特許第6904956号(P6904956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904956注型用配合物とゼラチン製品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904956
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】注型用配合物とゼラチン製品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/281 20160101AFI20210708BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20210708BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20210708BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20210708BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20210708BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20210708BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   A23L29/281
   A23L27/30 A
   A23L27/00 F
   A61K47/42
   A61K47/26
   A61K45/00
   A61K45/06
   A61K47/02
   A61K47/34
   A61K47/12
   A61P3/02
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-531253(P2018-531253)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公表番号】特表2019-503673(P2019-503673A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2016079388
(87)【国際公開番号】WO2017102347
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】102015121923.9
(32)【優先日】2015年12月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502084056
【氏名又は名称】ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】エーベルハルト ディック
(72)【発明者】
【氏名】ゾンヤ ゲットリング
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ライタイム
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ラーブ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ブラック
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0013732(US,A1)
【文献】 特開2015−104342(JP,A)
【文献】 特表2015−500024(JP,A)
【文献】 特開平03−183443(JP,A)
【文献】 特開平06−343405(JP,A)
【文献】 特開平03−004751(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0148292(US,A1)
【文献】 特開2007−029018(JP,A)
【文献】 特表2015−529446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G1/00−9/52,
A23L31/00−33/29
A61K9/00−9/70,47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち
− ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDa、好ましくは少なくとも145kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも45重量%であるゼラチンを、4〜16重量%;
− 1種類以上の糖アルコールを、6〜76重量%;
− 乾燥物質の含量が80重量%の状態で50℃の温度にて測定した粘度が、800mPa・s未満、好ましくは700mPa・s未満であるグルコースシロップを、0〜50重量%;および
− スクロースを、0〜50重量%、
含有する均質な水溶液を含み、
前記グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の25〜76重量%を構成し、前記水溶液が、少なくとも78重量%の乾燥物質含量および/または0.75未満の水分活性(A値)を有する、注型用配合物。
【請求項2】
前記均質な水溶液が、1種類以上の香味剤、着色剤、および/または酸性化剤をも含む、請求項1に記載の注型用配合物。
【請求項3】
前記均質な水溶液が、1種類以上の栄養素および/または医薬活性物質をも含む、請求項1または2に記載の注型用配合物。
【請求項4】
さらに1種類以上の不溶性構成成分を含み、前記不溶性構成成分は、前記水溶液に分散されており、好ましくは栄養素および医薬活性物質から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項5】
前記栄養素が、ビタミン、ミネラル、植物抽出物、およびペプチド、特にはコラーゲンペプチド、から選択される、請求項3または4に記載の注型用配合物。
【請求項6】
前記ゼラチンが、前記水溶液に5〜12重量%、好ましくは6〜10重量%の割合で含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項7】
前記グルコースシロップが、50以上、好ましくは60以上のデキストロース当量を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項8】
前記グルコースシロップが、前記水溶液に8〜40重量%、好ましくは15〜28重量%の割合で含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項9】
前記スクロースが、前記水溶液に15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%の割合で含まれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項10】
前記糖アルコールが、前記水溶液に10〜30重量%の割合で含まれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項11】
前記糖アルコールが、ソルビトール、マンニトール、エリトリトール、およびグリセロールから選択され、好ましくはソルビトールである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項12】
前記均質な水溶液が、1種類以上のさらなる親水コロイドをも含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項13】
ゼラチン製品を製造する方法であって、
− 請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液を製造する工程と;
− 前記注型用溶液を80℃以上の温度で固形窪み状鋳型に注入する工程と;
− 前記窪み状鋳型中の前記注型用溶液を、ゼラチン製品を取得するために冷却する工程と;
− 前記ゼラチン製品を前記窪み状鋳型から取り出す工程と、
を含む方法。
【請求項14】
前記注型用溶液が前記窪み状鋳型の中で60分未満、より好ましくは45分未満の時間で冷却される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記固形窪み状鋳型がプラスチック材料からなり、前記プラスチック材料は、好ましくはシリコーン、ポリカーボネート、またはポリエチレンテレフタレートから選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ゼラチン製品は、前記窪み状鋳型から取り出した後、離型ワックスで処理されるか、または、スクロースおよび/またはクエン酸を散布される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用配合物の固化物からなるゼラチン製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチン製品を製造するための注型用配合物に関する。
【0002】
本発明は、その注型用配合物を用いてゼラチン製品を製造する方法と、その方法から製造されるゼラチン製品にも関する。
【0003】
以下で用いる一般的な用語「ゼラチン製品」は、一方では、ある程度弾性的な感触を主な特徴とする一般に好まれている砂糖菓子製品を含む。ゼラチン以外にさまざまなタイプの糖/代替糖がこれら製品の主たる構成成分である。これら製品は最も広い意味でグミ菓子と呼ぶことができ、特にグミベア(gummy bear)またはフルーツガムの形態で知られている。
【0004】
他方、そのようなゼラチン製品は栄養補助食品と医薬製品の分野で咀嚼錠としても用いられており、この分野ではさまざまな栄養素(例えばビタミン、ミネラル、ペプチド)および/または医薬活性物質が基本的な製法に添加される。この場合には糖含有量を減らすことができるが、菓子から栄養補助食品への境界はかなりあいまいである。さまざまな添加剤または活性物質を豊富にしたグミ菓子または咀嚼錠が提供されていて、例えば「強化グミ」として知られる。
【0005】
このようなゼラチン製品を製造するために以前用いられていた方法は、モーグル技術(mogul technique)として知られている。この方法では、含水量が約25重量%であってゼラチンと糖と他の構成成分を水に溶けた状態で含む熱い注型用配合物が、デンプン成型粉で形成された窪み状鋳型(hollow mould)の中に注入される。この窪み状鋳型は、乾燥したデンプン粉末を満たした平坦なトレイの滑らかな表面に雄型(positive mould)を押し込むことによってあらかじめ製造される。この窪み状鋳型が満たされると、デンプン粉末トレイを人工気候室の中に24〜72時間保管する。その間に窪み状鋳型の中にある注型用配合物は冷却されるため、注型品(cast article)が硬化する。それと並行していくらかの水分がデンプン成型粉に吸収されるため、乾燥プロセスが起こる。そのとき最終ゼラチン製品は一般に含水量が20重量%以下である。次に粉末トレイを空にし、デンプン成型粉を篩によってゼラチン製品から分離し、乾燥させた後に再利用する。ゼラチン製品を離型剤(「潤滑剤」)で処理して粘着を防止し、包装する。
【0006】
窪み状鋳型の製造にデンプン成型粉を用いることにはさまざまな欠点が伴っている。公知の製法(recipe)を用いてデンプン成型粉中で注型されたゼラチン製品の長い乾燥時間(24〜72時間)のために、適度に高性能のモーグルプラント(1分間に最大で35個の粉末トレイを注型する)の場合で、広い乾燥室と非常に多数の成型用粉末トレイが必要となる。したがって、気象制御、成型用粉末トレイ、デンプン乾燥機のほか、少なからぬデンプン成型粉に関するスペースの条件と必要な投資はかなりになる。デンプン粉末による製品領域の汚染も、定期的な清掃にもかかわらず完全には回避できないため問題である。
【0007】
モーグル法のさらに別の欠点は、製品を変える際の交差汚染のリスクである。というのも以前に製造した製品の汚染がデンプンの中に常に残留し、デンプン成型粉を連続的に再利用すると新たな製品の中に導入される可能性があるからである。この問題は、製品を変えるごとに、その前にデンプン成型粉をすべて廃棄することによってしか回避できないと考えられるが、そうすると非常に不経済になろう。
【0008】
公知の製造法の上記欠点は、特に医薬製品の製造において極めて深刻である。衛生(デンプン粉による汚染)と純度(交差汚染)に関してモーグル技術は医薬規格(GMPガイドライン)の要求に合致していないため、医薬製剤としてのグミ菓子または咀嚼錠の応用分野は厳しく制限される。
【0009】
このタイプのゼラチン製品を注型するために、(特にプラスチック材料でできた)再利用可能な固形(solid)窪み状鋳型を使用することは、これまで経済的な理由と技術的な理由で失敗した。このような方法は、実際、他の迅速に硬化する親水コロイド(ペクチンなど)に基づく糖菓子製品の製造に関して知られている。そのような親水コロイドでは注型用配合物の粘度が小さいことが許容されるからである。しかしこれら製品の感覚特性は顕著に異なるため、消費者はゼラチン製品の代わりになるとは見なしていない。
【0010】
固形窪み状鋳型(solid hollow mould)の中で既知のゼラチン系注型用配合物を乾燥させることはできない。というのも、水は開放された上側を通じてしか逃げ出すことができないと考えられるからである。これは、完全かつ一様な乾燥には十分ではない。製法を変えることは非常に難しい。というのも、ときに相反する基本的条件を遵守せねばならないからである。一方では、注型用配合物のレオロジー特性は注型プロセスに適している必要があり、他方では、最終製品は、消費者が想定するゼラチン製品の典型的な感触を持っていなければならない。
【0011】
したがって本発明の目的は、固形窪み状鋳型での注型に適した、ゼラチン製品を製造するための注型用配合物を提供することである。
【0012】
この目的は、本発明従い、序論で言及したタイプの注型用配合物によって達成される。この注型用配合物は、以下の構成成分、すなわち
− ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDa、好ましくは少なくとも145kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも45重量%である4〜16重量%のゼラチンと;
− 6〜76重量%の1種類以上の糖アルコールと;
− 乾燥物質の含量が80重量%の状態で50℃の温度にて測定した粘度が800mPa秒未満、好ましくは700mPa秒未満である0〜50重量%のグルコースシロップと;
− 0〜50重量%のスクロース
を含有する均質な水溶液を含んでいて、
グルコースシロップと糖アルコールが合わさって25〜76重量%の水溶液を構成し、その水溶液は、少なくとも78重量%の乾燥物質含量および/または0.75未満の水分活性(aw値)を有する。
【0013】
驚くべきことに、本発明の注型用配合物は、注入後の冷却中にゼラチンを硬化させるだけで、ゼラチン製品に典型的な感触とコンシステンシーを、それを目的として顕著に乾燥させる必要なく、すなわち水を放出させる必要なく、実現できることが見いだされた。これは、含水量が製造するゼラチン製品と実質的にすでに同じくらい少ない注型用配合物によって可能になる。
【0014】
この注型用配合物は、先行技術よりも乾燥物質の含量が多いにもかかわらず、構成成分が理由で、従来のやり方での処理を可能にするレオロジー特性を有する。一方では熱い注型用配合物の粘度が十分に小さいことが、他方では冷却中にシステムが急速に固化することが、決定的な因子である。このようなやり方でだけ、フィラメントの形成および/または空気の封入といった望ましくない現象を回避しつつ、良好な成型性を得ることができる。
【0015】
これらの特性が理由で、本発明の注型用配合物は、ゼラチン製品を製造する際に、特にプラスチック材料(シリコーンなど)でできた固形窪み状鋳型の中で成型することができる。このことは、以前に使用されていたデンプン成型粉をなくすことで得られる利点以外に、製造法の顕著な時間短縮にもつながる。というのも、本発明の注型用配合物は一般に、わずか60分以内に鋳型から過度に粘着することなく外すことができるほど堅固だからである。それとは逆に、既知の製法を利用してデンプン成型粉の中で成型された製品は、乾燥させるのに24〜72時間必要とされる。したがって本発明の注型用配合物は、単位時間当たりの量が同じであれば、グミ菓子を冷却するのに必要なスペースが顕著に少なくなり、そのことで窪み状鋳型への投資が顕著に少なくなり、乾燥のための保管スペースがもはや不要になり、運転コストも低下する(デンプンの乾燥または保管領域の気候制御が不要)。
【0016】
本発明の注型用配合物は、上記の範囲の量で含まれる構成成分の協働によって上記の目的を達成する。本発明の本質的な1つの特徴は、ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%の高分子量ゼラチンを選択することである。このようなゼラチンは、さまざまなコラーゲン含有材料、特にブタ、ウシ、家禽類、魚いずれかの結合組織または骨から得ることができる。
【0017】
香味剤および/または着色剤および/または酸性化剤をさらなる構成成分として、特に均質な水溶液中の注型用配合物に含めることができる。その場合のそのような添加剤の典型的な量の割合は先行技術から公知である。従来からある食用酸、好ましくはクエン酸が酸性化剤として用いられる。
【0018】
本発明の注型用配合物は、上記の構成成分に加え、さらなる構成成分も含むことができるが、それら構成成分が注型用配合物の上記の有利な特性に対してマイナスの効果を及ぼさないことが条件である。好ましい一実施態様では、注型用配合物は、1種類以上の栄養素および/または医薬活性物質を含んでいて、それらは溶解度に応じて均質な水溶液に溶かすか分散させることができる。前者の場合、そのような構成成分の割合は45重量%未満であることが好ましく、35重量%未満であることがより好ましい。
【0019】
本発明の注型用配合物に含まれる好ましい栄養素は、ビタミン、ミネラル、植物抽出物、ペプチドから選択され、特にコラーゲンペプチド(コラーゲン加水分解産物)が選択される。対応するゼラチン製品として、強化した菓子製品(強化グミ)または栄養補助食品が可能である。
【0020】
本発明の注型用配合物は(例えば咀嚼錠の形態の)医薬製品の製造にも用いることができ、その場合には、医薬活性物質(例えばアセチルサリチル酸、パラセタモール、イブプロフェンなどの鎮痛剤)を含んでいる。注型用配合物は、モーグル技術とは異なって、固形窪み状鋳型で使用するのに適しているため、この分野に適用される衛生基準(GMPガイドライン)を遵守することができる。
【0021】
ゼラチンは水溶液に4〜16重量%の割合で含めることができるが、5〜12重量%、特に6〜10重量%の割合が好ましい。この範囲内だと、典型的な感触、特に大きな弾性を持つゼラチン製品が得られる。
【0022】
グルコースシロップとスクロースは、それぞれ、水溶液に50重量%までの割合で含めることができる。しかしこれら構成成分は、無糖製品を製造するために省略することもでき、より大きな割合の糖アルコールで補償することができる。
【0023】
グルコースシロップを用いることで、乾燥物質の含量が80重量%の状態で50℃の温度にて測定した粘度が800mPa秒未満になることが好ましく、700mPa秒未満になることがより好ましい。グルコースシロップは、通常は高度に加水分解されたグルコースシロップであり、デキストロース当量が50以上、好ましくは60以上である。
【0024】
無糖製品の場合は別にすると、水溶液はグルコースシロップを8〜40重量%の割合で含むことが好ましく、15〜28重量%の割合で含むことがより好ましい。
【0025】
スクロース、すなわち市販されている糖は、(無糖製品の場合を除き)水溶液に15〜45重量%の割合で含まれることが好ましく、20〜40重量%の割合で含まれることがより好ましい。
【0026】
水溶液は、1種類以上の糖アルコールも6〜76重量%、好ましくは10〜30重量%の割合で含んでいる。これら代替糖を利用することで、一方では糖および/またはグルコースシロップの量を減らしつつ、他方では糖アルコールが高価な化合物の有利なレオロジー特性にも寄与することになる。
【0027】
糖アルコールの選択は、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、グリセロールからなされることが好ましく、ソルビトールが特に好ましい。
【0028】
本発明の一変形例によれば、均質な水溶液は、ゼラチン製品の特性(例えば温度安定性と弾性)を変化させるため1種類以上のさらなる親水コロイド、特にペクチンも含んでいる。さらなる親水コロイドの割合は、0.1〜10重量%、特に0.2〜5重量%であることが好ましい。
【0029】
本発明の注型用配合物は、上述のように、固形窪み状鋳型、特にプラスチック材料でできた型への注型によりゼラチン製品を製造するのに適している。
【0030】
したがって本発明は、ゼラチン製品を製造する方法にも関し、この方法は、以下の工程、すなわち
− 本発明の注型用溶液を製造する工程と;
− その注型用溶液を80℃以上の温度で固形窪み状鋳型に注入する工程と;
− その窪み状鋳型中のその注型用溶液を冷却して前記ゼラチン製品を取得する工程と;
− そのゼラチン製品を前記窪み状鋳型から取り出す工程
を含んでいる。
【0031】
窪み状鋳型の中での注型用溶液の冷却は、60分以内の時間で実施することが好ましく、45分以内の時間で実施することがより好ましい。これは、通常は24〜72時間という乾燥時間の後にしかゼラチン製品を取り出すことのできないデンプン成型粉でできた窪み状鋳型と比べて大きな利点である。
【0032】
原則として、(約95℃までの)温度に対して安定で食品と接触させるのに適した任意の材料、特にプラスチック材料を固形窪み状鋳型に用いることができる。シリコーンでできた窪み状鋳型は可撓性があってゼラチン製品を容易に型から外すことができるため、特に好ましい。
【0033】
適切なプラスチック材料のさらなる例は、例えばポリカーボネート(PC)またはポリエチレンテレフタレート(PET)である。窪み状鋳型は、医薬のための公知のブリスターパックと同様、これらプラスチックの薄膜から熱成形によって製造することができる。これらの材料はシリコーンよりも経済的であり、例えばゼラチン製品に刻印する文字や記号を有する個別の窪み状鋳型を製造する可能性が開ける。その後、比較的少ない製品サイクルの後にこれら窪み状鋳型を廃棄することができる。
【0034】
ゼラチン製品を窪み状鋳型から取り出した後、望む外観に応じ、離型ワックスで処理するか、スクロースおよび/またはクエン酸を散布する。
【0035】
本発明は、本発明の方法によって製造したゼラチン製品にも関する。その製品は、新たな組成にもかかわらず、消費するとき、消費者がゼラチン製品に想定する典型的な感触を有する。
【0036】
序論にすでに記載したように、本発明の範囲での「ゼラチン製品」という用語は、外形に関係なく、対応する組成を有するあらゆる菓子製品、栄養補助食品、医薬製品を含んでいる。そのような製品の典型例は、グミ菓子、フルーツグミ、強化グミ、咀嚼錠などである。
【0037】
本発明のゼラチン製品は、乾燥物質の含量が少なくとも78重量%、および/または水分活性(aw値)が0.75未満であることが好ましい。本発明の注型用配合物に関連してすでに記載したように、冷却と硬化の間に乾燥物質の含量は増加しないか、有意でない増加でしかない。
【0038】
本発明のこれら利点とそれ以外の利点を以下の実施例に基づいてより詳しく説明することにする。
【0039】
実施例
【0040】
本発明による6種類の異なる注型用配合物(実施例1〜6)と、本発明によらない比較例としての1種類の注型用配合物から、以下に記載する方法に従ってゼラチン製品を製造した。
【0041】
その目的で、ゼラチンを最初に熱水(70〜80℃)に完全に溶かした後、ソルビトールと、必要な場合にはグリセロールを添加し、この混合物を均一に撹拌し、再び70〜80℃に加熱した。
【0042】
それと並行して、グルコースシロップと、スクロースと、ソルビトールと(必要に応じてペクチン)を水の中で減圧下にて少なくとも125℃まで沸騰させることによっていわゆる糖スラリーを製造した。この糖スラリーを約110℃まで冷却し、ゼラチン/ソルビトール溶液をまとめ、この混合物を真空下で脱ガスし、80℃まで冷却した。脱ガスの間、組成物の含水量も低下し、乾燥物質の含量が少なくとも78重量%になった。
【0043】
次にクエン酸を酸性化剤として装填物に添加し、注型用配合物をシリコーンでできた窪み状鋳型(実施例1〜5と比較例)またはPETブリスターパック(実施例6)の中の窪み状鋳型に充填した。その目的で、Winkler und Duennebier Suesswarenmaschinen社からの実験室用注型設備を使用した。充填量は、それぞれ1〜5gであった。
【0044】
周囲温度よりも12℃低い温度にて最長60分間という冷却時間の後、本発明のゼラチン製品(グミ菓子/咀嚼錠)を鋳型から外すことができた。その後この製品は、望みに応じて離型ワックスで潤滑にするか糖とクエン酸を散布した後、包装することができる。
【0045】
以下の表1に、窪み状鋳型に装填する前の最終注型用配合物の各組成を実施例1〜6と比較例について具体的に示してある。注型用配合物のさまざまなパラメータ、製造方法、製造されたゼラチン製品も具体的に示されている。
【0046】
【表1】
【0047】
比較例は、標準ゼラチン、加水分解の程度が小さいグルコースシロップ(DE42)、糖アルコールなしという先行技術によるモーグル設備の典型的な製法に対応している。この注型用配合物は、フィラメントの形成と空気の封入が原因で成型が難しかったため、60分間の冷却時間の後に相変わらず軟らかすぎて粘着性がありすぎるためシリコーン製鋳型から外せなかった。高分子量ゼラチン、高度加水分解グルコースシロップ(DE60)、ソルビトールを含む注型用配合物から製造された実施例1のゼラチン製品の場合には、60分経過しないうちにすでに取り外すことができた。
【0048】
スクロース、グルコースシロップ、ソルビトールを異なる割合で含む実施例2〜5では、そしてグリセロールを追加して含む実施例6でも、製品を鋳型から外すことが最長で40分後に可能であり、最終製品には感触の異なるものがあった(例えばペクチンを追加して含む実施例4の場合には、より短く、より堅固な感触)。
【0049】
本発明による注型配合物の製法を変えることにより、乾燥物質の含量、ゼラチンの用量、糖組成に応じて製造されるゼラチン製品の感触特性を変化させることができた。