(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2弾性体のロッド軸方向の長さは、前記第1弾性体のロッド軸方向の大きさより大きく、前記第2弾性体の下端開口縁は、前記第1弾性体より下方に位置していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアクティブダンパ用アッパーマウント。
前記受板および前記外側部材は、互いにロッド軸方向に対向し、前記受板および前記外側部材のうちの少なくとも一方に、ストッパゴムが配設されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアクティブダンパ用アッパーマウント。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のアッパーマウントをアクティブダンパに適用すると、駆動部によりロッドに対してロッド軸方向の大きな制御力が加えられたときに、第1弾性体がロッド軸方向に大きく圧縮変形して過度に硬くなってしまい、この状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに振動が伝わると、周波数の高低を問わず、この振動が第1弾性体で減衰、吸収されず、車体に伝達するおそれがある。
このような問題を解決するために、中間部材と外側部材との間に、中間部材および外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する第2弾性体を配設することによって、前述のように、第1弾性体で減衰、吸収されなかった振動を、第2弾性体により減衰、吸収させることで、この振動が車体に伝達するのを抑制することが考えられる。
しかしながら、この場合、第2弾性体を配設したことで、アッパーマウントがかさ張るおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、アクティブダンパのロッドにロッド軸方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった振動が、車体に伝達するのを抑制することができるとともに、かさ張りを抑えることができるアクティブダンパ用アッパーマウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るアクティブダンパ用アッパーマウントは、アクティブダンパのロッドの上端部が固定される内側部材と、前記内側部材を、ロッド軸回りに沿う周方向に囲う中間部材と、前記中間部材を、周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、前記内側部材と前記中間部材との間に配設され、前記内側部材および前記中間部材を相対的に弾性変位可能に支持する第1弾性体と、前記中間部材と前記外側部材との間に配設され、前記中間部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する第2弾性体と、を備え、前記中間部材は、前記内側部材が内側に配置される本体筒と、前記本体筒の外周面から径方向の外側に向けて突出した環状の受板と、を備え、前記第2弾性体は、径方向の厚さよりロッド軸方向の長さが大きい筒状に形成されるとともに、前記本体筒にロッド軸方向に摺動可能に外嵌され、前記第2弾性体の外周面に、周方向に延びる環状突起がロッド軸方向に間隔をあけて複数形成され、前記内側部材に前記ロッドの上端部が固定され、かつ前記外側部材が車体側に取付けられた状態で、前記第2弾性体の下端開口縁が、前記受板の上面に支持され、前記受板の上面に、前記第2弾性体の下端部が挿入された環状溝が形成され、複数の前記環状突起のうち、少なくとも最も上方に位置する環状突起は、前記内側部材に前記ロッドの上端部が固定され、かつ前記外側部材が車体側に取付けられた状態で、前記環状溝より上方に位置し、かつこの環状突起における径方向の外端縁は、前記環状溝の内面のうち、径方向の内側を向く外周面より径方向の外側に位置していることを特徴とする。
【0007】
この発明では、中間部材と外側部材との間に第2弾性体が配設されているので、アクティブダンパのロッドにロッド軸方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった振動が、第1弾性体により減衰、吸収されなかったとしても、この振動を、第2弾性体により減衰、吸収することが可能になり、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
また、第2弾性体が、径方向の厚さよりロッド軸方向の長さが大きい筒状に形成されるとともに、中間部材の本体筒に外嵌されているので、第2弾性体を配設したことによるアッパーマウントの径方向のかさ張りを抑えることができる。
また、第2弾性体が、本体筒にロッド軸方向に摺動可能に外嵌されているので、中間部材および外側部材が、相対的にロッド軸方向に変位したときに、第2弾性体および本体筒を、相対的にロッド軸方向に摺動させることが可能になり、第2弾性体に、ロッド軸方向の引張力が加えられるのを抑制することができる。これにより、第2弾性体が、前述のような筒状に形成されたとしても、第2弾性体の耐久性、および第2弾性体のロッド軸方向の圧縮変形量を確実に確保することができる。
また、第2弾性体の外周面に、環状突起がロッド軸方向に間隔をあけて複数形成されているので、第2弾性体にロッド軸方向の圧縮荷重が入力されたときに、第2弾性体を、座屈させにくくして、ロッド軸方向に真直ぐ圧縮変形させやすくなり、第2弾性体が、前述のような筒状に形成されたことにより、第2弾性体のロッド軸方向のばね定数が低くなるのを抑えることができる。
また、第2弾性体の下端部が、受板の上面の環状溝に挿入されているので、第2弾性体のロッド軸方向の長さを容易に確保することができる。
また、複数の環状突起のうちの少なくとも1つにおける径方向の外端縁が、環状溝の外周面より径方向の外側に位置していて、この環状突起の体積が大きく確保されているので、第2弾性体にロッド軸方向の圧縮荷重が入力されたときに、第2弾性体が座屈するのを確実に抑制することが可能になり、第2弾性体のロッド軸方向のばね定数を確実に確保することができる。
また、この環状突起が、内側部材にロッドの上端部が固定され、かつ外側部材が車体側に取付けられた状態で、環状溝より上方に位置しているので、アッパーマウントを車両に装着するに際し、環状突起が、受板の上面における環状溝の開口周縁部に引っ掛かるのを防ぐことができる。
【0008】
ここで、前記環状溝の外周面と、前記第2弾性体の外周面と、の間に、径方向の隙間が設けられてもよい。
【0009】
この場合、環状溝の外周面と、第2弾性体の外周面と、の間に径方向の隙間が設けられているので、第2弾性体がロッド軸方向に圧縮変形したときに、第2弾性体が、受板の上面において、環状溝より径方向の外側に位置する部分にはみ出るのを抑制することができる。したがって、このはみ出した部分が、受板の上面と外側部材との間に挟まれることにより、第2弾性体のロッド軸方向の圧縮変形が阻害されるのを抑制することができる。
【0010】
また、前記第2弾性体の内周面と、前記本体筒の外周面と、の間に潤滑剤が配設されてもよい。
【0011】
この場合、第2弾性体の内周面と、本体筒の外周面と、の間に潤滑剤が配設されているので、中間部材および外側部材が、相対的にロッド軸方向に変位したときに、第2弾性体に、ロッド軸方向の引張力が加えられるのを確実に抑制することができる。
【0012】
また、前記第2弾性体のロッド軸方向の長さは、前記第1弾性体のロッド軸方向の大きさより大きく、前記第2弾性体の下端開口縁は、前記第1弾性体より下方に位置してもよい。
【0013】
この場合、第2弾性体のロッド軸方向の長さが、第1弾性体のロッド軸方向の大きさより大きくなっているので、第2弾性体の径方向の厚さを抑えても、第2弾性体の体積を確保することが可能になり、第1弾性体により減衰、吸収されなかった振動を、第2弾性体により確実に減衰、吸収することができる。
また、第2弾性体の下端開口縁が、第1弾性体より下方に位置しているので、第2弾性体のロッド軸方向の長さを容易に確保することが可能になり、第2弾性体のロッド軸方向の圧縮変形量を確実に確保することができる。
【0014】
また、前記本体筒は、前記第2弾性体の内側に圧入されてもよい。
【0015】
この場合、本体筒が、第2弾性体の内側に圧入されているので、第2弾性体が経年劣化しても、第2弾性体の内周面と、本体筒の外周面と、の間に隙間が生ずるのを抑制することが可能になり、第2弾性体にロッド軸方向の圧縮荷重が入力されたときに、経年劣化に起因して座屈しやすくなるのを確実に抑えることができる。
【0016】
また、前記受板および前記外側部材は、互いにロッド軸方向に対向し、前記受板および前記外側部材のうちの少なくとも一方に、ストッパゴムが配設されてもよい。
【0017】
この場合、互いにロッド軸方向に対向する受板および外側部材のうちの少なくとも一方に、ストッパゴムが配設されているので、中間部材および外側部材が相対的にロッド軸方向に接近移動したときに、第2弾性体だけでなく、ストッパゴムもロッド軸方向に圧縮変形させることが可能になり、第2弾性体が、前述のような筒状に形成されたとしても、第2弾性体の耐久性を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、アクティブダンパのロッドにロッド軸方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった振動が、車体に伝達するのを抑制することができるとともに、かさ張りを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るアクティブダンパ用アッパーマウントの一実施形態を、
図1から
図3を参照しながら説明する。アクティブダンパ用アッパーマウント10は、例えばダブルウィッシュボーン式サスペンション等に適用される。
【0021】
アクティブダンパ21は、ほぼ上下方向に延設され、ロッド22およびシリンダ23を備える。ロッド22およびシリンダ23は、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸をロッド軸Oといい、また、ロッド軸O方向から見てロッド軸Oに交差する方向を径方向という。
ロッド22は、シリンダ23から上方に突出している。ロッド22のうち、シリンダ23から上方に突出した部分は、バンプストッパ33により径方向の外側から囲繞されている。ロッド22の上端部に雄ねじ部が形成されている。シリンダ23の下端部に、不図示のアーム部材に連結されるブラケット24が取付けられている。シリンダ23の外周面には、例えば入力振動の周波数等に応じて、アクティブダンパ21の発揮する減衰力を調整する駆動部21aが取付けられている。駆動部21aとしては例えばポンプ等が挙げられる。シリンダ23の外周面には、スプリング31の下端部を支持する下受板32が取付けられている。下受板32は、環状に形成されるとともに、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
【0022】
アクティブダンパ用アッパーマウント10は、アクティブダンパ21のロッド22の上端部が固定される内側部材11と、内側部材11を、ロッド軸O回りに沿う周方向に囲う中間部材12と、中間部材12を、周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材13と、内側部材11と中間部材12との間に配設され、内側部材11および中間部材12を相対的に弾性変位可能に支持する第1弾性体14と、中間部材12と外側部材13との間に配設され、中間部材12および外側部材13を相対的に弾性変位可能に支持する第2弾性体15と、を備える。
【0023】
内側部材11は、環状に形成され、その内側にロッド22の上端部が挿入されている。ロッド22の上端部のうち、内側部材11から上方に突出した部分にナット25が螺着されることにより、アクティブダンパ用アッパーマウント10にアクティブダンパ21が取付けられる。内側部材11は、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
【0024】
中間部材12は、
図2に示されるように、内側部材11が内側に配置されるとともに、ロッド軸O方向に延びる本体筒16と、本体筒16の内周面から径方向の内側に向けて突出した環状の支持板17と、本体筒16の外周面から径方向の外側に向けて突出した環状の受板18と、受板18から下方に向けて突出した内筒20と、受板18から下方に向けて突出し、かつ内筒20より径方向の外側に位置する外筒19と、を備える。本体筒16、支持板17、受板18、外筒19、および内筒20は、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
【0025】
本体筒16は、ロッド軸O方向に真直ぐ延びている。
本体筒16および支持板17の各内側に、ロッド22のうちシリンダ23から上方に突出した部分が挿入されている。支持板17は、本体筒16の下端部に位置している。本体筒16の内側において、支持板17の上方に位置する部分に、内側部材11が配置されている。
【0026】
受板18の上面に、周方向に延びる環状溝37が形成されている。図示の例では、受板18は、本体筒16の下端部の外周面から径方向の外側に向けて突出する内周部18aと、内周部18aより上方でかつ径方向の外側に位置する外周部18bと、内周部18aにおける径方向の外端と、外周部18bにおける径方向の内端と、を連結する連結筒18cと、を備える。環状溝37は、本体筒16の外周面と、内周部18aの上面と、連結筒18cの内周面(環状溝37の外周面)と、により画成されている。内周部18aの外周縁部は、径方向の外側に向けて窪む凹曲面状に形成され、外周部18bの内周縁部は、径方向の内側に向けて突となる突曲面状に形成され、連結筒18cは、ロッド軸O方向に真直ぐ延びている。受板18の外周部18bおよび内側部材11それぞれのロッド軸O方向の位置は互いに同等になっている。
【0027】
内筒20は、受板18の連結筒18cの下端部から下方に向けて突出している。内筒20の上端部は、外筒19の下端部より下方に位置している。内筒20の内側に、バンプストッパ33の上端部が嵌合されている。
外筒19は、受板18の外周縁部から下方に向けて突出している。外筒19の内周面と、受板18の外周部18bの下面と、が、スプリング31の上端部を支持している。
【0028】
外側部材13は、ロッド軸O方向に延びるとともに、中間部材12の本体筒16を径方向の外側から囲い、第2弾性体15が接着された囲繞筒26と、囲繞筒26から径方向の外側に向けて突出し、かつ受板18の上面とロッド軸O方向に対向し、車体側に取付けられる環状の装着部27と、を備える。囲繞筒26および装着部27は、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
【0029】
囲繞筒26は、装着部27より厚肉に形成されている。囲繞筒26は、本体筒16の上端部を径方向の外側から囲っている。囲繞筒26は、第2弾性体15の上端部に接着されている。囲繞筒26および本体筒16の各上端開口縁それぞれのロッド軸O方向の位置は互いに同等になっている。囲繞筒26の上端開口縁における内周部および外周部はそれぞれ、上方に向けて突の曲面状に形成され、ロッド軸O方向に沿う縦断面視において、内周部の曲率半径は、外周部の曲率半径より大きくなっている。囲繞筒26の内周面は、本体筒16の外周面とほぼ平行になっている。囲繞筒26は、その径方向の全域にわたって、環状溝37とロッド軸O方向で対向している。囲繞筒26の下端部における内周面は、径方向の内側に向けて突の曲面状に形成され、ロッド軸O方向に沿う縦断面視において、この曲率半径は、囲繞筒26の上端開口縁における内周部の曲率半径より大きくなっている。
【0030】
装着部27は、囲繞筒26の下端部から径方向の外側に向けて突出した環板状に形成されている。装着部27の下面は、中間部材12における受板18の外周部18bの上面に、ロッド軸O方向で対向している。装着部27には、周方向に間隔をあけて複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔にボルト29が各別に挿入されることで、外側部材13が車体側に取付けられる。
【0031】
装着部27および受板18のうちの少なくとも一方に、ストッパゴム36が配設されている。ストッパゴム36は、装着部27の下面に配設されている。ストッパゴム36の下端部は、受板18の上面より上方に位置している。ストッパゴム36は、受板18の外周部18bの上面にロッド軸O方向で対向している。ストッパゴム36は、装着部27の下面において、周方向で互いに隣り合う前記貫通孔同士の間に位置する部分に配設されている。ストッパゴム36は周方向に延び、ロッド軸O方向の大きさより、周方向の長さが大きくなっている。ストッパゴム36の厚さは、上方から下方に向かうに従い漸次、薄くなっている。ストッパゴム36は、第2弾性体15と一体に形成されている。ストッパゴム36は、周方向に間隔をあけて複数配設されている。
【0032】
ここで、中間部材12の本体筒16の上端部内に、リバウンドストッパ34が装着されている。リバウンドストッパ34は、本体筒16の上端部内に嵌合された装着筒34aと、装着筒34aの上端部から径方向の外側に向けて突出した環状のストッパ部34bと、を備える。装着筒34aおよびストッパ部34bは、ロッド軸Oと同軸に配設されている。ストッパ部34bの外周縁部は、本体筒16より径方向の外側に位置している。ストッパ部34bは、外側部材13の囲繞筒26より上方に位置し、囲繞筒26の上端開口縁とロッド軸O方向で対向している。ストッパ部34bは、囲繞筒26の上端開口縁における径方向の全域にわたってロッド軸O方向で対向している。
中間部材12の本体筒16内に、リバウンドストッパ34の装着筒34aの下端開口縁が当接若しくは近接した環状の押え部材35が配設されている。押え部材35は、内側部材11の上方に配置されている。押え部材35の内側に、ナット25が配置されている。
【0033】
第2弾性体15は、径方向の厚さよりロッド軸O方向の長さが大きい筒状に形成されるとともに、本体筒16にロッド軸O方向に摺動可能に外嵌されている。第2弾性体15は、本体筒16におけるロッド軸O方向の全長にわたって外嵌されている。第2弾性体15の下端開口縁は、内側部材11にロッド22の上端部が固定され、かつ外側部材13が車体側に取付けられた状態(以下、初期装着状態という)で、受板18の上面に支持される。本実施形態では、
図2に示されるような、前述の初期装着状態の前の、アッパーマウント10単体の段階で、第2弾性体15の下端開口縁が、受板18の上面に支持される。第2弾性体15は、中間部材12およびリバウンドストッパ34に、非接着状態で当接している。第2弾性体15の内側に、本体筒16が圧入されている。第2弾性体15の内周面と、本体筒16の外周面と、の間に、例えばグリース等の潤滑剤が配設されている。
【0034】
第2弾性体15は、ロッド軸O方向に圧縮変形させられた状態で、中間部材12と外側部材13との間に配設されている。第2弾性体15は、外側部材13の囲繞筒26に加硫接着され、囲繞筒26のうちの少なくとも上端開口縁および内周面を覆っている。第2弾性体15の上端開口縁のうち、囲繞筒26の上端開口縁に位置する外周部は、囲繞筒26の上端開口縁より径方向の内側に位置する内周部より上方に突出している。第2弾性体15の上端開口縁のうち、外周部がストッパ部34bの下面に当接し、内周部はストッパ部34bの下面から下方に離れている。第2弾性体15は、外側部材13の装着部27の下面における内周縁部にも加硫接着されている。
【0035】
第2弾性体15の下端部は、受板18の環状溝37内に挿入されている。第2弾性体15の外周面と、受板18における連結筒18cの内周面、つまり環状溝37の外周面と、の間に、径方向の隙間が設けられている。なお、第2弾性体15の外周面と、環状溝37の外周面と、の間に、径方向の隙間を設けなくてもよい。
第2弾性体15の外周面に、周方向に延びる環状突起28がロッド軸O方向に間隔をあけて複数形成されている。環状突起28は、第2弾性体15の外周面のうち、外側部材13より下方に位置する部分に形成されている。
【0036】
第1弾性体14は、中間部材12における本体筒16の内周面、および支持板17の上面と、内側部材11における上面、下面、および外周面と、押え部材35の下面と、に当接している。第1弾性体14は、ロッド軸O方向、および径方向の双方向に圧縮変形している。第1弾性体14は、押え部材35、中間部材12、および内側部材11に非接着状態で当接している。なお、第1弾性体14は、押え部材35、中間部材12、および内側部材11のうちの少なくとも1つに接着されてもよい。
【0037】
第1弾性体14において、押え部材35の下面と、内側部材11の上面と、の間に位置する部分におけるロッド軸O方向の厚さ、並びに、支持板17の上面と、内側部材11の下面と、の間に位置する部分におけるロッド軸O方向の厚さは、互いに同等になっている。なお、これらの各厚さを互いに異ならせてもよい。
第2弾性体15の体積は、第1弾性体14の体積より大きい。第2弾性体15における径方向の厚さは、第1弾性体14の前記厚さより厚い。
第2弾性体15のロッド軸O方向の長さは、第1弾性体14のロッド軸O方向の大きさより大きく、第2弾性体15の下端開口縁は、第1弾性体14より下方に位置している。第2弾性体15の下端開口縁は、受板18の内周部18aの上面、つまり環状溝37の底面に当接している。
【0038】
第1弾性体14は、第2弾性体15を形成する第2ゴム材料より静的ばね定数が高い第1ゴム材料で形成されている。
静的ばね定数は、JIS K 6385:2012における6「静的ばね特性試験」の6.5「試験方法」の「往復方式」に規定された方法によって測定することができる。測定条件(JIS K 6385:2012における6.4「試験条件」)については、試験温度を適用車両での使用環境相当とすることができる。
【0039】
第2ゴム材料のtanδは、第1ゴム材料のtanδより大きい。tanδは、動的引張粘弾性測定装置(例えば、株式会社上島製作所製スペクトロメーター)を用いて、測定温度25℃、初期ひずみ5%、動ひずみ2%、周波数10Hzの条件で測定できる。
【0040】
第1ゴム材料の動的ばね定数は、第2ゴム材料の動的ばね定数より低い。
動的ばね定数Kdは、日本ゴム協会標準規格(SRIS)3503−1990における6.1「非共振方法」の6.1.1「荷重波形、たわみ波形による場合」に規定された方法によって測定することができる。測定条件(SRIS 3503−1990における4.3「試験の指定条件」)については、試験温度を適用車両での使用環境相当とし、試験振動数を適用車両のばね下共振周波数前後とし、平均荷重を適用車両のスプリング1G荷重相当とし、荷重振幅を適用車両での使用条件とすることができる。
【0041】
次に、以上のように構成されたアクティブダンパ用アッパーマウント10が、車両に装着された状態、つまり、
図3に示されるような、前述の初期装着状態について説明する。
【0042】
複数の環状突起28のうち、少なくとも最も上方に位置する環状突起28は、環状溝37より上方に位置し、かつこの環状突起28における径方向の外端縁は、環状溝37の外周面より径方向の外側に位置している。図示の例では、複数の環状突起28のうち、最も上方に位置する1つの環状突起28に限って、環状溝37より上方に位置している。これにより、第2弾性体15にロッド軸O方向の圧縮荷重が入力されたときに、第2弾性体15が、外側部材13の装着部27と、受板18の外周部18bと、の間にはみ出る体積を抑えることが可能になり、第2弾性体15のロッド軸O方向の圧縮変形量を確実に確保することができる。
【0043】
第2弾性体15は、ロッド軸O方向に圧縮変形させられ、第2弾性体15の下端部の外周面は、環状溝37の外周面に当接している。この際、第2弾性体15の内周面は、ほぼ全域にわたって、本体筒16の外周面に当接する。第2弾性体15の上端開口縁は、径方向の全域にわたって、リバウンドストッパ34のストッパ部34bから下方に離れている。第2弾性体15と、本体筒16の上端部の外周面と、が非接触になっている。囲繞筒26の上端開口縁は、本体筒16の上端開口縁より下方に位置している。ストッパゴム36の下端部は、受板18の上面より上方に位置している。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によるアクティブダンパ用アッパーマウント10によれば、中間部材12と外側部材13との間に第2弾性体15が配設されているので、アクティブダンパ21のロッド22にロッド軸O方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に伝わった振動が、第1弾性体14により減衰、吸収されなかったとしても、この振動を、第2弾性体15により減衰、吸収することが可能になり、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
【0045】
また、第2弾性体15が、径方向の厚さよりロッド軸O方向の長さが大きい筒状に形成されるとともに、中間部材12の本体筒16に外嵌されているので、第2弾性体15を配設したことによるアッパーマウント10の径方向のかさ張りを抑えることができる。
また、第2弾性体15が、本体筒16にロッド軸O方向に摺動可能に外嵌されているので、中間部材12および外側部材13が、相対的にロッド軸O方向に変位したときに、第2弾性体15および本体筒16を、相対的にロッド軸O方向に摺動させることが可能になり、第2弾性体15に、ロッド軸O方向の引張力が加えられるのを抑制することができる。これにより、第2弾性体15が、前述のような筒状に形成されたとしても、第2弾性体15の耐久性、および第2弾性体15のロッド軸O方向の圧縮変形量を確実に確保することができる。
【0046】
また、第2弾性体15の外周面に、環状突起28がロッド軸O方向に間隔をあけて複数形成されているので、第2弾性体15にロッド軸O方向の圧縮荷重が入力されたときに、第2弾性体15を、座屈させにくくして、ロッド軸O方向に真直ぐ圧縮変形させやすくなり、第2弾性体15が、前述のような筒状に形成されたことにより、第2弾性体15のロッド軸O方向のばね定数が低くなるのを抑えることができる。
また、第2弾性体15の下端部が、受板18の上面の環状溝37に挿入されているので、第2弾性体15のロッド軸O方向の長さを容易に確保することができる。
【0047】
また、複数の環状突起28のうちの少なくとも1つにおける径方向の外端縁が、環状溝37の外周面より径方向の外側に位置していて、この環状突起28の体積が大きく確保されているので、第2弾性体15にロッド軸O方向の圧縮荷重が入力されたときに、第2弾性体15が座屈するのを確実に抑制することが可能になり、第2弾性体15のロッド軸O方向のばね定数を確実に確保することができる。
また、この環状突起28が、前述の初期装着状態で、環状溝37より上方に位置しているので、アッパーマウント10を車両に装着するに際し、環状突起28が、受板18の上面における環状溝37の開口周縁部に引っ掛かるのを防ぐことができる。
【0048】
また、環状溝37の外周面と、第2弾性体15の外周面と、の間に径方向の隙間が設けられているので、第2弾性体15がロッド軸O方向に圧縮変形したときに、第2弾性体15が、受板18の上面において、環状溝37より径方向の外側に位置する部分にはみ出るのを抑制することができる。したがって、このはみ出した部分が、受板18の上面と外側部材13との間に挟まれることにより、第2弾性体15のロッド軸O方向の圧縮変形が阻害されるのを抑制することができる。
【0049】
また、第2弾性体15の内周面と、本体筒16の外周面と、の間に潤滑剤が配設されているので、中間部材12および外側部材13が、相対的にロッド軸O方向に変位したときに、第2弾性体15に、ロッド軸O方向の引張力が加えられるのを確実に抑制することができる。
【0050】
また、第2弾性体15のロッド軸O方向の長さが、第1弾性体14のロッド軸O方向の大きさより大きくなっているので、第2弾性体15の径方向の厚さを抑えても、第2弾性体15の体積を確保することが可能になり、第1弾性体14により減衰、吸収されなかった振動を、第2弾性体15により確実に減衰、吸収することができる。
また、第2弾性体15の下端開口縁が、第1弾性体14より下方に位置しているので、第2弾性体15のロッド軸O方向の長さを容易に確保することが可能になり、第2弾性体15のロッド軸O方向の圧縮変形量を確実に確保することができる。
【0051】
また、本体筒16が、第2弾性体15の内側に圧入されているので、第2弾性体15が経年劣化しても、第2弾性体15の内周面と、本体筒16の外周面と、の間に隙間が生ずるのを抑制することが可能になり、第2弾性体15にロッド軸O方向の圧縮荷重が入力されたときに、経年劣化に起因して座屈しやすくなるのを確実に抑えることができる。
【0052】
また、互いにロッド軸O方向に対向する受板18および外側部材13のうちの少なくとも一方に、ストッパゴム36が配設されているので、中間部材12および外側部材13が相対的にロッド軸O方向に接近移動したときに、第2弾性体15だけでなく、ストッパゴム36もロッド軸O方向に圧縮変形させることが可能になり、第2弾性体15が、前述のような筒状に形成されたとしても、第2弾性体15の耐久性を確実に確保することができる。
【0053】
また、第1ゴム材料の静的ばね定数が、第2ゴム材料の静的ばね定数より高いので、アクティブダンパ21のロッド22にロッド軸O方向の大きな制御力が加えられても、第1弾性体14がロッド軸O方向に大きく圧縮変形して過度に硬くなってしまうのを抑制することができる。したがって、アクティブダンパ21のロッド22にロッド軸O方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に伝わった振動を、周波数の高低を問わず、第2弾性体15だけでなく第1弾性体14でも減衰および吸収することが可能になり、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
また、第1弾性体14のロッド軸O方向の圧縮変形量が抑えられることから、第1弾性体14にかかる負荷を抑えることが可能になり、第1弾性体14の耐久性を確保することもできる。
【0054】
特に、ロッド22が固定される振動発生部側の内側部材11と中間部材12との間、並びに、車体側に取付けられる振動受部側の外側部材13と中間部材12との間に、各別に第1弾性体14および第2弾性体15が配設されている、つまり、中間部材12が、振動発生部側と振動受部側との間で、第1弾性体14と第2弾性体15とにより挟まれているので、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に高周波数の振動が伝わったときに、中間部材12を、その慣性重量に起因して振動させにくくすることができる。いわば、中間部材12を、ダイナミックダンパのマスとして作用させることができる。したがって、高周波数の振動が車体に伝達するのを確実に抑制することができる。
【0055】
また、第2ゴム材料のtanδが、第1ゴム材料のtanδより大きいので、前述のようにロッド22に伝わった振動に起因して中間部材12が共振しようとしたときに、第2弾性体15の減衰力により、この共振を抑えることができる。
また、静的ばね定数の低い第2ゴム材料のtanδが、静的ばね定数の高い第1ゴム材料のtanδより大きいので、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に伝わった高周波の振動を第2弾性体15により効果的に減衰および吸収して、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
【0056】
また、第1ゴム材料の動的ばね定数が、第2ゴム材料の動的ばね定数より低いので、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に伝わった高周波の振動を、第2弾性体15に伝達する前に、第1弾性体14により効果的に減衰および吸収しやすくなり、この振動が車体に伝達するのを確実に抑制することができる。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
前記実施形態では、第2弾性体15の内周面と、本体筒16の外周面と、の間に潤滑剤を配設したが、これらの間に潤滑剤を配設しなくてもよい。
前記実施形態では、第2弾性体15のロッド軸O方向の長さを、第1弾性体14のロッド軸O方向の大きさより大きくしたが、第2弾性体15のロッド軸O方向の長さを、第1弾性体14のロッド軸O方向の大きさ以下としてもよい。
前記実施形態では、第2弾性体15の下端開口縁が、第1弾性体14より下方に位置しているが、第2弾性体15の下端開口縁を、第1弾性体14に対してロッド軸O方向の同等の位置に位置させてもよいし、上方に位置させてもよい。
前記実施形態では、本体筒16を、第2弾性体15の内側に圧入したが、本体筒16を、第2弾性体15の内側に、第2弾性体15の内周面が径方向の外側に向けて押圧されない状態で挿入してもよい。
外側部材13にストッパゴム36を配設したが、ストッパゴム36は、受板18に配設してもよいし、ストッパゴム36を有しない構成を採用してもよい。
【0059】
前記実施形態では、
図3に示されるような、前述の初期装着状態で、第2弾性体15の外周面が、環状溝37の外周面に当接したが、第2弾性体15の外周面を、環状溝37の外周面から径方向の内側に離間させてもよい。
前記実施形態では、前述の初期装着状態で、第2弾性体15の上端開口縁が、リバウンドストッパ34のストッパ部34bから下方に離れているが、第2弾性体15の上端開口縁を、ストッパ部34bに当接させてもよい。
前記実施形態では、前述の初期装着状態で、本体筒16の上端部の外周面と、第2弾性体15と、が非接触になっているが、第2弾性体15を、本体筒16の外周面におけるロッド軸O方向の全長にわたって当接させてもよい。
前記実施形態では、前述の初期装着状態で、囲繞筒26の上端開口縁が、本体筒16の上端開口縁より下方に位置しているが、囲繞筒26の上端開口縁を、本体筒16の上端開口縁に対してロッド軸O方向の同等の位置に位置させてもよいし、上方に位置させてもよい。
前記実施形態では、前述の初期装着状態で、ストッパゴム36の下端部が、受板18の上面より上方に位置しているが、ストッパゴム36の下端部を、受板18の上面に当接させてもよい。
【0060】
前記実施形態では、リバウンドストッパ34、押え部材35、および外側部材13の囲繞筒26を備える構成を示したが、これらを有しない構成を採用してもよい。
前記実施形態では、第2弾性体15として、外側部材13の囲繞筒26とリバウンドストッパ34のストッパ部34bとの間に位置する部分を有する構成を示したが、この部分を有しない構成を採用してもよい。
前記実施形態では、第1ゴム材料の静的ばね定数が、第2ゴム材料の静的ばね定数より高い構成を示したが、第1ゴム材料の静的ばね定数を、第2ゴム材料の静的ばね定数以下としてもよい。
前記実施形態では、第2ゴム材料のtanδが、第1ゴム材料のtanδより大きい構成を示したが、第2ゴム材料のtanδを、第1ゴム材料のtanδ以下としてもよい。
前記実施形態では、第1ゴム材料の動的ばね定数が、第2ゴム材料の動的ばね定数より低い構成を示したが、第1ゴム材料の動的ばね定数を、第2ゴム材料の動的ばね定数以上としてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。