(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多官能性ホスフィン連結が、前記ポリマー組成物の他の画分より高い分子量を有するポリマー画分に存在し、より高い分子量の画分が、ポリマー組成物の総重量に対して50重量%以下までの量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は未硬化ポリマー組成物及び未硬化ポリマー組成物を生成する方法を対象とする。特定の実施形態では、未硬化ポリマー組成物は、高分子量ポリマー画分を有する、多峰性分子量分布を有するハロ含有ポリマーを含む。高分子量ポリマー画分は、ポリマー構造内に分枝多官能性ホスフィン連結を含む。
【0016】
特定の実施形態では、未硬化のポリマー組成物は、多官能性ホスフィン化合物をハロ含有ポリマーと反応させて、分枝したポリマー画分を有する未硬化ポリマー組成物を得ることから形成される。
【0017】
本開示の態様によれば、ハロ含有ポリマーには、少なくとも1つのイソオレフィンモノマーと、1つ若しくは複数のマルチオレフィンモノマー又は1つ若しくは複数のスチレンモノマー又は両方とを有する、コポリマーを含むポリマーが含まれてもよい。
【0018】
適切なイソオレフィンモノマーには、4から16個の炭素原子を有する炭化水素モノマーが含まれる。1つの実施形態では、イソオレフィンは4から7個の炭素原子を有する。適切なイソオレフィンの例には、イソブテン(イソブチレン)、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及びそれらの混合物が含まれる。好ましいイソオレフィンモノマーはイソブテン(イソブチレン)である。
【0019】
マルチオレフィンモノマーには、例えば共役ジエン等のジエンが含まれてもよい。マルチオレフィンモノマーの個々の例には、4から14個の範囲内の炭素原子を有するマルチオレフィンモノマーが含まれる。適切なマルチオレフィンモノマーの例には、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン(piperyline)、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-シクロヘキサジエン及びそれらの混合物が含まれる。特に好ましい共役ジエンはイソプレンである。
【0020】
スチレンモノマーには、例えばC
1〜C
4アルキル置換スチレン等のアルキル置換ビニル芳香族モノマーが含まれるが、これらに限定されない。スチレンモノマーの特定の例には、例えば、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン及びメチルシクロペンタジエンが含まれる。
【0021】
特定の実施形態では、ハロ含有ポリマーにはイオノマーが含まれる。特定の実施形態では、イオノマーの形成に使用されるハロ含有ポリマーは少なくとも1つのアリルハロ部、若しくは少なくとも1つのハロアルキル部又は両方を含む。適切なハロ含有ポリマーには、少なくとも1つのイソオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位、及び1つ又は複数のマルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位を有するハロ含有ポリマーが含まれる。このような実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する1つ又は複数の繰り返し単位はアリルハロ部を含む。特定の実施形態では、ハロ含有ポリマーは、初めに1つ又は複数のイソオレフィン及び1つ又は複数のマルチオレフィンを含むモノマー混合物からポリマーを調製し、次いで得られたポリマーをハロゲン化プロセスにかけてハロ含有ポリマーを形成することにより得られる。特定の実施形態では、ハロ含有ポリマーには、臭素化ブチルゴムポリマー及び塩素化ブチルゴムポリマー等の、ハロゲン化ブチルゴムポリマーが含まれてもよい。
【0022】
調製されたポリマーのハロゲン化は、例えばRubber Technology、第3版、Maurice Morton編、Kluwer Academic Publishers社、297〜300頁及びその中に引用されたさらなる文献に記載された手順等の、当業者に公知のプロセスに従って実行してもよい。
【0023】
ハロゲン化の間、コポリマーのマルチオレフィン含有量の一部又は全てがハロゲン化アリルを含む単位に変わる。ハロ含有ポリマーの全ハロゲン化アリル含有量は親ポリマーの出発マルチオレフィン含有量を超えることはできないと理解される。
【0024】
特定の実施形態では、ブチルゴムコポリマーが親ポリマーとして使用される。このような実施形態では、マルチオレフィンブチルゴムの調製に使用されるモノマー混合物は、約80重量%から約99.5重量%の少なくとも1つのイソオレフィンモノマー及び約0.5重量%から約20重量%の少なくとも1つのマルチオレフィンモノマーを含む。特定の実施形態では、モノマー混合物は約83重量%から約98重量%の少なくとも1つのイソオレフィンモノマー及び約2.0重量%から約17重量%のマルチオレフィンモノマーを含む。
【0025】
特定の実施形態では、ブチルポリマー中のマルチオレフィンは、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位を少なくとも0.5mol%含む。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも0.75mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも1.0mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも1.5mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも2.0mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも2.5mol%である。
【0026】
特定の実施形態では、ブチルポリマー中のマルチオレフィンは、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位を少なくとも3.0%mol含む。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも4.0mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも5.0mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも6.0mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は少なくとも7.0mol%である。
【0027】
特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は約0.5mol%から約20mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は約0.5mol%から約8mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は約0.5mol%から約4mol%である。特定の実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位は約0.5mol%から約2.5mol%である。
【0028】
特定の実施形態では、適切なハロブチルポリマーには、イソブチレン及び2.2mol%未満のイソプレンから形成される臭素化ブチルゴムが含まれ、これは、LANXESS Deutschland GmbH社から商業的に入手可能であり、Bromobutyl 2030(商標)、Bromobutyl 2040(商標)、Bromobutyl X2(商標)、及びBromobutyl 2230(商標)という名称で販売されている。特定の実施形態では、適切なハロブチルポリマーには、同様にLANXESS Deutschland GmbH社から入手可能である臭素化RB402が含まれる。
【0029】
特定の実施形態では、本発明で使用するためのハロ含有ポリマーには、カナダ特許出願第2,578,583号及び第2,418,884号にそれぞれ記載されているような、イソブチレン及び少なくとも3mol%のイソプレン又は少なくとも4mol%のイソプレンから形成される高イソプレン臭素化ブチルゴムが含まれる。特定の実施形態では、ハロ含有ポリマーは少なくとも1つのイソオレフィン及び1つ又は複数のアルキル置換芳香族ビニルモノマーのコポリマーを含んでもよい。このような実施形態では、芳香族ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の1つ又は複数はハロアルキル部を含む。
【0030】
特定の実施形態では、初めに1つ又は複数のイソオレフィン及び1つ又は複数のスチレンモノマーを含むモノマー混合物からコポリマーを調製し、次いで得られたコポリマーをハロゲン化プロセスにかけてハロ含有ポリマーを形成することにより、ハロ含有ポリマーを得ることができる。ハロゲン化中、芳香族ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の一部又は全てのアルキル基がハロゲン化される。
【0031】
特定の実施形態では、本発明のハロ含有ポリマーは、少なくとも1つのイソオレフィン、1つ又は複数のマルチオレフィンモノマー、及び1つ又は複数のスチレンモノマーのコポリマーを含む。このような実施形態では、マルチオレフィンモノマーに由来する1つ若しくは複数の単位はアリルハロ部を含み、及び/又はスチレンモノマーに由来する1つ若しくは複数の単位はハロアルキル部を含む。
【0032】
特定の実施形態では、イソオレフィン、マルチオレフィン及びスチレンモノマーのポリマーの調製に使用されるモノマー混合物は、約80重量%から約99重量%のイソオレフィンモノマー、約0.5重量%から約5重量%のマルチオレフィンモノマー、及び約0.5重量%から約15重量%のスチレンモノマーを含む。特定の実施形態では、モノマー混合物は、約85重量%から約99重量%のイソオレフィンモノマー、約0.5重量%から約5重量%のマルチオレフィンモノマー、及び約0.5重量%から約10重量%のスチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、ハロ含有ポリマーは0.05から2.0mol%の臭素化アリル含有量を有する。特定の実施形態では、臭素化アリル含有量は0.2から1.0mol%であってもよい。特定の実施形態では、臭素化アリル含有量は0.5から0.8mol%であってもよい。特定の実施形態では、高マルチオレフィンハロ含有ポリマーは、2から10mol%の範囲の残存マルチオレフィンレベルも含んでもよい。いくつかの実施形態では、高マルチオレフィンハロ含有ポリマーは、3から8mol%の範囲の残存マルチオレフィンレベルを含んでもよい。他の実施形態では、高マルチオレフィンハロ含有ポリマーは、4から7.5mol%の範囲の残存マルチオレフィンレベルを含んでもよい。
【0033】
本開示で使用するのに適し得るハロゲン含有ポリマーには、例えば臭素化ブチル、塩素化ブチル、臭素化高イソプレンブチルゴム、臭素化イソブチレンパラ-メチルスチレン(BIMSM)、臭素化イソプレンイソブチレンp-メチルスチレンターポリマー及び星型臭素化ブチル(SBB)が含まれる。特定の実施形態では、ハロゲン含有ポリマーは臭素化ブチルである。
【0034】
本開示の態様によると、ハロ含有ポリマーを多官能性ホスフィン化合物と反応させて、ポリマー組成物を生成することができる。ポリマー組成物は、ポリマー構造内に分枝した多官能性連結を有し、多峰性分子量分布を有するポリマー画分を含む。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物は、ビスホスフィン化合物、トリスホスフィン化合物、テトラキスホスフィン化合物又はそれらの任意の混合物のうちの1つ又は複数を含んでもよい。ビスホスフィン化合物が好ましい。
【0035】
適切なビスホスフィン化合物には、以下の構造:
(R
2)
2P-R
1-P(R
3)
2
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、同じであるか又は異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル又はヘテロシクロアルキルである)
の対称又は非対称なビスホスフィン求核試薬が含まれる。特定の実施形態では、ビスホスフィン求核試薬は、以下の構造:
【0037】
(式中、n=1〜20である)
を含む。
【0038】
特定の実施形態では、ビスホスフィン求核試薬は1つ又は複数のビスホスフィン求核試薬を含んでもよい。ビスホスフィン求核試薬のいくつかの例は、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DPPB)、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン及び1,8-ビス(ジフェニルホスフィノ)オクタンである。
【0039】
本開示の1つの態様によると、多官能性ホスフィン化合物は、ハロ含有ポリマー100g当たり多官能性ホスフィン化合物約2〜160mgの量で、ハロ含有ポリマーと反応することが可能である。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物は、ハロ含有ポリマー100g当たり約10〜108mgの範囲の量で使用してもよい。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物は、ハロ含有ポリマー100g当たり約15〜90gの範囲の量で使用してもよい。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物は、ハロ含有ポリマー100g当たり約25〜70mgの範囲の量で使用してもよい。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物は、ハロ含有ポリマー100g当たり約30〜66mgの範囲の量で使用してもよい。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物は、ハロ含有ポリマー100g当たり約15〜66mgの範囲の量で使用してもよい。
【0040】
特定の実施形態では、ポリマー組成物は、臭素含有ポリマーとビスホスフィン化合物の反応生成物を含む。このような実施形態では、ビスホスフィン化合物の量は、臭素含有ポリマーの臭素化アリルに対するモル比で表されうる。特定の実施形態では、臭素含有ポリマーに対するビスホスフィンのモル比は1:25から1:1,350の範囲内である。特定の実施形態では、臭素含有ポリマーに対するビスホスフィンのモル比は1:35から1:650の範囲内である。特定の実施形態では、臭素含有ポリマーに対するビスホスフィンのモル比は1:50から1:450の範囲内である。特定の実施形態では、臭素含有ポリマーに対するビスホスフィンのモル比は1:60から1:350の範囲内である。特定の実施形態では、臭素含有ポリマーに対するビスホスフィンのモル比は1:90から1:150の範囲内である。
【0041】
本開示の態様によると、多官能性ホスフィン化合物はハロ含有ポリマーと混合し、反応させる。混合は本開示の観点から当業者に明らかな任意の方法により成し遂げてもよい。適切な混合装置には、ブラベンダー型測定ミキサー、バンバリーミキサー、二軸押出機等が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物は、ハロ含有ポリマーに組み入れる前に溶媒と混合させることができる。このような実施形態では、多官能性ホスフィン化合物を溶媒と混合したら、次いで、溶媒/多官能性ホスフィン化合物混合物をハロ含有化合物に組み入れる。いくつかの実施形態では、多官能性ホスフィン化合物をハロ含有ポリマーと反応させる前に、加熱条件下で溶媒を取り除くことにより、溶媒を除去することができる。特定の実施形態では、熱を加えて反応を引き起こすとき、溶媒を取り除くことができる。多官能性ホスフィン化合物をハロ含有ポリマーに混合又は分散させたら、反応物を加熱条件下で反応させる。特定の実施形態では、反応物を約140℃から約200℃の範囲の温度に加熱する。特定の実施形態では、反応物を約160℃の温度に加熱する。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物及びハロ含有ポリマーは約1〜90分間反応させる。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物及びハロ含有ポリマーは約10〜90分間反応させる。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物及びハロ含有ポリマーは約15〜60分間反応させる。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン化合物及びハロ含有ポリマーは約1〜10分間反応させる。
【0042】
いくつかの実施形態では、高分子量のポリマー画分はポリマー組成物の総重量に対して約50重量%までの量でポリマー組成物中に存在し得る。特定の実施形態では、高分子量のポリマー画分は約2%から約50%の範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、高分子量のポリマー画分は約5%から約50%の範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、高分子量のポリマー画分は約5%から約40%の範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、高分子量のポリマー画分は約10%から約40%の範囲の量で存在し得る。
【0043】
本開示による反応は、分枝した多官能性ホスフィン化合物連結を有するポリマー画分を形成する。本明細書に開示されるように、この分枝した連結は反応中に使用された多官能性ホスフィン化合物に由来する。特定の実施形態では、多官能性ホスフィン連結は以下の構造:
【0045】
(式中、n=1〜20である)
を含む。
【0046】
多官能性ホスフィン化合物はポリマーと反応し、ポリマー鎖の間に、多官能性ホスフィン化合物に由来する連結を含む分枝又はブリッジを作り出すことによりポリマー鎖を接続する。反応後、多官能性分枝を有するポリマー画分及び未反応のハロ含有ポリマー画分を有する組成物が作り出される。特定の実施形態では、ポリマー画分はイオン性官能基を含む。
【0047】
以下の反応Iは、多官能性ホスフィン化合物とハロ含有ポリマーとの間の反応の例示的な実施形態を図示する。スキームIでは、ビスホスフィンを160℃から180℃の間の温度でハロブチルポリマーと反応させると、イオン性官能基を有するポリマー画分が形成される。
反応I:
【0049】
反応に使用される多官能性ホスフィン化合物の量はハロ含有ポリマーを硬化するのに不十分であるため、反応により未硬化のポリマー組成物が生成する。特定の実施形態では、多官能性成分のレベルは、出発(未修飾)ハロ含有ポリマーの利用可能なハロ部位の約10%未満に相当する。多官能性成分のレベルは、利用可能なハロ部位の約9%未満、又は約8%未満、又は約7%未満、又は約6%未満、又は約5%未満、又は約4%未満、又は約3%未満、又は約2%未満、又は約1.9%未満、又は約1.8%未満、又は約1.7%未満、又は約1.6%未満、又は約1.5%未満、又は約1.4%未満、又は約1.3%未満、又は約1.2%未満、又は約1.1%未満、又は約1%未満、又は約0.9%未満、又は約0.8%未満、又は約0.7%未満、又は約0.6%未満、又は約0.5%未満、又は約0.4%未満、又は約0.3%未満、又は約0.2%未満、又は約0.1%未満に相当し得る。このように、ポリマー組成物の硬化状態はコンパウンディング中に危うくなることはない。
【0050】
特定の実施形態では、結果として生じるポリマー組成物はポリマー組成物の総重量に対して約10%未満のゲル含有量を含む。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約9%以下である。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約5%以下である。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約3%以下である。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約2.5%以下である。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約2%以下である。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約1.5%以下である。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約1%以下である。特定の実施形態では、ポリマー組成物のゲル含有量は約0.5%以下である。
【0051】
ハロ含有ポリマーの熱処理、即ちポリマーを160℃から180℃の条件で熱にかけることのみで、ハロ含有ポリマーの微細構造に影響し得る。例えば、臭素化ブチルゴムでは、熱処理により臭素化ブチルゴムの臭素化イソプレン部分の臭素の転位が増加し、エキソ構造が減少する。更に、いくつかの場合では、残存するESBOの量は約0%まで減少し得る。通常、より弱い熱処理ではより少量の転位した臭素が生じる。しかしながら、熱処理のみと比較したとき、加熱に加えて、多官能性ホスフィン化合物と反応させると、転位生成物が増加することがわかり、多官能性ホスフィン化合物のハロ含有化合物との反応は開示された温度範囲で臭素の転位を高めることが示される。
【0052】
本開示に従って作製される結果として生じるポリマー組成物が多峰性分子量分布を有することがわかった。特定の実施形態では、多峰性分子量分布は二峰性(bimodal)分子量分布である。ポリマー組成物は、大きなゲル含有量を有しない一方、大量のより高分子量の画分を有する多峰性分子量分布、特に二峰性分子量分布を有していてもよいことに注目すべきである。
【0053】
この多峰性分子量分布がムーニー粘度及びムーニー緩和(T80)の値に影響を有することがわかった。ムーニー粘度に関しては、ポリマー組成物は約1から30MU(デルタMU)の開始ハロ含有ポリマーに比例して、ムーニー粘度は変化、特に増加し得る。いくつかの実施形態では、デルタMUは約5から約30であり得る。いくつかの実施形態では、デルタMUは約10から約30であり得る。デルタムーニーはポリマー組成物を形成するための反応に利用される多官能性ホスフィン化合物の量に関係する。デルタムーニーは非線形関係により多官能性ホスフィン化合物の量に関係する。
【0054】
結果として生じるポリマー組成物は、出発ハロ含有ポリマーと比し、ムーニー緩和時間(T80)の増加を有することがわかる。特定の実施形態では、5秒未満のムーニー緩和時間(T80)を有するポリマー組成物はT80=[0.4±0.1]×MUに相当することが示された。これは、ムーニー緩和時間のわずかな増加が実現するように、ポリマー組成物のムーニー粘度のわずかな増加に対し示す。ポリマー組成物が5秒を超えるムーニー緩和時間(T80)を有する実施形態では、ムーニー緩和はT80=[1.4±0.1]×MUに相当することを示した。これはムーニー緩和時間の5秒の増加を超えて、ムーニー緩和時間はムーニー粘度の増加のあらゆる単位に対し実質的に増加することを示す。このように、より高い百分率量のポリマー画分を有するポリマー組成物は、ムーニー緩和時間の増加を示す。
【0055】
本開示のポリマー組成物は増大した加工性を有することが示され、インナーライナー等のタイヤへの応用、医薬品用栓、接着剤、ベルト等に適し得る。本明細書に開示のポリマー組成物は、出発ハロ含有ポリマーについて期待されるであろう用途と類似した用途に使用できる。このような用途は本開示の観点から当業者に対して明らかであろう。
【0056】
本開示をその特定の実施形態に関してかなり詳細に記載してきたが、他の説明も可能である。それゆえに、添付の請求項の趣旨及び範囲は本明細書内に含まれる記載及び好ましい説明に限定されるべきではない。本発明の様々な態様が以下の限定されない実施例に関して示されるであろう。以下の実施例は例示的な目的のみのためであり、いかなる方法でも開示を限定するものとは解釈されない。
【実施例】
【0057】
試験手順
125℃でのムーニー緩和実験(ML 1+8+8)はMonsanto社MV2000ムーニー粘度計で完了した。RPA実験はAlpha Technologies社ゴムプロセス分析装置RPA 2000を使用して完了した。
【0058】
ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析は、 2つのJordi Polar Pax Wax MB LSカラム(極性又はイオン性ポリマーに対し使用される)を備えたWaters社e2695 GPCを使用し、THF中3%の酢酸と共に4mg/mLのポリマーを含む溶液を使用し、35℃で0.8mL/minの流量で実施した。絶対分子量は、Wyatt社Dawn Helios II光散乱検出器を使用して決定し、ASTRA5ソフトウェアパッケージを使用して処理した。GPCはWyatt社Viscostar II粘度計、Wyatt社Optilab rEX屈折率検出器及びUV検出のために254nmで操作するWaters社2998フォトダイオードアレイ検出器も備えていた。
【0059】
1H NMRは90°パルス、10秒緩和遅延及び100スキャンを使用してBruker社Avance III 500MHz計器で測定した。掃引幅は16Kデータポイントを使用して10ppmであった。データは0.3の指数乗で処理し、試料濃度はCDCl
3中で1〜2wt%であった。
【0060】
試料1〜32の試料調製
全ての試料は、初めに4×6又は6×12のミルにより100℃で3分間未満BB2030にビスホスフィンを分散させることにより調製した。温度は、加工を容易にし、高分子量鎖の機械的分解を制限するように選択した。時間は、反応前のホスフィンの酸化が最小限になるように制限した。
【0061】
85mLの混合ヘッド及びカムミキサー刃を有するC.W.社ブラベンダーIntelli-Torqueプラスティコーダーを使用し(試料1〜16)、BB2030の分子量は増加するが十分なゲル画分は形成しないことが要求されるビスホスフィンの範囲を決定した(60g試料、86%の充填因子)。160℃の温度及び60rpmをトリフェニルホスフィン(TPP)及びBIIRの反応の開始温度として選択した。トルク曲線は反応が確かに起こることを示すために使用し、適切な混合時間を決定した。
図1に示すように、混合をトルクが安定するまでおよそ1分間続けた。
【0062】
混合当たり1.3kg(88%充填因子)のBB2030を利用した1.5Lバンバリーミキサー(BR-82) (試料23〜32)。開始温度は80℃及び70rpmであった。混合反応の時間及び温度は下のTable 1(表1)〜Table 3(表3)に示す。BR-82を使用した温度制御はブラベンダーと比較して混合中のrpmの調節を通じて改善し、小さいヘッドの混合で行われるように180℃まで増加する代わりに安定して160℃で維持できる反応温度が生じた。
【0063】
二軸押出機(Thermo Electron社Prism USALAB16ミニ押出機)を160〜180℃及び25〜50rpmで使用した(試料17〜22)。これらの条件によりおよそ3分の滞留時間を有し、およそ8.5g/分のスループットが生じる。特定の温度及びrpmをTable 1(表1)〜Table 3(表3)に列挙する。
【0064】
Table 1(表1)はムーニー粘度、遅延時間、及び試験試料番号1〜32の%ゲルを示す。
【0065】
【表1A】
【0066】
【表1B】
【0067】
Table 2(表2)は試験試料1〜32のGPCの結果を示す。分子量の試験では、イオノマー性ポリマーの分離を改善するためにイオノマーカラムを利用した。
【0068】
【表2】
【0069】
Table 3(表3)は試験試料1〜32のH NMR分析を示す。
【0070】
【表3】
【0071】
結果及び考察
反応は、1)160〜180℃で60gの試料サイズで小さなヘッドのブラベンダー、2)160及び180℃並びに25及び50rpmで二軸押出機、3)100℃で1時間4×6インチミル及び3)160〜180℃でBR-82 1.5L内部ミキサーを使用したスケールアップ、でBB2030を使用して完了した。ビスホスフィンの量は0〜66mg/100g BIIR(0〜0.066phr)の間で変えた。ビスホスフィンのこれらのレベルは<2%の利用可能な臭素部位を表し、コンパウンディング中のポリマーの硬化状態には影響しないであろう。
【0072】
比較すると、熱処理のみでは臭素化イソプレンの微細構造に影響を及ぼすことを示す。Table 1(表1)〜Table 3(表3)に見られるように、熱処理により転位Brは増加し、エキソ構造は減少する。加えて、残留ESBOの量はほとんどの場合において0%まで減少した。一般に、熱処理がより弱いほど、転位Brの部分はより少ない。しかしながら、本プロセスは、BIIRを単純に熱処理にかけるのと比較して、試験試料のいずれに対しても転位生成物の量を増加させることが示される。このことはビスホスフィンが試験温度範囲で転位反応を強めることを示す。このことを、類似の条件下でビスホスフィンなしに熱処理した試料対、ビスホスフィンを含んで熱処理した試料の実施例、即ち、ブラベンダーで作製された#1及び#2対#3〜#10又はBR-82で作製された試料#27対#23〜#26で示す。
【0073】
結果として生じるムーニー粘度及び80%減衰もTable 1(表1)〜Table 3(表3)並びに
図2及び
図3に示す。一般に、ムーニー粘度は同じ傾きの線に並ぶが、反応に使用される時間及び温度に基づいていくらか変化する。
【0074】
図3で示すように、ムーニー緩和(80%減衰)時間はムーニー粘度の関数として全て2本の直線に並んだが、小さなミキサー対大きなミキサー対押出機の混合タイプとは無関係であった。2本の線は反応中のBIIRに対する異なる熱処理に起因する。Table 3(表3)に示すように、混合中に180℃の温度に到達する試料は、
1H NMRにより決定してより少ない量の結合臭素を有していた。Table 3(表3)に更に示すように、160℃以下の温度で維持した試料は、H NMRにより決定してより高いレベルの結合臭素を保持した。熱処理に関係なく、本開示による試験試料では全て、BBX2(MU=47)と比較して同様のムーニーでは著しく長い減衰時間が生じる。一方、80%減衰を有するより低いムーニーの代替試料(36-39MUのBBX2)では、したがって、同様の冷却フローを生み出すことができた。
【0075】
GPC測定も試験試料で完了した。ビスホスフィンからの分枝のイオン性特質により、GPC測定用に特別なカラムを要した。
図4及び
図5はポリマーへのイオン種結合の影響を排除するために設計されたカラムと比較した標準カラムを使用した分子量分布の比較を示す。標準カラムを使用した分離により、散乱光トレースにおいて観察される長い尾部を有する一峰性ピークが生じる。一方、イオノマー特有カラムは高分子量鎖及び低分子量鎖が良好に分離される多峰性ピークを示す。このイオノマーカラムを使用したGPCトレースは、試料が
図6に示したビスホスフィン含有量の範囲を有することを示す。増加したビスホスフィンにより高分子量種の割合が増加する。新たなピークのMp(
図6の矢印を参照)は2x因子により増加し、異なる等級のBIIRの間の反応及び再現性の制御を示す。更に、BB2030分布の低分子量側は一定のままであり、高分子量鎖が優先的に反応することを示す。
図7は試験試料に対するMw及びムーニー粘度の間の相関を示す。
【0076】
試料のRPA測定を行い、60℃での弾性率(G')及び100℃でのタンジェントデルタを
図8A及び
図8Bに示す。0.4mol%のトリフェニルホスフィンが結合したイオノマー参照試料と特性を比較するために温度を選択した。60℃での測定は、BB2030と比較して、この範囲のビスホスフィンの添加がこの範囲における弾性率にほとんど影響しないこと、低いイオン含有量によりイオノマー試料より著しく低い弾性特徴を生じることを示す。ゴムの予測加工性を示すために100℃でのタンジェントデルタを使用する。グラフの右手側のより高いタンジェントデルタが加工の容易さを示す一方、グラフの左手側のより低いタンジェントデルタはより少ない冷却フローを示す。RPA測定は、分枝のために使用されるイオン基の小さな影響以外の、分枝した高分子量のムーニージャンプした試料からのポリマー組成物特性における影響を示す。
【0077】
Table 4(表4)〜Table 6(表6)-試料33〜59
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
試料33〜59は、結果として生じるポリマー組成物が50MUまでのムーニー粘度及び低いゲル含有量を有する、22、26、及び32MUのムーニー粘度を有する3つの異なる基準BIIR、即ち、BB2030及び臭素化RB402に基づくポリマー組成物を表す。全ての試料は、初めに4×6又は6×12ミルにより100℃で3分間未満、BIIR中にビスホスフィンを分散させることにより調製した。
【0082】
いくつかのBB2030基準の試料を混合当たり1.3kg(88%充填因子)のBB2030を利用し、1.5Lバンバリーミキサー(BR-82)を使用して生成した(試料1〜3)。開始温度は80℃及び70rpmであった。
【0083】
生成した試料の大部分は、160℃及び50rpmで二軸押出機(Thermo Electron社Prism USALAB16ミニ押出機)を使用した(試料4〜27)。これらの条件により、およそ3分の滞留時間を有するおよそ8.5g/分のスループットが生じた。
【0084】
全ての3つの場合において、ビスホスフィンを加えると、MUはゆっくりと増加し、次いでより多くの添加ではより速く増加する。
図9に見られるように、基準BIIRのMUが減少するに従って、ムーニーの著しい増加を引き起こすためには、ビスホスフィン量の増加が必要であり、22MUの基準BIIRは、ムーニーが顕著に増加する前に>100mg/100g BIIRを必要とした。
【0085】
ムーニー緩和80%減衰により測定された粘弾特性は、ムーニー及び80%減衰でのその影響の増加に関して2つの異なる型をはっきり示す。このことを
図10に示す。1番目の型では、ムーニーは減衰時間の比較的わずかな増加のみでおよそ4〜5単位増加した。2番目の型により、全ての点でのMUの増加に対し減衰時間がかなり増加することを示した。傾向は全ての3つの基準MU材料において同じであった。傾斜がより小さい型であるT80=[0.4±0.1]×MUに対し、より高いビスホスフィン装填での傾斜がより急な型がT80=[1.4±0.l]×MUで続いた。減衰時間のわずかな増加を示した試料は、改善した加工及びグリーン強度が利益になると思われるタイヤへの応用におけるインナーライナー化合物に適していると思われる。より長い減衰時間を示した試料は、ペレット化BIIRに理想的であると思われる。
【0086】
各試料に対し、分子量及び分子量分布をGPCにより決定した。
図11に、ビスホスフィンとの反応を通じて高分子量画分(HMWF)、即ちポリマー画分を形成した、典型的な多峰性GPCトレースを示す。百分率HMWFを計算し、Table 5(表5)並びに12(
図12及び
図13に示す。
図12は添加したビスホスフィンの相関としての百分率HMWFを示す。百分率HMWFは添加したビスホスフィンの量に従って着々とした増加を示す。
図12における挿入は、系列がBIIR鎖のモル当たりのビスホスフィンのモルに対し正規化したとき、全ての3系列に対するHMFWの百分率は添加したビスホスフィンの相関として重なり合うことを示し、異なる等級及び異なる試料の間のビスホスフィン-Br反応の一貫性を示す。
【0087】
図13は百分率HMWFと反応後に観察されたMUの変化との間の関係を示す。全ての3系列に対し、百分率HMWFはMUの増加と比較して比較的急なレートで増加し、30%HMWFの後であるという事実から見れば、MUはHMWFのあらゆるわずかな増加に対し遥かに速く増加する。変化は80%減衰時間が型を切り替えるおよそ4〜7MUの増加で生じていることは明らかである。
【0088】
最後に、この変化は、減衰時間が百分率HMWFの増加と共に十分に増加した後に、百分率HMWFが30〜35%に到達するまで減衰時間がほぼ均一である、百分率HMWFの関数としてのムーニー緩和の
図14でも観察できる。80%減衰時間の増加が、百分率HMWFに換算して32<26<22の順番での増加であることに注意するべきである。試料は様々な取り扱い特性を有するポリマー組成物が、基準BIIR及びターゲット百分率ポリマー画分又はHMWFを選択的に選択することにより生成できることを示す。
【0089】
前述の試料は異なるムーニー粘度の臭素化ブチルが、改善した加工性及び粘弾特性を有する多峰性臭素化ブチルポリマーを作り出すために使用できることを示す。
【0090】
新たな特徴が記述の検討で当業者に明らかになるであろう。しかしながら、請求項の趣旨は実施形態により限定されるべきではなく、概して請求項及び明細書の言い回しと一致する最も広い解釈を与えられるべきであることを理解すべきである。