(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記堅固な制限構造は、半球状であり、前記可撓膜が前記堅固な制限構造に向けて動かされると前記圧送チャンバは球状になり、前記可撓膜が前記堅固なチャンバ壁に向けて動かされると前記作動チャンバは球状になる、
請求項2に記載の医療機器の作動方法。
前記気体圧式作動システムは、正圧か負圧の前記作動流体としての気体を含む気体貯留器と、それぞれの往復容積式ポンプの前記気体貯留器と前記作動チャンバの間の前記気体の流れを制御する動弁機構を含む、
請求項9に記載の医療機器の作動方法。
前記制御器は、前記作動チャンバの圧力トランスデューサからの圧力情報を前記気体貯留器の圧力トランスデューサからの圧力情報と比較して、どの圧力トランスデューサが誤動作しているか判定する、
請求項12に記載の医療機器の作動方法。
前記気体圧式作動システムは、正圧気体貯留器と、負圧気体貯留器と、それぞれの往復容積式ポンプの前記気体貯留器と前記作動チャンバの間の前記気体の流れを制御する動弁機構とを備える、
請求項14に記載の医療機器の作動方法。
前記制御器は、前記動弁機構を制御して、それぞれの往復容積式ポンプの前記可撓膜をポンプストロークの初期には前記堅固なチャンバ壁に向けて動かし、ポンプストロークの終期には前記堅固な制限構造に向けて動かし、
前記制御器は、ポンプストローク数に基づいて、それぞれの往復容積式ポンプを流れる前記液体の量を決める、
請求項16に記載の医療機器の作動方法。
前記入口弁は、前記少なくとも1つの往復容積式ポンプの入口を通って前記圧送チャンバから流出するのを防止し、出口弁は、前記少なくとも1つの往復容積式ポンプの出口を通って前記圧送チャンバに流入するのを防止する、
請求項1に記載の医療機器の作動方法。
前記入口弁と出口弁はそれぞれ、前記弁の液体流れを閉塞することができる可撓性の膜と、正圧又は負圧の前記作動流体を前記可撓性の膜に送り込む作動ポート付き作動ハウジングとを備える、
請求項1に記載の医療機器の作動方法。
前記堅固なチャンバ壁の前記出口は、熱交換器バッグまたはラジエータを備える液体導管に接続され、前記液体導管は、液体を加熱しまたは冷却するために前記液体導管に送出する前記少なくとも1つの往復容積式ポンプの前記出口と流体的に連通する入口を有する、
請求項24に記載の液体圧送システム。
前記液体導管の入口への流体的な接続を提供する、少なくとも1つの入口ポートと、前記液体導管の出口への流体的な接続を提供する、出口ポートと、を含む、マニホールドをさらに備える、
請求項28に記載の液体圧送システム。
前記マニホールドは、少なくとも1つのセンサ構成部品をさらに備え、それぞれのセンサ構成部品はポートに配置されて前記ポートを通過する液体に関する熱情報を伝達可能である、
請求項30に記載の液体圧送システム。
前記使い捨てカセットの前記入口弁と前記出口弁はそれぞれ、前記弁の液体流れを閉塞する可撓性の膜と、正圧又は負圧の前記作動流体を送り込み前記可撓性の膜を作動する作動ポート付き作動ハウジングとを備える、
請求項24に記載の液体圧送システム。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によると、半球状である堅固なチャンバ壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける出口を備える往復容積式ポンプが提供される。
【0011】
本発明の別の態様によると、半球状である堅固なチャンバ壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、圧送チャンバへ流入する低せん断流を供給する方向に方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、圧送チャンバから流出する低せん断流を供給する方向に方向づける出口を備える往復容積式ポンプが提供される。
【0012】
本発明の別の態様によると、半回転楕円体状である堅固なチャンバ壁であって、周囲を有する壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように壁の周囲に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを方向づける出口であって、壁の周囲から離間している出口を備え、膜がシリコーン製である往復容積式ポンプが提供される。
【0013】
本発明の別の態様によると、半回転楕円体状である堅固なチャンバ壁であって、周囲を有する壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように壁の周囲に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを方向づける出口であって、壁の周囲から離間している出口を備え、膜が最小圧送チャンバ容積位置にあるときに膜の中央部分を堅固なチャンバ壁から離間させるバンプを膜が含む往復容積式ポンプが提供される。
【0014】
各種代替的実施形態においては、堅固なチャンバ壁が周囲を有してもよい。可撓膜が壁の周囲に取り付けられてもよい。出口が周囲から離間していてもよい。膜が、例えば高伸長シリコーンなどのシリコーンまたは他の適当な材料でできていてもよい。膜が最小圧送チャンバ容積位置にあるときに膜の中央部分を堅固なチャンバ壁から離間させるバンプまたは他の特徴を膜が含んでもよい。出口に向かう循環流体流を圧送チャンバ内に生成するように入口が配向されてもよく、圧送チャンバから流出するように方向づけられた流れが循環流から層状に剥離するように出口が配向されてもよい。
【0015】
更なる実施形態においては、膜の動きを制限し圧送チャンバの最大容積を制限する堅固な制限構造が更に含まれ、可撓膜および堅固な制限構造が作動チャンバを規定してもよい。
作動チャンバが加圧された制御流体によって作動するようになされてもよく、堅固な制限構造が一体型作動ポートを含んでもよい。堅固なチャンバ壁および堅固な制限構造が、例えば超音波溶着によって相互接続されていてもよい。膜が堅固なチャンバ壁と堅固な制限構造との間の所定位置に保持されてもよい。圧送チャンバが最大容積のときに、堅固なチャンバと、堅固な制限構造に押し当てられた可撓膜とが球状容積として圧送チャンバを規定するように、堅固な制限構造が可撓膜の動きを制限してもよい。堅固な制限構造が、圧送チャンバが最小容積のときに可撓膜と共に球状の作動チャンバを規定する半球状制限壁であってもよい。
【0016】
更なる実施形態においては、ポンプは、流れが入口を通って圧送チャンバから流出することを防止する入口弁、および流れが出口を通って圧送チャンバに流入することを防止する出口弁を更に含んでもよい。入口弁および出口弁が、受動逆止弁またはアクティブ制御弁でもよい。ポンプは、液体、生体液体、血液、または加温血液を圧送するようになされていてもよい。
【0017】
更なる実施形態においては、ポンプは、圧送チャンバに流体連通するパージポートであって、圧送チャンバからの空気の放出を可能にするパージポートを更に備えてもよい。ポンプは、圧送チャンバと流体連通する二次入口であって、圧送チャンバへの二次流体の導入を可能にする二次入口を更に備えてもよい。二次入口が、ルアーポート、注射器ポート、または中空の注射針であってもよい。二次流体が、医療用溶液、化学溶液、希釈液、血液希釈剤、または抗凝血剤であってもよい。
【0018】
本発明の別の態様によると、いずれかのタイプの往復容積式ポンプの対;両ポンプの入口に連結された入口管;および両ポンプの出口に連結された出口管を備える圧送用システムが提供される。対の往復容積式ポンプが、入口および出口管を通じて様々な流れパターンを供給するため、ポンプの独立動作が可能なように構成されていてもよい。ポンプが気体圧式または流体圧式に作動されてもよく、各ポンプ用に独立した作動ポート、または両ポンプ用の単一の作動ポートを含んでもよい。
【0019】
本発明の別の態様によると、生体液を圧送するシステムであって、使い捨てユニット、第1および第2の回転楕円体ポンプポッド、およびベースユニットを備えるシステムが提供される。使い捨てユニットは、生体液用の入口管、および生体液用の出口管を含む。各ポンプポッドは、半球状である堅固なチャンバ壁、半球状である堅固な作動壁、可撓膜とチャンバ壁が圧送チャンバを規定すると共に可撓膜と作動壁が作動チャンバを規定するようにチャンバ壁および作動壁に取り付けられた可撓膜、入口管から圧送チャンバへ流入する流れを許容するが、圧送チャンバを流出して入口管へ流入する流れを防止する入口弁、圧送チャンバから出口管へ流入する流れを許容するが、出口管から圧送チャンバへ流入する流れを防止する出口弁、および作動チャンバとの流体連通を提供する作動ポートを含む。
ベースユニットは、使い捨てユニットを受容し保持する容器手段、および作動ポートのそれぞれに正圧または負圧下で制御流体を供給する作動システムを含む。
【0020】
各種代替的実施形態においては、第1および第2のポンプポッドが互いに強固に取り付けられてもよく、容器手段が第1および第2のポンプポッドを一工程で受容する手段を含んでもよい。ベースユニットが、第1のポンプポッドの作動ポートに供給される制御流体の圧力と第2のポンプポッドの作動ポートに供給される制御流体の圧力をそれぞれ測定する第1および第2の圧力トランスデューサ、および作動システムを制御するために第1および第2の圧力トランスデューサから圧力情報を受信し作動システムを制御する制御器を更に含んでもよい。制御器が、一方のポンプポッドの圧送チャンバが実質的に一杯のときに他方のポンプポッドの圧送チャンバが実質的に空になるように、作動システムにポンプポッドを互いに位相をずらして作動させるようになされてもよい。
【0021】
本発明の別の態様によると、生体液を圧送するシステムに用いる使い捨てユニットが提供される。使い捨てユニットは、生体液用の入口管;生体液用の出口管;および第1および第2の回転楕円体状ポンプポッドを含む。各ポンプポッドは、半球状である堅固なチャンバ壁、半球状である堅固な作動壁、可撓膜とチャンバ壁が圧送チャンバを規定すると共に可撓膜と作動壁が作動チャンバを規定するようにチャンバ壁および作動壁に取り付けられた可撓膜、入口管から圧送チャンバへ流入する流れを許容するが、圧送チャンバから流出して入口管へ流入する流れを防止する入口弁、圧送チャンバから出口管へ流入する流れを許容するが、出口管から圧送チャンバへ流入する流れを防止する出口弁、および作動チャンバとの流体連通を提供する作動ポートを含む。
【0022】
各種代替的実施形態においては、各ポンプポッドが、堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、圧送チャンバへ流入する低せん断流を供給する方向に方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、圧送チャンバから流出する低せん断流を供給する方向に方向づける出口を含んでもよい。各ポンプポッドが、堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける出口を含んでもよい。
【0023】
更なる実施形態においては、使い捨てユニットは、第1および第2の回転楕円体状ポンプポッドと流体連通する熱交換器構成部品であって、生体液を加温する熱交換器に受容されるようになされている熱交換器構成部品を更に含んでもよい。熱交換器構成部品が流体路を規定する可撓性のバッグを含んでもよい。
【0024】
本発明の別の態様によると、生体液を圧送するシステムが提供される。システムは、使い捨てユニット、第1および第2のポンプポッド、およびベースユニットを含む。使い捨てユニットは、生体液用の入口管、および生体液用の出口管を含む。各ポンプは、各ストローク中に或る拍出量を送出可能であって、ポンプチャンバを囲む堅固なポッド壁、ポンプチャンバに隣接する往復部材、入口管から圧送チャンバへ流入する流れを許容するが、圧送チャンバから流出して入口管へ流入する流れを防止する入口弁、圧送チャンバから出口管へ流入する流れを許容するが、出口管から圧送チャンバへ流入する流れを防止する出口弁、および堅固なポッド壁によって規定された作動ポートを含む。ベースユニットは、使い捨てユニットを受容し保持する容器手段、および作動ポートのそれぞれに正圧または負圧下で制御流体を供給する作動システムを含み、ベースユニットが、拍出量の異なるポッドポンプを有する使い捨てユニットを受容し保持することができる。
【0025】
本発明の別の態様によると、生体液を圧送するベースユニットが提供される。ベースユニットが、使い捨てユニットを受容し保持する容器手段、および制御流体を正圧または負圧下で使い捨てユニットに供給する作動システムを含み、ベースユニットが、拍出量の異なるポッドポンプを有する使い捨てユニットを受容し保持することができる。使い捨てユニットが、それぞれ各ストローク中に或る拍出量を送出可能な第1および第2のポンプポッドを含み、各ポンプポッドは、ポンプチャンバを囲む堅固なポッド壁、および堅固なポッド壁によって規定され、作動システムと往復部材との間の流体連通を許容する作動ポートを有する。
【0026】
本発明の別の態様によると、流体を圧送チャンバに引き込むまたは流体を圧送チャンバから押し出す手段;圧送チャンバを通過する流量を判定する手段;および流量を達成するために必要な仕事量を判定し、仕事量が異常な流れの状態を示した場合に警告を発する制御器を備えるポンプが提供される。
【0027】
本発明の別の態様によると、堅固なチャンバ壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを方向づける入口;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを方向づける出口;膜の動きを制限し圧送チャンバの最大容積を制限する堅固な制限壁であって、可撓膜および堅固な制限壁が作動チャンバを形成し、堅固なチャンバ壁および堅固な制限壁がストロークを通じて可撓膜の動きに物理的制限を与える制限壁;正圧または負圧を間欠的に作動チャンバに供給する作動システム;作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ;および作動チャンバ圧力トランスデューサから圧力情報を受信し、ストロークの開始時および終了時に可撓膜を物理的制限に到達させるために作動システムを制御する制御器を備え、制御器が、ストローク数に基づいてポンプを通過する流れの量を判定し、制御器が、異常な流れの状態を検出するために作動チャンバ圧力トランスデューサからの圧力情報を1ストローク期間に亘って積分する往復容積式ポンプが提供される。
【0028】
本発明の別の態様によると、流体を圧送チャンバに引き込むこと、および流体を圧送チャンバから押し出すことの少なくとも一方によって圧送チャンバを通して流体を圧送すること;圧送チャンバを通過する流量を判定すること;流量を達成するために必要な仕事量を判定すること;および流量に関する仕事量が異常な流れの状態を示した場合に警告を発することを備える流れを制御する方法が提供される。
【0029】
各種代替的実施形態においては、流体を圧送すること、流量を判定すること、および仕事量を判定することが、堅固なチャンバ壁と、可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜とを提供すること;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを方向づける入口および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを方向づける出口を提供すること;膜の動きを制限し圧送チャンバの最大容積を制限する堅固な制限壁であって、可撓膜および堅固な制限壁が作動チャンバを形成し、堅固なチャンバ壁および堅固な制限壁がストロークを通じて可撓膜の動きに物理的制限を与える制限壁を提供すること;正圧または負圧を間欠的に作動チャンバに供給する作動システムを提供すること;作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサを提供すること;作動チャンバ圧力トランスデューサから圧力情報を受信すること;ストロークの開始時および終了時に可撓膜を物理的制限に到達させるために作動システムを制御すること;ストローク数に基づいてポンプを通過する流れの量を判定すること;および異常な流れの状態を検出するために、作動チャンバ圧力トランスデューサからの圧力情報を1ストローク期間に亘って積分することを含んでもよい。
【0030】
本発明の別の態様によると、圧送チャンバに面している第1の面と作動チャンバに面している第2の面を有する往復部材;圧送チャンバへ流入する流れを方向づける入口;圧送チャンバから流出する流れを方向づける出口;作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ;正圧または負圧を間欠的に作動チャンバに供給する作動システム、および制御器を備える往復容積式ポンプが提供される。作動システムは、正圧または負圧下で制御流体を内包する貯留器、作動チャンバと貯留器との間の制御流体の流れを制御する動弁機構、および貯留器内の制御流体の圧力を測定する貯留器圧力トランスデューサを含む。往復部材を動かすために作動システムを制御する制御器は、作動チャンバ圧力トランスデューサおよび貯留器圧力トランスデューサから圧力情報を受信し、圧力トランスデューサのどちらかが誤動作しているかどうか判定するために圧力情報を比較する。
【0031】
本発明の別の態様によると、堅固なチャンバ壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを方向づける入口;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを方向づける出口;可撓膜および堅固な制限壁が作動チャンバを形成する堅固な作動壁;作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ;正圧と負圧を交互に作動チャンバに供給する作動システムを備える往復容積式ポンプが提供される。作動システムは、正圧貯留器、負圧貯留器、作動チャンバと貯留器のそれぞれとの間の制御流体の流れを制御する動弁機構、正圧貯留器の圧力を測定する正圧貯留器圧力トランスデューサ、および負圧貯留器の圧力を測定する負圧貯留器圧力トランスデューサを含む。制御器が、可撓膜を動かすために作動システムを制御し、作動チャンバ圧力トランスデューサ、正圧貯留器圧力トランスデューサおよび負圧貯留器圧力トランスデューサから圧力情報を受信し、圧力トランスデューサのいずれかが誤動作しているかどうか判定するために圧力情報を比較する。
【0032】
本発明の別の態様によると、動弁システムが提供される。動弁システムは、弁カセットおよび制御カセットを含む。弁カセットは、複数の弁を内包し、各弁が動弁チャンバおよび作動チャンバを含み、各弁が作動チャンバ内の制御流体によって作動可能である。制御カセットは、ベースユニットからの制御流体との流体連通を提供する複数の流体インターフェースポートを有する。ポンプカセットと制御カセットの間に複数のチューブが伸びている。各チューブは、ベースユニットが1つの流体インターフェースポート内の制御流体を加圧することによって1つの弁を作動できるように、1つの流体インターフェースポートと少なくとも1つの作動チャンバとの間の流体連通を提供する。
【0033】
各種代替的実施形態においては、圧送システムは、複数のポンプを内包するポンプカセットであって、各ポンプが圧送チャンバおよび作動チャンバを含み、各ポンプが作動チャンバ内の制御流体によって作動可能であるポンプカセット;ベースユニットからの制御流体との流体連通を提供する複数の流体インターフェースポートを有する制御カセット;およびポンプカセットと制御カセットの間に伸びる複数のチューブであって、ベースユニットが1つの流体インターフェースポート内の制御流体を加圧することによって1つのポンプを作動できるように、それぞれ1つの流体インターフェースポートと少なくとも1つの作動チャンバとの間の流体連通を提供するチューブを含んでもよい。ポンプカセットが制御流体によって作動可能である弁を含んでもよく、複数のチューブが、ベースユニットが1つの流体インターフェースポート内の制御流体を加圧することによって弁を作動できるように、1つの流体インターフェースポートと弁との間の流体連通を提供する1本のチューブを含む。
【0034】
本発明の別の態様によると、往復容積式ポンプに使用するダイヤフラムであって、円形の周縁、および周縁に取り付けられたあらかじめ形成された半回転楕円体状である膜を有するダイヤフラムが提供される。膜がポンプチャンバ側に隆起構造の構成を含んでもよい。
【0035】
本発明の別の態様によると、往復容積式ポンプに使用するダイヤフラムであって、周縁、および周縁に取り付けられた膜を有し、膜がポンプチャンバ側に隆起構造の構成を含むダイヤフラムが提供される。隆起構造が隆起したバンプを含んでもよい。隆起構造が周縁から離れたところに位置してもよい。周縁がポンプチャンバ壁と作動チャンバ壁の少なくとも一方と相互接続するようになされていてもよい。周縁および膜が、例えば高伸長シリコーンなどのシリコーン製でもよい。周縁および膜が一体でもよい。
【0036】
本発明の別の態様によると、ポンプポッドを動作させる作動システムであって、ポンプ容積の異なるポンプポッドとの相互接続のための標準化された作動インターフェースを含む作動システム;ポンプポッドの作動チャンバ内の圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ;および作動チャンバ圧力トランスデューサから受信した圧力情報に基づいてポンプポッドを動作させるために作動システムを制御する制御器を備えることによって、ポンプポッドの動作がポンプ容積と無関係である圧送システムが提供される。
【0037】
本発明の別の態様によると、ポンプポッドを動作させる作動システムであって、ストローク長の異なるポンプポッドとの相互接続のための標準化された作動インターフェースを含む作動システム;ポンプポッドの作動チャンバ内の圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ;および作動チャンバ圧力トランスデューサから受信した圧力情報に基づいてポンプポッドを動作させるために作動システムを制御する制御器を備えることによって、ポンプポッドの動作がストローク長と無関係である圧送システムが提供される。
【0038】
本発明の別の態様によると、内部チャンバを規定する、3部品でできているハウジングであって、作動チャンバ壁に連結された、2部品でできている圧送チャンバ壁を有するハウジング;および内部チャンバ内のハウジングに固定されたダイヤフラムであって、内部チャンバを圧送チャンバと作動チャンバに分割するダイヤフラムを備え、ハウジングが作動チャンバと流体連通する第1のポートと、圧送チャンバと流体連通する少なくとも1つの第2のポートを含むポッドポンプが提供される。ハウジングの3つの部品が超音波溶着によって相互接続されてもよい。ポッドポンプは、圧送チャンバ壁の2つの部品の間に固定された、第2のポートそれぞれ用の弁を更に含んでもよい。
【0039】
本発明の別の態様によると、内部チャンバを規定するハウジング;および内部チャンバ内のハウジングに固定されたダイヤフラムであって、内部チャンバを圧送チャンバと作動チャンバとに分割するダイヤフラムを備え、ハウジングが流体入口および流体出口の両方として使用するための圧送チャンバと連通する単一のポートを含むポッドポンプが提供される。
【0040】
本発明の別の態様によると、内部チャンバを規定するハウジング;内部チャンバ内のハウジングに固定されたダイヤフラムであって、内部チャンバを圧送チャンバと作動チャンバとに分割するダイヤフラム;および作動チャンバ内に配設され、ダイヤフラムの運動を制限すること、ダイヤフラムの移動を鈍らせること、作動チャンバに流入するまたは作動チャンバから流出する流体をろ過すること、ポッドポンプの音または振動を弱めること、および圧送チャンバ内の流体に対して流体管理システム測定を実行することの少なくとも1つを行う構成部品を備えるポッドポンプが提供される。
【0041】
上記のタイプの実施形態においては、ポンプは、正圧または負圧を間欠的に作動チャンバに供給する作動システムを含んでも、正圧または負圧を間欠的に作動チャンバに供給する作動システムと共に使用してもよい。作動システムが、正圧または負圧の制御流体を内包する貯留器、および作動チャンバと貯留器との間の制御流体の流れを制御する動弁機構を含んでもよい。動弁機構が、2値のオンオフ弁、または可変絞り弁を含んでもよい。ポンプは、作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ、および作動チャンバ圧力トランスデューサから圧力情報を受信し、動弁機構を制御する制御器を更に含んでもよい。制御器が、動弁機構をディザリングさせるようになされてもよく、作動チャンバ圧力トランスデューサから受信した圧力情報から、いつポンプストロークが終了したかを判定する。制御器が、ストローク数に基づいてポンプを通過する流れの量を判定するため、ストロークの開始時および終了時のそれぞれにおいて可撓膜を堅固なチャンバ壁または堅固な制限構造に到達させるために動弁機構を制御するようになされていてもよい。
制御器が、異常な流れの状態を検出するために、作動チャンバ圧力トランスデューサからの圧力情報を1ストローク期間に亘って積分するようになされていてもよい。ポンプは、貯留器内の気体の圧力の圧力を測定する貯留器圧力トランスデューサを更に含んでもよく、制御器が、貯留器圧力トランスデューサから圧力情報を受信する。制御器が、作動チャンバ圧力トランスデューサおよび貯留器圧力トランスデューサのどちらかが誤動作しているかどうか判定するためにこれら圧力トランスデューサからの圧力情報を比較するようになされていてもよい。
【0042】
上記のタイプの実施形態においては、ポンプは、正圧と負圧を交互に作動チャンバに供給する作動システムを含んでも、正圧と負圧を交互に作動チャンバに供給する作動システムと共に使用してもよい。作動システムが、正圧貯留器;負圧貯留器;および作動チャンバと貯留器のそれぞれとの間の制御流体の流れを制御する動弁機構を含んでもよい。動弁機構が、それぞれ2値のオンオフ弁と可変絞り弁の一方であって、作動チャンバと正圧貯留器および負圧貯留器との間の制御流体の流れを制御する別々の正供給弁および負供給弁;または作動チャンバと正圧貯留器および負圧貯留器との間の制御流体の流れを制御する三方向供給弁を含んでもよい。ポンプは、作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ、および作動チャンバ圧力トランスデューサから圧力情報を受信し、動弁機構を制御する制御器を更に含んでもよい。制御器が、動弁機構をディザリングさせるようになされてもよく、作動チャンバ圧力トランスデューサから受信した圧力情報から、いつポンプストロークが終了したかを判定する。制御器が、ストロークの開始時および終了時のそれぞれにおいて可撓膜を堅固なチャンバ壁または堅固な制限構造に到達させるために動弁機構を制御するようになされてもよく、制御器が、ストローク数に基づいてポンプを通過する流れの量を判定する。制御器が、異常な流れの状態を検出するために、作動チャンバ圧力トランスデューサからの圧力情報を1ストローク期間に亘って積分するようになされていてもよい。ポンプは、正圧貯留器の圧力を測定する正圧貯留器圧力トランスデューサ、および負圧貯留器の圧力を測定する負圧貯留器圧力トランスデューサを更に含んでもよく、制御器が正圧貯留器圧力トランスデューサおよび負圧貯留器圧力トランスデューサから圧力情報を受信する。制御器が、作動チャンバ圧力トランスデューサ、正圧貯留器圧力トランスデューサおよび負圧貯留器圧力トランスデューサのいずれかが誤動作しているかどうかを判定するために、これら圧力トランスデューサからの圧力情報を比較するようになされてもよい。
【0043】
上記いずれかの実施形態において、貯留器(単数または複数)の圧力があらかじめ設定した限界を超えることがないよう、貯留器の圧力が制御されてもよい。
【0044】
一部の実施形態においては、圧送されている流体に対するせん断を減少させ、血液(特に加温血液)を圧送するのに使用されたときには、溶血を減少させるポンプポッド形態が提供される。
【0045】
本発明の一態様によると、プローブハウジング;検知端およびコネクタ端を有する、プローブハウジング内の熱センサ;熱センサの検知端に熱的に結合され、プローブハウジングに取り付けられたプローブ先端であって、サーモウェルの内面と熱的結合するようになされたプローブ先端;および熱センサのコネクタ端に接続された少なくとも2本のリード線を備えることによって、熱エネルギーがサーモウェルから熱センサへ伝達されるとともに、リード線を通して温度情報が伝送される検知プローブが提供される。各種代替的実施形態においては、プローブハウジング、熱センサおよびプローブ先端のうちの1つに取り付けられた、伝導率検知を可能にする第3のリード線を更に含んでもよい。あるいは、検知プローブは、プローブハウジング、熱センサおよびプローブ先端のうちの1つに取り付けられ、伝導率検知を可能とする伝導率センサ;および伝導率センサに取り付けられた伝導率情報を伝送する第3のリード線を更に含んでもよい。ウレタン樹脂がプローブ先端とプローブハウジングとの間に含まれてもよい。プローブ先端がハウジングと嵌合するフランジを含んでもよい。
【0046】
本発明の別の態様においては、サーモウェルの内面と熱的結合するようになされたプローブ先端を有するプローブハウジング;検知端およびコネクタ端を有する、ハウジング内の熱センサであって、検知端がプローブ先端に熱的に結合された熱センサ;および少なくとも3本のリード線を備え、リード線が電気信号を伝達することによって信号が温度および伝導率を判定するのに用いられる検知プローブが提供される。各種代替的実施形態においては、検知プローブは、ハウジングに取り付けられた伝導率センサを更に備えてもよく、伝導率情報を伝送するためにリード線のうちの少なくとも1本が伝導率センサに取り付けられている。
【0047】
上記検知プローブの各種代替的実施形態においては、熱センサとプローブ先端との間に熱エポキシが含まれてもよい。プローブ先端が、銅、鋼、または銀、銅、鋼およびステンレス鋼のうちの少なくとも一種を含む金属であってもよい。各種実施形態においては、ハウジングがプラスチックまたは金属であってもよい。ハウジングが、プローブハウジングの周りに配設されたフランジを更に備えてもよく、ばねをフランジと併用してもよい。ハウジングが、一体化された可撓部材を含んでもよい。
【0048】
本発明の別の態様によると、センサ装置が記述されている。センサ装置は、プローブ先端を有するプローブハウジングを含む。更に、検知端およびコネクタ端を有する、ハウジング内の熱センサである。検知端がプローブ先端に熱的に結合されている。センサ装置は、少なくとも3本のリード線を更に含む。リード線は電気信号を伝達する。信号が温度および伝導率を判定するのに用いられる。
【0049】
本発明のこの態様の一部の実施形態は、所定の大きさと形状のサーモウェルを含む。サーモウェルがプローブと嵌合し、プローブ先端がサーモウェルに熱的結合されている。
【0050】
本発明の一態様によると、サーモウェルである。サーモウェルは、熱伝導性材料製の中空ハウジングを含む。ハウジングは外面と内面を有する。内面が検知プローブとの嵌合関係を形成するように所定の形状を有する。嵌合が内面を検知プローブと熱的に結合する。
【0051】
本発明のこの態様のある実施形態は、所定の体積の熱グリースをサーモウェルの内面上に含む。本発明の一態様によると、対象媒体の温度および伝導率を判定する方法が記載されている。方法は、温度および伝導率が判定できるようにサーモウェルと検知プローブを熱的に結合するステップ;温度信号および伝導率信号を検知プローブから少なくとも3本のリード線を通じて伝達するステップ;および信号を用いて温度および伝導率を判定するステップを含む。
【0052】
本発明の別の態様によると、流体管内の空気を検出する方法が記載されている。方法は、温度および伝導率が判定できるように流体管内に位置する少なくとも2つのサーモウェルを検知プローブに熱的に結合するステップ;伝導率信号を検知プローブから少なくとも3本のリード線を通じて伝達するステップ;各検知プローブについて伝導率を判定するステップ;各検知プローブからの伝導率の差を計算するステップ;および差が閾値を超えているかどうかを判定するステップを含む。
【0053】
本発明の別の態様によると、流体導管であって、導管を通る流体の温度を伝送することと伝導率検知を可能とすることの少なくとも一方を行うためのウェルを含む流体導管を備え、ウェルがセンサと相互接続するようになされている装置が提供される。
【0054】
各種代替的実施形態においては、装置は、ウェルの一部分が導管内の流体と接触するように、またはウェルのどの部分も導管内の流体と接触しないように構成されていてもよい。
流体導管は、プラスチックのチューブまたは金属のチューブを含んでもよい。
【0055】
ウェルおよび導管が、同じ材料から一体的に形成されてもよい。
【0056】
あるいは、例えばプレス嵌め接続、フレキシブルタブ、接着剤、超音波溶着、および保持プレートと締結具のうちの少なくとも一種を用いてウェルが流体導管に連結されてもよい。ウェルと流体導管との間にOリングが配設されてもよい。Oリングが、丸型断面、四角型断面およびX形断面のうちの1つを含んでもよい。ウェルが、Oリングの一部分を受容するための溝を含んでもよい。導管に接触しているウェルの一部分が、導管を変形させるために可撓であってもよく、かかる可撓性を与えるために複数の切り込みを含んでもよい。
【0057】
あるいは、ウェルが流体導管に埋め込まれていてもよく、例えば流体導管に挿入成形されていてもよい。
【0058】
ウェルおよび導管が異なる材料でできていてもよく、例えば、導管がプラスチックであり、ウェルが金属であってもよい。ウェルが、ウェルを導管に固定する助けとなる突起を含んでもよい。
【0059】
導管が、内表面と外表面であって、ウェルのセンサ端が外表面と面一である、外表面を超えて突出している、またはウェルのセンサ端が外表面より凹んでいるように内表面と外表面を有してもよい。
【0060】
本発明の別の態様によると、少なくとも1つのポンプ、および、導管を通る流体の温度を伝送することと伝導率検知を可能とすることの少なくとも一方を行うためのウェルを備え、ウェルがセンサと相互接続するようになされている流体圧送装置が提供される。各種代替的実施形態においては、少なくとも1つのポンプが少なくとも1つのポッドポンプを含んでもよく、ポッドポンプの対を含んでもよい。少なくとも1つのポンプとウェルがカセットに組み込まれていてもよい。
【0061】
本発明の別の態様によれば、上記タイプの検知プローブ、および上記タイプのウェルであって、熱検知および伝導率検知の少なくとも一方のために検知プローブと連通しているウェルを備える検知システムが提供される。
【0062】
本発明の一態様によれば、流体を加温または冷却する方法であって、
少なくとも1つの往復容積式ポンプであって、それぞれ
湾曲した堅固なチャンバ壁、
可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜、
堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流体を、(a)堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向、(b)圧送チャンバへ流入する低せん断流を供給する方向の少なくとも一方に方向づける入口、および、
堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流体を、(a)堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向、(b)圧送チャンバから流出する低せん断流を供給する方向の少なくとも一方に方向づける出口を有するポンプを提供すること;
熱交換器を提供すること;ならびに
流体を熱交換器に通すために流体を源から少なくとも1つの往復容積式ポンプを用いて圧送すること
を備える、方法が提供される。
【0063】
本発明の別の態様によれば、熱交換器システムに使用する使い捨てユニットであって、
少なくとも1つの往復容積式ポンプであって、それぞれ
湾曲した堅固なチャンバ壁;
可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜;
堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流体を、(a)堅固な、チャンバ壁に対して実質的に接線方向、(b)圧送チャンバへ流入する低せん断流を供給する方向の少なくとも一方に方向づける入口;および、
堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流体を、(a)堅固な、チャンバ壁に対して実質的に接線方向、(b)圧送チャンバから流出する低せん断流を供給する方向の少なくとも一方に方向づける出口を有するポンプ;ならびに
少なくとも1つのポンプと流体連通し熱交換器に受容されるようになされた熱交換器構成部品、
を備える使い捨てユニットが提供される。
【0064】
本発明の別の態様によれば、
使い捨てユニットの熱交換器構成部品を受容する熱交換器;
熱交換器構成部品を通して流体を圧送するために使い捨てユニットの少なくとも1つのポンプを動作させる気体圧式作動システム;および
気体圧式作動システムを制御する制御器
を備える熱交換器システムが提供される。
【0065】
一部の実施形態においては、使い捨てユニットは熱交換器システムの一部であると考えられてもよい。
【0066】
本発明の別の態様によれば、血液を、患者アクセス器具と血液を加温する熱交換器との間で移動させる方法であって、
往復容積式ポンプを提供すること;
患者アクセス器具とポンプとの間の第1の部分を有し、ポンプと熱交換器との間の第2の部分を有する流管を提供すること;
流管の第1の部分および第2の部分それぞれに流管の一方向のみの流れを可能とする弁を提供すること;および
患者アクセス器具と熱交換器との間に血液の流れを生じさせるためにポンプを作動させること
を備える方法が提供される。
【0067】
本発明の別の態様によれば、体外温熱治療用システムであって、
血液を加温する熱交換器;
患者アクセス器具と熱交換器との間で血液を移動する往復容積式ポンプであって、入口管と出口管を有するポンプ;
入口管内に位置し、ポンプから流出する血液の流れを防止する第1の弁;および
出口管内に位置し、ポンプへ流入する血液の流れを防止する第2の弁
を備えるシステムが提供される。
【0068】
本発明の別の態様によれば、温熱処置のために体外の血液を加温する熱交換器であって、上記請求項のいずれか一項に記載のポンプを備え、
未加温血液用の入口と加温血液用の出口を有する熱交換流路;
電力を血液が吸収する熱に変換する電気熱変換器;
入口に位置し、熱交換器に流入する血液の温度を測定する第1の温度センサ;
出口に位置し、熱交換器から流出する血液の温度を測定する第2の温度センサ;
熱交換器を通過している血液の流量を測定する計測システム;および
変換器、第1および第2の温度センサおよび計測システムと連通する制御器であって、変換器によって使用されている電力量に関する情報を受信し、第1および第2の温度センサから温度情報を受信し、計測システムから流量情報を受信し、故障状態が存在するかどうか判定するために受信した情報を分析し、故障状態が検出された場合には信号を発する制御器を更に含む熱交換器が提供される。
【0069】
本発明の別の態様によれば、温熱処置のために体外の血液を加温する熱交換器であって
未加温血液用の入口;
加温血液用の出口;
入口から出口への流路;
流路に重なっており、第1および第2の加温素子を少なくとも含む加温素子のセットであって、第2の加温素子が出口近くの流路近傍に位置し、第1の加温素子が第2の加温素子の上流側の地点の流路近傍に位置する加温素子のセット;
第1の加温素子の上流側の流路近傍に位置する第1の温度センサ;
第1および第2の加温素子の間の流路近傍に位置する第2の温度センサ;および
第1および第2の温度センサから温度情報を受信し、第1および第2のセンサによって測定されている温度差が限界を超えた場合に信号を発する制御器
を備える熱交換器が提供される。
【0070】
本発明の別の態様によれば、温熱処置のために体外の血液を加温する熱交換器であって
未加温血液用の入口;
加温血液用の出口;
入口から出口への流路;
流路に重なっており、第1、第2および第3の加温素子を少なくとも含む加温素子のセットであって、第3の加温素子が出口近くの流路近傍に位置し、第2の加温素子が第3の加温素子に先立つ地点の流路近傍に位置し、第1の加温素子が第2の加温素子に先立つ地点の流路近傍に位置する加温素子のセット;
第1および第2の加温素子の間の流路近傍に位置する第1の温度センサ;
第2および第3の加温素子の間の流路近傍に位置する第2の温度センサ;および
第1および第2の温度センサから温度情報を受信し、第1および第2のセンサによって測定されている温度差が限界を超えた場合に信号を発する制御器
を備える熱交換器が提供される。
【0071】
本発明の別の態様によれば、温熱処置のために体外の血液を加温する熱交換器であって
未加温血液用の入口;
加温血液用の出口;
電力を血液が吸収する熱に変換する電気熱変換器;
入口に位置し、熱交換器に流入する血液の温度を測定する第1の温度センサ;
出口に位置し、熱交換器から流出する血液の温度を測定する第2の温度センサ;
熱交換器を通過している血液の流量を測定する計測システム;および
変換器、第1および第2の温度センサおよび計測システムと連通する制御器であって、変換器によって使用されている電力量に関する情報を受信し、第1および第2の温度センサから温度情報を受信し、計測システムから流量情報を受信し、故障状態が存在するかどうか判定するために受信した情報を分析し、故障状態が検出された場合には信号を発する制御器
を備える熱交換器が提供される。
【0072】
本発明の別の態様によれば、温熱処置のために体外の血液を加温する熱交換器であって
未加温血液用の入口;
加温血液用の出口;
電力を血液が吸収する熱に変換する電気熱変換器;
入口から出口への血液の流路を内包し、主として熱可塑性材料でできている使い捨てユニット;
流路サーモウェル内の血液と変換器との間の抵抗を測定する導電率センサ;および
導電率センサと連通し、測定された抵抗が安全パラメータを満たさない場合には信号を発する制御器
を備える熱交換器が提供される。
【0073】
本発明の別の態様によれば、温熱処置のために体外の血液を加温する熱交換器であって
未加温血液用の入口、
加温血液用の出口、および
入口から出口への血液の流路
を有する使い捨てユニット;ならびに
流路内の血液を加温する加温器であって、加温器は、使い捨てユニットの第1側に熱を伝える第1の熱伝導性のプレート、および使い捨てユニットの第1のプレートと反対側の第2側に熱を伝える第2の熱伝導性のプレートを含み、第1および第2のプレートが制御器によって作動され次第使い捨て器具から血液を押し出すために互いに押し合うようになされている、加温器を有するベースユニット
を備える熱交換器が提供される。
【0074】
本発明の別の態様によれば、患者温度を監視する温度プローブを位置づける方法であって、
患者の体の第1の場所に位置づけられる第1の温度プローブから温度示度を読み取ること;
患者の体の第2の場所に位置づけられる第2の温度プローブから温度示度を読み取ること;
第1および第2のプローブからの温度示度を比較すること;
第1および第2の温度プローブを患者の体に位置決めすること;
第1の場所または第2の場所からの温度示度があらかじめ設定した限界を上回っているかどうか判定すること;および
第1のプローブからの温度示度が第2のプローブからの温度示度からあらかじめ設定した範囲内にある場合であって、第1または第2の場所からの示度があらかじめ設定した限界を上回っている場合に配置信号を発することを備える方法が提供される。
【0075】
本発明の別の態様によれば、加温処置を患者に提供する方法であって、
患者からの血液を加温し加温血液を患者に圧送する熱交換器システムを提供すること;
患者から熱交換器システムへ第1の温度プローブを接続し、熱交換器システムが第1の温度プローブから受信した温度情報に基づいて血液の加温および圧送を制御し、第1の温度プローブから受信した温度情報をオペレータに表示すること;
オペレータによって別の第2の温度プローブを用いて患者温度を監視すること;および
温度プローブのどちらかが許容できない温度示度を伝達した場合に処置を終了することを備える方法が提供される。
【0076】
本発明の一部の実施形態においては、圧送されている流体に対するせん断を減少させ、血液(特に加温血液)を圧送するのに使用されたときには、溶血を減少させるポンプポッド形態が提供される。
【0077】
本発明の一実施形態においては、往復容積式ポンプが、半球状である堅固なチャンバ壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、圧送チャンバへ流入する低せん断流を供給する方向に方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、圧送チャンバから流出する低せん断流を供給する方向に方向づける出口を備えている。
【0078】
本発明の一実施形態においては、堅固な半球状のチャンバ壁;可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜;堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける入口;および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける出口を備えた往復容積式ポンプが提供される。ある実施形態においては、往復容積式ポンプは、膜の動きを制限し圧送チャンバの最大容積を制限する堅固な制限構造を更に含み、可撓膜および堅固な制限構造が作動チャンバを規定する。圧送チャンバが最大容積のときに、堅固なチャンバと可撓膜(堅固な制限構造に押し当てられる)とが球状容積として圧送チャンバを規定するように、堅固な制限構造が可撓膜の動きを制限するようになされてもよい。堅固な制限構造は、圧送チャンバが最小容積のときに可撓膜と共に球状の作動チャンバを規定する半球状制限壁であってもよい。
【0079】
ある種の実施形態においては、往復容積式ポンプは、正圧または負圧を間欠的に作動チャンバに供給する気体圧式作動システムを備えている。一部の実施形態において気体圧式作動システムが、正圧または負圧の気体を内包する貯留器;および作動チャンバと気体貯留器との間の気体の流れを制御する動弁機構を含む。往復容積式ポンプは、作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ、および作動チャンバ圧力トランスデューサから圧力情報を受信し、動弁機構を制御する制御器を備えていてもよい。ある種の実施形態においては、貯留器内の気体の圧力を測定する貯留器圧力トランスデューサが備えられ、制御器が、貯留器圧力トランスデューサから圧力情報を受信する。一部の実施形態において制御器が、作動チャンバ圧力トランスデューサおよび貯留器圧力トランスデューサのどちらかが誤動作しているかどうか判定するためにこれら圧力トランスデューサからの圧力情報を比較する。
【0080】
ある種の実施形態においては、気体圧式作動システムが、正圧と負圧を交互に作動チャンバに供給する。一配置構成において、気体圧式作動システムが、正圧気体貯留器、負圧気体貯留器、および作動チャンバと気体貯留器のそれぞれとの間の気体の流れを制御する動弁機構を含む。こうした実施形態においては、作動チャンバの圧力を測定する作動チャンバ圧力トランスデューサ、および作動チャンバ圧力トランスデューサから圧力情報を受信し、動弁機構を制御する制御器が更に備えられていてもよい。加えて、こうした実施形態は、正圧気体貯留器の圧力を測定する正圧貯留器圧力トランスデューサ、および負圧気体貯留器の圧力を測定する負圧貯留器圧力トランスデューサを更に含んでもよい。制御器が、これらトランスデューサから圧力情報を受信し、トランスデューサのいずれかが誤動作しているかどうかを判定するために圧力情報を分析する。制御器が更に、貯留器または複数の貯留器の圧力があらかじめ設定した限界を超えることがないよう、貯留器の圧力を制御する。
【0081】
ある種の実施形態においては、制御器が、動弁機構をディザリングさせ、作動チャンバ圧力トランスデューサからの圧力情報から、いつストロークが終了したかを判定する。更なる実施形態においては、制御器が、ストロークの開始時および終了時のそれぞれにおいて可撓膜を堅固なチャンバ壁または堅固な制限構造に到達させるために動弁機構を制御する。本実施形態においては、制御器が、ストローク数に基づいてポンプを通過する流れの量を判定することができる。加えて、制御器が、異常な流れの状態を検出する方式として、作動チャンバ圧力トランスデューサからの圧力情報を1ストローク期間に亘って積分してもよい(または、1ストローク中になされた仕事を判定する)。
【0082】
本発明の一部の実施形態においては、往復容積式ポンプは、ポンプから流出する流れを防止する入口弁およびポンプへ流入する流れを防止する出口弁を含む。一部の実施形態においては、これらの弁が単に受動逆止弁であり、他の実施形態においては、これらの弁が、流体を所望の方向に流すために制御されるアクティブ制御弁である。ある種の実施形態においては、ポンプは液体を圧送するようになされ、更なる実施形態においては、ポンプは、血液などの生体液体を圧送するようになされている。上記のように、本発明のある実施形態は、加温血液を圧送するよう適切になされている。
【0083】
ある種の実施形態においては、ポンプは、1つの入口管が両ポンプの入口に通じ1つの出口管が両ポンプの出口に通じるように組合わされる、または連動される。こうした実施形態においては、ポンプは、一方のポンプポッドの圧送チャンバが実質的に一杯のときに他方のポンプポッドの圧送チャンバが実質的に空になるように、位相をずらして動作させてもよい。
【0084】
本発明の実施形態は更に、血液を体外で加温する方法を提供する。一方法は、往復容積式ポンプを提供するステップ;患者アクセス器具とポンプとの間の第1の部分を有し、ポンプと熱交換器との間の第2の部分を有する流管を提供するステップ;流管の第1の部分および第2の部分それぞれに流管の一方向のみの流れを可能とする弁を提供するステップ;および患者アクセス器具と熱交換器との間に血液の流れを生じさせるためにポンプを作動させるステップを含む。ポンプが往復部材としての可撓膜を備えていてもよい。膜に正圧と負圧を交互に供給する気体圧式作動システムを備えていてもよい。本明細書に記述した各種構造のうちの一種を有するポンプをこれらの方法に用いてもよい。
【0085】
血液を体外で加温するある種の方法は、湾曲した堅固なチャンバ壁、可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜、堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける入口、および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける出口を有する往復容積式ポンプを提供するステップ;加温器を提供するステップ;源から血液を供給するステップ;ならびに血液が加温器を通って流れ加温されるように、往復容積式ポンプを用いて血液を圧送するステップを含む。ある種の実施形態においては、往復容積式ポンプは、本明細書で論じた構造的特徴を備えている。
【0086】
これらの方法のある種の実施形態は、患者の温度を監視するステップを含む。患者の温度を監視することが、患者の体内の第1の場所からの温度示度を読み取るステップ;患者の体内の第2の場所からの温度示度を読み取るステップ;第1および第2の場所からの温度示度を比較するステップ;第1の場所での温度示度が第2の場所での温度示度からあらかじめ設定した範囲内にない場合に、不正な温度示度であることを示す第1の警告信号を発するステップ;第1の場所からの温度示度があらかじめ設定した上限を上回っているかどうか判定するステップ;および示度があらかじめ設定した上限を上回っている場合に、過熱状態を示す第2の警告信号を発するステップを含んでもよい。
【0087】
本明細書に記述した方法は、血液を体外で加温するシステムに用いる使い捨てユニットを用いてもよい。こうした使い捨てユニットは、湾曲した堅固なチャンバ壁を有する往復容積式ポンプ、可撓膜および堅固なチャンバ壁が圧送チャンバを規定するように堅固なチャンバ壁に取り付けられた可撓膜、堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバへ流入する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける入口、および堅固なチャンバ壁を通過して圧送チャンバから流出する流れを、堅固なチャンバ壁に対して実質的に接線方向に方向づける出口、およびポンプと流体連通し加温器に受容されるようになされた熱交換器構成部品を含んでもよい。熱交換器構成部品が、中を通過する流体路を規定する可撓性のバッグを含んでもよい。往復容積式ポンプは、本明細書に記述した構造を有してもよい。
【0088】
使い捨てユニットは、容易に取り外しできる方式でベースユニットに取り付け可能であることが好ましく、ベースユニットは、好ましくは正圧または負圧を間欠的にポンプの作動チャンバに供給する気体圧式作動システムに取り付けるための手段を含み、好ましくは気体圧式作動システムを制御する制御器を含む。制御器が、好ましくは本明細書に記述した方法を実行するためにシステムを制御する。ベースユニットが、好ましくは拍出量の異なるポッドポンプを有する使い捨てユニットを受容し保持することができる。
【0089】
体外温熱治療用システムの一実施形態においては、血液を加温する熱交換器が備えられ;血液を患者アクセス器具(例えば、カニューレ、針またはシャント)と血液を加温する熱交換器との間で移動させる、入口管および出口管を有する往復容積式ポンプが備えられ;入口管内に位置し、ポンプから流出する血液の流れを防止する第1の弁が備えられ;および、出口管内に位置し、ポンプへ流入する血液の流れを防止する第2の弁が備えられる。
ポンプは、本明細書に記述した構造を有してもよい。
【0090】
ある特定の実施形態においては、往復容積式ポンプは可撓膜であって、膜が往復する際に膜のはじけるような移動を減らす材料でできた可撓膜を用いる。中央部分は、膜が最小圧送チャンバ容積位置にあるときに膜の中央部分を堅固なチャンバ壁から離間させるバンプを含んでもよい。こうしたバンプは、流体が膜と壁との間に閉じ込められてしまうことを防止する。
【0091】
ある特定の実施形態においては、制御器は、入口に位置し、熱交換器に流入する血液の温度を測定する第1の温度センサ、および出口に位置し、熱交換器から流出する血液の温度を測定する第2の温度センサから温度を受信し、その一方で熱交換器を通過している血液の流量を測定する計測システムから流量情報を受信する。これらの温度センサは、システムのベースユニット内に位置してもよく、一方、使い捨てユニット内の熱伝導性サーモウェルが流路とベースユニットのセンサとの間の連通を提供する。制御器は更に電気熱変換器と連通し、変換器によって使用されている電力量に関する情報を受信する。本実施形態においては、制御器は、故障状態が存在するかどうか判定するために温度プローブ、計測システムおよび変換器から受信した情報を分析し、故障状態が検出された場合には信号を発する。
【0092】
制御器は更に、熱交換器の加温プレート近傍の加温素子近くに搭載された温度センサから温度情報を受信する。この場合、電流が加温素子に加温プレートを加温させ、加温プレートが熱交換器を通過している血液を加温する。加温素子のセットが熱交換機を通っている流路に重なっていてもよい。加温素子のセットは、第1および第2の加温素子を少なくとも含み、第2の加温素子が出口近くの流路近傍に位置し、第1の加温素子が第2の加温素子の上流側の地点の流路近傍に位置する。第1の加温素子の上流側の流路近傍に第1の温度センサが位置する。第1および第2の加温素子の間の流路近傍に第2の温度センサが位置する。本実施形態においては、制御器は、第1および第2の温度センサから温度情報を受信し、第1および第2のセンサによって測定されている温度差が限界を超えた場合に信号を発する。当然、熱交換器は、ここで述べた2つの加温素子に加えて更に別の加温素子を使用してもよい。流路が、実質的に平面的な使い捨てユニットを通過していてもよい。
上記のように、熱交換器が、可撓性のバッグであってもよい。
【0093】
一実施形態においては単純に熱伝導性プレートである第一の加温プレートが、加温素子と使い捨てユニットとの間に位置していてもよい。第1の熱伝導性のプレートに対向して使い捨てユニットの近傍に第2の熱伝導性のプレートが位置していてもよい。第4、第5および第6の加温素子を少なくとも含む加温素子の第2のセットであって、第6の加温素子が出口近くの流路近傍に位置し、第5の加温素子が第6の加温素子に先立つ位置の流路近傍に位置し、第4の加温素子が第5の加温素子に先立つ位置の流路近傍に位置する加温素子のセットが、第2のプレートの使い捨てユニットの反対側に位置し流路に重なっていてもよい。本実施形態においては、第4および第5の加温素子の間の流路近傍に第3の温度センサが位置していてもよく、第5および第6の加温素子の間の流路近傍に第4の温度センサが位置していてもよい。制御器は更に、第3および第4の温度センサから温度情報を受信し、第3および第4のセンサによって測定されている温度差が限界を超えた場合に信号を発する。一実施形態においては、第1および第2のプレートが、制御器によって作動され次第、使い捨て器具から血液を押し出すために互いに押し合うようになされていてもよい。
【0094】
ある種の実施形態においては、先に述べたサーモウェルが更に導電性であって、システム内の漏れまたは空気を検出するのに使用されてもよい。熱交換器に受容されるようになされ、血液の流路を内包する使い捨てユニットは、主として熱可塑性材料でできていてもよい。入口および出口それぞれに位置するサーモウェルは、第1の温度センサと入口内の血液との間および第2の温度センサと出口内の血液との間の熱および電気伝導性を向上させるため、好ましくは金属である。典型的には、加温プレートはそれぞれ、サーモウェルとプレートとの間の抵抗を測定する導電率センサを含む。制御器は導電率センサと連通し、測定された抵抗が低すぎる(使い捨てユニット内の漏れを示唆する)場合および/または高すぎる(使い捨てユニット内の空気を示唆する)場合には信号を発する。
【0095】
ある種の実施形態においては、動弁システムが提供される。動弁システムは、弁カセットおよび制御カセットを含む。弁カセットは、複数の弁を内包し、各弁が動弁チャンバおよび作動チャンバを含み、各弁が作動チャンバ内の制御流体によって作動可能である。制御カセットは、ベースユニットからの制御流体との流体連通を提供する複数の流体インターフェースポートを有する。ポンプカセットと制御カセットの間に複数のチューブが伸びている。各チューブは、ベースユニットが1つの流体インターフェースポート内の制御流体を加圧することによって1つの弁を作動できるように、1つの流体インターフェースポートと少なくとも1つの作動チャンバとの間の流体連通を提供する。
【0096】
これら本発明の態様は排他的または包括的であるであることを意味するものではなく、以下の説明、添付の請求項、および付随の図面と併せて読めば、本発明の他の特徴、態様、および利点が可能であり、当業者にはそれらが容易に明らかになるであろう。
【0097】
本発明の上記の特徴は、添付の図面を参照してなされる以下の詳細な説明を参照することによって容易に理解されるであろう。
【0098】
なお、添付の図面およびそこに示された要素は、必ずしも同じ縮尺または正確な縮尺で描かれているわけではない。文脈が別様に示唆しない限り、同じ要素には同じ番号が付してある。
【発明を実施するための形態】
【0100】
定義。本明細書および添付の請求の範囲で用いる場合、以下の用語の意味は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、次に示す通りである。
「回転楕円体」とは、主軸の一方、すなわち、長軸または短軸周りに回転させた楕円に対応する三次元形状を意味し、三次元の卵形、偏球および長球、球、ならびにこれらに実質的に同等の形状を含む。
【0101】
「半回転楕円体」とは、概して回転楕円体のおよそ半分に相当する三次元形状を意味する。
【0102】
「球状」とは、概して球状を意味する。
【0103】
「半球状」とは、概して半球状を意味する。
【0104】
バルブを「ディザリングする」とは、バルブを急速に開閉することを意味する。
【0105】
「気体圧式」とは、可撓膜またはその他の部材を動かすために空気またはその他の気体を使うことを意味する。
【0106】
「実質的に接線方向」とは、接線に対して75°未満の角度をなすこと、または、平坦な壁の場合には、壁に対して75°未満の角度をなすことを意味する。
【0107】
「流体」とは、流管を通して圧送することのできる物体、例えば液体を意味するものとする。血液は流体の一具体例である。
【0108】
「インピーダンス」とは、流体の流れに対抗するものを意味するものとする。
【0109】
「患者」には、医学的処置の一部としてまたはその他の理由により、流体の圧送元または圧送先となる人間または動物が含まれる。
【0110】
「対象媒体」とは、検知プローブまたはサーモウェルに接触している流体、固体、液体または気体を含む任意の物質である。
【0111】
以下、本発明の各種態様を、各種例示的実施形態を参照して説明する。ただし、見出しは便宜上加えたものであって、決して本発明を制限するものではない。
【0112】
1. 例示的な往復容積式ポンプ
本発明の実施形態は、一般に、生体液(例えば、血液または腹水)、治療液(例えば、薬剤溶液)、または界面活性剤液などの流体を圧送するために使用されるある種の往復容積式ポンプ(以下、「ポッド」、「ポンプポッド」または「ポッドポンプ」と呼ぶことがある)に関する。ある種の実施形態は特に、流体が入口から出口へ圧送される際に流体に低せん断力および低乱流を付与するように構成されている。このような実施形態は、そうしたせん断力によって損傷を受けるおそれのある流体(例えば、血液、特に溶血しやすい加温血液)または乱流によって損傷を受けるおそれのある流体(例えば、乱流の存在下で発泡するもしくは損傷を受ける、または不安定になるおそれのある界面活性剤またはその他の流体)を圧送する際に特に有用になり得る。
【0113】
一般的に、ポッドポンプはモジュール式ポンプ装置である。ポッドポンプは、対象流体の移動を実現するために、流路、管または流体容器を含むがこれに限らない任意の対象流体(すなわち、液体、気体またはその変種)源に接続することができる。ある実施形態においては多数のポッドポンプが使用されているが、他の実施形態では1つのポッドポンプが使用されている。ポッドポンプは更に少なくとも1つの作動源に接続可能であり、一部の実施形態においては、作動源は少なくとも1つの空気チャンバである。
【0114】
ある実施形態において、ポッドポンプは任意の器具または機械にモジュール式に接続される。しかし、他の実施形態において、ポッドポンプは別の器具、機械または容器に取り付けられた器具、機械または容器の一部である。ポッドポンプはモジュール式であるが、任意の機械、器具、容器またはその他と相互作用する別のモジュール式構造の一部であってもよい。
【0115】
一実施形態において、ポッドポンプは、内部にダイヤフラムまたは可動の不透過性膜が取り付けられたハウジングを含む。ダイヤフラムは2つのチャンバを作り出す。一方のチャンバは、対象流体とは接触しない。このチャンバを、「作動チャンバ」と呼ぶ。他方のチャンバは、対象流体と接触する。このチャンバを「ポンプチャンバ」または「圧送チャンバ」と呼ぶ。
【0116】
一部の実施形態において、ポッドポンプは入口流体路および出口流体路を含む。従って、これらの実施形態においては、対象流体はポンプチャンバへと圧送され、そして、ポンプチャンバから圧送される。一部の実施形態においては、流体が意図した方向へ確実に流動するよう、動弁機構が用いられている。他の実施形態においては、入口流体路および出口流体路は同一である。
【0117】
ダイヤフラムの作動は、圧力の変化によってもたらされる。この圧力の変化は、正および負の空気圧を用いて生成することができる。一実施形態においては、作動チャンバを空気で満たし(正圧を生成し)、次いで作動チャンバから空気を吸い出す(負圧を生成する)ために、気体圧式機構が使用されている。一部の実施形態において、空気は作動チャンバ内のポートを通って流れる。このポートは、作動チャンバ内の開口または穴でよいが、これに限らない。他の実施形態においては、任意の流体(すなわち、液体、気体またはその変種)を作動流体として使用することができる。
【0118】
説明のため、例示的実施形態を示し、記述する。しかしながら、他の実施形態も考えられ、従って、与えられた説明はポッドポンプの実施形態について理解を促すためのものであり、他の変形例も明らかになるであろう。
【0119】
1.1. 例示的なポンプポッド構成
図3は、本発明の例示的実施形態による往復容積式ポンプ25を示す。本実施形態において、往復容積式ポンプ25は基本的に、大型の圧送システムの一構成要素として使用し得る自己完結型ユニット(以下、「ポッド」と呼ぶことがある)である。往復容積式ポンプ25は、例えば、超音波溶着またはその他の技法によってポッド壁30のところで連結させた「上」部分(「圧送チャンバ壁」とも呼ぶ)31および「下」部分(「作動チャンバ壁」とも呼ぶ)32を含む。なお、「上」および「下」という用語は相対的なものであって、ここでは
図3に示す向きに関して便宜上用いたものである。ポッドが好ましくは(必ずではないが)球状の内部空洞を有するように、部分31と32はそれぞれ、好ましくは半球状(必ずではないが)の堅固な内部表面を有する。
【0120】
図3に示す実施形態において、作動チャンバ壁32は単体構造であるが、圧送チャンバ壁31は、周囲2052に沿って、例えば、超音波溶着またはその他の技法によって連結させた2つの半体で形成されている(これが、後に論じる一体型弁の組立てを容易にする)。
図37は、本発明の例示的実施形態による3つのポンプポッド壁部位の分解図を示す。
図38Aは、3つの部品でできたポンプポッドの組み立て後の上面図を示す。
図38Bは、3つの部品でできたポンプポッドの組み立て後の垂直断面図を示す。
図39は、ポンプポッドの構成部品の分解図を示す。
図37〜39は、後に更に詳細に論じる。当然、圧送チャンバ壁31と作動チャンバ壁32との超音波溶着は好ましい実施形態であると考えられるが、本発明は、決して圧送チャンバ壁31および作動チャンバ壁32が構築または組立てられる方式に限られるものではない。
【0121】
往復容積式ポンプ25の内部では、可撓膜33(「ポンプダイヤフラム」とも呼ぶ)が圧送チャンバ壁31と作動チャンバ壁32が接する部分に(すなわち、ポッド壁30のところに)搭載されている。ポンプダイヤフラム33は、内部空洞を可変容積圧送チャンバ(圧送チャンバ壁31の堅固な内部表面と膜33の上表面によって規定される)と、相補的な可変容積作動チャンバ(作動チャンバ壁32の堅固な内部表面と膜33の下面によって規定される)とに効果的に分割する。上部分31は、流体入口34および流体出口37を含み、これらはどちらも圧送チャンバと流体連通している。下部分32は、作動チャンバと流体連通している気体圧インターフェース38を含む。以下でより詳細に論じるように、膜33は、気体圧インターフェース38に負および正の気体圧を交互に加えることによって、空洞内部で前後に動かすことができる。
図3に示す実施形態において膜33が前後に往復しても、圧送チャンバと作動チャンバの容積の合計は一定のままである。
【0122】
通常の流体圧送動作中、負の気体圧を気体圧インターフェース38に加えることは、圧送チャンバを拡張させて入口34を通じて流体を圧送チャンバへ吸引するように、膜33を作動チャンバ壁32側に引く傾向である。一方、正の気体圧を気体圧インターフェース38に加えることは、圧送チャンバを縮小させて圧送チャンバ内の流体を出口37を通じて吐出するように、膜33を圧送チャンバ壁31側に押す傾向にある。こうした圧送動作中は、圧送チャンバ壁31および作動チャンバ壁32の内部表面が、膜33が前後に往復するときの膜33の動きを制限する。
図3に示す実施形態においては、圧送チャンバ壁31および作動チャンバ壁32の内部表面は堅固、平滑、かつ半球状である。堅固な作動チャンバ壁32に代えて、代替的な堅固な制限構造−例えば、気体圧を供給するのに用いられるベゼルの一部分および/または一組のリブ−を圧送チャンバが最大値に近づく際の膜の動きを制限するのに使用し得る。ベゼルとリブの構造は、2003年10月30日出願、米国特許出願公開第2005/0095154号(代理人整理番号1062/D75)にて公開の米国特許出願第10/697,450号、「気体圧式制御用ベゼル組立体(BEZEL ASSEMBLY FOR PNEUMATIC CONTROL)」、および、2004年10月29日出願、国際公開第2005/044435号(代理人整理番号1062/D71WO)にて公開の関連国際出願PCT/US2004/035952号、「気体圧式制御用ベゼル組立体(BEZEL ASSEMBLY FOR PNEUMATIC CONTROL)」に一般的に記載されており、両者とも参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる。従って、堅固な制限構造−例えば堅固な作動チャンバ壁32、ベゼルまたは一組のリブなど−が、圧送チャンバが最大値のときに膜33の形状を規定する。好ましい実施形態においては、圧送チャンバの容積が最大の時に膜33(堅固な制限構造に押し当てられたとき)と圧送チャンバ壁31の堅固な内部表面が球状の圧送チャンバの容積を規定する。
【0123】
従って、
図3に示す実施形態においては、膜33の動きは、圧送チャンバ壁31と作動チャンバ壁32によって制限される。気体圧ポート38を通じて供給される正または負の加圧が十分強い限り、膜33は作動チャンバ壁32によって制限される位置から圧送チャンバ壁31によって制限される位置まで動く。膜が作動チャンバ壁32に押しつけられるときは、膜と圧送チャンバ壁31が圧送チャンバの最大容積を規定する。膜が圧送チャンバ壁31に押しつけられるとき、圧送チャンバの容積は最小である。
【0124】
好ましい実施形態においては、圧送チャンバの容積が最大のときに圧送チャンバが回転楕円体形状を有するように、圧送チャンバ壁31と作動チャンバ壁32は、両方とも半回転楕円体形状を有する。より好ましくは、圧送チャンバの容積が最大のときに圧送チャンバが球状形状を有するように、圧送チャンバ壁31と作動チャンバ壁32は両方とも半球状形状を有している。容積最大時に回転楕円体形状−特に球状形状−になる圧送チャンバを使用することにより、圧送チャンバ全体に循環流を実現し得る。こうした形状は、結果的に圧送チャンバ内の流体が停滞する領域を防ぐ傾向がある。以下で更に詳細に論じるように、入口34および出口37の向き−それぞれ圧送チャンバ壁31の内部表面に対して実質的に接線方向である−もまた、圧送チャンバにおける流体の循環を促進し、流体が停滞する領域が形成される可能性を低くする傾向がある。更に、他の容積形状と比較して、球状形状(一般には回転楕円体形状)は、流体が圧送チャンバに流入し、圧送チャンバに内を循環し、圧送チャンバから流出する際にせん断および乱流を生じにくい。
【0125】
1.2. 例示的な入口弁/出口弁
一般的に、上記のタイプの往復容積式ポンプは、ポンプを通る流体流を制御するための各種弁を含んでもよく、または弁と併用してもよい。従って、例えば、往復容積式ポンプは、入口弁および/または出口弁を含んでもよく、または入口弁および/または出口弁と併用してもよい。弁は、受動式でも能動式でもよい。
図3に示す例示的実施形態においては、往復容積式ポンプ25は、受動一方向入口逆止弁35および受動一方向出口逆止弁36を含む。入口逆止弁35は、流体が入口34を通じて圧送チャンバに吸引されることを可能にするが、入口34での逆流を実質的に防止する。出口逆止弁36は、流体が圧送チャンバから出口37を通じて圧送されることを許容するが、出口37での逆流を実質的に防止する。
【0126】
従って、往復容積式ポンプ25を用いた例示的実施形態においては、膜33は、作動チャンバを圧力作動システムに接続する気体圧ポート38を通じて供給される気体の正または負の加圧によって前後に押される。その結果生じる膜33の往復運動が液体を入口34から圧送チャンバへと引き込み(液体が出口37から圧送チャンバへと吸い戻されるのを出口逆止弁36が防止する)、そして出口37を通じて圧送チャンバから液体を押し出す(液体が入口34へと押し戻されるのを入口逆止弁35が防止する)。
【0127】
代替的実施形態においては、受動逆止弁35および36に代えて能動弁を使用してもよい。能動弁は、流れを所望の方向へ導くような方式で制御器によって作動させてもよい。一般に、このような配置構成は、制御器がポンプポッド25を通過する両方向の流れを生じさせることを可能とする。典型的なシステムにおいて、正常時には流れは第1の方向、例えば、入口から出口へ向かう方向である。場合によっては、流れは逆方向、例えば、出口から入口へ向かわせ得る。このような流れの逆転は、例えば、ポンプをプライミングする間、異常な管状態(例えば、管の閉塞、閉鎖、はずれ、または漏れ)をチェックする場合、または異常な管状態を改善する(例えば、閉鎖を除去しようとする)場合に用いてもよい。
【0128】
1.3. 例示的なポンプ入口/出口の向き
図3に示す実施形態において、入口34および出口37は、圧送チャンバ壁31の内部表面に対して実質的に接線方向の角度で流体を圧送チャンバに流入出させるように向きが決められている。従って、入口34を通って圧送チャンバに向かう流体は、圧送チャンバの容積が最大となる位置に膜が近づく際でも膜33に対して垂直になることが避けられる。
この入口34および出口37の向きは、一般に圧送される流体に対して相当な応力を加える遠心ポンプと比較すると、圧送される液体に対するせん断力を減少させやすい。
【0129】
入口34および出口37の互いに対する向きもまた、せん断流および乱流を減少させる傾向がある。圧送チャンバが最大容積に達するとき、流体が入口34を通って流れるのをやめても流体は圧送チャンバ内を循環しつづける。この循環流の方向は、入口34の方向と内部流動形態の結果である。一般的に、ごくわずかな停止の後、膜33は作動されて圧送チャンバの体積を減少させるために動き始め、流体が出口37を通って流れ始める。流体が圧送チャンバに流入するとき流体は回転流となって流動し、圧送チャンバから流出するまで回転し続ける。圧送チャンバから流出する流体は、回転流の外層から流体が回転している方向と同じ方向に剥離する。ポンプポッドの球状形状は特に、所望の循環流を実現するのに都合がよい。圧送チャンバ容積最大時における圧送チャンバ内の循環流に対する出口37の向きは、流れが出口37を通って押し出され始めるときに鋭角に方向を変えなくてもいいようになっている。流れの方向が鋭角に変化することを避けることにより、せん断および乱流が減少する。従って、入口34および出口37の互いに対する向きならびに内部流動形態が、圧送されている液体に対するせん断および乱流を減少させる。例えば、
図3において、入口34から直接出口37へ向かって伸びる流路の方向にはわずかな変化しかないが、その他の配置構成もポンプポッドが充填ストロークから吐出ストロークへと移行する際の方向の鋭角的な変化を減らすことができる。
【0130】
従って、圧送されている流体が全血の場合、遠心ポンプ(赤血球に相当な応力を加える)は大量の溶血を引き起こし、その結果患者の害になるほど患者のヘマトクリットを減少させるおそれがあるが、上記のタイプのポンプポッド(低いせん断力および乱流を加える)は、それよりも実質的に低度の溶血を生じさせる傾向がある。同様に、圧送されている流体が界面活性剤またはその他の発泡しやすい流体の場合も、ポッドポンプの低いせん断力および低い乱流が発泡を抑える傾向がある。
【0131】
図29は、本発明の例示的実施形態による
図3に示すポンプポッド25内を循環する流体流の概略図である。流体が入口を通って圧送チャンバに流入する際、入口の向きが、循環流を生じるように流体を圧送チャンバ壁の内面に対して接線方向に方向づける。流体が出口に近づく際には、出口から圧送されるときに急激に方向を変える必要がないように、流体は既に実質的に出口方向に流れている。従って、流体は循環流から層状に剥離して、流体には低いせん断力を加える。
【0132】
一般的に、低せん断および/または低乱流の付与のためには、入口および出口は、流体方向の鋭角的または急な変化を避けるように構成されることが望ましい。更に、入口および出口(およびポンプチャンバそれ自体も)は、バリや返りがないことが一般に望ましい。
入口および/または出口は、流体流の円滑な流出を促進するための曲線状の端縁を含んでもよい。
【0133】
1.4. 代替的なポンプ構成
図20は、本発明の代替的実施形態による、例えば大型流体制御カセットに組み入れ得る代替的なポンプポッド2025の断面図である。本実施形態において、ポンプポッドは3つの堅固な部品、すなわち、「上」プレート2091、中間プレート2092および「下」プレート2093(なお、「上」および「下」という用語は相対的なものであって、ここでは
図20に示す向きに関して便宜上用いたものである)から形成されている。上プレートおよび下プレート2091、2093は両側が平坦でもよいが、中間プレート2092は各種流体路、チャンバおよびポートを規定する通路、窪みおよび穴を備えている。ポンプポッド2025を形成するため、上プレーおよび下プレート2091、2093は、一体となって半回転楕円体状チャンバを規定する概して半回転楕円体状の部分を含んでもよい。
【0134】
膜2109がポンプポッドの中心空洞を、圧送すべき流体を受容するチャンバ(圧送チャンバ)と気体圧によってポンプを作動させる制御気体を受容するもう1つのチャンバ(作動チャンバ)とに分割する。入口2094は流体が圧送チャンバに流入することを可能にし、出口2095は流体が圧送チャンバから流出することを可能にする。入口2094および出口2095は、中間プレート2092と下プレート2093の間に形成されていてもよい。正の気体圧力によって膜2109をポンプポッドの空洞の一方の壁に押しつけて圧送チャンバの容積を(
図20に示すように)最小とする、または負の気体圧力によって膜をポンプポッドの空洞の他方の壁に向けて引き寄せて圧送チャンバの容積を最大にするため、気体圧が気体圧ポート2106を通じて供給される。
【0135】
膜2109は肉厚の周縁2088を備え、これは中間プレート2092の溝2089に緊密に保持されている。従って、上プレート2091を中間プレート2092に超音波溶着する前に膜2109を溝2089に配置し保持させることができるので、膜が2つのプレートを超音波溶着する妨げとならず、超音波溶着中の2つのプレートに依存せずに膜を正しく所定の位置に保持させることができる。従って、このポンプポッドは、非常に厳しい精度で行う必要がある超音波溶着に頼ることなく容易に製造することができる。
【0136】
1以上のポンプポッド2025を単一のカセットに組み入れてもよく、そのカセットも1以上の弁2000を含んでもよい。
図21は、上記のカセットの実施形態に使用し得る気体圧制御式の弁2000の断面図である。膜2090が中間プレート2092と共に動弁チャンバ2097を規定している。正の気体圧力によって膜2090を弁座2099に押しつけて弁を閉じる、または負の気体圧力によって膜を弁座から引き離して弁を開くため、気体圧が気体圧ポート2096を通じて供給される。制御気体チャンバ2098が膜2090、上プレート2091および中間プレート2092によって規定されている。中間プレート2092には窪みが形成され、そこに膜2090が配置されて膜の一方側に制御気体チャンバ2098が、他方側に動弁チャンバ2097が形成されている。
【0137】
気体圧ポート2096は、中間プレート2092の「上」表面に形成された通路と上プレート2091によって規定されている。カセット内の数個の動弁チャンバを流体連通させることにより、弁を連動させて、連動させた弁全てを単一の気体圧源によって同時に開閉させることができる。中間プレート2092の「下」表面に形成した通路と下プレートとで弁入口2094および弁出口2095を規定している。中間プレート2092を貫通させた穴が、入口2094と動弁チャンバ2097との間(弁座2099を通して)、および動弁チャンバと出口2095との間を連通させている。
【0138】
膜2090は肉厚の周縁2088を備え、これは中間プレート2092の溝2089に緊密に嵌まり込んでいる。従って、上プレート2091を中間プレート2092に超音波溶着する前に膜2090を溝2088に配置し保持させることができるので、膜が2つのプレートを超音波溶着する妨げとならず、更に、超音波溶着中の2つのプレートに依存せずに膜を正しく所定の位置に保持させることができる。従って、この弁は、非常に厳しい精度で行う必要がある超音波溶着に頼ることなく容易に製造することができる。
図21に示すように、上プレート2091は、膜2090が溝2089から離れる方向に押されすぎて膜の肉厚の周縁2088が溝2089から飛び出してしまうのを防ぐため、制御気体チャンバ2098内へ伸びる追加部分を含んでもよい。
【0139】
図30Aおよび30Bを参照すると、ポッドポンプ3000の一実施形態が示されている。本実施形態において、ポッドポンプ3000はハウジングを含む。
図30Bを参照すると、ハウジングは2つの部分3002、3004を含む。部分3002、3004は接合され、ダイヤフラム3006を保持している。
図30Aを参照すると、本実施形態で示すように、ハウジング部分3002、3004は、ネジで接合されている。しかしながら、代替的実施形態においては、スナップタブ、超音波溶着、レーザー溶着または当技術分野で周知のその他の組み立て手段を含むがこれに限らない任意の締結具または締結方法を用いることができる。
【0140】
図30Aおよび30Bの実施形態に示すように、ハウジングは2つの部分3002、3004によって形成されているが、他の実施形態(そのいくつかは以下に説明する)では、ハウジングは3つ以上の部分から形成されている。さらに別の実施形態においては、ハウジングは単一の部分である。
【0141】
実施形態によってハウジングの大きさが異なってもよい。大きさは、ポッドポンプの各ストロークで圧送しようとする対象流体の体積によって変えてもよい。大きさに影響し得るもう1つの要因は、ポッドポンプの望ましいアスペクト比である。
【0142】
更に、実施形態によって、ハウジングチャンバの形状が異なってもよい。従って、
図30Aおよび30B、ならびに本明細書の記載におけるその他多くの図面では実質的に球状のポッドポンプハウジングを記述し示しているが、ポッドポンプハウジングは、決して球状形状に限られるわけではない。
図42Aおよび42Bを参照すると、代替的なポッドポンプ4200の形状が示されている。従って、本明細書では二種類の形状のみを示したが、代替的実施形態においてポッドポンプハウジングは任意所望の形状にすることができる。
【0143】
図42Aおよび42Bを参照すると、ポッドポンプの代替的実施形態が示されている。本実施形態においては、ポッドポンプは楕円形状をしているが、更に別の実施形態においては、ポッドポンプは任意所望の形状にすることができる。ポッドポンプの実施形態の多くは、ポンプチャンバ、作動チャンバ、ダイヤフラム(または可動部材)、少なくとも1つの作動ポートおよび少なくとも1つの入口/出口ポートを有する。一部の実施形態においては、ポッドポンプは入口ポートおよび出口ポートを有する。本明細書では各種実施形態を説明し、当然ながら一実施形態に関して記述した特徴はどの実施形態にも利用できるものであり、従って実施形態の特徴は種々様々に組み合わせることができ、また、どの実施形態も本明細書で説明した特徴の1以上を含むことができる。
【0144】
再び
図30Aおよび30Bを参照すると、本実施形態で示すポッドポンプは実質的に球状である。本実施形態で示すように、ポンプハウジング(ポンプチャンバおよび作動チャンバを含む)は実質的に球状であるが、ポンプハウジングの周囲の突縁または外観は、完全な球状というわけではない。従って、ハウジングの外形はいかなる形状にもなり、一部の実施形態においては、ハウジングの外形はポンプハウジングとは形状が異なっている。しかしながら、一部の実施形態においては、外部ハウジングはポンプハウジングと同じまたは実質的に同じ形状である。
【0145】
ハウジング部分3002、3004は、接合されると中空のチャンバを形成する。ハウジングが単一部分である実施形態においては、ハウジングの内部が中空のチャンバである。
ダイヤフラム3006がハウジングの内部に接続または取り付けられている場合、ダイヤフラム3006がハウジングの内部を作動チャンバ3010とポンプチャンバ3012の2つのチャンバに分割する。一部の実施形態においては、ハウジングの内部は容積の等しい2つのチャンバに分割されているが、他の実施形態においては、2つのチャンバは容積が異なるチャンバである。
【0146】
ダイヤフラム3006は、対象流体に対する所望の耐久性と適合性を有する任意の可撓性材料でできていればよい。ダイヤフラム3006は、作動チャンバ3010に加えられる液体もしくは気体圧力、または真空に反応して撓み得る任意の材料で作ることができる。
ダイヤフラムの材料は、生物学的適合性、温度適合性、またはダイヤフラム3006によって圧送される、もしくはダイヤフラム3006の動きを容易にするためにチャンバに導入される可能性のある各種対象流体に対する適合性を考慮して選択してもよい。本例示的実施形態においては、ダイヤフラム3006は高伸長シリコーン製である。しかし、他の実施形態においては、ダイヤフラム3006は、シリコーン、ウレタン、ニトリル、EPDM(Ethylene Propylene Diene Methylene Linkage:エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、またはその他任意のゴムもしくはエラストマーを含むがこれに限らない任意のエラストマー、またはゴム製である。
【0147】
ダイヤフラム3006の形状は、多数の変数によって決まる。これらの変数には、チャンバの形状;チャンバの大きさ;対象流体特性;一ストローク当たりに圧送される対象流体の体積;およびダイヤフラム3006のハウジングへの取り付け手段または様態が含まれるが、これに限らない。ダイヤフラム3006の大きさは、多数の変数によって決まる。
これらの変数には、チャンバの形状;チャンバの大きさ;対象流体特性;一ストローク当たりに圧送される対象流体の体積;およびダイヤフラム3006のハウジングへの取り付け手段または様態が含まれるが、これに限らない。従って、これらまたはその他の変数に応じ、実施形態によってダイヤフラム3006の形状および大きさが異なってもよい。
【0148】
ダイヤフラム3006は任意の厚さにできる。しかし、一部の実施形態において、厚さの範囲は0.0508mm(0.002インチ)から3.175mm(0.125インチ)である。ダイヤフラムに用いられる材料によって望ましい厚さは異なってもよい。一実施形態においては、0.381mm(0.015インチ)から0.127mm(0.050インチ)の厚さの高伸長シリコーンが使用されている。
【0149】
本例示的実施形態においては、ダイヤフラム3006は、ダイヤフラム3006の領域の少なくとも一部に実質的ドーム型の形状を含むよう、あらかじめ形成される。ドーム型形状ダイヤフラム3006の一実施形態が、
図35Aに3514として示されている。先と同様、ドームの寸法は上記の変数のいくつか、またはその他の変数に基づいて変わってもよい。しかし、他の実施形態においては、ダイヤフラム3006はあらかじめ形成されたドーム形状を含んでいなくてもよい。
【0150】
本例示的実施形態においては、ダイヤフラム3006のドームは圧縮成形を用いて形成される。しかし、他の実施形態においては、ドームは射出成形を用いて形成してもよい。
【0151】
代替的実施形態においては、ダイヤフラム3006は作動されるまでは実質的に平坦である。他の実施形態においては、ドームの大きさ、幅または高さが異なっていてもよい。
【0152】
各種実施形態において、ダイヤフラム3006は各種手段および方法で所定位置に保持されてよい。一実施形態において、ダイヤフラム3006はハウジングの部分と部分との間に圧着され、これらの実施形態の一部においては、ハウジングの周縁がダイヤフラム3006を把持する機構部を含んでもよい。本実施形態の別の場合は、ダイヤフラム3006は、少なくとも1本のボルトまたはその他の器具を用いてハウジングに圧着されている。
別の実施形態においては、ダイヤフラム3006はプラスチックの部品を用いて重ね成形され、そのプラスチックが溶着またはその他の方法でハウジングに取り付けられている。
別の実施形態において、ダイヤフラムは中間部分(図示せず。
図33A〜34Bに関して以下に記載)および作動ハウジング部分に固着されている。ダイヤフラム3006をハウジングに取り付けるための一部の実施形態を説明したが、ダイヤフラム3006をハウジングに取り付ける任意の方法または手段を用いることができる。一代替的実施形態においては、ダイヤフラム3006は取り付け個所3018がハウジングの部分の1つに直接取り付けられている。
【0153】
図30Bに示す実施形態において、ダイヤフラム3006は、上記の実施形態の一種または別の取り付け方法を用いて取り付け個所3018がハウジングの内部の所定の位置に保持されている。取り付け個所3018は、ハウジングの2つの部分3002、3004が接する個所でダイヤフラム3006が2つの部分3002、3004の間に保持されている領域である。一部の実施形態においては、ダイヤフラム3006は、取り付け個所3018がその他の領域よりも厚くなっている。一部の実施形態においては、厚さの大きい領域はガスケットであり、一部の実施形態においてはOリング、リング、またはその他任意の形状のガスケットである。
図35Aを参照すると、ガスケット3520を備えたダイヤフラム3514の実施形態が示されている。これらの実施形態においては、ガスケット3520はハウジングに接続している個所である。
【0154】
ガスケット3520のある実施形態において、ガスケット3520はダイヤフラム3514と連続している。しかし、他の実施形態においては、ガスケット3520はダイヤフラム3514とは別体である。一部の実施形態において、ガスケット3520はダイヤフラム3514と同じ材料でできている。しかし、他の実施形態においては、ガスケット3520は、ダイヤフラム3514とは異なる材料でできている。ある実施形態において、ガスケット3520はダイヤフラム3514の周りにリングを重ね成形することによって形成される。ガスケット3520は、ポッドポンプハウジングの実施形態を補完するために望まれるいかなる形状のリングまたはシールにすることができる。ある実施形態において、ガスケット3520は圧縮型ガスケットである。
【0155】
ハウジングの内部は、対象流体用の少なくとも1つのポート(ポンプポート)および作動流体用の少なくとも1つのポート(作動ポート)を含む。
図30Bを参照すると、作動ポート3008およびポンプポート3014が示されている。
図30Bに示す実施形態は1つのポンプポート3014と1つの作動ポート3008を含んでいるが、他の実施形態(そのうちのいくつかは以下に説明する)においては、ポッドポンプは2つ以上のポンプポートおよび/または2つ以上の作動ポートを含む。
【0156】
更に
図30Bを参照すると、ポンプポート3014および作動ポート3008の場所は、実施形態によって異なってもよい。図示した実施形態においては、ポンプポート3014および作動ポート3008は、ポッドポンプ3000の一方側に位置している。他の実施形態においては、そのうちのいくつかは本明細書において示し説明するが、ポンプポートおよび作動ポートはポッドポンプ上の様々な場所にあり、同じ側の場合もあれば、別の側の場合もあって、2つ以上のポンプポートおよび/または2つ以上の作動ポートを有する実施形態においては、これらのポートの場所は全て異なっていてもよい。しかし、ほとんどの実施形態において、作動ポート(または、ある実施形態においては少なくとも1つの作動ポート)3008は、作動チャンバ3010と流体連通しており、ポンプポート(または、ある実施形態においては少なくとも1つのポンプポート)3014はポンプチャンバ3012と流体連通している。
【0157】
作動ポート3008は、液体または気体を作動チャンバ3010に添加するまたは作動チャンバ3010から除去するため、液体または気体圧力を液体または気体源と連通する。
液体または気体を作動チャンバ3010に添加または作動チャンバ3010から除去するとすぐ、圧送チャンバ3012の容積を増加または減少させるためにダイヤフラム3006が撓む。このダイヤフラム3006の撓む作用が対象流体をポンプポート3014へ流入するまたはポンプポート3014から流出する動きを生じさせる。
図30Bに示す実施形態においては、作動ポート3008および圧送ポート3014の両方が他の機器に取り付けまたは取り外しできるよう一列になっている。しかし、先に論じたように、これらのポートは、任意所望の様式で配向してよい。
【0158】
更に
図30Bを参照すると、図示した実施形態においては、Oリング3020が作動ポート3008および圧送ポート3014に位置している。しかし、他の実施形態においては、ポッドポンプ3000を他の機器に接続する他の手段、例えば、バーブコネクタ、クイック接続具、接着剤、クランプおよびその他の締結手段を用いてもよい。
図30Aを参照すると、一実施形態においては、ポッドポンプ3000を他の機器に締結しやすくするために柔軟タブ3016が備えられているが、代替的実施形態においては、それに加えてまたはそれとは別の位置づけ・締結機構部または手段を用いてもよい。更に別の実施形態においては、締結機構部はポッドポンプ3000上になくてもよい。
【0159】
ダイヤフラム3006の動きがポンプチャンバ3012の容積および作動チャンバ3010の容積を変化させる。作動チャンバ3010の容積が減少すると、ポンプチャンバ3012の容積が増加する。これが、ポンプチャンバ3012内に負圧を生じさせる。この負圧が対象流体をポンプチャンバ3012に流入させる。
【0160】
1以上の作動ポート3008を通じて作動チャンバ3010に流入する空気または液体によって作動チャンバ3010内に正圧が生じると、ポンプチャンバ3012の容積が減少し、ポンプチャンバ3012内に正圧を生じる。この正圧がポンプチャンバ3012から対象流体を、1以上のポンプポート3014を通して押し出す。1つのポンプポート3014が図示されているが、他の実施形態では2つ以上のポンプポートが含まれている。これらの実施形態の一部では、ポンプポートの1つが入口ポートで、ポンプポートの1つが出口ポートである。ポンプポートの場所、位置ならびに構成は、特定の意図した目的に応じて変わる、または変わってもよい。
【0161】
図31Aおよび31Bを参照すると、ポッドポンプ3100の別の実施形態が示されている。本実施形態においては、ハウジングは2つの部分3102、3104を含む。
図31Bを参照すると、ダイヤフラム3106は個所3116でハウジングの内部チャンバに接続されている。本実施形態においては、ダイヤフラム3106は、2つの部分3102、3104が接する位置でハウジングに接続されている。これによってダイヤフラム3106を挟んでダイヤフラム3106を保持している。
【0162】
ダイヤフラム3106はポッドポンプ3100ハウジングの内部を作動チャンバ3108およびポンプチャンバ3110の2つのチャンバに分割する。本実施形態においては、ポンプチャンバ3110は2つのポンプポート3114を含み、ポンプが作動されるときにはそのどちらが入口ポートまたは出口ポートとなってもよい。再び
図31Aおよび31Bを参照すると、ポッドポンプ3100は、ポンプポート3114および作動ポート3118への管材の取り付けに使用し得るバーブコネクタ3112を含む。各ポートの役割は、そのポートが取り付けられる他の機器の構成で決まる。本実施形態においては、管材の取り付け用にバーブコネクタ3112が備えられているが、他の取付方法も可能である。
【0163】
図32Aおよび32Bを参照すると、
図30Aおよび30Bに示すポッドポンプに類似の、ポッドポンプ3000の代替的実施形態が示されている。ただし、本実施形態においては、作動チャンバ3108に追加構成部品3202が含まれている。ある実施形態において、ポンプチャンバ3110にも追加構成部品3202が含まれていてもよく、他の実施形態においては、ポンプチャンバにのみ追加構成部品3202が含まれていてもよい。追加構成部品3202は、ダイヤフラム3006の運動を制限する、ダイヤフラムの3006の移動を鈍らせる、作動チャンバ3108に流入するもしくは作動チャンバ3108から流出する空気または気体をろ過する、またはポッドポンプ3000内の音もしくは振動を弱める働きをしてもよい。例えば、ポッドポンプ3000が流体管理システムに使用されるある実施形態においては、両チャンバ内の温度を同じにする時間を短縮するため、追加構成部品3202が両チャンバに存在してもよい。これらの実施形態の一部では、各追加構成部品3202は、網状プラスチック、織物タイプの材料、銅綿、発泡材料または他の材料を含んでもよく、空気または他の気体を平衡させるために表面積を大きくさせてもよい。ある実施形態においては、各追加構成部品3202は、流体管理システム(FMS:fluid management system)の一部であってもよく、流体管理システムのある種の測定、例えばダイヤフラム3006の1回のストロークの間にポンプチャンバを通じて圧送される対象流体の体積の測定または圧送チャンバ内の空気の検出を、例えば、米国特許第4,808,161号、4,826,482号、4,976,162号、5,088,515号および5,350,357号に記載された技術を用いて実行するのに用いてもよい。なお、これらはその全体が参照することによって本明細書に組み入れられる。追加構成部品3202は、完全にまたは部分的に作動チャンバポートを覆ってもよく、作動チャンバポートからは完全に離れていてもよい。
【0164】
これまで示した図では、ポッドポンプの各種実施形態、特性および特徴を説明し示してきた。この各種特性は、種々様々に組み合わせることができる、すなわち、どの特性もポッドポンプのどの実施形態にも加えることができる。図示した構成は例示用に過ぎず、ポートの場所、ポートの数、取り付け手段、ハウジングの大きさ、チャンバの大きさ等は、実施形態によって異なってもよい。以下に説明する図および実施形態は更に各種実施形態、特性および特徴を含み、その全てが本明細書に記載した実施形態で説明した特性および特徴のいずれとも「種々様々に組み合わせる」ことができる。
【0165】
図33Aおよび33Bを参照すると、ポンプチャンバカバー3302、作動チャンバカバー3304および中間プレート部分3306を備えた、ポッドポンプ3300の代替的実施形態が示されている。本実施形態においては、中間プレート3306および作動チャンバカバー3304がダイヤフラム3308および1以上の二次ダイヤフラム3310または3312を保持している。二次ダイヤフラムは、受動的に動作しても、気体、液体または機械力によって作動されてポンプチャンバカバー流体路3314を通る流体流を制御する能動弁として機能してもよい。ポッドポンプ3300の本実施形態においては、ポンプチャンバカバー3302内に流体路3314が形成されており、ダイヤフラム3308の位置に関係なく流体が流路3314を通って流れるようになっている。他の実施形態と同様に本実施形態においては、ポンプチャンバカバー3302、作動チャンバカバー3304および中間プレート3306は、一実施形態においてはプラスチック製だが、他の実施形態においては、金属またはガラスを含むがこれに限られない他の材料で作られていてもよい。本実施形態においては、ポンプチャンバカバー3302、作動チャンバカバー3304および中間プレート3306は、レーザー溶着で接合してもよく、または選択した構成部品材料および所望のポッドポンプの使途に適すると考えられる他の各種方法で接合してもよい。他に考えられる接合方法としては、スナップタブ、プレス嵌め、スナップ嵌め、溶剤結合、熱溶着、電磁圧接、抵抗溶着、RF溶着、ネジ、ボルト、超音波溶着、接着剤、使用時にポンプに接する構成部品による圧着、または当技術分野で一般に用いられているその他の接合方法が挙げられるが、これに限らない。
【0166】
図34Aおよび34Bを参照すると、ポッドポンプ3400の一実施形態が示されている。本実施形態においては、入口ポートおよび出口ポートは、ポンプチャンバ3406の両端に位置しており、ポンプの構成または使用目的に応じてどちらとしても使用可能である。ダイヤフラム3408がポンプチャンバ3406にほぼ完全に入り込んだ状態で示されている。本実施形態においては、入口ポートおよび出口ポート3402、3404は、作動チャンバ3410内の流体圧力によってダイヤフラム3408が完全に作動されたときに、ダイヤフラム3408によって部分的にまたは完全に遮断されてもよい。入口または出口ポートを閉鎖することは、ある種の用途では要求されることがあるように、ポンプチャンバ3406を通過する対象流体流を制限しまたは切り替える機能を果たし得る。本実施形態においては、ダイヤフラム3408の圧送側、すなわち、ダイヤフラム3408の対象流体に接触する側は平滑で、これは、ダイヤフラムが完全にポンプチャンバ3406に入り込んでいるときには、一部の対象流体に異なる流動特性を与え得る、または、入口ポートまたは出口ポート3402、3404を通過する流量の減少が望まれる場合にダイヤフラム3408とポンプチャンバ3406との異なる接触状態を与え得る。
【0167】
一部の実施形態においては、
図34Bに示すように、ダイヤフラムの断面厚は一様ではない。選択したダイヤフラム材料の強度、曲げ特性およびその他の特性を調整するために薄い、厚いまたは一様ではない厚さのダイヤフラムを使用してもよい。更に、ダイヤフラムを管理してダイヤフラムの一部領域を他の領域より容易に撓ませ、その結果圧送動作およびポンプチャンバ3406内の対象流体の流れの管理に役立つように、薄い、厚いまたは一様ではない厚さのダイヤフラムを使用してもよい。本実施形態のダイヤフラム3408は、中央付近が最も断面厚が大きく示してある。しかし、断面が一様ではないダイヤフラム3408を有する他の実施形態においては、最も厚い領域および最も薄い領域はダイヤフラム3408のどこにあってもよい。従って、例えば、他より断面厚の小さい部分がダイヤフラム3408の中央付近に位置していてもよく、他より断面厚の大きい部分がダイヤフラム3408の周囲に位置していてもよい。更に別の構成も可能である。
図35B〜Eを参照すると、平滑(
図35)、リング状(
図35E)、リブ状(
図35D)、ディンプルまたはドット状(
図35C)など、ダイヤフラム3408の作動側および/または圧送側の様々な場所に位置する一様ではない厚さおよび/または形態の各種表面実施形態を有するダイヤフラムの一実施形態が示されている。ダイヤフラムの一実施形態においては、ダイヤフラムは少なくとも一部位に接線方向の傾斜部を有するが、他の実施形態においては、ダイヤフラムは完全に平滑または実質的に平滑である。
【0168】
図35Aを参照すると、ポッドポンプ3500の例示的実施形態の描写分解図が示されている。この図はポートの一実施形態を示すが、例示的実施形態を
図37について以下に説明する。
【0169】
本実施形態において、ハウジングは3つの部位からできている。そのうちの2つの部分3502、3504を接合してポンプチャンバ3506(部分3502、3504を「ポンプチャンバ部分」と呼ぶ)を形成し得る。第三の部分3508(「作動チャンバ部分」と呼ぶ)が作動チャンバ3512、および流体圧力を作動チャンバ3512に連通するための作動ポート3510を含む。ポンプチャンバ部分3502、3504は、接合してポンプチャンバ組立体を形成してもよい。この組立体を作動チャンバ部分3508に接合してハウジングを形成してもよい。
【0170】
ダイヤフラム3514はハウジングの内部に接続されている。本例示的実施形態において、ダイヤフラム3514はポンプチャンバ3506と作動チャンバ3512に挟まれている。ダイヤフラム3514は、作動チャンバ3512をポンプチャンバ3506から分離する。
【0171】
本例示的実施形態において、ポンプチャンバ3506が2つの部分3502、3504でできている場合、これらの部分が成形品である場合は、この設計はバリまたは返りを最小限にし得る。従って、本実施形態において、ポンプチャンバは流体路内にバリがなく、穏やかな圧送環境を提供する。本実施形態はせん断に弱い対象流体への使用、および/またはデリケートな対象流体を圧送する場合に好都合となり得る。従ってバリまたは返りは避けなければならない。
【0172】
図35Aに示す例示的実施形態において、ポンプ3500は2つのポート3518、3516を有するように示されている。説明を簡単にするため、これらのポート3518、3516を「入口」ポートおよび「出口」ポートと呼ぶ。しかし、ポート3518、3516のどちらも入口ポートとして機能でき、同様にどちらも出口ポートとして機能できる。
ポンプ入口ポートおよびポンプ出口ポート3516、3518は端縁3520および3522のところがポンプチャンバ3506に接続している。一実施形態において、端縁3520、3522を伸縮式の中子を用いて成形した場合、端縁3520、3522は鋭角のまま残ってバリが避けられない。しかし、本例示的実施形態においては、ポンプは伸縮式の中子を使用せずに製造し得るため、端縁3520、3522はアールをつけ得る。よって、デリケートまたは影響を受けやすい対象流体を損傷するおそれのあるバリまたは返りを流路から排除できる。
【0173】
更に
図35Aを参照すると、本例示的実施形態に示したように、ポッドポンプ3500は、3つのハウジング部分3502、3504、3508およびダイヤフラム3514を含む。2つのハウジング部分3502、3504はポンプチャンバ3506部分と2つのポート3516、3518を形成している。第三の部分3508は作動チャンバ3512を形成している。ダイヤフラム3514はダイヤフラム突縁3520をハウジング部分の周縁3524で挟持することによってポンプチャンバ3506と作動チャンバ3512の間に取り付けられている。なお、ダイヤフラム突縁3520は一実施形態では一体のOリングであるが、他の実施形態では他の任意の形状のガスケットも可能である。
図35Aに示す実施形態において、ダイヤフラム3514は正接方向の端縁を有する。正接方向の端縁は、ダイヤフラム3514の形状が連続したドーム状でないところにある。従って、一部位においては、ダイヤフラムは正接方向の端縁によって示される円錐形を呈している。本実施形態では正接方向の端縁を図示したが、代替的実施形態においては、ダイヤフラムは、ディンプル状、リング状、線状突起状、リブ状、平滑、またはその他の一様ではない表面の1以上が含まれ得るがこれに限らない各種表面を含むことができる。
【0174】
先に論じたように、ポンプチャンバ3506およびポート3516、3518は2つのハウジング部分3502、3504によって形成されている。これらの部分3502、3504は
図36A〜36Cに関して以下に説明するように嵌め合わされている。
【0175】
図36Aおよび36Bを参照すると、
図35のポンプ3500を組み立てた場合の側面図と端面図が示されている。ここでは、ポンプチャンバ部分3502および3504ならびに作動チャンバ部分3508が接合されてダイヤフラム3514は隠れているので示していない。ポッドポンプハウジングの構成部品は、スナップタブ、プレス嵌め、スナップ嵌め、溶剤結合、熱溶着、電磁圧接、抵抗溶着、RF溶着、ネジ、ボルト、超音波溶着、接着剤、使用時にポンプに接する構成部品による圧着、または当技術分野で一般に用いられているその他の接合方法を含むがこれに限らない各種方法で接合してよい。
【0176】
図35A〜41Bに示す例示的実施形態においては、ポッドポンプ3500ハウジングは、超音波溶着される部分に特有の特徴をいくつか有する3つの部分を含む。これら3つの部分の設計は、これらの部分が超音波溶着によって接合されることを可能にする特徴を含むが、得られるポッドポンプは、超音波溶着の後にデリケートな対象流体を圧送する際、対象流体に結果として与える損傷を、与えるとしても最小限にすることができる。このハウジングの3つの部分と、組立のための特徴を以下に説明する。これらの実施形態は超音波溶着に関して記述しているが、当然ながらこれらの実施形態は、これに代えてレーザー溶着してもよく、スナップタブ、プレス嵌め、スナップ嵌め、溶剤結合、熱溶着、電磁圧接、抵抗溶着、RF溶着、ネジ、ボルト、接着剤、使用時にポンプに接する構成部品による圧着、または当技術分野で一般に用いられている方法を用いて接合してもよい。
【0177】
図36Cを参照すると、ポートの拡大図が示されている。これは、
図35Aに示す入口ポートまたは出口ポートである。本実施形態において、入口ポートおよび出口ポートはどちらとしても使用可能であり、同様の内部および外部形態を有する。ただし、場所は異なってもよい。
【0178】
本実施形態において、ハウジングの部分3502、3504は、接合されてポート3604を形成する。本実施形態において、ポンプチャンバ部分3502、3504は、エネルギディレクタ3602のところが超音波溶着によって接合されるように図示している。しかし、代替的実施形態においては、上記のような他の接合方法を用いることもできる。ハウジング部分3502、3504の接合個所であるゾーン3606は、ポート3604の流体路からエリア3608によって少なくとも部分的に隔てられている。エリア3608はハウジング部分3502、3504を接合した後に形成される。一実施形態においては、エリア3608は、流れに対する抵抗を増加させ、従ってエリア3608は、チャンバを通る主流よりも抵抗の大きい流路を作り出す。従って、エリア3608は流れ抑制エリアである。そのため、ハウジング部分同士が接するゾーン3606への流体流は減少させられる。この流れ抑制エリア3608は任意所望の大きさにできるが、図示した実施形態においては、流れ抑制エリア3608は、2つの部分間の距離が0.0254mm(0.001インチ)〜0.127mm(0.005インチ)の範囲、一部の実施形態では0.381mm(0.015インチ)〜0.508mm(0.020インチ)の範囲のところに作られている。ただし、エリア3608は任意所望の大きさにでき、流体の体積、チャンバの容積およびポンプ流量などを含むがこれに限らないいくつかの変数に応じて変わってもよい。多くの実施形態においては、エリア3608を作る2つの部分3502、3504の距離は、主流路の大きさまたは容積のうちのごくわずかである。他の実施形態においては、エリア3608は、エリア3606に向かう流体流に対して所望の抵抗となるような任意所望の大きさまたは容積を有する。
【0179】
代替的実施形態およびこれらの実施形態の一部においては、ポッドポンプ全体の容積に応じてエリア3608の範囲を大きくしても小さくしてもよい。流れ抑制エリア3608は、流体が流れ抑制エリア3608を横切って流れる場合にポート3604のもっと広い領域を流れる流体よりもずっと大きな抵抗を受けるようにする手段を提供する。流れ抑制エリア3608を流れてハウジング構成部品が接合されたゾーン3606に到達する流体が少なくなるので、ハウジング構成部品が接合されたエリア3606に存在するおそれのある返り、バリ、表面凹凸または表面不純物に接触する流体が少なくなる。このように各種接合方法に起因するバリ、返り、表面の凹凸その他の影響を避けることで、デリケートな、または影響を受けやすい対象流体の移送を、ある種の用途で求められるように穏やかに、かつより安全に行い得る。
【0180】
ポンプハウジング部分3502、3504の曲線状の端縁3612は、ポンプ3500を通過する対象の流体、液体または気体に対してとりわけデリケートな環境を提供する。
図36Cでは、流れ抑制エリア3608および曲線状の端縁3612は特定の場所に示してあるが、これらの特徴は、ポンプ内の任意所望の領域に存在させることができる。
【0181】
図37を参照すると、ポッドポンプの例示的実施形態が示されている。この図では、中に弁3712を有するポートが示されている。先と同様、図に示すように、ポッドポンプハウジングは3つの部分3702、3704、3706を有する。部分3702は、作動チャンバ3704、および他の2つのポンプハウジング部分3704、3706との組み立てのための位置合わせ機構部3706を有する。本実施形態では、ポンプハウジング部分3704、3706は、一方向弁を装着し得る領域3712を有する。ハウジング部分3702、3704、3706は、超音波溶着、レーザー溶着、スナップかみ合い機構部、ネジ、ボルト、接着剤または当技術分野で一般に用いられている他の接合方法によって接合してよい。
【0182】
本実施形態においては、リブを備えたダイヤフラム3714が示されている。しかし、代替的実施形態においては、ダイヤフラム3714は、上記のような一様ではない表面の1以上を含んでもよく、あるいは、平滑な表面でもよい。本明細書の種々の図面のそれぞれはダイヤフラムの一実施形態を示しているが、ダイヤフラムのどの実施形態もポッドポンプのどの実施形態とも併用し得る。
【0183】
図38Aおよび38Bを参照すると、ポッドポンプ3800の代替的実施形態が示されている。各種実施形態において、ポッドポンプ3800は、流体の圧送元および/または圧送先であるシステム、容器、その他に接続される。ある実施形態においては、流体は、管またはチューブを介してシステム、容器、その他へ/から圧送される。一実施形態において、流体は可撓性チューブを通して圧送される。いずれの場合も、これらの実施形態においては、管またはチューブはポッドポンプの入口ポートおよび出口ポート3814に接続される。しかし、代替的実施形態においては、流体を成形流体管を通して圧送してもよく、または、ポートを直接流体源または流体が圧送されているところに接続することができる。
【0184】
更に
図38Aおよび38Bを参照すると、ハウジングは、2つの部分ポンプチャンバハウジング3704、3706を含む
図37に示す設計と同様に、多数の部分からなる設計となっている。ただし、本実施形態においては、可撓性チューブ(図示せず)接続用にバーブホースコネクタ3802が示されている。他の実施形態においては、システムへの接続には他の手段を用いてもよい。この手段は、クイック接続具、プレス嵌め、入口ポートまたは出口ポートへのチューブの直接接着、または当技術分野で一般に用いられているその他の手段および方法を含むが、これに限らない。
【0185】
図38Bを参照すると、
図38Aに示す実施形態の断面図が示されている。本実施形態において、弁3816は、ハウジング部分(
図38Aでは3806、3804として示されている)のポート3814部分の内部に装着されている。弁3816は、作動チャンバ3810内の液体または気体圧力の変化によってダイヤフラム3808が作動される際にポンプチャンバ3818を流入出する対象流体流を制御する。本実施形態で示すように、弁3816はダックビル弁だが、他の実施形態においては、弁3816は、ボール逆止弁、フラッパ弁、ボルケーノ弁、アンブレラ弁、ポペット、被制御弁または当技術分野で用いられている他のタイプの弁を含むがこれに限らない任意の受動または能動弁が可能である。本実施形態においては、流体路3812がポンプチャンバ3818の最上部付近に位置しており、作動ポート3820を介して作動チャンバ3810に加えられた液体または気体圧力によってダイヤフラムが完全にポンプチャンバ3806に入り込んでいるときでもダイヤフラム3808に遮られない部分を有する。
【0186】
本実施形態で示したように、ダイヤフラム3808はリングを含むが、上記のように、ダイヤフラム3808はディンプル、リング、および/またはリブ、または他の任意の一様ではない部分を表面に含んでよく、一部の実施形態においては、表面に一様ではない部分を含まなくてもよい。このダイヤフラムの各種の実施形態は、ポッドポンプのどの実施形態でも使用できる。
【0187】
図39を参照すると、ポッドポンプ3900の一実施形態の分解描写図が示されている。
一部の実施形態においては、弁3902は、ポンプハウジング部分3906および3916の入口ポートおよびまたは出口ポートに装着してもよい。弁3902は、ダックビル弁、ボール逆止弁、フラッパ弁、ボルケーノ弁、アンブレラ弁、ポペット、被制御弁または流体流を制御する技術分野で用いられている他のタイプの弁を含むがこれに限らない任意の受動または能動弁でよい。ダイヤフラム3908は、ポンプチャンバハウジング部分3906、3916と作動ハウジング部分3910との間に取り付けられている。ダイヤフラム3908は、作動チャンバ3910に加えられた流体圧力または真空に反応して撓むほど十分に可撓性がありかつ耐久性のある任意の材料でできている。ダイヤフラム3908の材料は、特定の生物学的適合性、温度適合性または作動チャンバに導入される可能性のある各種気体または液体に対する適合性を考慮して選択してもよい。
【0188】
ダイヤフラム3908は、ポッドポンプハウジング構成部品3906、3916および3910の嵌合機構部内に位置するまたは締結される外径部付近に肉厚3912のリングを有していてもよい。ダイヤフラム3908の可動部分は、2つの表面を有する。説明のためこれらを「外部表面」および「内部表面」と呼ぶ。外部表面はポンプチャンバ表面であり、内部表面は作動チャンバ表面である。ダイヤフラムの可動部分のどちらの表面も、厚さは一様でも一様でなくてもよく、両表面は同じである必要はない。表面の各種実施形態は、
図35B〜Eに示されている。
【0189】
一方または両方の表面は、平滑でもよく、または周囲の表面より突出しているまたは凹んでいるディンプル、ドット、リング、リブ、溝またはバーを含むがこれに限らない1以上の特徴を含んでもよい。本実施形態においては、ダイヤフラムの外部表面にドット3914の配置構成が示されている。
【0190】
表面特徴またはそれがないことは、いくつかの機能を果たし得る。その1つが、流体がポンプチャンバを通過する空間を提供することである。もう1つの機能が、作動チャンバ内の液体または気体圧力によってダイヤフラムがポンプチャンバハウジングに押圧されたときに流体流がポンプチャンバを通過することを阻止することが望ましい用途の場合に、ダイヤフラムのポンプチャンバハウジングに対するシールに役立つことである。ダイヤフラムの表面によってはこれらの1以上の特徴を提供し、または別の機能または特徴を提供し得る。
【0191】
ダイヤフラムの外部または内部表面の形態は、ダイヤフラムのストロークの一方の終了時にダイヤフラムの動きを和らげるように機能し得る。ダイヤフラム上の形態がポンプチャンバ壁または作動チャンバ壁と接触すると、これらの特徴部分は動きを止めるが、特徴部分間のダイヤフラム材は動き続けて、圧送されている流体がポンプチャンバに流入するまたはポンプチャンバから流出する際に流体をなだらかに加速または減速させ得る。
【0192】
図40Aを参照すると、
図39に示す、多数の部分でできているポンプの部分3906および3916の描写図が示されている。説明目的に限ったことだが、多数の部品でできているポッドポンプハウジングのポンプ部分に使用し得る位置合わせ・接合機構部の関係を図示するため、ポンプハウジング部分3906および3916が、底と底を合わせた向きに示されている。本例示的実施形態においては、部分3906および3916は、二個所で位置合わせされ、接合される。ただし、他の実施形態においては、この機構部は異なっていてもよく、2つの部分の接合場所は異なっていてもよい。説明のため、位置合わせ・接合機構部の1つを
図40Bについて説明するが、当然ながら説明は一方についてのみだが、その詳細は両方に当てはまる。
【0193】
図40Bを参照すると、
図40Aの一領域の拡大描写図が示されている。ポンプハウジング部分3916は、ハウジング部分3906の上の相補形の位置合わせ溝4004と整列し得る位置合わせ機構部4002を有する。本実施形態では、位置合わせ機構部4002は、ハウジング部分3906および3916が超音波溶着で接合し得るように、エネルギディレクタ4006を含む。本実施形態では、ポンプハウジング3916の底部においてエネルギディレクタは削り下げられた領域4008と整列して位置している。ダイヤフラムが外周リングを含む実施形態においては、削り下げられた領域4008はダイヤフラム(図示せず)の外周リングを収容してもよい。
【0194】
削り下げられた領域4008はポンプハウジング部分3906において連続しているが、端縁4010として見えているだけである。超音波溶着を用いる本実施形態においては、エネルギディレクタ4006からのバリが組み立てと同時に端縁4010を超えて流れようとするかもしれない。エネルギディレクタ4006がダイヤフラムの外周リング(図示せず)と整列しているため、バリは、ダイヤフラム外周リングのシール面上のバリの存在に関わらず撓んでシールするダイヤフラムの外周リングに接することになる。代替的な接合方法、例えば、以下にかぎられないが、レーザー溶着、接着剤、ネジまたはその他の締結具を用いる場合、エネルギディレクタ4006は省略してもよく、位置合わせ機構部4002および4004の形態は図示した実施形態と異なってもよい。
【0195】
本実施形態では、これ以前および以降の図に示すように、ポンプハウジング構成部品3906および3916が作動ハウジング(図示せず)に接合される底部に至るまで接合できるようにこれらの方向を合わせるために、更に位置合わせ機構部4012およびエネルギディレクタ4014が存在している。
【0196】
図41Aを参照すると、部分的に組み立てたポッドポンプ4100の描写図が示されている。例示のため、ポンプハウジング3916の1つの部分、ダイヤフラム4102の可能な実施形態の一部分およびアクチュエータハウジング4104の一部分のみが示されている。
【0197】
図41Bを参照すると、
図41Aの一領域の拡大描写図が示されている。アクチュエータハウジング4104の本実施形態では、超音波溶着で接合するための2つのエネルギディレクタ4106および4108が示されているが、他の接合方法も可能である。本実施形態においては、エネルギディレクタ4108はポンプハウジング部分3916上のエネルギディレクタ4014と整列している。エネルギディレクタを本実施形態で示すように配列すると、一溶着部からのバリを他の超音波溶着部で確実に消費させることができ、3つのハウジング部分の間を確実にシールすることができる。なお、明確にするため、ハウジング部分の1つは図では除外されている。
【0198】
更に
図41Aおよび41Bを参照すると、ダイヤフラム4102の外周部分に対してエネルギディレクタ4006を位置合わせした状態が示されている。エネルギディレクタ4006をダイヤフラム4102に対してこのように位置合わせすると、超音波溶着によってエネルギディレクタ4006の領域で生じるどのバリもダイヤフラム4102の可撓性材料でシールさせることができる。
【0199】
ポッドポンプハウジングは、任意のプラスチック、金属、木材またはこれらの組み合わせを含む任意の材料で作ることができる。一例示的実施形態においては、ポッドポンプハウジングは医療グレードのポリカーボネート製である。別の例示的実施形態においては、ポッドポンプハウジングはポリスルホン製である。説明において詳細に述べたように、一部の実施形態では選択した材料の対象流体に対する適合性が、1つの要因となり得る。
【0200】
図42A〜42Dを参照すると、ポッドポンプ4200の代替的な形状の実施形態が示されている。本明細書において示した形状実施形態は、例示および説明用に過ぎない。代替的実施形態においては、当然ながらポッドポンプは任意所望の形状にできる。
【0201】
ポッドポンプハウジングは、射出成形、圧縮成形、鋳造、熱成形または機械加工を含むがこれに限らない数ある製造方法のうち、任意の方法を用いて製造することができる。ある実施形態において、例えば、ハウジングが機械加工された場合には、ハウジングは機械的な締結具または熱溶着で結合させてもよい。
【0202】
ポッドポンプハウジングの壁厚は、実施形態によって異なってもよい。無数の変数が壁厚を選択する際の要因となり得る。要因としては、用いたハウジングの材料、流体を圧送する圧力、チャンバの大きさ、ポッドポンプ全体の大きさ、使っている材料に応じて必要な強度、耐久性、組み立て方法、ポッドポンプが組み込まれて共に機能し得る器具、コストおよび製造期間などだが、これに限らない。ある実施形態においては、ポッドポンプの壁厚は一様ではない。
【0203】
各種実施形態においては、壁厚は0.127mm(0.005インチ)から任意の厚さの範囲である。「任意の厚さ」という用語を用いたのは、一部の実施形態においては、ポッドポンプが器具または機械に一体化されるからである。従って、ポッドポンプの壁は機械全体と同じ厚さにしてもよい。従って、場合によっては、壁厚は非常に大きくなる。本明細書で説明した例示的実施形態では、壁厚は、1.016mm(0.04インチ)から2.54mm(0.1インチ)の範囲である。他の実施形態においては、壁厚は1.524mm(0.06インチ)から2.032mm(0.08インチ)の範囲である。
【0204】
ポッドポンプの各種実施形態の材料の選択および製造方法は、いくつかの変数で決まり得る。例えば、耐久性、コスト、流体からの圧力、性能およびその他多くの変数である。ある実施形態においては、ポッドポンプハウジングおよびダイヤフラムは、何カ月または何年も持たせることを意図している。他の実施形態においては、ポッドポンプは一回使用の使い捨てを意図している。更に別の実施形態においては、ポッドポンプは、数時間、数日、数週間または数年持たせることを意図している。ある実施形態においては、ポッドポンプは一回使用の使い捨てを意図している場合でも、もっと長期、例えば、数日、数週間、数カ月または数年にわたって圧送できるように設計される。
【0205】
使い捨て器具の一実施形態では、ハウジングは薄いフィルムでできており、その材料としてはPETE(polyetylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)、PETG(glycol modified polyetylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート共重合体)およびPET(polyetylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)が挙げられるが、これに限らない。これらの実施形態においては、ハウジングは熱成形、例えば、真空または圧力成形してもよく、ダイヤフラムはハウジングに熱融着できる薄いプラスチックフィルムから形成される。ある実施形態においては、ハウジングは多層フィルムである。本実施形態は、ハウジングを別の構成部品に固着させる際に役に立つ。
【0206】
ポッドポンプは、他の器具、機械、容器その他に組み入れるおよび/または組み込む、または、他の器具、機械、容器その他と併用することが可能である。一部の実施形態においては、単一のポッドポンプが用いられている。しかし、他の実施形態においては、2つ以上のポッドポンプが用いられている。一部の実施形態においては、ポッドポンプは、更に機械、器具、容器、その他に一体化される、または取り付けられる器具に組み入れられる。本実施形態の一例が、一体化したポッドポンプ、流体路、流体ポート、作動ポートおよび作動流体路を有するカセットである。カセットの実施形態を二種類、
図43A〜43Cおよび44A〜44Bについて説明する。更に多くの実施形態も考えられる。説明のため、例示的実施形態および代替的実施形態を説明する。ただし、これらは例示に過ぎず、他の実施形態、ポッドポンプが2つより多いものまたは2つより少ないもの、異なる弁あるいは各種流路を用いているもの、更に別の容器または他の器具を組み入れているものなども考えられる。
【0207】
図43A〜43Cを参照すると、ポッドポンプカセット4300の一実施形態が示されている。
図43Aを参照すると、ポッドポンプカセットの本実施形態は、2つのポッドポンプ4310を含む。ポッドポンプ4310はどのポッドポンプの実施形態でも可能だが、本例示的実施形態においては、ポッドポンプ4310は、
図33A〜33Bに示したポッドポンプと同様である。カセット4300は、作動プレート4320、中間プレート4330および、ポンプチャンバプレート4340の3つのプレートを含む。
【0208】
作動プレート4320は、各ポッドポンプ4310に対して、ポッドポンプ作動チャンバハウジング4312部分、および2つの弁作動ハウジング4314部分を含む。弁作動ハウジング4314は、弁作動ポート4316を含む。一部の実施形態において、カセット4300は、ポッドポンプに加えて、更に別のポートおよび/または各種流体が圧送されて流入出する容器を内包してもよい。
【0209】
中間プレート4330は、各ポッドポンプに対してポンプダイヤフラム4332、および2つの弁ダイヤフラム4334を含む。図示した実施形態においては、弁は、本実施形態では圧搾空気である流体によって作動されるダイヤフラム4334によって作動される、ボルケーノ弁または能動弁である。カセット4300の本実施形態に更に図示されているのは、中間プレート4330内の更に別のダイヤフラムである。これらは、各種流体圧送されて流入出する容器を内包し得る実施形態用である。
【0210】
ポンププレート4340を参照すると、各ポッドポンプ4310は、一体の流体路4344を含むポンプチャンバハウジング4342を含む。ポンプチャンバハウジング4342は、外部流体路4346と流体接続している。本例示的実施形態においては、3つのプレート4320、4330、4340がレーザー溶着されている。しかし、他の実施形態においては、各種取り付け様態を、そのいくつかは上述したが、用いてもよい。
【0211】
図43Bを参照すると、カセット4300の断面図が示されている。弁ダイヤフラム4334、弁作動ハウジング4314部分および外部流体管4346を含むボルケーノ弁が示されている。弁は、作動ポート4318を通じて圧搾空気によって作動される。
【0212】
図43Cを参照すると、ある実施形態において、カセットにはエアフィルタ4350および更に別の流体管4352が含まれていてもよい。
【0213】
カセットの代替的実施形態が
図44Aおよび44Bに示されている。
図44Aを参照すると、カセット4400は、4つ以上の部分を含む。この部分には、多数のカバー4412〜4416がレーザー溶着されている中間プレート4410が含まれる。この多数のカバー4412〜4416は、
図43Aに4340として示したポンププレートの代わりに用いられている。
図44Bを参照すると、中間プレート4410がここでも示されている。
ただし、本実施形態においては、
図43Aに4320として示す単一の作動プレートの代わりに多数のカバー4442〜4444が用いられている。
図44A〜44Cに示すように、これは一実施形態であるが、他の実施形態においては、多数のカバーの数は異なってもよい。
【0214】
1.5. 多数のポンプポッドを組み入れた例示的実施形態
圧送システムが流体を圧送する多数のポンプポッドを使用し得るという点にも留意すべきである。ポンプポッドは個別に使用されてもよく、この場合ポンプポッドは個別に制御されてもよい。または、例えば、共通の源から流体を吸引するために多数のポンプポッドの入口を相互接続する、流体を共通の送出先に送出するために多数のポンプポッドの出口を相互接続する、および/または共通の気体圧インターフェースを通じて多数のポンプポッドを制御するためにそれらのポンプポッドの気体圧ポートを相互接続するなど、ポンプポッドを様々な方式で相互接続してもよい。各種実施形態においては、多数のポンプポッドを、実質的に連続した流れを供給するために別位相(すなわち、1つの圧送チャンバが空のときに別の圧送チャンバが充填中となる)で動作させても、脈動する流れを供給するために同一位相で動作させても、またはその他の方式で動作させてもよい。同位相での動作のためには、ベースステーションがポンプポッドを同時に動作させられるよう、多数のポンプポッド用の単一の気体圧インターフェースを設けてもよい。同様に、ベースステーションが弁を同時に動作させられるよう、多数の弁用の単一の気体圧インターフェースを設けてもよい。
【0215】
図2および48に示す実施形態においては、
図3に示すタイプの2つの独立した自己完結型ポンプポッド25aおよび25bが使い捨てシステムに含まれている。本実施形態においては、ポンプポッド25aおよび25bはそれぞれ専用の気体圧ポート38を有し、そのためポンプポッド25aおよび25bは別々に制御可能である。
【0216】
図5Aおよび5Bに示す実施形態では、2つのポンプポッド25aおよび25bの入口が共通の入口管54に接続され、両ポンプポッド25aおよび25bの出口が共通の出口管57に接続されるように、2つのポンプポッド25aおよび25bが大型の組立体2004に組み入れられている。
図5Bは、ポンプポッド25aおよび25bの気体圧ポート38を示す。ポンプポッド25aおよび25bの入口34および出口37は、先に論じたように、流体へのせん断力および乱流を減少させ、圧送チャンバにおける循環を向上させるため、各ポンプポッドの堅固な圧送チャンバ壁31に対して実質的に接線方向の角度に圧送チャンバを流入出する流れを方向づけるように配列されている。本実施形態においては、ポンプポッド25aおよび25bは、例えば、プライミング中にシステムから空気をパージすることを可能にするパージポート55を有する。更に、本実施形態においては、共通の入口管54にはいくつかのルアーポート2001(例えば、更に別の流体源、例えば、医療用溶液、化学溶液、希釈剤などの取り付けを可能にする)が備え付けられており、更に、サーモカップル2002(例えば、ポンプポッド25aおよび25bに流入する流体温度を監視することを可能とする)が備え付けられている。更に、本実施形態においては、組立体2004は、上側にチューブ接続部(
図5Aに示す)、下側にOリング接続部(
図5Bに示す)を有する2つの貫流ポート2003を含む。貫流ポート2003は、例えば、全ての気体圧接続および流体接続を組立体2004の下側から行えるようにすることで、組立体2004のベースステーションへの装着または組立体2004のベースステーションとの併用を容易にするために用いることができる。その場合、入口管54は、チューブを介して貫流ポート2003の一方にあらかじめ接続し、出口管57はチューブを介して他方の貫流ポート2003にあらかじめ接続してもよい。
【0217】
図22Aおよび22Bに示した実施形態においては、
図20に示すタイプの2つのポンプポッド2025aおよび2025b、ならびに
図21に示すタイプの弁2000a〜2000dがいくつか、各種流体路および他の構成部品と共にポンプカセット2015に組み入れられている。ポンプカセット2015は、流体路2007および2009を介してポンプポッド2025aと流体連通するとともに、流体路2008および2010を介してポンプポッド2025bと流体連通する共通の入口2005を含む。ポンプカセット2015は更に、流体路2011および2013を介してポンプポッド2025aと流体連通するとともに、流体路2012および2014を介してポンプポッド2025bと流体連通する共通の出口2006を含む。従って、ポンプポッド2025aおよび2025bは、流体を共通の入口2005から吸引し、流体を共通の出口2006へ圧送する。そこで、弁2000aは、流体路2008および2010の交差部分(すなわち、ポンプポッド2025bへの入口)で流体流を制御するのに用いられる。弁2000bは、流体路2007および2009の交差部分(すなわち、ポンプポッド2025aへの入口)で流体流を制御するのに用いられる。弁2000cは、流体路2011および2013の交差部分(すなわち、ポンプポッド2025aの出口)で流体流を制御するのに用いられる。弁2000dは流体路2012および2014の交差部分(すなわち、ポンプポッド2025bの出口)で流体流を制御するのに用いられる。ポンプポッド2025aおよび2025bはそれぞれ、専用の気体圧インターフェース2106aおよび2106bを有している。更に、弁2000a〜2000dはそれぞれ専用の気体圧インターフェース2096a〜2096dを有している。従って、各ポンプポッドおよび各弁は、ベースステーションによって個別に制御可能である。
【0218】
図23は、本発明の別の実施形態によるデュアルハウジング配置構成2016の略図である。この配置構成は、多くの気体圧式作動ポンプおよび/または弁を含む使い捨てカセットと共に好適に用いられ得る。カセット内の気体圧作動式ポンプおよび/または弁の数が十分多い場合は、これらのポンプおよび弁を内包するカセットは、非常に大型になる−そして、必要な圧力も非常に高くなる−ため、全てのポンプおよび弁を適切にシールし、位置決めすることが困難となるおそれがある。この困難は、2つの異なるハウジングを用いることで、軽減される可能性がある。弁およびポンプ(例えばポンプポッド2042)は主ハウジング2041内に配置され、ここから気体圧ポート2044からの接続チューブ2045が通じている。主ハウジング2041は更に液体が主ハウジングへ流入出することを可能にする入口チューブおよび出口チューブ2043を有する。接続チューブ2045は、主ハウジング2041内の弁およびポンプと、各チューブ用の気体圧インターフェース2047を備えた小型の二次的なチューブ支持ハウジング2046との間の気体圧連通を提供する。ベースユニット内の容器に対する気体圧インターフェース2047全ての適切な位置決めおよびシールが、小型チューブ支持ハウジング2046を用いて、気体圧式作動作用が大型の主ハウジングに直接加えられる場合に比べて容易に実現できる。
【0219】
1.6. 代替的なチャンバ構成およびストロークサイズ
上記のタイプのポンプポッドは、異なるチャンバ構成および/または異なるストロークサイズで構成することも可能であるという点に留意すべきである。従って、例えば、ポンプ容積の異なるポンプポッドが提供され得る。更に、容積の異なるポンプポッドが、対応する標準化された気体圧ポートインターフェースを有する共通の圧送システムまたは装置(例えば、ベースユニット)へ容易に取り付けおよび取り外しできるようするために、標準化された気体圧ポート構成(そしておそらくは標準化された作動チャンバ壁構成)を備えたポンプ容積の異なるポンプポッドが提供され得る。例えば、ベースユニットは、小児用の容積の小さいポンプポッドを受容できるとともに、大人用の容積の大きいポンプポッドを受容できるようになる。気体圧ポートは、ベースユニットの気体圧式作動システムに即座にかつ容易に接続−および脱着−できるようになされていることが好ましい。ある種の実施形態においては、ポンプポッドは使い捨てであると考えられ、個別にまたは大型の使い捨てシステムの一部として提供されてもよい。
【0220】
従って、例えば、
図2および48に示した実施形態においては、使い捨てシステム(以下により詳細に論じるように、具体的には、熱交換システムにおいて用いる)は、2つの自己完結型ポンプポッド25aおよび25bを含む。ポンプ容積が異なるポンプポッドを有するこのような使い捨てシステムの様々なバージョンを、様々な用途用に(例えば、子供用のポンプ容積の小さいバージョン、大人用のポンプ容積の大きい別バージョン)提供することも可能である。同様に、
図5Aおよび5Bに示した実施形態において、ポンプ容積の異なるポンプポッドを有する組立体2004の様々なバージョンを提供することも可能であり、
図22Aおよび22Bに示した実施形態においては、ポンプ容積の異なるポンプポッドを有するカセット2015の様々なバージョンを提供することも可能である。同様に、
図23に示す実施形態においては、共通の二次チューブ支持ハウジング2046と共に使用するためのポンプ容積の異なるポンプポッドを有する主ハウジング2041の様々なバージョンを提供することも可能である。
【0221】
なお、圧送チャンバ壁は、流体の吸入、循環および/または送出を容易にするための特徴を有して成形、形成、製作、または構成してよい。例えば、圧送チャンバの内壁は、循環流を誘発する、円滑な/層状の流れを誘発する、境界層効果を減少させる、または乱流でさえも生み出す(例えば、材料の混合を容易にするため、または圧送チャンバ内での凝固を防ぐため)助けとなるある種の特徴または材料を含んでもよい。
【0222】
1.7. 例示的なダイヤフラム構成
ある種の実施形態においては、ポンプポッドダイヤフラムは、特に圧送チャンバに面する側に小さな隆起したバンプ、溝、または他の構造を備えていてもよい。
図46Aおよび46Bは、本発明の例示的実施形態による、隆起したバンプ39を有する例示的な膜33を示す。このような隆起したバンプ39または他の隆起した構造は、具体的には、圧送チャンバ容積が最大時でも、膜を堅固な圧送チャンバ壁から離しておくことによって、流体の塊が入口および出口から離れたところに滞るのを防ぐ。このように空間を開けることが、血液が圧送チャンバの周辺部から出口へと流れるための流れの通り道を開状態に保つ。
図46Aおよび46Bに示す例示的実施形態では、膜の端縁に近い領域にはバンプが存在しないように、バンプ39は、膜の端縁から離れた部分に位置している。一般的に、こうした構成は、膜の端縁に近い部分が圧送チャンバ壁に接触することを可能にし、これが流体を端縁から出口に向かって押し流しやすくする。
【0223】
膜上のバンプまたは他の隆起した構造に加えて、またはこれに代えて、ポンプチャンバ壁は、圧送チャンバが最小容積に近づき、到達する際に流体が流れることを可能にするためのスペーサまたは導管を含んでもよい。
【0224】
膜は、多種多様な可撓性材料の中の任意の材料製でよいが、膜の円滑な圧送動作を維持し、膜が最小圧送チャンバ容積位置に「はじけるように移動」する傾向を減らすため、高伸長シリコーンまたは類似の材料で作ることが好ましい。はじけるような移動を減らすことにより、流体に対する局地的な力の急上昇が減少する。こうしたはじけるような移動は、チャンバ内での流体の旋回を妨害し、過剰なせん断力および乱流を引き起こし、血液を圧送する場合には溶血を、界面活性剤を圧送する場合には発泡を引き起こすおそれがある。
あるいは、膜は、多様な熱可塑性エラストマーまたはゴム製でもよい。更に、膜は、可撓性を高めるため、ディンプルまたは溝を備えていてもよい。
【0225】
なお、膜は、所定のパターンまたは方式で膜の往復運動を付勢するように成形、形成、製作、または構成され得る。例えば、膜は、ある部分が他の部分より自由に動くように、厚さまたは硬さの異なる部分を備えて形成してもよい(例えば、膜のポンプ入口に隣接した部分がポンプ出口に隣接した部分よりも可撓性が高くなるように膜を構成し、膜の入口側が吸引ストローク中により迅速に後退し、送出ストローク中により迅速に引っ込むようしてもよい。これは、一部の実施形態において圧送チャンバを充填することおよび空にすることを容易にする)。
【0226】
2. 例示的なポンプ制御システム
2.1. 圧力作動システム
図4は、
図3に示すポンプポッド25などのポンプポッドを作動させるのに使用し得る、本発明の例示的実施形態による圧力作動システム40の実施形態を示す概略図である。圧力作動システム40は、ポンプポッド25の作動チャンバ42内の気体に対して正および負の加圧状態を間欠的にまたは交互に供給することができる。ポンプポッド25−可撓膜33、入口34、出口37、気体圧ポート38、圧送チャンバ41、作動チャンバ42、ならびに、場合によっては入口逆止弁35および出口逆止弁36または他の弁を含む−は、大型の使い捨てシステムの一部であってもよい。気体圧式作動システム40−作動チャンバ圧力トランスデューサ44、正供給弁47、負供給弁48、正圧気体貯留器51、負圧気体貯留器52、正圧貯留器圧力トランスデューサ45、負圧貯留器圧力トランスデューサ46と共にユーザインターフェースコンソール(例えば、タッチパネル画面)を含む電子制御器49を含む−は、ベースユニットの一部であってもよい。
【0227】
正圧貯留器51は、膜33を圧送チャンバ41が最小容積となる位置(すなわち、膜が堅固な圧送チャンバ壁31に押し当たる位置)に向けて付勢するため、作動チャンバ42に制御気体の正の加圧状態を供給する。負圧貯留器52は、膜33を逆方向、すなわち、圧送チャンバ41が最大容積となる位置(すなわち、膜が堅固な作動チャンバ壁32に押し当たる位置)に向けて付勢するため、作動チャンバ42に制御気体の負の加圧状態を供給する。
【0228】
動弁機構が各貯留器51、52と作動チャンバ42との間の流体連通を制御するのに用いられる。
図4では、貯留器それぞれに別々の弁が用いられている。すなわち、正供給弁47が正圧貯留器51と作動チャンバ42との間の流体連通を制御し、負供給弁48が負圧貯留器52と作動チャンバ42との間の流体連通を制御する。この2つの弁47、48は、制御器49によって制御される。あるいは、この2つの別々の弁47、48に代えて単一の三方向弁を用いてもよい。弁47、48は、2値のオンオフ弁または可変絞り弁でよい。
【0229】
制御器49は更に、
図4に示す3つの圧力トランスデューサ、すなわち、作動チャンバ圧力トランスデューサ44、正圧貯留器圧力トランスデューサ45および負圧貯留器圧力トランスデューサ46から圧力情報を受信する。これらの名称が示唆するように、これらのトランスデューサはそれぞれ作動チャンバ42、正圧貯留器51および負圧貯留器52内の圧力を測定する。作動チャンバ圧力トランスデューサは、ベースユニット内に位置しているが、ポンプポッドの気体圧ポート38を通じて作動チャンバ42と流体連通している。制御器49は、2つの貯留器51、52が適切に加圧(正圧あるいは負圧に)されるように、貯留器51、52内の圧力を監視する。一例示的実施形態においては、正圧貯留器51は750mmHG前後に維持され、負圧貯留器52は−450mmHG前後に維持されればよい。
【0230】
これら貯留器51、52内を所望の圧力に維持するため、1つまたは複数のコンプレッサタイプのポンプ(図示せず)を用いてもよい。例えば、貯留器51、52それぞれに用いる2つの独立したコンプレッサを用いてもよい。貯留器51、52内の圧力は、貯留器51内の圧力が所定の閾値を下回ると正圧貯留器51用のコンプレッサを稼働させ、貯留器52内の圧力が所定の閾値を上回ると負圧貯留器52用のコンプレッサを稼働させる単純なバングバング制御技術を用いて管理してもよい。両貯留器用のヒステリシスの量は、同じでも異なっていてもよい。ヒステリシスバンドの大きさを減らすことで、貯留器内の圧力のより厳密な制御が可能となるが、これは、一般的にはコンプレッサの周期周波数の増加を招く。貯留器圧力の非常に厳密な制御が必要な場合、または特定の用途にとって望ましい場合は、バングバング技術はPID(Proportional−Integral−Derivative:比例・積分・微分)制御技術に変えてもよく、コンプレッサに対してPWM(Pulse−width Modulation:パルス幅変調)信号を用いることもできる。
【0231】
正圧貯留器51によって供給される圧力は、正常な状態では膜33を完全に堅固な圧送チャンバ壁31に押し当てるほど十分に強いことが好ましい。同様に、負圧貯留器52によって供給される負圧(すなわち、真空)は、正常な状態では膜を完全に作動チャンバ壁32に押し当てるほど十分に強いことが好ましい。ただし、さらに好ましい実施形態においては、正供給弁47または負供給弁48が完全に開いた状態であっても、膜33に加えられる正圧または負圧がポンプポッドを損傷する、または安全ではない流体圧力を生じさせるほど強くならないように(例えば、圧送される血液または他の流体を受容している患者に悪影響をあたえるおそれがある)、貯留器51、52によって供給される正および負圧は、十分に安全な範囲内にあることが好ましい。
【0232】
当然ながら、膜を前後に動かすのに、
図4に示す貯留器が2つの気体圧式作動システムに代えて他のタイプの作動システムを用いてもよい。ただし、貯留器が2つの気体圧式作動システムが一般的に好ましい。例えば、代替的な気体圧式作動システムは、特に、弾性のあるダイヤフラムと組み合わせて、単一の供給弁および単一のタンク圧力センサと共に、単一の正圧貯留器または単一の負圧貯留器を有していてもよい。このような気体圧式作動システムはポンプポッドの作動チャンバに正の気体圧力または負の気体圧力を間欠的に供給すればよい。単一の正圧貯留器を有する実施形態においては、ポンプは、正の気体圧力を作動チャンバに間欠的に供給してダイヤフラムを圧送チャンバ壁側に動かし圧送チャンバの中身を吐出させることと、気体圧力を開放してダイヤフラムを弛緩した位置に戻し圧送チャンバに流体を引き込ませることによって動作させ得る。単一の負圧貯留器を有する実施形態においては、ポンプは、負の気体圧力を作動チャンバに間欠的に供給してダイヤフラムを圧送チャンバ壁側に動かし流体を引き込ませることと、気体圧力を開放してダイヤフラムを弛緩した位置に戻し圧送チャンバから流体を吐出させることによって動作させ得る。
【0233】
2.2. 能動入口弁/出口弁を用いた代替的実施形態
上で論じたように、ポンプポッド入口および出口には受動逆止弁に代えて能動弁を用いてもよい。能動弁は、より高度な制御を可能にし、自由度を高めることができる(一般に複雑さおよびコストの増加を代償とするが)。中でも、能動弁は、流体流の逆転を可能にする。これは、例えば、プライミング、空気パージ、および/またはある種の状態(例えば、閉塞、閉鎖、漏れ、管のはずれ)の検出および緩和を容易にするのに用いることも可能である。管のはずれに関していえば、もし出口管がはずれた場合、流れを逆転させると空気が出口を通じて圧送チャンバに吸い込まれ得る。このような空気の流れは、ダイヤフラムを動かすのに必要な仕事量を検出する技術を含む、様々な技術のいずれかを用いて検出することが可能である。管が安全に接続されている場合、流れを逆転させて出口を通じて流体を引き込むには通常はいくらかの仕事量が必要であるが、戻り管がはずれている場合は、ポンプが空気を戻り管に引き込んでいるため流れを逆転させるのに必要な仕事はもっとずっと小さくなる。流れを逆転させてすぐに制御器が異常な流れの状態を検出した場合は、制御器はシステムに患者からの血液の圧送を停止させることが好ましい。
【0234】
正常なポンプ動作中は、能動弁は一般に以下のように動作される。充填ストローク中、流体が圧送チャンバに引き込まれるときに、入口を通って流体が圧送チャンバに流入することを可能にするが、出口から流体が引き戻されるのを防ぐため、通常制御器49は入口弁を開き出口弁を閉じる。流体が圧送チャンバから圧送される送出ストローク中に(例えば、圧送チャンバが一杯になった後または他の適切な時点に)、出口から流体が圧送されるのを可能にするが、入口を通って流体が逆方向に圧送されるのを防ぐため、制御器49は一般に入口弁を閉じ出口弁を開ける。ストロークとストロークの間は、制御器49は入口弁、および出口弁の両方を一定時間閉じさせてもよい。
【0235】
なお、気体圧作動式入口弁および出口弁(例えば、ポンプポッドと一体の、またはポンプポッド外部の2値のオンオフ弁)を受動入口逆止弁および出口逆止弁に代えて用いている実施形態については、このような弁は、制御器49によって作動される適当な供給弁を通じて正圧貯留器および/または負圧貯留器51、52に連結させてもよい。
【0236】
能動入口弁および出口弁の使用は、圧送チャンバ内の空気の検出を容易にする。例えば、圧送チャンバを最大容積にするための完全な吸引ストロークに続いて作動チャンバに正圧をかけることができ、作動チャンバ(または圧送チャンバ)内の圧力が増加する割合を監視することができる。圧送チャンバが空気で満たされている場合、圧送チャンバ内の空気はダイヤフラムが容易に動くことを可能にするので、圧力は徐々に増加する。しかし、圧送チャンバが液体で満たされている場合は、ポンプダイヤフラムは圧縮できない液体によって強く支えられているため、圧力は急速に増加する。
【0237】
2.3. ポンプ動作
正常なポンプ動作中、制御器49は通常作動チャンバ圧力トランスデューサ44からの圧力情報を監視し、この情報に基づいて、最小圧送チャンバ容積位置にまで膜33を付勢し、その位置に到達した後は膜33を最大圧送チャンバ容積位置にまで引き戻すために動弁機構(弁47、48)を制御する。本実施形態においては、体積は、完全な流体送出ストロークの回数を数えることによって測定してもよい(例えば、体積=完全なストローク回数×圧送チャンバ容積)。
【0238】
本発明の典型的な実施形態においては、制御器は、ストロークの終了、すなわち膜が堅固な圧送チャンバ壁または作動チャンバ壁に到達した時点を検出できてもよい。
図4を参照すると、吐出ストロークは正供給弁47を開くことによって開始され、その結果、正圧が膜33にかけられる。好ましくは、膜33が動いている限り作動チャンバの圧力にリップルを生じさせるため、正供給弁47は周期的に開閉(ディザリング)される。膜33が圧送チャンバ壁31に到達すると、圧力リップルは止まる。作動チャンバ圧力トランスデューサ44から圧力情報を受信している制御器49はこの圧力リップルを監視し、この圧力リップルが止まるとストロークの終了を検出する。
【0239】
吐出ストロークの終了を検出すると、制御器49は、正供給弁47を閉じて負供給弁48をディザリングし、これにより膜33に真空を加えさせる。吐出ストロークにおいてそのあとに実行されたプロセスと同じプロセスが、この充填ストロークでも繰り返される。制御器は各ストロークを完了する時点を判定し、その情報を用いて流量を計算する。流量情報は、次のストロークのための圧力および動弁用コマンドの設定に用いられる。
【0240】
制御器49は、交互に正圧および真空を膜33に加えるという一定時間ごとの連続操作を用いて流量を設定する。所望の送出(すなわち、吐出)流量を得るために、正圧が一定時間加えられる。この時間が経過すると、一定の充填流量を得るために真空が加えられる。
この時間間隔の制御は、流量に関するフィードバックのないオープンループシステムが可能であり、従ってストロークの終了と次のストロークの開始の間には、遅れがある可能性がある。このようなオープンループ・時間ベースシステムは、液体と空気の混合物がポンプポッド内にあるプライミング中など、流量に基づくクローズドループシステムが正常に動作しない場合に用いてもよい。
【0241】
上記のように、ストロークは膜33に一連の圧力パルスを送る(圧力リップルを形成する)ことによって達成されることが好ましい。ストロークの速度は、供給弁を開く頻度を変えるおよび/または供給弁が開けられる毎の開放時間を変えることによって調節できる。
圧力パルスは、作動チャンバと貯留器の間の弁を一定時間開き、次いでパルス周期の残りの時間弁を閉じるものである。圧力パルスの全長は、1/(パルス圧送周波数)である。
一実施形態においては、制御器の圧送コマンドが0から100%に増加するにつれてパルス圧送周波数は2Hzから16Hzに増加する。最小周波数の2Hzは、システム内に水がある場合に確実に最小流量が得られるようにすることを意図している。最大周波数の16Hzは、弁が50%デューティーサイクルに達するのに必要な最小時間に対応することを意図している。圧送アルゴリズムは、好ましくはストロークを初期圧送期間およびストローク終了期間の2つの期間に分割する。初期圧送期間中は、圧力パルスの弁開放時間は、好ましくは166ms(16Hzでの100%デューティーサイクル)である。従って、制御器からの最大コマンドがある場合は、貯留器への弁は常に開いている。圧送コマンドが0から100%に増加するにつれて、初期期間における圧力パルス数は、1から10に増加される。
【0242】
初期圧送期間の後、ストローク終了圧送期間への移行がある。この点に関し、ストロークが終了する時点を判定するために、ソフトウェアフィルタを、ストローク終了期間にストローク終了フィルタが初期化するのに使用される少なくとも5つの圧力パルスと共に用いることが好ましい。ストロークの終了が検出されたときにストローク終了期間が終了する。ストローク終了期間中は、圧力パルスの弁開放時間は好ましくは83.3ms(16Hzでの50%デューティーサイクル)である。
図7および8は、初期期間およびストローク終了期間中の圧力パルスを示す。
図7は、制御器による低流量コマンド用の圧力パルスを示し、
図8は、制御器による高流量コマンド用の圧力パルスを示す。高流量コマンドの場合は、パルスのオン時間がずっと長いことに留意すべきである。
【0243】
圧力パルスは、膜が動いている間、作動チャンバ内の測定圧力にリップルを発生させる。
フィルタをかけてこの圧力リップルを分離することにより、ストローク終了アルゴリズムが、ダイヤフラムがいつチャンバ壁に到達し、動きを止めたのかを検出できる。このストローク終了情報は、流量計算ならびに、充填および吐出ストロークのためにポンプポッドを順序づけるのに用いてもよい。
【0244】
フィルタリングの第1段階において、各ポンプポッド用の圧力信号がバンドパスフィルタを通される。このフィルタは、パルス圧送周波数を分離するために用いられる。先に論じたように、制御器の圧送コマンドが0から100%に増加するにつれてパルス圧送周波数は好ましくは2Hzから16Hzに増加する。
図9は、バンドパスフィルタの出力を示す。
【0245】
このフィルタを通された信号の絶対値が、次に減衰比が1の二次ローパスフィルタを通される。このフィルタのコーナー周波数は、パルス圧送周波数に基づいて変えられる。
図10は、このローパスフィルタの出力を示す。ローパスフィルタからの出力は、リップル値を標準化するために供給圧力の絶対値によって分けられる。この圧力リップルの最終値がストロークの終了を検出するのに用いられる。一旦ストローク終了期間に入ると、ダイヤフラムがチャンバ壁によって止められたときにこのリップルは特性として0にまで急速に低下する。
【0246】
図11は、使い捨てユニットにおける各ポンプポッドの作動チャンバ内の圧力測定値を示すと共に、上記のフィルタリングの結果を示すグラフである。なお、フィルタを通されていない圧力示度が、2つのポンプポッドは位相がずれている、すなわち一方のポンプポッドが液体を吐出し、その間他方が液体を充填していることを示している。フィルタを通された示度のプロットを見ればわかるように、これらのフィルタを通された示度は各ストロークの終了時に0に降下している。
【0247】
ストロークの終了時に、チャンバ容積をストロークが完了する時間で割ることによって特定のポンプポッドについての流量、および流れ方向が計算される。吐出ストロークが終了した時点でそのストローク用の変数はリセットされ、このプロセスが充填ストロークに対しても繰り返される。
【0248】
圧力リップルは、ストローク中の圧力示度を大きく変化させる。従って、平均圧力が計算され、記録される。
図12に示すように、平均圧力は、5番目と10番目のパルスの間の圧力を積分することによって算出することが好ましい。本実施形態においては、5番目と10番目のパルスは、ストローク開始時およびダイヤフラムがチャンバ壁に当たった時点の圧力の影響を除外するために平均の最初および最後として選択される。
【0249】
圧力トランスデューサのいずれか(作動チャンバ圧力トランスデューサ44、正貯留器圧力トランスデューサ45または負貯留器圧力トランスデューサ46)が誤動作しているかどうかチェックするため、制御器はストローク終了時の圧力示度を比較することが好ましい。
図4を参照すると、吐出ストロークの終了時、正供給弁47が開いている間に、作動チャンバ圧力トランスデューサ44の圧力示度が正貯留器圧力トランスデューサ45の示度と比較される。吐出ストローク終了時、この2つのトランスデューサの圧力示度は同じはずなので、この2つのトランスデューサから圧力示度が異なる場合は、2つのトランスデューサのうちの一方が誤動作していることになる。同様に、充填ストローク終了時、負供給弁48が開いている間に、制御器49は作動チャンバ圧力トランスデューサ44の圧力示度を負貯留器圧力トランスデューサ46の示度と比較することが好ましい。制御器がこれらの圧力示度に大きな変化を検出した場合は、制御器はトランスデューサのうちの1つが誤動作していることを知らせる警告信号を発する。
【0250】
更に、制御器は、液体を移動させる際になされた仕事の量を得るために圧力示度をある期間にわたって積分することによって、異常な流れの状態を検出できる。なされた仕事量が上下する場合、制御器は好ましくは、閉塞、漏れまたははずれなど管に何か異常があることを知らせる警告信号を発する。はずれまたは漏れを検出する能力は、特に血液、または他の生命に関わる流体を圧送する場合には、圧送されている流体の流量が比較的大きいため特に重要となり得る。一実施形態においては、圧力示度を積分し、仕事関数を定めることによって、制御器は約3秒以内に管のはずれを検出することができる。
【0251】
この計算は、ポッドポンプと患者の間の揚程を考慮に入れることができる。ただし、この高さは温熱治療行為の間は一定であると考えてよい。この計算は、以下のように表すことができる。
K
fluidpath×m
pod=∫
stroke(P
pod−P
height_diff)dt
ここで、
K
fluidpathは流体路内の抵抗、
m
podはポッドに内包される流体の質量、
P
podはポンプポッド内の圧力
P
height_diffはポッドと患者の間の揚程に起因する圧力
【0252】
K
fluidpathおよびm
podは、温熱治療行為中は一定のはずなので、積分された圧力のいかなる変化も流体内の抵抗の変化および/またはストローク中に移動される質量の変化を示すことになり、従って閉塞または管はずれなど、異常な流れの状態を示唆するものである。
【0253】
一実施形態においては、加温行為中、揚程は監視されない。揚程はポッドの最初の2〜3回の圧送に基づいて計算される。この最初の2〜3回の圧送が、以下の計算に基づいて揚程計算の基準値を設定する。
P
pod=K
fluidpathm’+P
height_diff
ここで、m’は質量流量。
【0254】
特に、通常はポッドの最初の2〜3ストロークでは流量が小さいので、m’が0であり、ポッド内の圧力が揚程圧力に等しい、すなわちP
pod=P
height_diffであると推測され得る。この計算に基づいて、揚程が一定であると推定される。
【0255】
一実施形態においては、制御器は、積分した圧力の連続したストロークとストロークの間の変化、または積分した圧力のローパスフィルタを通した値の、3回のストローク中の変化(許容誤差は小さい)を探す。これらの変化のうちどちらかが過度である場合、エラーが通知され、医療技術者が操作するまで圧送が停止される。この検出アルゴリズムは、ポッド内に空気と液体の混合物がある場合に発生する積分した圧力の信号の大きな変化のため、プライミング中は実行されない。
【0256】
小流量で閉塞を検出する別の方法を、ポッド圧力積分方法と並行して実行してもよい。この方法では、制御器は、多数の連続した全く同じ長さの短いストロークを探す。このようなストロークが検出された場合、ポッドポンプはおそらく閉塞または気体圧の問題のためにストロークを完了させていない。一実施形態においては、特定のポッドポンプに7以上の短いストロークが発生した場合、エラー信号が発せられる。チャンバが空気で満たされている場合には速く短いストロークは普通のことなので、プライミング中は、この検出方法は用いられない。
【0257】
ストロークの終了が所定数の圧力パルス(例えば、
図7〜12に関連して上に論じたように、100圧力パルス)以内に起こらない場合、制御器は好ましくはエラー信号を発する。ストロークを完了させるのに過剰な時間がかかるのは、気体圧の漏れを示していることがある。このようなチェックは、加温行為中だけでなくプライミング中にも実行できる。
【0258】
2.4. 流体流管理
一般的に、単一のポンプポッドは脈動的に動作する。まず、流体を吸引し、次いで流体を圧送する。脈動的な動作は、ある種の用途には必要、望ましい、または特有であるかもしれない(例えば、1本の針を通じて患者から血液を抜き出し患者に戻す体外血液処置は、1本の針を通じて同時に血液を患者から抜き出し圧送して患者に戻すことは一般に不可能なので、本質的に脈動的である)。
【0259】
デュアルポンプ構成では、2つのポンプポッドは0度の位相関係(すなわち、両圧送チャンバが同方向に動作する)から180度の位相関係(すなわち、圧送チャンバが逆方向に動作する)で動作させ得る。0度の位相関係は、単一のポンプポッドと同様、実質的に脈動的な流体流を生成するのに用いることができる。180度の位相関係は、ポンプに向かう方向およびポンプから離れる方向への実質的に連続した流体流を生成するのに用いることができる。90度の位相関係は、実質的に正弦曲線状の流体流を生成するのに用いることができる。
図74A〜74Cはそれぞれ、0度の位相関係、180度の位相関係および90度の位相関係の場合の体積流量、ポッド容積および総滞留流量のプロットを示す。
【0260】
用途によっては、ポンプポッド(単数または複数)へ、および/またはポンプポッド(単数または複数)から実質的に連続的な流体流を供給することが必要、または望ましいかもしれない。先に論じたように、実質的に連続的な流体流は、180度の位相関係で動作する2つのポンプポッドを用いて供給し得る。脈動モードで動作する1以上のポンプポッド(例えば、単一のポンプポッド、または0度の位相関係で動作する2つのポンプポッド)の場合、より連続的な流体流出力を生成する方法の1つは、ポンプポッド(単数または複数)をできるだけ速く充填して長い時間をかけて流体を圧送することである(例えば、望ましい送出時間は、望ましい全ストローク時間マイナス充填ストロークにかかる時間に設定することも可能)。
【0261】
2つのポンプポッドを180度の位相関係で動作させる場合でも、ある条件下では、特に入力インピーダンスが出力インピーダンスと大きく異なる場合は、非連続的な流体流になることがある。例えば、血液の体外処置に応用する場合、針の大きさ(例えば、血液を患者から抜き出すのに用いられる針が血液を患者に戻すのに用いられる針よりも小さいことがある)、血液粘度(例えば、処置の一部として希釈されるような高粘度の血液の患者もいる)、または患者の治療のしにくさ(例えば、循環不良の患者は、血液を抜き出す速度が制限されることがある)などの事情によって入力インピーダンスが出力インピーダンスより高くなることがある。このようなインピーダンスの差は、特に、一方のポンプポッドに他方のポンプポッドよりも高い圧力を加えることによってシステムの平衡をとることができない場合に、ポンプポッドの充填時間と送出時間に差を生じることがある(理論上、ポンプポッドに加えることが可能な気体圧量に制限がない場合は正確に180度の位相関係を確保することが可能ななずだが、通常は、加えることができる圧力には物理的な制限−2つの貯留器内の最大圧力−および実用上の制限がある)。従って、場合によっては、一方のポンプポッドのストロークが他方のポンプポッドの対応するストロークの前に完了してしまうことがある。その場合、後者のポンプポッドがストロークを完了するまでの間前者のポンプポッドを遅らせることが必要な場合もあり、前者のポンプポッドによって生成される流体流の一時停止を引き起こす。考えられる解決策の1つは、流量を充填および送出ストロークの遅い方に制限することである。これは結果としては血液送出流量を低下させるが、それでも流量がわかり、連続的になる。
【0262】
2.5. 可変絞り気体圧式弁を用いた代替的実施形態
上記のように、
図4の気体圧式作動システム40における正供給弁47および負供給弁48は、2値のオンオフ弁ではなく可変絞り弁でもよい。可変弁を使用することにより、全貯留器圧力を膜にかける代わりに、作動チャンバ42および膜33に加えられる圧力を貯留器51、52内の圧力の一部にするように容易に制御することができる。これにより、ポンプ容積、ポンプストロークサイズまたはポンプ作動圧力などの運転パラメータが異なるポンプポッドに同じ貯留器または一組の貯留器を使用することが容易になる。当然、貯留器圧力は一般に各種ポンプポッドの膜に加えることが求められる圧力よりも高いことが必要だが、1つのポンプポッドは例えば貯留器圧力の半分の圧力で作動させられるかもしれないし、別のポンプポッドは同じ貯留器を用いて例えば貯留器圧力の4分の1の圧力で作動させられるかもしれない。従って、異なるポンプポッドがそれぞれ異なる圧力で動作するように設計されていても、可変弁を用いることで、これらのポンプ全てで同じ貯留器または一組の貯留器を共有しても、異なる圧力で作動させ得る。圧送中に生じるまたは変化する条件に対応するために、ポンプポッドで用いる圧力を変化させてもよい。例えば、チューブがねじれてシステムのチューブを通る流れが減少した場合に、この増加した制約を相殺するためにポンプポッドに用いている正圧または負圧の一方または両方を増加させてもよい。
【0263】
図28はポッドポンプにかけられる圧力が可変弁を用いてどう制御され得るかを示すグラフである。縦軸は圧力を表し、それぞれ正貯留器および負貯留器(
図4の51および52で示すもの)内の圧力を表すP
R+およびP
R−、ならびに、それぞれポンプポッドの膜に作用する正および負の制御圧力を表すP
C+およびP
C−が表示してある。
図28からわかるように、時刻T
0から時刻T
1付近までは、正圧が作動チャンバに加えられている(流体を圧送チャンバから押し出すために)。正可変弁(
図4に47で示すもの)によってもたらされる流量制限の減少・増加を繰り返すことによって、作動チャンバに加えられている圧力がほぼ所望の正の制御圧力P
C+に維持される。圧力は、所望の制御圧力付近で正弦曲線状に変化する。作動チャンバに連通する作動チャンバ圧力トランスデューサ(
図4に44で示すもの)が作動チャンバ内の圧力を測定してこの圧力測定情報を制御器(
図4に49で示すもの)に送り、制御器が作動チャンバの圧力を所望の制御圧力P
C+付近で変化させるように可変弁を制御する。故障状態がない場合は、膜は圧送チャンバの堅固な壁に押圧され、これによりストロークが終了する。可変弁によって生じる制限を減少させても作動チャンバで測定された圧力がそれ以上降下しないと、制御器はストロークの終了が到達したと判定する。
図28では、吐出ストロークの終了は時刻T
1付近で起こっている。ストロークの終了が検知されると、作動チャンバの圧力が所望の制御圧力P
C+を大きく超えて増加しないように、制御器は可変弁を完全に閉じさせる。
【0264】
正可変弁が閉じられた後、負圧貯留器に作動チャンバから気体を吸引させ、従って流体を圧送チャンバに吸引させるように負可変弁(
図4に48で示すもの)が部分的に開けられる。
図28からわかるように、T
1を少し過ぎた時点から時刻T
2付近まで、負圧が作動チャンバに加えられている。上記の吐出(正圧)ストロークの場合と同様、負可変弁によってもたらされる流量制限の減少・増加を繰り返すことによって、作動チャンバに加えられている圧力がほぼ所望の負の制御圧力P
C−(負圧貯留器内の圧力より弱い)に維持される。圧力は、所望の制御圧力付近で正弦曲線状に変化する。作動チャンバ圧力トランスデューサが圧力測定値情報を制御器に送り、制御器が作動チャンバの圧力が所望の制御圧力P
C−付近で変化するように可変弁を制御する。故障状態がない場合は、膜は引かれて作動チャンバの堅固な壁に押しつけられ、これにより吸引(負圧)ストロークが終了する。上記のように、可変弁による制限を減少させても作動チャンバで測定された不完全真空がそれ以上降下しないと、制御器はストロークの終了が到達したと判定する。
図28では、吸引ストロークの終了は時刻T
2付近で起こっている。ストロークの終了が検知されると、作動チャンバの真空が所望の負の制御圧力P
C−を大きく超えて増加しないように、制御器は可変弁を完全に閉じさせる。吸引ストロークが終了するとすぐ、正圧を伴う次の吐出ストロークを開始するため正可変弁を部分的に開くことができる。
【0265】
従って、正圧源からの流れおよび負圧源への流れを絞るために2つの可変オリフィス弁を用いてもよい。作動チャンバ内の圧力は監視され、作動チャンバに所望の圧力を実現するため、制御器はこの圧力測定値を用いて両弁への適切なコマンドを決定する。この配置構成の2つの利点は、圧力制限を考慮しながら充填および送出圧力を正確に制御して所望の流量を達成し得る点、および小さな正弦曲線状の軌跡コマンドで圧力が変化させられ得る点である。ポンプがいつストロークの終了に到達したかを判定するために、この軌跡が監視されてもよい。
【0266】
このように2値の弁の代わりに可変弁を使用することのもう1つの利点は、可変弁は部分的に開閉するだけなので、弁が磨耗や損傷を受けにくいという点である。2値の弁は完全に開閉することによって繰り返し「強く当たる」ので、寿命が縮まるおそれがある。
【0267】
ストロークの終了が検出され、相関関数の積分値が非常に小さい場合、これは、ストロークが遮られて適切に完了していないことの現れかもしれない。この閉塞が充填ストローク時に起きるのか送出ストローク時に起きるのかを見ることによって、上流側の閉塞なのか下流側の閉塞なのかを判別できることがある(ダイヤフラムがチャンバ壁の近くにあるストロークの終了時点付近で起こる閉塞の場合は難しいこともある)。
図73A〜73Bは、本発明の例示的実施形態による閉塞検出法を示す(線2703および2704は、閉塞が検出された時点を表す)。
【0268】
正常な動作では、ストロークが進むにつれて相関関数の積分値は増加する。この値が小さいままである、あるいは増加しない場合、ストロークが非常に短い(非常に低いインピーダンスの流れまたは閉塞の場合のように)か、または、例えば、弁または圧力信号の不具合のために、実際の圧力が所望の正弦曲線の圧力に追随していないかのどちらかである。
これらの場合、相関がないことを検出してエラー処理に利用することができる。
【0269】
流れ制御器が作動している正常な状況では、流量を変化させるには制御ループが圧力を調整することが好ましい。流れが目標の流量に到達する機会がないうちに回路内のインピーダンスが急激に増加して圧力制限が飽和する場合、流れ制御器は一般に、所望の流量に到達するために圧力を高く調整することはできない。こうした状況は、管が部分的に閉塞(例えば、血液圧送実施形態における血塊などの閉鎖)された部分が回路内に形成されていると起こることがある。流れが目標流量に達していないときの圧力飽和は、検出してエラー処理に用いることができる。
【0270】
流体弁から漏れがある、または圧力信号に雑音が多いなど、弁または気体圧に問題がある場合は、ストロークにリップルがいつまでも続き、ストローク終了アルゴリズムがストロークの終了を検出できるだけの圧力リップルの変化をとらえられないことがある。この理由から、ストロークを完了するための時間が長すぎる場合は、安全点検を検出に加えることが好ましい。この情報は、エラー処理に使用できる。
【0271】
2.6. ポンプポッドの例示的な用途
上記のタイプの往復容積式ポンプおよびこれに関連する制御システムは、種々様々な流体圧送用途に使用し得る。特に、人工または体外血液圧送を伴う用途での使用に(これに限らないが)非常に適している。例えば、数例を挙げると、血液加温または冷却処置、血液透析ならびに他の血液処理およびろ過処置(例えば、プラズマフェレーシスおよびアフェレーシス)、心臓バイパスおよび他の血液補助循環処置(例えば、心室補助)、心筋保護(心臓バイパスその他の一部としての)、肺バイパスまたは人工肺および他の体外血液酸素供給を伴う用途、ならびに化学療法および他の薬剤処置(例えば、局所的温熱化学療法)などである。例えば、ある種の実施形態においては、上記のタイプの往復容積式ポンプおよびそれに関連する制御システムは、血液などの流体を加温または冷却するための熱交換器システムに使用し得る。例示的な熱交換器システムを以下に説明する。
【0272】
3. 例示的な熱交換器システム
本発明の実施形態は、一般に血液などの流体を加温または冷却するのに使用可能な熱交換器システムに関する。血液加温システムは、特に全身加温処置(例えば、体温を上げて低体温症に対抗する、またはC型肝炎ならびに場合によっては一部のタイプのがん、HIV/エイズ、慢性関節リウマチおよび乾癬などのある種の疾病に対抗するための)、または局所的温熱化学療法処置に有用となり得る。例示的な熱交換器システムを、まず全身加温処置の一部として血液を圧送・加温する場合について説明し、次に局所的温熱化学療法処置に関して説明する。なお、当然ながら、このような熱交換器システムは、流体を加温および/または冷却する他の用途にも使用し得る。加えて、以下に説明する例示的な熱交換器システムは上記のタイプのポンプポッドを組み入れているが、実施形態はポンプポッドの使用に限られない。各種代替的実施形態では、他のタイプのポンプを使用してもよい。
【0273】
3.1. 全身加温処置
先に論じたように、血液加温システムは、全身加温処置(例えば、体温を上げて低体温症に対抗する、または感染肝臓細胞からウイルスを除去できるレベルに核心体温を上げることでC型肝炎に対抗するための)に使用し得る。一般的に、C型肝炎用の全身加温処置は、核心体温を長時間摂氏約41.6度(華氏107度)に上げる必要がある。典型的な処置は、30〜60分の昇温期間、80〜120分の持続期間および30〜45分の冷却期間を含めて3〜4時間かかることがある。核心体温、従って熱交換器システムによって発生させる流体温度は、患者をほぼ一定の目標核心温度に保つために注意深く制御しなければならない。核心温度が低すぎると処置の効果が得られず、核心温度が高くなりすぎると患者に悪影響を与えかねない。
【0274】
図24は、本発明の例示的実施形態による全身加温処置システムの概略図である。血液は14F左大腿部静脈カニューレを介して患者から流出する。熱交換器システム10内では、血液は2つのポンプポッドによって圧送されて熱交換用の熱交換器を通る。制御システムが各種パラメータ(例えば、患者核心温度に加えて加温器/冷却器を出入りする血液の温度)を監視し、それに応じてポンプポッドおよび加温器/冷却器の動作を調節する。熱交換器に続いて、血液は粒子・エアフィルタを通過し、12F右大腿部静脈カニューレを介して患者へと戻る。この行為中、患者は仰向けで、挿管され、麻酔をかけられて、医師または他の専門家に監視される。
【0275】
3.1.1. 例示的な熱交換器システム
図1は、本発明の例示的実施形態による熱交換器システム10を示す。熱交換器システム10は、ベースユニット11、および使い捨てユニット16を含む。更に以下で説明するように、使い捨てユニット16は、使い捨てユニット16の熱交換器バッグ(例えば、
図2および48に示すような熱交換器バッグ21)がベースユニット11の熱交換器部分に入るようにベースユニット11内に装着される。患者からの血液が使い捨てユニット16、具体的には熱交換器バッグ21を循環すると、血液は熱交換器によって加温され、患者に戻される。このような循環中、血液はずっと使い捨てユニット16内にあって、一般にはベースユニット11の構成部品には接触することはない。使い捨てユニット16は、一般に患者の処置後は廃棄されるという点で「使い捨て」であると考えられ、一方、ベースユニット11は新しい使い捨てユニット16を装着するだけで繰り返し再利用できる。実際には、ベースユニット11は使い捨てユニットの再利用を防ぐ機構(例えば、バーコード、RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数認証)タグ、または使い捨てユニットと関連付けた他の識別具を使用したもの)を含んでも良い。
【0276】
3.1.2. 例示的なベースユニット
図25は、本発明の例示的実施形態によるベースユニット11を示す。
図47Aは、本発明の例示的実施形態によるベースユニット11の内部構成部品のいくつかを示し、
図47Bはベースユニット11の後面斜視図を示す。ベースユニット11は、特に、熱交換器2541、気体圧式作動システム40、使い捨て器具インターフェース2500(マニホールドインターフェースとも呼ぶ)、患者インターフェース、制御器、ユーザインターフェースコンソール13および換気システム2701を含む。気体圧式作動システム40は概して
図4に示すタイプのものであるが、2つのポンプポッドそれぞれ用の気体圧インターフェース、弁およびセンサを備えてもよい。使い捨て器具インターフェースは、以下に論じるように、熱交換器の上流側および下流側で血液温度の監視を可能にするとともに、他のパラメータの監視を可能にするため、使い捨てユニットに熱的および電気的に接続可能な2つのセンサを含んでもよい。患者インターフェースは、1以上の温度プローブから温度情報(具体的には患者温度情報)を受信する1以上の温度入力部2702を含んでもよい。ユーザインターフェースコンソールは、ユーザがシステムの動作を制御および監視することを可能にする。例示的実施形態において、制御器は熱交換器およびポンプポッドの動作を、特に使い捨て器具インターフェースから受信した血液温度情報、気体圧式作動システムから受信した圧力情報、患者インターフェースから受信した患者温度情報、およびユーザインターフェースコンソールから受信したユーザ入力に基づいて制御する。
【0277】
3.1.3. 例示的な使い捨てユニット構成
上記のように、熱交換器システム用の使い捨てユニットは、通常、血液が熱交換器を通過する際に流れる熱交換器バッグを含む。熱交換器バッグは、1以上の流体路を含んでもよい。以下に説明する一例示的実施形態においては、熱交換器バッグは、2つの流体入口を共通の流体出口に接続する単一の流体路を含む。以下に説明する別の例示的実施形態においては、熱交換器バッグは単一の入口および単一の出口を有する単一の流体路を含む。熱交換器バッグは、通常可撓性のプラスチック材料でできている。ただし、熱交換器バッグは、他の材料でできていてもよく、熱伝導性を向上させるために金属材料または他の材料を含んでもよい。
【0278】
図2は、本発明の例示的実施形態による使い捨てユニット16の関連構成部品を示す。使い捨てユニット16は、特に、マニホールド130を備えた熱交換器バッグ21(「流路バッグ」とも呼ぶ)と、2つのポンプポッド25aおよび25bならびにフィルタ/空気トラップ29を保持する(または保持するように構成された)パネル2017を含む。好ましくは、使い捨てユニット16は、上述の構成部品を機械的に相互接続して、ベースユニット11に容易に装着可能であって、好ましくはマニホールド130を受容しポンプ25a、25bを動作させるための気体圧の接続を提供するマニホールドインターフェース(以下に記載)を含む結合ユニットとするのに使用される把手(ここでは図示していないが、
図48に示す)を更に含む。バッグ21は、流体が圧送されて通る流体路150を含む。本実施形態においては、マニホールド130は熱交換器バッグ21と一体化されており、適当なチューブ接続部、および熱交換器バッグ21と2つのポンプポッド25aおよび25bとを相互接続するのに用いられる支持体を備えて構成されている。
【0279】
図2に示す実施形態においては、マニホールド130は、流体路150の一端と流体連通する2つの流路入口23aおよび23b(「熱交換器バッグ入口」とも呼ぶ)、ならびに流体路150の他端と流体連通する流路出口27(「熱交換器バッグ出口」とも呼ぶ)を含む。好ましくは、血液は患者から、本実施形態では一対の自己完結型ポンプポッド25a、25b(個別には「ポンプポッド25」と呼ぶ)であって、好ましくは本明細書で説明したタイプの往復容積式ポンプによって圧送されて熱交換器バッグ21を通る。本実施形態においては、マニホールド130は、それぞれポンプポッド25a、25bへの気体圧接続(通常、チューブを使用して)の確立を容易にする気体圧導管138a、138bを含む。なお、実施形態は2つのポンプポッドの使用に限られず、更にいえば、ポンプポッドの使用に限られない。マニホールド130は、以下で更に詳細に説明する。
【0280】
本実施形態においては、各ポンプポッド25は、入口34および出口37を含む(すなわち、ポンプポッド25aが入口34aおよび出口37aを、ポンプポッド25bが入口34bおよび出口37bを有する)。各種構成部品は、少なくとも2種類の構成で相互接続し得る。
図48および72に示す第1の構成においては、患者から(例えば、「Y」コネクタ2024を介して)血液を直接受容するためにポンプ入口34a、34bが連結されるようにポンプポッド25a、25bが熱交換器バッグ21の上流側に連結されればよく、ポンプ出口37a、37bがそれぞれ熱交換器バッグ入口23a、23bにチューブ2026a、2026bによって接続され、フィルタ/空気トラップ29が、熱交換器バッグ出口27にチューブ2027によって接続される。この方式では、ポンプポッド25a、25bは、血液を押し出して熱交換器バッグ21を通すように動作し、血液は流路出口27を通って熱交換器バッグ21から流出し、患者に戻る前にフィルタ/空気トラップ29を通過する。第二の構成(図示せず)では、患者からの血液が熱交換器バッグ入口23a、23b(例えば、「Y」コネクタ(図示せず)を通って)に流入するようにポンプポッド25a、25bが熱交換器バッグ21の下流側に連結されればよく、ポンプ入口34a、34bが流路出口27(例えば、「Y」コネクタ(図示せず)を介して)に連結され、ポンプ出口37a、37bがフィルタ/空気トラップ29を介して患者に血液を戻すように連結される(例えば、「Y」コネクタ(図示せず)を介して)。この方式では、ポンプポッド25a、25bは熱交換器バッグ21を通して血液を吸引し、フィルタ/空気トラップ29を通して血液を患者へ圧送する。なお、代替的実施形態においては、熱交換器バッグ21は別々の出口を含むこともでき、これは、場合によっては熱交換器バッグ21のポンプポッドへの連結を容易にすることができる。
図2および48に示す実施形態においては、フィルタ/空気トラップ29は、好ましくは空気がフィルタから逃げられるようにするパージポートを備えている。
図48は、例えば、製造中にデータキーを差し込むことができるデータキースロット2542を示している。
【0281】
図81は、滅菌保護被覆2062を有する患者接続回路2060を含む、本発明の例示的実施形態による
図48の使い捨てユニット16の変形例を示す。具体的には、チューブ2061の一構成がポンプポッド入口とフィルタ出口の間に接続されて、完全な回路を形成している。本実施形態においては、チューブ2061は、空気パージ/サンプルポート2019、および必要に応じて分岐センサ接続部2020および/または使い捨てH/Sキュベット2022を含む血液監視インターフェースを含む。患者への接続を達成するには、外科医または他の技術者が通常2つのチューブ端を作るためにチューブの遠位部分またはその付近(本実施形態においては、参照番号2060用の矢印が指しているU字形部分であって、「サーカスマキシマス(circus maximus)」ともいう)でチューブ2061を切断する。すると、外科医または技術者は、この2つのチューブ端に患者に挿入する適当な針を接続することができる。
【0282】
本実施形態においては、遠位部分は滅菌され、滅菌状態を保つため薄いプラスチック保護材2062で覆われている。チューブ2061を切断する前に、滅菌野にあるチューブ2061の一部分を例えば保護材2062を分離するまで逆方向に引っ張って露出させる。
図82は、本発明の例示的実施形態による、チューブ2061の一部分を滅菌保護被覆2062から露出させた状態の、
図81の患者接続回路を図示している。チューブ2061のこの部位を露出させるとすぐに、2063で示す場所を切断する。
【0283】
図83は、本発明の例示的実施形態による、更に別の流体送出管2065を含む、
図81の使い捨てユニットの変形例を示す。流体送出管2065は、流体送出管2065からの流体(例えば、IV(Intravenous:静脈内)輸液)が患者の血液に混合され熱交換器を循環して患者に流入するよう、ポンプポッド入口と流体連通している。本実施形態においては、流体送出管2065は、流体源への接続を容易にするため、コネクタ2064(例えば、IVバッグに導入される針)を備えて構成されている。
【0284】
図15、16および17は、本発明の別の実施形態による代替的な熱交換器バッグ121のそれぞれ、上面斜視図、端面斜視図および平面図を示す。本実施形態においては、バッグ121は、単一の入口123、単一の出口127および入口121と出口123の間を伸びる流路150を有する。このバッグ121の入口123および出口127は離れているが、
図2および48のバッグ21では、入口23a、23bおよび出口27は互いに隣接している。隣接している入口および出口を有している(
図2および48に示すバッグのように)と、使い捨てユニットは取り扱う際にあまり嵩張らない。バッグ121は、流路150を作るために閉じ目のところで溶着した2枚のプラスチックまたは他の適した材料のシートから形成されればよい。
【0285】
なお、代替的実施形態は、使い捨てユニット16の一部として他のポンプポッド構成を採用してもよい。例えば、各種代替的実施形態は、
図5Aおよび5Bに示すポンプポッド組立体2004、
図22Aおよび22Bに示すポンプカセット2015、または
図23に示すデュアルハウジング配置構成2016を採用することもできる。ポンプポッド組立体2004に関しては、患者から血液を受容するように共通入口54を連結し、熱交換器バッグ21に血液を供給するように共通出口57を連結してもよい。または、熱交換器バッグ21から加温血液を受容するように共通入口54を連結し、血液をフィルタ/空気トラップ29に供給ように共通出口57を連結してもよい。同様に、ポンプカセット2015に関しては、患者から血液を受容するように共通入口2005を連結し、血液を熱交換器バッグ21に供給するように共通出口2006を連結してもよい。または、熱交換器バッグ21から加温血液を受容するよう共通入口2005を連結し、血液をフィルタ/空気トラップ29に供給するように共通出口2006を連結してもよい。
【0286】
なお、使い捨てユニット16の各種構成部品は、別々に、および/または各種組立体および部分組立体の形で提供してもよい。よって、「ユニット」という語は、使い捨て器具類が完全なシステム、またはキットとして提供される必要があることを意図したものではない。従って、例えば、ポンプポッド(またはポンプポッド組立体/カセット)は、使い捨てユニット16の他の部分とは別々に提供することも可能である。特に、ポンプポッドを別々に提供することは、異なるポンプ容積毎に主たる使い捨てユニットの別バージョンを用意する必要なしに様々な容積のポンプポッドを容易に一体化することを可能にする。加えて、チューブ接続部の一部をはじめから所定の位置に備えた状態で、例えば、ポンプ出口37a、37bを熱交換器バッグ入口23a、23bに連結した状態で、および/またはポンプ入口34a、34bを「Y」コネクタに連結した状態で、および/または流路出口27をフィルタ/空気トラップ29に連結した状態で、使い捨てユニット16を提供することも可能である。
【0287】
典型的な実施形態においては、好ましくは同じ制御器49が使い捨てユニット16の両方のポンプポッド(
図2および48に25aおよび25bで示すもの)を制御し、好ましくは(必ずではないが)正常な血液圧送動作中は、患者への/からの、および加温器を通る流れをより連続的にするため2つのポンプポッドを異位相で圧送させる(すなわち、一方の圧送チャンバを空にするときに他方が充填される)。制御器49がポンプ、加温器および他の構成部品を監視し制御し得る方式について上に説明したが、更に以下でも説明する。
【0288】
3.1.4. 例示的な熱交換器構成部品
図13Aは、
図25に示す熱交換器2541の詳細を示す。本実施形態においては、ベースユニットの一番上に位置するドア18内に上加温プレート12が搭載されている。下加温プレート14はドア18の下のベースユニット11内に位置している。使い捨てユニット16の一部である熱交換器バッグ21が、ドア18を閉じたときにバッグ21が2枚の加温プレート12、14の間になるように下加温プレート14の上に配置される。この配置構成は、概して単一プレート配置構成よりもより多くの熱を速く血液に伝えることを可能とする。ただし、代替的実施形態においては、熱交換器バッグ21の上または下に単一のプレートを用いてもよく、および/または他のタイプの加温素子を用いてもよい。ドア18、および/または上プレート12は、熱交換器から空気を抜くため、または上プレート12とバッグ21の連結性を向上させるため(例えば、バッグ21の上面を引っ張って上プレート12に接触させる真空を生成することによって)、気体圧式シール用トラックを含んでもよい。
【0289】
各加温プレート12、14は、単一の加温素子または多数の加温素子を含んでもよい。加温素子は、通常(必ずではないが)電気加温素子である。
図14は、上加温プレート12が単一の加温器素子141およびプラテン142を含み、下加温プレート14が単一の加温器素子143およびプラテン144を含む例示的な加温素子構成の分解図を示す。
図18は、各加温プレート12、14が7つの加温素子182、183、184、185を含む、代替的な加温素子構成を示す。実際には、加温素子を流れる電気が加温素子を加温し、加温素子がプラテンを加温し、プラテンが熱交換器バッグを通る血液に熱を伝える。なお、加温素子はプラテンなしで使うことができるが、プラテンは熱をより均一に分配する傾向がある。
図18に示す実施形態では、1つまたはいくつかの加温素子が故障しても、多くの場合プラテンは、全部よりは少ないが機能している加温素子で加温されて熱交換器バッグを通る血液に熱を付与することができるので、熱交換器は血液の加温を少なくともいくらかは実行できる。
【0290】
加温プレート12、14と熱交換器バッグとの熱的結合を向上させるため、ドア18は、閉じたときに実質的に気密にシールするようになっていてもよい。加えて、バッグとプレートの熱的結合の向上を実現するため、熱交換器バッグ周囲の空気を抜いてもよい。この点では、貯留器51、52用の正圧および/または負圧を生成するコンプレッサ(図示せず)を使用して熱交換器バッグの周囲から空気を抜いてもよい。余分な熱を放出させるため、冷却フィン131または他の要素を設けてもよい。
【0291】
血液が損傷を受けるほど加温されることがないように、熱交換器内部の温度が監視されてもよい。
図18に示す実施形態においては、各加温プレートは、出口27の近くで血液が最も高温になっているはずの場所に近い地点に位置する2つの温度センサ180、181を備える。入口23は出口27に近いので(この図では)、入口を流れる低温の血液がすぐそばの出口を流れる温度の高い血液を冷却するため、出口を流れる血液は、それより上流側よりも多少温度が低いことがある。加温素子のうちの3つ182、183、184は、熱交換器バッグ21内の流路の終端側に位置している。各温度センサ180、181は、加温素子と加温素子との間でかつ出口27の近くに位置してもよく、温度センサ180、181は、温度センサ180と181の間に位置する少なくとも1つの加温素子(本実施形態においては、加温素子183)から多少距離が離れていることが好ましい。従って、
図18に示すように、一方のセンサ181は、血液が出口27から流出する前に流路が横切る最後の2つの加温素子183、184の間に位置している。他方のセンサ180は、これら2つの加温素子183、184の上流側で、2つの加温素子182、183の間に位置している。2つの温度センサ180、181が正しく機能し、熱交換器が正しく機能している場合、2つの温度センサの示度の差は、一定の温度範囲内のはずである(全く同じ温度を示すことは通常ないが)。制御器は、好ましくはこの2つの温度センサ180、181から温度情報を受信し、一方(または両方)の温度センサが安全ではない温度を示したり、2つのセンサが測定した温度示度の差が所定の限界を超えた場合は、警告を発する、動作を中断する、加温素子への電力を低下させる、および/または他の措置を講じてもよい。プレートの最高温度は、血液の最高許容温度を超えてはならない。そうでなければ、血液の流れが止まったり遅くなったりした場合に血液が過熱されるおそれがある。
【0292】
ある種の実施形態においては、例えば、プライミング中に熱交換器バッグ21から空気を抜くのを容易にするため、または血液加温行為の終了時に残っている血液を熱交換器バッグ21から絞り出して患者に戻すため、加温プレート12、14の一方または両方がドアを閉じた際に鉛直方向に平行移動可能でもよい。それに加え、またはその代わりに、例えば、プライミング中にバッグから気泡を除去する助けとなるように、または血液を患者に戻す助けとなるようにバッグを傾けることができるよう、プレートが傾斜可能でもよい。
こうした、鉛直方向の平行移動および/または傾斜は、手動で実行させることも可能であり、例えば、制御器49の制御の下、自動で実行させることも可能である。
【0293】
従って、血液加温行為の終了時、圧送チャンバの容積を最小にして患者に向けてできるだけ多くの血液を吐出させるため、ポンプポッド25a、25b内の膜は、圧送チャンバ壁に押し当てられてもよい。加えて、鉛直方向に平行移動可能および/または傾斜可能なプレートを含む実施形態においては、患者にできるだけ多くの血液を戻すために熱交換器バッグ21を圧搾および/または傾斜させてもよい。
【0294】
3.1.5. 例示的なマニホールドおよびマニホールドインターフェース
図49Aおよび49Bは、それぞれ本発明の例示的実施形態による、
図2のマニホールド130の斜視背面図および斜視底面図を示す。
図49Aは、バッグ21の流体通路150の入口開口部および出口開口部に接続するためのバッグ入口コネクタおよびバッグ出口コネクタ2053、2054を示す。バッグ入口コネクタ2053は、入口23a、23bと流体連通し、バッグ出口コネクタ2054は出口27と流体連通する。サーモウェル133a、および133bが、それぞれ出口流体路および入口流体路内に示されている。ベースユニット11から気体圧ポート138a、138bに気体圧を供給するのに使用される気体圧インターフェース139a、139bが示されている。
【0295】
図13Bは、本発明の例示的実施形態による、
図2、49Aおよび49Bのマニホールド130の斜視背面断面図を示す。本実施形態においては、マニホールド130はバッグ入口23a内に位置する入口サーモウェル133aおよびバッグ出口27内に位置する出口サーモウェル133bを含む。サーモウェル133a、133bは、使い捨てユニット16がベースユニット11内に装着されるときにベースユニット11(以下に論じる)のマニホールドインターフェース内の対応するプローブとインターフェース接続する。
図13Cは、例示的なサーモウェルの拡大図を示す。
【0296】
サーモウェル133a、133bは、ベースユニット11と使い捨てユニット16との間の熱的および電気的相互接続を実現する。特に、このような熱的および電気的相互接続は、以下に論じるように、血液が熱交換器バッグ21を流入出する際に、制御器49が血液温度を監視することを可能にするとともに、制御器49がその他の測定を行う(例えば、熱交換器バッグ21内の血液または空気の存在を検出する、および漏れ検出を実行する)ことを可能にする。本実施形態においては、サーモウェル133a、133bのそれぞれが、使い捨てユニット16からベースユニット11への血液温度の伝送を向上させるため、直接流体路内に存在する(すなわち、血液に接触する)部分を有するように連結される。サーモウェルに代えてまたはサーモウェルに加えて、使い捨てユニット16は、血液が熱交換器バッグ21を流入出する際に制御器49が血液温度を監視するのに用いることができる他の温度プローブ/センサおよびインターフェースを含んでもよい。
【0297】
なお、
図13B、49Aおよび49Bに示す例示的実施形態は、ベースユニット11に熱情報を伝送し、必要に応じて伝導度検知に用いられるサーモウェルを含むが、他のタイプのセンサ構成部品をそれに加えてまたはその代わりに使用してもよい。例えば、サーモウェルを使用する代わりに、温度測定値または信号をベースユニット11に送るセンサ構成部品を使用してもよい。センサの各種タイプおよび構成を以下に説明する。
【0298】
加えて、マニホールド130は、ポンプ(
図2の25a、25bで示すもの)から伸びるチューブおよび熱交換器バッグ(
図13Aの21で示すもの)を支える各種チューブ支持体を含む。これらのチューブには、ポンプの出口(
図2の37a、37bで示すもの)から熱交換器バッグの入口23a、23bに通じるチューブが含まれる。熱交換器バッグの出口27も、チューブ支持体に支えられている。好ましい実施形態においては、チューブ支持体130は、ポンプの気体圧ポート(
図3の38で示すもの)に通じるチューブを更に支えるとともに、ポンプの気体圧ポートとベースユニットの気体圧式作動システム(
図4の40で示すもの)と間のインターフェース接続を提供する。気体圧ポートからのチューブは、チューブ支持体130内の気体圧導管138a、138b内へ伸びている。気体圧導管138a、138bはそれぞれ気体圧インターフェース139a、139bと流体連通する。気体圧インターフェース139a、139bは、ベースユニット内の容器に接続しており、この容器は、各ポンプ用の気体圧式作動システムとの流体連通を提供する。
この配置構成は、使い捨てユニットのベースユニットに対するインターフェースの製造を容易にするとともに、使い捨てユニットのベースユニットへの装着を容易にする。ベースユニットに装着するため、気体圧ポートが互いに対して適切に位置決めされるようにポンプを製造する代わりに、もっとコンパクトなチューブ支持体130が気体圧インターフェース139a、139bを正しい位置に支えてもよい。チューブ支持体130のもっと小さくて単純な構造は、ベースユニット11に取り付ける際に求められる許容誤差で気体圧インターフェース139a、139bを製造することを容易にする。使い捨てユニット16は、関連情報(例えば、使い捨てユニットのシリアルナンバーおよび使用状況情報)をベースユニット11に提供するためおよび/またはベースユニット11から提供された情報(例えば、使用状況情報)を記憶するため、ベースユニット11とインターフェース接続するデータキーまたは他の機構部を更に含んでもよい。
【0299】
気体圧式作動ポンプおよび/または弁を含む使い捨てカセットに同様の配置構成を用いてもよい。先に論じたように、カセット内の気体圧作動式ポンプおよび/または弁の数が十分多い場合は、これらのポンプおよび弁を含むカセットは、非常に大型になる−そして、必要な圧力も非常に高くなる−ため、全てのポンプおよび弁を適切にシールし、位置決めすることが困難となるおそれがある。この困難は、
図23に示すように、主カセット内の弁およびポンプと、各チューブ用の気体圧インターフェースを備えた小型の二次チューブ支持カセットとの間に気体圧連通が提供されるように、弁およびポンプを、そこから気体圧ポートからの接続チューブが通じている主カセット内に配置することで軽減される可能性がある。この方式では、小型のチューブ支持カセットを用いて気体圧インターフェース全ての正確な位置決めとシールが、気体圧式作動作用を大型の主カセットに直接加える必要がある場合に比べて容易に達成することができる。これに加えてまたはこれに代えて、ある実施形態においては、チューブ支持カセット上の単一の気体圧インターフェース、および気体圧式インターフェースと弁との間の単一の接続チューブを通じて数個の弁が同時に作動され得るように、主カセット内の弁を連動させてもよい。
【0300】
図26は、
図25に示すマニホールドインターフェース2500の拡大図を示す。マニホールドインターフェース2500は、特にプローブ61、62および気体圧ポート2539a、2539bを含む。
図13Bを再び参照すると、マニホールド130は、プローブ61、62がそれぞれサーモウェル133a、133bとインターフェース接続し、気体圧ポート2539a、2539bがそれぞれ気体圧インターフェース139a、139bとインターフェース接続するようにマニホールドインターフェース2500に装着されることがわかる。マニホールドインターフェース2500は、使い捨てユニット内の対応するデータキーとインターフェース接続するデータキーインターフェース2540を更に含む。データキーインターフェース2540は、好ましくは双方向通信インターフェースを提供し、これを通じて制御器49が使い捨てユニットから情報(例えば、シリアル/モデルナンバー、有効期限および使用状況情報)を読み取り、情報(例えば、使用状況情報)を使い捨てユニットに書き込むことができるようにする。例示的実施形態においては、制御器49は、データキーが存在しない場合、または、例えば、許容されないシリアル/モデルナンバーを含んでいる、あらかじめ設定された有効期限を過ぎている、もしくは既に使用されているなどの理由で使い捨てユニットが使用できない場合は、処置を開始させないようにしてもよい。制御器49は、データキーが外された場合は処置を終了してもよい。データキーインターフェース2540に代えて、ベースユニット11またはマニホールドインターフェース2500は、使い捨てユニットから情報を読み取り、および/または使い捨てユニットに情報を書き込む他のタイプのインターフェース(例えば、RFID、バーコードリーダ、スマートキーインターフェース)を含んでもよい。
【0301】
なお、1以上のポンプ(例えば、ポンプポッド)をマニホールド130などのマニホールドと一体化させ、単一のカートリッジとしてベースユニット内に配置してもよい。この組立体は、ポンプポッドへの気体圧接続をするのに外部チューブが必要ないように、気体圧ポート(ベースユニットに接続される)から直接ポンプ作動チャンバにつながる気体圧接続部を含むことも可能である。組立体は、これに加えてまたはこの代わりに、ポンプ出口とマニホールドまたはバッグとの間に外部チューブが必要ないように、流体接続部(例えば、ポンプ出口から熱交換器バッグを備えたインターフェースへの)を含むことも可能である。
【0302】
3.1.6. 例示的な血液加温回路図
図6は、本発明の例示的実施形態による、使い捨てユニット16の接続状態の概略図である。使い捨てユニット16をプライミングした後、入口カテーテル67および出口カテーテル68が患者の一血管、または複数の血管に挿入される。数個の患者温度プローブ66が患者の上または中に配設される。これらのプローブ66は、起こりうる患者の過熱を監視するため、患者温度情報を制御器に提供する。
【0303】
ポンプポッド25a、25b−気体圧ポート38を通じてベースユニットの気体圧式作動システム(制御器49の制御下にある)によって動作される−の作用で血液が入口カテーテル67から使い捨てユニットのチューブへと吸引される。ポンプポッドの入口逆止弁および出口逆止弁35、36が、血液が使い捨てユニットのチューブを確実に正しい方向(すなわち、
図6に示す概略図では、時計回り方向)に進むようにする。ポンプポッド25a、25bを流出した後、血液は好ましくはベースユニット内の2枚の加温プレートの間に装着された熱交換器バッグ21へ圧送される。血液が加温領域に流入する前に、バッグ入口温度センサ61を介して温度が測定され、温度センサ61は温度情報を制御器49に送信する。加温後、血液の温度がバッグ出口温度センサ62を介して再び測定され、温度センサ62も温度情報を制御器49に提供する。加温血液は次に空気トラップ/フィルタ29を通って流れ、戻りカテーテル68を通って患者へと流入する。
【0304】
好ましくは、制御器は、特に、患者温度情報(例えば、患者インターフェース2704を通じて受信した)、血液温度情報(例えば、マニホールド130内のサーモウェルおよびマニホールドインターフェース2500内の対応するセンサを通じて受信した)およびポンプ状態情報(例えば、貯留器圧力、作動チャンバ圧力、ストローク終了検出、体積測定、空気検出、閉塞検出、漏れ検出)に基づき、患者体温を実現/維持し、血液が局所的に過熱されることがないように(患者体温が安全なレベルでも、例えば、熱交換器が誤動作している、または血液が十分な速度で圧送されない場合には熱交換器構成部品内で血液が過熱する可能性がある)、クローズドループ制御方式を使用する。加えて、制御器は通常、多数の患者温度入力を受信する。制御器は、患者温度情報および血液温度情報に基づいて、熱交換器および/またはポンプの動作を動的に調節してもよい。
【0305】
バッグ入口温度センサ61およびバッグ出口温度センサ62は、ベースユニット11内のバッグの入口および出口が位置する付近に恒久的に搭載されてもよい。バッグ内を流れる血液とバッグの外に位置する温度センサとの間の熱伝導性を向上させる−これにより温度示度の精度を増す−ため、バッグは、血液の流路内に伸びる金属製サーモウェルをバッグの入口および出口に備えてもよい。バッグが加温プレートの間に配置されるとき、サーモウェルはベースユニット11から伸びる温度センサ61、62を収容し受容することができる。以下に論じるように、金属サーモウェルは、導電体としても使用することができ、従って、バッグ21の漏れまたはバッグ21内の空気を検出するのに使用できる。
【0306】
図6に示すシステムにおいては、プライミング流体(例えば、水)をポッドポンプに供給するためにプライミング管2021が備えられてもよい。更に、空気パージを容易にし、患者に戻される血液のサンプリングを可能にするため、空気パージ/サンプルポート2019を備えてもよい。例えば、分岐センサ接続部(嵌合ルアーロック)2020および Terumo Cardiovascular Systems Corpが販売するCDI(商標)血液パラメータ監視システム500血液気体監視装置用の使い捨てH/Sキュベット2022を含む、血液監視インターフェースを更に備えてもよい。
【0307】
各種代替的実施形態においては、制御器49は、(i)バッグ入口センサおよびバッグ出口センサ61、62によってそれぞれ測定されたバッグ入口温度およびバッグ出口温度の差、(ii)使い捨てユニット16を通る血液の体積流量、および(iii)ベースユニットの加温プレートに供給されている電力、を含むいくつかの要因に基づいてシステム内の異常状態を検出してもよい。各ポンプポッド25a、25bが各吐出ストローク中には同じ既知体積の血液を吐出する場合、体積流量は単に吐出ストロークの時間当たり回数を測定し、その回数に1回のストロークで吐出される体積を乗じることで測定できる(流量は、完全なポンプストロークが実行されている限りこの方式で判定できる。先に論じたように、好ましい実施形態における制御器は、動弁機構をディザリングし、作動チャンバ圧力トランスデューサからの圧力情報を分析することで、完全なストロークが実行されているかどうか監視する)。3つの要因−測定された流量、測定された血液温度の上昇分および血液の比熱−の積は、加温プレートに供給される電力に比例するはずである。加温行為中にこの釣り合いが大きく変化する場合は、制御器は警告信号を発することが好ましい。
警告信号は、監視している医療技術者への通報を行わせる、または、直接加温行為を停止するのに使用され得る。
【0308】
好ましくは、制御器は、所定の組の温度測定値および流量測定値に基づいて2つの推定値、一方に偏った不確定要素全てに基づく推定値および他方に偏った不確定要素全てに基づく推定値を発生させる。加温プレートによって消費されている電力は、常に一方の推定値より低く他方の推定値より高くなければならない。電力測定値がこの範囲からはずれた場合は、好ましくは制御器は警告信号を発する。
【0309】
なお、本システムは、他のタイプのセンサおよびシステムを含んでもよい。例えば、特に長時間にわたる処置を可能にするために、本システムは抗凝血剤を患者に供給することも可能である。本システムは、更に別の流体を患者に供給することも可能であり、特に加温処置に起因する患者の脱水症状を検出するための水和物センサを含んでもよい。システムは、過量の溶血を監視するための溶血センサを更に含むことも可能である。これらの検知の中には、サーモウェル/センサまたは他の機構を用いた伝導率検知を伴うものがあってもよい。
【0310】
3.1.7. 漏れおよび空気検出
ある種の実施形態においては、サーモウェル133a、133bの一方または両方と上加温プレートおよび下加温プレート12、14の一方または両方との間の導電率を測定することによって、熱交換器バッグ21の漏れの検出を達成し得る。先に論じたように、ベースユニット11は、ベースユニット11と使い捨てユニット16の電気的接続を提供にするサーモウェル133a、133bとインターフェース接続するセンサ61、62を含む。ベースユニット11は、通常同じく導電性である各加温プレート12、14それぞれに接続された電気プローブを更に含む。漏れがある場合、サーモウェルと加温プレートとの間の導電率が実質的に増加する(漏れ口を通過している流体は一般にバッグの材料よりも電気をよく通すため)はずである。正常時は、バッグを作っているプラスチック材料は比較的良好な絶縁体なので、サーモウェルに接触している電気プローブと加温プレート上の各電気プローブとの間の抵抗は非常に高い。しかし、漏れがあると、バッグの漏れ口を通過している液体(例えば、血液)は良好な電気の導体を供給する。そのため、漏れがあると抵抗が大きく低下する。従って、これらの電気プローブと連通している制御器は、プローブ間の導電率を測定し、導電率がある一定量増加したときには警告信号を発する。
【0311】
同様に、金属製サーモウェルは更にバッグの流路内の空気を検出するのに使用することが可能である。空気は導電性が低いため、バッグ内に空気があるとサーモウェルとプレートとの間の抵抗が増加する。従って、制御器がプレートとサーモウェルとの間の導電率の低下を検出し、この低下がある一定量を超える場合は、制御器は好ましくはエラー信号を発し、好ましくは加温行為を停止させる。
【0312】
これに加えてまたはこれに代えて、漏れを検出するために本システムは、他のタイプのセンサ、例えば、血液の漏れを検出するための二酸化炭素センサを含むことも可能である。
二酸化炭素センサは、通常適切な場所に、例えば血液が通過する流体の流路に隣接して、おそらくは部分的または完全に密閉された空間(例えば、ドアを閉めた状態の熱交換器内)に配置される。二酸化炭素検出器は、ベースユニットに含める、またはベースユニットの制御器と連通させることも可能である。
【0313】
3.1.8. 患者温度監視
血液加温行為においては、患者が安全限界を超えて過熱されるのを防ぐため、患者の温度は注意深く監視されなければならない。ある種の実施形態においては、少なくとも2つの別々の温度プローブが患者の中に、例えば、1つが腹部−膀胱または直腸に、膀胱壁または直腸壁に接触した状態で−もう1つが鼻道に、鼻道の後壁に接触した状態で位置づけられる(患者温度は単一のプローブまたは3つ以上プローブを用いても監視可能であり、他の場所からでもまたは他の方法でも、例えば、患者が吐き出す空気を監視することによっても監視可能である)。両センサが正しく位置決めされている場合、2つのプローブの温度示度はある一定の範囲内になるはずである。2つのプローブからの温度示度が互いに大きく異なる場合、制御器は警告信号を発するおよび/または加温行為を中止してもよい。
血液加温行為の準備中、プローブが患者に挿入される際に2つのプローブの示度は互いに比較され、更に正常な患者温度示度と比較されてもよい。2つのプローブが互いのあらかじめ設定した範囲で、正常な患者温度示度の範囲に入れば、プローブを位置決めしている医療職員は、いつプローブを正しく位置決めしたのかがわかる。
【0314】
血液加温行為中は、患者が危険な状態に過熱されることがないように、好ましくは
図19に示す方法が採られる。ステップ90で、腹部および鼻のプローブからの温度示度が読み込まれる。ステップ91で、示度が互いに比較される。示度があらかじめ設定した範囲外の場合は、温度示度に異常があることを知らせる警告信号が発せられる。ステップ92で制御器が2つのプローブの一方からの温度示度を監視し、それらの示度をあらかじめ設定した上限と比較する。一示度がこのあらかじめ設定した上限を超えている場合は、患者が過熱されつつあることを知らせる警告信号が発せられる。
【0315】
先に論じたように、熱交換器システムの制御器は、少なくとも2つの温度プローブを用いて患者体温を監視してもよい。現実には、制御器は単一の温度プローブからの温度示度しか必要としない。第二の温度プローブは原則として第1の温度プローブからの示度と比較する対象を提供する。そのため、ある種の実施形態においては、単一の温度プローブを用いて患者温度示度を制御器に提供してもよい。このような実施形態においては、オペレータは第二の温度プローブを独立して監視し、2つの温度示度が十分に一致しない場合は手動で加温行為を中止することも可能である。
【0316】
3.1.9. ユーザインターフェース
図27は、本発明の例示的実施形態による、例示的なユーザインターフェース画面を示す。画面の右手側には、(上から下に)処置の現在の段階を表示するための、各種治療の段階(すなわち、システム待機、事前チェック、プライミング、昇温、持続、冷却、および治療終了)に対応するインジケータ(この、例では、「昇温」が強調表示されており、治療が現在昇温段階にあることを示している)、例えば、現在の段階の残り時間または経過時間を示すための段階進行度インジケータ、およびオペレータが治療を制御するのに使用する4つの制御ボタン(例えば、処置一時停止、処置停止、処置開始または再開、および次段階へ進む)を含む、各種治療制御ボタンが含まれている。なお、この4つの制御ボタンは、オペレータが前の段階に戻してしまうことを防止する。画面の左手側は、オペレータが患者情報、状態情報、温度グラフ、流量グラフ、および記録を提供する画面をタブから選択できるようになっている。
【0317】
3.1.10 代替的な熱交換器の実施形態
上記の実施形態においては、流体は熱交換器の2枚のプレートの間に配置された熱交換器バッグを通されて加温または冷却される。当然、本発明は、決して熱交換器バッグまたはプレートの使用に限られるものではない。代替的実施形態においては、熱交換器バッグを他のタイプの熱交換器とともに用いてもよい(例えば、熱交換器バッグを丸めてチューブ状のチャンバに配置する、または他のタイプの熱交換器、例えば、オーブン、冷蔵庫、水槽、またはラジエータに配置することも可能である)。これに加え、またはこれに代えて、他のタイプの流体導管(例えば、或る長さのチューブ、および/またはラジエータ)を1以上のプレートと共に用いてもよい。熱交換器は、加温能および/または冷却能を含んでもよい。実際、熱交換器システムが同じ処置の一部として(例えば、血液を加温処置のために加温し、処置後急速に正常な温度に戻すことが可能なように)、または別の処置の一部として(例えば、ベースユニットが一患者に加温処置を提供し、その後別の患者に冷却処置を提供可能なように)加温および冷却の両方の用途に使えるように、熱交換器は、加温能および冷却能の両方を含むことも可能である。
【0318】
ある特定の代替的実施形態においては、使い捨てユニットは、或る長さのチューブを、熱交換器構成部品として含むまたは使用するように構成される。この或る長さのチューブは、好ましくは薄壁レイフラットチューブであるが、他のタイプのチューブも使用可能である。チューブはラジエータ内に配置され、このラジエータは、使い捨て器具の一部(例えば、ユニット全体がベースユニット内に配置できるようにラジエータがマニホールドに取り付けられてもよい)でも、ベースユニットの一部(例えば、ラジエータが熱交換器プレートの一方と一体である、またはプレートの一方に取り付けられていてもよい)でも、または使い捨てのまたは再利用可能な別体の構成部品でもよい。いずれの場合も、ラジエータは好ましくは、或る長さのチューブを受容する通路を含む。
【0319】
図75は、本発明の例示的実施形態によるラジエータ8000を示す。ラジエータ8000は、第1の開口8001から第2の開口8002まで一続きの通路を有する。
図76に示すように、通路は、或る長さのチューブ8006(例えば、薄壁レイフラットチューブ)を、チューブの一端が開口8001から突出しチューブの他端が開口8002から突出するように受容するように構成されている。チューブは、ユーザによってラジエータ内に配置されてもよく(特にラジエータがベースユニットの一部または別の再利用可能な構成部品である場合)、ラジエータに装着された状態で提供されてもよい(特に、ラジエータが使い捨てユニットの一部である場合)。ラジエータは一般に熱伝導性プラスチックまたは金属などの熱伝導性材料でできている。例示的実施形態においては、ラジエータ8000は、直径約150mm(6インチ)、高さ約50mm(2インチ)でよい。
【0320】
本実施形態においては、通路は、蛇行部位8005を介して接続された内側同心ループおよび外側同心ループ(それぞれ8003、および8004)を含む。特に、この構成は、両開口8001、8002にラジエータの外端縁沿いから到達できるようにする。開口8001(内側ループ8003に通じる)が流体入口地点を表し、開口8002(外側ループ8004に通じる)が流体出口地点を表しているとすると、流体は内側ループ8003内のチューブを時計回り方向に流れ、外側ループ8004内のチューブを反時計回り方向に流れる(
図76に示す向きを使用)。蛇行部位8005は2つのループを接続し、流れ方向を逆転させる。なお、内側ループおよび外側ループ8003、8004および蛇行部位8005は、流体方向の鋭角的または急激な変化を避け、よって過剰なせん断力または乱流が流体に付与されるのを避けるように構成されている。更に、このチューブ(とくに加圧された流体を搬送すると拡張するレイフラットチューブ)およびラジエータの配置構成は、チューブとラジエータが密接に連結し、関与する表面積が広いので、効率的な熱交換を提供するものである。
【0321】
先に論じたように、ラジエータ8000は使い捨てユニットの一部として、または別体の構成部品として供給することも可能で、そのような場合には、ラジエータ8000は一般にベースユニットの適切に構成された熱交換器内に配置される。例えば、ラジエータ8000は、熱交換器の2枚のプレートの間に(熱交換器バッグが上記の各種実施形態において2枚のプレートの間に配置されたのと同様に)配置することも可能で、この場合、2枚のプレートの距離をもっと離す、および/または上プレートがラジエータの上部に対して平らになることを可能にする特別なドア蝶番を用いることによって、熱交換器がラジエータ8000を収容するように構成してもよい。下プレートは、ラジエータの熱交換器への配置を容易にするため、ガイド(例えば、
図77の上面図および正面図に示すようなガイド8007)、または円筒形の壁(例えば、
図78の上面図および正面図に示すような円筒形の壁8008)を含むことも可能である。同様に先に論じたように、ラジエータはベースユニットの一部とすることも可能である。例えば、
図79に示すように、ラジエータ8000を下プレート14と一体にすることも可能である。
【0322】
あるいは、流体が直接ラジエータの通路の中を搬送されるように、別体のチューブを持たないある種のタイプのラジエータを用いてもよい。このようなラジエータは通常使い捨てである。ただし、例えば、洗浄して殺菌した後に再利用することも可能である。
図80は、マニホールドまたは直接1以上のポンプへ繋がるチューブ接続部などの流体接続部を収容する2つのポート8010、8011を含む、上記のラジエータ8000に類似の密閉形ラジエータ8009を示す。上記のラジエータ8000と同様、ラジエータ8009はベースユニットの一部、使い捨てユニットの一部または別体の構成部品とすることも可能である。
【0323】
なお、これらの実施形態は例示であり、本明細書で説明したタイプの熱交換器システムに使用することができる熱交換器構成部品のすべてのタイプを示すことを意図したものではない。
【0324】
3.2. 局所的温熱化学療法処置
図45は、本発明の例示的実施形態による局所的温熱化学療法処置システム2600を表す。システム2600は、ベースユニット2611、および使い捨てユニット2601を含むという点で基本的に上記のタイプの熱交換器システムの類似バージョンである。上記のシステムと同様、ベースユニット2611は、熱交換器、気体圧式制御システム、制御器、およびビルトインユーザインターフェース画面2606を含む。使い捨て器具2601(例えば、カセット)は、2つのポンプポッド2625aおよび2625b、単一の入口2602、単一の出口2603、および薬品送出インターフェース2604(本例では注射器インターフェースだが、代替的実施形態では他のタイプのインターフェース、例えば、ルアーポートまたは注射針が含まれてもよい)を含む。
【0325】
システム2600の例示的実施形態は、薬剤送達をしながら1分当たり約1〜2リットルを循環させるとともに、液排出を提供できるように設計されている。システム2600は、例えば、体腔(例えば、腫瘍摘出後の)を加温した化学療法溶液で一定時間満たし、その後空洞を空にするなどの、局所的または限局的治療に用いることができる。システム2600は更に、薬剤を添加しつつ体液(例えば、血液)を限局的に循環させるのに、例えば、体の一部位(例えば、片肺)を止血して流体を循環させるのに用いることができる。
【0326】
典型的な用途においては、ポンプ入口2602は流体源(通常、別体の貯留器だが、直接患者から流体を吸引することも可能)と流体連通してもよく、ポンプ出口2603は、流体を流体源から患者に送出するために患者と流体連通してもよい。流体源貯留器または別体の容器は、患者から排出された流体を受容するように連結されてもよい。従って、例えば、源流体を供給するのに貯留器を使用して排出された流体を受容するのに別体の容器を使用しても、源流体を供給し排出された流体を受容するのに同じ貯留器(患者の場合もあり得る)を使用してもよい。ポンプは任意の流体ポンプでよく、本明細書で説明したタイプのポッドポンプ、または他のタイプのダイヤフラムポンプもしくは他の流体ポンプが含まれるが、これに限らない。流体が患者に圧送される際、薬剤または他の流体(例えば、一種以上の化学療法薬品)が、例えば自動注射器または任意の自動または手動の薬品送達器具を用いて薬品送出インターフェース2604を通じて流体に導入されてもよい。
【0327】
このような圧送中、流体の温度は制御され、プロセス全体を通じて所定の温度(例えば、約37℃または体温)に維持される。温度制御は加温器とともに温度センサを用いて達成することができる。ある種の実施形態においては、温度センサは、本明細書で説明したタイプのうち任意のものでよい。温度センサは流体路のどこに位置してもよく、好ましい実施形態においては、患者の外の流体路のどこにあってもよい。流体は、誘導加温または表面加温を含むがこれに限らない任意の方法で加温してよい。流体は貯留器内で加温しても流体路沿いの別の場所で加温してもよい。
【0328】
一例示的実施形態においては、患者入口は患者の腹膜内に位置してもよい。流体および薬品は、閾値流体圧力に到達して、または閾値流体体積が患者に圧送されて充填段階の完了が示されるまで患者に圧送されてよい。流体は、通常一定時間患者内に留められ、その後通常患者から排出される(例えば、患者出口側の可変インピーダンスを作動させることによって)。充填/排出サイクルは、患者の治療の必要性に基づいて所定の回数繰り返されてもよい。
【0329】
別の例示的実施形態においては、患者の一部分(例えば、患者の肢)を、例えば、止血帯または圧力カフを用いて隔絶させてもよい。薬剤または他の流体を混合した体液(例えば、血液)は、上記の方法と類似の方法で隔絶させた領域を循環させてもよい。流体温度は直列形の加温器を用いて維持してもよい。
【0330】
図84は、局所的温熱化学療法処置を提供するのに使用し得る、本発明の例示的実施形態による流体回路を示す。貯留器が患者に送出すべき流体を貯留する。本例においては、流体は加温器を通じて患者へ圧送される。代替的実施形態においては、流体を貯留器で加温してもよく、直列形加温器を省略してもよい。一部の実施形態においては、貯留器内の流体は薬剤を含んでもよいが、他の実施形態においては、流体はポンプまたは他の手段(例えば、流体路への別の入口)を介して添加されてもよい。患者からの流体は、再び貯留器へ排出しても、何らかの他の容器に排出してもよい(または単に廃棄してもよい)。圧送されるおよび/または排出される流体の体積が、例えば、容量式液位プローブまたは他のセンサを用いて貯留器内で監視されてもよい。
【0331】
図85は、本発明の例示的実施形態による、局所的温熱化学療法処置を提供するのに使用し得る、平衡チャンバを含む別の流体回路を示す。本例においては、流体は貯留器内で加温され、貯留器内の流体の体積は容量式液位プローブを用いて監視される。流体は通常、適切な弁の制御によって上平衡チャンバを通じて患者に圧送されるが、流体は、適切な弁の制御によって直接(すなわち、平衡チャンバをバイパスして)患者に圧送されてもよい。患者から排出された流体は、下平衡チャンバを通って貯留器に還流する。平衡チャンバは常に一定の体積の流体を患者へ出入りさせるのに役立つ。
【0332】
図86は、本発明の例示的実施形態による、局所的温熱化学療法処置を提供するのに使用し得る、平衡チャンバおよび第2のポンプを含む別の流体回路を示す。本例においては、第2のポンプは流体を上平衡チャンバから患者に圧送するのに用いられ、これは流体を患者から下平衡チャンバに排出させるのにも役立つ。前の実施形態のように、流体は貯留器内で加温されても流体路内で加温されてもよい。
【0333】
図87は、本発明の例示的実施形態による、局所的温熱化学療法処置を提供するのに使用し得る、流出弁を含む流体回路を示す。本例においては、流出弁は患者に出入りする流体の量を制御するために制御されてもよい。例えば、弁が閉じた状態では、例えば患者の空洞を満たすために流体を患者に圧送し得る。流出弁は、患者から流体を流出させるため、または患者を通して流体を循環させるために部分的にまたは完全に開けられてもよい。
【0334】
4. 熱/伝導率センサ
熱および/または伝導率センサの各種実施形態を説明する。このような熱/伝導率センサは、種々様々な用途に使用することができ、決して流体の熱/伝導率測定、または熱交換器システムとの関連での熱/伝導率測定に限られるものではない。
【0335】
4.1. サーモウェル
一例示的実施形態においては、サーモウェルが温度検知プローブを収容するために用いられる。対象媒体(例えば、血液などの液体)にサーモウェルは直接接触し、検知プローブは直接接触しない。主に、サーモウェルの熱力学特性および検知プローブの構築様式によって決定される熱伝達性に基づいて、検知プローブは対象媒体の特性を対象媒体に直接接触することなく判定することができる。センサ装置配置構成の精度および効率は、プローブおよびサーモウェルの構築材料および形態を含むがこれに限らない多くの要因に依存する。
【0336】
図50Aおよび50Bを参照すると、サーモウェル5100および検知プローブ5102を含むセンサ装置の2つの実施形態が流体管5108に関連して示されている。これらの実施形態においては、サーモウェル5100は流体管5108に組み込まれている。しかし、他の実施形態においては、そのいくつかを以下に説明するが、サーモウェル5100は流体管5108に完全には組み込まれていない。すなわち、サーモウェル5100は、流体管5108と比較すると異なる材料でできていてもよい。代替的実施形態においては、サーモウェル5100は、流体管には組み込まれていないが、何にでも組み込むことができる、または何にも組み込むことができない。例えば、ある実施形態においては、サーモウェル5100は容器、チャンバ、機械、保護スリーブ、流体ポンプ、ポンプカセット、使い捨てユニット、マニホールド、または他の組立体、部分組立体、もしくは構成部品に組み込むことができる。説明のため、例示的実施形態を例示目的で説明する。本例示的実施形態は、サーモウェル5100が流体管内にある実施形態を含む。しかし、センサ装置およびサーモウェルは、流体管の外に用いることもできる。
【0337】
図50Aを参照すると、対象媒体が流れる空間5104を提供する流体管5108内に形成されたサーモウェル5100、および検知プローブ5102を示す側面図が示されている。検知プローブからのデータは少なくとも1本のリード線5106を用いて伝送される。
図50Aの端面図が
図50Bに示されている。
【0338】
本実施形態においては、サーモウェル5100は流体管5108と一体である。サーモウェル5100の総面積は異なっていてもよい。サーモウェル5100の形態を変えることにより、サーモウェル5100の熱伝導性特性を含むがこれに限らない変数が変化し、従って、サーモウェル5100と検知プローブ5102との間の熱伝達性が変化する。以下により詳細に述べるように、サーモウェル5100の材料構成は、センサ装置におけるもう1つの変数である。
【0339】
ある実施形態においては、流体管5108は所望の熱伝導性を有する材料でできている。
この材料は、目的に応じて変わってもよい。材料は何でもよく、任意のプラスチック、セラミック、金属もしくは金属合金またはこれらの組み合わせを含むが、これに限らない。
【0340】
図51Aおよび51Bを参照すると、これらの実施形態においては、流体管5108およびサーモウェル5100は別体である。ある実施形態においては、流体管5108およびサーモウェル5100は、異なる材料から作られる。
【0341】
図50A〜50Bおよび
図51A〜51Bは、センサ装置の比較的単純な実施形態を示す。従って、これらの実施形態の場合、検知装置はサーモウェル5100および検知プローブ5102を含み、サーモウェルは一連続部として流体管5108と一体化しているか、または流体管5108とは別体である。ただし、センサ装置の多くの実施形態が考えられる。各種実施形態のほとんどは、サーモウェル5100および/または検知プローブ5102の材料および形態の変形例を含む。これらの変形例は、センサ装置の使用目的に関連する多数の変数によって決定される。従って、対象媒体および求められるセンサの制約、例えば、精度、結果が出るまでの時間、ならびに流体流および対象媒体の特性は、使用する実施形態を決定する各種制約の実例に過ぎない。ほとんどの例では、各変数はセンサ装置の実施形態の少なくとも一部に影響する。
【0342】
従って、多数の変数がセンサ装置の各種実施形態に影響し、変数としては、1)サーモウェルの形態、2)サーモウェルの材料組成、3)検知プローブの材料組成、4)対象媒体の求められる流量、5)、サーモウェルの長さおよび幅、6)検知プローブの求められる精度、7)壁厚、8)検知プローブの長さおよび幅、9)製造コスト、10)対象媒体の組成、および乱流に対する耐性を含む特性、11)検知プローブの形態、および12)求められる読み取り速度が含まれるが、これに限らない。
【0343】
ここまで、センサ装置の各種実施形態を説明した。説明はセンサ装置の実施形態の設計に対する変数の影響についての情報の提供を意図したものである。しかし、これらは例示的実施形態に過ぎない。更に多くの実施形態が考えられ、センサ装置の使用目的に基づいて容易に設計可能である。従って、上記の変数の一部を示すリストのうちの1以上を変えることにより、センサ装置の実施形態が変わることがある。
【0344】
図52Aおよび52Bを参照すると、流体管5108とは別体としてのサーモウェル5100の2つの実施形態が示されている。これらの実施形態は、サーモウェル5100の2種類の形態を示す。
図52Aでは、形態が長尺のサーモウェル5100を含む。
図52Bでは、サーモウェル5100の形態は短めである。サーモウェル5100の長さおよび幅によって、サーモウェル5100と検知プローブ5102との間の熱伝導性の性質および精度が異なる。センサ装置の使途によっては、サーモウェル5100の形態は一種の変数である。
【0345】
図52Aを参照すると、長尺サーモウェル5100は、一般に流体管5104内の対象媒体温度と周辺温度との隔絶性を向上させる。
図52Aに示す長尺サーモウェル5100の形態の方が精度は高いかもしれないが、
図52Bに示す実施形態も目前の目的に対しては十分正確であり得る。従って、サーモウェル5100の長さおよび幅は、所望のまたは許容できる精度特性を有する任意の長さおよび幅でよい。当然ながら、これらの実施形態では長さの極端な例を2種類示したが、どんな長さも考えられる。本明細書における記述は、変数の影響のいくつかを説明するためのものである。
【0346】
図52Aおよび52Bを更に参照すると、
図52Aに示す長尺サーモウェル5100は、流体管5108内の対象媒体の流体流に
図52Bに示す実施形態よりも強い衝撃を与える可能性がある。当然ながら、サーモウェル5100の長さも、流体流の乱流に影響する可能性がある。従って、サーモウェル5100の長さおよび幅は、他の変数を軽減させながら流体流および流体の乱流への衝撃を増減させるために変えてもよい。
【0347】
サーモウェル5100の形状も変数である。任意所望の形状が考えられる。しかし、サーモウェル5100の形状は、他の変数と同様、一つにはセンサ装置の使用目的に基づいて決定される。説明のため、例示的実施形態を本明細書では説明する。しかし、本例示的実施形態における形状は制限することを意味するものではない。
【0348】
図53を参照すると、説明のためサーモウェル5100は3つのゾーンに分割されている。上ゾーン5402は検知プローブ(図示せず)と連通する。中間ゾーン5404はサーモウェル5100の望ましい長さを実現する。上記のように、長さは流体路内に突出する度合いを決定し得る。長さは、先に論じたように、一つには求められる性能特性によって決められる。更に、中間ゾーン5404は上ゾーン5402を雰囲気から隔絶する。中間ゾーン5404は、サーモウェル5100を流体管(
図50A〜50Bに5108として示す)に対して位置づける、締結するまたはシールする働きをしてもよい。
【0349】
下ゾーン5406は、ある実施形態においては不要(
図56K参照)であり、従って、これらの実施形態においては、中間ゾーン5404および下ゾーン5406は単一のゾーンでもよい。しかし、本例示的実施形態においては、下ゾーン5406は、サーモウェルを流体管の一領域にプレス嵌めする際の助けとなるように形作られており、サーモウェル5100を流体管5108に対して位置づけるおよび/または締結してもよい。他の実施形態においては、ゾーン5406は各種接合方法を容易にするように形成されてもよい(
図56A〜56J、56L〜56S参照)。
【0350】
図54を参照すると、サーモウェル5100の例示的実施形態の断面が示されている。サーモウェル5100の本例示的実施形態の寸法は、長さAが約2.87mm(0.113インチ)(0〜9.63mm(0〜0.379インチ)の範囲)、半径Bが約1.68mm(0.066インチ)および壁厚Cが約0.0762〜0.229mm(0.003〜0.009インチ)の範囲である。これらの寸法は、例示的実施形態のためだけに示したものである。検知装置の変数および使用目的に応じてサーモウェル5100の寸法は異なってもよく、各種実施形態は必ずしも大きさが対応しているわけではない。
【0351】
ある実施形態においては、壁厚は一様ではない、すなわち、壁厚はサーモウェルの場所によって異なる。これらの実施形態は、様々な場所が様々な厚さで示されているが、これは説明目的のためだけである。サーモウェルの各種実施形態は、変数に対応して様々な壁厚を組み入れてもよく、これらの様々な壁厚は、検知装置の求められる特徴に応じて種々様々に組み合わせてよい。従って、例えば、ある実施形態においては、薄いゾーン5406と共に厚いゾーン5404を用いてもよく、その逆も可能である。あるいは、「薄い部分」と「厚い部分」との他の任意の組み合わせを用いてもよい。更に、壁厚を表すために用いた語は相対的なものである。任意所望の厚さが考えられる。よって、示した図は説明目的であり、二種類の実施形態を示しているが、それ以上も考えられる。
【0352】
図55Aおよび55Bを参照すると、ゾーン5402は必要に応じて厚くまたは薄くすることができる。薄いゾーン5402は一般に、変数の中では特に検知時間の短縮を実現し、一方厚いゾーンは過酷な環境に対して、またはセンサの感度を下げることが望まれる場合に有用であり得る。ゾーン5404は、変数の中では特に強度を高めるためには厚くてもよく、または変数の中では特に雰囲気からの隔絶性を高めるためには薄くてもよい。ゾーン5406は用いる締結方法に応じて薄くまたは厚くしてもよい。
【0353】
実際には、サーモウェル5100は流体管5108とは別体として流体管5108に埋め込むことができる。これは上に
図51A〜51Bについて示し記述している。サーモウェル5100を流体管5108に埋め込むために各種実施形態を用いてよい。好ましい実施形態をここでは説明するが、サーモウェル5100を流体管5108に埋め込む任意の方法またはプロセスを用いることができる。
図56A〜56Sを参照すると、サーモウェル5100を流体管5108に埋め込む各種構成が示されている。これらの実施形態の場合、サーモウェル5100は、プラスチック、金属、セラミックまたはこれらの組み合わせを含むがこれに限られない任意の材料で作ることができる。材料は、一部には目的の対象媒体との適合性によって決めればよい。これらの実施形態においては、流体管5108はプラスチック、金属または対象媒体に適合する他の任意の材料で作ればよい。
【0354】
まず、
図56Aを参照すると、ゾーン5404(
図53に示す)を用いて流体管5108にプレス嵌めされたサーモウェル5100が示されている。
図56Bには、ゾーン5406を用いて流体管5108にプレス嵌めされたサーモウェル5100が示されている。
図56Cを参照すると、可撓タブ5704を用いて流体管内5108に保持されたサーモウェル5100が示されており、Oリングも備えられている。
図56Dを参照すると、流体管5108にOリング5702と共に挿入されたサーモウェル5100が示されている。
サーモウェル5100は代替的実施形態としても示されており、ここではサーモウェル5100のゾーン5406は、Oリング溝を含む。Oリング溝は、サーモウェルに、切り込む、形成する、回転させて削る、鋳造で形成する、または射出成形することができる。または、他の任意の方法でサーモウェル5100に形成することができる。
図56Eは
図56Dに示されているのと同様の実施形態を示す。ただし、Oリング溝はゾーン5406に形成されているが、
図56Dに示すように切り込んだ、成形したまたは鋳造で形成したものではない。
【0355】
図56Fを参照すると、流体管5108にプレス嵌めされたサーモウェル5100が示され、ゾーン5406はゾーン5406の端縁が流体管5108の材料を変形することを可能にする可撓性を含む。
図56Gを参照すると、サーモウェル5100はゾーン5406に流体管5108に組み付けるための可撓性を与える切り込み5706を、ゾーン5406に含む。Oリング5702も備えられている。2つの切り込みが示されているが、代替的実施形態ではもっと多数のまたは少数の切り込みを用いてもよい。
【0356】
図56Hを参照すると、
図56Fに示す実施形態がOリング5702を更に追加して示されている。
図56Iを参照すると、流体管5108に挿入成形されたサーモウェル5100が示されている。ゾーン5406は、挿入成形による組立てを容易にするまたは可能にするように形成されている。
【0357】
図56Jは、サーモウェル5100を流体管5108内に保持するためにサーモウェル5100が熱かしめ5708されている実施形態を示す。
図56Jの一部の実施形態においては、Oリング5710も含まれている。本実施形態においては、Oリング5710は矩形断面を有する。しかし、代替的実施形態においては、Oリングは円形またはX型の断面を有していてもよい。同様に、本明細書で説明したOリングを有する各種実施形態において、これらの実施形態のOリングは円形、矩形もしくはX型の断面、または任意所望の断面形状を有することができる。
【0358】
図56Kを参照すると、サーモウェル5100は接着剤5712によって流体管5108内に保持されている。接着剤は、任意の接着剤でよいが、一実施形態においては、接着剤はUV硬化接着剤である。代替的実施形態においては、接着剤は対象媒体に適合する任意の接着剤でよい。本実施形態においては、サーモウェル5100はゾーン5406がないものとして示されている。
【0359】
図56Lを参照すると、流体管5108に超音波溶着されているサーモウェル5100が示されている。ゾーン5406は超音波溶着による接合が可能なように加工されている。
【0360】
図56Mを参照すると、流体管5108に挿入成形されているサーモウェル5100が示されている。ゾーン5406は流体管5108中のプラスチックが周りを流れるフランジである。図示した実施形態では、フランジは平坦だが、他の実施形態においては、フランジはベル状またはその他の形状でもよい。
【0361】
図56Nを参照すると、保持プレート5714および締結具5716によって流体管5108内に保持されたサーモウェル5100が示されている。Oリング5702も示されている。
【0362】
図56O〜56Pを参照すると、保持リング5718(
図56O)によって、または代替的実施形態においてはクリップ5720(
図56P)によって流体管5108内に保持されているサーモウェル5100の端面図が示されている。Oリング5702も示されている。
【0363】
図56Qを参照すると、サーモウェル5100の代替的実施形態を備えた
図56Cの実施形態が示されている。サーモウェル5100の本実施形態においては、
図53にゾーン5404として示されたものが、検知プローブとの位置合わせを容易にし得る、ゾーン5402の雰囲気からの隔絶性を高め得る、および流体路内の流量特性を向上させ得るテーパを含む。サーモウェル5100は流体管5108内に可撓性タブ5704を用いて保持されているのが示されている。Oリングも備えられている。
【0364】
図56Rは、サーモウェル5100の代替的実施形態を備えた
図56Jの実施形態を示す。本実施形態において示すサーモウェル5100は、ゾーン5404に、検知プローブとの位置合わせを容易にし得る、ゾーン5402の雰囲気からの隔絶性を高め得る、および流体路内の流量特性を向上させ得るテーパを有する。ゾーン5402は、熱プローブとの効果的な熱的結合のための半球状接触部を提供する。サーモウェル5100を流体管5108内に保持するため、サーモウェル5100は熱かしめ5708されている。
図56Rの一部の実施形態においては、Oリング5710も含まれている。本実施形態においては、Oリング5710は矩形断面を有する。しかし、代替的実施形態においては、Oリングは円形またはX型の断面を有していてもよい。
【0365】
図56Sを参照すると、サーモウェル5100の代替的実施形態を備えた
図56Hの実施形態が示されている。
図56SはOリング5702を追加して示されている。サーモウェル5100の本実施形態においては、ゾーン5404(
図53に示すような)は、ゾーン5402の雰囲気からの隔絶性を高め得る畳み込み部を有している。ゾーン5404の形態をいくつか示したが、望ましい性能特性を得るための更に多くの例を示すことも可能である。
【0366】
4.2. 検知プローブ
図57を参照すると、検知プローブ5800の例示的実施形態の断面図が示されている。
ハウジング5804は先端5802に続く中空構造である。先端は熱伝導性の高い材料でできている。本例示的実施形態においては、ハウジング5804は断熱性の材料でできている。一部の実施形態においては、ハウジングは断熱性および電気絶縁性の材料でできている。本例示的実施形態においては、ハウジング5804は断熱性および電気絶縁性の材料であるプラスチックでできている。先端5802は直接対象媒体に接触する、または、サーモウェルと嵌め合わされる。
【0367】
本例示的実施形態においては、先端5802は、先端5802とハウジング5804の間(領域5807)のウレタン樹脂または別の断熱材を用いてハウジング5804に取り付けられている。ウレタン樹脂は、更に構造的な支持を強化する。代替的実施形態においては、先端5802をハウジング5804に接合するのに他の加工方法および接合方法を用いることができる。
【0368】
検知プローブ5800の先端5802は、熱伝導性の材料でできている。ただし、検知プローブの求められる使途および対象媒体によっては、もっと熱伝導性の高い材料、例えば、銅、銀および鋼を使用することもできる。材料は、使用目的に対する耐久性および適合性を持つように選択されてもよい。更に、コストおよび製造の容易さなどの要因も他の材料の選択を決定し得る。一例示的実施形態においては、先端5802は銅製である。他の実施形態においては、材料は銅もしくは銀の合金、または、金属およびセラミックを含むがこれに限らない任意の熱伝導性の材料または要素の固体もしくは合金にすることができる。ただし、本例示的実施形態においては、先端5802は金属製である。
【0369】
本例示的実施形態においては、サーモウェルの例示的実施形態において上に説明したように、先端5802はサーモウェルと熱的に結合するように形作られている。本例示的実施形態においてのみならず他の実施形態においても、先端5802は熱センサ5808を雰囲気から絶縁するように形作られていてもよい。本例示的実施形態においては、先端5802は金属製である。
【0370】
代替的実施形態においては、非導電性の材料を先端に用いてもよい。これらの実施形態は、サーモウェルをプローブから電気的に絶縁する必要がある使途に好ましい。別の代替的実施形態においては、先端5802は任意の熱伝導性のセラミック製でもよい。
【0371】
本例示的実施形態においては、熱センサ5808はハウジング内に位置しており、熱伝導性のエポキシ5812を用いて先端5802の内部に取り付けられている。本例示的実施形態においては、用いたエポキシはTHERMALBONDであるが、他の実施形態においては、任意のサーマルグレードエポキシを用いることができる。ただし、代替的実施形態においては、熱グリースを用いてもよい。代替的実施形態においては、エポキシまたはグリースは用いられない。
【0372】
熱センサ5808は、本例示的実施形態においては、サーミスタである。サーミスタは一般に、精度の高い実施形態である。しかし、代替的実施形態においては、熱センサ5808はサーモカップルまたは任意の他の温度検知器具でよい。熱センサ5808の選択は、ここでも検知装置の使用目的に関係し得る。
【0373】
熱センサ5808からのリード線5814はハウジング5804の背面から外に出ている。これらのリード線5814は、計算に使用される他の機器に繋がる。本例示的実施形態においては、先端5802からの第3のリード線5816が更に含まれている。この第3のリード線5816は、タブ5818の先端に取り付けられている。本実施形態においては、先端5802は金属でありハウジングはプラスチックなので、第3のリード線5816は先端5802に取り付けられる。代替的実施形態においては、ハウジング5804が金属なので、第3のリード線5816はハウジング5804に取り付けられてもよい。従って、本例示的実施形態においては、先端5802はリード線に取り付けるためのタブ5818を含む。しかし、代替的実施形態において、およびおそらくは検知装置の使用目的によっては、第3のリード線5816は含まれていなくてもよい。更に、第3のリード線が要求されない代替的実施形態においては、先端5802はタブ5818を含んでいなくてもよい。
図58を参照すると、検知プローブ5800の分解図が示されている。
【0374】
図59を参照すると、本例示的実施形態の代替的実施形態が示されている。本実施形態においては、検知プローブの先端6002が示されている。先端6002は、テストすべき対象媒体、またはサーモウェルに接触することになるゾーン6004を含む。ゾーン6006はセンサプローブハウジング(図示せず)に繋がる。内部領域6008は熱センサ(図示せず)を収容する。本実施形態においては、先端6002はステンレス鋼製である。
しかし、他の実施形態においては、先端6002は、金属(銅、銀、鋼およびステンレス鋼を含む)、セラミックまたはプラスチックを含むがこれに限らない任意の熱伝導性の材料で作ることができる。
【0375】
本例示的実施形態においては、ゾーン6006はタブ6010を含む。タブ6010から第3のリード線(
図57について記述した5816のような)が繋がる。次に、
図60Aおよび60Bを参照すると、先端6002およびハウジング6012を含む検知プローブ6000が示されている。一実施形態においては、ハウジング6012は、プラスチックを含むがこれに限らない任意の断熱性材料でできている。一実施形態においては、ハウジング6012は先端6002にプレス嵌めされる、接着されるまたは任意の他の方法で取り付けられる。一実施形態においては、熱センサ6014は先端6002にサーマルグレードエポキシを用いて、または代替的実施形態においては、熱グリース6022を用いて熱的に結合される。熱センサ6014からの2本のリード線6016がハウジングの遠位端へと伸びている。一部の実施形態においては、第3のリード線6018がタブ6010から先端6002に取り付けられている。先に論じたように、第3のリード線が要求されない一部の実施形態においては、先端6002はタブ6010を含まない。
【0376】
図60Bを参照すると、検知プローブ6000の代替的実施形態が示されている。本実施形態においては、ハウジング6012は先端6002のゾーン6006およびリード線6016、更に一部の実施形態においては、第3のリード線6018を覆って成形されたプラスチックである。
【0377】
図61を参照すると、
図59〜60Bに示す検知プローブ6000の一実施形態の全体側面図が示されている。検知プローブ6000は、ハウジング6012、先端6002およびリード線6016、6018を含む。フランジ6020が示されている。一部の実施形態においては、フランジ6020は、機器への搭載および/または取り付けに使用される。
【0378】
図62Aを参照すると、
図59〜61に示す検知プローブ6000が、流体管5108に締結されたサーモウェル5100に連結した状態で示されている。図示した実施形態においては、検知プローブ6000の遠位端に2本のリード線6016が示されている。更に、一部の実施形態においては、第3のリード線6018が検知プローブ6000に組み入れられている。
図62Bは、検知プローブ6000が2本のリード線6016を含むが第3のリード線6018を含まない代替的実施形態を示す。
【0379】
図62Aおよび62Bを参照すると、検知プローブ6000の先端6002は、サーモウェル5100と直接接触している。再び
図53を参照し、更に
図62Aおよび62Bを参照すると、サーモウェル5100はゾーン5402を含む。サーモウェル5100は中空であり、ゾーン5402の内側部分は検知プローブ先端6002に嵌合接触するように形成されている。本実施形態において示すように、サーモウェル5100は検知プローブ6000と嵌まり合う形態を有するように設計されている。従って、サーモウェル5100の形態は、検知プローブ6000の先端6002の形態によって決まり、逆も同様である。ある実施形態においては、検知プローブ6000はサーモウェル5100にぴったりと嵌まったり緊密に嵌合しないことが望ましいことがある。
【0380】
図63Aを参照すると、流体管5108内に締結されたサーモウェル5100に連結された検知プローブ5800(
図57に示すような)の一実施形態が示されている。図示した実施形態においては、検知プローブ5800の遠位端に2本のリード線5814が示されている。ある実施形態においては、更に第3のリード線5816が検知プローブ5800に組み入れられている。
図63Bは、検知プローブ5800が2本のリード線5814を含むが第3のリード線5816を含まない代替的実施形態を示す。
【0381】
図63Aおよび63Bを参照すると、検知プローブ5800の先端5802は、サーモウェル5100と直接接触している。再び
図53を参照し、更に
図63Aおよび63Bを参照すると、サーモウェル5100はゾーン5402を含む。サーモウェル5100は中空であり、ゾーン5402の内側部分は検知プローブ先端5802に嵌合接触するように形成されている。本実施形態において示すように、サーモウェル5100は検知プローブ5800と嵌まり合う形態を有するように設計されている。従って、サーモウェル5100の形態は、検知プローブ5800の先端5802の形態によって決まり、逆も同様である。
【0382】
4.3. センサ装置
センサ装置の説明のため、センサ装置を例示的実施形態に関して説明する。本例示的実施形態は、
図62A、62Bおよび
図64に示され、代替的例示的実施形態が63Aおよび63Bに示されている。センサ装置の代替的実施形態においては、検知プローブはサーモウェルの外で使用することができる。しかし、本明細書において、センサ装置は既に単独で説明した。従って、以下に続く説明では、この目的のため検知プローブおよびサーモウェルを含むセンサ装置の例示的実施形態の一実施形態を説明する。
【0383】
図64を参照すると、例示的実施形態における、連結され、流体管の外にある状態の
図62Aに示す検知プローブ6000およびサーモウェル5100が示されている。上記のように、サーモウェル5100は、流体管、保護スリーブ、任意の使い捨て器具、機械、チャンバ、カセット、または容器の中にあってよい。しかし、本例示的実施形態のこの説明のため、サーモウェル5100は、対象媒体の熱的特性および/または伝導特性を判定するために用いられるどこかの場所(
図62A)にあるものとする。
【0384】
対象媒体は、サーモウェル5100のゾーン5402の外側に接触している。熱エネルギーは対象媒体からサーモウェル5100に伝達され、更に検知プローブ6000の先端6002に伝達される。熱エネルギーは次いで、熱センサ6014に伝えられる。熱センサ6014は、リード線6016を介して熱センサ6014のフィードバックに基づいて対象媒体の温度を判定することができる機器と通信する。伝導率検知も求められる実施形態においては、リード線6018が対象媒体の伝導率を判定することができる機器と通信する。対象媒体の伝導率の判定に関しては、リード線6018に加えて第2の電気リード線/接点(図示せず)が用いられる。第2のリード線は、
図64に示すような第2のセンサ装置、あるいは
図64に示すセンサ装置とは必ずしも同じではない第2のプローブでも可能だが、むしろ、対象媒体の電気容量を検知できる、電気接点を含む任意のプローブまたは装置である。
【0385】
先端6002から熱センサ6014への熱伝達は、熱エポキシまたは熱グリース6022の使用によって向上させ得る。
【0386】
図63Aおよび63Bを参照すると、本代替的例示的実施形態においては、検知プローブ5800がサーモウェル5100に連結されているが、図示した形態を有する先端5802がサーモウェル5100の内側ゾーン5404および5406と先端5802との間に空隙6402を形成している。空隙6402は、5802の検知先端の頭頂部だけがサーモウェル5100の上ゾーン5402と連通するように、絶縁障壁を提供する。
【0387】
検知プローブ5800およびサーモウェル5100は連結され、流体管の外にある状態で示されている。上記のように、サーモウェル5100は、流体管、保護スリーブ、使い捨てユニット、機械、非使い捨てユニット、チャンバ、カセット、または容器の中にあってよい。しかし、本例示的実施形態のこの説明のため、サーモウェル5100は、対象媒体の熱的特性および/または伝導特性を判定するために用いられるどこかの場所(
図63A)にあるものとする。
【0388】
対象媒体は、サーモウェル5100のゾーン5402の外側に接触している。熱エネルギーは対象媒体からサーモウェル5100に伝達され、更に検知プローブ5800の先端5802に伝達される。熱エネルギーは次いで、熱センサ5808に伝えられる。熱センサ5808は、リード線5814を介して熱センサ5808のフィードバックに基づいて対象媒体の温度を判定することができる機器と通信する。伝導率検知も求められる実施形態においては、リード線5816が対象媒体の伝導率を判定することができる機器と通信する。対象媒体の伝導率の判定に関しては、リード線5816に加えて第2の電気リード線(図示せず)が用いられる。第2のリード線は、
図63Aに示すような第2のセンサ装置、あるいは
図63Aに示すセンサ装置とは必ずしも同じではない第2のプローブでも可能だが、むしろ、対象媒体の電気容量を検知できる、電気接点を含む任意のプローブまたは装置である。
【0389】
先端5802から熱センサ5808への熱伝達は、熱エポキシまたは熱グリース5812の使用によって向上させ得る。
【0390】
図65を参照すると、サーモウェル5100に連結された検知プローブ6602を示す代替的実施形態が示されている。この説明のためには、検知プローブ6602の任意の実施形態およびサーモウェル5100の任意の実施形態を用いることができる。本実施形態においては、検知プローブ6602の先端とサーモウェル5100との間の熱的結合を高めるため、熱グリース6604が検知プローブ6602の先端とサーモウェル5100の内側ゾーン5402との接触部分に存在する。一実施形態においては、熱グリース6604の量は、ゾーン5402に入るだけの体積である。しかし、代替的実施形態においては、それよりも多いまたは少ない体積の熱グリースを使用することができる。
【0391】
4.4. センサ装置システム
図66を参照すると、センサ装置システムが示されている。本システムにおいて、センサ装置は、流体管5108を内包する器具の中に示されている。センサ装置は、検知プローブ6000およびサーモウェル5100を含む。本実施形態においては、サーモウェル5100および流体管5108は使い捨て部分であり、検知プローブ6000は再利用可能部分である。再利用可能部分にはばね6700も含まれる。ばね6700および検知プローブ6000は、ハウジング6708内に位置している。ハウジング6708は任意の機械、容器、器具、またはその他の中にあってよい。ばね6700は、円錐形、コイルばね、波形ばね、またはウレタンばねである。
【0392】
本実施形態においては、サーモウェル5100および検知プローブ6000は、サーモウェル5100および検知プローブ6000を位置合わせする際に助けとなる位置合わせ機構部6702、6704を含んでもよい。サーモウェル5100および検知プローブ6000の正しい配向は、サーモウェル5100と検知プローブ6000の嵌合の助けとなり得る。空間6706の構成は、検知プローブ6000に横方向の移動のための空間を提供する。これは、検知プローブ6000が嵌合のためにサーモウェル5100と整列するように、必要な場合には横方向に移動することを可能にする。
【0393】
検知プローブ6000は、フランジ6020によって支持されたばね6700によって浮いた状態にされている。ばね6700は、サーモウェル5100が検知プローブ6000と嵌合する際に検知プローブ6000の鉛直方向の動きを可能にする。ばね6700は検知プローブ6000とサーモウェル5100との密着を確立する助けとなる。流体管5108は、任意の機械、容器、器具、その他の中にあってよい。流体管5108は、流体路5104を内包している。対象媒体は、流体路5104、および流体路5104と十分に接触して対象媒体の温度特性、および、一部の実施形態においては、伝導特性を検知できるように流体管5108内に位置しているサーモウェル5100を流れる。流体路5104内のサーモウェル5100の場所は、先に詳細に説明したように、求められる精度、対象媒体および他の考慮すべき事項に関係し得る。
【0394】
ばね6700と検知プローブ6000の組立体は、ハウジング6708内の空間6706と共に、検知プローブ6000とサーモウェル5100の嵌合のための位置合わせの助けとなり得る。この嵌合は、サーモウェル5100および検知プローブ6000が熱的結合するように熱的接触を実現する。
【0395】
ワイヤ6710が示されている。ワイヤはリード線を内包する。一部の実施形態においては、2本のリード線がある。これらの実施形態の一部は温度検知である。他の実施形態においては、ワイヤは3本以上のリード線を内包する。これらの実施形態の一部は、温度および伝導率検知用である。
【0396】
図67を参照すると、
図66に示すシステムの代替的実施形態をが示されている。本実施形態においては、検知プローブ6000はコイルばね6800によって浮いた状態にされている。ばね6800および検知プローブ6000を保持するために、保持プレート6802がコイルばね6800を把持している。一実施形態においては、保持プレート6802はネジを用いてハウジング6708に取り付けられている。しかし、代替的実施形態においては、保持プレート6802は、接着剤、フレキシブルタブ、プレス嵌めおよび超音波溶着を含むがこれに限られない任意の締結方法でハウジング6708に取り付けられている。ハウジング6708上の位置合わせ機構部6806が検知プローブ6000のサーモウェル(図示せず)に対する位置合わせを助ける。ハウジング6708内の領域6808における隙間によって検知プローブ6000の横方向の動きが実現される。ワイヤ6710が示されている。ワイヤはリード線を内包する。一部の実施形態においては、2本のリード線がある。これらの実施形態の一部は温度検知である。他の実施形態においては、ワイヤは3本以上のリード線を内包する。これらの実施形態の一部は、温度および伝導率検知用である。
【0397】
図68を参照すると、ハウジング6708内の検知プローブ6000が示されている。これらの実施形態においては、ハウジング6708内での検知プローブ6000の鉛直方向の動きを可能にするため、ばねの代替的実施形態である可撓部材6900が検知プローブ6000と一体化されている。可撓部材6900および検知プローブ6000を保持するために、保持プレート6902が可撓部材6900を把持している。一実施形態においては、保持プレート6902はネジを用いてハウジング6708に取り付けられている。しかし、代替的実施形態においては、保持プレート6902は、接着剤、フレキシブルタブ、プレス嵌めおよび超音波溶着を含むがこれに限られない任意の締結方法でハウジング6708に取り付けられている。検知プローブ6000の横方向の動きは、ハウジング6708内の領域6908における隙間によって実現される。ワイヤ6710が示されている。ワイヤはリード線を内包する。一部の実施形態においては、2本のリード線がある。これらの実施形態の一部は温度検知である。他の実施形態においては、ワイヤは3本以上のリード線を内包する。これらの実施形態の一部は、温度および伝導率検知用である。
【0398】
図69を参照すると、ハウジング7002内の検知プローブ6000の代替的実施形態が示されている。本実施形態においては、可撓部材7000がハウジング7002に取り付けられている、またはハウジング7002の一部であり、検知プローブ6000の鉛直方向の動きを実現する。本実施形態においては、検知プローブ6000の横方向の動きが制限されるように、ハウジング7002の開口7004、7006の大きさが決められている。可撓部材7000は検知プローブ6000上のフランジ7008に作用する。ワイヤ6710が示されている。ワイヤはリード線を内包する。一部の実施形態においては、2本のリード線がある。これらの実施形態の一部は温度検知である。他の実施形態においては、ワイヤは3本以上のリード線を内包する。これらの実施形態の一部は、温度および伝導率検知用である。
【0399】
フランジは、
図61、66、69に関して示し説明したように、検知プローブ6000上の任意の領域に位置させることができる。他の実施形態においては、検知プローブは他のハウジング構成によって位置合わせされ、位置決めされてもよい。従って、本明細書に示すハウジングの実施形態は、センサ装置を用いることができるハウジングの一部の実施形態に過ぎない。センサ装置は一般に、対象媒体に対して十分に位置づけられるかどうかによる。これを達成する構成は、対象媒体および検知装置の使用目的に応じて変わり得る。
加えて、サーモウェルを用いず検知プローブだけを用いる一部の実施形態においては、更にハウジング構成が異なってもよい。
【0400】
一部の実施形態においては、検知装置は伝導率を検知するのに用いられる。一部の実施形態においては、これは温度検知に追加される。温度および伝導率検知が求められるこれらの実施形態においては、検知プローブは通常、少なくとも3本のリード線を含み、うち2本のリード線は温度検知に、第3のリード線は伝導率検知に用いられてもよい。
【0401】
図70を参照すると、伝導率検知用に、少なくとも2つのセンサ7102、7104が対象媒体を内包する領域に位置している。図示した実施形態においては、対象媒体を内包する領域は流体管5108内の流体路5104である。伝導率センサ7102、7104は、上記のような検知プローブの各種実施形態の一種、または上記のようなセンサ装置実施形態(サーモウェルを含む)の実施形態うちの一種でよい。しかし、他の実施形態においては、センサの一方のみがセンサ装置の実施形態の一種、または検知プローブの実施形態の一種であって、第2のセンサは当技術分野で周知の任意の電気センサである。従って、本明細書において記述したシステムにおいては、伝導率および温度は、本明細書で説明したようなセンサ装置の一種もしくはセンサプローブの一種、および第2の電気容量センサを用いて、または、本明細書で説明したセンサ装置の1つもしくはセンサプローブの1つと電気センサを用いて検知することができる。
【0402】
図71を参照すると、検知プローブ7200およびサーモウェル5100を含むセンサ装置の代替的実施形態が流体管5108内に示されている。本実施形態においては、検知プローブ7200は金属ハウジングで構築されている。サーモウェル5100も同様に金属で構築されている。サーモウェル5100および検知プローブ7200は、同じ金属または異なる金属で作ることができる。好ましい実施形態において、金属は導電性金属であって、ステンレス鋼、鋼、銅および銀などが含まれ得る。伝導率検知用にリード線7202が検知プローブ7200ハウジングに取り付けられている。熱検知用リード線7204は、検知プローブ7200ハウジング内に位置する熱センサに取り付けられている。よって、本実施形態においては、検知プローブ7200が金属で構築されているので、第3のリード線7202(または伝導率検知用のリード線)は、検知プローブ7200のどこに取り付けてもよい。先に説明した実施形態において、検知プローブハウジングがプラスチックで構築され、検知用の先端が金属で構築されている場合は、伝導率検知用の第3のリード線は、検知端に取り付けられる。
【0403】
既知体積の対象媒体が伝導率判定に用いられ得る。従って、2つのセンサが用いられてもよく、2つのセンサ間の流体の体積が判定できる。伝導率検知は2つの電気接点を用いて行われる(上記のように)。この場合、一方または両方はセンサ装置である。2つの接点間の対象媒体の体積は既知である。
【0404】
伝導率検知は、各センサからの伝導率を判定し、その差を判定することによってなされる。この差が所定の閾値を上回って第1と第2のセンサの間の伝導率の異常な差を示している場合(「第1」および「第2」の指定は任意である)、空気が対象媒体に捕捉された可能性が推察され、気泡を示す気泡検出警告が発せられてもよい。従って、第1と第2のセンサの間の伝導率に大きな低下がある場合(同様に抵抗に大きな増加がある場合)は、空気が捕捉された可能性があり、気泡の存在を検出できる。
【0405】
伝導率検知を用いて機械、システム、器具、または容器の漏れを判定してもよい。検知装置が機械、器具、またはシステムの中にあって、その検知装置が伝導率を検知する場合、一実施形態においては、センサ装置から分析器またはコンピュータ機械へのリード線(または電気接点)があってもよい。
【0406】
ある実施形態においては、接点間の電気信号を分析する分析器が機械、器具、システム、または容器の金属に接続されている。分析器が機械からの電気信号を検知した場合は、流体の漏れが推察され得る。
【0407】
本明細書で記述した各種実施形態の場合、流体管は金属およびプラスチックを含む任意の材料で作ることができる。ほとんどの実施形態において、流体管は対象媒体に適合し、流体管内のサーモウェルの構成に応じた所望の特性を有する。流体管は、センサ装置に取り付けられる使い捨てユニットの一部でもよい。これらの実施形態の一部においては、流体管はサーモウェルを含む。対象媒体は流体管内に位置しており、一旦検知プローブとサーモウェルが十分に嵌合されると、検知プローブは対象媒体に関する検知データを供給する。
【0408】
流体管は、チャンバ、ホース、流体路または一定体積の対象媒体を保持する他の空間もしくは導管である。一部の実施形態においては、流体管は一定の流量をもつ流体を保持するように設計されている。他の実施形態においては、空間は、流れているとしてもほとんど停滞した媒体または導管内に保持された媒体を保持するように設計されている。
【0409】
ある実施形態においては、センサ装置は対象媒体を検知プローブから分離する必要性に基づいて使用されてもよい。しかし、他の実施形態においては、検知プローブは、対象媒体から直接温度および/または伝導率を検知するのに用いられる。
【0410】
ある実施形態においては、サーモウェルは、器具、機械、システム、または容器の使い捨て部分の一部であってもよい。従って、サーモウェルは対象媒体に直接接触してもよいし、対象媒体によって汚染される唯一の構成部品でもよい。これらの実施形態においては、検知プローブは機械、器具、システムまたは容器の一部でもよく、使い捨てでも非使い捨てでもよい。
【0411】
5. 結論
ポンプポッド、熱交換器システムおよび熱/伝導率センサの各種タイプおよび構成を上に説明した。なお、構成部品の各種組み合わせから種々様々な実施形態が生み出され得る。
例えば、ある種の熱交換器システムは、ポンプポッドまたは熱/伝導率センサなしで構成しても、ポンプポッドを含むが熱/伝導率センサを含まずに構成しても、または熱/伝導率センサを含むがポンプポッドを含まずに構成してもよい。ポンプポッドは種々様々な用途に用いることができ、決して熱交換器システムでの使用または体液もしくは医療用流体の圧送用に限られるものではない。熱/伝導率センサは、種々様々な用途に使用することができ、決して流体の熱/伝導率測定、または熱交換器システムとの関連での熱/伝導率測定に限られるものではない。
【0412】
気体圧式作動システム、具体的にはポッドポンプを動作させるためのシステムを参照して各種実施形態を上に説明した。なお、ポッドポンプは他のタイプの制御流体、例えば、流体圧流体を用いて動作させることができる。この場合、作動システムは通常、正および/または負圧下で制御流体を送出するための適切な制御流体送出システムを含む。従って、例えば、熱交換器システムは気体圧式作動システムに代えて流体圧式作動システムを含むことも可能である。その場合は、加圧された流体圧流体が1以上の貯留器に貯留される、または他の加圧手段(例えば、流体圧流体ポンプ)を用いて供給され得る。
【0413】
上記の議論は本発明の各種例示的実施形態を開示するものだが、当然ながら当業者は本発明の真の範囲を逸脱することなく本発明の利点のいくつかを実現する各種改良を実現できるものである。
本発明の第1の態様は、
生体液を圧送するシステムであって、
前記生体液用の入口管、
前記生体液用の出口管、および
第1および第2の回転楕円体状ポンプポッドであって、それぞれ、
半球状である堅固なチャンバ壁、
半球状である堅固な作動壁、
可撓膜と前記チャンバ壁が圧送チャンバを規定すると共に前記可撓膜と前記作動壁が作動チャンバを規定するように前記チャンバ壁および前記作動壁に取り付けられた前記可撓膜、
前記入口管から前記圧送チャンバへ流入する流れを許容するが、前記圧送チャンバを流出して前記入口管へ流入する流れを防止する制御可能な入口弁、
前記圧送チャンバから前記出口管へ流入する流れを許容するが、前記出口管から前記圧送チャンバへ流入する流れを防止する制御可能な出口弁、および
前記作動チャンバとの流体連通を提供する作動ポートを含むポンプポッド
を含む使い捨てユニット;ならびに
前記使い捨てユニットを受容し保持する容器手段、
前記使い捨てユニットの前記作動ポートのそれぞれに直接接続するようになされた気体圧ポート、および
前記作動ポートのそれぞれに正圧または負圧下で制御流体を供給し、前記入口弁と出口弁とを制御する作動システム
を含むベースユニットを備え;
前記第1および第2のポンプポッドが互いに強固に取り付けられ、前記容器手段が前記第1および第2のポンプポッドを一工程で受容する手段を含む、
システムである。
本発明の第2の態様は、
前記ベースユニットが、
第1のポンプポッドの作動ポートに供給される前記制御流体の圧力と前記第2のポンプポッドの作動ポートに供給される前記制御流体の圧力をそれぞれ測定する第1および第2の圧力トランスデューサ;および
前記第1および第2の圧力トランスデューサから圧力情報を受信し前記作動システムを制御する制御器
を更に含む、第1の態様に記載のシステムである。
本発明の第3の態様は、
前記ベースユニットが、拍出量の異なるポッドポンプを有する使い捨てユニットを受容し保持することができる、
第1の態様または第2の態様に記載のシステムである。
本発明の第4の態様は、
前記制御器が、前記流量を達成するために必要な仕事量を判定し、前記仕事量が異常な流れの状態を示した場合に警告を発するように構成される、
第2の態様に記載のシステムである。
本発明の第5の態様は、
前記制御器が、前記第1の圧力トランスデューサからの圧力情報を1ストローク期間に亘って積分し、異常な流れの状態を検出する、
第4の態様に記載のシステムである。
本発明の第6の態様は、
前記作動システムが、
正圧の制御流体を内包する第1の貯留器;および
負圧の制御流体を内包する第2の貯留器を含み;
前記制御器が動弁機構を制御するようになされ、負圧と交互に入れ替わる正圧を前記作動チャンバに供給する、
第2、第4および第5の態様のいずれか1つに記載のシステムである。
本発明の第7の態様は、
前記制御器が、前記動弁機構を周期的に開閉させ、前記第1圧力トランスデューサからの圧力情報から、いつストロークが終了したかを判定する、
第2の態様に従属する第6の態様に記載のシステムである。
本発明の第8の態様は、
前記入口弁および出口弁が、制御流体が前記弁のダイヤフラムを動かして前記入口管および出口管を通じての流れを遮断するための弁作動ハウジングおよびポートを備える、
第1ないし第6の態様のいずれか1つに記載のシステムである。
本発明の第9の態様は、
前記第1および第2のポンプポッド並びに前記入口弁および出口弁が互いに強固に取り付けられ、前記容器手段が前記第1および第2のポンプポッド並びに前記入口弁および出口弁を一工程で受容する手段を含む、
第8の態様に記載のシステムである。
本発明の第10の態様は、
前記第1および第2の貯留器は正圧または負圧の制御流体を前記入口弁および出口弁に供給する、
第6の態様に従属する第8の態様または該第8の態様に従属する第9の態様に記載のシステムである。