特許第6905068号(P6905068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905068
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】電流遮断装置及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/578 20210101AFI20210708BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01M50/578
   H01M50/533
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-544286(P2019-544286)
(86)(22)【出願日】2018年7月2日
(86)【国際出願番号】JP2018025091
(87)【国際公開番号】WO2019064777
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2019年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-186991(P2017-186991)
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井手 竜二
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岩 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
(72)【発明者】
【氏名】光安 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 騎慎
【審査官】 上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212034(JP,A)
【文献】 特開2013−161712(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/141570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/578
H01M 50/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置のケース内の圧力が所定値を超えたときに前記ケースに設けられた電極端子と前記ケース内に設けられた電極の導通を遮断する電流遮断装置であって、
前記電極端子に接続されている第1通電部材と、
前記第1通電部材と間隔をおいて前記第1通電部材に対向して配置されているとともに、前記電極に接続されており、前記第1通電部材側に上面から底面に向けて傾斜する傾斜面を有する第1窪みが設けられており、前記第1通電部材側とは反対側の前記第1窪みと対向する位置に第2窪みが設けられている第2通電部材と、
前記第1通電部材と前記第2通電部材の間に配置されているとともに、端部が前記第1通電部材に接合されており、前記ケース内の圧力が前記所定値以下のときは中央部が前記第2通電部材側に突出して前記第1窪み内で前記第2通電部材に接続されて前記第1通電部材と前記第2通電部材を導通しており、前記圧力が前記所定値を超えたときに前記中央部が前記端部に対して前記第2通電部材側とは反対側に突出する飛び移り座屈をして前記第1通電部材と前記第2通電部材を非導通にする変形部材と、を備えており、
前記第2通電部材の前記第1通電部材側の表面において前記第1窪みが占めるサイズが、前記第2通電部材の前記第1通電部材とは反対側の裏面において前記第2窪みが占めるサイズよりも大きく、
前記変形部材が前記第2通電部材に接続されている状態において、前記変形部材の前記端部を含む平面に直交する断面を観察したときに、前記変形部材は、前記端部と前記中央部とを接続するように延びる延在部を有し、前記延在部は前記第1窪みの前記傾斜面に沿うように前記端部から前記中央部まで連続的に傾斜している、電流遮断装置。
【請求項2】
請求項に記載の電流遮断装置を備える蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電装置は、二次電池である請求項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、電流遮断装置及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置が過充電されたり、内部で短絡が発生したときに、ケース内の圧力上昇を利用し、電極端子間(正極端子と負極端子)に流れる電流を遮断する電流遮断装置の開発が進められている。電流遮断装置は、電極端子と電極の間(正極端子と正極の間又は負極端子と負極の間)に配置される。国際公開第2013/164897号(以下、特許文献1と称する)には、電極端子(正極端子)に接続されている第1通電部材(感圧部材ホルダ)と、電極(正極シート)に接続されている矩形プレート形状の第2通電部材(集電板)と、端部が第1通電部材に接合されているとともに中央部が第2通電部材に接合されている変形部材(感圧部材)を備えた電流遮断装置が開示されている。特許文献1の変形部材は、飛び移り座屈することが可能であり、中央部が第2通電部材の上面(第1通電部材側の表面)に接合されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1は、電流遮断装置の誤作動(ケース内圧力の僅かな上昇により電流遮断装置が作動すること)を防止するとともに、作動後の再導通(変形部材と第2通電部材の再接触)を防止するため、飛び移り座屈するタイプの変形部材を用いている。すなわち、特許文献1は、ケース内の圧力が所定値を超えるまでは中央部が端部に対して第2通電部側に突出して第2通電部材と接触した状態を維持し、ケース内の圧力が所定値を超えると中央部が端部に対して第2通電部とは反対側に急速に突出する(反転する)特性を有した変形部材を用いている。誤動作及び再導通を確実に防止するためには、変形部材の突出量(端部に対する中央部の突出距離)を十分に確保することが必要である。すなわち、第1通電部材と第2通電部材の距離を十分に確保し、変形部材を配置するスペースを確保することが必要である。そのため、特許文献1の電流遮断装置は、装置の大型化が避けられない。本明細書は、飛び移り座屈する変形部材を用いた小型の電流遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示する電流遮断措置は、蓄電装置のケース内の圧力が所定値を超えたときにケースに設けられた電極端子とケース内に設けられた電極の導通を遮断する。この電流遮断装置は、電極端子に接続されている第1通電部材と、電極に接続されている第2通電部材と、第1通電部材と第2通電部材の間に配置されている変形部材を備えていてよい。第2通電部材は、第1通電部材と間隔をおいて第1通電部材に対向して配置されていてよい。また、第2通電部材には、第1通電部材側に窪みが設けられていてよい。変形部材は、端部が第1通電部材に接合されていてよい。また、変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときは中央部が第2通電部材の窪み内で第2通電部材に接続されて第1通電部材と第2通電部材を導通しており、ケース内の圧力が所定値を超えたときに飛び移り座屈して第1通電部材と第2通電部材を非導通にしてよい。
【0005】
上記電流遮断装置は、窪み内で変形部材と第2通電部材が接するので、第2通電部材の上面(第1通電部材側の表面)で変形部材と第2通電部材が接する従来の電流遮断装置と比較して、第1通電部材と第2通電部材の隙間を小さくすることができる。その結果、上記電流遮断装置は、従来の電流遮断装置より小型化することができ、ケース内における電流遮断装置を配置するためのスペースを小さくすることができる。上記電流遮断装置を用いることにより、ケース内に電極(電極組立体)を配置するスペースを広く確保することができ、蓄電容量を増大させることができる。
【0006】
第2通電部材の第1通電部材側とは反対側の上記窪みと対向する位置に、第2の窪みが設けられていてよい。変形部材は、第2通電部材の第1通電部材側に設けられている窪み(以下、第1窪みと称する)内で、第2通電部材と接続されている。すなわち、第1窪み内が、変形部材と第2通電部材の接続部である。この接続部に衝撃が加わると、接続部が損傷して電極端子と電極の導通が阻害されたり、電流遮断装置が誤作動することが起こり得る。第2通電部材の第1通電部材側とは反対側(接続部の裏面)に第2の窪み(以下、第2窪みと称する)を設けることにより、結果として接続部の裏面を囲むように突出部が設けられる。この突出部によって、接続部の裏面にケース内の部品(電極組立体等)が接触することが防止され、接続部に衝撃が加わることを抑制することができる。すなわち、第2通電部材に第2窪みを設けることにより、変形部材と第2通電部材の接続部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例の電流遮断装置を備えた蓄電装置の断面図を示す。
図2図1の破線IIで囲った範囲の拡大図を示す。
図3】第1実施例の電流遮断装置の作動後の状態を示す。
図4】第1実施例の電流遮断装置と従来の電流遮断装置との比較図を示す。
図5】第2実施例の電流遮断装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施例)
図1を参照し、蓄電装置100について説明する。蓄電装置100は、二次電池であり、電流遮断装置10を備えている。蓄電装置100は、ケース1と、ケース1に収容された電極組立体3と、ケース1に固定された正極接続端子5及び負極接続端子7を備えている。なお、以下の説明では、正極接続端子5及び負極接続端子7を併せて、電極接続端子5,7と称することがある。ケース1は、金属製であり、略直方体形状の箱型部材である。ケース1の内部には、電極組立体3と電流遮断装置10が収容されている。電極組立体3は、電極接続端子5,7に電気的に接続されている。電流遮断装置10は、電極組立体3と負極接続端子7の間に配置されている。なお、ケース1の内部は、電解液が注入されており、大気が除去されている。また、電極組立体3は、電解液に浸漬している。
【0009】
ケース1は、本体111と、本体111に固定された蓋部112を備えている。蓋部112は、本体111の上部を覆っている。蓋部112には、取付孔81,82が設けられている。正極接続端子5は、取付孔81を介してケース1の内外に通じている。負極接続端子7は、取付孔82を介してケース1の内外に通じている。
【0010】
電極組立体3は、正極電極と負極電極とセパレータを備えている(図示省略)。セパレータは、正極電極と負極電極の間に配置されている。電極組立体3は、正極電極、負極電極及びセパレータからなる積層体(単位セル)が複数積層された構造を有している。複数の正極電極の各々は、正極集電部材と、正極集電部材上に形成されている正極活物質層を備えている。正極集電部材の一例として、アルミニウム箔が挙げられる。また、複数の負極電極の各々は、負極集電部材と、負極集電部材上に形成されている負極活物質層を備えている。負極集電部材の一例として、銅箔が挙げられる。また、電極組立体3は、正極電極毎に設けられた正極集電タブ51と、負極電極毎に設けられた負極集電タブ52を備えている。正極集電タブ51は、正極電極の上端部(電極組立体3の蓋部112側の端部)に設けられている。負極集電タブ52は、負極電極の上端部に設けられている。正極集電タブ51及び負極集電タブ52は、電極組立体3の上方(蓋部112側)に突出している。複数の正極集電タブ51は、1つに纏められて正極リード53に接続されている。複数の負極集電タブ52は、1つに纏められて負極リード54に接続されている。
【0011】
正極リード53は、正極集電タブ51と正極接続端子5に接続されている。正極リード53を介して、正極集電タブ51と正極接続端子5が電気的に接続されている。正極リード53とケース1の間に、絶縁部材70が配置されている。絶縁部材70は、正極リード53とケース1(蓋部112)を絶縁している。
【0012】
負極リード54は、負極集電タブ52と接続端子56に接続されている。接続端子56は、電流遮断装置10を介して負極接続端子7に電気的に接続されている。すなわち、負極リード54、接続端子56及び電流遮断装置10を介して、負極集電タブ52と負極接続端子7が電気的に接続されている。これにより、電極組立体3と負極接続端子7を接続する通電経路が形成されている。電流遮断装置10は、この通電経路を遮断することができる。電流遮断装置10の詳細については後述する。負極リード54とケース1の間に、絶縁部材71が配置されている。絶縁部材71は、負極リード54とケース1(蓋部112)を絶縁している。
【0013】
蓋部112の上面(ケース1の外部)に、樹脂製のガスケット62,63が配置されている。ガスケット62,63は、絶縁性を有している。ガスケット62は、正極接続端子5に固定されている。また、正極外部端子(金属プレート)60が、ガスケット62の上面に配置されている。正極外部端子60には、貫通孔60aが形成されている。貫通孔60aは、上面側に比べ、下面側のサイズが大きくなっている。ガスケット62は、蓋部112と正極外部端子60を絶縁している。ボルト64が、貫通孔60aを通過している。具体的には、ボルト64の頭部が、貫通孔60a内に収容されている。また、ボルト64の軸部が、貫通孔60aを通って正極外部端子60の上方に突出している。正極接続端子5、正極外部端子60及びボルト64は、電気的に接続されており、正極端子を構成している。
【0014】
ガスケット63は、負極接続端子7に固定されている。負極外部端子(金属プレート)61が、ガスケット63の上面に配置されている。負極外部端子61には、正極外部端子60の貫通孔60aと同様の貫通孔61aが形成されている。貫通孔61a内にボルト65の頭部が収容され、ボルト65の軸部が貫通孔61aを通って負極外部端子61の上方に突出している。ガスケット63、負極外部端子61及びボルト65の構成は、上述したガスケット62、正極外部端子60及びボルト64の構成と同様である。負極接続端子7、負極外部端子61及びボルト65は、電気的に接続されており、負極端子を構成している。
【0015】
図2を参照して電流遮断装置10について説明する。電流遮断装置10は、負極接続端子7と、変形板20と、破断板30と、ホルダ80を備えている。負極接続端子7は第1通電部材の一例であり、変形板20は変形部材の一例であり、破断板30は第2通電部材の一例である。負極接続端子7は、蓋部112にかしめ固定されている。負極接続端子7は、かしめ部品(かしめ端子)である。負極接続端子7は、円筒部94、基部95及び固定部96を備えている。円筒部94は、取付孔82を通過している。また、円筒部94は、貫通孔97を備えている。基部95は環状であり、円筒部94の下端に固定されている。基部95は、ケース1の内部に配置されている。基部95は、蓋部112に沿って広がる平面を有している。基部95の面方向端部に、下方(電極組立体3側)に突出する突出部99が設けられている。また、基部95には、凹部98が形成されている。凹部98の中央に、貫通孔97が位置している。凹部98と貫通孔97は連通している。そのため、凹部98内の空間12は大気圧に保たれる。固定部96は、円筒部94の上端に固定されている。固定部96はケース1の外部に配置されている。負極接続端子7は、固定部96によってケース1(蓋部112)に固定されている。
【0016】
破断板30は、導電性を有している。破断板30は、負極接続端子7の下方で、基部95に対向する位置に配置されている。なお、破断板30と負極接続端子7(基部95)は直接接しておらず、両者の間には間隔(隙間)が設けられている。破断板30の上面(負極接続端子7側の面)には、第1窪み31が設けられている。第1窪み31は、破断板30の中央部34に設けられている。第1窪み31の底には、第1平坦面31aが設けられている。なお、第1窪み31が設けられている部分(破断板30の中央部34)を除き、破断板30の上面は、ほぼ平坦である。第1窪み31の側壁31bは、第1窪み31の開口面(破断板30の上面)から第1窪み31の底面(第1平端面31a)に向けて傾斜している。そのため、第1窪み31は、開口面に対して底面のサイズが小さい。換言すると、破断板30の表面に平行な平面(第1平端面31aに平行な平面)において、第1窪み31の面積(すなわち、破断板30に設けられた空隙の面積)は、破断板30の上面から第1平端面31aに向かうに従って小さくなっている。
【0017】
破断板30の下面(負極接続端子7とは反対側の面)には、第2窪み32が設けられている。第2窪み32は、第1窪み31と対向する位置に設けられている。すなわち、第2窪み32は、破断板30の中央部34に設けられている。第2窪み32の底には、第2平坦面32aが設けられている。なお、第2窪み32設けられている部分(中央部34)を除き、破断板30の下面も、ほぼ平坦である。第2平坦面32aには、環状の破断溝33が設けられている。破断板30の側方端部に、接続端子56が接続されている。破断板30は、接続端子56を介して負極電極に接続されている(図1も参照)。
【0018】
破断板30は、ホルダ80に支持されている。ホルダ80は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂で形成されている。ホルダ80は、負極接続端子7の基部95を囲むように、ケース1内に配置されている。ホルダ80は、上部79及び下部78を有している。上部79は、ケース1の蓋部112に沿って広がる平面を有している。上部79の中央に貫通孔79aが設けられている。負極接続端子7の円筒部94は、貫通孔79aを通過している。上部79は、ケース1の蓋部112と、負極接続端子7の基部95の間に配置されている。ホルダ80は、負極接続端子7とともに、ケース1に固定されている。すなわち、ホルダ80は、負極接続端子7に固定されている。ホルダ80は、絶縁性を有している。ホルダ80は、ケース1(蓋部112)と負極接続端子7(基部95)を絶縁している。
【0019】
ホルダ80の下部78は、上部79の外周縁から下方に伸びている。ホルダ80の下部78は、基部95の下端(突出部99の破断板30側の端)より下方まで伸びている。基部95は、下部78の内側に配置されている。破断板30は、下部78の端面に設けられている接続層75を介してホルダ80に支持されている。接続層75は、破断板30とホルダ80の双方に溶着している。破断板30をホルダ80の下端に固定することにより、負極接続端子7(基部95)と破断板30は、直接接触することなく接続される。すなわち、ホルダ80は、負極接続端子7と破断板30を、両者の間隔を維持した状態で接続している。また、ホルダ80は、下端の一部が窪んでおり、破断板30の一部と接触していない。そのため、ホルダ80と破断板30の間の一部に、連通孔77が形成される。連通孔77は、変形板20と破断板30の間の空間14と、ケース1内の空間(電流遮断装置10外の空間)を連通している。
【0020】
変形板20は、導電性を有するダイアフラムであり、表面に所定の力が加わると飛び移り座屈する特性を有している。変形板20は、負極接続端子7の下方に配置されている。具体的には、変形板20は、負極接続端子7(基部95)と破断板30の間に配置されている。変形板20は、中央部21及び外周部(端部)22を有している。ケース1内が通常圧力(所定値以下)の場合、変形板20の中央部21は、下方に凸となっており、破断板30の中央部34に接触している。具体的には、中央部21は、第1窪み31の底(第1平坦面31a)に溶接されている。上記したように、第1窪み31の側壁31bは、破断板30の上面から第1平端面31aに向けて傾斜している。第1窪み31は、変形板20の形状に沿うように形成されている。換言すると、側壁31bが傾斜していることにより、第1窪み31の深さ方向(破断板30の上面に直交する方向)において、変形板20と側壁31bの隙間がほぼ一定に保たれている。なお、中央部21は、破断溝33より内側の範囲40で第1平坦面31aに溶接されている。換言すると、変形板20と破断板30の接合部分(溶接部分)より外側に、破断溝33が設けられている。
【0021】
変形板20の端部(外周部)22は、負極接続端子7(基部95)に接合(溶接)されている。負極接続端子7の凹部98は、変形板20によって覆われている。そのため、凹部98内の空間12は、変形板20を介して反対側の空間(変形板20と破断板30の間の空間14)から分離されている。凹部98内の空間12は、貫通孔97を介してケース1外の空間と連通しており、ケース1内の空間(ケース1内であって電流遮断装置10外の空間)から分離されている。変形板20は、ケース1外の空間とケース1内の空間(電流遮断装置10外の空間)を分離している。
【0022】
図2及び図3を参照し、電流遮断装置10の動作について説明する。図2に示すように、蓄電装置100では、ケース1内の圧力が通常状態(所定値以下)のときは、変形板20が下方に突出し、破断板30の中央部34(第1平坦面31a)に接触している。そのため、負極接続端子7と破断板30が、変形板20を介して導通している。負極接続端子7と負極集電タブ52(負極電極)は、電流遮断装置10を介して電気的に接続している。すなわち、蓄電装置100は導通状態である。
【0023】
上記したように、変形板20は、ケース1外の空間とケース1内の空間を分離している。そのため、変形板20の上面には大気圧が作用し、下面にはケース1内の圧力が作用する。ケース1内の圧力が上昇すると、変形板20の下面に作用する圧力が増大する。図3に示すように、ケース1内の圧力が増大し、所定値を超えると、変形板20が反転し、中央部21が上方に移動し、変形板20が上方に凸の状態に変化する。変形板20の反転に伴い、破断板30が破断溝33を起点して破断し、破断板30の中央部34が変形板20とともに上方に移動する。その結果、変形板20と破断板30の間の通電経路が遮断され、負極接続端子7と負極集電タブ52が非導通となる。すなわち、電流遮断装置10が作動し、蓄電装置100が非導通状態となる。
【0024】
なお、上記したように、破断板30に環状の破断溝33が設けられており、破断溝33で囲まれた範囲40で変形板20が破断板30に接合(溶接)されている。変形板20が破断板30に接合されていることにより、ケース1内の圧力が通常状態のときに、変形板20と破断板30の導通が安定する。例えば、蓄電装置100に振動が加わった場合であっても、変形板20と破断板30の接触が維持され、蓄電装置100が非導通状態となることを防止することができる。また、変形板20と破断板30の接合部位(範囲40)の外側に破断溝33が設けられている。変形板20が上方に移動する(反転する)ときに、範囲40の外側(すなわち、破断溝33)を起点として破断板30が破断する。そのため、変形板20と破断板30の接合強度に影響されることなく、所定の圧力で変形板20が反転することができる。
【0025】
また、上記したように、変形板20は、飛び移り座屈する特性を有している。そのため、ケース1内の圧力が僅かに(所定値以下)に上昇し、変形板20の下面に作用する圧力が僅かに増大しても、変形板20は上方に反転しない。電流遮断装置10が誤作動することを防止することができる。また、変形板20が飛び移り座屈する特性を有していることにより、電流遮断装置10の作動後、変形板20が下方に反転し、変形板20と破断板30が再接触する(蓄電装置100が再導通する)ことも抑制される。
【0026】
図4を参照し、電流遮断装置10の利点について説明する。図4は、電流遮断装置10と、従来の電流遮断装置210を示している。電流遮断装置10,210は、破断板30,230の構造が異なり、他の部品の構造は同一である。すなわち、電流遮断装置10,210において、負極接続端子7及び変形板20の構造は同一である。破断板230の厚みは、破断板30の厚みと等しい。しかしながら、破断板30の上面には第1窪み31が設けられており、破断板230の上面には窪みが設けられていない。破断板230の上面は平坦であり、変形板20は、破断板230の上面(平坦面)に接合されている。それに対して、電流遮断装置10では、変形板20が第1窪み31内で破断板30に接合されている。そのため、電流遮断装置10では、負極接続端子7と破断板30の隙間10gを、電流遮断装置210における負極接続端子7と破断板230の隙間210gよりも小さくすることができる。電流遮断装置10は、従来の電流遮断装置210より小型である。ケース1内において電流遮断装置10が占める厚みT10(蓋部112の裏面から破断板30の下面までの距離)は、ケース1内において電流遮断装置210が占める厚みT210より小さい。電流遮断装置10は、従来の電流遮断装置210と比較して、ケース1内における配置スペースを小さくすることができる。
【0027】
なお、従来の電流遮断装置210において、単に破断板230の厚みを薄くしても、電流遮断装置のサイズ(厚みT210)を小さくすることができる。しかしながら、単に破断板230の厚みを薄くすると、通電経路が狭くなり、抵抗が増大する。さらに、破断板230の厚みを薄くすると、破断板の強度も低下する。電流遮断装置10は、破断板の強度低下、抵抗増加を抑制しながら、ケース1内における配置スペースを小さくすることができる。電流遮断装置10を用いることにより、ケース1内に電極(電極組立体)を配置するためのスペースを広く確保することができ、蓄電容量を増加させることができる。
【0028】
また、従来の電流遮断装置210において、破断板230から変形板20に力を加え、負極接続端子7と破断板230の隙間を隙間210gよりも小さくした状態で破断板230をホルダ80に固定しても、電流遮断装置のサイズを小さくすることができる(この場合、ホルダ80のサイズも変更する)。すなわち、変形板20に力を加え、端部22に対する中央部21の突出量を小さくした状態で破断板230をホルダ80に固定しても、電流遮断装置のサイズは小さくなる。しかしながら、この場合、変形板20に残存する内部応力が大きくなり、変形板20の反転圧力が設計値からずれる。すなわち、所望する圧力で電流遮断装置が作動しない。そのため、電流遮断装置の信頼性を確保することができない。電流遮断装置10は、信頼性を確保しながら、従来よりもサイズを小さくすることができる。
【0029】
また、上記したように、電流遮断装置10では、第1窪み31の側壁31bが傾斜しており、第1窪み31は、変形板20の形状に沿うように形成されている。そのため、電流遮断装置10は、例えば、第1窪みの側壁が破断板30の上面から第1窪みの底面に向けて垂直に伸びる形態と比較して、窪み(空隙)の体積を小さくすることができる。換言すると、電流遮断装置10は、第1窪みの側壁が破断板30の上面から第1窪みの底面に向けて垂直に伸びる形態と比較して、破断板30の厚みを変えることなく、破断板30の体積(破断板30の材料の体積)を増大することができる。その結果、電流遮断装置10は、サイズを大きくすることなく(破断板30の厚みを厚くすることなく)、破断板30の強度を増大させることができる。
【0030】
(第2実施例)
図5を参照し、電流遮断装置110について説明する。電流遮断装置110は、電流遮断装置10の変形例である。電流遮断装置110について、電流遮断装置10と同一の構成については、同一又は下二桁が同一の参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0031】
電流遮断装置110では、破断板130の下面に窪み(電流遮断装置10の第2窪み32に相当する構造)が設けられていない。換言すると、電流遮断装置110では、破断板130の下面がほぼ平坦である。電流遮断装置110は、破断板130の下面に窪みを設けないので、製造工程(下面に窪みを形成する工程)を省略することができる。また、平坦な面(破断板130の下面)に破断溝33を形成するので、破断溝33の加工を容易にすることもできる。
【0032】
なお、電流遮断装置110において、破断板130の厚みは、電流遮断装置10の破断板30の厚みと同一である。また、破断板130の中央部134の厚みも、電流遮断装置10の破断板30の中央部34の厚みと同一である。電流遮断装置110は、破断板130の下面に窪みが設けられていないので、破断板130の上面に破断板30に設けられている第1窪み31よりも深い窪み131が設けられている。換言すると、破断板130における上面から窪み131の底に設けられている平坦面131aまでの距離は、破断板30における上面から底面(第1平坦面31a)までの距離より長い。そのため、電流遮断装置110は、電流遮断装置10と比較して、負極接続端子7と破断板130の距離を短くすることができる。その結果、電流遮断装置110は、電流遮断装置10よりもサイズを小さくすることができる。なお、電流遮断装置110では、窪み131の深さが電流遮断遮断装置10の第1窪み31よりも深い。よって、電流遮断装置110は、加工を容易にするため、窪み131の側壁131bの傾斜角を、第1窪み31の側壁31bの傾斜角よりも小さくしている。しかしながら、電流遮断装置10と同様に、窪み131を変形板20の形状に沿うように形成してもよい。
【0033】
なお、上記実施例では、ホルダと破断板の間の一部に連通孔を設け、変形板−破断板間の空間(変形板の下面)と蓄電装置内の空間(電流遮断装置外の蓄電装置内空間)を連通する例について説明した。この形態は、破断板の強度を維持するという点で優れている。しかしながら、必要に応じて、破断板に連通孔を設け、変形板−破断板間の空間とケース内の空間を連通してもよい。
【0034】
また、上記実施例では、負極電極と負極端子の通電経路上に電流遮断装置を配置する例について説明した。しかしながら、電流遮断装置は、正極電極と正極端子の通電経路上に配置してもよいし、負極電極と負極端子の通電経路上及び正極電極と正極端子の通電経路上の双方に配置してもよい。
【0035】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5