特許第6905438号(P6905438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905438
(24)【登録日】2021年6月29日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】無線通信モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20210708BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01Q23/00
   H01Q1/38
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-182770(P2017-182770)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-57896(P2019-57896A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松丸 幸平
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/196144(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02710195(FR,A1)
【文献】 特表2012−514431(JP,A)
【文献】 特開2008−244581(JP,A)
【文献】 特開2008−252303(JP,A)
【文献】 特開2004−140632(JP,A)
【文献】 特開平11−136024(JP,A)
【文献】 特開2005−086603(JP,A)
【文献】 特開2002−076720(JP,A)
【文献】 特開2004−048489(JP,A)
【文献】 特表2003−500832(JP,A)
【文献】 米国特許第08061012(US,B1)
【文献】 特開2001−68576(JP,A)
【文献】 特開2003−133801(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/031807(WO,A1)
【文献】 特開2002−329833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 23/00
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面にアンテナ素子が実装され、第2の主面に給電線、及び、前記給電線を介して前記アンテナ素子に接続された集積回路が実装されたアンテナ回路基板と、
前記アンテナ回路基板の1組の対辺を保持することによって、前記アンテナ回路基板の平面性を保つ支持体と、を備えており、
前記支持体は、前記アンテナ回路基板の前記第2の主面と対向し、かつ、前記アンテナ回路基板の前記第2の主面から前記アンテナ回路基板を用いて送受信される電磁波の波長以上離間している、
ことを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項2】
前記支持体は、前記アンテナ回路基板の前記第2の主面と対向して前記集積回路と接触し、前記集積回路にて発生した熱を拡散する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項3】
前記支持体の表面には、ヒートパイプが設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信モジュール。
【請求項4】
前記アンテナ回路基板の前記第1の主面において、前記アンテナ素子が形成されていない領域であって、前記アンテナ回路基板を平面視したときに前記集積回路と重なる領域に、前記集積回路にて発生した熱を拡散する熱拡散板が形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の無線通信モジュール。
【請求項5】
前記熱拡散板の表面には、ヒートパイプが設けられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信モジュール。
【請求項6】
前記アンテナ回路基板は、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、又は、少なくともポリイミド樹脂及び液晶ポリマーの少なくとも一方を含む複合材料により構成された、可撓性を有するアンテナ回路基板である、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の無線通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ素子と、給電線と、集積回路とが実装されたアンテナ回路基板を備えた無線通信モジュールが知られている。例えば、特許文献1の図1及び図2には、アンテナと、給電端子と、第1のRFIC及び第2のRFICとが実装された多層基板を備えたモジュール一体型アンテナが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のモジュール一体型アンテナ、多層基板、及びアンテナは、それぞれ、本明細書に記載の無線通信モジュール、アンテナ回路基板、及びアンテナ素子と読み替え可能である。また、特許文献1に記載の無線通信モジュールにおいて、第1のRFIC及び第2のRFICは、本明細書に記載の集積回路と読み替え可能であり、第1のRFIC又は第2のRFICと給電端子とを接続する部分の配線は、本明細書に記載の給電線と読み替え可能である。以下では、本明細書で用いる部材名を用いて説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−188626号公報(2003年7月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のネットワークトラフィックの増大に伴い、上述したような無線通信モジュールが送受信する電磁波の帯域は、ますます高周波化されている。例えばEバンドと呼ばれる帯域は、70GHz以上80GHz以下である。このような高周波帯域では、給電線を介して集積回路からアンテナ素子に供給される電力の損失がアンテナ回路基板を構成する誘電体材料に依存することが知られている。例えば従来の無線通信モジュール(特許文献1の図1及び図2に記載の無線通信モジュール)は、アンテナ回路基板を構成する材料としてセラミクスを採用している。このようなアンテナ回路基板を高周波帯域において利用する場合、セラミクスによる誘電体損失を無視することができない。また、セラミクスを材料とするアンテナ回路基板には、可撓性を有さないため、加工性が悪いという問題もある。
【0006】
このため、高周波領域において利用されるアンテナ回路基板としては、誘電体損失の小さいポリイミド樹脂や液晶ポリマーなどにより構成された、可撓性を有するアンテナ回路基板が広く用いられている。しかしながら、このようなアンテナ回路基板を採用した従来の無線通信モジュールは、アンテナ素子の放射特性が不安定になるという課題を有する。これは、アンテナ回路基板が変形する(例えばしなる)ことに起因してアンテナ素子の放射特性がその都度変動するためである。
【0007】
また、上述したアンテナ回路基板の変形は、例えば集積回路の発熱量が増えれば増えるほど大きくなる。換言すれば、アンテナ素子の放射特性は、例えば集積回路の発熱量が増えれば増えるほど不安定になる。ポリイミド樹脂や液晶ポリマーなどの可撓性有する材料は、その温度が高くなれば高くなるほど軟化し、変形しやすくなるためである。ここで、集積回路の発熱量は、集積回路を用いて送受信される電磁波の帯域が高周波化されればされるほど増加する傾向にある。そのため、上述したアンテナ素子の放射特性が不安定になるという課題は、集積回路を用いて送受信される電磁波の帯域が高周波化されればされるほど顕著になる。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、アンテナ回路基板が変形することに起因して生じ得る放射特性の変化を抑制した無線通信モジュールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線通信モジュールは、第1の主面にアンテナ素子が実装され、第2の主面に給電線、及び、前記給電線を介して前記アンテナ素子に接続された集積回路が実装されたアンテナ回路基板と、前記アンテナ回路基板の1組の対辺を保持することによって、前記アンテナ回路基板の平面性を保つ支持体と、を備えており、前記支持体は、(1)前記アンテナ回路基板の前記第2の主面と対向し、かつ、前記アンテナ回路基板の前記第2の主面から前記アンテナ回路基板を用いて送受信される電磁波の波長以上離間しているか、又は、(2)前記アンテナ回路基板の前記第2の主面と対向していない、ことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、前記支持体が前記アンテナ回路基板の前記1組の対辺を保持しているため、前記アンテナ回路基板が可撓性を有する材料からなる場合であっても、前記アンテナ回路基板の平面性を保つことができる。したがって、アンテナ回路基板が変形することに起因して生じ得る放射特性の変化を抑制することができる。
【0011】
また、上記の構成によれば、上述した(1)及び(2)の何れの場合であっても、前記支持体が前記給電線に過度に近接することがない。したがって、前記アンテナ素子において生じ得る放射特性の劣化を抑制することができ、設計時に想定した所望の放射特性を得ることができる。
【0012】
以上のように、本無線通信モジュールは、可撓性を有する材料からなる前記アンテナ回路基板を採用した場合であっても、前記アンテナ回路基板の変形を防止したうえで、支持体を有することにより生じ得る放射特性の劣化(例えば、利得の低下)を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る無線通信モジュールにおいて、前記支持体は、前記アンテナ回路基板の前記第2の主面と対向して前記集積回路と接触し、前記集積回路にて発生した熱を拡散する、ように構成されていることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、前記集積回路と接触している支持体は、前記集積回路が発生した熱を前記集積回路から引き込み、拡散することができる。したがって、本無線通信モジュールは、前記集積回路が発する熱量(発熱量)が大きい場合であっても、前記集積回路から前記アンテナ回路基板に伝わる熱量を抑制することができるので、放射特性の熱に対する安定性を高めることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る無線通信モジュールにおいて、前記支持体の表面には、ヒートパイプが設けられている、ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、ヒートパイプは、前記支持体が前記集積回路から引き込んだ熱を、前記支持体の外部に効率よく逃がすことができる。したがって、本無線通信モジュールは、放射特性の熱に対する安定性を更に高めることができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る無線通信モジュールにおいて、前記アンテナ回路基板の前記第1の主面において、前記アンテナ素子が形成されていない領域であって、前記アンテナ回路基板を平面視したときに前記集積回路と重なる領域に、前記集積回路にて発生した熱を拡散する熱拡散板が形成されている、ことが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、前記集積回路と重なる領域に形成された熱拡散板は、前記集積回路が発生した熱を、前記アンテナ回路基板を介して前記集積回路から引き込み、拡散することができる。したがって、本無線通信モジュールは、前記集積回路から前記アンテナ回路基板に伝わる熱量を抑制することができるので、放射特性の熱に対する安定性を高めることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る無線通信モジュールにおいて、前記熱拡散板の表面には、ヒートパイプが設けられている、ことが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、ヒートパイプは、前記熱拡散板が前記集積回路から引き込んだ熱を、前記熱拡散板の外部に効率よく逃がすことができる。したがって、本無線通信モジュールは、放射特性の熱に対する安定性を更に高めることができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る無線通信モジュールにおいて、前記アンテナ回路基板は、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、又は、少なくともポリイミド樹脂及び液晶ポリマーの少なくとも一方を含む複合材料により構成された、可撓性を有するアンテナ回路基板である、ことが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、前記アンテナ回路基板を用いて送受信される電磁波の帯域が例えばEバンドのように高い場合であっても、給電線を介して集積回路からアンテナ素子に供給される電力の損失を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、アンテナ回路基板が変形することに起因して生じ得る放射特性の変化を抑制した無線通信モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る無線通信モジュールの平面図である。(b)は、(a)に示した無線通信モジュールのAA’断面を示す断面図である。
図2】(a)は、図1に示した無線通信モジュールが備えているアンテナ回路基板のおもて面を示す平面図である。(b)は、(a)に示したアンテナ回路基板のうら面を示す平面図である。
図3】(a)は、本発明の変形例1に係る無線通信モジュールの平面図である。(b)は、(a)に示した無線通信モジュールのAA’断面を示す断面図である。
図4】(a)は、図3に示した無線通信モジュールが備えているアンテナ回路基板のおもて面を示す平面図である。(b)は、(a)に示したアンテナ回路基板のうら面を示す平面図である。
図5】(a)は、本発明の変形例2に係る無線通信モジュールの平面図である。(b)は、(a)に示した無線通信モジュールのAA’断面を示す断面図である。
図6】(a)は、本発明の実施形態2に係る無線通信モジュールの三面図である。(b)は、(a)に示した無線通信モジュールのうら面を示す平面図である。
図7】(a)は、本発明の変形例3に係る無線通信モジュールの三面図である。(b)は、(a)に示した無線通信モジュールのうら面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1図2を参照して詳細に説明する。図1の(a)は、本発明の実施形態1に係る無線通信モジュール1の平面図である。図1の(b)は、図1の(a)に示した直線AA’を含み、且つ、後述するアンテナ回路基板11の主面1111,1112に直交する断面における無線通信モジュール1の断面図である。
【0026】
図1の(a)及び(b)に示すように、無線通信モジュール1は、アンテナ回路基板11と、支持体12とを備えている。なお、図1及び図2に付した座標系は、アンテナ回路基板11の主面1111,1112の法線と平行な方向をz軸方向とし、アンテナ回路基板11の主面1111,1112の長辺に沿う方向をx軸方向とし、アンテナ回路基板11の主面1111,1112の短辺に沿う方向をy軸方向とするように定められている。また、アンテナ回路基板11の2つの主面1111,1112のうち、アンテナ素子群114が設けられている側の主面1111から給電線群113が設けられている側の主面1112へ向かう方向をz軸正方向と定め、アンテナ回路基板の主面1111,1112の一対の長辺のうち、コネクタ117に近接する側の長辺から他方の長辺に向かう方向をy軸正方向と定め、y軸及びz軸とともに右手系の直交座標系を形成するようにx軸の正方向を定めている。
【0027】
(アンテナ回路基板11の構成)
図2の(a)は、アンテナ回路基板11の主面1112を平面視した平面図である。(b)は、アンテナ回路基板11の主面1111を平面視した平面図である。主面1111及び主面1112は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1の主面及び第2の主面である。ここで、主面とは、直方体状の部材を構成する6つの面のうち、最大の面積を有する2つの面のことを指す。以降、アンテナ回路基板11の主面1112を、表(おもて)面1112とも記載する。また、主面1111を、うら面1111とも記載する。
【0028】
なお、図2の(a)に示す直線BB’は、図1の(b)に示した断面と、おもて面1112との交線の延長線である。また、図2の(b)に示す直線CC’は、図1の(b)に示した断面と、うら面1111との交線の延長線である。したがって、図1の(a)には直線AA’のみを示しているものの、図1の(a)においては直線BB’及び直線CC’は、直線AA’に重なっている。
【0029】
アンテナ回路基板11は、基板111と、入出力端子群112と、給電線群113と、アンテナ素子群114と、集積回路115と、部品群116と、コネクタ117とを含む。
【0030】
基板111は、板状の部材であり、可撓性を有する材料からなる。基板111の材料は、例えば、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、又は、少なくともポリイミド樹脂及び液晶ポリマーの少なくとも一方を含む複合材料であることが好ましい。これ以外の基板111の材料としては、PPE(Polyphenyleneether)/PPO(Polyphenyleneoxide)樹脂、PTFE(Polytetrafluoroethylen)樹脂、炭化水素樹脂などが挙げられる。本実施形態では、基板111の材料として液晶ポリマーを採用している。
【0031】
図2の(a)に示すように、基板111の主面は、大小2つの長方形を組み合わせた形状となっている。換言すると、基板111の主面の形状は、大きい方の長方形のy軸負方向側の長辺の中央部分から、小さい方の長方形が引き出された形状である。
【0032】
基板111において大きい方の長方形の領域のおもて面1112には、入出力端子群112と、給電線群113と、集積回路115と、部品群116とが実装されている。また、大きい方の長方形の領域のうら面1111には、アンテナ素子群114が形成される。また、基板111において小さい方の長方形のおもて面1112には、コネクタ117が実装される。
【0033】
また、図1(b)に示すように、基板111の内部には、おもて面1112に形成された給電線群113の末端と、うら面1111に形成されたアンテナ素子群114とを電気的に接続するビア111aが形成されている。
【0034】
ビア111aの各々は、基板のおもて面1112からうら面1111まで貫通する貫通孔の内部に導体を充填することによって構成された導体ポストである。基板111の内部には、アンテナ素子群114を構成するアンテナ素子の数に対応して、64本のビア111aが形成されている。
【0035】
入出力端子群112は、基板111のおもて面1112に形成された複数(本実施形態では20個)の電極パッド112_1〜112_20からなる。なお、図2の(a)においては、後述する4つの電極パッド112_1,112_2,112_3,112_4のみを図示し、電極パッド112_5〜112_20の図示を省略している。
【0036】
4つの電極パッド112_1,112_2,112_3,112_4には、後述する給電線群113が接続されている。
【0037】
また、電極パッド112_5〜112_20は、部品群116の何れかに信号線(図2の(a)には不図示)を介して接続されるか、何れの部品にも接続されない空きパッドとなる。なお、図2(a)では、入出力端子群112を構成する電極パッドの数が20個である場合を例示しているが、この数は任意である。また、そのうちの4個の電極パッド112_1,112_2,112_3,112_4に対して給電線群113が接続される場合を例示している。しかし、給電線群113が接続される電極パッドの数は、任意である。
【0038】
アンテナ素子群114は、m個のアンテナ素子114_jによって構成される。mは1以上の整数であり、jは1以上m以下の整数である。図2(b)では、アンテナ素子114_jの数mが64の場合を例示しているが、この数は任意である。
【0039】
集積回路115は、無線通信モジュール1が送受信するRF(Radio Frequency)信号(請求の範囲に記載の電磁波)を処理するプロセッサ及びメモリを含む集積回路である。具体的には、集積回路115は、コネクタ117を介して無線通信モジュール1以外の外部機器から供給されたベースバンド信号をRF(Radio Frequency)信号に変調する送信回路と、アンテナ素子群114から供給されたRF信号をベースバンド信号に復調する受信回路とを含んでいる。なお、本実施形態では、集積回路115が変調するRF信号の帯域は、Eバンド(70GHz以上80GHz以下)であるものとする。ただし、この帯域は、Eバンドに限定される物ではなく、無線通信モジュール1の用途に応じて適宜選択することができる。
【0040】
集積回路115は、BGA(Ball Grid Array)115aを有する。BGA115aは、複数(本実施形態では20個)の半田ボールによって構成されている。BGA115aを構成する半田ボールの数は、入出力端子群112を構成する電極パッド112_1〜112_20の数と同数である。
【0041】
BGA115aを構成する半田ボールの各々がそれぞれ対応する電極パッド112_1〜112_20の各々に半田付けされることによって、集積回路115は、基板111のおもて面1112に対して実装されている。
【0042】
なお、本実施形態においては、BGA115aを用いて集積回路115を基板111に実装している。しかし、集積回路115を基板111に実装する構成は、BGAに限定されるものではなく、既存の技術から適宜選択することができる。
【0043】
給電線群113は、4本の給電線113_1〜113_4からなる。給電線113_1〜113_4の各々は、おもて面1112上に設けられた帯状導体を複数組み合わせることにより構成されている。なお、基板111の内層には、図2の(a)に図示しないグランド層が設けられている。このグランド層と給電線113_1〜113_4の各々は、マイクロストリップ線路を構成する。
【0044】
給電線113_1は、電極パッド112_1と、アンテナ素子114_33〜114_48の各々とを、ビア111aを介して電気的に接続する。給電線113_2は、電極パッド112_2と、アンテナ素子114_49〜114_64の各々とを、ビア111aを介して電気的に接続する。給電線113_3は、電極パッド112_3と、アンテナ素子114_1〜114_16の各々とを、ビア111aを介して電気的に接続する。給電線113_4は、電極パッド112_4と、アンテナ素子114_17〜114_32の各々とを、ビア111aを介して電気的に接続する。
【0045】
給電線113_1は、1×4分岐を5個含んでいる。給電線113_1を電極パッド112_1の側から給電線113_1の末端に向かって見た場合、給電線113_1は、1×4分岐により1本の帯状導体から4本の帯状導体へ分岐される。分岐された4本の帯状導体の各々には、それぞれ、1×4分岐が更に設けられている。したがって、給電線113_1は、1本の帯状導体から最終的に16本の帯状導体へ分岐される。このように分岐された16本の帯状導体の末端の各々は、それぞれ、ビア111aを介して16個のアンテナ素子114_33〜114_48の各々と電気的に接続されている(図1の(b)参照)。
【0046】
給電線113_1において、電極パッド112_1から上述した16本の帯状導体の末端の各々までの距離は、何れも等しくなるように構成されている。また、16本の帯状導体の末端の各々に接続されたビア111aの長さは、何れも等しい。したがって、無線通信モジュール1において、電極パッド112_1からアンテナ素子114_33〜114_48の各々までの距離は、何れも等しい。すなわち、給電線113_1は、等長配線となるように構成されている。
【0047】
給電線113_2〜113_4は、何れも、給電線113_1と同様に構成されている。
【0048】
例えば、無線通信モジュール1がRF信号を送信する場合、集積回路115がベースバンド信号から変調したRF信号は、給電線113_1〜113_4とビア111aとを介してアンテナ素子114_1〜114_64の各々に供給され、アンテナ素子114_1〜114_64の各々は、そのRF信号を送信する。また、例えば無線通信モジュール1がRF信号を受信する場合、アンテナ素子114_1〜114_64が受信したRF信号は、ビア111aと給電線113_1〜113_4とを介して集積回路115に供給され、集積回路115は、そのRF信号をベースバンド信号に復調する。
【0049】
なお、無線通信モジュール1が備えているアンテナ素子群114を構成するアンテナ素子の数、給電線群113を構成する給電線の数、及び、給電線群113を構成する給電線の分岐のさせ方などは、限定されるものではなく適宜定めることができる。
【0050】
部品群116は、例えば、抵抗や、コンデンサや、振動子などの電子部品により構成されている。
【0051】
コネクタ117は、無線通信モジュール1と無線通信モジュール1以外の外部機器とを接続する。なお、外部機器は、コネクタ117と対をなすコネクタを備えている。コネクタ117と、コネクタ117と対をなすコネクタとを嵌合することによって、無線通信モジュール1と外部機器とを接続することができる。すなわち、無線通信モジュール1と外部機器との間でベースバンド信号を送受信することができる。
【0052】
(支持体12の構成)
【0053】
図1の(a)及び(b)に示すように、支持体12は、第1保持部121と、第2保持部122と、連結部123とによって構成されている。支持体12は、熱伝導性が良好な材料からなる。例えば、支持体12の材料としては、金属が好ましく、その中でも熱伝導性が特に高い金属(すなわち銅やアルミ等)がより好ましい。それ以外の支持体12の材料としては、カーボングラファイト、窒化アルミニウム、シリコンカーバイドなどが挙げられる。本実施形態では、支持体12の材料としてアルミを採用する。
【0054】
第1保持部121、第2保持部122及び連結部123の各々は、何れも板状部材である。図1の(a)に示すように、連結部123は、その主面がxy平面に沿うように配置されている。また、図1の(b)に示すように、第1保持部121及び第2保持部122の各々は、その主面がxy平面に交わるように配置されている。本実施形態において、第1保持部121及び第2保持部122の各々の主面は、連結部123の主面に対して直交している。
【0055】
このように、支持体12の断面視形状がコの字型(カタカナで例えた場合)又はU字型(アルファベットで例えた場合)になるように、第1保持部121、第2保持部122及び連結部123は、接合されている。すなわち、連結部123は、第1保持部121と第2保持部122との間に介在し、各々を連結している。
【0056】
なお、第1保持部121、第2保持部122、及び連結部123を接合する方法は、限定されるものではない。例えば、第1保持部121、第2保持部122及び連結部123は、溶接(半田溶接を含む)により接合されていてもよいし、ボルトを用いて接合されていてもよいし、接着剤を用いて接合されていてもよい。なお、第1保持部121と連結部123とを接合する方法は、第1保持部121と連結部123との間に良好な熱伝導性を確保することができる方法であることが好ましい。第2保持部122と連結部123とを接合する方法についても同様である。
【0057】
支持体12は、第1保持部121及び第2保持部122のz軸負方向側の端面が基板111のおもて面1112に接した状態で、基板111に接合されている。換言すれば、支持体12は、連結部123の主面がおもて面1112と対向し、且つ、連結部123がおもて面1112を覆うように、基板111に接合されている。したがって、連結部123は、その主面の大きさが基板111の主面を構成する大きい方の長方形の大きさと同程度となるように構成されている。
【0058】
第1保持部121と基板111とを接合する方法、及び、第2保持部122と基板111とを接合する方法は、限定されるものではない。例えば、第1保持部121と基板111とは、ボルトを用いて接合されていてもよいし、接着剤を用いて接合されていてもよい。第2保持部122と基板111との接合についても同様である。
【0059】
無線通信モジュール1において、第1保持部121は、アンテナ回路基板11の1組の短辺の一方(x軸負方向側の短辺)を保持している。同様に、無線通信モジュール1において、第2保持部122は、当該1組の短辺の他方(x軸正方向側の短辺)を保持している。これらの一対の短辺は、請求の範囲に記載の1組の対辺に対応する。
【0060】
具体的には、第1保持部121及び第2保持部122の主面は、それぞれ長方形状である。第1保持部121及び第2保持部122の主面の長辺の長さは、アンテナ回路基板11において保持される短辺の長さと同程度である(本実施形態では等しい)。
【0061】
また、第1保持部121及び第2保持部122の主面の短辺の長さは、アンテナ回路基板11を用いて送受信されるRF信号(請求の範囲に記載の電磁波)の1波長分に相当する距離に連結部123の厚みを加えた値以上となるように構成されている。その結果、連結部123のz軸負方向側の主面(基板111のおもて面1112に対向する主面)は、基板111のおもて面1112から、上述したRF信号の1波長分に相当する距離以上離間している。
【0062】
また、連結部123において、基板111のおもて面1112に対向する主面は、集積回路115の上面に接触することが好ましい。なお、集積回路115の上面とは、集積回路115においてBGA115aが設けられている主面に対向する主面であり、z軸正方向側の主面である。連結部123は、集積回路115との接触面を通して、集積回路115によって生じる熱を引き込む。連結部123が集積回路115から引き込んだ熱は、連結部123の内部に拡散し、連結部123の2つの主面から大気中に放出される。
【0063】
なお、基板111のおもて面1112に対向する連結部123の主面と、集積回路115の上面とは、直接接触するように構成されていてもよいが、熱伝導性ペースト又は熱伝導性シートを介在して間接的に接触するように構成されていることが好ましい。連結部123と集積回路115との間に熱伝導性ペースト又は熱伝導性シートが介在することによって、連結部123と集積回路115との間における熱伝導性を高めることができる。
【0064】
ここで、BGA115aを含む集積回路115の高さと入出力端子群112の高さとの合計値が、上述したRF信号の1波長分に相当する距離以上であるとする。この場合、第1保持部121及び第2保持部122の主面の各短辺は、上述した合計値から連結部123の厚みを引いた値に等しいことが望ましい。これにより、連結部123のz軸負方向側の主面は、集積回路115の上面に接触する。
【0065】
一方、BGA115aを含む集積回路115の高さと入出力端子群112の高さとの合計値が、上述したRF信号の1波長分に相当する距離未満であるとする。この場合、第1保持部121及び第2保持部122の各短辺の長さを上述したRF信号の1波長分に相当する距離に連結部123の厚みを加えた値以上にした上で、集積回路115と、連結部123との間に生じる隙間に、上述した熱伝導性ペースト又は熱伝導性シートを介在させることが好ましい。この構成によれば、集積回路115と支持体12との間の熱伝導性を損なうことなく、上述した隙間を埋めることができる。
【0066】
なお、本実施形態において、支持体12は、板状部材である第1保持部121、第2保持部122及び連結部123を断面視形状がコの字型(あるいはU字型)になるよう連結することにより構成されている。しかし、支持体12は、1枚の板状部材を断面視形状がコの字型(あるいはU字型)になるように、その両端辺を含む領域(両端部分)をそれぞれ折り曲げることにより構成されていてもよい。この場合、第1保持部121及び第2保持部122は、折り曲げられた両端部分によってそれぞれ構成され、連結部123は、折り曲げられた両端部分の間に位置する部分によって構成される。
【0067】
(無線通信モジュール1の効果)
以上のように構成された無線通信モジュール1では、支持体12がアンテナ回路基板11の1組の対辺を保持している。このため、無線通信モジュール1は、アンテナ回路基板11が可撓性を有する材料からなる場合であっても、アンテナ回路基板11の平面性を保つことができる。したがって、無線通信モジュール1は、アンテナ回路基板11が変形することに起因して生じ得る放射特性の変化を抑制することができる。
【0068】
また、無線通信モジュール1では、支持体12が、アンテナ回路基板11から所定距離以上離れて配置される。このため、支持体12が給電線群113に過度に近接することがない。したがって、無線通信モジュール1は、アンテナ素子群114において生じ得る放射特性の低下を抑制することができ、設計時に想定した所望の放射特性を得ることができる。
【0069】
以上のように、無線通信モジュール1は、可撓性を有する材料からなるアンテナ回路基板11を採用した場合であっても、支持体12の作用によりアンテナ回路基板11(より具体的には基板111)の変形を防止したうえで、利得の低下を抑制することができる。したがって、無線通信モジュール1は、放射特性の熱に対する安定性と、所望の放射特性とを両立することができる。
【0070】
また、無線通信モジュール1では、支持体12と集積回路115とが接触している。
【0071】
この構成によれば、支持体12は、集積回路115が発生した熱を集積回路115から引き込み、拡散することができる。したがって、無線通信モジュール1は、集積回路115が発する熱量(発熱量)が大きい場合であっても、集積回路115からアンテナ回路基板11に伝わる熱量を抑制することができるので、放射特性の熱に対する安定性を高めることができる。
【0072】
また、本実施形態では、給電線群113がアンテナ回路基板11のおもて面1112上に形成される。
【0073】
この構成によれば、給電線群113の一方の側(z軸正方向側)には誘電体が存在しないため、給電線群113の一方の側は、誘電損失の少ない空気により覆われている。その結果、無線通信モジュール1は、特許文献1の図1及び図2に記載されたように給電線が誘電体の内部に配置されたアンテナ回路基板と比べて、給電線群113において生じ得る損失を大幅に抑制することができる。
【0074】
また、無線通信モジュール1が備えているアンテナ回路基板11は、基板111を構成する材料として液晶ポリマーを採用している。この構成によれば、アンテナ回路基板11を用いて送受信されるRF信号の帯域が例えばEバンドのように高い場合であっても、給電線群113を介して集積回路115からアンテナ素子群114に供給される電力の損失を抑制することができる。なお、損失が少ない材料としては、液晶ポリマー以外に、ポリイミド樹脂と、少なくともポリイミド樹脂及び液晶ポリマーの少なくとも一方を含む複合材料とが挙げられる。
【0075】
〔変形例1〕
図1に示した無線通信モジュール1は、アンテナ素子群114の放射特性の熱に対する安定性を更に高めるよう変形可能である。無線通信モジュール1の変形例1である無線通信モジュール1Aについて、図3図4を参照して説明する。図3の(a)は、無線通信モジュール1Aの平面図である。図3の(b)は、図3の(a)に示した直線AA’を含み、且つ、アンテナ回路基板11Aのおもて面1112及びうら面1111に直行する断面における無線通信モジュール1Aの断面図である。図4の(a)は、無線通信モジュール1Aが備えているアンテナ回路基板11Aのおもて面1112を平面視した平面図である。図4の(b)は、アンテナ回路基板11Aのうら面1111を平面視した平面図である。なお、図4の(a)に示す直線BB’及び図2の(b)に示す直線CC’は、それぞれ、図2の(a)に示す直線BB’及び図2の(b)に示す直線CC’と同様である。なお、図3及び図4に示した座標系は、図1及び図2に示した座標系と同様に定めている。
【0076】
(アンテナ回路基板11Aの構成)
図3の(a)及び(b)に示すように、無線通信モジュール1Aは、無線通信モジュール1のアンテナ回路基板11に対して熱拡散板118とヒートパイプ119とを追加することによって得られる。本変形例では、無線通信モジュール1のアンテナ回路基板11を変形したアンテナ回路基板を、アンテナ回路基板11Aと称する。
【0077】
熱拡散板118は、板状部材であり、熱伝導性が良好な材料からなる。例えば、熱拡散板118の材料としては、金属が好ましく、その中でも熱伝導性が特に高い金属(すなわち銅やアルミ等)がより好ましい。本実施形態では、熱拡散板118の材料としてアルミを採用する。
【0078】
熱拡散板118は、基板111のうら面1111において、アンテナ素子群114が形成されていない領域であって、アンテナ回路基板11Aを平面視したときに集積回路115と重なる領域に形成される。熱拡散板118は、おもて面1112に実装された集積回路115によって生じる熱を、基板111を介して引き込み、拡散する。
【0079】
ヒートパイプ119は、棒状の部材であり、熱伝導性が良好な材料によって構成される。例えば、ヒートパイプ119の材料としては、金属が好ましく、その中でも熱伝導性が特に高い金属(すなわち銅やアルミ等)がより好ましい。本実施形態では、ヒートパイプ119の材料として銅を採用する。
【0080】
ヒートパイプ119は、一方の端部を含む区間が熱拡散板118の表面に接触するように設けられている。また、ヒートパイプ119の他方の端部(図4の(a)に不図示)は、無線通信モジュール1Aの外部に配置されている金属部材に接触させられている。
【0081】
このように構成されたヒートパイプ119は、熱拡散板118が集積回路115から引き込んだ熱を、その一方の端部から更に引き込み、その他方の端部から上記金属部材に対して逃がすことができる。
【0082】
なお、ヒートパイプ119は、中空に形成されており、その内部を冷却水が循環するように構成されていてもよい。
【0083】
(アンテナ回路基板11Aの更なる効果)
以上のように、無線通信モジュール1Aは、熱拡散板118を更に備えている。この構成によれば、熱拡散板118は、集積回路115から熱を引き込み、拡散することができるので、集積回路115からアンテナ回路基板11Aに伝わる熱量を抑制することができる。したがって、無線通信モジュール1Aは、集積回路115が発する熱量(発熱量)が大きい場合であっても、放射特性の熱に対する安定性を高めることができる。
【0084】
また、無線通信モジュール1Aは、ヒートパイプ119を更に備えている。この構成によれば、ヒートパイプ119は、熱拡散板118が集積回路115から引き込んだ熱を、熱拡散板118の外部(無線通信モジュール1Aの外部)に効率よく逃がすことができる。したがって、無線通信モジュール1Aは、集積回路115が発する熱量(発熱量)が大きい場合であっても、放射特性の熱に対する安定性を更に高めることができる。
【0085】
〔変形例2〕
図1に示した無線通信モジュール1は、アンテナ素子群114の放射特性の熱に対する安定性を更に高めるよう変形可能である。無線通信モジュール1の変形例2である無線通信モジュール1Bについて、図5を参照して説明する。図5の(a)は、無線通信モジュール1Bの平面図である。図5の(b)は、図5の(a)に示した直線AA’を含み、且つ、アンテナ回路基板11Bのおもて面1112及びうら面1111に直行する断面における無線通信モジュール1Bの断面図である。なお、図5に示した座標系は、図1及び図2に示した座標系と同様に定めている。
【0086】
図5の(a)及び(b)に示すように、無線通信モジュール1Bは、無線通信モジュール1における支持体12を、支持体12Bに変形したうえで、無線通信モジュール1のアンテナ回路基板11に対して熱拡散板118を追加することによって得られる。本変形例では、無線通信モジュール1のアンテナ回路基板11を変形したアンテナ回路基板をアンテナ回路基板11Bと称し、無線通信モジュール1の支持体12を変形した支持体を支持体12Bと称する。
【0087】
(アンテナ回路基板11Bの構成)
上述したように、アンテナ回路基板11Bは、アンテナ回路基板11に対して熱拡散板118を追加することによって得られる。別の言い方をすれば、アンテナ回路基板11Bは、アンテナ回路基板11Aからヒートパイプ119を省略することによって得られる。したがって、本変形例では、アンテナ回路基板11Bに関する説明を省略する。
【0088】
熱拡散板118は、基板111を介して集積回路115から熱を引き込み、拡散することができるので、集積回路115からアンテナ回路基板11Bに伝わる熱量を抑制することができる。したがって、無線通信モジュール1Bは、放射特性の熱に対する安定性を高めることができる。
【0089】
(支持体12Bの構成)
支持体12Bは、支持体12に対してヒートパイプ124aと124bとを追加することによって得られる。
【0090】
ヒートパイプ124a及びヒートパイプ124bの各々は、変形例1において説明したヒートパイプ119と同様に構成されている。したがって、本変形例では、ヒートパイプ124a及びヒートパイプ124bの配置の仕方について説明する。なお、支持体12Bの主面を平面視した場合(図5の(a)参照)に、ヒートパイプ124a及びヒートパイプ124bの各々は、支持体12Bの主面を二等分する直線であってx軸方向と平行な直線を対称軸として、互いに線対称となるように連結部123の表面に配置されている。そこで、本変形例では、ヒートパイプ124aの配置の仕方について説明し、ヒートパイプ124bの配置の仕方についての説明は、省略する。
【0091】
ヒートパイプ124aは、支持体12Bを構成する連結部123の表面(ひょう面)のうちz軸負方向側の主面(アンテナ回路基板11Bのおもて面1112に対向する主面)に沿って、z軸負方向側の主面と接触するように設けられている。より詳しくは、ヒートパイプ124aは、z軸負方向側の主面のうち給電線群113と対向しない領域に設けられている。
【0092】
この構成によれば、ヒートパイプ124aが給電線群113に近接することを防止できるため、アンテナ素子群114の放射特性が設計時に想定した所望の放射特性から劣化することを防止することができる。
【0093】
無線通信モジュール1Bにおいてz軸負方向側の主面のうち給電線群113と対向しない領域とは、支持体12Bと集積回路115とが接触する接触領域をy軸方向正方向及びy軸負方向に向かって延伸した領域である。ヒートパイプ124aは、上述した接触領域をy軸負方向に向かって延伸した領域に、その一方の端部が配置されている。ヒートパイプ124aの他方の端部(図5(a)において不図示)は、無線通信モジュール1Bの外部に配置されている金属部材に接触させられている。
【0094】
ヒートパイプ124aは、支持体12Bが集積回路115から引き込んだ熱を、支持体12Bの外部に効率よく逃がすことができる。したがって、無線通信モジュール1Bは、集積回路115が発する熱量(発熱量)が大きい場合であっても、放射特性の熱に対する安定性を更に高めることができる。
【0095】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図6を参照して詳細に説明する。図6の(a)は、本発明の実施形態2に係る無線通信モジュール2の三面図である。図6の(b)は、無線通信モジュール2のうら面の平面図である。なお、図6に示した座標系は、図1及び図2に示した座標系と同様に定めている。
【0096】
図6(a)及び(b)に示すように、無線通信モジュール2は、アンテナ回路基板21と、支持体22とを含む。
【0097】
(アンテナ回路基板21の構成)
アンテナ回路基板21は、基板211と、入出力端子群212と、給電線群213と、アンテナ素子群214と、集積回路215と、部品群216と、コネクタ217と、熱拡散板218とを含む。基板211、入出力端子群212、給電線群213、アンテナ素子群214、集積回路215、部品群216及びコネクタ217は、実施形態1における基板111、入出力端子群112、給電線群113、アンテナ素子群114、集積回路115、部品群116と同様に構成される。熱拡散板218は、実施形態1の変形例1における熱拡散板118と同様に構成される。
【0098】
(支持体22の構成)
図6(a)に示すように、支持体22は、第1保持部221と、第2保持部222と、連結部223とによって構成されている。
支持体22は、熱伝導性が良好な材料からなる。この点について、支持体22は、支持体12と同様である。本実施形態において、支持体22の材料としてアルミを採用する。
【0099】
第1保持部221、第2保持部222及び連結部223の各々は、何れも板状部材である。図6の(a)に示すように、連結部223の長軸は、x軸方向に沿うように(本実施形態では平行に)延伸されている。また、第1保持部221及び第2保持部222の各々の長軸は、それぞれ、y軸方向に沿うように(本実施形態では平行に)延伸されている。本実施形態において、第1保持部221及び第2保持部222の各々の長軸は、連結部223の長軸に対して直交している。
【0100】
このように、支持体22は、アンテナ回路基板21のおもて面2112を平面視した場合に、その平面視形状がコの字型(カタカナで例えた場合)又はU字型(アルファベットで例えた場合)になるように、第1保持部221、第2保持部222及び連結部223が接合されている。すなわち、連結部223は、第1保持部221と第2保持部222との間に介在し、各々を連結している。したがって、支持体22の連結部223は、アンテナ回路基板21のおもて面2112と対向していない。
【0101】
なお、第1保持部221、第2保持部222、及び連結部223を接合する方法については、第1保持部121、第2保持部122、及び連結部123を接合する方法と同様である。
【0102】
支持体22は、第1保持部221、第2保持部222、及び連結部223のz軸負方向側の端面が基板211のおもて面2112に接した状態で、基板211に接合されている。換言すれば、支持体22は、基板211の側面を3方向から取り囲み、基板211のおもて面2112と対向しないように、基板211に接合されている。
【0103】
第1保持部221と基板211とを接合する方法、第2保持部222と基板211とを接合する方法、及び連結部223と基板211とを接合する方法は、第1保持部121と基板111とを接合する方法、及び、第2保持部122と基板111とを接合する方法と同様である。
【0104】
無線通信モジュール2において、第1保持部221は、アンテナ回路基板21の1組の短辺の一方(x軸負方向側の短辺)を保持している。同様に、無線通信モジュール2において、第2保持部222は、当該1組の短辺の他方(x軸正方向側の短辺)を保持している。これらの一対の短辺は、請求の範囲に記載の1組の対辺に対応する。
【0105】
なお、支持体22は、一枚の板状部材をもとにして、平面視した場合にコの字型(あるいはU字型)になるように、上記板状部材の両端を含む部分を折り曲げることにより形成されてもよい。この場合、第1保持部221及び第2保持部222は、折り曲げられた両端を含む部分によってそれぞれ構成され、連結部223は、折り曲げられた両端を含む部分の間の部分によって構成される。
【0106】
(無線通信モジュール2の効果)
無線通信モジュール2は、無線通信モジュール1と同様に、アンテナ回路基板21が可撓性を有する材料からなる場合であっても、アンテナ回路基板21の平面性を保つことができる。したがって、無線通信モジュール2は、アンテナ回路基板21が変形することに起因して生じ得る放射特性の変化を抑制することができる。
【0107】
また、無線通信モジュール2では、支持体22は、基板211の側面を3方向から取り囲み、基板211のおもて面2112と対向しないように、基板211に接合されている。したがって、無線通信モジュール2は、アンテナ素子群214において生じ得る放射特性の低下を抑制することができ、設計時に想定した所望の放射特性を得ることができる。
【0108】
以上のように、無線通信モジュール2は、可撓性を有する材料からなるアンテナ回路基板21を採用した場合であっても、支持体22の作用によりアンテナ回路基板21(より具体的には基板211)の変形を防止したうえで、利得の低下を抑制することができる。したがって、無線通信モジュール2は、放射特性の熱に対する安定性と、所望の放射特性とを両立することができる。
【0109】
また、無線通信モジュール2は、熱拡散板218を備えている。この構成によれば、熱拡散板218は、熱拡散板118の場合と同様に、基板211を介して集積回路215から熱を引き込み、拡散することができる。したがって、無線通信モジュール2は、集積回路215が発する熱量(発熱量)が大きい場合であっても、集積回路215からアンテナ回路基板21に伝わる熱量を抑制することができる。したがって、無線通信モジュール2は、放射特性の熱に対する安定性を高めることができる。
【0110】
〔変形例3〕
図6に示した無線通信モジュール2は、アンテナ素子群214の放射特性の熱に対する安定性を更に高めるよう変形可能である。無線通信モジュール2の変形例(本発明の変形例3)である無線通信モジュール2Aについて、図7を参照して説明する。図7の(a)は、無線通信モジュール2Aの三面図である。図7の(b)は、無線通信モジュール2Aのうら面の平面図である。なお、図7に示した座標系は、図1及び図2に示した座標系と同様に定めている。
【0111】
図7の(a)及び(b)に示すように、無線通信モジュール2Aは、無線通信モジュール2におけるアンテナ回路基板21を、アンテナ回路基板21Aにすることによって得られる。具体的には、アンテナ回路基板21Aは、アンテナ回路基板21に対してヒートパイプ219を追加することによって得られる。ヒートパイプ219は、図3及び図4に示したヒートパイプ119と同一に構成される。
【0112】
ヒートパイプ219の一方の端部(図7の(a)及び(b)において不図示)は、例えば、無線通信モジュール2Aの外部に配置されている金属部材に接触させられている。このため、ヒートパイプ219は、熱拡散板218が基板211を介して集積回路215から引き込んだ熱を、熱拡散板218の外部(無線通信モジュール2Aの外部)に効率よく逃がすことができる。したがって、無線通信モジュール2Aは、集積回路215が発する熱量(発熱量)が大きい場合であっても、放射特性の熱に対する安定性を更に高めることができる。
【0113】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1、1A、1B、2、2A 無線通信モジュール
11、11A、21、21A アンテナ回路基板
12、12B、22 支持体
111、211 基板
111a ビア
112、212 入出力端子群
112_1〜112_20、212_1〜212_20 電極パッド
113、213 給電線群
113_1〜113_4、213_1〜213_4 給電線
114、214 アンテナ素子群
114_1〜114_64、214_1〜214_64 アンテナ素子
115、215 集積回路
115a、215a BGA
116、216 部品群
117、217 コネクタ
118、218 熱拡散板
119、219 ヒートパイプ
121、221 第1保持部
122、222 第2保持部
123、223 連結部
124a、124b ヒートパイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7