(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
弁閉状態において前記弁体を着座させる着座部および、前記弁体が挿入される弁ポートを有する弁座を有し、
前記弁ポートは、前記電動弁の中心軸と平行な内周面を有し、
前記弁体は、
弁閉状態において前記着座部と当接する第1テーパと、
前記第1テーパよりも先方に位置し、弁閉状態において前記内周面に囲繞されるように位置する第2テーパと、
前記第2テーパよりも先方に位置する第3テーパとを備え、
前記着座部に前記第1テーパを当接させた状態において、前記弁ポートと前記第2テーパとの間に形成されるクリアランスの幅よりも広い幅の空間が前記着座部と前記クリアランスとの間に形成され、
前記弁ポートの前記ロータ側には、弁体側から後退した後退領域が形成され、
前記後退領域は、前記ロータ側に向かって広がる面取りであって、
前記着座部は、前記面取りと前記弁座の天面との境界である前記面取りにおける前記ロータ側の縁部であり、
前記弁体の第1テーパが、前記弁閉状態において、前記縁部に当接し、
前記弁体の中心軸に対する第1テーパのテーパ面のテーパ角は、前記電動弁の中心軸に対する前記面取りの表面の傾斜角よりも大きいことで、前記面取りと、前記縁部に当接した前記第1テーパと、の間に前記空間が形成され、
前記弁体の中心軸に対する第2テーパのテーパ面のテーパ角は、前記弁体の中心軸に対する前記第1テーパのテーパ面のテーパ角よりも小さく、
前記弁体の中心軸に対する前記第3テーパのテーパ面のテーパ角は、前記弁体の中心軸に対する前記第1テーパのテーパ面のテーパ角よりも小さく、
前記弁ポートの内周面と前記第2テーパとの間隙が、前記弁ポートの内周面と前記弁体との間隙において最小となることを特徴とする電動弁。
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
弁閉状態において前記弁体を着座させる着座部および、前記弁体が挿入される弁ポートを有する弁座を有し、
前記弁体は、
弁閉状態において前記着座部と当接する第1テーパと、
前記第1テーパよりも先方に位置し、弁閉状態において前記弁ポートの内周面に囲繞されるように位置する第2テーパとを備え、
前記着座部に前記第1テーパを当接させた状態において、前記弁ポートと前記第2テーパとの間に形成されるクリアランスの幅よりも広い幅の空間が前記着座部と前記クリアランスとの間に形成され、
前記第1テーパと前記第2テーパとの間にくびれが形成され、
前記着座部に前記第1テーパを当接させた状態において、前記くびれと前記弁ポートとの間に前記空間が形成され、
前記弁体の中心軸に対する第2テーパのテーパ面のテーパ角は、前記弁体の中心軸に対する前記第1テーパのテーパ面のテーパ角よりも小さく、
前記弁ポートの内周面と前記第2テーパとの間隙が、前記弁ポートの内周面と前記弁体との間隙において最小となることを特徴とする電動弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在、空調機や冷凍機などの技術分野においては、省エネ性能の向上が盛んに検討されており、このような冷凍サイクルシステムに使用する電動弁についても同様の省エネ性が要求されているという背景が存在する。ここで、電動弁に要求される性能としては、弁体が弁座から離れた直後における低開度域における微小な流量の制御性の向上や、流量のばらつきの低減化が挙げられる。
【0005】
特に、ルームエアコンや小型の業務用空調機等に使用される電動弁においては、低開度域における微小な流量の制御を行うためには最小開度における流量を極限まで低減することが望まれている。
【0006】
この点、上述の電動弁100では、
図8(a)に示すように、弁体114において、弁座120に着座する比較的角度の大きい第1テーパ114aと、第3テーパ114cとの間に、テーパ角(テーパの傾斜面の中心軸L´に対する角度)が極めて小さな第2テーパ114bを形成することにより、低開度域の流量制御を向上させる試みがなされている。
【0007】
図8(b)は、電動弁100の低開度域における流量特性を示すグラフである。
図8(b)において、グラフの横軸は、弁体114を移動させるためにステッピングモータに印加するパルスの印加量を表し、グラフの縦軸は、流量を表している。また、グラフの原点は、0パルス時の弁閉状態を表している。ここで、図中の折線Aは、弁体114を用いた場合の流量の変化を表すものである。なお、図中には、折線Aとの対比例として、
図9のように、第2テーパ114bが形成されていない弁体114´を用いた場合の流量の変化を表す折線Bを示してある。
【0008】
図8(b)によれば、折線Bにおいては、第1テーパ114´aによって決定される立上り流量領域201から第3テーパ114´cによって決定される流量領域203へと急激に変化するのに対し、折線Aにおいては、立ち上がり流量領域201の後、しばらくの間、角度の小さな第2テーパ114bによって流量領域202の流量の増加度合が制御されるため、低開度域において流量特性が急激に変化することを抑制することができる。
【0009】
しかし、本来低開度域における微小な流量の制御性を向上させるには、弁体114が弁座120から離れた直後の立上り流量領域201における最大流量Xの値を抑制しなければならない。この点、電動弁100では、第2テーパ114bを設けたとしても、この問題を解決することはできていなかった。
【0010】
ここで、
図10(a)に示すように、弁体214における流量制御を行うテーパ214cを弁座220に着座させることも考えられる。この場合、
図10(b)に示すように、立上り流量領域210の流量を極めて小さくすることができるが、弁体214が弁座220に食い込んで弁開し難くなり、弁体214の作動性が阻害されるという問題が生じるおそれがある。
【0011】
また、
図11(a)に示すように、第1テーパ314aと第2テーパ314bの境界の径D1を弁座320の内径D2に近づけることにより、立上り流量を低減させることも考えられる。しかしながら、
図11(b)に示す拡大図のように、第1テーパ314aと第2テーパ314bの境界を着座させた場合、弁体314の加工上のばらつきによって、流量制御を行う第2テーパ314bで着座してしまい、前述したように弁体314の弁座320に対する食い込みが生じてしまうおそれもある。
【0012】
また、このような境界には、実際には加工時に隅R315が形成されているため、弁体314を弁座320に着座させた場合、隅R315の部分が弁座320と当接することもある。隅R315の大きさや形状等には、弁体314の加工上のばらつきが生じやすいため、着座時に隅R315が弁座320と当接した場合、電動弁ごとに立上りの流量特性が異なってしまうという問題が発生しうる。
【0013】
本発明の目的は、低開度域における微小な流量の制御を的確に行うことができる電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電動弁は、
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
弁閉状態において前記弁体を着座させる着座部および、前記弁体が挿入される弁ポートを有する弁座を有し、
前記弁ポートは、前記電動弁の中心軸と平行な内周面を有し、
前記弁体は、
弁閉状態において前記着座部と当接する第1テーパと、
前記第1テーパよりも先方に位置し、弁閉状態において前記内周面に囲繞されるように位置する第2テーパと
、
前記第2テーパよりも先方に位置する第3テーパとを備え、
前記着座部に前記第1テーパを当接させた状態において、前記弁ポートと前記第2テーパとの間に形成されるクリアランスの幅よりも広い幅の空間が前記着座部と前記クリアランスとの間に形成され、
前記弁ポートの前記ロータ側には、弁体側から後退した後退領域が形成され、
前記後退領域は、前記ロータ側に向かって広がる面取りであって、
前記着座部は、前記面取りと前記弁座の天面との境界である前記面取りにおける前記ロータ側の縁部であり、
前記弁体の第1テーパが、前記弁閉状態において、前記縁部に当接し、
前記弁体の中心軸に対する第1テーパのテーパ面のテーパ角は、前記電動弁の中心軸に対する前記面取りの表面の傾斜角よりも大きいことで、前記面取りと、前記縁部に当接した前記第1テーパと、の間に前記空間が形成され、
前記弁体の中心軸に対する第2テーパのテーパ面のテーパ角は、前記弁体の中心軸に対する前記第1テーパのテーパ面のテーパ角よりも小さく、
前記弁体の中心軸に対する第3テーパのテーパ面のテーパ角は、前記弁体の中心軸に対する前記第1テーパのテーパ面のテーパ角よりも小さく、
前記弁ポートの内周面と前記第2テーパとの間隙が、前記弁ポートの内周面と前記弁体との間隙において最小となることを特徴とする。
【0015】
これにより、極力第1テーパの機能を着座する機能のみに限定し、主に第2テーパで流量を制御することができ、低開度域における微小な流量の制御を的確に行うことができる。
また、第1テーパと第2テーパの間の境界が弁ポートに着座することを回避することができるため、弁体ごとの加工上のばらつきに影響されて、立上り時における流量特性が電動弁ごとに異ならないようにすることができる。
また、第1テーパと第2テーパの間の境界が弁ポートに着座することを的確に回避することができる。
【0018】
また、本発明の電動弁は、
前記第2テーパの高さが、前記後退領域の高さよりも高くなるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
これにより、第2テーパの高さ分の幅広い領域で流量制御を行うことができる。
【0024】
また、本発明の電動弁は、
前記後退領域が、前記弁ポートの前記ロータ側に形成された切欠きであることを特徴とする。
【0025】
これにより、弁体ごとの加工上のばらつきに影響されて、立上り時における流量特性が電動弁ごとに異ならないようにすることができる。
【0026】
また、本発明の電動弁は、
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
弁閉状態において前記弁体を着座させる着座部および、前記弁体が挿入される弁ポートを有する弁座を有し、
前記弁体は、
弁閉状態において前記着座部と当接する第1テーパと、
前記第1テーパよりも先方に位置し、弁閉状態において前記弁ポートの内周面に囲繞されるように位置する第2テーパとを備え、
前記着座部に前記第1テーパを当接させた状態において、前記弁ポートと前記第2テーパとの間に形成されるクリアランスの幅よりも広い幅の空間が前記着座部と前記クリアランスとの間に形成され、
前記第1テーパと前記第2テーパとの間にくびれが形成され、
前記着座部に前記第1テーパを当接させた状態において、前記くびれと前記弁ポートとの間に前記空間が形成され、
前記弁体の中心軸に対する第2テーパのテーパ面のテーパ角は、前記弁体の中心軸に対する前記第1テーパのテーパ面のテーパ角よりも小さく、
前記弁ポートの内周面と前記第2テーパとの間隙が、前記弁ポートの内周面と前記弁体との間隙において最小となることを特徴とする。
【0027】
これにより、第1テーパと第2テーパの間の境界が弁ポートに着座することを回避し、弁体ごとの加工上のばらつきに影響されて、立上り時における流量特性が電動弁ごとに異ならないようにすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る発明によれば、低開度域における微小な流量の制御を的確に行うことができる電動弁を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動弁について説明する。
図1は、実施の形態に係る電動弁2を示した断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは
図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。また、本明細書における、「高さ」も
図1の状態で規定したものである。すなわち、「高さ」とは、
図1において上下方向の長さを示している。
【0031】
この電動弁2では、非磁性体製で筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
【0032】
ここで、弁本体30は、ステンレス製等の金属から成り、内部に弁室11を有している。また、弁本体30には、弁室11に直接連通するステンレス製や銅製等の第1の管継手12が固定装着されている。さらに、弁本体30の下方内側には、断面円形の弁ポート16が形成された弁座部材30Aが設けられている。弁座部材30Aには、弁ポート16を介して弁室11に連通するステンレス製や銅製等の第2の管継手15が固定装着されている。
【0033】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、図示しないブッシュ部材を介して弁軸41が配置されている。ブッシュ部材で結合されたこの弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。
【0034】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
【0035】
ケース60の天井面にはガイド支持体52が固定されている。ガイド支持体52は、円筒部53と、円筒部53の上端側に形成された傘状部54とを有し、本実施の形態では全体をプレス加工により一体成型されている。傘状部54はケース60の頂部内側と略同形状に成型されている。
【0036】
ガイド支持体52の円筒部53内には、弁軸41のガイドを兼ねる筒部材65が嵌合されている。筒部材65は、金属あるいは合成樹脂による潤滑材入り素材あるいは表面処理を施された部材により構成され、弁軸41を回転可能に保持している。
【0037】
弁軸41の下方には、後述するように弁軸41との間でネジ螺合Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0038】
弁軸ホルダ6は、弁本体30に対して溶接などで固定されており、弁軸ホルダ6の内部には、貫通孔6hが形成されている。また、この弁軸ホルダ6の上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。このため、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能している。なお、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の内周に形成された雌ネジ6dとにより、
図1に示すネジ螺合Aが構成されている。
【0039】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の貫通孔6hに対して摺動可能に配置されている。この弁ガイド18は天井部21側がプレス成型により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0040】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0041】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性が得られる。
【0042】
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間には、中央部には貫通孔が形成された図示しないワッシャが設置されている。ワッシャは、高滑性表面の金属製ワッシャ、フッ素樹脂等の高滑性樹脂ワッシャあるいは高滑性樹脂コーティングの金属製ワッシャなどであることが好ましい。
【0043】
さらに、弁ガイド18内には、圧縮された弁バネ27とバネ受け35とが収容されている。
【0044】
弁体17は、ステンレスや真鍮等により形成され、円柱棒状のニードル部17n、第1テーパ17a、第2テーパ17b、および第3テーパ17cを有している。なお、弁体17の中心軸は電動弁2の中心軸Lと重なるように配置されている。
【0045】
図2は、電動弁2の流量特性に影響する要部の拡大断面図である。
図2に示すように、弁座部材30Aには、弁座天面30A1、後退領域99、弁ポート16、傾斜面30A2、縁部19a、上縁部16a、下縁部16bが形成されている。
【0046】
弁座天面30A1は、弁座部材30Aの上側(ロータ4側)において、直接弁室11に接する平坦な面である。また、後退領域99は、弁座天面30A1と弁ポート16の間に位置し弁体17側から後退した部分である。本実施形態においては、後退領域99に、上方に向かって広がる傾斜面である面取り19が形成されている。
【0047】
弁ポート16は、後述するように、流量決定に直接影響する部分である。この弁ポート16の内周面は、電動弁2の中心軸Lと平行になるように配置されている。
【0048】
傾斜面30A2は、弁ポート16の下方に位置し、弁座部材30Aの内径が下方に向かって大きくなるように形成されている。
【0049】
縁部19aは、面取り19の上縁を成す部分であり、弁座天面30A1と面取り19の境界を構成している。なお、弁閉状態において、第1テーパ17aは、この縁部19aを着座部として弁座部材30Aに着座する。
【0050】
上縁部16aは、弁ポート16の上側の縁部であると共に面取り19の下側の縁部を兼ね、面取り19と弁ポート16の境界を構成している。また、下縁部16bは、弁ポート16の下縁を成す部分であり、弁ポート16と傾斜面30A2の境界を構成している。すなわち、上縁部16aと下縁部16bの間に弁ポート16が形成されている。
【0051】
また、弁体17における第1テーパ17aのテーパ角θ2(テーパ面の弁体17の中心軸に対する角度)は、面取り19の傾斜角θ1(電動弁2の中心軸Lに対する面取り19の表面の傾斜角)よりも大きな角度になるように形成されている(θ1<θ2)。このため、第1テーパ17aと面取り19の間には、第1テーパ17aを縁部19aに当接させた状態において、後述するクリアランス66の幅よりも広い幅の空間87が構成される。
【0052】
これにより、第1テーパ17aと第2テーパ17bとの間の境界に形成された隅R59の部分が弁座部材30Aに着座することを回避することができ、弁体17ごとの加工上のばらつきに影響されて、立上り時における流量特性が電動弁2ごとに異ならないようにすることができる。ここで、隅R59は、大きさや形状等に特に加工上のばらつきが生じやすい部分である。また、第2テーパ17bが弁座部材30Aに着座して弁体17が弁ポート16に食い込むことを防止することもできる。
【0053】
なお、傾斜角θ1は10°以上75°以下の角度であることが好ましく、テーパ角θ2は12.5°以上77.5°以下の角度であることが好ましい。
【0054】
なお、隅R59は、弁閉状態で軸方向において面取り19が形成される範囲内に位置している。具体的には、
図2における面取り19の高さH1の範囲に収まる位置に形成されている。
【0055】
また、第2テーパ17bのテーパ角は、第1テーパ17aのテーパ角よりもはるかに小さな角度であり、第2テーパ17bの外径は下方に向かって若干小さくなるように形成されている。この第2テーパ17bのテーパ角は、電動弁2の中心軸Lに対して1.5°以上10°以下の角度であることが好ましい。
【0056】
ここで、第2テーパ17bの下方にはさらに第3テーパ17cが形成されていることは上述したとおりである。本実施の形態に係る電動弁2においては、弁座部材30Aに着座する第1テーパ17aよりも下方に形成された第2テーパ17bと第3テーパ17cにおいて主たる流量制御が行われる。
【0057】
また、第2テーパ17bの高さH2は、面取り19の高さH1よりも高くなるように形成されている(H1<H2)。このため、本実施の形態に係る電動弁2においては、第2テーパ17bの高さH2分の幅広い領域で流量制御を行うことができる。
【0058】
また、第3テーパ17cのテーパ角は、第1テーパ17aのテーパ角θ2よりもはるかに小さな角度であるが、第2テーパ17bのテーパ角よりは大きくなっている。ここで、第3テーパ17cの外径は下方に向かって小さくなるように先細り状に形成されている。
【0059】
ここで、
図3は、パルスの印加量に対する流量の変化の関係を表すグラフである。
図3において、グラフの横軸は、弁体17を移動させるためにステッピングモータに印加するパルスの印加量を表し、グラフの縦軸は、流量を表している。また、グラフの原点は、0パルス時の弁閉状態を表している。また、図中の折線Cは、弁体17を用いた場合の流量の変化を表すものである。なお、図中には、折線Cとの対比例として、
図9のように、第2テーパ17bが形成されていない弁体114´を用いた場合の流量の変化を表す折線Bを示してある。
【0060】
図3に示すように、電動弁2のステッピングモータに対してパルスが印加されると、まず、電動弁2へのパルスの印加量が弁開点に達して弁体17が上昇し始め、第1テーパ17aが着座部である面取り19の上側の縁部19aから離間する。ここで、流量は、弁ポート16と弁体17の間に生じた間隙の最小幅によって決定される。このため、第1テーパ17aが縁部19aから離間した直後の立ち上がり時の流量は、当初最小幅となる第1テーパ17aと縁部19aの間の間隙によって決定される。この流量領域61の流量は一時的にではあるが急激に上昇する。
【0061】
さらに弁体17が上昇すると、第1テーパ17aと縁部19aの間の間隙よりも第2テーパ17bと弁ポート16の間のクリアランス66の方が狭くなり、クリアランス66が弁体17と弁ポート16の間に生じる間隙の最小幅となる。このため、第2テーパ17bが弁ポート16を通過するまでの間における低開度域の流量領域62は、クリアランス66の幅によって決定される。ここで、流量領域62の流量は、テーパ角が極めて小さな第2テーパ17bによって調整されるため、上昇度合いが抑制され、第2テーパ17bが上昇しクリアランス66が広がるにつれてなだらかに上昇する。
【0062】
なお、第2テーパ17bの高さH2は、面取り19の高さH1よりも高くなるように形成されていることから(H1<H2)、立上り時における流量領域61の急激な上昇を確実に抑制することができる。また、クリアランス66の幅は、1μm以上30μm以下の幅であることが好ましい。
【0063】
この実施の形態に係る電動弁2によれば、極力第1テーパ17aの機能を着座する機能のみに限定し、主に第2テーパ17bで流量を制御することにより、低開度域における微小な流量の制御を的確に行うことができる。また、第1テーパ17aのテーパ角θ2が面取り19の傾斜角θ1よりも大きな角度になるように形成することにより(θ1<θ2)、第1テーパ17aと第2テーパ17bの境界が弁ポート16に着座することを回避することができるため、弁体17ごとの加工上のばらつきに影響されて、立上り時における流量特性が電動弁2ごとに異ならないようにすることができる。
【0064】
なお、本実施の形態においては、弁ポート16の内周面が電動弁2の中心軸Lと平行である場合を例に説明しているが、弁ポート16は、内径が下方に向かって大きくなる(広がる)ように形成されていてもよい。この場合、弁体17が上昇または下降するに当たり、常に弁ポート16の上縁部16aが第2テーパ17bまたは第3テーパ17cに近接することとなるため、
図3に示す流量領域62の流量制御は上縁部16aによって行われる。弁体17が上昇する場合には、弁ポート16の上縁部16aと第2テーパ17bまたは第3テーパ17cとの間のクリアランス66が次第に大きくなり流量が増加する。
【0065】
また、上述の実施の形態においては、後退領域99として、弁ポート16の上側に面取り19が形成されている場合を例に挙げているが、後退領域99は、切欠きであってもよい。たとえば、
図4に示すように、弁ポート16の上側に断面L字型の切欠き79が形成されていてもよい。ここで、切欠き79には、縁部79a、壁部79c、床部79d、上縁部16aが形成されている。この切欠き79により、弁座部材30Aの上側が環状に切り欠かれている。
【0066】
縁部79aは、壁部79cの上縁を成す部分であり、弁座天面30A1と切欠き79の境界を構成している。弁閉状態において、第1テーパ17aは、切欠き79の縁部79aを着座部として着座する。なお、第1テーパ17aと面取り19の間には、第1テーパ17aを縁部79aに当接させた状態において、第1テーパ17aと切欠き79の間にクリアランス66の幅よりも広い幅の空間87が構成される。
【0067】
壁部79cは、切欠き79の外周を画成する側壁であり、電動弁2の中心軸Lと平行になるように配置されている。また、床部79dは、切欠き79の底面を画成する部分であり、電動弁2の中心軸Lと直交している。なお、壁部79cは、厳密に中心軸Lと平行である必要はなく、若干傾斜していてもよい。同様に、床部79dもまた、厳密に中心軸Lと直交している必要はなく若干傾斜していてもよい。
【0068】
上縁部16aは、弁ポート16の上縁を成す部分であると共に床部79dの弁体17側の縁部を成す部分であり、切欠き79と弁ポート16の境界を構成している。
【0069】
これによっても、第1テーパ17aと第2テーパ17bの境界の部分が弁ポート16に着座することを回避し、立上り時における流量特性が電動弁2ごとにばらつかないようにすることができる。また、第2テーパ17bによって、低開度域における微小な流量の制御を的確に行うことができる。また、第2テーパ17bの高さH2が、切欠き79の高さH3よりも高くなるように形成することにより(H3<H2)、第2テーパ17bの高さH2分の幅広い領域で流量制御を行うことができる。
【0070】
また、上述の実施の形態において、
図5に示すように、第1テーパ17aと第2テーパ17bの間にくびれ89を設けるようにしてもよい。この場合、第1テーパ17aと第2テーパ17bとの間の境界の部分が弁体17の表面から凹むため、第1テーパ17aが弁座部材30Aに着座した場合において、第1テーパ17aと弁ポート16の間にクリアランス66の幅よりも広い幅の空間87が構成される。これによっても、第1テーパ17aと第2テーパ17bの境界の部分が弁ポート16に着座することを回避し、立上り時における流量特性が電動弁2ごとにばらつかないようにすることができる。また、第2テーパ17bによって、低開度域における微小な流量の制御を的確に行うことができる。
【0071】
また、上述の実施の形態においては、第2テーパ17bが中心軸Lとほぼ平行となる極めて小さなテーパ角を有している場合を例に説明したが、
図6に示すように、第2テーパ17bが所定のテーパ角αを有していてもよい。この場合においても、弁体17が上昇または下降するに当たり、常に弁ポート16の上縁部16aが第2テーパ17bまたは第3テーパ17cに近接することとなるため、主たる流量制御は上縁部16aによって行われる。そして、弁体17が上昇する場合には、弁ポート16の上縁部16aと第2テーパ17bまたは第3テーパ17cとの間のクリアランス66が次第に大きくなり流量が増加する。
【0072】
なお、
図6に示すテーパ角αは、1°以上30°以下の間の角度であることが好ましい。
【0073】
また、上述の実施の形態においては、弁体17が第3テーパ17cを備える場合を例に説明したが、弁体17は必ずしも第3テーパ17cを備えていなくてもよい。また、上述の実施の形態において、弁体17が第1テーパ17a、第2テーパ17b、第3テーパ17cの他に更なるテーパを備えていてもよい。
【0074】
また、本実施の形態の電動弁2は、たとえば、冷凍サイクルシステムの凝縮器と蒸発器との間に設けられる電子膨張弁として用いられる。