(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904911
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】車両用シートおよびヘッドレストの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/80 20180101AFI20210708BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
B60N2/80
A47C7/38
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-4037(P2018-4037)
(22)【出願日】2018年1月15日
(65)【公開番号】特開2019-123302(P2019-123302A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】
野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−002608(JP,U)
【文献】
特開平10−071284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N2/00−2/90
A47C7/00−7/74
B68G7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む車両用シート:
ヘッドレスト;
前記ヘッドレストが装着されるシートバック;
前記シートバックに連結されるシートクッション;
ここで、前記ヘッドレストは以下を含む:
前記シートバックに装着されるピラーフレーム;
一端から他端に貫通する注入経路を有する芯材;
前記ピラーフレームの一部と前記芯材とを被うカバー;
前記芯材の外面と前記カバーの内面との間隙および前記注入経路内に形成されるクッション材;
ここで、前記注入経路は前記芯材の前記一端から第一方向に伸びて所定の位置に達し、前記所定の位置から第二方向に伸びて前記他端に達し、前記所定の位置に屈曲部を有する。
【請求項2】
請求項1の車両用シートにおいて、
前記注入経路は左右方向の中央部に位置する。
【請求項3】
請求項2の車両用シートにおいて、
前記カバーは前記注入経路にクッション材の発泡原料を注入する注入ノズルが挿入される注入孔を有し、
前記注入孔から前記第一方向に前記芯材の前記一端側の前記注入経路の端部が位置する。
【請求項4】
請求項3の車両用シートにおいて、
前記注入経路の口径は前記注入ノズルの外径よりも大きく、前記注入経路と前記注入ノズルとの間に隙間を有する。
【請求項5】
請求項4の車両用シートにおいて、
前記注入経路の断面は円形状であり、口径は20mm以下である。
【請求項6】
請求項5の車両用シートにおいて、
前記第二方向は前記第一方向よりも前記ヘッドレストの前側に向いている。
【請求項7】
以下を含む車両用シート:
ヘッドレスト;
前記ヘッドレストが装着されるシートバック;
前記シートバックに連結されるシートクッション;
ここで、前記ヘッドレストは以下を含む:
前記シートバックに装着されるピラーフレーム;
一端から他端に貫通する注入経路を有する芯材;
前記ピラーフレームの一部と前記芯材とを被うカバー;
前記芯材の外面と前記カバーの内面との間隙および前記注入経路内に形成されるクッション材;
ここで、前記注入経路は前記芯材の前記一端から第一方向に伸びて前記他端に達し、前記一端と前記他端との間の所定の位置にロッドを有する。
【請求項8】
請求項7の車両用シートにおいて、
前記注入経路は左右方向の中央部に位置する。
【請求項9】
請求項8の車両用シートにおいて、
前記カバーは前記注入経路にクッション材の発泡原料を注入する注入ノズルが挿入される注入孔を有し、
前記注入孔から前記第一方向に前記芯材の前記一端側の前記注入経路の端部が位置する。
【請求項10】
請求項9の車両用シートにおいて、
前記注入経路の口径は前記注入ノズルの外径よりも大きい。
【請求項11】
請求項10の車両用シートにおいて、
前記注入経路の断面は円形状であり、口径は20mm以下である。
【請求項12】
以下を含むヘッドレストの製造方法:
(a)ピラーフレームと、発泡原料を攪拌する攪拌手段を有する注入経路が形成された芯材と、袋状に縫製された表皮材と、を準備する工程;
(b)前記芯材を前記ピラーフレームに固定する工程;
(b)前記表皮材の袋の中に前記芯材および前記ピラーフレームを挿入する工程;
(d)前記表皮材、前記芯材および前記ピラーフレームを金型にセットする工程;
(e)注入ノズルから前記発泡原料を前記表皮材内に注入しクッション材を形成する工程、
ここで、前記(e)工程は以下を含む:
(e1)前記注入経路の一端に前記注入ノズルを挿入する工程;
(e2)前記注入ノズルから前記発泡原料を前記注入経路に注入する工程;
(e3)前記注入された発泡原料を前記攪拌手段で攪拌する工程;
(e4)前記注入経路の他端に前記注入された発泡原料の一部を拡散させ、前記注入経路の一端に前記注入された発泡原料の一部を拡散させ、前記芯材の外面と前記表皮材の内面との間隙にクッション材を形成する工程、
ここで、前記攪拌手段は、前記芯材の前記一端から第一方向に伸びて所定の位置に達し、前記所定の位置から第二方向に伸びて前記他端に達し、前記所定の位置に形成された屈曲部である。
【請求項13】
以下を含むヘッドレストの製造方法:
(a)ピラーフレームと、発泡原料を攪拌する攪拌手段を有する注入経路が形成された芯材と、袋状に縫製された表皮材と、を準備する工程;
(b)前記芯材を前記ピラーフレームに固定する工程;
(b)前記表皮材の袋の中に前記芯材および前記ピラーフレームを挿入する工程;
(d)前記表皮材、前記芯材および前記ピラーフレームを金型にセットする工程;
(e)注入ノズルから前記発泡原料を前記表皮材内に注入しクッション材を形成する工程、
ここで、前記(e)工程は以下を含む:
(e1)前記注入経路の一端に前記注入ノズルを挿入する工程;
(e2)前記注入ノズルから前記発泡原料を前記注入経路に注入する工程;
(e3)前記注入された発泡原料を前記攪拌手段で攪拌する工程;
(e4)前記注入経路の他端に前記注入された発泡原料の一部を拡散させ、前記注入経路の一端に前記注入された発泡原料の一部を拡散させ、前記芯材の外面と前記表皮材の内面との間隙にクッション材を形成する工程、
ここで、前記攪拌手段は、前記芯材の前記一端から第一方向に伸びて前記他端に達し、前記一端と前記他端との間の所定の位置に形成されるロッドである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両用シートに関し、例えば表皮一体発泡成形されるヘッドレストを備える車両用シートに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、軽量化のためにパッド層の厚さを薄くする機構(衝撃吸収部材)、ヘッドレス卜の前後位置を調整するための機構(位置調整機構)、スピーカーなどの音響を提供するための機構(音響機構)などを表皮部材内に挿入したヘッドレストが求められるようになっている。このような場合に、パッド層を表皮部材と一体発泡しようとすると、これらの機構がポリウレタンフォーム原料の発泡作用の妨げとなり、均等な発泡ができず、ガスだまりなどにより欠肉が生じやすいという問題がある(国際公開第2016/117687号明細書(特許文献1))。
【0003】
そこで、特許文献1では、シート取り付け時の姿勢でヘッドレストの上下方向となる方向にほぼ沿うように真っすぐに形成された発泡原料注入経路を有する注入経路形成部材を表皮部材内にセットし、発泡原料注入経路を通じてパッド層を形成する発泡原料を注入している。より具体的には、注入経路形成部材である発泡成形体は、左右の側部支持部材間に収まる幅を有する略直方体形状に形成されていると共に、幅方向略中央部に上下方向に貫通する発泡原料注入経路が形成されている。注入ノズルから注入された発泡原料は、発泡原料注入経路を通過して、ヘッドレストの頂部側へと流入し、発泡成形体の外面と、表皮部材の内面との間隙に頂部側から下部側へ流動するように拡散する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/117687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、発泡成形体の外面と表皮部材の内面との間隙が狭い場合、揺動する頭部支持プレート等による間隙を拡大するものがないと、下部側への発泡原料の到達に時間を要し下部側でのポリウレタン(クッション材)の充填が不足する。
本開示の課題は、表皮一体発砲成形によるクッション材の充填がより均一なヘッドレストを備える車両用シートを提供することである。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、車両用シートは、ヘッドレストと、前記ヘッドレストが装着されるシートバックと、前記シートバックに連結されるシートクッションと、を備える。前記ヘッドレストは、前記シートバックに装着されるピラーフレームと、一端から他端に貫通する注入経路を有する芯材と、前記ピラーフレームの一部と前記芯材とを被うカバーと、前記芯材の外面と前記カバーの内面との間隙および前記注入経路内に形成されるクッション材と、を備える。前記注入経路は前記芯材の前記一端から第一方向に伸びて所定の位置に達し、前記所定の位置から第二方向に伸びて前記他端に達し、前記所定の位置に屈曲部を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記車両用シートによれば、クッション材の充填をより均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1のヘッドレストを拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4はヘッドレストフレームおよびカバーを金型に配置した状態を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は比較例1のヘッドレストを示す模試的な断面図である。
【
図6】
図6は比較例2のヘッドレストを示す模試的な断面図である。
【
図7】
図7は変形例1のヘッドレストを示す模式的な断面図である。
【
図8】
図8は
図7の注入経路の上面図であり、
図8(A)は攪拌ロッドが複数本ある場合の図であり、
図8(B)は攪拌ロッドが一本ある場合の図である。
【
図9】
図9は変形例2のヘッドレストを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
(車両用シート)
実施形態に係る車両用シートについて
図1を用いて説明する。
図1は実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。ここに示す車両用シート1は、例えば、車両の一種類である自動車の内部に設置される複数のシートのうちの1つである。なお、以下の説明では、車両用シート1を搭載する車両が水平面上に置かれた場合を基準として、鉛直方向を上下方向(UP,DW)と定義する。また、前後方向(FR,RR)は車両の前後方向に一致するように、左右方向(幅方向)は車両の幅方向に一致するように、定義される。FRは車両の前側方向であり、RRは車両の後側方向である。また、車両用シート1について、車両の後から見て右側(RH)、左側(LH)と呼んで説明する。
【0011】
車両用シート1は、搭乗者が座る部分であるシートクッション2と、シートクッション2の後端に立設されたシートバック3と、シートバック3の上端部に装着されたヘッドレスト4とを備えている。
【0012】
シートクッション2は、車両の床に取り付けられているが、前後方向に位置を調節可能に、あるいは高さの調節が可能状態にする機構を備えることができる。
【0013】
シートバック3は、背もたれを構成する部分であり、下端部に設けられた回動軸(不図示)を中心として回動可能な状態で、シートクッション2に連結されている。すなわち、車両用シート1には、シートバック3を後方へ傾斜させるリクライニング機能や、シートバック3を前方へ傾斜させる前倒機能が設けられ、シートバック3はシートクッション2に対して回動可能に構成される。
【0014】
ヘッドレスト4は、高さ位置を調節可能な状態で、シートバック3に取り付けられている。
【0015】
シートクッション2、シートバック3およびヘッドレスト4は、内部に骨格部材となるフレームと発泡樹脂などからなるクッション材とが設けられ、クッション材の表面をカバー9で覆う構成である。
【0016】
(ヘッドレスト)
ヘッドレストについて
図2、3を用いて説明する。
図2は
図1のヘッドレストを拡大して示す斜視図である。
図3は
図2における切断面Aに沿った縦断面図である。
【0017】
ヘッドレスト4は、ヘッドレストフレーム8とカバー9とクッション材5とを有している。ヘッドレストフレーム8は、芯材6と、ピラーフレーム7a,7bと、ピラーフレーム7a,7bとを接続するフレーム7cと、芯材6を固定するサポートワイヤ7dと、芯材6を固定するブラケット7e,7fと、を有している。ピラーフレーム7a,7bとフレーム7cは例えば一本の金属製のパイプを曲げて形成され、略垂直方向に伸びている左右一対の縦フレーム部がピラーフレーム7a,7bである。サポートワイヤ7dは例えば金属製のワイヤを曲げて形成され、フレーム7cに固着されている。ブラケット7e,7fはフレーム7cに固着されている。
【0018】
芯材6は前側芯材と後側芯材または右側芯材と左側芯材または上側芯材と下側芯材とを結合することによって形成されている。芯材6は硬質樹脂、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂によって形成されている。なお、芯材6は例えば背景技術に記載したような機構の筐体であり、音響機構の例ではスピーカボックスに該当する。
【0019】
芯材6の左右方向の中央付近に上下方向に貫通する孔である注入経路61が形成されている。注入経路61は芯材6の下端から上方(第一方向)に伸びて中央付近(所定の位置)で前方側に屈曲して芯材6の上端(第二方向)に伸びている。注入経路61の延伸方向に垂直の断面は円形状である。第一方向と第二方向とのなす角は0度よりも大きく90度よりも小さい。
【0020】
カバー9は、表皮材を縫い合わせることによって袋状に形成されている。カバー9の底部には開口が形成されている。ヘッドレストフレーム8の芯材6をカバー9の底部の開口からカバー9の内部へ挿入して開口を塞ぐことにより、芯材6がカバー9で覆われている。また、カバー9の底部の開口を塞いだ状態の底部に後述する注入ノズル22が挿入される注入孔9aが設けられる。注入孔9aから第一方向に注入経路61の下端が位置する。なお、芯材6とカバー9の間には後述する方法によりクッション材5が形成されている。クッション材5としては、例えばポリウレタンフォームを用いている。ピラーフレーム7a,7bはカバー9の外部へ延出している。
図1に示すように、ピラーフレーム7a,7bをシートバック3の頂部に設けた孔(ヘッドレストガイド)3a,3bに差し込むことにより、ヘッドレスト4がシートバック3に装着されている。
【0021】
次に、本実施形態のヘッドレス卜4の製造方法(表皮一体発泡成形)について
図4を用いて説明する。
図4はヘッドレストフレームおよびカバーを金型に配置した状態を示す模式的な断面図である。
【0022】
まず、袋状に形成されたカバー9内に、カバー9の底部に形成された開口を通して、芯材6を備えたヘッドレストフレーム8を挿入する。その後、カバー9の底部の開口を塞ぐことにより、注入孔9aを除いて、芯材6はカバー9により完全に覆われる。この状態で、ピラーフレーム7a、7bは、図示しない2つの孔を介してカバー9の外部に延出している。つづいて、注入ノズル22を、その先端部分をカバー9内に入り込むように、注入孔9aからカバー9の内部に挿入する。続いて、金型21内に、カバー9をセットすると共に、芯材6を備えたヘッドレストフレーム8を、カバー9内の所定位置にセットする。金型21内にセッ卜する場合、ヘッドレストフレーム8のピラーフレーム7a,7bは、シートバック3への取り付け時に下端となる端部が、金型21に形成された貫通孔(不図示)を介して外方に突出するように所定位置にセットされる。このピラーフレーム7a、7bの所定位置へのセットによって、芯材6を備えたヘッドレストフレーム8の金型内部での位置決めが行なわれる。そして、同様にピラーフレーム7a,7bが突出している部分間に位置する注入ノズル22も、金型内の所定位置にセットされ、位置決めが行なわれる。このピラーフレーム7a、7bの金型内での位置決め、および注入ノズル22の金型内での位置決めによって、芯材6の注入経路61に対する注入ノズル22の配置が行なわれ、後述する逆流時の隙間が確保される。その後、注入ノズル22を介して発泡原料(例えばポリウレタンフォーム原料)を注入機23から金型内に注入する。このとき、金型21の注入孔21aが上部にくるようにして金型21の上方の注入機23が配置される。よって、
図4の芯材9およびカバー9は
図3とは上下が反対になっている。
【0023】
具体的には、芯材6には、注入経路61が形成されており、この注入経路61に注入ノズル22が挿入され、注入機23から所定の圧力で発泡原料が注入される。注入ノズル22から注入された発泡原料は、注入経路61の屈曲部(E部)に発泡原料が当ることで、攪拌が促進され、発泡原料が注入経路61を塞ぐ。このことにより、一部の発泡原料は、注入経路61を通過して、直接的にヘッドレスト4の頂部側(A部)へと流入し、一部の発泡原料は、ヘッドレスト4の下部側(B部)に残すことができるため、発泡原料はA部とB部の両方から芯材6の外面とカバー9の内面との間隙に流動するように拡散する。これにより、発泡原料は発泡開始時までにすべての間隙に行き渡って発泡するため、クッション材5が充填される。なお、クッション材5は芯材6の外面とカバー9の内面との間隙に形成されるが、注入経路61内にも形成される。
【0024】
注入経路61の口径は、注入された発泡原料が逆流できるように注入ノズル22の注入経路61に挿入される部分の外径よりも大きく、注入ノズル22と注入経路61との間に隙間を有する。注入ノズルの外径に対して注入経路6の内径を2.5〜5倍に設定することが好ましい。また、注入経路61の口径は20mm以下が好ましい。例えば、発泡原料の秒間吐出量:170〔g/sec〕、ウレタン密度:0.050〔g/cm3〕、反応速度(RiseTime):約10〔sec〕の場合、注入経路の口径は20mm以下であればよい。流速を上げる(早く充填する)ためには、注入経路61の口径は細い方が好ましい。
【0025】
次に、芯材の注入経路の構造が実施形態と異なる例(比較例1、2)について
図5、6を用いて説明する。
図5は比較例1のヘッドレストを示す模試的な断面図あり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。
図6は比較例2のヘッドレストを示す模試的な断面図あり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。
【0026】
図5に示すように、比較例1のヘッドレスト4Rの芯材6Rは直線状の注入経路61Rを有する。芯材6Rでは、注入経路61Rに屈曲部がないため、直接的に、頂部側(A部)へすべての発泡原料を流し込まれる。よって、頂部側(A部)と底部側(B部)の間の前部(C部)または後部側(D部)の芯材6Rとカバー9Rとの間隙が狭い場合、B部への発泡原料の到達に時間を要し、発泡開始時までにB部に発泡材料が充分に拡散されず、B部でのクッション材の充填が不足する。
【0027】
図6に示すように、比較例2のヘッドレスト4Sの芯材6Sは実施形態よりも口径が大きい注入経路61Sを有する。芯材6Sでは、注入経路61Sに屈曲部があるが口径が大きいため、比較例1と同様に、直接的に、A部へすべての発泡原料を流し込まれる。よって、A部とB部の間のC部またはD部の芯材6Sとカバー9との間隙が狭い場合、B部への発泡原料の到達に時間を要し、発泡開始時までにB部に発泡材料が充分に拡散されず、B部でのクッション材の充填が不足する。
【0028】
実施形態では、屈曲した細い口径の注入経路を設けることで発泡原料を全量送り込まない(送り込めない)構造を有し、注入途中で、発泡原料を詰まらせ、オーバーフローさせることで発泡原料の一部を注入手前へ残すことができる。
【0029】
実施形態によれば、製品毎にC部またはD部の狭さを考慮しながら、注入経路の太さを設定することでA部とB部への発泡原料注入配分を制御することができる。
【0030】
<変形例>
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施形態の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0031】
(変形例1)
実施形態では注入経路に屈曲部を有していたが、発泡原料が攪拌される構造であればよい。変形例1では注入経路は屈曲部に代えて攪拌用ロッドを有する。変形例1のヘッドレストについて
図7、8を用いて説明する。
図7は変形例1のヘッドレストを示す模式的な断面図あり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。
図8は
図7の注入経路の上面図であり、
図8(A)は攪拌ロッドが複数本ある場合の図であり、
図8(B)は攪拌ロッドが一本ある場合の図である。
【0032】
変形例1のヘッドレスト4Aの注入経路61Aは、比較例1と同様に、芯材6Aの下端から上方に直線的に伸びて上端に達する。注入経路61Aの上下方向の中央部(所定の位置)に発泡原料の攪拌用ロッド62Aを有する。
図8に示すように、ロッド62Aは一本でも複数本(図では3本)でもよい。ロッド62Aは実施形態の注入経路の屈曲部と同様の作用効果を有する。すなわち、注入ノズル22から注入された発泡原料は、注入経路61Aの攪拌用ロッド62Aに発泡原料が当ることで、攪拌が促進され、発泡原料が注入経路61Aを塞ぐ。このことにより、一部の発泡原料は、注入経路61を通過して、直接的にヘッドレスト4のA部へと流入し、一部の発泡原料は、ヘッドレスト4のB部に残すことができるため、発泡原料はA部とB部の両方から芯材6Aの外面とカバー9Rの内面との間隙に流動するように拡散する。これにより、発泡原料は発泡開始時までにすべての間隙に行き渡って発泡するため、クッション材が充填される。
【0033】
変形例1では、注入経路に攪拌ロッドを設けることで発泡原料を全量送り込まない(送り込めない)構造を有するので、実施形態と同様に、注入途中で、発泡原料を詰まらせ、オーバーフローさせることで原料の一部を注入手前へ残すことができる。
【0034】
変形例1によれば、製品毎にC部またはD部の狭さを考慮しながら、攪拌ロッドの本数や太さにより隙間を設定することでA部とB部への発泡原料注入配分を制御することができる。
【0035】
(変形例2)
次に、注入ノズルの構造が実施形態と異なる例(変形例2)について
図9を用いて説明する。
図9は変形例2のヘッドレストを示す模式的な断面図あり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。
【0036】
変形例2のヘッドレスト4Bは、比較例1と同様の直線状の注入経路61Rを有する芯材6Rを備える。一方、変形例2の注入ノズル22Bは注入経路61Bの延伸方向に噴出する孔と、注入経路61Rには挿入されない位置においてヘッドレストの前後方向に噴出する孔を有し、3方向に発泡原料を噴出する。注入ノズル22Bを使用することで、実施形態と同様に、A部とB部に発泡原料を同時に充填することができる。ただし、C部またはD部の狭さに応じて、専用ノズルを設定(製作)する必要がある。
【0037】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および変形例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0038】
実施形態では、注入経路を前方側に屈曲する例を説明したが、これに限定されるものではなく、後方側に屈曲してもよい。
【0039】
また、実施形態では、ヘッドレストの底部を上にして(頂部を下にして)発泡原料を注入する例を説明したが、これに限定されるものではなく、ヘッドレストを横にして発泡原料を注入してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:車両用シート
2:シートクッション
3:シートバック
4:ヘッドレスト
5:クッション材
6:芯材
61:注入経路
7a,7b:ピラーフレーム
8:ヘッドレストフレーム
9:カバー
21:金型
22:注入ノズル
23:注入機