特許第6904940号(P6904940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904940
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20210708BHJP
   H01R 11/11 20060101ALI20210708BHJP
   H01R 13/26 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01R13/42 G
   H01R11/11 J
   H01R13/26
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-219506(P2018-219506)
(22)【出願日】2018年11月22日
(65)【公開番号】特開2020-87675(P2020-87675A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 健一
(72)【発明者】
【氏名】倉重 圭一郎
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−041591(JP,A)
【文献】 特開2005−059843(JP,A)
【文献】 米国特許第09991620(US,B1)
【文献】 特開2019−046699(JP,A)
【文献】 米国特許第6749459(US,B2)
【文献】 特開昭60−62074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R11/00−11/32
H01R13/00−13/08
H01R13/15−13/35
H01R13/40−13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体芯線と前記導体芯線を覆う被覆とを含む電線であって電線から露出した導体芯線が相手側端子との接触部として機能する電線と、
上方が開放されると共に前記電線を保持する電線収容部を有する板状のハウジングと、
を備え、
前記接触部の先端部分には、前記被覆側に向けて一側に折り返された折り返し部が設けられ、
前記ハウジングにおける前記電線収容部の前方側端に位置する前端面には、前方側に開口すると共に前後方向に延びる溝が設けられ、
前記折り返し部が前記溝に係止されることで、前記電線が前記ハウジングに保持され
前記折り返し部は、前後方向に延びる平板状の前記接触部の前記先端部分を板厚方向の前記一側に折り返して得られた平板状の部分である、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記電線収容部は、平板状の前記ハウジングの上面に形成され、
前記ハウジングの前記前端面には、前記電線収容部の底面より下側の位置から前方へ突出するリブが設けられ、
前記溝は、上下方向における前記電線収容部の底面と前記リブとの間の位置にて、前記リブの上面に連続して前後方向に延びるように設けられ、
前記折り返し部が前記溝の前方側且つ前記リブの上方に位置するように前記電線収容部に載置された前記電線を前記ハウジングに対して後方側に引き込むことで、前記折り返し部が前記溝に進入可能に構成された、コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記接触部における前記一側とは反対の他側の側面に、前記相手側端子が接触する平面部が設けられた、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線に接続された端子を収容する端子収容部を有するハウジングを備えたコネクタが広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。この種のコネクタでは、端子収容部に収容されている端子の抜けを防止するための抜止機構を設ける必要がある。上記文献に記載のコネクタでは、端子収容部内に臨むようにハウジング側に設けられたランス(片持ち梁状の弾性片)を端子の段部に係止させることで、抜止機構が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−134189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コネクタの低背化の要求が高まっている。ここで、抜止機構として、ハウジング側のランスと端子の段部との係止を利用する機構が採用される場合、ランスや端子の段部を設けるための上下方向のスペースが不可避的に必要となり、このスペースが、コネクタの低背化を妨げる要因の一つとなっていた。
【0005】
他方、この問題は、抜止機構を抜本的に変更することで解決され得る。ただし、その際、組み付け性が低下しないことも非常に重要である。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コネクタの低背化が可能であり、且つ、組み付け性が良好なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
導体芯線と前記導体芯線を覆う被覆とを含む電線であって電線から露出した導体芯線が相手側端子との接触部として機能する電線と、
上方が開放されると共に前記電線を保持する電線収容部を有する板状のハウジングと、
を備え、
前記接触部の先端部分には、前記被覆側に向けて一側に折り返された折り返し部が設けられ、
前記ハウジングにおける前記電線収容部の前方側端に位置する前端面には、前方側に開口すると共に前後方向に延びる溝が設けられ、
前記折り返し部が前記溝に係止されることで、前記電線が前記ハウジングに保持され
前記折り返し部は、前後方向に延びる平板状の前記接触部の前記先端部分を板厚方向の前記一側に折り返して得られた平板状の部分である、
コネクタであること。
(2)
上記(1)に記載のコネクタにおいて、
前記電線収容部は、平板状の前記ハウジングの上面に形成され、
前記ハウジングの前記前端面には、前記電線収容部の底面より下側の位置から前方へ突出するリブが設けられ、
前記溝は、上下方向における前記電線収容部の底面と前記リブとの間の位置にて、前記リブの上面に連続して前後方向に延びるように設けられ、
前記折り返し部が前記溝の前方側且つ前記リブの上方に位置するように前記電線収容部に載置された前記電線を前記ハウジングに対して後方側に引き込むことで、前記折り返し部が前記溝に進入可能に構成された、コネクタであること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のコネクタにおいて、
前記接触部における前記一側とは反対の他側の側面に、前記相手側端子が接触する平面部が設けられた、コネクタであること。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタによれば、相手側端子と接触する端子を廃止し、電線の導体芯線自体を相手側端子と接触させることで、コネクタの低背化が達成可能である。更に、上方が開口した電線収容部に電線を載置し、その電線を後方側に引き込む、という極めて単純な動作を行うだけで、電線がハウジングに確実に保持され得る。以上より、コネクタの低背化が可能であり、且つ、端子に代わる電線の組み付け性が良好なコネクタを提供することができる。
【0009】
上記(2)の構成のコネクタによれば、電線収容部に載置した電線を後方側に引き込むことで電線をハウジングに保持するために必要となる具体的な動作を提供することができる。
【0010】
上記(3)の構成のコネクタによれば、平面部に相手側端子を接触させることで、接触面積を確保し、接触抵抗の増大を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コネクタの低背化が可能であり、且つ、組み付け性が良好なコネクタを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図2図2は、図1に示すコネクタの分解斜視図である。
図3図3は、相手側コネクタの斜視図である。
図4図4は、図3に示す相手側コネクタの分解斜視図である。
図5図5は、図2に示す電線の斜視図である。
図6図6は、図5の符号6で示した枠内を拡大した図である。
図7図7は、接触部を形成する前の段階の電線の斜視図である。
図8図8は、図2に示すハウジングの斜視図である。
図9図9は、ハウジングの正面図である。
図10図10は、図9の10−10線の断面図である。
図11図11は、図10の符号11で示した枠内を拡大した図である。
図12図12は、図10の符号12で示した枠内を拡大した図である。
図13図13は、ハウジングの電線収容部に電線を載置した状態を示す斜視図である。
図14図14は、図13に示す状態における、図11に対応する図である。
図15図15は、電線収容部に載置した電線を後方側に引き込んだ状態を示す斜視図である。
図16図16は、図15に示す状態における、図11に対応する図である。
図17図17は、図2に示す上カバーの斜視図である。
図18図18は、裏返した上カバーの斜視図である。
図19図19は、図18の符号19で示した枠内を拡大した図である。
図20図20は、図2に示す下カバーの斜視図である。
図21図21は、図20の符号21で示した枠内を拡大した図である。
図22図22は、図1に示すコネクタの正面図である。
図23図23は、図22の23−23線の断面図である。
図24図24は、図23の符号24で示した枠内を拡大した図である。
図25図25は、図23の符号25で示した枠内を拡大した図である。
図26図26は、下カバー側における、図24に対応する図である。
図27図27は、下カバー側における、図25に対応する図である。
図28図28は、図2に示すコネクタカバーの斜視図である。
図29図29(a)は、図4に示す第1の相手側端子の斜視図であり、図29(b)は、図4に示す第2の相手側端子の斜視図である。
図30図30は、図29に示す相手側端子の圧入部の拡大図である。
図31図31は、図4に示す相手側ハウジングの斜視図である。
図32図32は、相手側ハウジングを後方側から視た斜視図である。
図33図33は、図32の符号33で示した枠内を拡大した図である。
図34図34は、相手側端子の圧入部が相手側ハウジングの端子収容孔に圧入された状態を説明するための図である。
図35図35は、相手側ハウジングの背面図である。
図36図36は、図35の36−36線の断面図である。
図37図37は、図36の符号37で示した枠内を拡大した図である。
図38図38は、相手側ハウジングの端子収容孔に相手側端子が収容された状態における、図37に対応する図である。
図39図39は、ハウジングと相手側ハウジングとが嵌合した状態を示す斜視図である。
図40図40は、ハウジングと相手側ハウジングとが嵌合した状態における相手側ハウジングの背面図である。
図41図41は、図40の41−41線の断面図である。
図42図42は、図41における電線と相手側端子との接点の周りを拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。図1に示すコネクタ1は、図2に示すように、電線10と、ハウジング20と、カバー30と、コネクタカバー40と、を含んで構成される。コネクタ1と嵌合する図3に示す相手側コネクタ2は、図4に示すように、相手側端子50A,50Bと、相手側ハウジング60と、一対のペグ70と、を含んで構成される。相手側ハウジング60は、一対のペグ70を利用して、基板(図示省略)に実装され固定されて使用される。以下、相手側端子50A,50Bは、総称して、相手側端子50と呼ぶこともある。
【0015】
以下、説明の便宜上、図1に示すコネクタ1の軸方向(嵌合方向)において、相手側端子50が挿入される側(図1において左側)を前方側とし、その反対側(図1において右側)を後方側と呼ぶ。また、図1において上側及び下側をそれぞれ、上側及び下側と呼ぶ。同様に、図3に示す相手側コネクタ2の軸方向(嵌合方向)において、電線10が挿入される側(図3において右側)を前方側とし、その反対側(図3において左側)を後方側と呼ぶ。また、図3において上側及び下側をそれぞれ、上側及び下側と呼ぶ。以下、コネクタ1を構成する各部品について順に説明していく。
【0016】
先ず、図5図7を参照しながら、電線10について説明する。図5に示すように、電線10は、導体芯線11と、導体芯線11を覆う被覆12とを含んで構成されている。電線10の先端部には端末処理が施されており、導体芯線11の先端部が電線10(被覆12)から露出している。導体芯線11は、単芯線である。
【0017】
露出した導体芯線11の先端部(図7参照)は、プレス成形により平板状(前後方向に延びる短冊状)に加工されて、相手側端子50と接続する接触部13を構成している。接触部13の上面側の平面部に、相手側端子50のばね板部54(図29参照)が押圧接触することで、電線10と相手側端子50とが電気的に接続される。
【0018】
平板状の接触部13の先端部分には、被覆12側に向けて下方側に折り返された折り返し部14が設けられている(特に、図6参照)。後述するように、折り返し部14は、ハウジング20に電線10を保持(固定)する機能を果たす(図16等参照)。
【0019】
次に、図8図16を参照しながら、ハウジング20について説明する。図8に示すように、ハウジング20は、矩形平板状のハウジング本体21を備える。ハウジング本体21の上下面それぞれには、複数の電線10を収容するための複数の電線収容部が形成されている。ハウジング本体21の上面側及び下面側の構成は、若干の相違はあるものの、大略的には同様であるので、以下、ハウジング本体21の上面側の構成についてのみ説明する。
【0020】
ハウジング本体21の上面には、幅方向に間隔を空けて前後方向に延びる複数の立壁22が一体に形成されている。各立壁22は、幅方向に隣接する2つの電線収容部を仕切る機能を果たす。即ち、ハウジング本体21の上面には、複数の立壁22により仕切られると共に上方が開放された複数の電線収容部が幅方向に並ぶように形成されている。
【0021】
図10及び図11(特に、図11)に示すように、ハウジング20における電線収容部の前方側端に位置する前端面には、幅方向における複数の電線収容部の位置(隣接する立壁22の間の位置)に、前方側に開口すると共に前後方向に延びる溝23が設けられている。後述するように、この溝23は、ハウジング20に電線10を保持(固定)する機能を果たす。
【0022】
図10及び図12(特に、図12)に示すように、各電線収容部の後方側端の近傍部分の底面には、電線10をストレインリリーフとするための突起24が形成されている。この場合、ストレインリリーフとは、電線10における突起24より後方側に位置する部分に対して後方側への引張応力を付与しても、電線10における突起24より前方側に位置する部分には、その引張応力が作用しないことを指す。
【0023】
図10及び図13に示すように、各電線収容部における前後方向中央に対して後方寄り且つ突起24よりも前方側の位置には、電線10の前方側への抜けを防止するための段部25が設けられている。具体的には、この段部25に、電線10における被覆12の前端面が係止されることで、電線10の前方側への抜けが防止される(図13,15,41参照)。
【0024】
以下、ハウジング20に電線10を保持(固定)する際の手順について、図13図16を参照しながら説明する。先ず、図13及び図14に示すように、電線10を、接触部13の折り返し部14が溝23の前方側に位置するように、電線収容部に載置する。
【0025】
次に、この状態から、図15及び図16に示すように、電線10を、ハウジング20に対して後方側に、折り返し部14の根元部が溝23の端縁(ハウジング20の前端面)に当接するまで、引き込む。この結果、折り返し部14が溝23に係止された状態が得られる(特に、図16参照)。この結果、電線10がハウジング20に保持(固定)される。
【0026】
次に、図17図27を参照しながら、カバー30について説明する。カバー30として、本例では、上カバー30Aと、下カバー30Bが使用される(図2参照)。上カバー30Aは、ハウジング本体21の上面側に組み付けられて、上面側の端子収容部の上方を塞ぐ機能を有し、下カバー30Bは、ハウジング本体21の下面側に組み付けられて、下面側の端子収容部の下方を塞ぐ機能を有する。
【0027】
先ず、図17図19を参照しながら、上カバー30Aについて説明する。図17は、ハウジング本体21への組み付け時の向きの上カバー30Aを示し、図18は、裏返した上カバー30Aを示す。
【0028】
上カバー30Aは、略平板状のカバー本体31を備える。カバー本体31の下面には、ハウジング本体21の立壁22に対応して、幅方向に間隔を空けて前後方向に延びる複数の立壁32が一体に形成されている。これにより、上カバー30Aのハウジング20への組み付け状態では、ハウジング本体21の端子収容部の上方が上カバー30Aにより塞がれて、前後方向に連続する筒状の形状を有する端子収容部が構成される。
【0029】
上カバー30Aのカバー本体31の下面における前後方向略中央部分には、図19に示すように、下方に突出すると共に前後方向に延びる複数の突起部33が、幅方向における複数の端子収容部の位置(隣接する立壁32の間の位置)に一体で形成されている。突起部33は、後述するように、上カバー30Aのハウジング20への組み付け状態において、電線10の露出した導体芯線11(接触部13より後方側の部分)をハウジング20側へ押さえ付けて電線10を固定する機能を果たす。
【0030】
上カバー30Aのカバー本体31の下面における後方側端の近傍部分には、図19に示すように、上方に窪んだ複数の窪み部34が、幅方向における複数の端子収容部の位置(隣接する立壁32の間の位置)に一体で形成されている。窪み部34は、後述するように、上カバー30Aのハウジング20への組み付け状態において、ハウジング20の突起24との協働により、電線10のストレインリリーフを達成する機能を果たす。
【0031】
上カバー30Aのカバー本体31の幅方向両端部には、ハウジング20への組み付け時において、下カバー30Bの係合部36(図20参照)とそれぞれ係合する係合部35が一体で形成されている。また、上カバー30Aのカバー本体31の前端部における幅方向中央部には、ハウジング20への組み付け時において、ハウジング20の係合部27(図8参照)と係合する係合部37が一体で形成されている。
【0032】
次に、図20図21を参照しながら、下カバー30Bについて説明する。図20は、ハウジング本体21への組み付け時の向きの下カバー30Bを示す。上カバー30A及び下カバー30Bの構成は、上下方向に対称であることを除き、若干の相違はあるものの、大略的には同様である。従って、下カバー30Bについては、上カバー30Aの各構成に対応する構成に対して上カバー30Aと同じ符号を付すことで、それらの説明に代える。
【0033】
図22図27に示すように、上カバー30A及び下カバー30Bがハウジング20に組み付けられた状態では、上カバー30Aの係合部37(図17参照)とハウジング20の係合部27(図8参照)とが互いに係止され、且つ、上カバー30Aの複数の係合部35と下カバー30Bの複数の係合部36とが互いに係止されている。これらの協働により、上カバー30A及び下カバー30Bそれぞれがハウジング20に対して相対移動不能に組み付けられ、且つ、上カバー30A及び下カバー30B同士も相対移動不能に組み付けられる。
【0034】
更に、図24及び図26に示すように、上カバー30A及び下カバー30Bそれぞれの突起部33が、電線10の露出した導体芯線11(接触部13より後方側の部分)をハウジング20側へ押さえ付けている。この結果、電線10がハウジング20に対して確実に固定され得る。
【0035】
更に、図25及び図27に示すように、上カバー30A及び下カバー30Bそれぞれの窪み部34が、ハウジング20の突起24との協働により、電線10を山形に隆起するように上下方向に押さえつけている。この結果、電線10のストレインリリーフが達成される。
【0036】
次に、図28を参照しながら、コネクタカバー40について説明する。コネクタカバー40は、上下方向に互いに対向するように配置された一対の板状の電線収容部41と、下側の電線収容部41の後方側に一体に延出形成された電線保持部42と、を備える。コネクタカバー40は、一対の電線収容部41それぞれの前方側端部に設けられた係合部43を、ハウジング20に組み付けられた状態にある上カバー30A及び下カバー30Bそれぞれの後方側端部に設けられた係合部(図示省略)に取り付けることで、ハウジング20の後端面から後方側へ突出するように、ハウジング20に固定される(図1参照)。
【0037】
一対の電線収容部41は、ハウジング20から後方側に延びる複数の電線10を収容して保護する機能を有する。電線保持部42は、ハウジング20から後方側に延びる複数の電線10を束ねて保持するために使用される部位である。ハウジング20から後方側に延びる複数の電線10は、タイバンド等を利用して束ねた状態で電線保持部42に保持されることになる。以上、コネクタ1について説明した。
【0038】
次に、図29図38を参照しながら、図3及び図4に示す相手側コネクタ2を構成する各部品について順に説明する。
【0039】
先ず、図29図30を参照しながら、相手側端子50について説明する。図29に示すように、相手側端子50として、本例では、図29(a)に示す相手側端子50Bと、図29(b)に示す相手側端子50Aと、が使用される。相手側端子50Aは、相手側ハウジング60に形成されている上下2段に位置する端子収容孔62(図32参照)のうち上段の端子収容孔62に挿入される端子であり、相手側端子50Bは、下段の端子収容孔62に挿入される端子である。
【0040】
相手側端子50A,50Bは共に、板状金属部材にプレス加工・曲げ加工等を施すことで形成された雄端子であり、電線10の接触部13(図6参照)と接触する接続部51と、接続部51の後方側に連続する圧入部52と、圧入部52の後方側に連続するタブ部53と、を備える。
【0041】
相手側端子50A,50Bの接続部51には、短冊状の金属版を折り曲げて形成されたばね板部54が配置されている。ばね板部54の頂部が電線10の接触部13と接触することになる。接続部51の前方側端部には、ばね板部54を保護するための保護壁部55が設けられている。保護壁部55は、ばね板部54の前方側の折り曲げ部に外力が及んで、ばね板部54の折り曲げ部が変形することを防止する機能を有する。
【0042】
相手側端子50A,50Bの圧入部52には、上下方向に延びる一対の側壁の上下方向両側にて上下方向に突出する複数の爪部56が設けられている(特に、図30参照)。後述するように、爪部56は、相手側端子50を端子収容孔62に挿入する際に、端子収容孔62に設けられた圧入段部64に圧入される。
【0043】
相手側端子50A,50Bのタブ部53は、クランク状に屈曲形成されており、前後方向に延びるタブ部53の先端部は、相手側ハウジング60が基板(図示省略)に実装された際に、当該基板の回路に接続されることになる。
【0044】
次に、図31図38を参照しながら、相手側ハウジング60について説明する。図31に示すように、相手側ハウジング60は、略直方体状のハウジング本体61を有する。ハウジング本体61の後方側部分には、図32及び図36から理解できるように、上下2段に位置する複数の端子収容孔62が形成されている。ハウジング本体61の前方側部分の内部には、図31及び図36から理解できるように、複数の端子収容孔62に連続する嵌合空間63が形成されている。
【0045】
各端子収容孔62の後方側端部の上下壁には、図33に示すように、圧入段部64が形成されている。図36及び図37に示すように、各端子収容孔62の前方側端部には、ストッパ部66が突設されている。相手側端子50は、接続部51の前方側端部(保護壁部55)がストッパ部66に当接するまで端子収容孔62に挿入される(図38参照)。これにより、相手側端子50が端子収容孔62の正規位置に収容された状態が得られる。相手側端子50が正規位置にある状態では、接続部51のばね板部54が嵌合空間63に臨むように位置する(図38参照)。
【0046】
相手側端子50が正規位置に収容された状態では、図34に示すように、相手側端子50の圧入部52の爪部56が圧入段部64に圧入されている。これにより、相手側端子50が端子収容孔62の正規位置にて保持(固定)されると共に、相手側端子50と相手側ハウジング60との間のガタが抑制される。
【0047】
相手側ハウジング60には、図31に示すように、一対のペグ70(図4参照)を取り付けるための一対の取付部65が設けられている。相手側ハウジング60は、一対の取付部65に一対のペグ70を取り付けた状態で、一対のペグ70を利用して、基板に実装され固定される。以上、相手側コネクタ2について説明した。
【0048】
次に、図39〜42を参照しながら、コネクタ1と相手側コネクタ2とが嵌合した嵌合状態について説明する。図39及び図41から理解できるように、コネクタ1が相手側コネクタ2の嵌合空間63に挿入されることで、コネクタ1と相手側コネクタ2とが嵌合状態となる。
【0049】
嵌合状態では、図42に示すように、コネクタ1側の電線10の接触部13と、相手側コネクタ2側の相手側端子50のばね板部54とが上下方向において押圧接触している。これにより、電線10と相手側端子50とが電気的に接続される。
【0050】
更に、図41図42に示すように、相手側ハウジング60に設けられた溝に、ハウジング20(ハウジング本体21)の前方側の端縁部が挿入されている。なお、当該溝に、当該端縁部が圧入されてもよい。これにより、ハウジング20と相手側ハウジング60との間のガタが抑制される。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係るコネクタ1によれば、相手側端子50と接触する端子を廃止し、電線10の導体芯線11自体を相手側端子50と接触させることで、コネクタ1の低背化が達成可能である。更に、上方が開口した電線収容部に電線10を載置し、その電線10を後方側に引き込む、という極めて単純な動作を行うだけで、電線10がハウジング20に確実に保持され得る。以上より、コネクタ1の低背化が可能であり、且つ、端子に代わる電線10の組み付け性が良好なコネクタ1を提供することができる。
【0052】
更に、電線10の接触部13の平面部に相手側端子50を接触させることで、接触面積を確保し、接触抵抗の増大を抑制できる。
【0053】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
上記実施形態では、カバー30とコネクタカバー40とが別体で構成されている(図2参照)。これに対し、カバー30とコネクタカバー40とが一体で構成されていてもよい。
【0055】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
導体芯線(11)と前記導体芯線(11)を覆う被覆(12)とを含む電線(10)であって電線(10)から露出した導体芯線(11)が相手側端子との接触部(13)として機能する電線(10)と、
上方が開放されると共に前記電線(10)を保持する電線収容部を有する板状のハウジング(20)と、
を備え、
前記接触部(13)の先端部分には、前記被覆(12)側に向けて一側に折り返された折り返し部(14)が設けられ、
前記ハウジング(20)における前記電線収容部の前方側端に位置する前端面には、前方側に開口すると共に前後方向に延びる溝(23)が設けられ、
前記折り返し部(14)が前記溝(23)に係止されることで、前記電線(10)が前記ハウジング(20)に保持される、コネクタ(1)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記折り返し部(14)が前記溝(23)の前方側に位置するように前記電線収容部に載置された前記電線(10)を前記ハウジング(20)に対して後方側に引き込むことで、前記折り返し部(14)が前記溝(23)に進入可能に構成された、コネクタ(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記接触部(13)における前記一側と反対の他側の側面に、前記相手側端子が接触する平面部が設けられた、コネクタ(1)。
【符号の説明】
【0056】
1 コネクタ
10 電線
11 導体芯線
12 被覆
13 接触部
14 折り返し部
20 ハウジング
23 溝
図1
図2
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