【実施例】
【0094】
本発明の化合物は、植物もしくは植物部分からの単離、または単離された化合物の誘導体化、または関連する化合物の誘導体化によって得てもよい。単離手順および誘導化手順は、WO2007/070985およびWO2014/169356で見つけてもよい。
【0095】
化合物6である、化合物1の20アセチル誘導体は、ジクロロメタン中のトリエチルアミンの存在下で無水酢酸(1当量)を用いたアセチル化によって化合物1から作製され得る。これらの条件は、第二のヒドロキシル基のアセチル化なしにC−20ヒドロキシ基の選択アセチル化を可能にする。
【0096】
化合物10は、WO2014/169356では特異的に合成されないが、WO2014/169356、64〜70頁の実施例1に提示された非対称性エステルを得るための一般的方法を使用して調製され得る。
【0097】
実施例1:エポキシチグリアン類似体はPKCアイソフォームを活性化する
プロテインキナーゼCは、セリン/トレオニン残基にて基質が特異的にリン酸化されるシグナル伝達経路にかかわる主要酵素のファミリーである。PKCによるリン酸化は、例えば、増殖および遺伝子発現調節などのさまざまな細胞事象の調整において重要である。PKCアイソフォーム(−θ、−η、−α、−β、−δ、−ε)は、免疫細胞応答において直接関係し、そして、主要な免疫遺伝子の発現もまた促進され得る。しかしながら、これらのPKCアイソフォームのそれぞれの発現様式およびレベルは、細胞型および状況に特異的である(Lim et al. 2015; Anel et al. 2012; Pfeifhofer et al. 2006)。
【0098】
エポキシチグリアン化合物の特定のPKCアイソフォーム活性化プロフィール(特異性および効力)を同定するために、HeLa細胞を、Boyle et al. 2014に記載の方法に従ってLipofectamine2000(Invitrogen)を使用して、いろいろなPKC−EGFPベクター(PKC−α、PKC−βI、PKC−βII、PKC−γ、PKC−δ、PKC−θ、PKC−η、PKC−ζ−社内で作製)を用いて一時的にトランスフェクトした。0.16μgのPKC−EGFPおよび0.48μLのLipofectamineに相当する体積を、25μlのOpti−MEM培地(Invitrogen)と混合し、そして、RTにて5分間インキュベートした。溶液を組み合わせ、そして、RTにてもう20分間インキュベートした(1:3比のDNA:Lipofectamine2000)。複合体(50μl)を各ウェルに加え、そして37℃にて3時間のインキュベーション後に、別の50μlのRPMI−1640、10%のFCSを、1ウェルあたり100μlの全容積まで加えた。37℃にて24時間のインキュベーション後に、細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、そして、500、50および5nMのエポキシチグリアンで処理した。3つの化合物を、96ウェルプレート毎に試験できた。5枚の96ウェルプレートが、実験の実施毎に必要であった。1時間の処理後に、細胞を、100μlのPBSで二度洗浄し、そして、PBS中の50μlの2%ホルムアルデヒド/0.2%のグルタルアルデヒド(gluteraldehyde)で10分間、固定した。固定化細胞を、それに続いて、100μlのPBSで二度洗浄した。核を染色するために、Hoechst 3342を1:10000希釈にて使用した。暗所内での7分間のインキュベーション後に、Hoechstを取り除き、そしてPBSで細胞を洗浄した。最後に、細胞に、100μlのPBSを重ね、そして、画像化まで4℃にて暗所内で保存した。画像化を、GE InCell Analyzer2000を使用して実施した。原形質膜または他の細胞内位置へのPKCの移動を、Adobe Photoshop CS6を使用して手作業でカウントした。
【0099】
エポキシチグリアン化合物である化合物1、化合物3ならびにPMA(フォルボール−12−ミリステートー13−アセテート)の存在下での細胞膜への選択したPKCアイソフォーム−α、−βII、−γ、−δおよび−θの移動を示す画像を、
図1Aに示す。これらの画像は、さまざまなエポキシチグリアン化合物がさまざまなPKCアイソフォームを活性化できることを示す。
【0100】
化合物1〜10ならびに陽性対照PMAの細胞質膜移動を示す細胞のパーセンテージを、500、50および5nMのそれぞれの化合物に反応した、PKCアイソフォームの移動プロファイルを示すヒートマップに変換した。ヒートマップを、
図1Bに示す。
【0101】
結果は、化合物1〜7がすべて(異なった程度まで)PKC−θ、TおよびNK細胞活性化に関与することが知られているPKCアイソフォームを活性化すること、およびTreg発生の抑制を示す(Brezar et al., 2015; Anel et al., 2012)。すべてのエポキシチグリアン化合物は、PKC−βを活性化し、そしてそれは、B細胞受容体シグナル伝達および抗原提示に重要である(例えば、Kang et al. 2001; Lim et al. 2015)。一部のまたはすべてのエポキシチグリアンによってより弱く活性化された他の3つのPKCアイソフォーム(−η、−α、−δ)もまた、免疫細胞応答に直接関係した(Lim et al. 2015; Pfeifhofer et al. 2006)。
【0102】
実施例2:マウス腫瘍間質における遺伝子発現変化は、免疫細胞動員およびTh−1/M1様抗腫瘍免疫応答の誘導と一致した
抗腫瘍免疫におけるTh1/M−1様応答
Th1/M1様免疫応答は、直接的な殺腫瘍活性を含めたさまざまな機構を通じた抗腫瘍細胞性免疫能の誘導、抗腫瘍性サイトカイン反応の修飾、および長期免疫メモリの相乗効果に関連した。例えば、いくつかの系列の証拠は、CD4+Tヘルパータイプ1(Th1)細胞(Th1免疫の駆動因子)が、インターフェロン−γ(IFN−γ)インターロイキン−2(IL−2)および腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を含めた様々なサイトカインの分泌を介して腫瘍細胞のクリアランスのサポートを補助し得ることを示した(Knutson et al. 2005; DeNardo et al. 2010; Burkholder et al. 2014)。これらのサイトカインは、抗原提示細胞(APC)、細胞毒性T細胞、NK細胞および様々な先天性の免疫細胞サブタイプを含めたいくつかの細胞型の活性を促進する(例えば、Cohen et al. 2000; Bos & Sherman 2010)。IFN−γおよびTNFもまた、腫瘍細胞生存に直接作用があることが知られている(Sugarman et al. 1985; Bayaert et al. 1994)。(M1マクロファージによって産生される)IL−1およびIL−6は腫瘍発生に関連しているが、より最近の証拠は、それらが実際には、急性抗腫瘍免疫応答の重要成分であることが示唆している(Haabeth et al. 2011; Gabrilovich et al. 2012; Haabeth et al. 2016)。それらが、B細胞増殖および抗体産生を高め、抗原提示細胞(APC)の活性を増強し、抗原特異的細胞傷害性細胞型の増殖を刺激し、およびTh1細胞分化を促進することを示した(Haabeth et al. 2011; Burkholder et al. 2014)。Th1とM1サイトカインの組み合わせもまた、腫瘍の免疫的監視で重要であることが示された。例えば、IL−1およびIFN−γの両方が、マクロファージの殺腫瘍活性を活性化するのにシナジーを与えた(Hori et al. 1989; Haabeth et al. 2016)。重要なことには、腫瘍におけるM1マクロファージおよびTh1リンパ球の出現は、多くの癌において改善された予後および生存期間に明確に関連している(Pages et al. 2010; Fridman et al. 2012; Senovilla et al. 2012)。実際には、誘導Th1/M1−タイプ炎症が、抗癌免疫療法ベースのアプローチを有意に改善することを提案した(Haabeth et al. 2012)。以下に、異種移植マウスモデルの間質中のTh1/M1様抗腫瘍免疫応答を促進する化合物1の効果を記載した。
【0103】
マウスからのヒト腫瘍異種移植片におけるマウス間質
SK−MEL−28ヒト黒色腫細胞株を各BALB/c Foxn1nuマウスの側腹部の2部位へ皮下(s.c)注射し(200万個の細胞/部位)、約7mm直径へ成長させた。次いで、各腫瘍に、化合物1を30μg含有する20%プロピレングリコール50μL、または20%プロピレングリコール50μLを注射した。注射後の異なる時点で、マウスを安楽死させ、腫瘍を採取し、皮膚カバーを除去し、インタクトな腫瘍を−80℃で保存した。
【0104】
RNA抽出
製造業者の説明書に従って、QiagenRNeasyPlus Mini Kitを使用して30mgの凍結腫瘍からRNAを抽出し、次いで、NanoDrop機器で定量化し、1kbのDNAマーカーを有する変性アガロースゲルにおいて完全性を確認し、臭化エチジウムで染色した。
【0105】
RNA増幅および標識化
約500ngのトータル未標識RNAをヌクレアーゼフリー水で最終体積11μLへ調節した。RNAを、9μLの逆転写酵素マスターミックス(1μLのT7 Oligo(dT)Primer、2μLの10X第1ストランドバッファー、4μLのdNTPミックス、1μLのRNaseインヒビターおよび1μLのArrayScript)と共に42℃で2時間インキュベートした。これに続いて、第2ストランドcDNA合成ステップを行い、これは、80μLの第2ストランドマスターミックス(63μLのヌクレアーゼフリー水、10μLの10X第2ストランドバッファー、4μLのdNTPミックス、2μLのDNAポリメラーゼおよび1μLのRNase H)と共に16℃で2時間さらにインキュベーションすることを含んだ。250μLのcDNA結合バッファーを含むcDNA Filter Cartridgeで濾過し、キット中に提供された500μLの洗浄バッファーで洗浄することによって、cDNAを精製した。精製されたcDNAを、20μLの55℃ヌクレアーゼフリー水で溶出した。各cDNAサンプルを、7.5μLのIVTマスターミックス(2.5μLのT7 10×反応バッファー、2.5μLのT7酵素ミックスおよび2.5μLのビオチン−NTPミックス)と共に37℃で16時間インキュベートした。各cRNAサンプルへ75μLのヌクレアーゼフリー水を添加することによって、反応を停止した。フィルター上へのローディング前に一緒に混合された350μLのcRNA結合バッファーおよび250μLの100%エタノールを含むcRNA Filter CartridgeでcRNAサンプルを濾過することによって、ビオチン化増幅RNAを精製した。結合されたRNAを含むcRNAフィルターカートリッジを、次いで、650μLの洗浄バッファーで洗浄し、その後、精製されたcRNAを200μLの55℃ヌクレアーゼフリー水で溶出した。
【0106】
Illumina Expression BeadChipハイブリダイゼーション
cRNAサンプルを65℃で5分間加熱し、パルス遠心分離によって集めた。65度で5分間加熱した後、約750ngのcRNAサンプルを別個のチューブへ等分し、ここで、約5μLのRNaseフリー水および10μLのHyb Mixを添加した。約15μLの調製cRNAミックスをIllumina Expression BeadChip上へローディングした。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の後続の工程を、Illuminaによって供給されるWhole-Genome Gene Expression Direct Hybridization Assay Guideに従って行った。
【0107】
Human HT-12 v4 Expression BeadChipは、ヒトトランスクリプトームにわたる47,000を超える転写物および公知のスプライス変異体をカバーする。MouseRef-8 v2.0 Expression BeadChipは、19,000超の特有の遺伝子を含む、約25,600の十分に注釈されたRefSeq(参照配列(Reference Sequence))転写物をカバーする。
【0108】
データ解析。BeadChipをiScan Systemによって読み取り、GenomeStudioによってGeneSpring GX v12.5(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)へ移した。デフォルト設定での分位点標準化を使用して、発現値を標準化した。実体を、GenomeStudioによって計算された検出スコアに基づいてフィルタリグし、ここで、p≦0.05を有意とみなした。
【0109】
結果を
図2に示す。
図2Aは、免疫細胞の動員/活性化に重要であるいくつかの宿主サイトカイン/ケモカインが、化合物1処理に反応して腫瘍部位において上方制御されることを示す。注目すべきは、化合物1によって大いに上方制御されるCxcl1では、好中球動員、およびその後の残留癌細胞の殺滅を促進すること知られている(Garg et al. 2017)。さらに、
図2Bは、化合物1が、Th−1/M様応答、すなわち、IFN−γ、TNF、IL−6およびIL−1β誘導、の発生に関連している宿主の遺伝子発現変化を引き起こすことを示している。データはまた、それらがTGFベータシグナル伝達の下方制御が起こる可能性があり(
図2C)、そしてそれが、公知の免疫抑制性シグナル伝達経路(Neuzillet et al. 2015)であることも示唆する。
【0110】
実施例3:化合物1および他のエポキシチグリアンの治療濃度が細胞腫瘍症を誘導することの証明
腫瘍症は、浸透バランスを維持するATP駆動イオンポンプ活性の一部損失による細胞内小器官の膨張と断裂とそれに続く、原形質膜の透過化を特徴とした壊死細胞死滅の形態である。腫瘍症は、天然には免疫原性であることが示され、そして、いくつかの腫瘍溶解性ウイルスおよび抗癌剤として開発された小分子の有効性に関係している(例えば、Dyer et al. 2016)。
【0111】
細胞株、試薬および培地
A431(ヒト類表皮癌A431細胞)、MM649(ヒト黒色腫)、B16−OVA(ニワトリオボアルブミンで安定的にトランスフェクトしたB16−F10マウス黒色腫細胞株)、MM415(ヒト黒色腫)およびFaDu(ヒト下咽頭癌)細胞を、加湿インキュベータ内で37℃、5%のCO
2にてRPMI−1640、10%のFCS(完全培地)中で培養した。この試験に使用したすべての細胞株を、MycoAlert(Lonza)を使用してマイコプラズマ陰性であると確認した。STRプロファイリングもまた、使用したヒト細胞株の同一性を確認するために実施した。
【0112】
IncuCyte細胞毒性試験
4つの癌細胞株(A431、MM649(ヒト黒色腫)、FaDu(HNSCC)およびMM415(ヒト黒色腫))を、エポキシチグリアン処理へのそれらの応答について評価した。細胞を、透明な底面の黒色96ウェルプレート(Corning, #3603)内で1ウェル(100μlの完全培地)あたり10,000細胞の密度で平板培養した。24時間のインキュベーション後に、各ウェル内の培地を、吸引し、そして、1μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)を含む50μlの新しい培地で置換した。4つのエポキシチグリアン(化合物1、2、3および4)のストック溶液(エタノール中に20mg/ml)を、同一培地中に2×最終アッセイ濃度(1mM)に希釈し、そして、移動に備えてU底面96ウェルプレート内に導入した。50μlの希釈物を必要なウェルに加え、そして、得られたプレートを、画像化に備えてEssen Biosciences IncuCyteに導入した。画像を、合計24時間にわたり、様々な時点(30分、1時間および1時間間隔)で取得した。
【0113】
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出試験
LDHの放出の計測は、原形質膜の透過化を評価し、そして、壊死による細胞死を検出するためのよく認識されたアッセイである(Chan et al. 2013)。3つの細胞株(A431、MM649およびB16−OVA)をこれらのアッセイで使用した。細胞を、透明な96ウェルプレート(Corning, #3595;100μlの完全培地)内で1ウェルあたり10,000細胞の密度で平板培養し、そして、得られたプレートを先に詳述したとおり一晩インキュベートした。翌日、培地を各ウェルから吸引し、そして、50μlの新しい培地を導入した。化合物1のストック溶液を、2×最終アッセイ濃度(1mMと600μM)に希釈し、そして、50μlのこれらの希釈物を必要なウェルに加えた。エタノールのみの対照溶液もまた、コンパイルし、そして、投与した。示した時点にて、50μlの培地を取り出し、そして、Pierce LDH細胞毒性試験キット(ThermoFisher Scientific)を使用してLDH放出についてアッセイした。OD490nmおよびOD690nm測定値を、Hybrid Synergy H4プレートリーダを使用して、各サンプルについて記録した。薬物処理サンプルからの吸光度測定値を、界面活性剤処理対照に対して正規化して、ウェル毎の%LDH放出を決定した。
【0114】
細胞内ATPアッセイ
細胞内に存在するATP量を定量する発光ベースのアッセイであるCellTiter-Glo(登録商標)2.0アッセイキット(Promega Corporation)を、2種類の濃度(300μMと500μM)の化合物1に晒したA431およびMM649の培養物における細胞内ATP量を測定するのに使用した。また一方で、細胞を、透明な底面の黒色96ウェルプレート(100μlの完全培地)内で1ウェルあたり10,000細胞の密度で平板培養し、37℃、5%のCO
2にて一晩インキュベートした。アッセイ時点で、培地を各ウェルから吸引し、50μlの新しい培地を導入した。化合物1のストック溶液を、2×最終アッセイ濃度(1mMと600μM)に希釈し、そして、50μlのこれらの希釈物を必要なウェルに加えた。エタノールのみの対照溶液もまた、コンパイルし、そして、投与した。示した時点にて、確実に細胞を乱さないように穏やかに培地を取り出し、そして、100μlのCellTiter-Glo(登録商標)2.0試薬を加えた。得られたプレートを、オービタル振盪機により2分間混合して、細胞分解を引き起こした後に、それを暗所内で10分間インキュベートした。これに続いて、各ウェルの発光シグナルを測定した。化合物処理ウェルからの発光シグナルを、ビヒクル処理ウェルに対して正規化し、そして、時間に対する%細胞内ATPとして表した。
【0115】
IncuCyteから取得した画像は、500μMの化合物1、2、3および4で処理した4つの細胞株すべて(A431、FaDu、MM649およびMM415)の細胞の大部分で120分後に強い赤色染色を示した。ビヒクルだけで処理した細胞の染色は存在せず、原形質膜完全性の損失が、化合物1で処理した細胞に限られることを確認した。加えて、顕著な細胞質膨張および「水疱形成」もまた、さまざまな程度および様々な発症動態であるが、化合物1、2、3および4で処理したすべての細胞でも観察された。
【0116】
LDHの放出を評価し、および細胞内のATP量を評価するためのアッセイからの結果を、
図3Aおよび3Bにそれぞれ示す。対照と比較し、試験した化合物1の両方の濃度(300μMと500μM)にて処理した3つの癌細胞株のすべてからのLDHの有意な放出があった(
図3A)。細胞内ATP量は、500μMの化合物1で処理した後に非常に急速に減少し、そして、60分後にほとんど検出できなかった(
図3B)。300μMの化合物1では、細胞内のATPは、破滅的なほどではないが、500μMの濃度の化合物1に比べて、よりゆっくりと減少し、120分後に前処理レベルの約50%であった(
図3B)。ATP減少は、すでに腫瘍症の誘導に関連している(Kim et al. 2003)。
【0117】
これらの結果は、エポキシチグリアン化合物が、治療関連濃度(すなわち、インビボにおける出血性壊死の誘導に有効な濃度)にて腫瘍症を誘発することを実証する。
【0118】
実施例4:化合物1および他のエポキシチグリアンによって誘導された腫瘍症は、免疫原性細胞死の特徴を示す
免疫原性細胞死(ICD)は、損傷関連分子パターン(DAMP)と呼ばれる伝達物質の放出または細胞外化をもたらす特定のタイプの制御された細胞死であり、そしてそれは、樹状細胞/マクロファージによって発現される受容体と相互作用して、それらの動員を促進し、かつ、腫瘍抗原の取り込み/T細胞に対する提示を刺激する。ICDは、癌に対する免疫系の活性化のための代表的な経路である。ICDの生化学的に顕著な特徴としては、死滅細胞表面におけるカルレチクリン(CALR)および他の小胞体/ミトコンドリアタンパク質の曝露、および細胞外環境へのATPおよび高移動度グループボックス1(HMGB1)の大量放出が挙げられる(Kroemer et al. 2013)。これらのパラメーターは、ICDを引き起こすための化学療法薬(ドキソルビシン、ミトキサントロン、オキサリプラチンおよびボルテゾミブを含む)の能力について精密予測するのに使用した(Kroemer et al. 2013; Galluzzi et al. 2017)。これらの特徴を誘導するエポキシチグリアンの能力を以下で詳述する。
【0119】
細胞株、試薬および培地
A431(ヒト類表皮癌A431細胞)、MM649(ヒト黒色腫)およびB16−OVA(ニワトリオボアルブミンで安定的にトランスフェクトしたB16−F10マウス黒色腫細胞株)を、加湿インキュベータ内で37℃、5%のCO
2にてRPMI−1640、10%のFCS(完全培地)中で培養した。BMDCをR10培地(RPMI、10%のFCS、2mMのグルタミン、50μMのβ−メルカプトエタノール、Pen/Strep)中で培養した。この試験に使用したすべての細胞株を、MycoAlert(Lonza)を使用してマイコプラズマ陰性であると確認した。STRプロファイリングもまた、使用したヒト細胞株の同一性を確認するために実施した。
【0120】
ATP放出試験
細胞株を、透明な96ウェルプレート(Corning, #3595;100μlの完全培地)内で1ウェルあたり10,000細胞の密度で平板培養し、そして、得られたプレートを先に詳述したとおり一晩インキュベートした。翌日、培地を各ウェルから吸引し、そして、50μlの新しい培地を導入した。化合物1、2、3および4のストック溶液を、2×最終アッセイ濃度(1mMと600μM)に希釈し、そして、50μlのこれらの希釈物を必要なウェルに加えた。エタノールのみの対照溶液もまた、コンパイルし、そして、投与した。示した時点にて、80μlの培地を取り出し、1,200rpmにて4分間遠心分離して、細胞破片をペレット化し、そして、生物発光ベースのATPアッセイキット(FLAA, Sigma-Aldrich)を使用して、ATPについて、50μlをアッセイした。相対発光単位を、Hybrid Synergy H4プレートリーダ(BioTek)を使用して、各サンプルについて記録した。
【0121】
HMGB1放出アッセイ
細胞株(A431、MM649およびB16−OVA)を、T75cm
2フラスコ(Nunc)内、10mlの完全培地中で平板培養し、そして、それらが90%集密に達するまで、37℃、5%のCO
2にて培養した。化合物1、2、3および4を、5mlの同一培地中で500および300μMの終濃度まで希釈し、次に、細胞に投与した。薬物処理に反応したHMGB1放出の速度論的カーブが確立され得るように、数個のフラスコを調製した。エタノールのみの対照もまた作製した。必要な時点にて、培地を、フラスコから5分間氷上に置いた10mlのポリプロピレンチューブ内に取り出した。細胞培養上清を、1,200rpmにて4分間遠心分離して、細胞残屑を取り除き、その後、4.5mlの上清を、濃縮器スピンカラム(Amicon(登録商標)Ultra50kDa排除膜、Merck)に導入して、FCSを取り除いた。次に、このカラムからの流出物を、別の濃縮カラム(Amicon(登録商標)Ultra10kDa排除膜、Merck)に導入し、そして、3,500rpmにて遠心分離して、ELISA(SEA399Hu/SEA399Mu, Cloud-Clone Corp)によるアッセイ前に、HMGB1を濃縮した。OD450nm値を、Hybrid Synergy H4プレートリーダ(BioTek)を使用して測定した。薬物処理サンプルからの吸光度値を、ビヒクル処理サンプルに対して正規化して、エポキシチグリアン処理に反応したHMGB1放出の倍率増加を決定した。
【0122】
カルレチクリン細胞外化アッセイ
カルレチクリン細胞外化を、先に詳述したとおり決定した(Gomez-Cadena et al. 2016)。簡単に言えば、完全培地中で37℃、5%のCO
2にて培養した細胞(A431、MM649、B16−OVA)を、トリプシン処理によって剥離し、1,200rpmにて遠心分離し、そして、新しい培地で2回洗浄した。さらに1ラウンドの遠心分離後に、得られた細胞ペレットを、1×10
6細胞/mlの濃度にて再懸濁し、そしてその後、エポキシチグリアンを、500または300μMの終濃度まで加えた。エタノールのみの対照もまた実施した。細胞懸濁液を、37℃、5%のCO
2にてインキュベートし、そして、示した時点にて、200μlのサンプルを、LIVE/DEAD定着性遠赤染色剤と共に氷上にて5分間インキュベートした。これに続いて、細胞を、1,200rpmにて4分間ペレット化し、PBSで1回洗浄した。次に、500μlのPBS、0.25%のホルムアルデヒドを各ペレットに加えて、原形質膜の完全性を損なうことなく光固定を実施した。これに続いて、細胞をPBSで1回洗浄し、そして、抗カルレチクリン(ab2907, Abcam、1:50希釈)を含有した100μlのPBS、1%のBSA、2mMのEDTA(FACバッファー)を加えた。室温にて1時間のインキュベーション後に、細胞を、1,200rpmにて4分間遠心分離し、そして、1:750の抗ウサギAlexa488を含有した100μlのFACバッファーとの室温にて1時間のインキュベーション前に、FACバッファーで1回洗浄した。細胞を、再びペレット化し、次に、フローサイトメトリーに備えて500μlのFACバッファー中に再懸濁した。
【0123】
サンプルを、最初にFSC−H対FSC−Aによってゲート選別して、単独細胞を同定し、そしてその後、LIVE/DEAD染色(Ex:640nm、Em:670/14)陰性(無傷細胞)集団を、緑色蛍光(Ex:488nm、Em:530/30、カルレチクリン細胞外化)について分析した。平均蛍光強度値を、それに続いて決定し、そして、時間に対してグラフ化した。
【0124】
結果は、エポキシチグリアン化合物によって誘導された急性腫瘍症もまた、ATP(
図4Aおよび4B)、HMBG1(
図4C)およびカルレチクリン(
図4D)を含めた重要なDAMPの放出/細胞外化を伴った免疫原性細胞死の特徴を引き起こした。両濃度の化合物1(
図4A)ならびに化合物2、3および4(
図4B)で処理した3つの癌細胞株のすべてで60分以内にATPの有意な遊離があった。これらの化合物もまた、癌細胞株からのHMGB1の放出を促進した。処理細胞のELISAアッセイ値をビヒクル処理細胞に対して正規化して、倍率増加を決定した後に、化合物1は、A341およびMM649細胞に関して最大40%(
図4Ciと4Cii)およびB16−OVA細胞に関して3倍超(
図4Ciii)、120分以内にHMBG1放出を増強することを示した。化合物2、3および4もまた、B16−OVA細胞に対してアッセイし、そして、120分後にこの細胞株からのHMBG1放出の最小2倍の増大を示した(
図4Civ)。化合物1での3つの細胞株の処理後のカルレチクリン細胞外化に関するデータは、処理の60分以内の平均蛍光強度の有意な増大を示した(
図4D)。斯かるDAMPの放出/細胞外化は、抗原提示細胞の動員を促進し、癌細胞関連抗原の効果的な取り込みを刺激し、およびT細胞サブセットに対する提示を刺激することが知られている(Kolaczkowska & Kubes, 2013)。
【0125】
実施例5:エポキシチグリアン処理した癌細胞からの断片は、CD11c
+骨髄由来細胞集団によって取り込まれる
CD11cは、DC/マクロファージの十分に説明されたマーカーである(Merad et al. 2013)。免疫原性応答の発生を促進する抗癌剤の能力(およびそれらが引き起こす関連死滅プロセス)を調査するための一つの方法は、それらがCD11c
+樹状細胞/マクロファージによる細胞成分の取り込み、ならびに本物の抗原提示細胞(APC)へのそれらのその後の成熟につながるかどうか決定するためのものである(Guermonprez et al. 2002)。ここで、我々は、化合物1および関連エポキシチグリアンによって誘導された腫瘍症が、斯かる細胞による死滅癌細胞成分の取り込みにつながることを実証する。
【0126】
骨髄由来細胞(BMDC)の分離と培養
最初に、4匹の7〜8週齢のC57Bl/6マウスからの脛骨および腓骨を、無菌条件下で外科的に取り出した。髄を、(50mlのポリプロピレンチューブ内の27G針/シリンジを使用して)10mlの氷冷R10培地で骨小腔からフラッシュした。細胞を、1,500rpmにて5分間ペレット化し、そして、氷冷R10培地で2回洗浄した。10mlの氷冷R10培地中へのペレットの再懸濁後に、細胞を、改善した血球計算器を使用してカウントし、そして、20ng/mlのマウスGM−CSFを補充した10mlのR10中で、プレート(ペトリディッシュ)あたり2×10
6細胞の密度で平板培養した。すべてのプレートを、37℃、5%のCO
2にてインキュベートし、そして、3日目に、20ng/mlのGM−CSFを含む追加の10mlのR10を加えた。細胞を、6日目に再び培養し、そして、7日目に下流のアッセイに使用した。
【0127】
BMDC取り込み実験
BMDCとの同時インキュベーション前に、B16−OVA細胞を、トリプシン処理し、1,200rpmにて4分間遠心分離して、細胞をペレット化し、そして、完全培地で2回洗浄した。次に、細胞を、完全培地中の2μMのCell Tracker Greenで45分間染色し、そしてその後、それらを、ペレット化し、そして、上述のとおり2回洗浄した。標識したB16−OVA細胞を、それに続いて、1×10
6細胞/mlの密度にて、培地中で2つの濃度(500または300μM)の化合物1、2、3および4で30および60分間処理し、そしてその後、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清を吸引によって取り除き、そして、細胞ペレットを、完全培地で1回洗浄した。洗浄後に、処理した細胞を、R10培地中に再懸濁し、6ウェルプレート(Corning, #3471 超低接着表面)のウェルに導入し、そして、BMDCを加えた。共培養物を、4時間インキュベートし、そしてその後、細胞懸濁液を、マイクロチューブに移し、1,500rpmにて5分間遠心分離した。ペレットを、抗CD11c−APCを含有する100μlのFACバッファー中に再懸濁し、4℃で10分間インキュベートした。細胞を、再びペレット化し、FACバッファーで1回洗浄し、次に、PBS、1%のホルムアルデヒドを使用して10分間、固定した。遠心分離および上清の除去後に、細胞を、フローサイトメトリーに備えて、500μlのFACバッファー中に再懸濁した。
【0128】
サンプルを、最初に、FSC−H対FSC−A、次にSSC−H対SS−Aによってゲート選別して、単独細胞を同定した。次に、CMFDA
mid(Ex:488nm、Em:530/30)を有するCD11c
+細胞(Ex:640nm、Em:670/14)の割合を、全CD11c
+細胞に対するパーセンテージとして、処理細胞および未処理細胞について決定した。
【0129】
結果(
図5Aおよび5B)は、化合物1によって引き起こされた腫瘍症が、CD11c
+樹状細胞/マクロファージによる死滅癌細胞断片の取り込み(すなわち、有効な取り込み)を促進することを示す。この取り込みは、500μMの化合物1での、抗原取り込みは、300μMの使用と比較して、より短い処理時間後に、より大規模まで起こるといったように、化合物1の濃度および処理時間の両方に依存しているように思われる。これは実施例3で観察された腫瘍症の動態と一致している。
図5Cは、化合物2、3および4もまた、インビトロにおいて免疫原性である細胞死反応を引き起こす、すなわち、CD11c
+BMDCによる取り込みを促進する、ことができることを実証する。
【0130】
実施例6:免疫チェックポイント阻害剤と化合物1の組み合わせ
免疫チェックポイント阻害剤療法、特にT細胞免疫抑制(例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)またはプログラム死1(PD−1)およびそのリガンドPD−L1)にかかわるそれらの受容体を標的化する治療法は、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌および頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)を含めた数タイプの後期癌において、大いに改善された患者転帰を有する(Msaouel & Massarelli 2016; Sharma & Allison 2015)。しかしながら、これらのICI薬物に対する初代およびデノボ抵抗性は、大きな医療問題である。さらに、大規模な臨床経過観察は、一部の黒色腫患者が、治療に対する抵抗性を発症し、かつ、疾患再発を経験していることを示した(O’Donnell et al., 2017)。ICIと(特に、腫瘍実質部(tumour paracheyma)への免疫細胞浸潤および抗原の取り込み/提示の増強をもたらす)免疫原性細胞死を促進することよってアジュバントとして作用し得る化合物とを組み合わせる治療法は、ICIのいくつかの限界を克服し、かつ、総合的な臨床成果を改善することが期待できる(Workenhe et al. 2014; Ribas et al. 2017)。ここで、および実施例7では、データでは、ICIと化合物1の病巣内注入の組み合わせを検討する。
【0131】
実験的アプローチの図解を
図6Aに示す。簡単に言えば、6〜7週齢のC57BL/6マウスに、B16−F10−OVAマウス黒色腫細胞(100μl中に1部位あたり2×10
5細胞)を両側腹部に皮下(s.c.)注射した。腫瘍を、約5〜50mm
3まで増殖させ、そしてその後、200μgの抗PD−1(RMP1-14, BioXCell)、抗CTLA−4(9H10, BioXCell)またはアイソタイプ対照抗体(2A3およびSyrian Hamster IgG, BioXCell)を、マウス毎にi.p.注射した(−2日目)。0日目に、両腫瘍に、化合物1(50μL中に15μg)またはビヒクル(Vehc.)のみのいずれかをI.T.注射した。各マウスには、−2日目(再び200μg)に投与したのと同じ抗体の追加のi.p.注射を投与した。抗体を、2日毎にi.p.注射によってさらに3回投与した。処理した腫瘍の体積を、以前に詳述したようにノギスを使用して計測し(Boyle et al. 2014)、およびマウス生存率を経時的に測定した。
【0132】
図6Bおよび6Cに示した結果は、化合物1は、抗のPD−1と抗CTLA−4に組み合わせられて、腫瘍の増殖を制限し、そして、単剤処理に比べ、より大きな程度までマウス生存率を改善し得ることを示した。この効果は、それぞれの化合物1/ICI組み合わせにおいて濃度依存であると思われる。例えば、抗PD−1と一緒の30μgの化合物1の注射は、30μgの化合物1単独の使用と比較して、改善した生存率/低減したの腫瘍増殖につながる(
図6Biii、iv)。これは、15μgの化合物1が同じ組み合わせで使用されたときには、観察されなかった、すなわち、生存率または腫瘍増殖の改善がなかった(
図6Bi、ii)。抗CTLA4が使用されたとき、状況が回復され、ここで、複合療法における15μgの化合物1(
図6Ci、ii)が最適の応答をもたらし、30μgの化合物1はそれをもたらさない(
図6Ciii、iv)。
【0133】
実施例7:免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて化合物1を使用したときの未処理部位への効果(Abscopal Effects)の観察
実験的アプローチの図解を
図7Aに示す。簡単に言えば、6〜7週齢のC57BL/6マウスに、B16−F10−OVAマウス黒色腫細胞(100μl中に1部位あたり2×10
5細胞)を両側腹部にs.c.注射した。腫瘍を、約5〜50mm
3まで増殖させ、そしてその後、200μgの抗PD−1(RMP1-14, BioXCell)、抗CTLA−4(9H10, BioXCell)またはアイソタイプ対照抗体(2A3, BioXCell)を、マウス毎にi.p.注射した(−2日目)。0日目に、2つの腫瘍のうちの最大のもの(約50〜75mm
3)を、化合物1(50μL中に15μg)またはビヒクル(Vehc.)のみのいずれかをI.T.注射した。残った腫瘍を未処置のままにし、そして、各マウスには、−2日目(再び200μg)に投与したのと同じ抗体の追加のi.p.注射を投与した。抗体を、2日毎にi.p.注射によってさらに3回投与した。処理および未処理の腫瘍の体積を、以前に詳述したように実験期間中に計測した。
【0134】
結果を
図7Bに示す。結果は、抗体と化合物1の組み合わせで処理した腫瘍が効果的に縮小されるだけでなく、一部の未処理の隣接腫瘍もまた、いずれかの剤単独では観察されなかった併用療法に対する応答を示すことを示した。
【0135】
実施例8:骨髄由来サプレッサ細胞は、化合物1の低用量有効性に影響を及ぼし得る
骨髄由来サプレッサ細胞(MDSC)は、複数の経路を介して腫瘍に対する宿主免疫反応を抑制し得る未成熟骨髄細胞である(Qu et al. 2016)。我々は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)ノックアウトC57BL/6マウスを使用して、MDSC動員および機能に関係するタンパク質(例えば、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO))を阻害または遮断する分子と化合物1が関与する、可能性のある併用療法についてさらなる可能性を評価するためのモデルを提供する。好中球の産生および輸送の必須調節因子であるGCSFはまた、MDSCの遊走および増殖における重要役割も担う(Li et al. 2016)。我々のGCSFRノックアウトモデルを使用して、MC38結腸直腸腺癌(colorectal adenocarincomas)に対する化合物1の(準最適用量での)単独療法の有効性を制限する際の顆粒球由来MSDCの可能性のある役割を調査した。
【0136】
簡単に言えば、6〜7週齢のwt C57BL/6およびgcsfr
-/-マウスに、MC38マウス大腸癌細胞(100μl中に1部位あたり1×10
6細胞)を両側腹部にs.c.注射した。腫瘍を、約5〜50mm
3まで増殖させ、そしてその後、15μgの化合物1またはビヒクル(Vehc.)をI.T.注射した(50μl)。処理した腫瘍の体積を、実施例6および7で先に詳述したように観察した。野性型(wt)とGCSFRノックアウトマウスにおける化合物1を注射した腫瘍の腫瘍サイズと生存率の比較を、
図8に見ることができる。
【0137】
顆粒球動員におけるGCSFRの役割を考えると、これらのデータは、斯かる免疫細胞浸潤が、既知の準最適用量(15μg)での化合物1の抗癌有効性を制限している可能性があることを示唆している。これにより、斯かる免疫抑制細胞集団の発生を予防する化合物(例えば、IDO阻害剤)と化合物1または類似体の組み合わせは、より良い抗癌有効性および患者生存率の改善につながり得る。
【0138】
本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、多くの修飾がなされ得ることは、本発明の技術分野の当業者に理解されるであろう。
【0139】
参照文献
本明細書において、先行技術の文献が参照される場合、斯かる参照は、その刊行物が、オーストラリア又は他のいずれの国においても当該技術分野における一般常識の一部を形成することを承認する役割を担わない。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】