特許第6904912号(P6904912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904912車両用シートおよびヘッドレストの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904912
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】車両用シートおよびヘッドレストの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/80 20180101AFI20210708BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B60N2/80
   A47C7/38
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-4038(P2018-4038)
(22)【出願日】2018年1月15日
(65)【公開番号】特開2019-123303(P2019-123303A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】 野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/117687(WO,A1)
【文献】 特開2003−236855(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0239376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N2/00−2/90
A47C7/00−7/74
B68G7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む車両用シート:
ヘッドレスト;
前記ヘッドレストが装着されるシートバック;
前記シートバックに連結されるシートクッション;
ここで、前記ヘッドレストは以下を含む:
前記シートバックに装着されるピラーフレーム;
一端から他端に貫通する注入経路を有する芯材;
前記ピラーフレームの一部と前記芯材とを被うカバー;
前記芯材の外面と前記カバーの内面との間隙に形成されるクッション材;
ここで、前記芯材の内部側から前記他端に伸びる前記注入経路の延伸方向は発泡原料が前後方向において均等に拡散する位置であり、前記注入経路は前記芯材の前記一端から第一方向に伸び、所定の位置から第二方向に伸びて前記他端に達し、前記所定の位置に屈曲部を有する。
【請求項2】
請求項の車両用シートにおいて、
前記注入経路は左右方向の中央部に位置する。
【請求項3】
請求項の車両用シートにおいて、
前記カバーは注入ノズルを挿入する孔を備え、
前記孔から前記芯材の前記一端に位置する前記注入経路の開口に向かう方向は前記第一方向に沿っている。
【請求項4】
請求項の車両用シートにおいて、
さらに、前記注入経路に挿入されているアダプタを備え、
前記カバーは注入ノズルが挿入される孔を備え、
前記アダプタの一端は前記注入経路内に位置し、他端は前記孔と重なるように位置する。
【請求項5】
請求項の車両用シートにおいて、
前記孔から前記芯材の前記一端に位置する前記注入経路の開口に向かう方向は前記第一方向とは異なる。
【請求項6】
請求項の車両用シートにおいて、
前記注入経路の断面は円形状である。
【請求項7】
以下を含む車両用シート:
ヘッドレスト;
前記ヘッドレストが装着されるシートバック;
前記シートバックに連結されるシートクッション;
ここで、前記ヘッドレストは以下を含む:
前記シートバックに装着されるピラーフレーム;
一端から他端に貫通する注入経路を有する芯材;
前記ピラーフレームの一部と前記芯材とを被うカバー;
前記芯材の外面と前記カバーの内面との間隙に形成されるクッション材;
前記注入経路に挿入されているアダプタ;
ここで、前記芯材の内部側から前記他端に伸びる前記注入経路の延伸方向は発泡原料が前後方向において均等に拡散する位置であり、
前記注入経路は前記芯材の前記一端から第三方向に伸びて前記他端に達し、
前記カバーは注入ノズルが挿入される孔を備え、
前記アダプタの一端は前記注入経路内に位置し、他端は前記孔と重なるように位置する。
【請求項8】
請求項の車両用シートにおいて、
前記注入経路は左右方向の中央部に位置する。
【請求項9】
請求項の車両用シートにおいて、
前記孔の中心と前記芯材の前記一端に位置する前記注入経路の開口の中心とはずれている。
【請求項10】
請求項の車両用シートにおいて、
前記注入経路の断面は円形状である。
【請求項11】
請求項1の車両用シートにおいて、
前記芯材の内部側から前記他端に伸びる前記注入経路の延伸方向は前記ヘッドレストの頂部である。
【請求項12】
以下を含むヘッドレストの製造方法:
(a)ピラーフレームと、注入経路が形成された芯材と、袋状に縫製された表皮材と、を準備する工程;
(b)前記芯材を前記ピラーフレームに固定する工程;
(b)前記表皮材の袋の中に前記芯材および前記ピラーフレームを挿入する工程;
(d)前記表皮材、前記芯材および前記ピラーフレームを金型にセットする工程;
(e)注入ノズルから発泡原料を前記表皮材内に注入しクッション材を形成する工程、
ここで、前記(e)工程は以下を含む:
(e1)前記注入経路の一端に前記注入ノズルを第一方向に挿入する工程;
(e2)前記注入ノズルから前記発泡原料を前記注入経路に注入する工程;
(e3)前記注入経路の他端から前記発泡原料が前後方向において均等に拡散する位置に前記注入された発泡原料を拡散させ、前記芯材の外面と前記表皮材の内面との間隙にクッション材を形成する工程
ここで、前記注入経路は、前記芯材の前記一端から前記第一方向に伸びて所定の位置に達し、前記所定の位置から第二方向に伸びて前記他端に達し、前記所定の位置に屈曲部を有する。
【請求項13】
請求項12のヘッドレストの製造法において、
さらに、前記注入経路に挿入されているアダプタを備え、
前記表皮材は前記注入ノズルが挿入される孔を備え、
前記アダプタの一端は前記注入経路内に位置し、他端は前記孔と重なるように位置する。
【請求項14】
以下を含むヘッドレストの製造方法:
(a)ピラーフレームと、注入経路が形成された芯材と、袋状に縫製された表皮材と、を準備する工程;
(b)前記芯材を前記ピラーフレームに固定する工程;
(b)前記表皮材の袋の中に前記芯材および前記ピラーフレームを挿入する工程;
(d)前記表皮材、前記芯材および前記ピラーフレームを金型にセットする工程;
(e)注入ノズルから発泡原料を前記表皮材内に注入しクッション材を形成する工程、
ここで、前記(e)工程は以下を含む:
(e1)前記注入経路の一端に前記注入ノズルを第一方向に挿入する工程;
(e2)前記注入ノズルから前記発泡原料を前記注入経路に注入する工程;
(e3)前記注入経路の他端から前記発泡原料が前後方向において均等に拡散する位置に前記注入された発泡原料を拡散させ、前記芯材の外面と前記表皮材の内面との間隙にクッション材を形成する工程、
ここで、さらに、前記注入経路に挿入されているアダプタを備え、
前記表皮材は前記注入ノズルが挿入される孔を備え、
前記アダプタの一端は前記注入経路内に位置し、他端は前記孔と重なるように位置し、
前記注入経路は、前記芯材の前記一端から第三方向に伸びて前記他端に達する。
【請求項15】
以下を含むヘッドレストの製造方法:
(a)ピラーフレームと、注入経路が形成された芯材と、袋状に縫製された表皮材と、を準備する工程;
(b)前記芯材を前記ピラーフレームに固定する工程;
(b)前記表皮材の袋の中に前記芯材および前記ピラーフレームを挿入する工程;
(d)前記表皮材、前記芯材および前記ピラーフレームを金型にセットする工程;
(e)注入ノズルから発泡原料を前記表皮材内に注入しクッション材を形成する工程、
ここで、前記(e)工程は以下を含む:
(e1)前記注入経路の一端に前記注入ノズルを第一方向に挿入する工程;
(e2)前記注入ノズルから前記発泡原料を前記注入経路に注入する工程;
(e3)前記注入経路の他端から前記発泡原料が前後方向において均等に拡散する位置に前記注入された発泡原料を拡散させ、前記芯材の外面と前記表皮材の内面との間隙にクッション材を形成する工程、
ここで、前記発泡原料が前後方向において均等に拡散する位置は前記ヘッドレストの頂部である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両用シートに関し、例えば表皮一体発泡成形されるヘッドレストを備える車両用シートに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、軽量化のためにパッド層の厚さを薄くする機構(衝撃吸収部材)、ヘッドレス卜の前後位置を調整するための機構(位置調整機構)、スピーカーなどの音響を提供するための機構(音響機構)などを表皮部材内に挿入したヘッドレストが求められるようになっている。このような場合に、パッド層を表皮部材と一体発泡しようとすると、これらの機構がポリウレタンフォーム原料の発泡作用の妨げとなり、均等な発泡ができず、ガスだまりなどにより欠肉が生じやすいという問題がある(国際公開第2016/117687号明細書(特許文献1))。
【0003】
そこで、特許文献1では、シート取り付け時の姿勢でヘッドレストの上下方向となる方向にほぼ沿うように真っすぐに形成された発泡原料注入経路を有する注入経路形成部材を表皮部材内にセットし、発泡原料注入経路を通じてパッド層を形成する発泡原料を注入している。具体的には、注入経路形成部材である発泡成形体は、左右の側部支持部材間に収まる幅を有する略直方体形状に形成されていると共に、幅方向略中央部に上下方向に貫通する発泡原料注入経路が形成されている。注入ノズルから注入された発泡原料は、発泡原料注入経路を通過して、ヘッドレストの頂部側へと流入し、発泡成形体の外面と、表皮部材の内面との間隙に頂部側から下部側へ流動するように拡散する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/117687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように発泡原料注入経路が上下方向に真っすぐ形成されていると、発泡原料注入経路の上端の位置とヘッドレストの頂部の位置がずれる場合には、発泡原料注入経路の上端に対し頂部とは反対側への発泡原料の到達に時間を要しポリウレタンの充填が不足する場合がある。
本開示の課題は、表皮一体発砲成形によるクッション材の充填がより均一なヘッドレストを備える車両用シートを提供することである。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、車両用シートは、ヘッドレストと、前記ヘッドレストが装着されるシートバックと、前記シートバックに連結されるシートクッションと、を備える。前記ヘッドレストは、前記シートバックに装着されるピラーフレームと、一端から他端に貫通する注入経路を有する芯材と、前記ピラーフレームの一部と前記芯材とを被うカバーと、前記芯材の外面と前記カバーの内面との間隙に形成されるクッション材と、を備える。前記芯材の内部側から前記他端に伸びる前記注入経路は発泡原料が前後方向において均等に拡散する位置である。
【発明の効果】
【0007】
上記車両用シートによれば、クッション材の充填をより均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
図2図2図1のヘッドレストを拡大して示す斜視図である。
図3図3図2における切断面Aに沿った縦断面図である。
図4図4はヘッドレストフレームおよびカバーを金型に配置した状態を示す模式的な断面図である。
図5図5は比較例1のヘッドレストを示す模試的な断面図である。
図6図6は比較例2のヘッドレストを示す模試的な断面図である。
図7図7は変形例1のヘッドレストを示す模式的な断面図である。
図8図8は比較例3のヘッドレストを示す模試的な断面図である。
図9図9は変形例2のヘッドレストを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
(車両用シート)
実施形態に係る車両用シートについて図1を用いて説明する。図1は実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。ここに示す車両用シート1は、例えば、車両の一種類である自動車の内部に設置される複数のシートのうちの1つである。なお、以下の説明では、車両用シート1を搭載する車両が水平面上に置かれた場合を基準として、鉛直方向を上下方向(UP,DW)と定義する。また、前後方向(FR,RR)は車両の前後方向に一致するように、左右方向(幅方向)は車両の幅方向に一致するように、定義される。FRは車両の前側方向であり、RRは車両の後側方向である。また、車両用シート1について、車両の後から見て右側(RH)、左側(LH)と呼んで説明する。
【0011】
車両用シート1は、搭乗者が座る部分であるシートクッション2と、シートクッション2の後端に立設されたシートバック3と、シートバック3の上端部に装着されたヘッドレスト4とを備えている。
【0012】
シートクッション2は、車両の床に取り付けられているが、前後方向に位置を調節可能に、あるいは高さの調節が可能状態にする機構を備えることができる。
【0013】
シートバック3は、背もたれを構成する部分であり、下端部に設けられた回動軸(不図示)を中心として回動可能な状態で、シートクッション2に連結されている。すなわち、車両用シート1には、シートバック3を後方へ傾斜させるリクライニング機能や、シートバック3を前方へ傾斜させる前倒機能が設けられ、シートバック3はシートクッション2に対して回動可能に構成される。
【0014】
ヘッドレスト4は、高さ位置を調節可能な状態で、シートバック3に取り付けられている。
【0015】
シートクッション2、シートバック3およびヘッドレスト4は、内部に骨格部材となるフレームと発泡樹脂などからなるクッション材とが設けられ、クッション材の表面をカバー9で覆う構成である。
【0016】
(ヘッドレスト)
ヘッドレストについて図2、3を用いて説明する。図2図1のヘッドレストを拡大して示す斜視図である。図3図2における切断面Aに沿った縦断面図である。
【0017】
ヘッドレスト4は、ヘッドレストフレーム8とカバー9とクッション材5とを有している。ヘッドレストフレーム8は、芯材6と、ピラーフレーム7a,7bと、ピラーフレーム7a,7bとを接続するフレーム7cと、芯材6を固定するサポートワイヤ7dと、芯材6を固定するブラケット7e,7fと、を有している。芯材6は前側芯材と後側芯材または右側芯材と左側芯材または上側芯材と下側芯材とを結合することによって形成されている。芯材6は硬質樹脂、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂によって形成されている。なお、芯材6は例えば背景技術に記載したような機構の筐体であり、音響機構の例ではスピーカボックスに該当する。
【0018】
芯材6の左右方向の中央付近に上下方向に貫通する孔である注入経路61が形成されている。注入経路61は芯材6の下端から上方に伸びて中央付近で前方側に屈曲して芯材6の上端に伸びている。注入経路61の中央付近から上端に向かう方向にヘッドレスト4の頂部Tが位置するように、注入経路61を屈曲させている。ここで、ヘッドレスト4の頂部Tは、断面視で、その頂点を中心として注入経路61の口径の2倍程度の大きさの領域である。ただし、ヘッドレスト4の上部側において、芯材6の外面とカバー9の内面との間隙の距離が頂点における間隙の距離以上ある場合はその箇所を中心として注入経路61の口径の2倍程度の大きさの領域である。間隙の距離は注入経路61の開口部分においては開口がないと仮定した場合の距離である。注入経路61の延伸方向に垂直の断面は円形状である。
【0019】
カバー9は、表皮材を縫い合わせることによって袋状に形成されている。カバー9の底部には開口が形成されている。ヘッドレストフレーム8の芯材6をカバー9の底部の開口からカバー9の内部へ挿入することにより、芯材6がカバー9で覆われている。なお、芯材6とカバー9の間には後述する方法によりクッション材5が形成されている。クッション材5としては、例えばポリウレタンフォームを用いている。ピラーフレーム7a,7bはカバー9の外部へ延出している。図1に示すように、ピラーフレーム7a,7bをシートバック3の頂部に設けた孔(ヘッドレストガイド)3a,3bに差し込むことにより、ヘッドレスト4がシートバック3に装着されている。
【0020】
次に、本実施形態のヘッドレス卜4の製造方法について図4を用いて説明する。図4はヘッドレストフレームおよびカバーを金型に配置した状態を示す図である。
【0021】
まず、袋状に形成されたカバー9内に、カバー9の底部に形成された開口を通して、芯材6を備えたヘッドレストフレーム8を挿入する。その後、カバー9の底部の開口を塞ぐことにより、注入孔9aを除いて、芯材6はカバー9により完全に覆われる。この状態で、ピラーフレーム7a、7bは、図示しない2つの孔を介してカバー9の外部に延出している。つづいて、注入ノズル22を、その先端部分をカバー9内に入り込むように、注入孔9aからカバー9の内部に挿入する。続いて、金型21内に、カバー9をセットすると共に、芯材6を備えたヘッドレストフレーム8を、カバー9内の所定位置にセットする。金型21内にセッ卜する場合、ヘッドレストフレーム8のピラーフレーム7a,7bは、シートバック3への取り付け時に下端となる端部が、金型21に形成された貫通孔(不図示)を介して外方に突出するように所定位置にセットされる。このピラーフレーム7a、7bの所定位置へのセットによって、芯材6を備えたヘッドレストフレーム8の金型内部での位置決めが行なわれる。そして、同様にピラーフレーム7a,7bが突出している部分間に位置する注入ノズル22も、金型内の所定位置にセットされ、位置決めが行なわれる。このピラーフレーム7a、7bの金型内での位置決め、および注入ノズル22の金型内での位置決めによって、芯材6の注入経路61に対する注入ノズル22の配置が行なわれ、後述する逆流時の隙間が確保される。その後、注入ノズル22を介して発泡原料(例えばポリウレタンフォーム原料)を注入機23から金型内に注入する。このとき、金型21の注入孔21aが上部にくるようにして金型21の上方の注入機23が配置される。よって、図4の芯材9およびカバー9は図3とは上下が反対になっている。
【0022】
具体的には、芯材6には、注入経路61が形成されており、この注入経路61に注入ノズル22が挿入され、注入機23から所定の圧力で発泡原料が注入される。このとき、注入ノズル22の延伸方向と注入経路61の下部側の延伸方向とが一致するため注入経路61と注入ノズルが密着される。また、注入経路61の中央付近から上端に向かう方向にヘッドレスト4の頂部Tが位置する。ヘッドレスト4の頂部Tは前後方向の前側に位置する。このことにより、すべての発泡原料は、注入経路61を通過して、直接的にヘッドレスト4の頂部T側(A部)へと流入し、発泡原料はそこから四方八方の芯材6の外面とカバー9の内面との間隙に流動するように拡散する。これにより、発泡原料は発泡開始時までにすべての間隙に行き渡って発泡するためクッション材5が充填される。
【0023】
注入経路61の口径は注入ノズル22の注入経路61に挿入される部分の最大外径と同じ大きさであり、注入ノズル22と注入経路61との間に隙間がない。注入経路61の口径は例えば20mmである。流速を上げる(早く充填する)ためには、20mmよりも細い方が好ましい。注入ノズル22を注入経路61に密着させるために、注入ノズル22の先端部の外径は注入経路61の口径よりも小さく、根元側は注入経路61の口径よりも大きいのが好ましい。
【0024】
次に、芯材の注入経路の構造およびヘッドレスの形状が実施形態と異なる例(比較例1、2)について図5、6を用いて説明する。図5は比較例1のヘッドレストを示す模試的な断面図であり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。図6は比較例2のヘッドレストを示す模試的な断面図であり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。
【0025】
図5に示すように、比較例1のヘッドレスト4Rの芯材6Rは上下方向に延伸する注入経路61Rを有する。注入ノズル22も上下方向に延伸する。注入経路61Rは芯材6Rの下端から上端に向けて直線的に延伸し、その延伸方向にヘッドレスト4Rの頂部Tが位置する。ヘッドレスト4Rの頂部Tは前後方向の中央付近に位置する。ヘッドレスト4Rの芯材6Rでは、注入経路61Rに屈曲部がないため、直接的に、頂部T側(A部)へすべての発泡原料を流し込まれ、実施形態と同様に、発泡原料はそこから四方八方の芯材6の外面とカバー9の内面との間隙に流動するように拡散する。これにより、発泡原料は発泡開始時までにすべての間隙に行き渡って発泡するためクッション材が充填される。
【0026】
図6に示すように、比較例2のヘッドレスト4Sの芯材6Sは、比較例1と同様に、上下方向に延伸する注入経路61Sを有する。注入ノズル22も上下方向に延伸する。注入経路61Sは芯材6Sの下端から上端に向けて直線的に延伸するが、その延伸方向にヘッドレスト4Sの頂部Tが位置しない。ヘッドレスト4Sの頂部Tは前後方向の中央付近に位置する。頂部T側(A部)へすべての発泡原料を流し込まれ、下部側への拡散は前方側を主に経由するため、B部への発泡原料の到達に時間を要し、発泡開始時までにB部に発泡材料が充分に拡散されず、B部でのクッション材の充填が不足する。
【0027】
実施形態では、芯材に、一部屈曲した細い径の注入経路を設けて、この注入経路に、注入ノズルを密着させ、発泡原料を注入する。注入経路を屈曲させることで、狙った場所へ発泡原料を送り込むことができる。また、注入経路を屈曲させることで、注入ノズルと注入経路を適切な角度で密着させることができるため、無駄(漏れ)なく、すべての発泡原料を狙った場所へ送り込むことができる。反応速度が速い発泡原料の場合、発泡が始まる前に狙った場所へ発泡原料を到達させることで、発泡充填不足などの欠陥を未然に防ぐことができる。
<変形例>
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施形態の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0028】
(変形例1)
図7は変形例1のヘッドレストの断面を示す図であり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。図8は比較例3のヘッドレストの断面を示す図であり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。
【0029】
図7に示すように、変形例1のヘッドレスト4Aの芯材6Aは上下方向から傾けて延伸する注入経路61Aを有し、注入ノズル22と注入経路61Aとの間にアダプタ62を有する。注入ノズル22は上下方向に延伸する。注入経路61Aは芯材6Aの下端から上端に向けて直線的に延伸し、その延伸方向にヘッドレスト4Aの頂部Tが位置する。
【0030】
図8に示すように、比較例3のヘッドレスト4ARは変形例1のヘッドレスト4Aからアダプタ62を取り除いたものである。それに伴って、注入孔9ARaの位置が変形例1と異なっている。注入経路61Aを傾けた場合、注入ノズル22の延伸方向と注入経路61Aの延伸方向が同角度にならないため、注入ノズル22が注入経路61Aと密着することができず、発泡原料の一部が漏れ出す。よって、適切な量の発泡原料を、A部へ送り込むことができない。
【0031】
しかし、変形例1では、注入ノズル22の延伸方向と注入経路61Aの延伸方向との違いを吸収するためのアダプタ62を注入経路61Aの下端側から挿入して取り付けている。アダプタ62の一端は注入経路61Aと密着する。また、注入ノズル22の先端はアダプタ62の他端に挿入して密着できるようになっている。注入ノズル22およびアダプタ62をシリコン等の柔軟な材料で形成することで注入ノズル22の位置や芯材9Aの寸法位置バラツキを吸収することができる。また、注入ノズル22を注入経路61Aに挿入し易くするために太くする必要がなく、注入経路61Aを細くすることができるので、発泡原料の流速を上げられ、より早く狙った場所へ発泡原料を送り込むことができる
なお、変形例1では、注入ノズル22(カバー9の孔9Aa)の位置と注入経路61Aの開口の位置がずれている(言い換えると注入ノズル22の延伸方向に注入経路61Aの開口が位置していない)が、一致していてもよい。
【0032】
(変形例2)
図9は変形例2のヘッドレストの断面を示す図であり、注入ノズルが挿入された状態を示す図である。
【0033】
変形例2のヘッドレスト4Bは実施形態のヘッドレスト4にアダプタ62を取り付けたものである。それに伴って、カバー9Bの注入孔9Baの位置が実施形態と異なっている。よって、芯材および注入経路は実施形態と同様である。変形例2では、変形例1と同様に、注入ノズル22の位置や芯材6の寸法位置バラツキを吸収することができる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および変形例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0035】
実施形態では、注入経路の延伸方向は頂部方向である例を説明したが、これに限定されるものではなく、発泡原料の上方(頂部と反対側)への拡散スピードが前後方向で大きく異なる場合には、注入経路の延伸方向は、前後に均等に拡散する位置にしてもよい。注入経路から出た発泡原料は、最初に頂部付近のヘッドレスト底部に溜まり、その後、芯材の前後左右方向から上方に向かって拡散しながら充填されていく。その拡散しながら充填されるときに、前後左右方向でほぼ均等に上方に向かいように、前後左右方向で上方へ向かい速度が同じようになることが好ましい。
【0036】
実施形態では、注入経路を前方側に屈曲する例を説明したが、これに限定されるものではなく、後方側に屈曲してもよい。
【0037】
また、実施形態では、ヘッドレストの底部を上にして(頂部を下にして)発泡原料を注入する例を説明したが、これに限定されるものではなく、ヘッドレストを横にして発泡原料を注入してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1:車両用シート
2:シートクッション
3:シートバック
4:ヘッドレスト
5:クッション材
6:芯材
61:注入経路
7a,7b:ピラーフレーム
8:ヘッドレストフレーム
9:カバー
21:金型
22:注入ノズル
23:注入機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9