角膜の進行の発症の危険性を検出するために、結膜細胞におけるTLR4の発現のためのいくつかのカットオフポイント(cut−off points)の有用性(utility)についての感度と特異性を示す。
結論として、結膜細胞におけるTLR4の発現は、また、PMDの発症および進行の危険性を検出するための高い的中率(predictive value)を示した。
【0075】
【0076】
コホートBにおいて、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現と、円錐角膜の進行の臨床パラメータ(K2、KcおよびKmax)との間の相関
我々は、円錐角膜患者の進行に関連する3つの量的パラメータ、すなわち、K2,KcおよびKmaxに関して、円錐角膜患者からの角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現レベルを分析し、そして、ピアソン検定(Pearson test)で二変量相関を計算する、より単純な線形回帰分析を行った。結果は、相関係数(R)として表される。
K2
TLR2;r=0.286;p<0.0001
TLR4;r=0.249;p<0.0001

Kc
TLR2;r=0.266;p<0.0001
TLR4;r=0.286;p<0.0001

Kmax
TLR2;r=0.403;p<0.0001
TLR4;r=0.263;p<0.0001

これらの結果は、円錐角膜の進行および重症度と、角膜細胞におけるTLR2およびTLR4の発現との間の関連を確認した。
【0077】
コホートBについて、結膜細胞におけるTLR4の発現と、PMD進行の臨床パラメーター(Kmax)の間の相関関係
一方、我々はまた、PMDの進行に関連するパラメーターであるKmaxについて、PMD患者からの結膜細胞における、TLR4の発現レベルも分析した。私たちは、ピアソンの検定で、二変数の相関を計算する、より単純な線形回帰分析を行った。結果は、相関係数(R)として表される。
Kmax
TLR4;r=0.327;p<0.0001

要約すると、これらの結果もまた、結膜細胞におけるTLR4の発現と、PMDの進行および重症度との間の関連を確認する。
図1
図2
図3
図4
図5