特許第6905114号(P6905114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905114
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】スケーラブルなバイオ素子分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/11 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   G01N21/11
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-24192(P2020-24192)
(22)【出願日】2020年2月17日
(62)【分割の表示】特願2018-153076(P2018-153076)の分割
【原出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2020-101557(P2020-101557A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年3月18日
(31)【優先権主張番号】61/667,930
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/791,967
(32)【優先日】2013年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ディモフ,イヴァン,ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベーア,トーマス,エム.
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−503779(JP,A)
【文献】 特表2009−529658(JP,A)
【文献】 特表2009−540270(JP,A)
【文献】 特表2005−501217(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068088(WO,A1)
【文献】 特表2008−536663(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0005111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロキャビティアレイ中の選択されたマイクロキャビティから、生物学的素子を含む液体試料溶液を抽出する方法であって、前記アレイ中の各マイクロキャビティが、電磁放射吸収性材料と関連付けられ、前記方法が、
電磁放射源を提供することであって、前記電磁放射源の電磁放射発光スペクトルが、各マイクロキャビティ内の前記電磁放射吸収性材料の吸収スペクトルと少なくとも部分的に重複する、ことと
前記電磁放射吸収性材料を膨張させるために、電磁放射を前記選択されたマイクロキャビティに集束させることであって、それにより、前記選択されたマイクロキャビティから前記生物学的素子を含む前記液体試料溶液の少なくとも一部を排出する、ことと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記電磁放射吸収性材料は、各マイクロキャビティの少なくとも一部を被覆するか又は覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電磁放射吸収性材料は、各マイクロキャビティを覆うか又は各マイクロキャビティの側壁に接着される膨張材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体試料溶液の漏れを防止するために、前記電磁放射を集束させる前に、各マイクロキャビティの一端部を覆うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アレイ内の各マイクロキャビティは、約1〜500マイクロメートルの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電磁放射は、各マイクロキャビティの直径よりも小さいかまたはほぼ同じスポットサイズ直径を有するレーザーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的素子を含む液体試料溶液の前記一部は、吸湿性捕捉表面に排出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記吸湿性捕捉表面は、吸湿性材料層を有する光学表面を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記吸湿性材料層は、前記光学表面を変形させない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記吸湿性材料層は、グリセロールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電磁放射吸収性材料は、不透明な複数の粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の粒子は、少なくとも10%の吸収効率を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電磁放射吸収性材料は、前記マイクロキャビティに加えられる力に応答する複数の粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の粒子は、前記力の加えにより前記マイクロキャビティの表面に堆積される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記力は、重力、磁力、電気力、遠心力、対流力および音響力からなる群から選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記電磁放射吸収性材料は、結合剤により機能化される複数の粒子を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[01] 本出願は、2013年3月9日出願の米国仮特許出願第13/791,967号及び2012年7月3日出願の米国仮特許出願第61/667,930号の優先権を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[02](技術分野)
[03] 本発明は、試料又は一連の試料の1つ又は複数の分析物の検出に関する。特に、本発明は、生物学的素子の集団中で生物学的細胞などの1つ又は複数の生物学的素子を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[04](従来技術)
[05] 生物学的ライブラリは、従来の技術を使用して、例えば細胞、抗体、タンパク質、ペプチド及び核酸などを含有する成分をスクリーニングすることができる。これらの技術には、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、酵母、バクテリアディスプレイ、in vitro区画化(in vitro compartmentalization)、マイクロエングレービング及び空間アドレッシングが含まれる。このようなシステムには幾つかの短所がある。例えば、セレクション工程(例えば「パニング」を含む)を反復することにより所望のクローンを濃縮する必要があり、それは本質的に潜在的な結合候補の損失をもたらす。従来の技術を使用すると、正の信号の正確な起源を特定することも困難である。何故なら、解析することができない不均質な集団から混合した信号を得るからである。通常、これらの技術は、バクテリオファージ、リボソーム及び特異的細胞を使用するセレクションプロセスを含み、その大部分はin vitroで実行する。
【0004】
[06] ライブラリのスクリーニングが改善されたことにより、セレクションプロセス中にスクリーニングした成分のアイデンティティを維持するための空間アドレッシングという概念が導入された。このようなアドレッシングは、ロボット工学、酵素結合免疫吸着検定法、又は細胞ベースアッセイに基礎を置くことができる。空間アドレッシングは、例えば特定の細胞クローンを識別してマスタ株を生成することができるが、これらの方法では、病気診断及び治療に迅速に適用するために識別されたクローンを選択的に分離し精製するハイスループットのスクリーニング技術が促進されない。このスクリーニングアッセイの別の短所は、これが通常は約5万〜10万個の細胞数に制限されることである。
【0005】
[07] 細胞に基づくスクリーニングを実行するために、特に問題となることの一つは、その後のスクリーニング手順が可能になる方法で、小集団の細胞を分離することである。細胞を分離する従来のデバイス及び方法では、細胞の機能又は活性を修飾する可能性があるステップを実行せずには、小集団の細胞の分離が十分に提供されない。細胞分離は、スクリーニングのみで重要なのでなく、小集団の細胞の細胞活性又は機能(例えば抗体産生)の出力のモニタ、測定及び/又は使用に関連するプロセスでも重要である。
【0006】
[08] したがって、背景集団から特定の細胞小集団を分離する必要性は、病理学、臨床診断、クローニング、及び細胞生物学の研究に広く必要とされる。現在のスクリーニング方法には幾つかの技術的問題がある。例えば、ディスプレイするタンパク質のサイズを小さくしなければならないこと、多様性の喪失を回避するために、感染多重度(MOI)を高くする必要があること、ファージの活性に依存すること、複数のパニングラウンドが必要であること(最大1週間かかる)、ファージによる高度に非特異的な結合、可溶性形態中で抗体が良好に機能しないことがあること(切断型クローンが発現することが多い)、及び/又は結合活性効果が高親和性クローンのセレクションを妨害することがあることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[09] したがって、本発明の発明者は、生物学的集団の成分を識別、分離及び特徴付けるさらに効率的なプロセスに対する要求が当技術分野にあることを突き止めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[010] 一態様では、本発明は試料中の分析物を検出する方法を指向する。該方法は、一部は、試料を含む容器の検出表面を通して電磁放射が試料の内外に透過するのを部分的又は完全に阻止する試料中の微粒子の能力を利用する。一実施形態では、上記方法は、試料溶液を含む反応容器に、第一粒子、及び電磁放射を放出する第一標識を加えることを含み、第一標識は第一粒子に結合しているか、又は試料中の分析物の存在又は不存在の結果として第一標識が第一粒子に結合する。第一粒子は第一検出表面に堆積し、電磁放射が表面を通って試料の内外に透過することを阻止する。第一検出表面から放出される電磁放射の存在又は量が検出される。第一粒子は、試料に加えられる力の結果として、検出表面に堆積させることができ、力は重力、磁力、電気力、遠心力、対流力及び音響力から選択される。一態様では、標識は粒子に結合し、試料中の分析物の存在又は不存在の結果として解放される。
【0009】
[011] 別の実施形態では、本発明の方法は、電磁放射を放出する第二標識と、少なくとも形状、サイズ、密度、透磁率、電荷、及びオプティカルコーティングに基づき第一粒子とは異なる第二粒子とを容器に加えることを含み、第二標識は第二粒子に結合しているか、又は試料中の第二分析物の存在又は不存在の結果として第二標識が第二粒子に結合する。第二粒子は第二検出表面に堆積し、電磁放射が第二検出表面を通って試料の内外に透過することを阻止する。第二検出表面から放出される電磁放射の存在又は量が検出される。本実施形態の様々な態様では、第一粒子は、第一力の結果として第一検出表面に堆積し、第二粒子は、第二力の結果として第二検出表面に堆積し、第一力及び第二力は、力は重力、磁力、電気力、遠心力、対流力及び音響力から個別に選択され、第一力及び第二力は、同時に又は順番に試料に加えられる。あるいは、第二粒子は第一検出表面に堆積させて、電磁放射が第一検出表面を通って試料の内外に透過することを阻止することができ、第一粒子は、第一力の結果として第一検出表面に堆積し、第二粒子は、第二力の結果として第一検出表面に堆積し、第一力及び第二力は、重力、磁力、電気力、遠心力、対流力及び音響力から個別に選択され、第一力及び第二力は試料に順番に加えられる。第一粒子及び第二粒子から放出される電磁放射の存在又は量を第一検出表面で検出することができる。
【0010】
[012] さらに、本発明は、生物学的素子の不均質集団から標的生物学的素子を検出する方法を指向する。該方法は、生物学的素子の不均質集団をアレイ状のレセプタクルに分配することと、活性化すると電磁放射を放出する第一標識及び粒子をアレイに加えることとを含み、第一標識は第一粒子に結合しているか、又は試料中の分析物の存在又は不存在の結果として、第一標識が第一粒子に結合し、さらに、各レセプタクル中で試料の表面に粒子を堆積させるために、力をアレイに加えることと、レセプタクルから放出される電磁放射の存在又は量を識別し、それによって標的生物学的素子を含むレセプタクルを識別することとを含む。アレイ状のレセプタクルは、約1〜約500マイクロメートルの直径を有して長手方向に融合する複数のキャピラリを有するマイクロキャビティアレイとすることができる。さらに、アレイは、1平方センチメートルのアレイにつき約300個〜64,000,000個のキャピラリを有することができる。試料は、各レセプタクルにわずか単一の生物学的素子しか導入しないように意図された濃度で、アレイに加えることができる。
【0011】
[013] 本発明の様々な実施形態では、容器又はレセプタクルは、マイクロキャビティ中に試料溶液のメニスカスである検出表面を有するマイクロキャビティである。試料は、試料溶液中で粒子を移動させる磁界を印加することによって混合することができ、粒子は磁性である。
【0012】
[014] また、生物学的素子は、生体、細胞、タンパク質、核酸、脂質、糖、代謝産物、又は小分子とすることができる。例えば、細胞は酵素又は抗体などの組換えタンパク質を産生する。
【0013】
[015] さらに、本発明は、マイクロキャビティアレイ中の電磁放射吸収性材料を伴う単一のマイクロキャビティから生物学的素子を含む溶液を抽出する方法を指向する。該方法は、材料又は試料の膨張、又はマイクロキャビティから試料の少なくとも一部を放出する試料の蒸発を生成するために、電磁放射をマイクロキャビティに集束させることを含む。様々な実施形態では、材料はマイクロキャビティ中の粒子を含むか、又は材料は少なくとも部分的にマイクロキャビティをコーティングするか又は覆う高熱膨張率の材料である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[016]本明細書で開示する方法の代表的実施形態の略図である。
図2】[017]本開示により使用した通りの高密度アレイの一実施形態の例を示す。
図3】[018]分析物及び他の生物学的素子を含む試料溶液をアレイコンテナに加える又は装填する一実施形態を示す。
図4】[019]信号を生成するポアを走査及び識別する方法の一実施形態を示す。これらのポアは、ポアの検出表面に標識した粒子が堆積するために、高強度スポットとして現れる。サンドイッチアッセイのように、本明細書の実施形態にある1つのアッセイ設計では、抽出し、さらに調製するために、強力な信号を有するポアを選択する。酵素活性アッセイのように、本明細書の実施形態にある別のアッセイ設計では、強力な信号を有するポアを選択しない。代わりに、最小量の信号を示す、又は信号がないポアを選択する。
図5】[020]粒子が、粒子に結合していない溶液中の標識からの信号を阻止する能力を示す。
図6】[021]本明細書で開示するように、タンパク質結合及び検出アッセイをポア中で直接実行できることを示す。この実施形態では、アレイのポアはすべて、蛍光標識(Atto 590)したストレプトアビジン、及びビオチン(パートA:ポジティブコントロール)及びオリゴ(dT)25(パートB:ネガティブコントロール)でコーティングした磁気ビーズを含む。
図7】[022]単細胞レベルで開示した方法の特異性を実証する。この実施形態では、アレイのポアはすべて、組換えタンパク質GFPを発現する大腸菌細胞を含む。各ウェルは、ウサギの抗GFP抗体(ポジティブコントロール)でコーティングした磁気ビーズ、及びオリゴ(dT)25(ネガティブコントロール)でコーティングした磁気ビーズも含む。
図8】[023]本明細書で開示する方法が、分析物検出に細胞溶解を必要としないことを実証する。これらの実施形態では、組換えタンパク質GFPを発現する大腸菌細胞をアレイに装填した。各ウェルは、これもウサギ抗GFP抗体に結合する蛍光標識(Atto 590)を含む。ポジティブコントロールの2つのウェルは、抗GFP抗体に結合した磁気ビーズを含んでいるが、一方のアレイの細胞は、検出前に音波処理を使用して溶解した。ネガティブコントロールのアレイは、音波処理を使用して溶解して、オリゴ−dTビーズを含み、これは一般にアレイの全ポアからの信号を阻止する。
図9】[024]単一のポア抽出の1つの方法の略図である。
図10】[025]細胞を妨害せずに、細胞を含むアレイに試薬、粒子、又は他の分子を加える、又はそこから取り去ることができることを実証する。予め装填したHEK293細胞を妨害せずに、ヨウ化プロピジウム(PI)をマイクロポアアレイに装填した。パートA:最少の背景信号をPIに装填する前。パートB:見えないHEK293細胞の核に挿入されたPIを装填した後。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[026] 本発明は、試料中の分析物を検出する方法、装置、及びキットを指向する。様々な実施形態では、本発明は、生物学的素子の部分集団又は単一の素子の有無に関して生物学的素子の大集団をスクリーニングすることを指向する。本発明を使用して、数百又は数十億の生物学的素子の不均質集団から特異的相互作用を発見、特徴付け、及び選択することができる。
【0016】
[027] 本発明は生物学的アッセイ技術を使用し、そこでは機能化した粒子が試料容器の表面に堆積し、電磁放射の試料液内外への透過を一部又は完全に物理的に阻止する。特定の実施形態では、各キャビティ中の標識によって放出された電磁信号を検出することにより、高密度マイクロキャビティ、例えばマイクロポアのアレイをスクリーニングする。各キャビティが、各キャビティへの電磁(EM)放射の出入りを阻止することができる単一又は幾つかの生物学的素子及び微粒子を含むように配置されたアレイで、高感度を達成することができる。マイクロキャビティアレイ及び均質な粒子に基づくアッセイを使用することにより、本発明の方法は、スケーラブルな単細胞分析を提供する。この方法を使用して、大きい複雑な混合物中で細胞などの非常に希少な(10個中に1個)生物学的素子を発見することができる。
【0017】
[028] 本発明は、生物学的素子の集団をスクリーニングする他の方法に対して、幾つかの利点を提供する。第一に、数百、数十億、又はそれ以上の生物学的相互作用を並列で単純にスクリーニングすることができる。本発明によって、標的細胞などの分析物のディスプレイ及び個別的回収もできる。さらに、数十億のクローンについて濃度対親和性の情報も並列で提供する(例えば、発現した各遺伝子について、産生効率に関するフィードバックを提供することができる)。
【0018】
[029] 一実施形態では、マイクロキャビティアレイ(例えば多孔性ガラスアレイ)を使用して数千、数百万、さらには数十億個の細胞クローンの集団から、単一又は幾つかの細胞クローンなどの抗体産生性の生物学的細胞クローンの部分集団を選択する方法が開示される。一実施形態では、マイクロキャビティに、抗体(又は任意の当該のタンパク質)を含む生物学的細胞クローンを含有する溶液(例えば培養基)を充填する。細胞は増殖して、基質中に抗体を発現し、それは基質内の粒子に固定化された結合相手に反応し、それと結合することができる。抗原抗体複合体は、基質に蛍光試薬(例えば蛍光で標識した抗分析物抗体)を加えることによって検出することができる。
【0019】
[030] 一実施形態では、方法は、マイクロポアアレイから生物学的細胞を回収することを含む。一実施形態では、生物学的細胞は蛍光タンパク質を産生する細胞を含む。一実施形態では、生物学的細胞は、非蛍光タンパク質と融合する蛍光タンパク質を産生する細胞を含む。
【0020】
[031] 本発明は、任意のタイプの生物学的細胞を分離するために使用することができ、これにはタンパク質、炭水化物、酵素、ペプチド、ホルモン、受容体を発現又は産生する細胞株、抗体を産生する他の細胞株、遺伝子組み換え細胞、及び活性化細胞が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、様々な生物学的活性のスクリーニングに使用することができ、それには表面受容体タンパク質の発現、酵素産生、及びペプチド産生が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、様々な試験薬をスクリーニングし、所望の生物学的活性に対する試験薬の効果を判定することに使用することができる。分離しスクリーニングすることが望ましい他のタイプの細胞、検出することが望ましい他のタイプの生物学的活性、及びスクリーニングされる特定の試験薬は、当業者には容易に認識されよう。
【0021】
[032]定義
[033] 他に定義していない限り、本明細書で使用する技術的及び科学的用語は、当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書では、幾つかの用語を拡大し、明らかにする。本明細書で述べるすべての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、他に指示していない限り、参照により明示的に組み込まれる。
【0022】
[034] 本明細書で使用する単数形の「ある」及び「前記」は、文脈により明らかに他の意味が規定されていない限り、複数への言及も含む。
【0023】
[035] 本明細書で使用する「結合相手」、「リガンド」又は「受容体」という用語は、多数の異なる分子、又は凝集体のいずれかでよく、用語は区別なく使用される。様々な実施形態では、結合相手は検出される分析物と会合又は結合することができる。タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド)、抗体、糖、多糖、脂質、受容体、試験化合物(特にコンビナトリアルケミストリによって産生されるもの)は、それぞれ結合相手になり得る。
【0024】
[036] 「生物学的細胞」という用語は生体からの任意の細胞を指し、それにはウィルス、昆虫、微生物、真菌(例えば酵母)又は動物(例えば哺乳類)の細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
[037] 本明細書で使用する「生物学的素子」という用語は任意の生物反応性分子を指す。これらの分子の非限定的な例にはタンパク質、核酸、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、ホルモン、生物学的細胞、及び小分子が含まれる。
【0026】
[038] 「分析物」は通常、試料中の当該素子、例えば生物学的試料中の当該の生物学的素子を指す。
【0027】
[039] 本明細書で使用する「結合」又は「付着」という用語は、任意の物理的付着又は密接な会合を含み、これは永続的でも一時的でもよい。これらの付着又は密接な会合は相互作用でもよい。これらの会合の非限定的な例は水素結合、疎水性の力、ファンデルワールス力、共有結合及び/又はイオン結合である。これらの相互作用は、当該分子と測定中の分析物との物理的付着を促進することができる。「結合」相互作用は、例えば結合成分が酵素で分析物が酵素の基質である場合など、結合によって化学反応が起きる状況のように短時間でよい。
【0028】
[040] 結合剤と分析物との接触に由来する特異的結合反応もこの定義に入る。このような反応は、例えば抗体と例えばタンパク質又はペプチドとの相互作用の結果であり、したがって相互作用はタンパク質上の特定の構造(例えば抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存する。すなわち、抗体はタンパク質全般ではなく、特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。例えば、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、エピトープA(又は遊離標識なしA)を含有するタンパク質が標識された「A」を含む反応に存在すると、抗体に結合した標識付きAの量が減少する。例えばタンパク質とタンパク質の相互作用、タンパク質と小分子の相互作用、抗体と小分子の相互作用、及びタンパク質と炭水化物の相互作用など、他の分子間でも特異的結合相互作用が生じることがある。これらの相互作用はそれぞれ、細胞の表面で生じることができる。
【0029】
[041] 「アレイ」及び「マイクロアレイ」という用語は、区別なく使用され、概してサイズのみが異なる。様々な実施形態では、アレイは典型的に、ポア、ウェル、キャビティ、コンテナ又はレセプタクルに対する複数の(典型的には100個〜1,000,000個超の)明白な反応空間を含み、各容器は既知の位置にあって、単一又は無数の当該成分を含むことができる。
【0030】
[042] 本明細書で使用する「試料」という用語は、最も広い意味で使用され、環境及び生物学的試料を含む。環境試料には、土壌及び水などの環境からの材料が含まれる。生物学的試料は、ヒトなどの動物、流体(例えば血液、血漿及び血清)、固体(例えば糞便)、組織、液体食物(例えば牛乳)、及び固体食物(例えば野菜)とすることができる。例えば、肺の試料は気管支肺胞洗浄(BAL)によって採取することができ、これは肺組織に由来する流体及び組織を含む。生物学的試料は、細胞、組織抽出物、体液、染色体、又は細胞、ゲノムDNA、RNA、cDNAなどから分離した染色体外因子を含むことができる。
【0031】
[043]様々な実施形態の説明
[044] 試料中の分析物を検出する方法について開示する。該方法は、画定された検出表面を有する容器に、分析物、粒子、及び電磁放射を放出する標識を含有する試料溶液を加えることを含む。粒子は、容器に加えられた力の結果として、検出表面に堆積し、検出表面に堆積した粒子に付着できる標識以外の試料中の標識から信号が放出されるのを阻止することができる。試料中の分析物の有無は、粒子が容器の検出表面に堆積でき、及び/又は表面の粒子に結合できる標識が電磁放射を放出できるかを制御する。本発明は、当技術分野で知られる様々なアッセイフォーマットで使用することができる。
【0032】
[045] 一態様では、標識が粒子に結合しているか、又は標識中の分析物の存在又は不存在の結果として、標識が粒子に結合する。本開示のこの実施形態によれば、粒子は、分析物に結合した結合相手で機能化することができ、分析物は、サンドイッチ及び競合的免疫検定法のように当業者に周知のアッセイフォーマットで分析することができる。サンドイッチ法では、粒子は、分析物の結合相手で機能化され、信号(例えば蛍光部分)を放出できる部分を含む標識及び分析物の結合相手と混合される。標識は、分析物が粒子及び標識と結合した結果として、粒子と結合する。粒子上に標識が存在すると、標識中に分析物が存在することが示される。競合的検出フォーマットでは、分析物の結合相手を有する粒子、及び分析物の類似物である第二結合相手を含む標識が、試料と混合される。類似物は試料中の分析物と競合して、粒子上の分析物の結合相手と結合する。標識からの信号がないことは、試料中に分析物が存在することを示す。
【0033】
[046] 別のアッセイフォーマットでは、分析物は酵素であり、粒子は、標識として作用する酵素の基質で(例えば共有結合で)直接機能化される、又は酵素は、特異的又は非特異的結合、又は他の相互作用の結果として粒子に結合する。酵素/標識からの信号の有無は、標識を信号産生標識から非信号産生標識へ、又はその逆へと変換する分析物/酵素の活性を示す。
【0034】
[047] 別のアッセイフォーマットは、粒子に結合した標識を解放する分析物の能力を使用する。例えば、分析物は、標識と粒子の間のリンカーを切断する酵素でよい。あるいは、分析物は、試料中に存在する場合、リンカーの切断及び粒子からの標識の解放を防止することができる。
【0035】
[048] 結合又は酵素反応が進行できるようになった後、粒子が検出表面に堆積して、電磁放射が表面を通って試料の内外に透過するのを部分的又は完全に阻止する。次に、検出表面における電磁放射の存在又は量を判断する。したがって、粒子が表面に堆積している場合、粒子に付着した標識からの電磁放射を、表面にて検出することができる。しかしながら、粒子は表面にてシャッターとして作用し、粒子に結合していない標識からの電磁放射を阻止する。したがって、試料中の非結合標識の背景信号が削除される。同様に、粒子にいかなる結合標識もない場合、粒子が検出表面にあるいかなる電磁放射も削除せず、試料溶液中の非結合標識からの信号が表面で検出されるのを阻止するシャッターとして作用しない。
【0036】
[049] 別の実施形態では、反応容器は容器の壁上に結合相手を含む。分析物の存在又は不存在の結果としての結合反応では、粒子が反応容器の表面上に捕捉される、又は補足されない。これで、粒子は、試料中の標識からの電磁放射が検出表面を通って反応容器から外へと透過するのを阻止しない。この実施形態では、標識は結合反応に参加する必要がなく、溶液中で非結合状態を維持することができる。結合反応は、反応容器に力が加わった場合、粒子が検出表面に堆積する能力を制御する。この実施形態では、粒子及び容器の壁が分析物の結合相手でコーティングされている場合、粒子は分析物の存在下で容器の表面に結合することができ、分析物が結合相手に挟まれる。この実施形態では、反応容器内の標識からの信号は分析物の存在を示す。何故なら、粒子が反応容器の壁に結合し、電磁放射が容器から出ることを阻止できないからである。競合的アッセイフォーマットでは、分析物類似体でコーティングされた粒子は、分析物がない状態で、分析物の結合相手でコーティングされた容器壁に結合する。したがって、容器からの信号がない場合、それは分析物が存在することを示す。
【0037】
[050] 標識が外部発生源、例えば電磁放射によって励起可能な蛍光標識によって活性化されると、表面に累積した粒子は、表面にて粒子に結合した標識以外のいかなる標識も電磁放射によって励起されることを防止する。検出表面の粒子はシャッターとして作用し、電磁放射が試料の入った溶液中の非結合標識を励起するのを防止する。したがって、表面の粒子に付着した標識のみが励起され、非結合標識からの背景信号は回避される。標識が電磁放射以外の発生源(例えば熱、電気、化学反応、酵素反応)によって活性化した場合、検出表面に堆積した粒子により、試料中の活性化した標識からの電磁放射が、検出表面を通って容器を出ることが防止される。
【0038】
[051] 反応容器のサイズは、粒子が容器の反応表面に堆積して、容器の内外への電磁放射の透過を一部又は完全に阻止する能力によってのみ制限される。より小さいフォーマットが好ましい。複数の生物学的素子を効率的な方法でスクリーニングするには、より小さい試料の大きさが必要だからである。
【0039】
[052] 本発明で使用するのに適切な反応容器は、機能化した粒子が堆積できる検出表面を有するか、又は有するように構築することができる。表面は、電磁放射に対して透過性である限り、特定の材料に限定されない。あるいは、表面はいかなる材料も結合せず、環境に対して開放していてよく、したがって検出表面は試料溶液の表面、例えば反応ウェル、マイクロウェル、マイクロポア、キャビティ又はマイクロキャビティ中の試料溶液のメニスカスである。電磁放射の表面透過は、粒子が表面に堆積している場合を除き、妨げられてはならない。巨視的規模では、表面はキュベット又は反応ウェルの窓でよい。容器のサイズに関係なく、電磁放射が表面を通してのみ試料に入れるように、表面を囲む区域は、試料に出入りする電磁放射の透過を防止しなければならない。反応容器は、キャピラリ又はマイクロチューブの各開放端に複数の表面、例えば複数の窓又はメニスカスを有することができる。
【0040】
[053] 検出表面の粒子堆積は、粒子を表面に引っ張る力を試料に加えることによって達成することができる。力は、粒子の堆積により、電磁放射の少なくとも50%が堆積した粒子を通過することが防止されるように、十分でなければならない。特定の実施形態では、放射の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%が表面を通って試料に出入りすることが防止されている場合、電磁放射は検出表面を通って試料に出入りすることが阻止される。検出表面粒子を堆積するために使用できる力の例示的タイプには、重力、磁力、電気力、遠心力、及び音響力が含まれる。
【0041】
[054] 重力を使用して、粒子が反応容器の底に沈降できるようにする。容器の底が検出表面を含む場合、粒子に関連する標識からの信号を検出することができる。磁性粒子を含有する試料に加える磁力を使用して、容器の頂部又は他の位置にある検出表面に粒子を引っ張ることができる。特定の実施形態では、磁力は磁石、例えば立方体にしたネオジム磁石(B666、K&J Magnetics Inc.)で加える。
【0042】
[055] 同様に、荷電粒子を使用して電力を受けることができ、それによって粒子が試料全体で、及び検出表面に向かって移動する。幾つかの実施形態では、力は、例えば参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2006/0078998号に記載されているように、界面動電力である。幾つかの実施形態では、粒子は試料への電力の印加を絶縁して阻止し、それにより試料中で電気的に刺激された標識が活性化することを防止する。
【0043】
[056] 同様に、異なる共鳴周波数を有する異なる形状の粒子を使用して、共鳴粒子を変位して音圧ノードに堆積させる音波周波数にかけることができる。幾つかの実施形態では、力は、例えば参照により全体が本明細書に組み込まれるLaurell, T.らのChem. Soc. Rev. 2007, 36:492-506に記載されたように音響力である。
【0044】
[057] 図1は、例示的な抗原抗体認識アッセイ、すなわち、マイクロポアアレイの「サンドイッチ」アッセイを示す。この実施形態では、粒子は磁性微粒子であり、抗原に会合及び/又は結合する。図示のような分析物は、試料中の細胞によって産生されている標的タンパク質である。蛍光標識が、標的タンパク質に特異的及び/又は結合する抗体に会合又は結合する。パネル(A)は、何らかの力をアレイに加える前に1つ又は複数のポア中に存在する様々な生物学的成分の略図である。粒子は、標識タンパク質に結合した抗原により、蛍光標識と会合し、標識タンパク質は標識した抗体とも結合している。パネル(A)は、試料をポアに加えた直後の時点を表す。何故なら、抗原及び/抗体に結合しないままの標的タンパク質もあるからである。幾つかの実施形態では、次にアレイをインキュベート及び/又は攪拌して、標的タンパク質の結合を促進する。任意選択のインキュベーションの後、パネル(B)は、磁力を加えることによって粒子が検出表面に堆積した後のポアを示す。この実施形態では、検出表面はポア内の液体の開放表面である。この実施例では、磁性粒子に結合した標識からの電磁(EM)信号を、ポア表面から検出する。
【0045】
[058] 追加の実施形態では、試料中の2つ以上の分析物を検出する方法が提供される。該方法は、電磁放射を放出する第二標識、及び以下の特性のうち少なくとも1つに基づいて第一粒子とは異なる第二粒子を、反応容器に加えることを含む。すなわち、形状、サイズ、密度、透磁率、電荷、及びオプティカルコーティングである。上述したように、第二標識は第二粒子に結合しているか、又は試料中の第二分析物の存在又は不存在の結果として、第二標識が第二粒子に結合する(例えば酵素が粒子に結合しているか、又は競合的アッセイ又はサンドイッチアッセイの結果として、標識が結合する)。第二粒子は第二検出表面に堆積して、第二検出表面を通って試料を出入りする電磁放射の透過を阻止する。第二粒子から放出される電磁放射の存在又は量は、第二検出表面で検出することができる。
【0046】
[059] 様々な実施形態では、第一分析物を検出する第一粒子は、第一力の結果として第一検出表面に堆積して、第二粒子は、第二力の結果として第二検出表面に堆積し、第一力及び第二力は、上述したように重力、磁力、電力、遠心力及び音響力からなる群から個別に選択される。第一力及び第二力は試料に加えることができ、検出は同時に又は順番に遂行することができる。
【0047】
[060]粒子
[061] 高い感度は、粒子が試料に対してシャッターとなる、例えば溶液中の蛍光色素からのエネルギー励起、及び検出器への背景信号の透過を阻止する場合、検出表面における粒子を濃縮することによって達成される。粒子が堆積し、検出表面を通る電磁放射を阻止する限り、適切な粒子が容易に商品として入手可能であり、多種多様な粒子を本明細書で開示した方法に従って使用することができる。様々な実施形態では、粒子は部分的又は完全に不透明である。特定の実施形態では、粒子は電磁放射を吸収し、例えば粒子は少なくとも約10パーセント、例えば25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100パーセントの吸収効率を有する。
【0048】
[062] 様々な実施形態では、粒子のサイズはナノ規模から反応容器の断面積の約1/3のサイズまでの範囲である。例えば、マイクロキャビティが直径約20ミクロンである場合、粒子は直径約0.01〜7ミクロンとすることができる。粒子のサイズは、粒子が容器の検出表面に堆積可能となるサイズでなければならず、したがって粒子の堆積は電磁放射が試料溶液を出入りすることを阻止する。例えば、反応容器がマイクロポアである場合、試料溶液はマイクロポアの壁とともにメニスカスを形成する。マイクロポアが両端で開放している場合、メニスカスはマイクロポアの上端と底部の両方に形成される。電磁放射がマイクロポア内の試料溶液を出入りすることが防止されるように、粒子はマイクロポアの上端又は底部にてメニスカスに堆積できなければならない。
【0049】
[063] 特定の実施形態では、粒子の直径は、使用する容器のサイズに応じて約0.01ミクロン〜約50ミクロンの範囲である。様々な実施形態では、粒子はサイズが約0.1〜15ミクロン、約0.5〜10ミクロン、及び約1〜約5ミクロンの範囲である。
【0050】
[064] 特定の実施形態では、粒子は金属又は炭素を含む。適切な金属の非限定的な例には金、銀、及び銅が含まれる。当業者には周知であるように、結合アッセイに使用するのに適切な金属材料もある。
【0051】
[065] 一実施形態では、粒子を各反応容器の検出表面、例えばマイクロキャビティのメニスカスに堆積させるために磁力を使用できるように、粒子は磁性である。
【0052】
[066] 当業者には周知であるように、粒子の表面の化学的性質を機能化して、試料成分に結合させることができる。例えば、粒子はストレプトアビジン、ビオチン、オリゴ(dT)、A及びGタンパク質、標識タンパク質及び/又は任意の他のリンカーポリペプチドと結合する。ストレプトアビジンとビオチンの相互作用の非常に高い結合親和性は、非常に多くの用途に利用されている。ストレプトアビジン結合粒子は、ビオチン化核酸、抗体、又は他のビオチン化リガンド及び標的を結合する。ビオチン化抗原は、分析物をスクリーニングするための粒子と結合できる産生物の有用な一例である。特定の実施形態では、粒子は幾つかの異なるリガンドと結合するDYANABEADR(登録商標)粒子(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)である。例えばオリゴ(dT)、A及びGタンパク質、標識タンパク質(His、FLAG)、二次抗体及び/又はストレプトアビジンである。(Part No. 112-05D、Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)。
【0053】
[067] 幾つかの実施形態では、異なる透磁率を有する粒子を使用して、粒子に作用する磁力を個別に制御することができる。他の実施形態では、粒子の他の特性を使用して、各キャビティで実行するアッセイの多重化能力を拡張することができる。試料に加えられると、粒子は所望の標的(細胞、病原微生物、核酸、ペプチド、タンパク質又はタンパク質複合体など)に結合する。この相互作用は、粒子の表面にあるリガンドの特異的親和性を利用する。あるいは、酵素の基質に共役した粒子を試料に加えることができ、試料中の酵素/分析物は、基質が蛍光を発する能力を消滅させるか、又は基質を活性化して蛍光を発するようにする(例えば酵素が媒介する基質の切断)。
【0054】
[068] 別の実施形態は、異なる形状、密度、サイズ、電荷、透磁率、又はオプティカルコーティングを有する磁性粒子を使用する。これによって、異なるプローブ(すなわち、結合相手)を異なる粒子に載せることができ、磁界又は他の力を加える方法及び時期を調節することによって、粒子を別個にプローブで探ることができる。沈降速度も、粒子をサイズ、形状及び密度によって分離し、各キャビティで実行するアッセイの多重化能力を拡張するために使用することができる。
【0055】
[069] 例えば、一つの粒子は、各キャビティ内で産生された抗体の標的に対する親和性を判定できるようにする標的抗原を含有することができる。各キャビティに配置された他の粒子は、同じ粒子上に広範囲の抗原を含有することができ、これによって抗体の特異性を測定できることができる。磁界がない場合に異なるサイズ又は密度を有する粒子の沈降時間を利用することができる。沈降時間が最も短い粒子は、キャビティの底部にある検出表面を走査することによって検出することができる。沈降時間が比較的長い粒子の方が高い透磁率を有する場合は、磁界を印加している場合のみ、他の粒子より前にこれをキャビティの底部に引きつけることができる。
【0056】
[070] 同様に、粒子の一部を磁性とし、他を非磁性とすることができ、磁界を印加することによって磁性粒子をキャビティの上端に引きつけ、そこで検出することができ、非磁性粒子はキャビティの底部に沈降して、そこで検出することができる。これらのタイプの方法を使用して、同じウェル内で抗体の感度及び特異性を測定することができる。
【0057】
[071] 特定の実施形態では、粒子を使用してレセプタクルの内容物を混合する。例えば、インキュベーション段階で、磁性粒子を交番又は断続的磁界にかける。粒子の移動及び沈降の結果、反応容器の内容物が混合される。
【0058】
[072] 検出すべき分子、例えばマーカの形成に必要な特異性を有する任意の適切な結合相手を使用することができる。分子、例えばマーカが幾つかの異なる形態を有する場合は、結合相手に様々な特異性がある可能性がある。適切な結合相手が当技術分野で知られており、抗体、アプタマ、レクチン、及び受容体が含まれる。有用で万能タイプの結合相手は抗体である。
【0059】
[073] 本明細書で開示する試料中の分析物の検出方法によって、ポア1個当たり2つ以上の異なる抗原を同時に試験することができる。したがって、幾つかの実施形態では、同じポア内で同時に陽と陰のスクリーニングが可能である。このスクリーニングの設計は、最初のヒットの選択性を改善する。特定の実施形態では、試験される第二抗原を対照抗原とすることができる。対照抗原の使用は、アレイ中の様々なポアにわたって生物学的素子の濃度を正規化するために有用である。非限定的な例は、当該分析物に特異的な第一抗原、及び−N末端又は−C末端などのすべてのタンパク質に対して非特異的な第二抗原を使用することである。したがって、信号を合計タンパク質濃度と比較することによって当該ポアの結果を量化することができる。
【0060】
[074] 幾つかの実施形態では、第二抗原は、第一粒子とは異なる第二粒子と会合する。粒子は、以下の特性のうち少なくとも1つによって偏向することができる。すなわち、形状、サイズ、密度、透磁率、電荷、及びオプティカルコーティングである。したがって、試料中の第二分析物の存在又は不存在の結果として、第二標識が第二粒子と会合し、以下で述べるように原動力を使用して加工することができる。
【0061】
[075] 別の実施形態では、粒子は試料成分と非特異的に結合する。例えば、粒子を機能化して、試料中の全タンパク質と非特異的に結合させることができ、これによってアレイ中の試料間でタンパク質含有率を正規化することができる。
【0062】
[076]抗体
[077] 本明細書で使用する「抗体」という用語は広義の用語であり、通常の意味で使用して、自然に発生する抗体、さらに自然以外で発生する抗体を指すことがあるが、これらに限定されず、例えば単鎖抗体、キメラ、二機能性及びヒト化抗体、さらにその抗原結合フラグメントが含まれる。抗体が生成される相手となるエピトープ又は分子の領域の選択が、例えば存在する場合は分子の様々な形態、又は全体(例えば分子の全部又は実質的に全部)に対するその特異性を決定することが認識される。
【0063】
[078] 抗体を産生する方法は十分に確立されている。当業者には、Ed Harlow及びDavid LaneのAntibodies, A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記載されているように、抗体を産生する多くの手順が使用可能であることが認識される。当業者には、抗体を模倣するFabフラグメントの結合フラグメントを、様々な手順によって遺伝情報から調製できることも認識される(Antibody Engineering: A Practical Approach(Borrebaeck, C.編集)、1995、Oxford University Press、Oxford;J. Immunol. 149, 3914-3920 (1992))。分子、例えばタンパク質に対する単クローン性及び多クローン性抗体、及びマーカも市販されている(R and D Systems、ミネソタ州ミネアポリス;HyTest Ltd., Turk、フィンランド;Abcam Inc.、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ;Life Diagnostics, Inc.、米国ペンシルベニア州ウェストチェスター;Fitzgerald Industries International, Inc.、米国マサチューセッツ州コンコード:BiosPacific、カリフォルニア州Emeryville)。
【0064】
[079] 幾つかの実施形態では、抗体は多クローン性抗体である。他の実施形態では、抗体は単クローン性抗体である。
【0065】
[080] 本発明の実施形態では、捕捉結合相手及び検出結合相手対、例えば捕捉及び検出抗体対を使用することができる。したがって、幾つかの実施形態では、通常は2つの結合相手、例えば2つの抗体を使用する異種アッセイプロトコルを使用する。一方の結合相手は捕捉相手で、通常は粒子上で固定化され、他方の結合相手は検出結合相手で、典型的に検出可能な標識が取り付けられる。このような抗体対は、BiosPacific(カリフォルニア州Emeryville)などの幾つかの販売元から入手可能である。抗体対はまた、当技術分野で周知の方法で設計し、調製することもできる。
【0066】
[081] 特定の実施形態では、抗体はビオチン化されるか、又はビオチン標識付きである。別の実施形態では、抗体は抗GFPである。
【0067】
[082] 一実施形態では、当該分析物の全メンバに非特異的に結合する第二イメージング成分がある。したがって、この信号を読み取って、ポア間の蛍光の量を正規化することができる。一例は、N末端又はC末端にある全タンパク質に結合する抗体である。対照成分の場合、標的素子に結合している微粒子を一つの検出表面に堆積させることができ、対照素子に結合している微粒子を別の検出表面に堆積させる。あるいは、標的及び対照に結合している微粒子は、別々の時に表面にあることができるようにする粒子の違いを利用することによって、同じ検出表面で検出することができる。したがって、検出窓における標識の検出を順番に実行することができる。
【0068】
[083]標識
[084] 結合相手に標識して粒子の混合物中のその検出又は区別を可能にするために使用できる幾つかの方策が、当技術分野では周知である。標識は、非特異的又は特異的相互作用を利用する方法を含め任意の既知の手段で付着させることができる。さらに、標識付けは直接、又は結合相手を通して遂行することができる。
【0069】
[085] 部分からの蛍光などの放出は、本明細書で述べるような検出器を使用して検出できるほど十分でなければならない。概ね、本発明の組成及び方法は蛍光性が高い部分、例えば部分の励起波長で電磁放射源によって刺激された場合に電磁放射を放出することができる部分を使用する。幾つかの部分が、本発明の組成及び方法に適切である。
【0070】
[086] 電磁放射以外のエネルギーによって活性化可能な標識も、本発明では有用である。このような標識は、例えば電気、熱又は化学反応で活性化することができる(例えば化学発光標識)。また、幾つかの酵素活性標識が当業者には周知である。
【0071】
[087] 通常、部分の蛍光は、アッセイの検出、正確さ及び精度の所望の限界にとって必要な一貫性で、開示された検出器の背景レベルに対して部分を検出可能にするのに十分な量子効率と光脱色の損失との組み合わせを含む。
【0072】
[088] さらに、部分は、選択されたアッセイにおける使用法と矛盾がない特性を有する。幾つかの実施形態では、アッセイは免疫学的検定であり、蛍光部分を抗体に付着させ、部分は、他の抗体又はタンパク質と凝集しない、又はアッセイに必要な正確さ及び精度と矛盾するほどの凝集を経験しないような特性を有していなければならない。幾つかの実施形態では、蛍光部分は、1)高い吸光係数、2)高い量子収率、3)高い光安定性(低い光脱色)、及び4)当該分子(例えばタンパク質)の標識付けとの適合性の組み合わせを有する分子を染色し、したがって分析器及び本発明のシステムを使用して分析することができる(例えば当該タンパク質の析出、又は部分が付着しているタンパク質の析出を引き起こさない)。
【0073】
[089] 蛍光部分は、単一の成分(Quantum Dot又は蛍光分子)又は複数の成分(例えば複数の蛍光分子)を含むことができる。本明細書で使用されている状態で「部分」という用語が、蛍光成分の群、例えば複数の蛍光染色分子を指す場合、それぞれの個別成分を結合相手に別個に付着させることができるか、又は群としての成分を検出するのに十分な蛍光を提供する限り、成分を一緒に付着させることができる。
【0074】
[090] 幾つかの実施形態では、蛍光染色分子は、少なくとも1つの置換インジウム環構造を備え、インジウム環の3炭素の置換基は化学的反応性基又は共役物質を含有する。その例にはAlexa Fluor分子が含まれる。
【0075】
[091] 幾つかの実施形態では、標識は2つの異なるALEXA FLUOR(登録商標)染料(Invitrogen)などの第一タイプ及び第二タイプの標識を備え、第一タイプと第二タイプの染料分子は異なる発光スペクトルを有する。
【0076】
[092] 蛍光部分に使用するのに有用な蛍光成分の非包括的リストにはALEXA FLUOR(登録商標) 488、ALEXA FLUOR(登録商標)532、ALEXA FLUOR(登録商標)647、ALEXA FLUOR(登録商標)700、ALEXA FLUOR(登録商標)750、Fluorescein、B−フィコエリトリン、アルフィコシアニン、PBXL-3、Atto 590及びQdot 605が含まれる。
【0077】
[093] 標識は、吸収、共有結合、ビオチン/ストレプトアビジン又は他の結合対などの当技術分野で知られている任意の方法で粒子に付着させることができる。さらに、標識はリンカーを通して付着させることができる。幾つかの実施形態では、標識は分析物によって分割され、それにより粒子から標識を解放する。あるいは、分析物がリンカーの分割を防止することができる。
【0078】
[094]アレイ
[095] 一実施形態では、本発明で使用する反応容器は、極端な密度の多孔性アレイに含まれる。例えば、本明細書で想定されるマイクロポアアレイは、数百万又は数十億のシリカキャピラリを束ね、熱プロセスでそれを融合させることによって製造することができる。このような融合プロセスは、i)張力でシングルクラッドファイバに引き込まれているキャピラリシングルドローガラスを加熱するステップと、結束、加熱、及び引き抜き加工によってシングルドローガラスからキャピラリマルチドローシングルキャピラリを生成するステップと、iii)追加の結束、加熱、及び引き抜き加工によって、マルチドローシングルキャピラリからキャピラリマルチ−マルチドローマルチキャピラリを生成するステップと、iv)圧締めブロック内に積み重ねることによって、マルチ−マルチドローマルチキャピラリからドローガラスのブロックアセンブリを生成するステップと、v)熱及び圧力で処理することによって、ブロックアセンブリからブロック圧締めブロックを生成するステップと、iv)精密な長さ(例えば1mm)でブロック圧締めブロックを切断することによってブロック形成ブロックを生成するステップなどのステップを含むことができるが、これらに限定されない。
【0079】
[096] 一実施形態では、上記方法は、シリカキャピラリをスライスし、それによって非常に高密度のガラスマイクロポアアレイプレートを形成することをさらに含む。本発明で使用するマイクロポアのアレイは、任意の適切な方法で形成できることが認識される。一実施形態では、キャピラリを高さ約1ミリメートルに切断し、それにより約1.0マイクロメートルと500マイクロメートルの間の内径を有する複数のマイクロポアを形成する。一実施形態では、マイクロポアは長さ約10マイクロメートルと1ミリメートルの間の範囲である。一実施形態では、マイクロポアは長さ約10マイクロメートルと1センチメートルの間の範囲である。一実施形態では、マイクロポアは長さ約10マイクロメートルと10ミリメートルの間の範囲である。一実施形態では、マイクロポアは長さ約10マイクロメートルと100ミリメートルの間の範囲である。一実施形態では、マイクロポアは長さ約10.5ミリメートルと1メートルの間の範囲である。
【0080】
[097] このようなプロセスは、本発明に使用することができる非常に高密度のマイクロポアアレイを形成する。例示的アレイでは、各マイクロポアは5μmの直径及び約66%のオープンスペース(すなわち、各マイクロポアの管腔を表す)を有する。幾つかのアレイでは、開放しているアレイの割合は、約67%の開口面積を有するHamamatsu提供のマイクロポアのように、約50%と約90%の間、例えば約60〜75%の範囲である。1つの特定の実施例では、直径5μmのマイクロポア及び約66%のオープンスペースを有する10×10cmのアレイは、約3.3億個のマイクロポアを有する。例えば図2を参照されたい。
【0081】
[098] 様々な実施形態では、マイクロポアの内径は約1.0マイクロメートルと500マイクロメートルの間の範囲である。幾つかのアレイでは、前記マイクロポアはそれぞれ約1.0マイクロメートルと300マイクロメートルの間、任意選択で約1.0マイクロメートルと100マイクロメートルの間、さらに任意選択で約1.0マイクロメートルと75マイクロメートルの間、さらに任意選択で約1.0マイクロメートルと50マイクロメートルの間、さらに任意選択で約5.0マイクロメートルと50マイクロメートルの間の範囲の内径を有することができる。
【0082】
[099] 幾つかの有家では、アレイの開口面積は最大90%の開口面積(OA)を含み、したがってポアのサイズが10μmと500μmの間で変動する場合、アレイ1cm当たりのマイクロポアの数は、下表で表すように458個と1,146,500個の間で変動する。幾つかのアレイでは、アレイの開口面積は最大67%の開口面積を含み、したがってポアのサイズが10μmと500μmの間で変動する場合、アレイ1cm当たりのマイクロポアの数は、下表で示すように341個と853,503個の間で変動する。ポアのサイズが1μmで開口面積が最大90%の場合、アレイは1平方センチメートル当たり最大約11,466,000個のマイクロポアを収容する。
【表1】
【0083】
[0100] 1つの特定の実施形態では、マイクロポアアレイは、数十億個のシリカキャピラリを結合し、次に熱プロセスでそれを融合することによって製造することができる。その後、薄片(0.5mm以上)を切り出して、アスペクト比が非常に高いガラスの多孔マイクロアレイプレートを形成する。2011年7月13日出願の国際特許出願PCT/EP2011/062015号(WO2012/007537号)を参照されたい。上記出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる。また、アレイは、Hamamatsu Photonics K. K.(部品番号J5022−19)及び他の製造業者などから市販されている。幾つかの実施形態では、アレイのマイクロポアは、アレイに取り付けられた固体基質で一方端が閉じられている。
【0084】
[0101] したがって、より迅速かつ容易に使用できることに加え、再生されたタンパク質を検出する能力によって、このマイクロポアアレイは、ディスプレイベクタの表面上に発現している標的分子(すなわち、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、哺乳類細胞ディスプレイ、細菌細胞ディスプレイ又は酵母ディスプレイ)に頼る現在の方法よりも高い分解能を提供することができる。ファージディスプレイ方法と比較したこのアレイの追加の利点には、ポア1個につき2個(以上)の標的分子を同時に試験する能力(すなわち、正及び負のスクリーニング)、及び検査中のタンパク質のサイズに制限されないことが含まれる。ファージディスプレイしたタンパク質は小さくなければならないからである。
【0085】
[0102] 別の実施形態では、本発明は、複数の細胞を含む溶液をアレイに接触させて装填済みアレイを形成することを含むアレイ装填方法を想定する。一実施形態では、抗体分泌細胞、例えば大腸菌の混合物をマイクロポア全部に均一に装填することは、アレイの上側に500μLの小滴を配置することと、それをマイクロポア全部に広げることとを含む。細胞の不均質集団をマイクロポアアレイに装填することができる。一実施形態では、500μLの小滴中に約10個の細胞という初期濃度の結果、マイクロポア1個につき約3個の細胞(又は部分集団)となる。一実施形態では、各マイクロポアは(250μm〜1mmの間のガラスキャピラリプレートの厚さに応じて)20〜80pLの間の概算容積を有する。マイクロポアに装填し、一晩インキュベートすると、各マイクロポアはマイクロポア1個につき約1,000〜3,000個の細胞を含有する。一実施形態では、細胞は、増殖収量を最大化するために、生存力を失わずに最大48時間培養することができる。本発明のメカニズムを理解する必要はないが、マイクロポア全部に小滴を「広げる」ことで、様々なマイクロポア中の細胞の最適分布が提供されると考えられる。理論的に、マイクロポアアレイに滴を加えると、全ポアを均一に満たす。しかしながら、実際には表面張力により滴が中心のマイクロポアに入ることが妨げられることが、経験的評価により実証された。滴がマイクロポアアレイ表面に均一に広がれば、表面張力が除去される。その結果、滴をマイクロポアアレイ上に真っ直ぐに降ろすと、表面張力が低下するので、滴の縁部にあるポアのみが充填される(蒸発も減少するので、液体がもはや浮遊状態に保持されない)。これは、適切な分析物を検出した後、ハローリング効果を引き起こす。WO2012/007537号を参照されたい。
【0086】
[0103] 一実施形態では、溶液は約3マイクロリットルある。一実施形態では、動物細胞、植物細胞及び/又は微生物細胞を含む群から、複数の細胞を選択することができる。一実施形態では、複数の細胞は大腸菌細胞を含む。一実施形態では、大腸菌細胞は少なくとも1つの当該組換え化合物を分泌する。一実施形態では、当該組換え化合物は結合相手に対する親和性を有する。
【0087】
[0104] 本発明のメカニズムを理解する必要はないが、約500μLの溶液中に約10個の細胞がある場合は、約3〜4×10個のマイクロポアを有するアレイで、平均してマイクロポア1個当たり約3個の細胞がある。正確な数字は、アレイ中のポアの数に依存することに留意されたい。例えば、アレイが約3〜4×10個のマイクロポアを有する場合は、それにより細胞約500〜100個/ポアになる。一実施形態では、各マイクロポアは約20〜80ピコリットルの範囲の容積を含む。
【0088】
[0105] 特定の実施形態では、アレイのキャビティの側壁は電磁放射に対して透過性ではないか、又はキャビティは、アレイのキャビティ間で電磁放射が透過するのを防止する材料でコーティングされる。適切なコーティングは、キャビティ内の結合反応又はキャビティへの力の印加を妨げてはならない。例示的コーティングには、金、銀及びプラチナをスパッタリングしたナノメートル層が含まれる。
【0089】
[0106] 幾つかの実施形態では、アレイのキャビティはポアへの溶液を自然に取り込むことができる親水性表面を有する。
【0090】
[0107]試料の希釈、調製、インキュベーション
[0108] 生物学的試料の集団及び/又はライブラリを含有する試料は、アレイに分配する前に調製ステップを必要とすることがある。幾つかの実施形態では、これらの調製ステップにはインキュベーション時間が含まれる。インキュベーション時間はスクリーンの設計に依存する。例示的時間は5分間、1時間及び/又は3時間を含む。例示的範囲は1秒間〜72時間である。
【0091】
[0109] 特定の実施形態では、生物学的素子の不均質集団は、アレイに加える及び/又は装填する前に媒質中で膨張する。特定の用途では、指数増殖期中に媒質と素子の混合物をアレイに装填する。
【0092】
[0110] 他の実施形態では、生物学的素子の不均質集団及び/又はライブラリを含有する試料は、アレイに加えた後に調製ステップを必要とすることがある。他の実施形態では、各ポア中の各素子が、インキュベーション期間中に膨張する(細胞増殖、ファージ増殖、タンパク質の発現及び放出など)。このインキュベーション時間によって、生物学的素子は生物反応性分子を産生することができる。
【0093】
[0111] 幾つかの実施形態では、各ポアは特定の生物学的素子が複製できる媒質をある体積だけ有する。特定の実施形態では、媒質の体積は約20ピコリットルであり、これによりポア内の大部分の単細胞が複数回複製できるほど十分な媒質が提供される。アレイは任意選択で、生物学的素子が膨張し、標的タンパク質を産生するために、任意の温度、湿度、及び時間にてインキュベートすることができる。インキュベーション条件は、当技術分野で日常であるような実験デザインに基づき決定することができる。
【0094】
[0112]濃度、条件、装填
[0113] 特定の実施形態では、アレイは、一部又は全部のポアが分析物をスクリーニングする単一の生物学的素子を含むように設計される。したがって、生物学的素子の不均質混合物の濃度は、アレイの設計及び識別することが望ましい分析物に従って計算される。タンパク質産生細胞をスクリーニングする実施形態では、この方法は、クローン性競合相手を排除し、したがってはるかに多様にスクリーニングできるので有利である。
【0095】
[0114] 一実施形態では、本発明の方法は、アレイの前記マイクロポアの少なくとも1個に生物学的素子が1〜1000個、任意選択で1〜500個、さらに任意選択で1〜100個、さらに任意選択で1〜10個分配されるように、細胞の不均質集団の浮遊物及びアレイの寸法が構成されることを想定する。
【0096】
[0115] 滴の体積は、例えば所望の用途、不均質混合物の濃度、及び/又は生物学的素子の所望の希釈などの幾つかの変数に依存する。1つの特定の実施形態では、アレイ表面上の所望の体積は、1平方ミリメートル当たり約1マイクロリットルである。濃度条件は、生物学的素子が任意の所望のパターン又は希釈度で分配されるように決定される。特定の実施形態では、濃度条件は、アレイの大部分のポアに単一の素子のみが存在するように設定される。これによって、単一の素子の最も高精度のスクリーニングができる。
【0097】
[0116] これらの濃度条件は容易に計算することができる。例示により、細胞のスクリーニングでは、タンパク質産生細胞とポアとの比率が約1〜3である場合、ポア10個のアレイには6mLの容積(6mL=20ピコリットル/ポア×3×ポア10個)に3×10個の異なるタンパク質産生細胞を装填することができ、ポアの大部分にはせいぜい単一のクローンしか含まれない。特定の他の実施形態では、各ポアに単一の生物学的素子を入れることが望ましくない。これらの実施形態では、各ポアに複数の生物学的素子が見られるように、不均質集団の濃度を設定する。例えば、図3は、1.0mLの滴をアレイの一方側に配置し、それを全ポアに広げることによって、装填されているタンパク質産生細胞(細菌細胞:大腸菌)の混合物をアレイのポアに加えることを示す。
【0098】
[0117] スクリーニングは、生物学的細胞などの生物学的素子の集団を濃縮することにも使用することができる。例えば、集団中の生物学的素子の数がアレイのポア数を超えた場合は、各ポアの複数の用途で集団をスクリーニングすることができる。これで、正の信号を提供するポアの内容物を抽出し、部分集団を提供することができる。部分集合は即座にスクリーニングするか、又は部分集団が細胞である場合は膨張することができる。スクリーニングプロセスは、アレイの各ポアに単一の素子しか含まれなくなるまで繰り返すことができる。スクリーニングを適用して、所望の分析物が存在することを示すポアを検出及び/又は抽出することもできる。ポアの選択後、より高レベルのタンパク質産生を提供する技術のように、他の従来の技術を使用して、個々の当該分析物を分離することができる。
【0099】
[0118] 生物学的素子をアレイに装填した後、生物学的素子を妨害せずに、追加の分子又は粒子をアレイに加えるか、又はそこから取り出すことができる。例えば、生物学的素子の検出に有用な任意の分子又は粒子を加えることができる。これらの追加の分子又は粒子は、分子又は粒子を含む液体試薬をアレイの上端に導入することによって、例えば生物学的素子の追加に関して述べたように1滴ずつ加えることによってアレイに加えることができる。生物学的素子を含むアレイから特定の分子を取り出すには、取り出すように選択された分子はないが、所望の濃度でポアアレイに存在する残りの分子をすべて含有する溶液を調製することができる。上述したように小滴をアレイに加える。ポアアレイの内容物がこの溶液の小滴と平衡に到達した後、アレイ中の選択分子の濃度が低下する。減少量は、加えた滴の体積及びアレイに含まれる総体積に依存する。選択分子の濃度をさらに低下させるには、アレイの上端から第一滴を取り出し、次に液体の第二滴を加えた後に、このステップを繰り返すことができる。液体は、例えばペーパタオル又はピペットでアレイを吸い取ることによりアレイの上端から取り出すことができる。
【0100】
[0119] 特定の実施形態では、ポアからの媒質の蒸発を減少させるために、試料をポアに加えた後、アレイの上端を膜で封止する。試料をポアに加えた後、1つ又は複数の実質的に気体及び/又は液体不透過性膜を使用して、アレイの表面を封止することができる。例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの典型的な食品サービス型のプラスチックラップが適切である。別の実施形態では、膜によって水蒸気がポア中の液体の液体最上層と平衡に到達することができ、これは蒸発の防止に役立てることができる。例えば、マイクロポアアレイの上面と接触した状態で配置されたフィルムは、フィルムの上端に水を配置した状態で、個別的各ポア内にポアの内容物を捕捉するが、水又は媒質がポアに流入できるようにする。有用な膜の例はニトロセルロース及びNAFION(登録商標)膜である。ポア中のいかなる細胞も捕捉するが、水、媒質及び他の試薬がポア中に通過できるようにする非常に小さい穴(例えば10〜100nm)を有するポリテトラフルオロエチレン膜(例えばGORE-TEX(登録商標)の織物)の多孔質形態で、同様の構成を得ることができる。
【0101】
[0120]マイクロキャビティの内容物の抽出
[0121] キャビティのアレイに付随する検出器から受信した光学情報に基づき、所望の特性を有する標的キャビティが識別され、別の特徴付け及び膨張のために内容物が抽出される。開示された方法は、キャビティ中の生物学的素子の完全性を維持するので有利である。したがって、本明細書で開示する方法は、最大数十億個の標的生物学的素子から生物学的素子の標的集団をディスプレイし、個別的に回収する。これは、細胞をスクリーニングする実施形態で特に有利である。
【0102】
[0122] 例えば、粒子をポアの上端又は底部に引っ張った後、各ポアからの信号を走査し、当該結合事象を突き止める(図4参照)。これで当該ポアが識別される。所望のクローンを含む個別的ポアは、様々な方法を使用して抽出することができる。すべての抽出技術で、抽出した細胞又は材料は、培養又は増幅反応で膨張させ、タンパク質、核酸又は他の生物学的素子を回収するように識別することができる。上述したように、複数のスクリーニングラウンドも想定される。各スクリーニングの後、本明細書で述べるように1つ又は複数の当該キャビティを抽出することができる。次に、所望の特異性が達成されるまで、各キャビティの内容物を再びスクリーニングすることができる。特定の実施形態では、所望の特異性はポア1個当たり単一の生物学的素子があることである。これらの実施形態では、キャビティが単一の素子のみを含むまで、各スクリーニングラウンドの後に抽出することができる。
【0103】
[0123] 一実施形態では、上記方法は、圧力噴出によってマイクロポア内に配置された細胞を分離することを含む。例えば、分離されたマイクロポアアレイをプラスチックフィルムで覆う。一実施形態では、上記方法はさらに、プラスチックフィルムを通して穴を作成し、それにより空間的にアドレッシングされたマイクロポアを曝露することができるレーザを提供する。その後、圧力源(例えば空気圧)に曝露すると、空間的にアドレッシングされたマイクロポアから内容物が排出される。WO2012/007537号を参照されたい。
【0104】
[0124] 別の実施形態は、マイクロキャビティアレイの単一のマイクロキャビティから生物学的素子を含む溶液を抽出する方法を指向する。この実施形態では、マイクロキャビティは電磁放射吸収材料を伴い、したがって材料はキャビティ内にあるか、又はマイクロキャビティをコーティングするか、又は覆う。抽出は、電磁放射をマイクロキャビティに集束させて、試料又は材料又は両方を膨張させるか、又は試料の少なくとも一部をマイクロキャビティから排出する蒸発を引き起こすことによって実行する。電磁放射源は、蛍光標識を励起する発生源と同じ、又はそれと異なってよい(標識の励起と、アレイのキャビティの成分抽出との両方に同じ電磁放射源を示す図1を参照)。発生源は、材料及び標識の様々な吸収スペクトルに対応するために、複数の波長の電磁放射を放出できてよい。
【0105】
[0125] 選択したマイクロキャビティに収束した電磁放射を当てると、電磁放射吸収材料を膨張させることができ、これによって排出成分を採取するために試料内容物が基質上に排出される。例えば、図9は特定の当該マイクロキャビティの抽出を示す。当該キャビティを選択し、次に349nmの固体UVレーザを20〜30%の強度出力で集束させることによって抽出する。1つの例では、発生源は、約50ナノ秒パルスで約1マイクロジュール〜約1ミリジュールのパルスを放出する周波数3倍でパルス状の固体Nd:YAG又はNd:YVO4レーザ源である。シャッター及びパルス状レーザ源を使用した両方の連続内レーザを使用することができる。レーザは、直径がポアの直径とほぼ同じ、又はそれより小さいスポットサイズに集束できるように十分なビーム品質を有していなければならない。出力レベルは、キャビティのサイズ及びその内容物に依存する。
【0106】
[0126] 当業者に理解されているように、電磁放射源からの電磁放射発光スペクトルは、キャビティに関連する電磁放射吸収材料の吸収スペクトルと少なくとも部分的に重なるようなスペクトルでなければならない。次に、抽出した内容物を捕捉表面に配置することができる(図9参照)。抽出した内容物が細胞を含む場合、これを膨張してタンパク質、抗体、又は他の当該素子を得ることができる。
【0107】
[0127] 幾つかの実施形態では、捕捉表面はキャビティの内容物の排出先である給湿層を含む。給湿層は水を引きつけて、光学表面の変形を防止し、キャビティ内容物の明瞭なイメージングを可能にする。特定の実施形態では、層はグリセロールを含む溶液などの吸湿性組成である。層は、例えば塗布、拭い取り又は噴霧によって施すことができ、表面に均一に分散しなければならない。通常、層は、層を通過するEM放射を歪めず、上のアレイに接触しない限り、厚さ約10〜100μmである。
【0108】
[0128] キャビティ内の材料は、例えば上述したような結合アッセイに使用する粒子とすることができる。したがって、粒子は、検出表面に堆積するために粒子が力に応答できるようにする特性を有することができ、DYNABEAD(登録商標)粒子などの電磁放射吸収材料も含む。様々な実施形態では、検出表面の信号を(連続した力又は力の再印加によって)検出した後に、検出表面に堆積する間に粒子にエネルギーを加える、又は粒子が試料溶液に戻るように、力を除去する。あるいは、キャビティは、結合反応に関与しないが、本明細書で述べるように内容物を抽出するために存在する粒子又は他の材料を含む。これらの粒子は、アッセイの結合反応に関係なくマイクロキャビティの壁に結合するように、機能化することができる。同様の材料を使用して、マイクロポア、及び特にEXPANCEL(登録商標)コーティング(AkzoNobel、スウェーデン)などの高膨張率材料をコーティングするか又は覆うことができる。別の実施形態では、EXPANCEL(登録商標)材料は、各ポアを膨張層に接着するように、アレイの一方側に接着された粘着層の形態で供給することができる。
【0109】
[0129] 電磁放射をマイクロキャビティに集束すると、電磁放射吸収材料を膨張させることができ、これによりキャビティの液体容積の少なくとも一部が排出される。材料の加熱は、キャビティの内容物の急速な膨張も引き起こすことができる。幾つかの実施形態では、内容物の一部(最大50%)は、加熱によって最大1600倍膨張し、それにより内容物の残りの部分がキャビティから排出される。
【0110】
[0130] 加熱は、材料又はキャビティの内容物を急速に膨張させず、内容物の蒸発を引き起こすことができ、それは内容物を基質上で凝結させることによって採取することができる。例えば、基質はキャビティの開口に、又はその付近に配置された疎水性マイクロピラーとすることができる。内容物の排除は、試料が蒸発して、メニスカスの外側のキャピラリの壁に凝結するにつれて実行することもでき、これによりメニスカスが破壊され、キャピラリの内容物が放出される。
【0111】
[0131] マイクロポアなどのマイクロキャビティは、両端で開放していてもよく、内容物は静水力によって所定の位置に保持される。抽出プロセス中に、キャピラリの端部の一方を覆って、キャビティの誤った端部から内容物が排出されるのを防止することができる。キャビティは、例えば上述したプラスチックフィルムなどと同じ方法で覆うことができる。また、膨張材料を層としてアレイの一方側に接着することができる。
【0112】
[0132]装置
[0133] 本発明による分析物の検出には、幾つかの実施形態では、電磁放射を試料に、特にマイクロアレイなどの容器のアレイに適用することができる装置を使用する必要がある。装置は、試料から、特に試料容器の検出表面から放出された電磁放射の検出を可能にすることもできる。
【0113】
[0134] 本発明の範囲から逸脱することなく、本開示により任意のタイプの電磁放射源を使用することができる。一実施形態では、装置の電磁放射源は、試料中の少なくとも1つの標識の波長と一致する波長を有する広域スペクトル光又は単色抗原である。別の実施形態では、電磁放射源は連続波レーザなどのレーザである。別の実施形態では、電磁源は固体UVレーザである。他の適切な電磁放射源の非限定的リストには、アルゴンレーザ、クリプトン、ヘリウム−ネオン、ヘリウム−カドミウムタイプ、及びダイオードレーザが含まれる。幾つかの実施形態では、電磁源は1つ又は複数の連続波レーザ、アーク灯火、又はLEDである。
【0114】
[0135] 幾つかの実施形態では、装置は複数の電磁源を含む。他の実施形態では、複数の電磁(EM)放射源は、同じ波長の電磁放射を放出する。他の実施形態では、複数の電磁源は、試料中に存在し得る様々な標識の異なる吸収スペクトルに対応するために、異なる波長を放出する。
【0115】
[0136] 幾つかの実施形態では、電磁放射源は、マイクロポアのアレイが電磁放射と接触できるように配置される。幾つかの実施形態では、電磁放射源は、容器の検出表面が電磁放射を受けられるように配置される。
【0116】
[0137] 装置は、アレイの試料中の標識から電磁(EM)放射を受ける検出器も含む。検出器は、1つ又は複数の標識から電磁放射を放出する少なくとも1つの容器(例えばマイクロポア)を識別することができる。
【0117】
[0138] 一実施形態では、電磁放射に曝露した後に蛍光標識が放出する光(例えば紫外線、可視又は赤外線範囲の光)を検出する。1つ又は複数の検出器は、蛍光部分からの光子バーストの振幅及び継続時間を捕捉し、光子バーストの振幅及び継続時間を電気信号にさらに変換することができる。
【0118】
[0139] 粒子が検出可能になるように標識されるか、又は粒子が検出可能になるように固有の特性を有する場合、本発明の範囲から逸脱することなく、当技術分野で知られている任意の適切な検出機構を使用することができ、例えばCCDカメラ、ビデオ入力モジュールカメラ、ストリークカメラ、ボロメータ、光ダイオード、光ダイオードアレイ、アバランシェ光ダイオード、及び順次信号を生成する光電子倍増管、及びその組み合わせである。発光波長、発光強度、バーストサイズ、バースト継続時間、蛍光極性、及び任意のその組み合わせなど、電磁放射の様々な特性を検出することができる。
【0119】
[0140] 検出プロセスは自動化することもでき、装置はレーザ走査顕微鏡などの自動検出器を備える。
【0120】
[0141] 幾つかの実施形態では、開示された通りの装置は少なくとも1つの検出器を備えることができ、他の実施形態では、装置は少なくとも2つの検出器を備えることができ、各検出器は、標識によって放出される特定の波長範囲で光エネルギーを検出するように選択及び構成することができる。例えば、2つの別個の検出器を使用して、異なる標識で標識されている粒子を検出することができ、標識は、電磁源で励起されると、異なるスペクトルのエネルギーを有する光子を放出する。
【0121】
[0142]キット
[0143] 別の態様では、本発明は分析物を検出するキットを指向する。例示的実施形態では、キットは、長手方向に融合され、約1マイクロメートル〜約500マイクロメートルの直径を有する複数のキャピラリのマイクロポアアレイを含む。特定の実施形態では、キャピラリはキャピラリ間の光又はEM放射の透過を最小化する。キットは、磁性粒子など、原動力を受けると試料液体中で移動することができる粒子も含むことができる。これらの粒子は、分析物又は他の試料成分の結合相手を含むことができる。特定の実施形態では、キットは、分析物の結合相手で機能化されている磁性粒子を含む。さらに、キットは任意選択で、電磁放射を放出することができる1つ又は複数の標識を含み、標識は分析物又は他の試料成分の結合相手と共役することができる。キットは、試料中の第二、第三、又は第四などの分析物と結合する、又はアレイのマイクロポア間で試料成分を正規化するように機能化されている第二、第三、又は第四組などの粒子も含むことができる。光又は他の有害な状態による試薬の劣化を防止する安定剤(例えば酸化防止剤)も、キットの一部とすることができる。他の実施形態では、キットは、検出試薬及び緩衝剤に加えて、当該遺伝子から発現したタンパク質に特異的な抗体を含む。他の実施形態では、キットはmRNA又はcDNAの検出に特異的な試薬(例えばオリゴヌクレオチドプローブ又はプライマー)を含む。
【0122】
[0144] キットは任意選択で、生物学的細胞から分泌される様々な生物学的化合物の検出に、マイクロポアアレイの使用を提供する指令(すなわち、プロトコル)を含む指示書を含むことができる。指示書は通常、書面又は印刷物を含むが、これに限定されない。本発明では、このような指示を保存し、それをエンドユーザに連通することができる任意の媒体が想定される。このような媒体は、電子的記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例えばCD ROM)などを含むが、これらに限定されない。このような媒体は、このような指示書を提供するインターネットのサイトへのアドレスを含むことができる。
【0123】
[0145] 他の実施形態では、本発明はタンパク質及び/又は核酸の検出、識別及び/又は特徴付けのためのキットを提供する。幾つかの実施形態では、キットは、検出試薬及び緩衝剤に加えて、当該タンパク質などの分析物に特異的な抗体を含む。他の実施形態では、キットはmRNA又はcDNAの検出に特異的な試薬(例えばオリゴヌクレオチドプローブ又はプライマー)を含む。様々な実施形態では、キットは、すべての対照などの、検出アッセイを実行するために必要な構成要素、アッセイを実行するための指令書、及び結果の分析及び提示のために必要な任意のソフトウェアをすべて含む。
【0124】
[0146]生物学的認識アッセイ
[0147] 本発明のメカニズムを理解する必要はないが、当該化合物が細胞から分泌され、結合相手に結合するように、上述したアレイは、細胞を0〜240時間インキュベートするのに十分な量を有するマイクロポアを備えると考えられる。その結果、各マイクロポア内で、又はその間で、複数の生物学的認識アッセイを実行することができる。例えば、1つのこのような認識アッセイは、抗原抗体結合を含むことができる。
【0125】
[0148] 一実施形態では、本発明は、各細胞が抗体を産生し、マイクロポア中に抗体を分泌するように、複数の細胞を37℃で1〜24時間インキュベートすることを含む抗原抗体結合方法を想定する。一実施形態では、抗体は組換え抗体である。一実施形態では、抗体は単クローン性抗体である。一実施形態では、細胞の少なくとも1つが複数の抗体を産生する。本発明のメカニズムを理解する必要はないが、マイクロポアの構成により、このインキュベーションは、非常に狭い入口(したがって小さい露出表面積)及びポアの極端な長さによって蒸発損が減少していると考えられる。一実施形態では、抗体分泌は誘導剤によって刺激される。一実施形態では、誘導剤はIPTGを備える。図3を参照されたい。
【0126】
[0149]治療薬物の発見
[0150] 一実施形態では、本発明は新しい治療薬物を識別することを含む方法を想定する。例えば、疾病症状に関わることが知られている薬物の結合相手(例えば生物学的受容体及び/又は酵素)で、粒子をコーティングすることができる。次に、結合相手に親和性を有すると疑われている様々な化合物を分泌する複数の細胞を、非常に高密度のマイクロポアアレイを使用してスクリーニングする。さらに開発するために、最高の親和性を有する結合相手と化合物の複合体に付着する粒子を含むマイクロポアを選択する。
【0127】
[0151]診断用抗体の発見
[0152] 一実施形態では、本発明は診断用抗体を識別することを含む方法を想定する。例えば、疾病症状に関わることが知られている結合相手(すなわち、例えば抗原及び/又はエピトープ)で、粒子をコーティングすることができる。次に、結合相手に親和性を有すると疑われている様々な化合物を分泌する複数の細胞を、非常に高密度のマイクロポアアレイを使用してスクリーニングする。さらに開発するために、最高の親和性を有する結合相手と抗体の複合体の粒子を含むマイクロポアを選択する。
【0128】
[0153]タンパク質間の相互作用の研究
[0154] 一実施形態では、本発明はタンパク質間の相互作用を識別することを含む方法を想定する。例えば、疾病症状に関わることが知られている結合相手(すなわち、例えばタンパク質及び/又はペプチド)で粒子をコーティングすることができる。次に、結合相手に親和性を有することが疑われている様々なタンパク質及び/又はペプチドを分泌する複数の細胞を、非常に高密度のマイクロポアアレイを使用してスクリーニングする。さらに開発するために、最高の親和性を有する固定化した結合相手とタンパク質又はペプチドの複合体を有する粒子を含むマイクロポアを選択する。
【0129】
[0155]タンパク質と核酸の相互作用の研究
[0156] 一実施形態では、本発明はタンパク質と核酸の相互作用を識別することを含む方法を想定する。例えば、疾病症状に関わることが知られている結合相手(すなわち、例えばデオキシリボ核酸及び/又はリボ核酸及び/又はSOMAmer及び/又はアパタマー)で粒子をコーティングすることができる。次に、結合相手に親和性を有することが疑われている様々なタンパク質及び/又はペプチドを分泌する複数の細胞を、非常に高密度のマイクロポアアレイを使用してスクリーニングする。さらに開発するために、最高の親和性を有する固定化した結合相手と核酸の複合体を有する粒子を含むマイクロポアを選択する。
【0130】
[0157]タンパク質の炭水化物の相互作用の研究
[0158] 一実施形態では、本発明はタンパク質と炭水化物の相互作用を識別することを含む方法を想定する。例えば、疾病症状に関わることが知られている結合相手(すなわち、例えばオリゴ糖及びリポ糖類、又はタンパク糖類)で粒子をコーティングすることができる。次に、結合相手に親和性を有することが疑われている様々なレクチン、タンパク質及び/又はペプチドを分泌する複数の細胞を、非常に高密度のマイクロポアアレイを使用してスクリーニングする。さらに開発するために、最高の親和性を有する固定化した結合相手と炭水化物の複合体を有する粒子を含むマイクロポアを選択する。
【0131】
[0159]タンパク質の検出
[0160] 本明細書では、非常に感度が高いシステムを使用して、生物学的素子の不均質集団からタンパク質分析物を識別することを開示する。開示された方法及びシステムは、タンパク質工学に新規の重要なツールを提供する。特に、本明細書で開示する使用により、新しい抗体を発見する時間が14日間から1〜2日間へと大幅に短縮される。他の実施形態では、タンパク質又はポリペプチドの発現を測定することによって遺伝子発現を検出することができる。
【0132】
[0161] 一実施形態では、開示された方法を使用してタンパク質分析物を検出する。特定の分析物タンパク質の検出は、アレイのポア中で直接実行することができる。背景信号を抑制するように、粒子がポアの検出表面に堆積した後、画像を取得する。
【0133】
[0162] サンドイッチ免疫検定又は同様の結合又は交雑反応などの標準的な検出技術を使用して、生化学的感知を実行することができる。磁性粒子と併用して、光学的に標識した(例えば蛍光色素に付着させた)2次抗体を媒質に装填する。
【0134】
[0163] 素子によって産生された標的タンパク質が、粒子表面に付着した抗体に結合すると、2次抗体が粒子に結合する(図3A参照)。抗体に対する標的タンパク質の結合能力を最大化するために、試料体積に含有された液体全体で粒子が循環するように、磁性粒子を磁界に曝露することによって周期的に(例えば約20分毎に)浮遊状態に維持する。
【0135】
[0164]核酸の検出
[0165] 一実施形態では、分析物は核酸である。例えば、DNA又はmRNAの発現を任意の適切な方法で測定することができる。例えば、RNAの発現は、特定の構造の酵素分割によって検出される(INVADER(登録商標)アッセイ、Third Wave Technologies;例えば米国特許第5,846,717号、第6,090,543号、第6,001,567号、第5.985,557号、及び第5,994,069号を参照。それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。INVADER(登録商標)アッセイは、構造特異的酵素を使用して、重複したオリゴヌクレオチドプローブの交雑反応によって形成された複合体を分割することにより、特定の核酸(例えばRNA)を検出する。
【0136】
[0166] 別の実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブと交雑することによって、RNA(又は対応するcDNA)を検出する。交雑及び検出の様々な技術を使用する様々な交雑アッセイが使用可能である。例えば幾つかの実施形態では、TAQMAN(登録商標)アッセイ(PE Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ;例えば米国特許第5,962,233号及び第5,538,848号参照。それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)を使用する。アッセイは、PCR反応中に実行する。TaqManアッセイは、AMPLITAQ(登録商標)のGOLD DNAポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を利用する。5’−レポータ染料(例えば蛍光染料)及び3’−失活剤染料を有するオリゴヌクレオチドで構成されたプローブを、PCR反応に含める。PCR中に、プローブがその標的に結合すると、AMPLITAQ(登録商標)GOLDポリメラーゼの5’−3’核酸分解活性が、レポータ染料と失活剤染料の間のプローブを分割する。レポータ染料が失活剤染料から分離した結果、蛍光が増加する。信号がPCRのサイクル毎に蓄積し、蛍光計でモニタすることができる。
【0137】
[0167] さらに他の実施形態では、逆転写酵素PRC(RT−PCR)を使用して、RNAの発現を検出する。RT−PCRでは、逆転写酵素を使用して、RNAを相補DNA又は「cDNA」に酵素で変換する。次に、cDNAをPCR反応のテンプレートとして使用する。PCRの生成物は、任意の適切な方法で検出することができる。それにはゲル電気泳動及びDNA特異的染色剤での染色又は標識付きプローブとの交雑が含まれるが、これに限定されない。幾つかの実施形態では、量的逆転写酵素PCRと競合的テンプレートの標準化混合物の米国特許第5,639,606号、第5,643,765号及び第5,876,978号(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載された方法を利用する。
【0138】
[0168]細胞の検出
[0169] 別の実施形態では、分析物が生物学的細胞である。一実施形態では、分析物は少なくとも1つの生物学的細胞である。
【0139】
[0170] 本明細書で開示する検出は、任意のタイプの生物学的細胞の分離に使用することができ、それにはタンパク質、炭水化物、酵素、ペプチド、ホルモン、受容体を発現又は産生する細胞系、抗体を産生する他の細胞系、遺伝子工学による細胞及び/又は活性化した細胞が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明は様々な細胞学的活性をスクリーニングするために使用することができ、それには表面受容体タンパク質の発現、酵素産生、及びペプチド産生が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明は様々な試験薬をスクリーニングして、所望の細胞学的活性に対する試験薬の効果を判定するために使用することができる。分離及びスクリーニングすることが望ましい他のタイプの細胞、検出することが望ましい他のタイプの細胞学的活性、及びスクリーニングされる特定の試験薬は、当業者には容易に認識される。
【0140】
[0171] 特定の実施形態では、生物学的細胞は形質転換した生物学的細胞である。細胞の形質転換は、例えばプラスミド又はウィルスなどの任意の周知のベクタを使用して、任意の周知の方法で実行することができる。
【0141】
[0172] 一実施形態では、生物学的細胞は微生物、真菌、哺乳類、昆虫又は動物の細胞である。一実施形態では、微生物細胞は細菌細胞である。一実施形態では、細菌細胞は大腸菌細胞である。
【0142】
[0173] 一実施形態では、動物細胞は希少な生化学的化合物を含む。一実施形態では、希少な生化学的化合物はタンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、炭水化物を含む群から選択される。
【0143】
[0174] 別の実施形態では、生物学的細胞は蛍光タンパク質を産生及び/又は発現する。さらに別の実施形態では、生物学的細胞は蛍光タンパク質(例えばGFP)を産生する。
【0144】
実施例
[0175] 以下の実施例は、請求の範囲にある本発明を例示するために提供されているが、本発明を限定するものではない。
【0145】
[0176]実施例1:磁性ビーズの信号遮断
[0177] この実施例は、磁性ビーズが、粒子に結合していない溶液中の標識からの高い背景信号を阻止する能力を実証する。
【0146】
[0178] 清浄で乾燥した20μmのポア径のアレイプレート(J5022-19、Hamamatsu Photonics K. K.)に、各ポアが標識と磁性粒子の両方を受けるように、10μMのAlexa 488蛍光色素(Sigma Aldrich)を標識として、及び2.8μmの磁性粒子を装填した。蛍光色素標識のみでは、磁性ビーズ粒子に結合又は会合しない。
【0147】
[0179] アレイのポアは、検出前にはいかなる原動力にも曝露せず、したがって磁性粒子及び標識が両方とも溶液中に残っている。インキュベーション後、磁性粒子及び標識を含むこのアレイをEM放射に当て、顕微鏡を使用して標識からの蛍光発光を画像化する。予想されるように、図5Aに示すようにポアはすべて有意の信号を示す。何故なら、溶液中の非結合標識はEM放射に完全に曝露しているからである。CCDカメラを使用して、蛍光画像を捕捉した。ピクセルのカウント及び強度を数量化すると、信号は約4×10の適切な強度でピクセルのカウントを示す。したがって、粒子の堆積がない状態で、溶液中の非結合標識は、その内容物に関係なく、ほぼすべてのポアで信号を放出する。
【0148】
[0180] 次に、同じ方法で、10mm立方のネオジム磁石(B666、K&J Magnetics Inc.)を(3mm以内の)アレイの底部に60秒間配置することにより、アレイの各反応容器の検出表面(例えばこの実施例ではメニスカス)に磁性粒子を堆積させる。粒子が堆積した後、同じ位置で別の蛍光画像を捕捉する。図5Bに示すように、画像は信号のあるポアが驚くほど減少していることを示す。実際、ほぼすべてのポアがその信号を失うか、又は減少している。信号を数量化すると、堆積したアレイにおける適切な強度の信号がゼロに低下している。非結合標識からの信号は、磁性粒子によって阻止され、アレイからの基底自己蛍光のみが残る。驚くことに、試料の検出表面における粒子の堆積は、各ポアで非結合標識からの背景信号を排除する新規の方式を表す。
【0149】
[0181]実施例2:アッセイの調製
[0182] この実施例は、アレイ中の分析物の有無を検出する代表的アッセイシステムを提供する。言うまでもなく、最終的なスクリーニングのデザインは、実験及びその目的に特異的な多くの要素に依存する。
【0150】
[0183] このアッセイでは、プラスミド発現GFPを含有する大腸菌株Imp4213を使用した。約10億〜100億個のGFP発現細菌細胞を、25μg/mLのカナマイシン(KAN)を有する5mLのルリア液体培地(LB)媒質に加え、細菌が指数増殖期に入るまで振盪器(200RPM)上で37℃にて約3時間膨張させ、次に平板培養のために調製した。
【0151】
[0184] この実施例で使用する粒子は磁性ビーズである。特に、これらの実施例では、使用した粒子は、ストレプトアビジン(Part No. 112-05D、Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)又はオリゴ(dT)25リガンド(Part No. 610-05、Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)に結合した直径2.8μmの磁性粒子(Dynabeads)であった。磁性ビーズを、ビオチン化したウサギの抗GFP抗体(A10259、Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)で約30分間インキュベートし、これで抗GFP抗体がビオチン−ストレプトアビジン相互作用を介して磁性ビーズに結合した。したがって、抗GFP磁性粒子が生成された。
【0152】
[0185] この実施例では、細胞をアレイに加える前に、細胞に磁性ビーズ及び標識を補充する。磁性粒子(分析物を検出する抗GFP抗体又はネガティブコントロールとしてのオリゴ(dT)25ビーズ)を30mg/mLの濃度まで加えた。標識は、15μg/mLのビオチン化ウサギ抗GFP(A10259、Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を、ストレプトアビジン(40709-1MG-F、Sigma Aldrich)と共役した蛍光体Atto 590と組み合わせて生成し、これで蛍光標識した抗GFP抗体が形成される。このアッセイのデザインでは、GFPと同じ波長付近でEM放射を放出しない限り、任意の蛍光体標識を使用することができた。
【0153】
[0186] 滴をアレイに載せ、分析混合物をアレイプレート表面に約1μL/mmまで広げることによって、清浄で乾燥した20μmのポア径のアレイプレート(J5022-19、Hamamatsu Photonics K. K.)に細胞を加えた(図3)。混合物は、親水性のポア表面を通してポア中に自然に分配される。
【0154】
[0187] 試料が分配されたら、ポアアレイプレートが捕捉表面から80μL上になるように、アレイプレートをホルダに配置する(SylgardR 184 Silicone Elastomer Kit、Dow Corning)。ホルダは、厚さ250μmの捕捉表面を有するガラスのスライド(12-550-14、Fisher Scientific)で構成され、2個の80μmの接着テープスペーサが捕捉表面の各側にある。ポアアレイをホルダに載せたら、アレイの上側をプラスチックラップで封止する(22-305654、Fisher Scientific)。構成全体を、湿度飽和のために脱イオン水で濡らしたティッシュペーパの10mmの球2個とともに100mmのペトリ皿に入れる。皿をパラフィルムで封止し、37℃で19時間インキュベートできるようにする。
【0155】
[0188] 分析物があるポアを選択するために、10mm立方のネオジム磁石(B666、K&J Magnetics Inc.)を(3mm以内の)アレイの底部に60秒間配置することにより、磁性ビーズをポアアレイの底面に堆積させる。次に、ホルダ上のアレイをArcturus Laser Capture Microdissection System(モデル:Veritas、Applied Biosystems、米国)に装填して、検出を容易にする。
【0156】
[0189] 分析物を含むポアの蛍光を検出するために、20倍の対物レンズ及び594nmの励起、630nmの発光蛍光立方体を備える顕微鏡でポアアレイプレートの底面蛍光を読み取ることにより、免疫検定結果を走査する。CCDカメラを使用して画像捕捉を実行した。
【0157】
[0190]実施例3:アレイ内の分析物の検出
[0191] この実施例は、タンパク質結合及び検出アッセイは、本明細書で開示する方法を使用してポア内で直接実行できることを示す。この実施形態では、実施例2で述べたステップに従ってアッセイシステムを構成する。
【0158】
[0192] 第一アレイは、抗GFP磁性粒子、及び実施例2に述べた通りに生成した抗GFP標識を含むポアを含む。インキュベーション後、アレイを上述のように磁力に曝露して、粒子を試料の検出表面へと移動させ、これはこの実施形態ではアレイの各容器のメニスカスである。このアレイの画像を捕捉する。抗GFP磁性粒子が標的タンパク質(GFP)に結合し、これには抗GFP標識も結合している。磁力が標識した粒子を検出表面へと移動させ、したがって、信号放出標識を検出表面へと集中させ、非結合標識がEM放射を検出器又は顕微鏡へと透過させるのを阻止する。ポア内のこの相互作用の略図を図1Bに示す。
【0159】
[0193] 第二アレイは、ストレプトアビジンではなくリガンドオリゴ−dTに結合した粒子を含む。ストレプトアビジンがない状態で、抗GFP抗体に共役したビオチンは、磁性粒子と相互作用又は結合しない。したがって、磁性粒子、抗GFP抗体、及び抗GFP標識は両方とも溶液中に残る。インキュベーション後、アレイを磁力に曝露し、粒子を検出表面へと移動させる。EM放射に曝露した後、アレイを画像化する。オリゴ−dT磁性粒子はいかなる標識にも結合していないので、検出表面に堆積し、EM放射が溶液中の標識に到達することを阻止する。粒子を使用して、磁性粒子に結合していない標識から放出されるEM放射を検出器が検出するのを阻止することもできる。各アレイからの蛍光の量を数量化すると、特定の抗GFP磁性ビーズからの放出は、ネガティブコントロールのオリゴ(dT)ビーズより非常に高い。
【0160】
[0194] したがって、この実験は、開示されたような磁性ビーズ阻止方法がポア信号を特異的に阻止することによって分析物を含むポアを選択できることを示す。
【0161】
[0195] 実施例3:単細胞特異的な検出
[0196] 以下の実施例は、単細胞レベルで分析物を検出するために開示された方法の特異性を実証する。
【0162】
[0197] この実施形態では、アッセイシステムは実施例2で述べたステップに従って構成されるが、ただし細胞を平板培養する前に、細菌細胞を1マイクロリットル当たり細胞300個まで希釈し、これはポアの直径が20マイクロメートルのアレイプレート上のポア1個当たり細胞が約0.1個という結果になると計算された。アレイに加えると、この希釈液は大部分のポアに最大で単一の細菌細胞を生成することになる。
【0163】
[0198] 抗GFPストレプトアビジンビーズ及び抗GFP標識を、上述したように第一アレイに加えた。磁性ビーズの堆積後にEM放射をアレイに曝露した場合に見られた対応する信号を、図7Aに示す。多くの細胞が信号を生成し、これはストレプトアビジンとビオチンの連結を介してビオチン化抗GFP抗体に結合したストレプトアビジン磁性粒子からの蛍光信号を表す。磁力を加えた後、分析物標的タンパク質(GFP)を発現し、したがってビーズを標識に結合する細胞のみが、正の信号を提供する。しかしながら、単細胞希釈では、信号が減少した、又は信号がないポアも観察される。これらのポアは、何らかのGFP産生細胞が欠落している、及び/又はもはやGFPを発現しない細菌細胞を含有する可能性が最も高い。したがって、磁性粒子に結合する標識はなく、磁力を加えると、磁性粒子が検出表面を阻止する。
【0164】
[0199] したがって、オリゴ(dT)25ビーズを含む他のアレイが示すポアからの蛍光信号は、図7Bに示すように非常に少ない。このアレイでは、ビーズに結合している抗GFP抗体はなく、したがってビーズに結合している標識もない。磁力を加えた後、分析物標的タンパク質(GFP)を発現する細胞のいずれも信号を提供しない。何故なら、磁性ビーズが、標識のない状態で検出表面に堆積しているからである。この構成では、EM源からのEM放射は、これらのポアで溶液中の非結合標識に到達することができない。したがって、このアレイでは信号が観察されない。磁性粒子は、試料と検出器の間にも堆積することができ、標識から検出器への放出を阻止する。
【0165】
[0200]実施例4:検出は細胞の溶解を必要としない
[0201] この実施例は、アレイ中のビーズでサンドイッチ免疫検定を実行するのに、分析物検出のための細胞溶解が必要でないことを示す。
【0166】
[0202] これらの実施形態では、抗GFP抗体に連結した磁性ビーズを含む2つのポジティブコントロールのアレイで、以前の実施例で述べたようにアレイを調製した。ポジティブコントロールのアレイ1個の細胞は、Microplateホーンを有するMisonix 4000を使用して検出する前に、5ワットで1.5分間の音波処理を使用して溶解し、他のポジティブコントロールアレイは溶解しなかった。
【0167】
[0203] ネガティブコントロールアレイはオリゴ−dTビーズを含み、以前の実施例では、このアレイシステムですべてのポアからの信号を阻止することが示されている。ネガティブコントロールアレイは、ポジティブコントロールアレイと同じ音波処理条件を使用して溶解した。結果は、ピクセルカウントの数量化に基づき、細胞溶解(音波処理)ステップに関係なく、ポジティブコントロールアレイは両方とも同様の信号レベルを有することを示す(図8A図8C参照)。さらに、溶解ステップでは粒子阻止の選択性が除去されない。ネガティブコントロールビーズがなおポジティブコントロールレベルよりはるかに低いままだからである。図8A及び図8B。これは、特定の発現メカニズムでは、本明細書で述べる方法を使用して分析物を検出するために、細胞溶解は必要ないことを示唆する。
【0168】
[0204]実施例5:細胞の抽出及び回収
[0205] 以下の実施例は、数十億個の標的細胞のうち単一の標的をディスプレイし、個別に回収することを実証する。
【0169】
[0206] この実施例では、実施例2のように細胞、ビーズ、標識及びアレイを調製する。分析物を含む1つ又は複数のポアを識別後に、単一のポア中の溶液を抽出することが望ましい。
【0170】
[0207] 図9で述べ、示すように、ポアアレイが捕捉表面から約80マイクロメートル上になるように、アレイをホルダに配置する。ホルダは、厚さ250μmの捕捉表面を有するガラスのスライド(12-550-14、Fisher Scientific)で構成され、2個の80μmの接着テープスペーサが捕捉表面の各側にある。ポアアレイをホルダに載せたら、アレイの上側をプラスチックラップで封止する(22-305654、Fisher Scientific)。
【0171】
[0208] 回収するには、高密度ポアなどの当該ポアを選択する。次に、349μmの固体UVレーザを20〜30%の強度出力で集束させ、20マイクロジュールのパルスを放出することによって、ポアを抽出する。次に、標的ポアから抽出した細胞を、図9に示すように捕捉表面に配置する。
【0172】
[0209] 抽出後、次にホルダ及びアレイをArcturus Laser Capture Microdissection Systemから取り出し、抽出した細胞を含む捕捉表面を5mLのLBと25μg/mLのKANの媒質に入れ、37℃で19時間、振盪器でインキュベートし、抽出細胞を膨張させる。これで、当該タンパク質を発現するこれらの細胞は、任意のタイプのスケールアップしたタンパク質産生及び/又は別の加工をする調製が整う。
【0173】
[0210]実施例:アレイのポア中の修飾試薬濃度
[0211] 以下の実施例は、試薬及び磁性粒子などの他の分子が、装填後にアレイ中の細胞を妨害せず、アレイに加えられることを実証する。
【0174】
[0212] この実施形態では、細胞2,500個/Lの濃度でHuman Embryonic Kidney 293(HEK 293)細胞を含有するFreestyle 293 Mediaを、100μmのポア径のマイクロポアアレイに加えた。これによって、ポア1個当たり約20個の細胞が装填され、細胞施依存度は約50%であった。細胞は、最初にTexas Redフィルタキューブを使用して10xの蛍光顕微鏡で画像化し、そのチャネルの背景蛍光があればすべて測定した(図10A)。次に、2μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)を含むFreestyle Mediaの50μLの滴をマイクロポアアレイの上端に載せた。PPIは、660ダルトンで比較的小さい分子であり、室温で水溶液には60秒で約400μm拡散する。マイクロポアは長さ約1mmであるので、マイクロポアの底部に装填した細胞は、約5分後にPI分子に曝露される。これは、図10Bに示すように、PI分子に、生存不能のHEK 293細胞の細胞核中のDNAが介在することが検出されて確認された。
【0175】
[0213] 追加の実施形態:以下の追加の実施形態は非限定的であり、本開示の様々な態様をさらに例証するためにここに提示される。
【0176】
[0214] 標的生物学的素子を検出する装置は、
約1マイクロメートル〜約500マイクロメートルの内径を有するマイクロポアのアレイと、
アレイに磁界を加える磁気源と、
アレイに電磁放射を加える電磁放射源と、
アレイから電磁放射を受け、放射を放出する少なくとも1つのマイクロポアの位置を識別する検出器とを備える。
【0177】
[0215] 装置はさらに、アレイの各マイクロポアに結合相手を備える磁性粒子を備える。
【0178】
[0216] 装置はさらに、電磁放射を放出するマイクロポアにエネルギーを集束させるエネルギー源を備える。
【0179】
[0217] 装置のマイクロポアは半透明ではない。
【0180】
[0218] マイクロポアは、ポア間の光透過を防止する材料でコーティングされる。
【0181】
[0219] 分析物を検出するキットは、約1マイクロメートル〜約500マイクロメートルの直径を有する長手方向に融合した複数のファイバを備えるマイクロポアアレイ、及び分析物の結合相手を備える磁性粒子を備える。
【0182】
[0220] マイクロポアは半透明ではない。
【0183】
[0221] マイクロポアは、ポア間の光透過を防止する材料でコーティングされる。
【0184】
[0222] 本発明の様々な特定の実施形態について本明細書で述べてきたが、本発明はこれらの高精度の実施形態に限定されず、本発明の範囲及び精神から逸脱せずに、様々な変更又は改変が当業者によって実行できることが理解される。
【0185】
[0223] 本明細書で述べた特定の方法、プロトコル、及び試薬などは当業者に認識されるように変更できるので、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を述べる目的のみで使用され、本発明の範囲を限定するものではないことも理解されたい。
【0186】
[0224] 本明細書で明示的に述べていなくても、当業者に認識されるように、図面に図示された形体は必ずしも一定の比率の縮尺で描かれず、一実施形態の形体を他の実施形態で使用できることに留意されたい。
【0187】
[0225] 本明細書で列挙したいかなる数値も、低い方の値と高い方の値の間に少なくとも2単位の差がある限り、低い方の値から高い方の値まで1単位刻みですべての値を含む。一例として、成分の濃度、又はプロセス変数の値、例えばサイズ、角度サイズ、圧力、時間などが例えば1〜90、特に20〜80、さらに特定的に30〜70であると述べた場合、本明細書では15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などの値が明示的に列挙されているものとする。1未満の値では、1単位は、適宜、0.0001、0.001、0.01又は0.1になると見なされる。これらは、特定的に意図されるものの例にすぎず、列挙された最低値と最高値の間にある数字で可能なすべての組み合わせが、同様の方法で本出願では明示的に提示されているものとする。
【0188】
[0226] 本明細書で引用したすべての参考文献及び出版物の開示は、それぞれが参照によって個別に組み込まれた場合と同じ程度に、参照により全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10