特許第6904961号(P6904961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904961発泡アスファルト組成物、それを含む再生アスファルト組成物、それを含むアスファルト舗装材、およびそれを用いるアスファルト舗装材の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904961
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】発泡アスファルト組成物、それを含む再生アスファルト組成物、それを含むアスファルト舗装材、およびそれを用いるアスファルト舗装材の形成方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/22 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   E01C7/22
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-534728(P2018-534728)
(86)(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公表番号】特表2019-500524(P2019-500524A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】US2016067845
(87)【国際公開番号】WO2017116861
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年11月27日
(31)【優先権主張番号】62/273,742
(32)【優先日】2015年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/370,683
(32)【優先日】2016年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ルイシン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ユアンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュン
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0055304(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/105737(WO,A1)
【文献】 特表2014−506637(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/105410(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/119842(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02472995(GB,A)
【文献】 特表2003−524054(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0276668(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0191514(US,A1)
【文献】 特表2015−527479(JP,A)
【文献】 中国実用新案第203451971(CN,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0195552(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0054987(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0360406(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02902374(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト基剤成分、
高密度酸化ポリエチレン、及び
前記高密度酸化ポリエチレンと異なり、且つ、非酸化ポリエチレン単独重合体及び低密度酸化ポリエチレンから選択される追加のポリエチレン、
を含む発泡アスファルト組成物であって、
多孔性のマトリックス形状であり、
前記発泡アスファルト組成物に存在するすべての高分子種の混合量が、乾燥状態での前記発泡アスファルト組成物の総重量基準で、約2〜約10.5重量%であって、前記高密度酸化ポリエチレン及び前記追加のポリエチレンは、約1:2〜約2:1の重量比で前記発泡アスファルト組成物中に存在する、
発泡アスファルト組成物。
【請求項2】
約0.97〜約1.01g/cmの密度を持つ高密度酸化ポリエチレンを含む、請求項1に記載の発泡アスファルト組成物。
【請求項3】
約0.84〜約0.95g/cmの密度を持つ低密度酸化ポリエチレンを含む、請求項1に記載の発泡アスファルト組成物。
【請求項4】
約0.87〜約0.98g/cmの密度を持つ非酸化ポリエチレン単独重合体を含む、請求項1に記載の発泡アスファルト組成物。
【請求項5】
前記アスファルト基剤成分、前記高密度酸化ポリエチレン、該高密度酸化ポリエチレンと異なる前記追加のポリエチレン、及び水を発泡ノズルに導入すること、及び
前記多孔性のマトリックス形状の前記発泡アスファルト組成物を形成するために、水及び圧縮空気を用いて、前記アスファルト基剤成分と前記高密度酸化ポリエチレンと前記追加のポリエチレンとの混合物を発泡させること、
により作製される、請求項1に記載の発泡アスファルト組成物。
【請求項6】
前記混合物は60℃の温度で少なくとも約30,000Pa・sの粘度、160℃の温度で約150cP未満の粘度を持ち、該粘度はASTM D4402に準拠して決定され、水は前記混合物中に存在するすべての成分の総重量基準で、約2〜約5%の量で前記混合物中に存在する、請求項5に記載の発泡アスファルト組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の発泡アスファルト組成物、及び再生アスファルト成分を含む、再生アスファルト組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の発泡アスファルト組成物、及び、再生アスファルト成分を含む再生アスファルト層、及び
任意で前記再生アスファルト層上に被覆された加熱アスファルト混合物層、
を含む、アスファルト舗装材。
【請求項9】
前記加熱アスファルト混合物層が存在し、4〜8cm未満の厚さを持ち、前記再生アスファルト層は約10〜約18cmの厚さを持ち、前記再生アスファルト層は中国の高速道路用瀝青及び瀝青混合物の試験方法の規定JTG E20-2011工業規格のT0719-2011に準拠して、60℃で少なくとも5,000サイクル/mmの轍掘れ耐性を持つ、請求項8に記載のアスファルト舗装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年12月31日に出願された米国仮出願第62/273,742号の利益を主張するものであり、さらに、2016年12月6日に出願された米国特許出願第15/370,683号の利益を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に発泡アスファルト組成物、該発泡アスファルト組成物を含む再生アスファルト組成物、該発泡アスファルト組成物を含むアスファルト舗装材、および該発泡アスファルト組成物を使用したアスファルト舗装材の形成方法に関する。より詳細には、本発明は、ひずみ耐性にすぐれたアスファルト舗装材を提供する発泡アスファルト組成物、および該発泡アスファルト組成物を用いたアスファルト舗装材の形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アスファルト組成物は、一般的に道路の建設および維持のための舗装材料として用いられている。通常、アスファルトは、「アスファルトバインダー」または「アスファルトセメント」と呼ばれることが多く、骨材と混合してアスファルト舗装に用いられる材料を形成する。舗装作業員による本材料の処理および使用によって、アスファルト舗装が施される。アスファルト舗装材は、通常、骨材へのアスファルトの接着力によってアスファルトの連続相内に保持される骨材の層を含む。
【0004】
道路の維持または補修に応じて形成されるアスファルト舗装材は、加熱アスファルト混合物(HMA)層の下に敷かれる再生アスファルト層を基層として含むことが多い。常温路上工法および常温工場工法を含む常温再生工法は、一般に再生アスファルト層を形成するために使用されており、そこでは、再生アスファルト舗装材(RAP)を粉砕し、活性フィラー(セメント、石灰など)および生骨材などの他の任意の構成材料と共に発泡アスファルト組成物を用いて再構築される。この発泡アスファルト組成物は、一般に、約10〜約50℃の処理周囲温度で、RAPおよびその他の任意の構成材料と均質に混合し、結合することができる。そのような比較的低温での処理を、以下「低温」処理または「常温」処理という。このような処理によって、目標物理性能を維持しながらエネルギー消費および有害物質の排出を最小限に抑え、さらに生骨材の代わりにより多くのRAPを使用することが可能となる。
【0005】
現在、再生アスファルト層の形成に使用される発泡アスファルト組成物は、水とアスファルトからなる。弾性添加剤などの改質剤は、そのような添加剤が効果的な発泡を阻害するので、発泡アスファルト組成物中にさらに含むことはできないと一般に考えられている。しかしながら、従来の発泡アスファルト組成物を使用して形成される再生アスファルト層は、一般的に、永久ひずみ耐性が低く、アスファルト舗装道路、特に、交通量の多い道路や分岐路におけるアスファルト舗装道路には、時間の経過とともに轍が発生する。再生アスファルト層に起因して轍掘れが発生する傾向に対応するために、HMA層の厚さは、通常、中国の高速道路用瀝青および瀝青混合物の試験方法の規定JTG E20-2011工業規格のT0719-2011に準拠して測定した場合に、少なくとも5,000サイクル/mmの轍掘れ耐性を達成するために一般的である8cmを超えるHMA層の厚さで、轍掘り耐性目標を満たすように調節される。
【0006】
したがって、発泡アスファルト組成物、再生アスファルト組成物、アスファルト舗装材、および最大限の轍掘れ耐性を有する発泡アスファルト組成物を用いてアスファルト舗装材を形成する方法を提供することが望ましい。さらに、他の望ましい特性および特徴は、添付図面および本背景と合わせて以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明の概要】
【0007】
発泡アスファルト組成物、再生アスファルト組成物、アスファルト舗装材、および発泡アスファルト組成物を用いてアスファルト舗装材を形成する方法を、本明細書で提供する。一態様では、発泡アスファルト組成物は、アスファルト基剤成分および高密度酸化ポリエチレンを含む。発泡アスファルト組成物は、多孔性のマトリックス形態である。
【0008】
別の態様では、アスファルト舗装材は、再生アスファルト層を含む。該再生アスファルト層は、発泡アスファルト組成物および再生アスファルト構成材料を含む。該発泡アスファルト組成物は、ベースアスファルト構成材料および高密度酸化ポリエチレンを含む。
【0009】
別の態様では、アスファルト舗装材の形成方法は、アスファルト基剤成分および高密度酸化ポリエチレンを混合し、アスファルト混合物を形成することを含む。該アスファルト混合物、水、および圧縮空気は発泡し、発泡アスファルト組成物を形成する。該発泡アスファルト組成物および再生アスファルト構成材料を混合し、再生アスファルト組成物を形成する。再生アスファルト層は、再生アスファルト組成物によって形成される。
【0010】
種々の態様を以下の図面と併せて下記に説明する。図面における同一の数字は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一態様にしたがった、アスファルト発泡装置および発泡アスファルト組成物の形成プロセスの模式図である。
図2図2は、一態様にしたがった、アスファルト舗装材の概略側面断面図である。
図3図3は、一態様にしたがった再舗装装置および常温路上工法を用いたアスファルト舗装材の形成方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、発泡アスファルト組成物、発泡アスファルト組成物を含むアスファルト舗装材、および発泡アスファルト組成物を使用したアスファルト舗装材の形成方法を限定することを意図するものではない。さらに、前述の発明の背景または以下の詳細な説明において示すいかなる理論によっても限定する意図はない。
【0013】
本明細書では、轍掘れ耐性を最大化する発泡アスファルト組成物、再生アスファルト組成物、アスファルト舗装材、および発泡アスファルト組成物を用いてアスファルト舗装材を形成する方法を提供する。特に、該発泡アスファルト組成物は、ベースアスファルト構成材料に加えて高密度酸化ポリエチレン(OxHDPE)を含み、OxHDPEによって、発泡アスファルト組成物および再生アスファルト舗装材(RAP)を使用して形成された再生アスファルト層の轍掘れ耐性が最大になる。発泡アスファルト組成物は、本明細書においては、多孔性のマトリックス形態であり、圧縮空気、水、発泡ノズルを用いてベースアスファルト構成材料およびOxHDPEのアスファルト混合物を発泡させることによって形成することができる。RAPは、本明細書においては、修理、交換、または撤去された既存の構造物(既存の道路、駐車場など)から得られた粉砕アスファルト舗装材である。再生アスファルト層上に被覆した加熱アスファルト混合物(HMA)層を含むアスファルト舗装材中に使用される場合、本明細書に記載される再生アスファルト層の轍掘れ耐性が最大になることで、アスファルト舗装材の轍掘れ耐性目標を満たすのに従来必要とされていたものより、より薄いHMA層で轍掘れ耐性目標を達成することができる。さらに、複数の態様では、高密度酸化ポリエチレンと異なり、低密度酸化ポリエチレン(OxLDPE)から選択される追加のポリエチレン、非酸化ポリエチレン単独重合体、またはこれらの組み合わせもまた、OxHDPEに加えて、発泡アスファルト組成物に含まれる。追加のポリエチレンは、意外なことに再生アスファルト層の間接引張強度を最大にし、160℃での発泡アスファルト組成物の粘度を最小限に抑えることで、RAPの表面皮膜強度を向上し、これにより従来の再生アスファルト層と比較して、さらに再生アスファルト層が強化される。
【0014】
上述のとおり、前記発泡アスファルト組成物は、前記ベースアスファルト構成材料およびOxHDPEを含む。前記ベースアスファルト構成材料は、本明細書においては、重合体を含有しないニートアスファルトである。ニートアスファルトは、石油精製または精製後操作の副生成物であることが多く、エアブローンアスファルト、ブレンドアスファルト、分解または残留アスファルト、石油アスファルト、プロパンアスファルト、ストレートアスファルト、熱アスファルトなどが挙げられる。複数の態様では、アスファルト基剤成分は、乾燥状態での発泡アスファルト組成物の総重量に基づくと、約88〜約98重量%、例えば約92〜約98重量%の量で発泡アスファルト組成物中に存在する。
【0015】
OxHDPEは、発泡アスファルト組成物中に加えられ、発泡アスファルト組成物を使用して形成される再生アスファルト層の轍掘れ耐性を最大化する。複数の態様では、OxHDPEは、本明細書において、約0.97〜約1.01g/cmの密度を持つ酸化ポリエチレンである。複数の態様では、OxHDPEは、約1,000〜約30,000ドルトン、例えば約1,000〜約10,000ドルトンの数平均分子量(M)を持つ。さらに、複数の態様では、OxHDPEは、例えば酸価によって示されるカルボキシル基含量などの酸化度、約5〜約50(例えば約5〜約50mgKOH/gの酸価)、より好ましくは約15〜約40(例えば約15〜約40mgKOH/gの酸価)を持つことができる。酸価は、従来技術にしたがって、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、OxHDPEの溶液に0.1Nの水酸化カリウム(KOH)アルコール溶液を、視認される「桃色」になるまで滴下することによって決定することができる。複数の態様では、OxHDPEは、ASTM D4402に準拠して測定した場合、150℃で約100〜約20,000cPの粘度を持つ。好適なOxHDPEの例としては、New Jersey州Morristownに本社を置くHoneywell International Inc.によって製造されているHoneywell Titan(登録商標)7456、Honeywell Titan(登録商標)7686、Honeywell Titan(登録商標)7376、Honeywell Titan(登録商標)7608、Honeywell Titan(登録商標)7709、およびHoneywell Titan(登録商標)7410高密度酸化ポリエチレン単独重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
複数の態様では、前記発泡アスファルト組成物は、さらに高密度酸化ポリエチレンと異なる追加のポリエチレンを含む。この追加のポリエチレンは、発泡アスファルト組成物中に加えることができ、発泡アスファルト組成物を含む再生アスファルト層の轍掘れ耐性以外の物理的特性を調節する。より具体的には、発泡アスファルト組成物中にOxHDPEを含むことによって、発泡アスファルト組成物を使用して形成される再生アスファルト層の間接引張強度(ITS)が、従来の発泡アスファルト組成物を使用して形成される従来の再生アスファルト層と比較して低下することが見出された。しかしながら、追加のポリエチレンを含むことによって、従来の発泡アスファルト組成物を使用して形成された従来の再生アスファルト層と少なくとも等しいITS性能を達成でき、多くの場合ITS性能の向上も見られることが、予想外に見出された。ITSは、ひび割れおよびフィールド舗装の水分による損傷の可能性と相互に関係していると考えられている。
【0017】
追加のポリエチレンは、非酸化ポリエチレン単独重合体、低密度酸化ポリエチレン(OxLDPE)、またはこれらの組み合わせから選択することができる。複数の態様では、追加のポリエチレンは、OxLDPEであり、約0.84〜約0.95g/cmの密度を持つことができる。複数の態様では、OxLDPEは、約1,000〜約10,000ドルトン、例えば約1,000〜約5,000ドルトンの数平均分子量(M)を持つ。さらに、複数の態様では、OxLDPEは、例えば酸価によって示されるカルボキシル基含量などの酸化度、約5〜約30(約5〜約30mgKOH/gの酸価)、より好ましくは、約10〜約20(約10〜約20mgKOH/gの酸価)を持っていてもよい。酸価は、従来技術にしたがって、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、OxLDPEの溶液に0.1Nの水酸化カリウム(KOH)アルコール溶液を、視認される「桃色」になるまで滴下することによって同定することができる。他の態様では、追加のポリエチレンは、非酸化ポリエチレン単独重合体であり、ASTM D4402に準拠して測定した場合、140℃で約0.87〜約0.98g/cmの密度、約10〜7,000cPの粘度を持つことができる。好適な追加のポリエチレンの具体例としては、Honeywell Titan(登録商標)7183、Honeywell Titan(登録商標)7595、およびHoneywell Titan(登録商標)7984低密度酸化ポリエチレンならびにHoneywell Titan(登録商標)7287、Honeywell Titan(登録商標)7205、およびHoneywell Titan(登録商標)7467非酸化ポリエチレン単独重合体が挙げられる。
【0018】
複数の態様では、発泡アスファルト組成物に存在するすべての高分子種の混合量(すなわち、OxHDPEおよび追加のポリエチレンの総量)は、乾燥状態での発泡アスファルト組成物の総重量に基づくと、約2〜約10.5重量%、例えば約2〜約8重量%である。複数の態様では、発泡アスファルト組成物中のOxHDPE対追加のポリエチレンの重量比は、約1:3から約2:1、例えば約1:2から約2:1または約1:3から約1:1である。
【0019】
一態様において、図1を参照すると、発泡ノズル12を備えた従来のアスファルト発泡装置10を用いて、発泡アスファルト組成物14は、アスファルト基剤成分、OxHDPE、および所望により追加のポリエチレンを含むアスファルト組成物16を発泡ノズル12に導入することによって作製される。図示した態様では、OxHDPEおよび任意の追加のポリエチレンが、アスファルト基剤成分16と組み合わされ、アスファルト混合物16を形成する。該アスファルト混合物16は、水18および圧縮空気20を使用して発泡し、多孔性のマトリックス形態の発泡アスファルト組成物14を形成する。複数の態様では、アスファルト組成物16は、約150〜約170℃まで加熱され、該アスファルト組成物16が水18および圧縮空気20と混合される混合領域へ、例えば約0.3MPaの圧力でポンプにより送られる。複数の態様では、前記水と前記アスファルト混合物16中に存在する全構成材料をまとめた総重量に基づくと、水18は、約2〜約5重量%、例えば約2〜約4重量%のアスファルト混合物16と混合される。複数の態様では、発泡中(すなわち、発泡ノズル出口において)、アスファルト混合物16の温度は、約140〜約180℃、例えば約155〜約165℃である。
【0020】
複数の態様では、前記アスファルト混合物16は、追加のポリエチレンを含み、該アスファルト混合物16は、60℃の温度で少なくとも約30,000Pa・sの粘度、160℃の温度で約150cP未満の粘度を持ち、その粘度は、ASTM D4402に準拠して決定される。追加のポリエチレンの存在によって、追加のポリエチレンを含まずOxHDPEのみが存在している態様と比べて、160℃で前記アスファルト混合物16の粘度が低下し得るということが見出された。160℃という温度は、発泡中のアスファルト基剤成分16の通常の温度であり、理論に束縛されるものではないが、その温度でアスファルト混合物16の粘度が低下することで、再生アスファルト層24の形成時に、発泡がより効果的になりRAPの被覆はよくなるので、これによりITS性能が最大になると考えられている。さらに、OxHDPEは、約60℃の温度で前記アスファルト混合物16の粘度を最大にする。特定の理論に束縛されるものではないが、60℃で前記アスファルト混合物16の粘度を最大にすることで、轍掘れ耐性が最大になると考えられている。そのため、OxHDPEと追加のポリエチレンの両方の存在により、再生アスファルト層、および再生アスファルト層を含むアスファルト舗装材22の轍掘れ耐性およびITS性能が最大になると考えられている。
【0021】
複数の態様において、図1を引き続き参照しながら図2を参照すると、前記発泡アスファルト組成物14は再生アスファルト組成物に用いられ、該再生アスファルト組成物は再生アスファルト層24および再生アスファルト層24上に被覆された加熱アスファルト混合物(HMA)層26を含むアスファルト舗装材22に用いられる。複数の態様では、再生アスファルト組成物および再生アスファルト層24は、前記発泡アスファルト組成物14およびRAPなどの再生アスファルト成分を含む。追加成分もまた、再生アスファルト組成物中に含めてもよく、例えば活性フィラーおよび生骨材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。好適な活性フィラーは、セメント、石灰などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。「骨材」は、アスファルトバインダーと混合してアスファルト舗装材料を形成する、例えば砂、砂利、または砕石のような無機物質に関する総称である。該骨材は、天然骨材、人工骨材、またはこれらの組み合わせを含んでよい。天然骨材は、通常は、機械破砕によって使用可能な寸法に大きさが縮小された、屋外の採掘場(例えば採石場)から採取された岩石である。人工骨材は、通常は、冶金処理(例えば、鋼材、錫、および銅の製造)によるスラグのような他の製造プロセスの副生成物である。人工骨材としては、例えば低密度といった、天然の岩石では見られない特定の物理特性を持つように製造された特別な材料も含まれる。
【0022】
複数の態様では、再生アスファルト層24は、再生アスファルト組成物の総重量に基づいて、約2〜約5重量%、例えば約2〜約4重量%の量で発泡アスファルト組成物を含む再生アスファルト組成物から形成される。再生アスファルト成分は、再生アスファルト組成物の総重量に基づいて、約50〜約98重量%、例えば約70〜約98重量%の量で再生アスファルト組成物中に存在してもよい。任意の追加成分は、再生アスファルト組成物の総重量に基づいて約0〜約50重量%、例えば約0〜約30重量%の量で再生アスファルト組成物中に存在してもよい。
【0023】
HMA層26は、従来のアスファルト混合物を含み、従来技術にしたがって形成される。例えば、従来のHMAは、93〜96%の骨材および4〜7%のアスファルトまたは上述のアスファルト混合物16を含んでもよい。その混合温度は、約140〜約190℃であってもよい。
【0024】
上述のように、本明細書に記載の発泡アスファルト組成物は、再生アスファルト層24の轍掘れ耐性を最大にし、複数の態様において、ITS性能もまた最大にする。例えば、複数の態様において、再生アスファルト層24は、60℃の温度で少なくとも5000サイクル/mmの轍掘れ耐性を持つ。轍掘れ耐性は、5cm幅のホイールを備えたホイールトラッキング装置を使用して、中国の高速道路用瀝青および瀝青混合物の試験方法の規定JTG E20-2011工業規格のT0719-2011に準拠して測定することができる。0.7MPaの圧力が、長さ30cm、幅5cmの再生アスファルト層24の供試体に加えられ、ホイールトラッキング装置のホイールを1分間に42回通過する速度で走行させる。この試験は1時間実施され、所定のサイクルで轍掘れを観察する。轍掘れ耐性は、最後の15分間に1mmの深さの轍が形成されるのに必要な平均サイクル数で測定される。複数の態様では、再生アスファルト層24は、ASTM D6931-12に準拠して測定した場合、少なくとも0.45MPaのITSを持つ。
【0025】
上述のように、轍掘れ耐性が最大になり、任意で再生アスファルト層24のITS性能が最大になるが、アスファルト舗装の所望の轍掘れ耐性および任意で所望のITS性能を達成しながら、より薄いHMA層を用いることができると考えられている。より具体的には、複数の態様において、HMA層26は、4〜8cm未満の厚さ28を持ち、再生アスファルト層24は、約10〜約18cmの厚さ30を持ち、再生アスファルト層24は、上述の試験方法に準拠して測定した場合、少なくとも5000サイクル/mmの轍掘れ耐性を持つ。さらなる態様においては、追加のポリエチレンも存在し、再生アスファルト層24は、ASTM D6931-12に準拠して測定した場合、少なくとも0.45MPaのITSを持つ。
【0026】
複数の態様において、図1および図2を引き続き参照しながら図3を参照すると、図1に示すように、また、発泡アスファルト組成物14の例示的製造方法に関する上記説明のように、アスファルト舗装材22は再舗装装置36を用いて、アスファルト基剤成分および高密度酸化ポリエチレンを混合してアスファルト混合物16を形成し、次いで水18および圧縮空気20を用いてアスファルト混合物16を発泡させて発泡アスファルト組成物14を形成することにより作製される。図3を参照すると、前記発泡アスファルト組成物14および再生アスファルト成分32を混合し、再生アスファルト組成物34を形成する。再生アスファルト層24は、再生アスファルト組成物34によって形成される。複数の態様では、アスファルト混合物16を形成する混合工程、発泡工程、再生アスファルト組成物34を形成する混合工程、および再生アスファルト層24を形成する工程は、約10〜約50℃の周囲温度で行われるが、当然のことだが、個々の成分および組成物の内部温度は、50℃を大幅に超えるかも知れない。複数の態様において、図3には図示されていないが、HMA層26は、従来技術によって再生アスファルト層24上に形成される。
【0027】
実施例A
発泡アスファルト組成物(FAC)は、アスファルト基剤成分を約160℃まで加熱することによって作製され(表AIの比較用発泡アスファルト組成物作製のため)、続いてOxHDPEを添加し、アスファルト混合物を形成する(表AIの発泡アスファルト組成物作製のため)。アスファルト基剤成分およびアスファルト混合物のそれぞれを、発泡アスファルト装置に加え、続いて、水および圧縮空気を用いて発泡し、FACを形成した。表AIは、FACの総重量に基づき、FACに含まれる成分全ての量を重量%で表したリストである。
【0028】
【表1】
【0029】
表AIに示した各FACの成分(水を含む)を含むアスファルト混合物(AM)の粘度を表AIIに記載するが、ASTM D4402に準拠して60℃および160℃で測定したものである。
【0030】
【表2】
【0031】
表AIに示した発泡アスファルト組成物を用いて再生アスファルト組成物を作製し、再生アスファルト層を再生アスファルト組成物から形成した。該再生アスファルト組成物を作製するため、アスファルト混合物(AM)を発泡アスファルト装置に投入した。発泡アスファルト組成物が形成され、得られた再生アスファルト組成物の総重量に基づき、重量%で全ての量を表した以下の表AIIIに記載の追加成分と混合した。
【0032】
【表3】
【0033】
前記再生アスファルト組成物から形成した再生アスファルト層の物理的性質は、表AIVに示すように試験した。轍掘れ耐性は、5cm幅のホイールを備えたホイールトラッキング装置を使用して、従来の試験にしたがって測定することができる。0.7Mpaの圧力が、長さ30cm、幅5cmの再生アスファルト層24の供試体に加えられる。ホイールトラッキング装置のホイールを1分間に42回通過する速度で走行させる。この試験を1時間実施し、所定のサイクル間隔で轍掘れを観察する。轍掘れ耐性は、1mmの深さの轍が形成されるのに必要な平均サイクル数で測定した。ITSは、ASTM D6931-12に準拠して測定した。ITS比(ITSR)は、ASTM D6931-12に準拠して測定したITSによって湿潤ITSの乾燥ITSに対する比で測定した。湿潤ITSは、24時間25℃の水浴で供試体を浸漬することによって測定した。
【0034】
【表4】
【0035】
実施例B
この実施例では、実施例Aで記載したのと同じ方法でFACを作製したが、OxHDPEの代わりに、OxHDPEといくつかの追加の重合体の組み合わせも使用した。表BIでは、FACの総重量に基づき、FACに含まれる成分全ての量を重量%で表したリストが与えられている。
【0036】
【表5】
【0037】
表AIに示した各FACの成分(水を含む)を含むアスファルト混合物(AM)の粘度を表BIIに記載したが、ASTM D4402に準拠して60℃および160℃で測定したものである。
【0038】
【表6】
【0039】
表BIに示した発泡アスファルト組成物を使用して再生アスファルト組成物を作製し、実施例Aで記載したのと同じ方法で、再生アスファルト層を再生アスファルト組成物から形成した。再生アスファルト組成物を形成するため、発泡アスファルト組成物を形成し、得られた再生アスファルト組成物の総重量に基づき、重量%で全ての量を表した以下の表BIIIに記載の追加成分と混合した。
【0040】
【表7】
【0041】
再生アスファルト組成物から形成した再生アスファルト層の物理的性質を表BIVに示すように試験した。轍掘れ耐性、ITSおよびITSRは、実施例Aに記載のように測定した。
【0042】
【表8】
【0043】
少なくとも1つの例示的な態様が前述の詳細な説明で提示されているが、当然のことながら膨大な数の変形例が存在する。これも当然のことだが、代表的な態様または代表的な複数の態様は単なる例に過ぎず、いかなるようにも発明の範囲、適用性、または構成を限定することは意図しない。むしろ、前述の詳細な説明は、発明の代表的な態様を実施するための簡便な指針を当業者に与えるものである。なお、特許請求の範囲に示す発明の範囲から逸脱することなく、代表的な態様に記載されている機能および要素の配置に種々の変更を行うことができる。
図1
図2
図3