(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904948
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】自己調節式の遊び低減を備えたリニア・ガイド
(51)【国際特許分類】
F16C 29/02 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
F16C29/02
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-515437(P2018-515437)
(86)(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公表番号】特表2018-530717(P2018-530717A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016072389
(87)【国際公開番号】WO2017050809
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】202015105035.6
(32)【優先日】2015年9月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト ムサマー
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−314545(JP,A)
【文献】
特表2002−506956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00−29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニア・ガイドであって、該リニア・ガイドは、スライド表面(31)を備えたスライダー(3)と、ガイド表面(21)を備えたレール(2)と、を備え、前記スライダー(3)は、該スライダーの前記スライド表面(31)によってガイドされ、前記スライド表面(31)は、前記レール(2)の前記ガイド表面(21)において変位方向(v)にスライドして変位可能な往復運動関係で前記ガイド表面(21)に適合されており、前記スライダー(3)は、少なくとも1つの調節エレメント(41)を備えた、前記リニア・ガイド(1)の自己調節式の遊び低減手段(4)を有しており、前記調節エレメント(41)は、前記スライダー(3)の前記変位方向(v)に対して垂直な調節方向(e)にスライドして変位可能に前記スライダー(3)の中に装着されており、前記スライダー(3)は、受け入れシート部(32)を有しており、前記調節エレメント(41)は、該受け入れシート部(32)の中で、前記調節方向(e)にスライドして変位可能な様式でガイドされるリニア・ガイドにおいて、
前記受け入れシート部は、前記ガイド表面(21)と適合された前記スライド表面(31)のうちの関連の1つの中へ開放しており、前記調節エレメント(41)は、前記スライダー(3)の前記適合されたスライド表面(31)のうちの前記関連の1つの一部分を形成することができるさらなるスライド表面(42)を有しており、遊びを低減させるために、前記さらなるスライド表面(42)は、前記適合されたスライド表面(31)のうちの前記関連の1つを越えて、対応する量(b)だけ突出し、
前記調節エレメント(41)は、前記受け入れシート部(32)の中で、調節トラベル(w)の範囲内で配置かつガイドされ、前記調節トラベル(w)は、少なくとも1つの当接部(46)によって制限されている、リニア・ガイド。
【請求項2】
遊び低減に関して、前記調節エレメント(41)は、一定の力またはほとんど一定の力によって、前記調節方向(e)に作用させられる、請求項1に記載のリニア・ガイド。
【請求項3】
前記力は、スプリング力である、請求項2に記載のリニア・ガイド。
【請求項4】
前記調節エレメント(41)は、前記スライダー(3)の中に一体化されて配置されており、作動位置において、前記調節エレメント(41)は、前記遊びを低減させるために、前記量(b)だけ、前記スライダー(3)の外側の輪郭を越えて突出している、請求項1から3のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項5】
前記自己調節式の遊び低減手段(4)は、無段階で実現されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項6】
前記ガイド表面(21)および前記スライド表面(31、42)は、角柱表面である、請求項1から5のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項7】
前記スライダー(3)は、2つのスライド表面(31)を有するスライド表面ペア(5)を有しており、該2つのスライド表面(31)のうちの一方は、前記調節エレメント(41)に関連付けられた前記スライド表面(42)であり、前記スライド表面ペア(5)の前記2つのスライド表面(31)は、前記変位方向(v)に対して、横断方向に外向きに、くさび角度(β)のくさび形状で収束して配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項8】
前記受け入れシート部(32)は、側部表面(33)を有しており、該側部表面(33)は、前記調節エレメント(41)のスライドして変位可能な接触のために、前記変位方向(v)に対して横断方向および軸線方向の平面の中に配設されており、前記平面は、前記くさび角度(β)の角度二等分線である、請求項7に記載のリニア・ガイド。
【請求項9】
前記調節エレメント(41)及び前記受け入れシート部(32)は、前記調節方向(e)における前記調節トラベル(w)の範囲を規定するように前記少なくとも一つの当接部(46)に対して設けられるセットバック部分(47)をそれぞれ有している、請求項1から8のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項10】
セルフ・ロッキングくさび角度は、前記スライダー(3)が変位するときの摩擦力の増加の結果としてセルフ・ロッキング作用が起こる角度であり、前記くさび角度(β)は、セルフ・ロッキングくさび角度よりも大きい請求項7または8に記載のリニア・ガイド。
【請求項11】
前記スライダー(3)は、2つのスライド表面ペア(5)を有しており、前記2つのスライド表面ペア(5)は、互いに鏡像対称的な関係で配置されており、前記調節方向(e)に対して垂直方向の鏡像対称平面(S)に対して鏡像対称な関係で配置されている、請求項7、8、及び10のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項12】
前記スライダー(3)は、前記スライド表面ペア(5)のうちの一つのスライド表面は、前記調節エレメント(41)に関連付けられた前記スライド表面(42)である、請求項11に記載のリニア・ガイド。
【請求項13】
前記スライダー(3)および前記少なくとも1つの調節エレメント(41)は、同じプラスチックから作製されており、潤滑剤不要で前記レール(2)と協働し、前記レール(2)は、金属から作製されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項14】
単一の調節エレメント(41)が設けられており、該調節エレメント(41)は、前記変位方向(v)に関して中央に、前記スライダー(3)の上に配置されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項15】
2つの調節エレメント(41)が設けられており、該2つの調節エレメント(41)は、前記スライダー(3)の軸線方向の端部領域にそれぞれ配置されており、前記レール(2)の共通のガイド表面(21)に関連付けられている、請求項1から13のいずれか一項に記載のリニア・ガイド。
【請求項16】
ガイド表面(21)を備えたレール(2)を有するリニア・ガイドのためのスライダーであって、変位方向(v)への往復運動関係での該スライダーのスライドして変位可能な誘導に関して、前記スライダー(3)は、前記レール(2)の前記ガイド表面(21)に適合されているスライド表面(31)を有しており、また、前記リニア・ガイド(1)の自己調節式の遊び低減(4)のための少なくとも1つの調節エレメント(41)を有しており、前記調節エレメント(41)は、前記スライダー(3)の前記変位方向(v)に対して垂直な調節方向(e)にスライドして変位可能に前記スライダー(3)の中に装着されているスライダーにおいて、
前記調節エレメント(41)は、前記スライダー(3)の中でガイドされ、前記スライダー(3)は、受け入れシート部(32)を有しており、前記調節エレメント(41)は、該受け入れシート部(32)の中で、前記調節方向(e)にスライドして変位可能な様式でガイドされ、前記受け入れシート部は、前記ガイド表面(21)と適合された前記スライド表面(31)のうちの関連の1つの中へ開放しており、前記調節エレメント(41)は、前記スライダー(3)の前記スライド表面(31)のうちの前記関連の1つの一部分を形成することができるさらなるスライド表面(42)を有しており、遊びを低減させるために、前記さらなるスライド表面(42)は、前記適合されたスライド表面(31)のうちの前記関連の1つを越えて、対応する量(b)だけ突出し、
前記調節エレメント(41)は、前記受け入れシート部(32)の中で、調節トラベル(w)の範囲内で配置かつガイドされ、前記調節トラベル(w)は、少なくとも1つの当接部(46)によって制限されている、スライダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド表面を備えたスライダーと、ガイド・スライド表面を備えたレールであって、スライダーは、そのスライド表面によってガイドされ、スライド表面は、スライド・レールのガイド表面において変位方向にスライドして変位可能な往復運動関係でガイド・スライド表面に適合されているレールと、少なくとも1つの調節エレメントを備えた、リニア・ガイドの自己調節式の遊び低減手段とを有しているリニア・ガイドに関
しており、調節エレメントは、スライダーの変位方向に対して垂直な調節方向にてスライダーの中に装着されており、スライダーは、受け入れシート部を有しており、調節エレメントは、受け入れシート部の中で、調節方向にスライドして変位可能な様式でガイドされる。
【背景技術】
【0002】
自己調節式の遊び低減を備えたリニア・ガイドは、最も多種多様な用途に関しては、たとえば、特許明細書の特許文献1、特許文献2、または特許文献3からすでに公知である。
【0003】
特許文献1は、上記の一般的なタイプのリニア・ガイドを開示しており、そこでは、調節エレメントは、スライドの長さにわたって延在しており、調節エレメントは、それぞれの調節エレメントの長さにわたって配置されているいくつかのディスク・スプリングの扱いにくい配置によって、変位の方向に対して垂直なレールのガイド表面に対して押し付けられている。ディスク・スプリングは、調節エレメントの中に機械加工されたシート部の中にそれぞれ配置されており、変位の方向に対して垂直に調節エレメントを押し付けている。
特許文献4は、同様にスライド長さ全体にわたって延在する調節エレメントを備えたリニア・ガイドを開示している。調節エレメントは、変位の方向に対して垂直の方向に、調節可能な波形のリーフ・スプリングによって、レールのガイド表面に押し付けられている。波形のリーフ・スプリングは、いくつかのスクリューによってプリテンションを与えられており、スクリューのそれぞれは、リーフ・スプリングに横方向に係合している。代替的に、調節エレメントは、弱化されたエリアにわたってワン・ピースでスライドに接続されており、また、変位の方向に対して平行な旋回軸線の周りに枢動させられ得る。
特許文献3によれば、リニア・ガイドは、スライドおよびドライバーを有しており、それによって、ドライバーは、遊びなしで横断方向にスライド・チャネルのガイド表面に接触して位置している。遊びを回避するために、複雑なくさびエレメントが、調節エレメントとして設けられており、調節エレメントは、それぞれバネ荷重式になっており、傾斜した平面の上で、スライドのトラベル方向に、スライド・チャネルのそれぞれのガイド表面に対して押している。不利益は、制御エレメントが傾斜した平面同士の間で移動するときに生じるスライド摩擦の増加である。
特許文献5は、上記の一般的なタイプのリニア・ガイドを教示しており、調節エレメントは、くさびエレメントとして設計されており、くさびエレメントは、変位の方向にバネ荷重式になっており、傾斜した平面の上で、スライドの中にスライド可能に装着されており、方向成分は、スライドの変位の方向に対して垂直な調節の方向になっている。
特許文献6は、リニア・ガイドを説明しており、そこでは、ストリップが、スライドとレールとの間に調節エレメントとして設けられており、これによって、ストリップは、変位の方向に対して垂直なバネ荷重の下で、レールに押し付けられている。バネ荷重に関して、圧縮スプリングが設けられており、圧縮スプリングは、スプリング力の方向へのスライドによってガイドされ、ストリップに作用する。
特許文献
7は
、リニア・ガイドを説明しており、そこでは、調節エレメントは、傾斜した段差付きのプロファイルを有する傾斜した表面によって、適合された段差付きのプロファイルを有するスライド・エレメントの傾斜した平面に対して接触して位置しており、スライダーは、レールの上のスライド・エレメントのスライド表面によってスライドする。自己調節式の遊び低減に関して、調節エレメントは、レールの長手方向にバネ荷重式になっており、また、遊びの低減に伴い、調節エレメントの傾斜した表面によって、スライド・エレメントの傾斜した平面に対して段階的にスライドする。ここでの不利益は、リニア・ガイドの複雑な構造および複雑な装着である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】スイス国特許出願公開第663373号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102013211869号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/332654号明細書
【特許文献4】独国特許第102013004212号明細書
【特許文献5】英国特許出願公開第2169825号明細書
【特許文献6】スイス国特許出願公開第105541号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第20106914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より簡単な構造のものであって、より容易に装着され得る、リニア・ガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、特定の目的は、請求項1の特徴によって達成される。有利な発展例は、
従属請求項に記載されている。
受け入れシート部が、
適合されたスライド表面のうちの
関連の1つの中へ開放しているという点において、
また、調節エレメントが、適合されたスライド表面のうちの関連の1つの一部分を形成することができるさらなるスライド表面を有しているという点において、本発明の目的はすでに
達成されており、遊びを低減させるために、前記さらなるスライド表面は、適合されたスライド表面の前記関連の1つを越えて、対応する量だけ突出する。
【0007】
調節エレメントのさらなるスライド表面は、スライダーの関連のスライド表面の中に一体化され得る。さらなるスライド表面は、関連のスライド表面の一部であることが可能である。
【0008】
支持エレメントがスライダーのスライド表面のうちの1つの一部分をすでに形成しているという事実は、リニア・ガイドの構造が簡単化されているということを意味している。調節エレメントのさらなるスライド表面は、スライダーの関連のスライド表面の一部であるので、さらなるスライド表面は、このスライド表面とともに、このスライド表面に関連付けられるレールのガイド表面に接触して位置しており、また、このスライド表面に対するさらなるスライド表面の相対的な可動性のおかげで、ガイド表面に接触してガイドされ得る。追加的なスライド・エレメントなしで済ませることが可能であり、これは、構造および装備を簡単化する。調節エレメントのさらなるスライド表面は、同時に、スライダーの関連のスライド表面の一部を形成するので、構造はよりコンパクトにされ得る。
【0009】
レールの中のスライダーの遊びが低減されるように、また、ここではとりわけ最小化されるように、遊び低減が実現され得るが、しかし、遊び低減は所与の値に設定されることも可能であり、所与の値は、遊び低減なしのレールの中のスライダーの遊びと、レールの中のスライダーの遊びのない配置との間にある。
【0010】
調節エレメントは、レールおよびスライダーが互いに対して変位可能な変位方向に対して垂直方向の調節方向に、自己調節式の遊び低減のために移動させられ得る。調節エレメントのさらなるスライド表面は、遊び調節にしたがって、スライダーの関連のスライド表面に対して調節方向に移動することができ、とりわけ、さらなるスライド表面は、この目的のために、スライドして変位することができる。調節エレメントのさらなるスライド表面は、スライダーの関連のスライド表面に対して平行に、遊びの調節のために変位させられ得る。同時に、調節エレメントは、スライダーに対する調節エレメントのさらなるスライド表面の相対的な移動とともに変位させられ得る。自己調節式の遊び低減は、遊び低減が自発的に起こるということを意味しており、すなわち、たとえばツール等によって外部からの介入なしに、単にスライダーおよびレールの協働だけに基づいて、遊び低減が起こるということを意味している。
【0011】
調節エレメントおよびスライダーの相対的な移動を作り出すために、調節エレメントは、好ましくは調節可能または調整可能な力によって作用させられ得る。この力は、たとえば磁気的または液圧的に作り出され得る。とりわけ、この力は一定またはほとんど一定とすることができる。
【0012】
有利には、簡単な方式で、スプリング・デバイスによって、とりわけ、コイル・スプリングまたはプレート・スプリングによって、力が作り出され得る。とりわけ、調節エレメントは、好ましくは一定のスプリング付勢の下で、スライダーの中に装着され得る。このケースでは、スプリングは、調節方向における一方の側を調節エレメントの上に支持されており、また、調節方向に対する反対側関係において、スライダーの上に支持され得る。有利には、プラスチック・スプリングに伴うクリープのリスクに起因して、スプリングが金属から作製されること、好ましくは、スチールから作製されること、および、ここでは、腐食を回避するために、とりわけ高品質スチールから作製されることが提案される。
【0013】
レールの中でのスライダーのより容易な移動に関して、調節エレメントは、スライダーの中に一体化されて配置され得る。調節エレメントは、スライダーの一部であることが可能である。調節エレメントは、スライダーの外側の輪郭の中に配置され得る。とりわけ、作動位置において、調節エレメントは、所定の量だけ、好ましくは、遊び低減の量だけ、スライダーの外側の輪郭を越えて突出することが可能である。遊び低減が作動位置において必要でない状況では、調節エレメントは、これに関連付けられるスライダーのスライド表面とともに1つの平面の中に配置されることができ、場合によっては動作時に起こる摩耗の過程において、遊びを増加させ、その結果として、この遊びに対する自己調節式の遊び低減が低減される。とりわけ、調節エレメントは、遊び低減のための突出部分は別として、スライダーの外側の輪郭によって囲まれるスペースの中に完全に収容されて配置され得る。
【0014】
遊び低減の調節は、調節エレメントのさらなるスライド表面によって実現され、調節エレメントは、これに関連付けられるレールのガイド表面の上をスライドする。このように、遊び低減は、有利には、無段階で実現され得る。遊び低減は、これに関連付けられるガイド表面に対する調節エレメントのさらなるスライド表面の平行な変位によって実行され得る。
【0015】
関連する構造の簡単化として、遊び低減を伴うスライド表面、とりわけ、すべてのガイド表面およびスライド表面が、角柱表面であることが可能である。これらの角柱表面は、変位方向に対して平行に延在することが可能である。とりわけ、リニア・ガイドは、角柱ガイドの形態になっていることが可能である。
【0016】
リニア・ガイドのさらなる実施形態では、調節エレメントは、好ましくは、スライダーの変位方向に対して垂直の調節方向に、スライダーの中でスライドして変位可能に装着されている。これにより、調節方向への、スライダーの関連のスライド表面に対する調節エレメントのさらなるスライド表面の平行な変位を提供することが可能である。
【0017】
レールの中のスライダーの安定したスライド装着のために、スライダーは、2つのスライド表面を有するスライド表面ペアを有することが可能である。これらのうち、少なくとも1つは、調節エレメントに関連付けられたスライド表面であることが可能である。スライド表面ペアの2つのスライド表面は、レールの中のスライダーの変位方向に対して垂直方向に、および半径方向外向きに、くさび角度を有するくさび形状で収束する関係で配置され得る。最適な誘導のために、レールのガイド表面は、スライダーのそれぞれに関連付けられたスライド表面に適合されることができ、また、相互に関連付けられるスライド表面が、作動位置において、とりわけ、互いに接触して全表面積にわたって、実質的に相互接触して配置されるように配置され得る。
【0018】
リニア・ガイドの発展例では、スライダーは、調節エレメントのための受け入れシート部を有している。調節エレメントは、受け入れシート部の中を調節方向にスライド変位可能な関係でガイドされるように配置され得る。
【0019】
リニア・ガイドの発展例では、受け入れシート部は、スライドして変位可能な調節エレメントの支持のために、半径方向−軸線方向の平面の中に配設された側部表面を有することが可能である。調節エレメントの挿入のために、受け入れシート部は、半径方向−軸線方向の平面に対して垂直方向に開放した構成のものであることが可能である。このケースでは、スプリングは、受け入れシート部において、および、調節エレメントにおいて支持され得る。
【0020】
とりわけ、2つのレールの上述のくさび形状の配置によって、半径方向−軸線方向の平面は、くさび角度の角度二等分線であることが可能である。この目的のために、調節エレメントは、変位方向および調節方向を有する縦断面平面に対して、矢印の形態のプロファイルを有することが可能であり、この矢印は、段差付きの矢印先端部の有無にかかわらず、調節方向に半分にされている。
【0021】
また、有利には、装備に関して、調節エレメントは、当接部によって制限される調節トラベルによって、受け入れシート部の中にガイドされるように配置され得る。
【0022】
リニア・ガイドの移動のしやすさは、それぞれ、くさび角度、調節エレメントに加えられる力、および/または、スライダー/レールおよびレール/ガイド表面の材料ペアの選択によって、調節され得る。たとえば、容易に移動可能なリニア・ガイドを提供するために、くさび角度は、変位するときの摩擦力の増加の結果としてセルフ・ロッキング作用が起こるくさび角度よりも実質的に大きくなっていることが可能である。たとえば、飲料の自動販売機のケースのように、または、頻繁には、測定テーブルのケースのように、移動の不活発が望まれる場合には、くさび角度のサイズは、セルフ・ロッキングくさび角度のサイズに近付くことが可能である。同様に、レールの材料は、移動のしやすさのためにスライド移動において生じる摩擦力を最小化するように、または、移動の不活発のためにそのような力を増加させるように、選択され得る。最後に、調節エレメントに作用する力はまた、スライド表面同士の間の摩擦力に影響を与える。
【0023】
スライダー、および、これに関連するレールは、2つのスライド表面ペアをそれぞれ有することが可能であり、スライダーのスライド表面ペアのうちの一方は、調節エレメントに関連付けられたスライド表面を有している。スライダーが遊び低減による調節エレメントの変位とともに移動させられ、その他のスライド表面がレールのガイド表面に接触した状態になっており、とりわけ、これに押し付けられた状態になっている限りにおいて、とりわけ、スライド表面のくさび形状の配置に起因して、とりわけ、問題なく、スライダーの移動の不活発を設定することが可能である。
【0024】
機械的な力の観点において、2つのスライド表面ペアは、調節方向に対して垂直方向のミラー対称の平面に対して、互いに対して鏡像対称に配置され得る。
【0025】
また、スライダーの両方のスライド表面ペアが、調節エレメントに関連付けられたそれぞれのスライド表面を有することが可能である。
【0026】
トライボロジー的な視点から、スライダーおよび少なくとも1つの調節エレメントが、潤滑剤不要でレールと協働するプラスチック、好ましくは、トライボロジー的な特殊プラスチックから作製されている場合には、有利である。機械的な理由のために、レールは、金属、とりわけ、アルミニウムから作製され得る。スライダーおよび調節エレメントは、とりわけ、射出成形プロセスを使用して、好ましくは、同じトライボポリマー(tribopolymer)から作製されている。
【0027】
リニア・ガイドの実施形態において、1つだけの調節エレメントが存在する場合には、有利には、機械的な力の視点から、この調節エレメントは、変位方向に対してスライダーの上の中央に配置され得る。
【0028】
たとえば、2つの調節エレメントが存在する場合には、有利には、機械的な力の視点から、調節エレメントは、スライダーの軸線方向の端部領域において、変位方向に対してそれぞれ配置され得る。傾斜モーメントを回避するために、2つの調節エレメントのスライド表面は、スライダーの同じスライド表面の中に配置され得る。
【0029】
調節エレメントは、小さい幅のプレート形状の構成のものであることが可能である。調節エレメントは、変位方向よりも調節方向に長くなっていることが可能である。したがって、変位方向のこの幅に対する調節方向の調節エレメントの長さの比率は、>1であることが可能であり、また、1よりもさらにかなり大きくなっていることが可能である。調節エレメントの幅は、変位方向に、たとえば、スライダーの長さの50%以下または30%以下、好ましくは、10%以下であることが可能である。調節エレメントの小さい幅は、関連の受け入れシート部が単にスライダーに対応する幅の狭い構成のものであればよいという利点を有しているため、スライダーの強度がそれに対応してわずかにだけ低減され、したがって、ごくわずかな程度だけ低減される。そのうえ、小さい幅の結果として、調節エレメントと受け入れシート部との間の接触表面、ひいては、遊び低減のときに起こる摩擦力が、それに対応してわずかになっており、遊び低減のために必要とされる力がそれに対応して小さくできるようになっており、したがって、力を発生させるためのスプリングが、構造的に、それに対応して小さくなり得るようになっている。これは、遊び低減効果の微調節を可能にする。そして、これは、調節方向へのスプリングおよび調節エレメントの必要とされる構造的な長さが小さく維持され得るという利点を有している。そして、これは、調節方向への、それに対応して低減されるスライダー幅を必要とする。このように、本発明の自己調節式の遊び低減、ひいては、リニア・ガイドは、従来技術と比較して、かなり小型化され得る。
【0030】
本発明のさらなる詳細および利点は、保護の範囲を限定することなく、添付の図面を参照して、好適な実施形態の説明から、以降で明らかになることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】レールとレールの中を線形にガイドされるスライダーとを備えたリニア・ガイドの構成の図である。
【
図3】
図1の中の断面線c−cに沿ったリニア・ガイドの断面図である。
【
図5】
図4のスライダーの下方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から
図3は、リニア・ガイド1の好適な実施形態をそれぞれ示しており、リニア・ガイド1は、レール2と、レール2の中をガイドされるスライダー3と、調節エレメント41を備えたリニア・ガイド1の自己調節式遊び低減手段4とを有している。
図4から
図6は、遊び低減手段4を備えたスライダー3のさまざまな図を示している。
【0033】
ここで、レール2は、4つのガイド表面21を有しており、4つのガイド表面21において、スライダー3は、スライドして変位可能に装着されており、また、ここで対応する4つのスライド表面31によって、変位方向vにガイドされる。特に
図4に見ることができるように、調節エレメント41は、さらなるスライド表面42を有しており、さらなるスライド表面42は、
図4の右側において、スライド表面31の一部分aを形成している。スライダー3のこの実施形態では、すべてのガイド表面21およびスライド表面31、42は、変位方向vに延在する角柱表面の形態になっている。ガイド表面21およびスライド表面31、42は、互いにマッチさせられており、調節エレメント41を備えたスライダー3およびレール2の据え付けられた位置において、相互に関連付けられるガイド表面21およびスライド表面31、42が互いに平行に延在するようになっている。したがって、リニア・ガイド1は、角柱ガイドの形態になっている。
【0034】
調節エレメント41は、変位方向vに対して垂直方向の調節方向eへの遊び低減のために、スライダー3の上に設けられた受け入れシート部32(
図3a)の中に変位可能に配置されている。調節エレメント41は、スライダー3の中に一体化されている。
【0035】
特に
図2aおよび
図3aにおいて見ることができるように、作動位置における遊び低減のために、すなわち、レール2の上のスライダー3の据え付け位置における遊び低減のために、調節エレメント41は、調節エレメント41の端部において調節方向eに突出しており、調節エレメント41のスライド表面42がスライダー3の外側の輪郭を小さい量bだけ越えた状態になっており、そのさらなるスライド表面42によって、その反対側のレール2のガイド表面21に対抗して、表面接触して位置するようになっている。また、この突出関係は、調節エレメント41のさらなるスライド表面42に関して、調節エレメントに関連付けられるスライダー3のスライド表面31を越えて観察されることとなる。その量bは、遊び低減の量に等しいかもしくはおおよそに等しいことが可能であり、または、これに等しく設定され得る。しかし、本発明は、
図2aおよび
図3aに示されている量bに限定されず、ある状況下では、これとはかなり異なることが可能である。
【0036】
調節エレメント41は、調節方向eの力によって、長手方向軸線lに対して半径方向外向きに作用させられ、力は、
図3aに示されている調節トラベルwにわたって、調節エレメント41をレール2の関連のガイド表面21に押し付け、また、調節エレメント41は、場合によっては、ガイド表面21に対してスライドする。このように、レール2の中へのスライダー3の遊びのない装着を実際に実現することが可能である。互いに対するスライド表面21、31、42のスライド移動の結果として、遊びの調節が無段階に起こる。
【0037】
特に
図3および
図3aにおいて見ることができるように、調節エレメント41は、スプリング45を伴うスプリング受け入れシート部43を有しており、スプリング45は、ここでは、コイル・スプリングの形態になっており、また、スプリング45は、スリーブ44の中でガイドされ、スプリング45の座屈を防止し、スプリング45は、両端部において、スリーブから突出している。スプリング45は、スプリング受け入れシート部43の中に、付勢された条件で配置されている。スプリング45は、駆動側において、スライダー3に接触して支持されており、被駆動側において、調節エレメント41に接触して支持されており、これによって、調節エレメント41は、これに関連付けられたレール2のガイド表面21に向けて押されている。リニア・ガイドが動作しているときの自己調節式のスプリングの低減状況において、それ自身はわずかであるスプリング・トラベルの変化に起因して、スプリング力は一定であると想定され得る。プラスチックの場合と同様にスプリング力を変化させるクリープ現象を回避するために、スプリングは、ここではスチールから作製されている。
【0038】
それとは対照的に、スライダー3および調節エレメント41の他のコンポーネントは、好ましくは、潤滑剤不要でレール2と協働するトライボロジー的に最適化されたプラスチックから作製されている。レール2は、たとえば、押し出し加工されたプロファイルの形態の金属、とりわけ、アルミニウム、好ましくは、陽極酸化アルミニウムから作製され得る。これは、とりわけ低摩耗の金属−プラスチック・スライド摩擦を可能にする。
【0039】
レール2およびスライダー3は、2つのスライド表面ペア5をそれぞれ有しており、レール2の2つのスライド表面ペア5は、それぞれ、2つのガイド表面21を有しており、スライダー3の2つのスライド表面ペア5は、2つのスライド表面31をそれぞれ有している(
図2)。スライド表面ペア5のそれぞれのガイド表面21およびスライド表面31は、変位方向vに対して垂直方向に、および半径方向外向きに、くさび角度βを有するくさび構成で収束するように配置されている。セルフ・ロッキングを防止するために、くさび角度βは、セルフ・ロッキング作用が起こるくさび角度よりも大きくなっている。ガイド表面21およびスライド表面31は、くさび状の構成で配置されているので、図示されている実施形態は、所与の程度の移動の不活発を調節するのに適切である。
【0040】
レール2の2つのスライド表面ペア5、および、スライダー3の2つのスライド表面ペア5は、調節方向eに対して垂直方向に、それぞれのケースにおいて、中央鏡像対称平面S(
図2を参照)に対して、互いに鏡像対称的な関係でそれぞれ配置されている。したがって、スライダー3を受け入れるためのレール2の内側の輪郭、および、レール2の内側の輪郭と係合するためのスライダー3の外側の輪郭は、調節方向にくさび形状で収束しており、それによって、スライダー3は、レール2の中で、変位方向vに対して回転不可能に装着されて配置されている。
【0041】
ここで図に示されているリニア・ガイド1の実施形態の中に提供されているように、2つの調節エレメント41が、スライド表面31のうちの一方だけに設けられているが、しかし、これは、他方のガイド表面21とスライド表面31との間の遊びを調節するのに十分である。最初に、レール2の一方のガイド表面21に対する遊びだけが、調節エレメント41によって調節または低減される。スプリング力の効果の下で、その遊びの低減は、レール2の他方のガイド表面21に向けて、レール2の内側の輪郭の中でのスライダー3の変位によってさらに実行される。このケースでは、互いに対してスライドする関連の表面21、31、42に起因して、スライダー3がレール2の中にくさび形状に打ち込まれているので、移動の不活発を生じさせる範囲までは、表面21、31のくさび形状の配置が、遊びのかなりの低減を促進させる。ここで、そのうえ、2つの調節エレメント41は、長手方向lに互いから間隔を置いて配置されたそれぞれの受け入れシート部32の中に調節エレメント41の端部がある状態で、スライド変位可能な関係で装着されている。
【0042】
調節エレメント41のための受け入れシート部32は、側部表面33を有しており、側部表面33は、半径方向−軸線方向の平面に配設されており、これは、同時に、くさび角度βに関する角度二等分線になっており、調節エレメント41は、調節方向eに、すなわち、ここでは変位方向vに対して精密に垂直方向に、スライドして変位可能な関係で、側部表面33に接触してガイドされる。
【0043】
図3および
図3aにおいて見られるように、受け入れシート部32の中の調節エレメント41の調節トラベルwは、当接部46によって制限されている。この目的のために、調節エレメント41は、底部において、調節方向eに対して反対側の関係で、受け入れシート部32に接触して位置している。調節方向eへの調節トラベルwを制限するために、調節エレメント41および受け入れシート部32は、当接部46としてセットバック部分47をそれぞれ有しており、セットバック部分47において、これらは互いに対してガイドされる。
【0044】
調節エレメント41は、実質的にプレート形状であり、幅が狭い。変位方向vの調節エレメント41の延在は、調節方向eの延在よりも実質的に小さくなっている。したがって、スライダー3の所与の幅によって、調節エレメントの側部表面(調節エレメントの側部表面は、受け入れシート部の側部表面33に接触してスライドして変位可能に位置している)は、比較的に小さくなっている。したがって、幾何学形状に関して、レール2の中で調節エレメント41が変位するときの摩擦力は低くなっており、構造および装着の簡単化を伴って、スプリング45のスプリング力が、それに対応して低くなっていることだけが必要とされるようになっている。したがって、これは、より精密な遊びの調節を可能にする。
【0045】
図1および
図2にそれぞれ示されているように、レール2およびスライダー3は、たとえば、レール2をベースに固定するための、または、構造体をスライダー3に固定するための、2つの通常の開口部6をそれぞれ有している。
【0046】
言及する価値のある本発明のさらなる利点は、以下の通りである。
− 潤滑剤不要な走行(潤滑剤なしの状態)、
− 無段階の滑らかなスライダーのスライド、
− スライダーのための良好な保持性(位置的な安定性)、
− 一定の変位力、
− 静かでガタツキのない移動、および、
− コンパクトな構造。
【0047】
したがって、本発明によるリニア・ガイド1は、多くの目的に関して好適であり、とりわけ、家具構成、たとえば、自動車部門におけるヘッド・サポート、バックレスト、およびアームレストの生産、キッチン機器または3Dプリンターのメカニクスにおける高さ調節に関して好適である。
【符号の説明】
【0048】
1 リニア・ガイド
2 レール
3 スライダー
4 遊び低減
5 スライド表面ペア
6 開口部
21 ガイド表面
31 スライド表面
32 受け入れシート部
33 側部表面
41 調節エレメント
42 さらなるスライド表面
43 スプリング受け入れシート部
44 スリーブ
45 スプリング
46 当接部トラベル
47 セットバック部分
β くさび角度
b 量
e 調節方向
l 長手方向
v 変位方向
w 調節トラベル
S 鏡像対称の平面