(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係る電力変換装置1を示す模式図である。電力変換装置1は、例えば、直流電力を3相交流変換するDC/ACコンバータである。電力変換装置1は、入力端子A
1、A
2に入力される直流電力を3相交流電力に変換し、出力端子B
1〜B
3に接続された交流電動機などの負荷10に供給する。
【0010】
図1に示すように、電力変換装置1は、出力端子B
1〜B
3にそれぞれ交流電力を出力する変換相20を含む。変換相20は、入力端子A
1側および入力端子A
2側にそれぞれ1つのパワー半導体モジュール30を有する。変換相20に配置された2つのパワー半導体モジュール30を交互にオンオフさせるスイッチング動作により、出力端子B
1〜B
3にそれぞれ交流電力が出力される。そして、電力変換装置1は、各変換相20から出力される交流の位相を相互に120度ずらすことにより、3相交流電力を出力する。
【0011】
図2は、出力端子B
1に交流電力を出力する変換相20を示す模式図である。同図に示すように、変換相20は、入力端子A
1およびA
2の間において、直列接続された2つのパワー半導体モジュール30を含む。出力端子B
1は、2つのパワー半導体モジュール30の間の電位を出力する。各パワー半導体モジュール30は、複数の半導体素子40と、複数の回路遮断素子50と、を含む。複数の半導体素子40は並列接続され、各半導体素子40には、それぞれ1つの回路遮断素子50が直列接続される。モジュール内に配置される半導体素子40および回路遮断素子50の数は、同数である。
【0012】
例えば、入力端子A
1を正極側端子とすれば、回路遮断素子50は、半導体素子40の低電圧側に配置される。以下、本明細書において「配置」とは、各構成要素の空間的配置に限定されず、回路的な配置も意味する。両者の区別は、明細書の説明および関連する図を参酌することにより明らかであろう。
【0013】
半導体素子40は、例えば、パワーMOSトランジスタ、もしくは、IGBT(Insulating gate Bipolar Transistor)である。回路遮断素子50は、例えば、NMOSトランジスタのソース電極側、もしくは、Nチャネル型IGBTのエミッタ電極側に配置される。
【0014】
例えば、入力端子A
1側に配置されたパワー半導体モジュール30において、並列接続された複数の半導体素子40のうちの1つが故障し、ソース・ドレイン間もしくはエミッタ・コレクタ間が短絡した場合、そのパワー半導体モジュール30をオフ状態とする制御信号が入力されたとしても、故障した半導体素子40は、導通状態に保持されてしまう。そして、入力端子A
2側に配置されたパワー半導体モジュール30がオン状態になると、電流は負荷10側に流れずに変換相20を通過して入力端子A
1およびA
2間に流れる。
【0015】
このような短絡電流は、健全なパワー半導体モジュール30では並列接続された半導体素子40に均等に流れるが、故障した半導体素子40を含むパワー半導体モジュール30では、短絡故障した半導体素子40に集中する。この際、故障した半導体素子40に直列接続された回路遮断素子50は、その半導体素子40と、出力端子B
1との間、および、入力端子A
2側に配置されたパワー半導体モジュール30との間の接続を切り離す。例えば、回路遮断素子50および半導体素子40を流れる電流の経路における金属配線は、回路遮断素子50において他の部分よりも電流密度が高くなる部分を有する。そして、回路遮断素子50は、短絡電流により電流密度が高い部分において溶断され、半導体素子40を回路から分離する。これにより、入力端子A
1およびA
2間に流れる短絡電流を遮断することができる。
【0016】
また、入力端子A
2側に配置されたパワー半導体モジュール30において、半導体素子40のうちの1つが短絡故障した場合には、その半導体素子40と入力端子A
2との間の電流経路が、回路遮断素子50により切り離され、入力端子A
1およびA
2間に流れる短絡電流が遮断される。
【0017】
このように、パワー半導体モジュール30では、並列接続された複数の半導体素子40の一部が短絡故障したとしても、回路遮断素子50により故障した半導体素子40を回路から分離し、それ以外の正常な半導体素子40によりスイッチング動作を継続することができる。そして、電力変換装置1は、故障した半導体素子40を含むパワー半導体モジュール30の出力の低下が許容範囲内であれば、停止することなく動作を継続することができる。
【0018】
図3は、パワー半導体モジュール30の一部を模式的に示す斜視図である。パワー半導体モジュール30は、例えば、実装基板(図示しない)と、その上に設けられた銅パターン31および33と、をさらに備える。銅パターン31は、例えば、正極側の入力端子A
1に接続されており、半導体素子40は、銅パターン31の上に並べて配置される。銅パターン33は、例えば、出力端子B
1に接続され、回路遮断素子50は、銅パターン33の上に並べて配置される。半導体素子40および回路遮断素子50は、例えば、ハンダなどの接合材により銅パターン31および33にそれぞれマウントされる。
【0019】
半導体素子40は、例えば、IGBTであり、その表面にエミッタ電極41とゲートパッド43とを有する。裏面側のコレクタ電極は、例えば、ハンダを介して銅パターン31に接続される。回路遮断素子50は、絶縁体50aと、その表面に設けられた金属層50bと、を有する。絶縁体50aは、例えば、ガラスもしくはアルミナなどのセラミック基板、であり、金属層50bを銅パターン33から電気的に絶縁する。金属層50bは、例えば、銅、銅合金、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を含む。
【0020】
図3に示すように、金属層50bは、例えば、金属ワイヤ35を介して半導体素子40のエミッタ電極41に接続される。また、金属層50bは、例えば、金属ワイヤ37を介して銅パターン33に接続される。
【0021】
図4は、回路遮断素子50を模式的に示す斜視図である。絶縁体50aの表面に設けられた金属層50bは、第1部分53、第2部分55および溶断部57を有する。例えば、第1部分53は、半導体素子40に金属ワイヤ35を介して直列接続される。第2部分55は、第1部分53から離間して設けられ、金属ワイヤ37を介して銅パターン33に接続される。溶断部57は、第1部分53と第2部分55との間に設けられ、その両端は、第1部分53および第2部分55にそれぞれ接続される。
【0022】
溶断部57は、第1部分53および第2部分55よりも電流密度が高くなるように設けられる。すなわち、半導体素子40および回路遮断素子50を流れる電流の流路は、電流の流れる方向に垂直な断面が、溶断部57において第1部分53および第2部分55よりも小さくなるように設けられる。
【0023】
図4に示すように、溶断部57は、例えば、第1部分53から第2部分55へ向かう方向に延びるバー状に設けられる。溶断部57は、例えば、第1部分53から第2部分55へ流れる電流I
Dの方向に直交する断面において断面積Sを有する。また、溶断部57は、電流I
Dの方向に沿った長さLを有する。
【0024】
図5は、回路遮断素子50の特性を示す模式図である。例えば、時間t=0において、半導体素子40が短絡故障し、その定格を超える短絡電流が直列接続された回路遮断素子50に流れる場合の溶断部57の電流、発熱量および温度の時間変化を表している。
【0025】
図5に示すように、溶断部57の電流および発熱量は時間と共に増加する。その後、溶断部57の発熱による温度上昇につれて、その抵抗値が大きくなり、電流が減少に転じ、発熱量も減少する。これに対し、溶断部57の温度は、室温T
Rから単調に上昇する。そして、溶断部57の温度がその融点Tmに達した時、溶断部57が溶融され、第1部分53と第2部分55との間の電流経路が遮断される。
【0026】
半導体パワーモジュール30は、例えば、その定格電流の10倍を超える短絡電流が流れ始めてから時間trが経過した時点において保護回路を動作させ、その動作を停止するように設計される。したがって、溶断部57の温度が、その融点Tmに達する時間をtsとすれば、溶断部57は、ts<trとなるように設けられることが好ましい。これにより、保護回路が動作する前に故障した半導体素子40を回路から分離し、パワー半導体モジュール30の動作を継続させることができる。半導体パワーモジュール30の定格電流は、例えば、(半導体素子40の最大許容電流)×(半導体素子40の並列数)に設定される。ここで、最大許容電流とは、例えば、半導体素子40に連続的に流すことが可能な最大電流を意味する。
【0027】
例えば、半導体素子40は、最大許容電流の10倍の電流が流れると熱暴走などにより正常に動作しなくなるおそれがある。そこで、保護回路は、最大許容電流が流れ始めてから、動作不良が生じるまでの時間tr内において、半導体パワーモジュール30を停止させるように設計される。半導体素子40がシリコンを材料とする場合、時間trは、例えば、10μ秒程度となるように設計される。半導体素子40が炭化シリコン(SiC)を材料とする場合には、時間trは、例えば、5μ秒程度となるように設計される。
【0028】
図6は、回路遮断素子50のモデル化された特性を示す模式図である。溶断部57の電流iおよび発熱量Qは、時間t=0においてステップ状に発生し、時間tに対して一定とする。この場合、溶断部57の抵抗は、所定の温度の値を用い、温度温度Tに依存せず一定とする。例えば、銅を材料とする場合、T=1000℃の抵抗値を用いる。結果として、溶断部57の温度変化量ΔT(=T−T
R)は、次式(1)を用いて算出され、時間tに対して室温T
Rからリニアに増加する。
【数1】
ここで、Q
T(=Q×t)は累積発熱量、Cは熱容量、rは比抵抗、ρは密度、cは比熱である。
【0029】
式(1)に示すように、溶断部57の温度変化量ΔTは、電流iおよび時間tを変数とする関数として表され、材料の比抵抗r、密度ρ、比熱cおよび断面積Sに依存する。ここで、溶断部57の長さLは、式中でキャンセルされる。したがって、理想的には、溶断部57を構成する材料を指定すれば、断面積Sが温度上昇のパラメータとなることが分かる。また、溶断部57の断面積が電流の流れる方向に変化する場合は、
図4に示すような直方体に近似した場合の断面積Sを用いる。
【0030】
さらに、単位電流あたりの断面積(S/i)は、次式(2)で表される。
【数2】
ここで、t=tr、ΔT=Tm−T
Rとして、溶断部57の断面積Sの上限を求めることができる。
【0031】
(実施例1)
例えば、半導体素子40がシリコンを材料とするパワー半導体素子であり、溶断部57の材料が銅もしくは銅合金である場合、tr=10μ秒、Tm=1085℃、TR=25℃として計算すると、単位電流あたりの断面積Sは、14×10
−6mm
2/Aとなる。すなわち、1Aの電流が断面積14×10
−6mm
2を有する溶断部57を流れた場合、その温度は、短絡電流が流れ始めてから10μ秒で、銅の融点1085℃に達する。したがって、断面積Sを短絡電流×14×10
−6mm
2以下とすることにより、溶断部57は、短絡電流の流れ始めから10μ秒以内で溶断されるように形成することができる。
【0032】
例えば、最大許容電流30Aの半導体素子40を8個並列接続したパワー半導体モジュール30の定格電流は、240Aである。そして、定格電流の10倍である2400Aの電流が流れ始めてから時間trが経過した時、パワー半導体モジュール30は、その動作を停止する。この場合、半導体素子40のそれぞれにおいて最大許容電流の10倍の電流が流れたとしても、溶断部57が溶断されないためには、断面積Sは、14×10
−6(mm
2/A)×300(A)=42×10
−4(mm
2)以上であれば良い。一方、故障した半導体素子40に集中して流れる短絡電流は、2400Aであり、これに対応する断面積Sは、14×10
−6(mm
2/A)×2400(A)=33.6×10
−3(mm
2)となる。したがって、断面積Sは、42×10
−4mm
2以上、33.6×10
−3mm
2以下であれば良い。ここで、金属層50bの厚さを0.1mmとすれば、溶断部57の幅を0.042mm以上、0.336mm以下とすれば良い。
【0033】
(実施例2)
例えば、半導体素子40がシリコンを材料とするパワー半導体素子であり、溶断部57の材料がアルミニウムもしくはアルミニウム合金である場合、溶断部57の断面積Sの上限は、tr=10μ秒、Tm=660℃、T
R=25℃として計算する。その結果、断面積Sの上限は、短絡電流×26×10
−6mm
2となる。これ以下の断面積Sを有する溶断部57は、短絡電流の発生から10μ秒以内でアルミの融点である660℃に達し、溶断される。短絡電流は、例えば、パワー半導体モジュール30の定格電流の10倍に設定する。
【0034】
金属層50bの材料としてアルミニウムもしくはアルミニウム合金を用いることにより、銅もしくは銅合金よりも低い温度で溶融させることが可能である。これにより、溶断部57が溶断される際のパワー半導体モジュール30の温度を抑制することが可能であり、周囲に配置された機器への影響が低減され、さらに、モジュール内に充填される絶縁封止材の変質を抑制することもできる。
【0035】
(実施例3)
例えば、半導体素子40が炭化シリコン(SiC)を材料とするパワー半導体素子の場合、tr=5μ秒として、溶断部57の断面積Sの上限を算出する。例えば、溶断部57の材料が銅もしくは銅合金の場合、断面積Sは、10×10
−6mm
2/A以下となる。また、溶断部57の材料がアルミニウムもしくはアルミニウム合金の場合、断面積Sは、短絡電流×18×10
−6mm
2以下となる。
【0036】
図7は、実施形態の変形例に係る回路遮断素子60を模式的に示す斜視図である。回路遮断素子60は、絶縁体60aと、その表面上に設けられた金属層60bと、を含む。絶縁体60aは、例えば、ガラスもしくはアルミナなどのセラミック基板であり、金属層60bは、例えば、銅、銅合金、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を含む。
【0037】
金属層60bは、第1部分63、第2部分65および溶断部67a〜67cを有する。第1部分63と第2部分65は、相互に離間して設けられる。溶断部67a〜67cは、第1部分63と第2部分65との間に設けられ、それぞれの両端は、第1部分63および第2部分65にそれぞれ接続される。この例では、3つの溶断部67a〜67cが配置されるが、実施形態はこれに限定される訳ではない。例えば、第1部分63と第2部分65との間に4つ以上の溶断部が配置されても良い。
【0038】
溶断部67a〜67cにおいて、第1部分63から第2部分65へ流れる電流I
Dの方向に直交するそれぞれの断面は、断面積S1〜S3を有する。そして、溶断部67a〜67cは、断面積S1〜S3の総和が式(2)を用いて計算される断面積Sの値以下となるように形成される。例えば、半導体素子40がシリコンを材料とするパワー半導体素子であり、金属層60bの材料が銅もしくは銅合金である場合、単位電流あたりの断面積S1〜S3の総和は、短絡電流×14×10
−6(mm
2)以下である。実施例2、3に示す材料の場合においても、断面積S1〜S3の総和は、それぞれに示す上限値以下である。
【0039】
回路遮断素子60では、例えば、溶断部67a〜67bのいずれか1つが溶断されると、他の2つに流れる短絡電流が大きくなり、逐次溶断されてゆく。したがって、回路遮断素子60では、第1部分63と第2部分65との間の電流経路の遮断をより確実に実施することが可能であり、パワー半導体モジュール30の信頼性を向上させることができる。
【0040】
図8は、第1実施形態の変形例に係る電力変換装置2を示す模式図である。
図8には、2つのパワー半導体モジュール70を含む変換相20が示されている。パワー半導体モジュール70は、並列接続された半導体素子40と、各半導体素子40に直列に接続された回路遮断素子50と、を含む。また、回路遮断素子50に代えて回路遮断素子60を配置しても良い。
【0041】
例えば、入力端子A
1を正極端子、入力端子A
2を負極端子とすれば、回路遮断素子50は、半導体素子40の高電圧側に配置される。すなわち、半導体素子40がNMOSトランジスタであれば、回路遮断素子50は、ドレイン電極側に配置される。また、半導体素子40がNチャネル型IGBTであれば、回路遮断素子50は、コレクタ電極側に配置される。
【0042】
このように、回路遮断素子50は、それに直列接続された半導体素子40を回路から分離すれば良く、半導体素子40の高電圧側もしくは低電圧側のいずれにも配置可能である。このため、モジュール内の限られたスペースに有利に配置することが可能であり、モジュールの小型化に寄与する。
【0043】
図9は、第1実施形態の別の変形例に係る電力変換装置3を示す模式図である。
図9には、2つのパワー半導体モジュール80を含む変換相20が示されている。パワー半導体モジュール80は、並列接続された半導体素子40と、各半導体素子40に直列に接続された回路遮断素子50
Hおよび50
Lと、を含む。
【0044】
図9に示すように、1つの半導体素子40に対し2つの回路遮断素子50
Hおよび50
Lが配置される。回路遮断素子50
Hおよび50
Lは、半導体素子40の高電圧側および低電圧側にそれぞれ配置される。モジュール内に配置される回路遮断素子50
Hおよび50
Lの総数は、半導体素子40の2倍である。回路遮断素子50
Hおよび50
Lは、例えば、回路遮断素子50もしくは60と同じ構成を有する。
【0045】
この例では、回路遮断素子50
Hおよび50
Lの両方においてその金属層が溶断され、半導体素子40は、高電圧側および低電圧側の両方において回路から分離される。例えば、回路遮断素子50
Hおよび50
Lの一方において電流経路が切断された時、他方を介して半導体素子40の内部に保持された電気エネルギーが放出される。これにより生じる電流により、回路遮断素子50
Hおよび50
Lの他方においても溶断部57の溶融が生じ、故障した半導体素子40は、回路から完全に分離される。この結果、半導体素子40に接続された別の回路、例えば、ゲート制御回路(図示しない)などを保護することができる。
【0046】
上記の通り、本実施形態では、能動領域を含まない単純な構成の回路遮断素子50もしくは60を用いて、短絡故障を起こした半導体素子40を回路から分離することができる。これにより、短絡故障した半導体素子40を含むパワー半導体モジュール30、70および80において、スイッチング動作を継続することが可能となる。その結果、これらのパワー半導体モジュールで構成される電力変換システムの冗長度を向上させることができる。すなわち、各パワー半導体モジュールを内蔵する電力変換装置1、2および3の信頼性を運用継続の観点からも向上させることができる。
【0047】
なお、回路遮断素子50および60の代わりに、例えば、既存の限流ヒューズもしくは自動車用ヒューズなどを用いる構成も考えられるかもしれない。これらは、信頼性の向上が強く望まれている車載や交通システムなど、産業用電力変換装置の定格電圧に適合する。しかしながら、既存のヒューズは、モジュール内に配置するにはサイズが大きすぎる。また、モジュール外に配置して配線により半導体素子に接続する構成を採ると、寄生インダクタンスが大きくなりパワー半導体モジュールのスイッチング速度が制限される。したがって、これらの既存のヒューズを用いることは、現実的ではない。これに対し、本実施形態に係る回路遮断素子50および60は、例えば、スパッタリングなどの金属膜の形成方法およびフォトリソグラフィなど半導体プロセスを用いて製造することが可能であり、そのサイズを小型化できる。そして、回路遮断素子50および60は、パワー半導体モジュール内の実装基板上もしくは空きスペースに配置することが可能である。
【0048】
また、既存のヒューズでは、溶断後のアークの持続を抑えるため消弧材を配置する必要がある。これに対し、回路遮断素子60では、複数の溶断部67a〜67cを配置することにより、それぞれに流れる電流を低減し、アークを抑制することが可能である。これにより、消弧材を減量すること、もしくは、無くすことも可能である。
【0049】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る電力変換装置4を示す模式図である。
図10には、2つのパワー半導体モジュール90を含む変換相20が示されている。パワー半導体モジュール90は、半導体素子40a、40bおよび回路遮断素子50を含む。
【0050】
図10に示すように、回路遮断素子50は、並列接続された半導体素子40aと半導体素子40bに対し直列に接続される。すなわち、半導体素子40aおよび40bのうちの1つが短絡故障を起こし、パワー半導体モジュール90に短絡電流が流れた時、回路遮断素子50は、2つの半導体素子40aおよび40bを回路から分離する。これにより、パワー半導体モジュール90は、スイッチング動作を継続することができる。そして、電力変換装置4は、パワー半導体モジュール90の出力低下が許容範囲内であれば、その動作を継続できる。
【0051】
パワー半導体モジュール90内に配置される回路遮断素子50の個数は、半導体素子40aおよび40bの総数の2分の1である。例えば、モジュールのサイズに対して、その内部に配置される半導体素子40aおよび40bの総数が多い場合には、このような構成が有効である。すなわち、回路遮断素子50の数を減らすことにより、パワー半導体モジュール90を小型化し、その製造コストを削減することもできる。
【0052】
なお、回路遮断素子50に直列接続される半導体素子40の数は、3つ以上であっても良い。すなわち、1つの回路遮断素子50により複数の半導体素子40が回路から分離された時、パワー半導体モジュール90の出力低下が許容範囲内に収まれば良い。また、この例において、通常時に1つの回路遮断素子50を流れる電流は、それに直列接続された半導体素子40の個数倍となるため、溶断部57の断面積Sの下限は、1つの半導体素子40に1つの回路遮断素子50が接続される場合の断面積Sを直列に接続された半導体素子40の個数倍した値とする。一方、溶断部57の断面積Sの上限は、1つの半導体素子40に1つの回路遮断素子50が接続される場合の断面積Sと同じである。
【0053】
図11は、第2実施形態の変形例に係る電力変換装置5を示す模式図である。
図11には、2つのパワー半導体モジュール95を含む変換相20が示されている。パワー半導体モジュール95は、半導体素子40a、40bおよび回路遮断素子50
H、50
Lを含む。
【0054】
図11に示すように、回路遮断素子50
Hおよび50
Lは、並列接続された半導体素子40aと半導体素子40bに対しそれぞれ直列に接続される。回路遮断素子50
Hは、半導体素子40aおよび40bの高電圧側に配置され、回路遮断素子50
Lは、半導体素子40aおよび40bの低電圧側に配置される。すなわち、半導体素子40aおよび40bのうちの1つが短絡故障を起こし、パワー半導体モジュール90に短絡電流が流れた時、回路遮断素子50
Hおよび50
Lは、2つの半導体素子40aおよび40bを回路から完全に分離する。これにより、パワー半導体モジュール90は、スイッチング動作を継続することができる。そして、パワー半導体モジュール90内において、半導体素子40aおよび41bに接続された図示しない別の回路を保護することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。