(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリアミド系樹脂中の、前記単位(a)、前記単位(b)、及び前記単位(c)の含有量の合計に対する前記単位(a)の量が50質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載のポリアミド系樹脂。
(i)前記アミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体と、前記ジカルボン酸(b1)、又はそのアミド形成性誘導体とを反応させてプレポリマーを得ることと、
(ii)前記プレポリマーに、前記ジアミン(c1)を反応させて、前記ポリアミド系樹脂を生成させることと、を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題点に鑑みて、本発明の目的は、固体状態において、ショア硬度や降伏強度等の機械的特性のバランスに優れるポリアミド系樹脂と、当該ポリアミド系樹脂を含む成形体と、当該ポリアミド系樹脂を含むフィルム又はシートを備える積層体と、前述の成形体、及び前述の積層体の少なくとも1つを備える医療機器と、前述のポリアミド系樹脂の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記[1]〜[6]のポリアミド系樹脂、[7]〜[9]の成形体、[10]の積層体、[11]の医療機器、[12]〜[15]のポリアミド系樹脂を製造する方法に関する。
【0007】
[1]単位(a)と、単位(b)と、単位(c)とを含むポリ
アミド系樹脂であって、
単位(a)が、下記式(A):
−CO−R
1(−NH−CO−R
1)
m−NH−・・・(A)
(式(A)中、R
1は、独立に、炭素原子数10以上12以下の直鎖状飽和炭化水素基であり、mは1以上14以下の整数であり、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される単位であり、
単位(b)が下記式(B):
−CO−R
2−CO−・・・(B)
(式(B)中、R
2は、芳香族環及び脂肪族環から選択される1種以上の環式基を含む有機基である。)
で表される単位であり、
単位(c)が下記式(C):
−NH−R
3−NH−・・・(C)
(式(C)中、R
3は、芳香族環を含む有機基である。)
で表される単位であり、
ポリアミド系樹脂中の、単位(a)、単位(b)、及び単位(c)の含有量の合計が、90質量%以上であり、
ポリアミド系樹脂を構成する全単位における、カルボニル末端基モル量(Ac)と、アミノ(Aa)末端基モル量との比率が、Ac/Aaとして80/100〜100/80である、ポリアミド系樹脂。
【0008】
[2]ポリアミド系樹脂中の、単位(a)、単位(b)、及び単位(c)の含有量の合計に対する単位(a)の量が50質量%以上99質量%以下である、[1]に記載のポリアミド系樹脂。
【0009】
[3]単位(b)が、テレフタロイル単位、イソフタロイル単位、及びフタロイル単位から選択される1種以上である、[1]又は[2]に記載のポリアミド系樹脂。
【0010】
[4]単位(c)が、下記式(c−1)〜(c−3):
【化1】
で表される単位から選択される1種以上である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂。
【0011】
[5]単位(c)が、融点が200℃未満であり沸点が200℃以上であるジアミンに由来する、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂。
【0012】
[6]融点が50℃以上410℃以下である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂。
【0013】
[7][1]〜[6]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂を含む材料からなる成形体。
【0014】
[8]フィルム、シート、チューブ、粉末、繊維、織布、又は不織布である、[7]に記載の成形体。
【0015】
[9]カテーテル用バルーン、又は医療用チューブである、[7]に記載の成形体。
【0016】
[10][8]に記載のフィルム、又はシートを含む、積層体。
【0017】
[11][8]又は[9]に記載の成形体、及び[10]に記載の積層体からなる群より選択される少なくとも1つを備える医療機器。
【0018】
[12]下記式(A1):
HOOC−R
1(−NH−CO−R
1)
m−NH
2・・・(A1)
(式(A1)中、R
1は、独立に、炭素原子数10以上12以下の直鎖状飽和炭化水素基であり、mは1以上14以下の整数であり、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるアミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体と、
下記式(B1):
HOOC−R
2−COOH・・・(B1)
(式(B1)中、R
2は、芳香族環及び脂肪族環から選択される1種以上の環式基を含む有機基である。)
で表されるジカルボン酸(b1)、又はそのアミド形成性誘導体と、
下記式(C1):
H
2N−R
3−NH
2・・・(C1)
(式(C1)中、R
3は、芳香族環を含む有機基である。)
で表されるジアミン(c1)と、を反応させてポリアミド系樹脂を生成させることを含む、[1]に記載のポリアミド系樹脂を製造する方法。
【0019】
[13]
(i)アミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体と、ジカルボン酸(b1)、又はそのアミド形成性誘導体とを反応させてプレポリマーを得ることと、
(ii)プレポリマーに、ジアミン(c1)を反応させて、ポリアミド系樹脂を生成させることと、を含む、[12]に記載の方法。
【0020】
[14]ジアミン(c1)について、融点が200℃未満であり沸点が200℃以上である、[12]又は[13]に記載の方法。
【0021】
[15]プレポリマーを生成させる反応と、ポリアミド系樹脂を生成させる反応とが、溶融混練法で行われる、[13]に記載の方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、固体状態において、ショア硬度や降伏強度等の機械的特性のバランスに優れるポリアミド系樹脂と、当該ポリアミド系樹脂を含む成形体と、当該ポリアミド系樹脂を含むフィルム又はシートを備える積層体と、前述の成形体、及び前述の積層体の少なくとも1つを備える医療機器と、前述のポリアミド系樹脂の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪ポリアミド系樹脂≫
ポリアミド系樹脂は、単位(a)と、単位(b)と、単位(c)とを含む。各単位については詳細に後述する。
【0024】
ポリアミド系樹脂中の、単位(a)、単位(b)、及び単位(c)の含有量の合計は、90質量%以上であり、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
ポリアミド系樹脂は、所定の種類の単位(a)を所定量含んでいれば、エステル結合(−CO−O−)、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、及びカーボネート結合(−O−O−CO−等の結合を少量含んでいてもよい。
【0025】
ポリアミド系樹脂を構成する全単位における、カルボニル末端基モル量(Ac)と、アミノ(Aa)末端基モル量との比率は、Ac/Aaとして80/100〜100/80であり、90/100〜100/90が好ましく、95/100〜100/95がより好ましく、100/100が特に好ましい。
【0026】
上記の所定の要件を満たすポリアミド系樹脂は、良好な機械的特性と、熱可塑性とを兼ね備え、従来より種々の熱可塑性樹脂が用いられている用途において好適に用いられる。
【0027】
以下、ポリアミド系樹脂に含まれる各単位について説明する。
【0028】
<単位(a)>
単位(a)が、下記式(A):
−CO−R
1(−NH−CO−R
1)
m−NH−・・・(A)
(式(A)中、R
1は、独立に、炭素原子数10以上12以下の直鎖状飽和炭化水素基であり、mは1以上14以下の整数であり、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される単位である。
なお、単位(a)は、ポリアミド系樹脂中で、ハードセグメントとしての機能を奏する。そして、R
1の炭素原子数が大きいほど、ポリアミド系樹脂の靱性が向上する傾向がある。
【0029】
R
1の具体例としては、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、及びドデカン−1,12−ジイル基である。
【0030】
mは1以上14以下の整数である。単位(a)は、通常、異なるmの値を有する種々の単位を含む。mの値の平均値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られる数平均分子量により決定することができる。
【0031】
単位(a)を与える好適な単量体の具体例としては、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及び13−アミノトリデカン酸から選択される1種以上の縮合物が挙げられる。
単位(a)を与える単量体としては、11−アミノウンデカン酸の縮合物、12−アミノドデカン酸の縮合物、及び13−アミノトリデカン酸の縮合物が好ましく、12−アミノドデカン酸の縮合物がより好ましい。
【0032】
また、ポリアミド系樹脂中の、単位(a)、単位(b)、及び単位(c)の含有量の合計に対する単位(a)の量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、60質量%以上99質量%以下がより好ましく、70質量%以上90質量%以下が特に好ましく、80質量%以上90質量%以下が最も好ましい。
【0033】
なお、ポリアミド系樹脂を構成する全単位における、単位(a)のモル数をMaとし、単位(b)のモル数をMbとする場合に、比率Ma/Mbが、95/100〜100/95であるのが好ましい。
ポリアミド系樹脂は、単位(a)のアミノ基末端に単位(b)が結合した複合単位からなるプレポリマーに由来するジカルボニル単位を含むのが好ましい。比率Ma/Mbが、上記の範囲内であると、所望する構造のプレポリマーに由来するジカルボニル単位が良好に生成する。
【0034】
<単位(b)>
単位(b)は下記式(B):
−CO−R
2−CO−・・・(B)
(式(B)中、R
2は、芳香族環及び脂肪族環から選択される1種以上の環式基を含む有機基である。)
で表される単位である。
【0035】
R
2は、芳香族環及び脂肪族環から選択される1種以上の環式基を含む有機基である。
当該有機基に含まれる芳香族環は、芳香族複素環であっても芳香族炭化水素環であってもよく、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
当該有機基に含まれる脂肪族環は、脂肪族複素環であっても脂肪族炭化水素環であってもよく脂肪族炭化水素環が好ましい。
脂肪族炭化水素環は、単環であっても、多環であってもよい。単環としては、炭素原子数3〜10のシクロアルカン環が挙げられる。多環としては、ノルボルナン環、トリシクロノナン環、トリシクロデカン環(例えばアダマンタン環)、及びテトラシクロドデカン環(例えばデカヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン環)が挙げられる。
【0036】
R
2としての有機基が2以上の環式基を含む場合、2以上の環式基は、単結合により、又は連結基を介して結合していてもよいし、互いに縮合していてもよい。
R
2としての有機基において、当該有機基に含まれる環式基における環構成原子の数の合計は50以下が好ましく、20以下がより好ましく、12以下が特に好ましい。
【0037】
芳香族環、及び脂肪族環が置換基を有する場合、当該置換基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
置換基の典型的な例としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基、炭素原子数2〜6の脂肪族アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、及びハロゲン原子基がより好ましい。
【0038】
R
2が芳香族環を含む有機基である場合、当該有機基の好ましい例として、下記式(1)〜(4)で表される基が挙げられる。
【化2】
【0039】
上記式(1)〜(4)中、R
11は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される1種である。R
11は、水素原子であるのが好ましい。
式(4)中、Qは、式:−C
6H
4−、−O−C
6H
4−CO−C
6H
4−O−、−OCO−C
6H
4−COO−、−OCO−C
6H
4−C
6H
4−COO−、−OCO−、−O−、−S−、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−C(CH
3)
2−、−CH
2−、−O−C
6H
4−C(CH
3)
2−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−C(CF
3)
2−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−SO
2−C
6H
4−O−、−C(CH
3)
2−C
6H
4−C(CH
3)
2−、−O−C
10H
6−O−、−O−C
6H
4−C
6H
4−O−、及び−O−C
6H
4−O−で表される基よりなる群から選択される1種を示す。
Qの例示における、−C
6H
4−はフェニレン基であり、m−フェニレン基、及びp−フェニレン基が好ましく、p−フェニレン基がより好ましい。また、−C
10H
6−は、ナフタレンジイル基であり、ナフタレン−1,2−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,3−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、及びナフタレン−2,7−ジイル基が好ましく、ナフタレン−1,4−ジイル基、及びナフタレン−2,6−ジイル基がより好ましい。
【0040】
以上説明したR
2としての有機基の中では、p−フェニレン基、m−フェニレン基、及びo−フェニレン基が好ましい。
つまり、ポリアミド系樹脂は、単位(b)として、テレフタロイル単位、イソフタロイル単位、及びフタロイル単位から選択される1種以上を含むのが好ましい。
【0041】
単位(b)を与える単量体の好適な例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、及び4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸が好ましい。
【0042】
また、ポリアミド系樹脂中の、単位(a)、単位(b)、及び単位(c)の含有量の合計に対する、単位(b)及び単位(c)の含有量の合計の割合は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が特に好ましい。
なお、ポリアミド系樹脂を構成する全単位における、単位(b)のモル数をMbとし、単位(c)のモル数をMcとする場合に、比率Mb/Mcが、95/100〜100/95であるのが好ましい。単位(b)と単位(c)との比率が上記の範囲内であることにより、機械的性質に優れるポリアミド系樹脂を得やすい
。
【0043】
<単位(c)>
単位(c)は下記式(C):
−NH−R
3−NH−・・・(C)
(式(C)中、R
3は、芳香族環を含む有機基である。)
で表される単位である。
【0044】
式(C)中のR
3としての有機基は、脂肪族環を含まないことの他は、R
2としての有機基と同様である。
【0045】
R
3としての有機基の好適な例としては、o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、及び前述の式(1)〜(4)で表される基が挙げられる。
式(1)〜(4)で表される基の中で、好ましい基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、1−メチルベンゼン−2,4−ジイル基、1−メチルベンゼン−2,5−ジイル基、1−メチルベンゼン−2,6−ジイル基、1−メチルベンゼン−3,4−ジイル基、ナフタレン−1,2−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,3−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ビフェニル−3,4’−ジイル基、ビフェニル−3,3’−ジイル基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルメタン−3,4’−ジイル基、ジフェニルメタン−3,3’−ジイル基、1,2−ジフェニルエタン−4’,4”−ジイル基、1,2−ジフェニルエタン−3’,4”−ジイル基、1,2−ジフェニルエタン−3’,3”−ジイル基、2,2−ジフェニルプロパン−4’,4”−ジイル基、2,2−ジフェニルプロパン−3’,4”−ジイル基、2,2−ジフェニルプロパン−3’,3”−ジイル基、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイル基、ジフェニルエーテル−3,4’−ジイル基、ジフェニルエーテル−3,3’−ジイル基、ベンゾフェノン−4,4’−ジイル基、ベンゾフェノン−3,4’−ジイル基、ベンゾフェノン−3,3’−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基、ジフェニルスルホン−3,4’−ジイル基、及びジフェニルスルホン−3,3’−ジイル基が挙げられる。
【0046】
R
3としての有機基として特に好ましい基としては、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイル基、ジフェニルエーテル−3,4’−ジイル基、及びジフェニルエーテル−3,3’−ジイル基が挙げられる。
つまり、単位(c)としては、下記式(c−1)〜(c−3):
【化3】
で表される単位から選択される1種以上が好ましい。
【0047】
単位(c)を与える単量体の好適な例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4’,4”−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、3’,4”−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、3’,3”−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4’,4”−ジアミノ−2,2−ジフェニルプロパン、3’,4”−ジアミノ−2,2−ジフェニルプロパン、3’,3”−ジアミノ−2,2−ジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、及び3,3’−ジフェニルスルホンが挙げられる。
これらの中では、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、及び3,3’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0048】
なお、単位(c)は、融点が200℃未満であり沸点が200℃以上であるジアミンに由来するのが好ましい。かかるジアミンを用いることにより、適切な温度で重縮合反応を実施することにより単量体の重縮合反応を良好に進行させつつ、単位(c)を与えるジアミンの重縮合反応装置からの留出を抑制しやすい。
単位(c)を与えるジアミンについて、融点が230℃未満であり沸点が230℃以上であるのが好ましく、融点が260℃未満であり沸点が260℃以上であるのがより好ましい。
なお、沸点は、大気圧下での沸点である。
【0049】
融点、及び沸点と、入手容易性とからは、単位(c)を与える単量体としては、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、2,3−ジアミノナフタレン、p−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、及び3,3’−ジアミノジフェニルエーテル
【0050】
<その他の成分>
以上説明したポリアミド系樹脂に、リン化合物を含有させてもよい。これにより、ポリアミド系樹脂を含む成形体の破断伸びや破断応力をより向上させることができる。そのため、リン化合物を含むポリアミド系樹脂組成物は、例えば医療用バルーンに好適である。
また、後述するように、ポリアミド系樹脂の製造工程においては、重合反応の安定化や酸化に起因する着色を防止することができる。
このようなリン化合物としては、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらのうち、重合反応の安定性の向上、ポリアミド系樹脂に対する耐熱安定性の付与、成形体の力学的特性の向上の観点からは、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましい。
リン化合物の含有量は、ポリアミド系樹脂の質量に対してリン元素として5質量ppm以上5000質量ppm以下が好ましく、20質量ppm以上4000質量ppm以下がより好ましく、30質量ppm以上3000質量ppm以下がさらに好ましい。
【0051】
ポリアミド系樹脂には、前述のリン化合物以外に、特性を損なわない範囲で、目的に応じて種々の添加剤を配合することができる。具体的には、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑材、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、難燃剤、補強材、無機フィラー、微小繊維、X線不透過剤等を添加することができる。
【0052】
ポリアミド系樹脂は、上記の単位を与える単量体を、所望する比率で、公知の方法に従って重縮合させることによって調製できる。
【0053】
ポリアミド系樹脂の溶融粘度(メルトフローレート、MFR)は、230℃、2.16kgf(21.2N)において0.1〜20(g/10min)であることが好ましい。これにより、押出し成形性が良好となる。溶融粘度をこの様な範囲とするためには、重合時の反応温度、反応時間、溶液濃度等を適宜調整すればよい。
【0054】
ポリアミド系樹脂のショアD硬度は、70〜85が好ましく、74〜80がより好ましい。これにより、成形体の柔軟性が得られる。
また、ポリアミド系樹脂の降伏応力(曲げ)は、0.1〜5Nが好ましく、0.5〜2.0Nがより好ましい。例えば、各単位を与える単量体の組成比を適宜変更することにより、ショアD硬度と、降伏応力を調整できる。
【0055】
ポリアミド系樹脂の数平均分子量は10000以上150000以下が好ましく、20000以上100000以下がより好ましい。数平均分子量をこのような範囲にすることで、加工性や機械的特性に優れる。
【0056】
ポリアミド系樹脂において、成形体の引張試験における破断伸びは100%以上600%以下が好ましく、200%以上600%以下がより好ましい。また破断応力は20MPa以上100MPa以下が好ましく、30MPa以上90MPa以下がより好ましい。尚、引張試験は、例えば、後述の方法により行う。
【0057】
以上説明したポリアミド系樹脂は、ショアD硬度や降伏応力等の機械的特性のバランスに優れるため、種々の用途において好適に用いられる。
【0058】
≪ポリアミド系樹脂の製造方法≫
以上説明したポリアミド系樹脂は、単位(a)を与える単量体と、単位(b)を与える単量体と、単位(c)を与える単量体とを反応させることにより製造できる。
つまり、以上説明したポリアミド系樹脂は、(A1):
HOOC−R
1(−NH−CO−R
1)
m−NH
2・・・(A1)
(式(A1)中、R
1は、独立に、炭素原子数10以上12以下の直鎖状飽和炭化水素基であり、mは1以上14以下の整数であり、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるアミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体と、
下記式(B1):
HOOC−R
2−COOH・・・(B1)
(式(B1)中、R
2は、芳香族環及び脂肪族環から選択される1種以上の環式基を含む有機基である。)
で表されるジカルボン酸(b1)、又はそのアミド形成性誘導体と、
下記式(C1):
H
2N−R
3−NH
2・・・(C1)
(式(C1)中、R
3は、芳香族環を含む有機基である。)
で表されるジアミン(c1)と、を反応させることにより得られる。
【0059】
アミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体は、前述の単位(a)を与える単量体である。
ジカルボン酸(b1)又はそのアミド形成性誘導体は、前述の単位(b)を与える単量体である。
ジアミン(c1)は、前述の単位(c)を与える単量体である。
なお、アミド形成性誘導体は、例えば、酸ハライド、及びラクタムが挙げられる。酸ハライドとしては、例えば、酸塩化物や酸臭化物であり、酸塩化物が好ましい。
【0060】
具体的な反応方法としては、アミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体と、ジカルボン酸(b1)、又はそのアミド形成性誘導体と、ジアミン(c1)とを同時に混合して反応させる方法や、アミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体と、ジカルボン酸(b1)、又はそのアミド形成性誘導体とを反応させた後に、残りの単量体を添加して、反応させる方法等が挙げられる。
【0061】
上記の反応方法のうち、ポリアミド系樹脂を所望のハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合体として効率的に合成する観点からは、(i)アミノカルボン酸(a1)、又はそのアミド形成性誘導体と、ジカルボン酸(b1)、又はそのアミド形成性誘導体とを混合し反応させてプレポリマーを得る工程(以下、「工程(i)」と称する。)と、工程(i)で得られたプレポリマーにジアミン(c1)を混合し反応させる工程(以下、「工程(ii)」と称する。)と、を含む方法が好ましい。
【0062】
ポリアミド系樹脂を合成するに当たって、各単量体の使用量は、各単位の含有量がそれぞれ所望する値であるように適宜調整される。
ポリアミド系樹脂を製造するに際して、アミノ基とカルボン酸基の等モル性を崩す要因となり得る単量体の添加は、所望の物性を低下させない程度にすることが望ましい。
【0063】
ポリアミド系樹脂の製造方法においては、工程(i)及び(ii)における単量体の重縮合反応は、溶媒中で、あるいは溶媒を用いずに無溶媒の状態で行うことが出来る。精製等が必要なく、簡便に目的のポリアミド系樹脂が得られやすい点で、溶媒を用いずに無溶媒で反応させることが好ましい。このような無溶媒での反応は、溶融混練法により行うことができる。
従って、工程(i)においてプレポリマーを合成する際、又は工程(ii)においてポリアミド系樹脂を合成する際に、単量体を溶融混練法で反応させるのが好ましい。
【0064】
ポリアミド系樹脂の製造方法において、重縮合反応としては、常圧溶融重縮合反応又は減圧溶融重縮合反応、あるいはその組合せを採用することができる。減圧溶融重縮合の場合は、重合反応性の点で、窒素ガス雰囲気で、反応容器内の圧力を0.1〜0.01(MPa)とするのが好ましい。これらの溶融重縮合反応は、無溶媒の状態で溶融混練法により行うことができる。
なお、反応温度、反応容器内の圧力、単量体の種類等によっては、単量体の一部が、反応装置外に留出する場合がある。この場合、留出量と同等の量の単量体を反応装置に追加しながら反応を行ってもよい。
【0065】
ポリアミド系樹脂の製造方法において工程(i)及び工程(ii)において単量体を反応させる温度は、重縮合反応が起これば特に制限されないが、反応速度と熱分解の抑制のバランスから160〜300℃が好ましく、200〜280℃で行うことがより好ましい。なお、工程(i)及び(ii)の反応温度は同一でも異なっていてもよい。
【0066】
好ましくは上記の温度で重縮合反応が行われるため、ジアミン(c1)について、融点が200℃未満であり沸点が200℃以上であるのが好ましく、融点が230℃未満であり沸点が230℃以上であるのがより好ましく、融点が260℃未満であり沸点が260℃以上であるのがより好ましい。
ジアミン(c1)の融点、及び沸点が上記の範囲内であると、重縮合反応中のジアミン(c1)の反応装置外への留出を抑制しつつ、好ましい重縮合反応温度にて、良好に重縮合反応を進行させやすい。
【0067】
ポリアミド系樹脂の製造方法における工程(i)及び(ii)の重縮合反応時間は、分子量の高分子量化や着色の抑制等の観点から、3〜10時間であることが好ましい。なお、工程(i)及び(ii)の重縮合反応時間は同一でも異なっていてもよい。
【0068】
ポリアミド系樹脂の製造方法は、回分式でも、連続式であってもよい。例えば、バッチ式反応釜等を用いた回分式でもよいし、一槽式又は多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置等を単独又は組み合わせて用いた連続式でもよい。
【0069】
ポリアミド系樹脂の製造において、必要に応じて触媒として、リン化合物を用いることができる。このようなリン化合物としては、例えば、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。このうち、重合反応の安定性の向上、ポリアミド系樹脂に対する耐熱安定性の付与、成形体の力学的特性の向上の観点からは、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機リン化合物を用いるのが好ましい。
このようなリン化合物の仕込み時の重量は、工程(i)及び工程(ii)のうち少なくとも1方において、単量体の合計重量に対して、好ましくは10質量ppm以上10000質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以上5000質量ppm以下である。
なお、反応で発生する副生成物によって、リン化合物が反応系外へ排出されることがあるため、仕込み重量とポリアミド系樹脂中のリン元素含有量は同じでなくてもよい。得られるポリアミド系樹脂中のリン元素量が、5質量ppm以上5000質量ppm以下となるように含有させるのが好ましく、20質量ppm以上4000質量ppm以下がより好ましく、30質量ppm以上3000質量ppm以下がさらに好ましい。
【0070】
工程(ii)において各成分を反応させた後は、例えば溶融状態の重合体をひも状に引き出して冷却し、必要に応じて、ペレット等として得ることができる。
【0071】
≪成形体≫
前述の通り、上述のポリアミド系樹脂は、ショアD硬度や降伏応力等の機械的特性のバランスに優れる。このため、ポリアミド系樹脂、又はポリアミド系樹脂に種々の添加剤が配合されたポリアミド系樹脂からなる成形体は、種々の用途において好適に用いられる。
【0072】
成形体他の形状は特に限定されない。ポリアミド系樹脂、及びポリアミド系樹脂組成物は。公知の種々の成形方法、紡糸法、布帛製造方法等によって、種々の形態の成形品に加工される。成形方法としては、例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形等を適用可能である。
好適な成形体の形状としては、フィルム、シート、チューブ、粉末、繊維、織布、又は不織布等が挙げられる。
【0073】
ポリアミド系樹脂、及びポリアミド系樹脂組成物は、ショアD硬度や降伏応力に優れることから、ポリアミド系樹脂、及びポリアミド系樹脂組成物からなる成形体としては、例えば、フィルム、シート、又はチューブであるのが好ましい。
ポリアミド系樹脂、及びポリアミド系樹脂組成物からなるフィルム、又はシートを、積層体に含める場合、積層体にも、良好なショアD硬度や降伏応力が付与される。
このため、ポリアミド系樹脂、及びポリアミド系樹脂組成物からなるフィルム、又はシートを含む積層体も好ましい。
【0074】
前述のポリアミド系樹脂は、樹脂の溶融特性により押出し成形性及び引取り成形性に優れ、ブロー成形性に優れ、強靭性に優れている。そのため、様々な分野の成形品の製造に用いることが出来る。例えば、ポリアミド系樹脂を用いて押出成形し、チューブ、ホース、医療用チューブ等の部材を製造することができる。また、ポリアミド系樹脂をブロー成形し、ボトル、容器、カテーテル用バルーン等の部材を製造することが出来る。
特に、ポリアミド系樹脂は、医療機器に用いられる医療用部材の構成材料として好適である。医療用部材としては、例えば、カテーテル用バルーン、医療用チューブ、積層体等が挙げられる。
【0075】
以下では、ポリアミド系樹脂を用いて作製された医療用部材について、医療用部材がカテーテル用バルーンである場合を例に説明するが、医療用部材として用いられる成形体はこれに限定されない。
【0076】
カテーテル用バルーン(以下、単に「バルーン」と称する。)は、まず、ポリアミド系樹脂を用いてチューブ(以下、「パリソン」と称することがある。)を製造し、次いで、得られたパリソンをさらに加工することにより製造することが出来る。
ポリアミド系樹脂を用いてパリソンを製造する方法としては、一般的な公知の成型方法を用いることができる。例えば、押出成形、射出成形、溶融紡糸成形等が挙げられる。パリソンの形状は、一般的には、径が長軸方向に一定の円筒形状を有する。
パリソンからバルーンを製造する方法としては、一般的な公知の成形方法を用いることができる。例えば、宙吹法や型吹法等のブロー成形、真空成形等により二軸延伸成形して所望の形状のバルーンを作製することができる。成形温度は、一般的には、95〜165℃である。
パリソンからバルーンの内径拡張率は400%以上900%以下が好ましく、500%以上800%以下がより好ましい。尚、本発明における内径拡張率とは、下記式で算出される値である。
内径拡張率(%)=(成形時バルーン拡張時の内径/パリソン内径)×100
以上のようにして得られたバルーンに対して外観検査等を行い、検査に合格したもののみがバルーンカテーテル等の医療機器の医療用部材として用いることができる。外観検査により、バルーンの表面に、菱型の傷やフィッシュアイ、クラックが観察されたものは不良とみなされる。
【0077】
以上のように、ポリアミド系樹脂は、ショアD硬度や降伏応力等の力学的特性のバランスに優れているため、医療機器用部材の他にも、食品等の包装材料、電気・機械精密機器用部材、自動車用部材等様々な用途に用いることが出来ることは勿論のことである。
【実施例】
【0078】
以下、本発明をより一層明らかにするために具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
以下、実施例、及び比較例のポリアミド系樹脂の評価について、ショアD硬度の測定方法と、降伏応力の測定方法とについて説明する。
【0080】
(ショアD硬度の測定)
ショアD硬度の測定は、ASTM−D2240に準拠し、厚み6mmのシートを用いて、23℃恒温室で実施した。厚み6mmのシートは、実施例及び比較例のポリアミド系樹脂のペレットを用いて、前述のプレス機により作製した。測定装置として、高分子計器社製、ゴム硬度計荷重検査器D型を用いた。
【0081】
(降伏応力の測定)
降伏応力の測定は、評価形状は外径0.95mm内径0.63mmの押出しチューブとし、測定は島津社製EZ−SXおよび5Nロードセルを用い支点間距離を16mmとした3点押し込み曲げ試験より測定した。そのときに最も高い曲げ応力値を降伏応力(N)として算出した。
【0082】
〔実施例1〕
撹拌機、温調計、圧力計、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積3Lの反応容器に、12−アミノドデカン酸1200g、及び次亜リン酸0.6gを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、単量体を溶融させるために、280℃まで1時間で昇温し、数平均分子量が3000となるまで重合し、(a)成分からなるハードセグメントとなるアミノカルボン酸(a1)を得た。
【0083】
次いで、反応容器に、ジカルボン酸(b1)としてのテレフタル酸(TA)を、66.4g加えた。220℃で1時間、アミノカルボン酸(a1)と、ジカルボン酸(b1)とを反応させて、プレポリマーを得た(工程(i))。
【0084】
反応容器に、ジアミン(c1)として4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)84.4gを仕込んだ。プレポリマーと、ジアミン(c1)とを260で4時間重縮合させて、ポリアミド系樹脂を得た(工程(ii))。
なお、テレフタル酸と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とは、ポリアミド系樹脂中のテレフタル酸に由来する単位の量と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)に由来する単位との量との合計が11質量%となる量用いた。
【0085】
重合終了後、撹拌を停止し、取り出し口から溶融状態の無色透明のポリアミド系樹脂をひも状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約1kgのペレットを得た。
また、得られたペレットを用いて、前述の方法に従って引張試験と、ショアD硬度の測定とを行った。これらの評価結果を表1に示した。
【0086】
〔実施例2〕
テレフタル酸(TA)の使用量を、132.6gに変更することと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)の使用量を160gに変更することと、の他は、実施例1と同様にして約1kgのポリアミド系樹脂のペレットを得た。
また、得られたペレットを用いて、前述の方法に従って引張試験と、ショアD硬度の測定とを行った。これらの評価結果を表1に示した。
なお、テレフタル酸と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とは、ポリアミド系樹脂中のテレフタル酸に由来する単位の量と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)に由来する単位との量との合計が20質量%となる量用いた。
【0087】
〔実施例3〕
テレフタル酸(TA)の使用量を、265gに変更することと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)の使用量を319gに変更することと、その他は、実施例1と同様にして約1kgのポリアミド系樹脂のペレットを得た。
また、得られたペレットを用いて、前述の方法に従って引張試験と、ショアD硬度の測定とを行った。これらの評価結果を表1に示した。
なお、テレフタル酸と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とは、ポリアミド系樹脂中のテレフタル酸に由来する単位の量と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)に由来する単位との量との合計が33質量%となる量用いた。
【0088】
〔比較例1及び2〕
比較例1及び2のポリアミド系樹脂として、下記の市販のポリアミド系樹脂を用いた。各ポリアミド系樹脂について、前述の方法に従って引張試験と、ショアD硬度の測定とを行った。これらの評価結果を表1に示した。
比較例1:PEBAX 72(Arkema社製、脂肪族ポリアミド)
比較例2:Rilsamid PA12(Arkema社製、12ナイロン)
【0089】
【表1】
【0090】
表1から、前述の単位(a)と、単位(b)と、単位(c)とからなる実施例1〜3のポリアミド系樹脂は、0.7〜1.1Nの範囲内の良好な降伏応力(曲げ)と、74〜80の範囲内の良好なショアD硬度とを兼ね備えることが分かる。
他方、表1から、単位(a)と、単位(b)と、単位(c)とを組み合わせて含まない、比較例の市販品のポリアミド系樹脂は、ショアD硬度及び降伏応力が低いことが分かる。