特許第6905462号(P6905462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6905462壁面ボード貼付け方法、壁面ボード貼付け装置、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905462
(24)【登録日】2021年6月29日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】壁面ボード貼付け方法、壁面ボード貼付け装置、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/18 20060101AFI20210708BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   E04F21/18 B
   E04G21/16
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-244658(P2017-244658)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-11666(P2019-11666A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-129973(P2017-129973)
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】レ クオク ズン
(72)【発明者】
【氏名】松戸 正士
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 新吾
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−103160(JP,A)
【文献】 特開2000−118288(JP,A)
【文献】 特開昭62−191904(JP,A)
【文献】 特開平3−166072(JP,A)
【文献】 特開2000−94375(JP,A)
【文献】 特開2010−172986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/18
E04G 21/16
B25J 11/00
B25J 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面となるべき施工領域とこの施工領域に貼り付ける複数枚の壁面ボードが積み重ねられたストック領域とを含む施工空間内に、ロボットハンドを移動自在に支持してその現在位置を認識可能なロボット装置を据え付ける工程と、
一枚目の前記壁面ボードを貼り付ける前記施工領域を前記ロボットハンドに設けたカメラで撮像し、当該施工領域に正しく配置されたと想定される前記壁面ボードの少なくとも三カ所の特徴点に対応付けられる前記施工領域中の目印の座標点を推定して記憶する工程と、
前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを前記一枚目の壁面ボードとして前記ロボットハンドに設けた把持具で把持する工程と、
前記把持具に把持させた前記一枚目の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像から前記特徴点の位置を認識する工程と、
前記一枚目の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、前記記憶する目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該一枚目の壁面ボードを前記施工領域に配置する工程と、
前記施工領域に配置された前記一枚目の壁面ボードを前記ロボットハンドに設けた固定具で前記施工領域に固定する工程と、
を備えることを特徴とする壁面ボード貼付け方法。
【請求項2】
前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを二枚目以降の前記壁面ボードとして前記把持具で把持する工程と、
前記把持具に把持させた前記二枚目以降の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像からその特徴点の位置を認識する工程と、
前記二枚目以降の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、既に固定されている前記壁面ボードの隣接位置に配置したときに想定される前記目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該二枚目以降の壁面ボードを前記施工領域に配置する工程と、
前記施工領域に配置された前記二枚目以降の壁面ボードを前記固定具で前記施工領域に固定する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の壁面ボード貼付け方法。
【請求項3】
前記壁面ボードの少なくとも三カ所の隅部を前記特徴点として扱う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の壁面ボード貼付け方法。
【請求項4】
前記施工領域に設けられているボード取付枠の形状を前記目印として認識する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の壁面ボード貼付け方法。
【請求項5】
前記施工領域に付したマークを前記目印として認識する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の壁面ボード貼付け方法。
【請求項6】
前記ストック領域に積み重ねられた前記壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像中に含まれる前記特徴点から前記最上位の壁面ボードの位置を判定して前記把持具で把持する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一に記載の壁面ボード貼付け方法。
【請求項7】
一枚目の前記壁面ボードについて判定した位置を基準として、二枚目以降となる前記最上位の壁面ボードの位置を推定して前記把持具で把持する、
ことを特徴とする請求項6に記載の壁面ボード貼付け方法。
【請求項8】
前記施工領域に対する前記壁面ボードの押し当て圧力を前記ロボットハンドに設けた圧力センサによって検出し、予め決められた検出圧力となるように前記施工領域に前記壁面ボードを押し当てて配置する、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一に記載の壁面ボード貼付け方法。
【請求項9】
建築物の壁面となるべき施工領域とこの施工領域に貼り付ける複数枚の壁面ボードが積み重ねられたストック領域とを含む施工空間内に据え付けられ、ロボットハンドを移動自在に支持してその現在位置を認識可能なロボット装置と、
前記ロボットハンドに設けられたカメラと、
前記ロボットハンドに設けられて前記壁面ボードを把持する把持具と、
前記ロボットハンドに設けられて前記壁面ボードを前記施工領域に固定する固定具と、
一枚目の前記壁面ボードを貼り付ける前記施工領域を前記カメラで撮像し、当該施工領域に正しく配置されたと想定される前記壁面ボードの少なくとも三カ所の特徴点に対応付けられる前記施工領域中の目印の座標点を推定して記憶する手段と、
前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを前記一枚目の壁面ボードとして前記把持具で把持する手段と、
前記把持具に把持させた前記一枚目の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像から前記特徴点の位置を認識する手段と、
前記一枚目の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、前記記憶する目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該一枚目の壁面ボードを前記施工領域に配置する手段と、
前記施工領域に配置された前記一枚目の壁面ボードを前記固定具で前記施工領域に固定する手段と、
を備えることを特徴とする壁面ボード貼付け装置。
【請求項10】
前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを二枚目以降の前記壁面ボードとして前記把持具で把持する手段と、
前記把持具に把持させた前記二枚目以降の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像からその特徴点の位置を認識する手段と、
前記二枚目以降の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、既に固定されている前記壁面ボードの隣接位置に配置したときに想定される前記目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該二枚目以降の壁面ボードを前記施工領域に配置する手段と、
前記施工領域に配置された前記二枚目以降の壁面ボードを前記固定具で前記施工領域に固定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の壁面ボード貼付け装置。
【請求項11】
建築物の壁面となるべき施工領域とこの施工領域に貼り付ける複数枚の壁面ボードが積み重ねられたストック領域とを含む施工空間内に据え付けられ、ロボットハンドを移動自在に支持してその現在位置を認識可能なロボット装置を制御するためのコンピュータにインストールされ、このコンピュータに、
一枚目の前記壁面ボードを貼り付ける前記施工領域を前記ロボットハンドに設けたカメラで撮像し、当該施工領域に正しく配置されたと想定される前記壁面ボードの少なくとも三カ所の特徴点に対応付けられる前記施工領域中の目印の座標点を推定して記憶する機能と、
前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを前記一枚目の壁面ボードとして前記ロボットハンドに設けた把持具で把持する機能と、
前記把持具に把持させた前記一枚目の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像から前記特徴点の位置を認識する機能と、
前記一枚目の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、前記記憶する目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該一枚目の壁面ボードを前記施工領域に配置する機能と、
前記施工領域に配置された前記一枚目の壁面ボードを前記ロボットハンドに設けた固定具で前記施工領域に固定する機能と、
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記コンピュータに、
前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを二枚目以降の前記壁面ボードとして前記把持具で把持する機能と、
前記把持具に把持させた前記二枚目以降の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像からその特徴点の位置を認識する機能と、
前記二枚目以降の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、既に固定されている前記壁面ボードの隣接位置に配置したときに想定される前記目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該二枚目以降の壁面ボードを前記施工領域に配置する機能と、
前記施工領域に配置された前記二枚目以降の壁面ボードを前記固定具で前記施工領域に固定する機能と、
をさらに実行させる請求項11に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面となるべき場所に壁面ボードを貼り付ける壁面ボード貼付け方法、壁面ボード貼付け装置、及び壁面ボード貼付け作業を支援するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、とりわけ倉庫、工場、プレハブハウスなどの比較的簡易な建築物のなかには、例えば壁面をなすべき場所に設けられたボード取付枠に規格化された壁面ボードを固定し、壁面を構成するようにしたものがある。ボード取付枠に対する壁面ボードの固定は、職人等の人手によって行われるのが一般的である。
【0003】
これに対して特許文献1には、外装材をなす壁面ボードとは相違するものの、天井ボードや壁面ボードなどの内装材を貼り付ける内装工事を支援するための内装工事装置が開示されている。この装置は、ボードストックの位置に天井ボードである石膏ボードを積み込み、ロボットアームに装着したアタッチメントに設けた吸着パッドで石膏ボードを吸着把持しながら作業支援を行う。
【0004】
より詳細には、次の手順によって作業支援が行われる。
(1)石膏ボードに対する吸着パッドの位置を人手によって調整し、吸着位置が決まったら吸着パッドに石膏ボードを吸着把持させる(文献1の段落[0026][0027]、図7参照)。
(2)その後ロボットアームの反転アームを反転させてアタッチメントを上向きにし、石膏ボードを天井の軽量鉄骨に軽く接触させる(文献1の段落[0028]、図9参照)。
(3)続いて人手により、既設の石膏ボードの端面に接触するまで石膏ボードをスライドさせた後、ロボットアームの上下動アームでアタッチメントを上昇させ、石膏ボードを天井の軽量鉄骨にしっかり密着させる(文献1の段落[0029]、図10参照)。
(4)そしてロボットアームの移動フレームに装着されているネジ留め機本体を人手で動作させ、一列目のネジ留め作業を行う。終了したら吸着パッドによる吸着を解除し、アタッチメントを人手でスライドさせて二列目のネジ留め作業を行い、これを繰り返すことで石膏ボードの全面をネジ留めする(文献1の段落[0022][0030][0031]、図4図11参照)。
【0005】
そのほか特許文献1には、天井ボードのみならず壁面ボード(化粧ボード)についての作業支援のための装置と方法も記載されている(文献1の段落[0036]〜[0038]、図13参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−321454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の内装工事装置を用いれば、すべて手作業で行う場合に比べて作業が楽になり、作業の安全性の向上や作業時間の短縮といった効果も期待することができる。
【0008】
しかしながら上記(1)(3)(4)の作業には人手によらなければならないものもあるため、さらになる作業負担の軽減と作業効率の向上とが求められる。特に上記(3)(4)では高所での作業を強いられるため、作業の安全性の面でも改善が望まれる。
【0009】
しかも上記(2)(3)でのアタッチメントの上昇動作は、人手を介さない自動制御とも読み取ることができるのに対して、所定位置でのアタッチメントの停止制御をどのように行うのかについて、特許文献1には一切の記載がない。このため石膏ボードを天井の軽量鉄骨に軽く接触させ(上記(2))、あるいはしっかり密着させる(上記(3))という動作についての記述があるもの(文献1の段落[0028][0029]参照)、その実現可能性については疑問が残る。
【0010】
とりわけ問題なのは、石膏ボードを天井の軽量鉄骨に軽く接触させ、あるいはしっかり密着させるという作業が石膏ボードの位置決め精度の良否を左右することである。これらの作業の実現可能性が不透明である以上、石膏ボードを正確な位置に固定できるのかどうかも不明であるといわざるを得ない。
【0011】
もう一つ問題は、軽量鉄骨にしっかり密着させる際に石膏ボードに加えられる押圧力の強さである。押圧力が弱すぎると石膏ボードに位置ずれが生ずる可能性があるし、押圧力が強すぎると石膏ボードが破損してしまう可能性があるからである。
【0012】
本発明の課題は、施工領域に壁面ボードを貼り付ける際の作業負担を減らし、作業効率を向上させることである。
【0013】
本発明の別の課題は、施工領域に壁面ボードを貼り付ける際の作業の安全性を向上させることである。
【0014】
本発明のさらに別の課題は、施工精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の壁面ボード貼付け方法は、建築物の壁面となるべき施工領域とこの施工領域に貼り付ける複数枚の壁面ボードが積み重ねられたストック領域とを含む施工空間内に、ロボットハンドを移動自在に支持してその現在位置を認識可能なロボット装置を据え付ける工程と、一枚目の前記壁面ボードを貼り付ける前記施工領域を前記ロボットハンドに設けたカメラで撮像し、当該施工領域に正しく配置されたと想定される前記壁面ボードの少なくとも三カ所の特徴点に対応付けられる前記施工領域中の目印の座標点を推定して記憶する工程と、前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを前記一枚目の壁面ボードとして前記ロボットハンドに設けた把持具で把持する工程と、前記把持具に把持させた前記一枚目の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像から前記特徴点の位置を認識する工程と、前記一枚目の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、前記記憶する目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該一枚目の壁面ボードを前記施工領域に配置する工程と、前記施工領域に配置された前記一枚目の壁面ボードを前記ロボットハンドに設けた固定具で前記施工領域に固定する工程と、を備えることによって上記課題を解決する。
【0016】
本発明の壁面ボード貼付け装置は、建築物の壁面となるべき施工領域とこの施工領域に貼り付ける複数枚の壁面ボードが積み重ねられたストック領域とを含む施工空間内に据え付けられ、ロボットハンドを移動自在に支持してその現在位置を認識可能なロボット装置と、前記ロボットハンドに設けられたカメラと、前記ロボットハンドに設けられて前記壁面ボードを把持する把持具と、前記ロボットハンドに設けられて前記壁面ボードを前記施工領域に固定する固定具と、一枚目の前記壁面ボードを貼り付ける前記施工領域を前記カメラで撮像し、当該施工領域に正しく配置されたと想定される前記壁面ボードの少なくとも三カ所の特徴点に対応付けられる前記施工領域中の目印の座標点を推定して記憶する手段と、前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを前記一枚目の壁面ボードとして前記把持具で把持する手段と、前記把持具に把持させた前記一枚目の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像から前記特徴点の位置を認識する手段と、前記一枚目の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、前記記憶する目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該一枚目の壁面ボードを前記施工領域に配置する手段と、前記施工領域に配置された前記一枚目の壁面ボードを前記固定具で前記施工領域に固定する手段と、を備えることによって上記課題を解決する。
【0017】
本発明のコンピュータは、建築物の壁面となるべき施工領域とこの施工領域に貼り付ける複数枚の壁面ボードが積み重ねられたストック領域とを含む施工空間内に据え付けられ、ロボットハンドを移動自在に支持してその現在位置を認識可能なロボット装置を制御するためのコンピュータにインストールされ、このコンピュータに、一枚目の前記壁面ボードを貼り付ける前記施工領域を前記ロボットハンドに設けたカメラで撮像し、当該施工領域に正しく配置されたと想定される前記壁面ボードの少なくとも三カ所の特徴点に対応付けられる前記施工領域中の目印の座標点を推定して記憶する機能と、前記ロボットハンドを前記ストック領域に移動させ、最上位の前記壁面ボードを前記一枚目の壁面ボードとして前記ロボットハンドに設けた把持具で把持する機能と、前記把持具に把持させた前記一枚目の壁面ボードを前記カメラで撮像し、撮像画像から前記特徴点の位置を認識する機能と、前記一枚目の壁面ボードを把持する前記ロボットハンドを前記施工領域に移動させ、前記記憶する目印の座標点に前記認識した特徴点の位置を合わせて当該一枚目の壁面ボードを前記施工領域に配置する機能と、前記施工領域に配置された前記一枚目の壁面ボードを前記ロボットハンドに設けた固定具で前記施工領域に固定する機能と、を実行させることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、施工領域に壁面ボードを貼り付けるに際して、人手を要する作業が大幅に減少するので、その作業負担を減少させ、作業効率を向上させることができる。また高所での作業が不要となるため、作業の安全性を向上させることができる。さらに施工領域に壁面ボードを位置決めする作業に人手を介さないため、施工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の一形態として、使用中の壁面ボード貼付け装置を示す斜視図。
図2】ロボット装置の可動態様を側面方向から示す模式図。
図3】ロボットハンドを底面方向から見た模式図。
図4】ロボットハンドを側面方向から見た模式図。
図5】壁面ボードを把持するロボットハンドを示す斜視図。
図6】制御盤における電気的接続のブロック図。
図7】学習処理の流れを示すフローチャート。
図8】一枚目の壁面ボードの貼付け処理の流れを示すフローチャート。
図9】二枚目以降の壁面ボードの貼付け処理の流れを示すフローチャート。
図10】一枚目の壁面ボードの貼付け動作を実行するロボット装置の状態変位を示す模式図。
図11】壁面ボードの固定動作を実行するロボットアームの状態遷移を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の一形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は、建築物の壁面となるべき場所に壁面ボードを貼り付ける壁面ボード貼付け方法、壁面ボード貼付け装置、及び壁面ボード貼付け作業を支援するコンピュータプログラムへの適用例である。以下、次の項目に沿って説明する。
1.概略構成
2.ロボット装置
3.制御盤
4.壁面ボード貼付け方法及び処理
(1)ロボット装置の据え付け工程
(2)目印座標点の取得工程
(3)一枚目の壁面ボードの把持工程
(4)一枚目の壁面ボードの特徴点の認識工程
(5)一枚目の壁面ボードの配置工程
(6)一枚目の壁面ボードの固定工程
(7)目印座標点の取得工程
(8)二枚目の壁面ボードの把持工程
(9)二枚目の壁面ボードの特徴点の認識工程
(10)二枚目の壁面ボードの配置工程
(11)二枚目の壁面ボードの固定工程
5.効果
6.変形例
【0021】
1.概略構成
図1に示すように、本実施の形態では、建築物そのものは捨象し、壁面Wとなるべき場所に設置されているボード取付枠1に対して壁面ボードWBを貼付けるためのスキームを紹介する。
【0022】
ボード取付枠1は、壁面ボードWBを取り付けるための枠体であり(図10参照)、三列三行で壁面ボードWBが貼られる。このようなボード取付枠1は、建築物の壁面Wとなるべき施工領域Aを構成する。
【0023】
施工領域Aの近傍には、二つのワークパレット2が設けられている。これらのワークパレット2には、ボード取付枠1に貼り付ける複数枚の壁面ボードWBが積み重ねて収納されている。二つのワークパレット2は施工領域Aの目の前に配置されており、ストック領域Bを構成する。
【0024】
施工領域Aとストック領域Bとを含む空間は、施工空間WSとなる。
【0025】
壁面ボード貼付け装置11の中核をなすのは、施工空間WSに据え付けられたロボット装置101である。ロボット装置101は、二分割して置かれた一対のワークパレット2の間を跨ぐように設置されている台車111を土台として、台車111に設けられているリフタ112に搭載されているロボットアーム121及びロボットハンド131を主要な構成物としている。そこでロボット装置101は、ワークパレット2に収納されている壁面ボードWBをロボットハンド131によって把持し、ボード取付枠1に次々と貼り付けていく。
【0026】
壁面ボード貼付け装置11のもう一つの重要な構成要素は、制御盤201である。制御盤201はロボット装置101の動作を制御する。本実施の形態では、制御盤201はロボット装置101を挟んでボード取付枠1と対面する位置に配置され、作業者Hの操作に供される。
【0027】
図1中、作業者Hの近傍に位置する大きな箱状のものは、コンプレッサCである。コンプレッサCは、リフタ112やロボットアーム121など駆動源となる。
【0028】
本実施の形態の壁面ボード貼付け装置11は、施工領域Aでの作業者Hの作業を不要としている。そこで安全のために、施工領域Aとストック領域Bとが配置された施工空間WSを立ち入り禁止とするために、複数個のパイロン3でバー4を支える囲い5が設けられている。囲い5は作業者H側の空間と施工空間WSとを区切っている。
【0029】
2.ロボット装置
ロボット装置101について説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、台車111は四脚構造をなしている強固なフレーム構造物であり、車輪113によって可搬性を持たされている。台車111には車輪113とは別に複数個の支持脚114も設けられ、所望の場所に設置した後は車輪113を上昇させることで、支持脚114によって安定的な設置が可能である。
【0031】
台車111にはその中央部分に昇降自在のリフタ112が設けられており、ロボットアーム121はリフタ112に固定されている。したがってロボットアーム121は、リフタ112の昇降動作に応じて高さを変動させることが可能である。リフタ112はスライド移動構造をなしており、コンプレッサCによって圧縮された空気を送られるエアシリンダAC(図示せず)によって昇降駆動される。したがってコンプレッサCは、リフタ112の駆動源PS(図6参照)となる。
【0032】
リフタ112の昇降動作に応じて高さを変動させるロボットアーム121は、三つのジョイント122a,122b,122cの間に二つのリンク123a,123bを設けている。一つ目のジョイント122aは、垂直軸周りに回転自在にリフタ112に連結され、一方のリンク123aを水平軸回りに回転自在に連結している。二つ目のジョイント122bは、二つのリンク123a,123bの間に介在し、これらのリンク123a,123bを水平軸回りに回転自在に連結している。そして三つ目のジョイント122cは、もう一方のリンク123bを水平軸周りに回転自在に連結するとともに、ロボットハンド131を水平軸及びこれと直交する軸回りに回転自在に連結している。
【0033】
図2に示すように、ロボットアーム121は、リフタ112と一つ目のジョイント122a、一つ目のジョイント122aと一方のリンク123a、二つ目のジョイント122bと二つのリンク123a,123b、そして三つ目のジョイント122cともう一方のリンク123b及びロボットハンド131の回転角度を調節することによって、各種の可動態様を実現する。一例として、壁面ボードWBを縦方向に三列貼るために、ロボットアーム121はロボットハンド131を三段階の位置に位置付ける。
【0034】
このときリフタ112に対する一つ目のジョイント122aの回転角度、それにロボットハンド131に対する三つ目のジョイント122cの二軸の回転角度を調節することで、ボード取付枠1において壁面ボードWBを貼り付けるべき三列三行合計九カ所の場所にロボットハンド131を位置付けることが可能となる。
【0035】
また図10中の中段図に示されているように、三つ目のジョイント122cとロボットハンド131との間の水平軸回りの角度を調節することで、ロボットハンド131を下向きにすることができる。この姿勢は、ワークパレット2から壁面ボードWBをピックアップするときの姿勢である。
【0036】
ロボットアーム121における各部の角度調節は、個々のジョイント122a,122b,122cにそれぞれ内蔵されているアクチュエータ(図示せず)によって実行される。したがってアクチュエータは、ロボットアーム121の駆動源PS(図6参照)となる。
【0037】
図3図5に示すように、ロボットハンド131は、矩形形状をしたフレーム132に各種の構造物を搭載している。搭載されている構造物は、壁面ボードWBを吸着して把持する把持具133、カメラ134、固定具としてのビス打ち機135、及び圧力センサ136(図6参照)である。
【0038】
把持具133は、フレーム132の四隅及び長手方向の中央部分の六カ所に設けられたカップ形状の吸着パッド137によって壁面ボードWBを吸着して把持する。吸着パッド137に吸着作用を生じさせるために、把持具133は真空発生器138をフレーム132に搭載している。真空発生器138は、エアホース139を介して個々の吸着パッド137と連結し、空気を吸引する。これによって真空発生器138は、壁面ボードWBに開口部分を当てた吸着パッド137の内部に負圧を生じさせ、壁面ボードWBに対して吸着力を作用させる。吸着パッド137はある程度の柔軟性を有しており、壁面ボードWBを吸着した際、壁面ボードWBとフレーム132との間の間隔を変動させる。
【0039】
カメラ134は、フレーム132から飛び出すように延出するアーム140の先端部に取り付けられており、吸着パッド137の開口部分が対面する方向の空間を撮像する。
【0040】
ビス打ち機135は、ボード取付枠1に壁面ボードWBを固定するためのビス(図示せず)を打ち出す。ビス打ち機135は一対設けられ、フレーム132の一端側の二つの隅部から互いに拡開する方向に延出している。
【0041】
ロボットハンド131は、一対のビス打ち機135の間の部分に位置させて、フレーム132にクッションパッド141を取り付けている。クッションパッド141は、吸着パッド137の開口部分が対面する方向に向けて延出する金属製の線状部材であり、先端部分が柔軟に形成されている。把持具133の吸着パッド137が壁面ボードWBを吸着して把持したとき、吸着パッド137が弾性変形するにしたがい壁面ボードWBはクッションパッド141に押し当てられる。
【0042】
圧力センサ136は、クッションパッド141の根元の部分に位置させて、フレーム132に取り付けられている。吸着パッド137に吸着された壁面ボードWBがクッションパッド141に押し当てられると、その押し当て力に応じて圧力センサ136は出力を変動させる。
【0043】
3.制御盤
制御盤201について説明する。
【0044】
図6に示すように、ロボット装置101の動作を制御する制御盤201(図1参照)は、マイクロコンピュータである情報処理装置211によって構成されている。情報処理装置211の中核をなすのは、各種演算処理を実行して各部を集中的に制御するCPU231をはじめとする情報処理部232である。情報処理部232は、CPU231に接続されたEEPROM233とRAM234、それに時計回路235によって構成されている。EEPROM233は、各種のデータを固定的に記憶するメモリであり、例えばBIOSなどを格納している。RAM234は、各種のデータを書き換え自在に一時記憶するメモリであり、ワークエリアとしても用いられる。時計回路235は、図示しない水晶発振器を内蔵し、タイミング制御用のクロック信号を生成する。
【0045】
情報処理部232にはI/O236が接続されている。I/O236にはHDD237、表示装置238、入力装置239が接続され、ロボット装置101の姿勢を制御するために各部を駆動する駆動系241の部品と、ロボットハンド131に搭載されて各種の動作を実行するワーク系251の部品とが接続されている。
【0046】
HDD237は、オペレーティングシステムをはじめとして、壁面ボード貼付け用のコンピュータプログラム及びその関連データを格納している。HDD237に格納されているオペレーティングシステムは、情報処理装置211の起動とともにその全部又は一部がRAM234に転送されてコピーされる。またHDD237に格納されている壁面ボード貼付け用のコンピュータプログラム及びその関連データは、起動プログラムによって立ち上げられた後、その全部又は一部がRAM234に転送されてコピーされる。そこでCPU231は、RAM234に駐留するオペレーティングシステムにしたがい、RAM234にコピーされたコンピュータプログラムに規定された各種処理動作を実行する。
【0047】
表示装置238は、マン・マシン・インターフェースとなる例えば液晶ディスプレイであり、HDD237に蓄積される各種データなどを表示する。
【0048】
入力装置239は、マン・マシン・インターフェースとなるキーボード、マウスなどのポインティングディバイスであり、各種情報の入力を可能とする。
【0049】
制御盤201は、表示装置238及び入力装置239を外部に露出させており(図1中には図示せず)、作業者Hに対する情報の提供と情報の入力とを支援する。
【0050】
駆動系241は、リフタ112の駆動源PSとなるコンプレッサCや、ロボットアーム121の駆動源となる複数個のアクチュエータからなる駆動源PSを含んでいる。これらの駆動源PSの動作を制御するために、駆動系241にはセンシング装置SDが設けられている。つまり駆動系241は、情報処理部232の統制下で、センシング装置SDでセンシングしながら駆動源PSを駆動し、ロボット装置101の動作を制御するわけである。
【0051】
もっともセンシング装置SDは、現実世界の物理量を検出する構造のもののみならず、駆動源PSの動作を計算上算出してセンシングするようなものであってもよい。
【0052】
ワーク系251は、ロボットハンド131に搭載されている各部、つまり吸着パッド137に吸着力を生じさせる真空発生器138、カメラ134、ビス打ち機135、及び圧力センサ136を含んでいる。これらの真空発生器138、カメラ134、及びビス打ち機135は情報処理部232によって動作制御され、圧力センサ136はクッションパッド141に加えられる圧力データを情報処理部232に提供する。
【0053】
いうまでもないが、I/O236を介して情報処理部232に接続される各部は、すべてデジタル接続されている。例えば真空発生器138やビス打ち機135にはデジタル信号である駆動信号が与えられ、これによってこれらの機器138,135の内部において駆動信号が解釈される。また圧力センサ136やセンシング装置SDは変化量をアナログ値として出力するが、これをデジタル信号に変換してI/O236に入力する。
【0054】
4.壁面ボード貼付け方法及び処理
本実施の形態の壁面ボード貼付け方法は、制御盤201に設けられている情報処理装置211による処理と協働して実行される。情報処理装置211は、HDD237に格納された壁面ボード貼付け用のコンピュータプログラムにしたがい、情報処理部232に壁面ボード貼付け処理を実行させる。以下、壁面ボード貼付け方法及び処理を、手順を追って説明する。
(1)ロボット装置の据え付け工程
壁面ボード貼付け方法は、施工空間WSにロボット装置101を据え付けることから始まる。ロボット装置101は、一例として、図1に示すような場所、つまり施工領域Aとなるボード取付枠1の目の前であって、ストック領域Bとなるワークパレット2の近傍の位置である。本実施の形態ではワークパレット2が二つ設けられているので、ロボット装置101は、二つのワークパレット2の間に据え付けられている。
【0055】
続いて図7に示すように、学習処理を実行する。施工空間WSにロボット装置101を据え付けた際、ロボット装置101の動作を制御する制御盤201の情報処理装置211は、施工領域A及びストック領域Bの位置を認識していない。そこで情報処理装置211に施工領域A及びストック領域Bの概略位置を学習させる必要がある。
【0056】
学習処理の実行をするには、まず入力装置239での指示によって、施工領域Aにロボットハンド131を移動させる(ステップS11)。この処理は、入力装置239での置数入力、あるいは表示装置238での表示と連携させたGUI入力によって実行される。
【0057】
ステップS11では、ボード取付枠1中、一枚目の壁面ボードWBを貼り付けるべき位置である左側の最下位置にロボットハンド131を位置付け、壁面ボードWBを貼り付ける場所に吸着パッド137を対面させる。
【0058】
壁面ボード貼付け装置11は、ロボットアーム121を動作させてロボットハンド131を移動させた際、センシング装置SDでのセンシング動作によって、ロボットハンド131の座標をトレースしている。つまり時々刻々と変化するロボットハンド131の座標をセンシング装置SDによってセンシングし、これをメモリ、例えばRAM234やEEPROM233に記憶する。
【0059】
そこで情報処理部232のCPU231は、一枚目の壁面ボードWBを貼り付けるべき位置に位置づけられたロボットハンド131の座標をメモリに記憶する(ステップS12)。こうして記憶された座標点のデータをM1とする。
【0060】
CPU231は、必要に応じて、一枚の壁面ボードWBの貼付け位置のみならず、二枚目以降のすべての壁面ボードWBの貼付け位置についてステップS11及びS12の処理を実行するようにしても良い。壁面ボードWBの大きさが予め既知である場合には、一枚目の壁面ボードWBの貼付け位置さえ学習させれば、二枚目以降の壁面ボードWBの貼付け位置を計算上求めることが可能である。これに対してそのような準備をしていない場合、あるいは壁面ボードWBの大きさを現場で初めて知ったような場合には、ステップS11及びS12の処理を繰り返すことで、すべての壁面ボードWBの貼付け位置に対面したときのロボットハンド131の座標をメモリに記憶することが可能となる。
【0061】
続いてCPU231は、ストック領域Bにロボットハンド131を位置付け、ワークパレット2に収納されている壁面ボードWBに吸着パッド137を対面させる処理を支援する(ステップS13)。つまり入力装置239での指示によって、ストック領域Bにロボットハンド131を移動させ、吸着パッド137が真下を向くようにロボットハンド131の姿勢を制御するわけである。
【0062】
CPU231は、このときのロボットハンド131の座標を認識しているので、これをメモリに記憶する(ステップS14)。こうして記憶された座標点のデータをM2とする。
【0063】
以上の処理によって、情報処理装置211に施工領域A及びストック領域Bの概略位置を学習させる処理が完了する。
【0064】
(2)目印座標点の取得工程
この工程では、一枚目の壁面ボードWBを貼り付ける施工領域Aをロボットハンド131に設けたカメラ134で撮像し、その施工領域Aに正しく配置されたと想定される壁面ボードWBの三カ所の特徴点Fに対応付けられる施工領域A中の目印Mの座標点を推定して記憶する。
【0065】
本実施の形態では、三カ所の特徴点Fは、壁面ボードWBの四隅のうちの三か所である(図10中の下段図参照)。この特徴点Fについては、二枚目以降の壁面ボードWBについても共通である。
【0066】
図8に示すように、本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、駆動系241を制御し、ロボットハンド131を施工領域Aに移動させる(ステップS101)。このときの施工領域Aは、ボード取付枠1中、一枚目の壁面ボードWBを貼り付けるべき左側の最下位置である。CPU231は、メモリ領域に記憶されている座標点のデータM1(図7中のステップS12参照)を利用することで、ロボットハンド131を施工領域Aに移動させることができる(以下同様)。
【0067】
これによってロボット装置101は、図10中の上段図に示すような姿勢となる。
【0068】
そこでCPU231は、施工領域Aをカメラ134で撮像し(ステップS102)、パターンマッチングを行う(ステップS103)。パターンマッチングは、施工領域Aに正しく配置されたと想定される壁面ボードWBの三カ所の特徴点Fに対応付けられる施工領域A中の目印Mについてのマッチングを意味する。情報処理装置211は、このような目印Mの周辺画像のデータを見本データとして例えばHDD237に保存しており、この見本データをRAM234やEEPROM233などのメモリ領域にコピーしている。そこで撮像画像中、こうしてメモリ領域に記録されている見本データと一致する領域をパターンマッチングさせるわけである。
【0069】
パターンマッチングに用いる目印Mに関しては、例えば施工領域Aの特徴的な形状を目印Mとして用いることができる。あるいは施工領域Aにそのような特徴的な形状がない場合には、施工領域Aに予め付しておいたマーク(図示せず)を目印Mとして用いることができる。
【0070】
CPU231は、ステップS103のパターンマッチングによって目印Mを認識したら、その座標を推定する(ステップS104)。情報処理装置211はロボットハンド131の位置をトレースしてその座標点を認識しているので、ロボットハンド131の現在位置の座標点から、目印Mの座標点を推定することが可能である。
【0071】
CPU231は、推定した目印Mの座標点をメモリに記憶する(ステップS105)。こうして記憶された座標点のデータをM11とする。
【0072】
(3)一枚目の壁面ボードの把持工程
この工程では、ロボットハンド131をストック領域Bに移動させ、最上位の壁面ボードWBを一枚目の壁面ボードWBとしてロボットハンド131に設けた把持具133で把持する。
【0073】
図8に示すように、本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、駆動系241を制御し、ロボットハンド131をストック領域Bの上方に移動させる(ステップS106)。CPU231は、メモリ領域に記憶されている座標点のデータM2(図7中のステップS14参照)を利用することで、ロボットハンド131をストック領域Bに移動させることができる(以下同様)。
【0074】
ストック領域Bでは、ワークパレット2に壁面ボードWBが収納されている。そこでCPU231は、壁面ボードWBをカメラ134で撮像し(ステップS107)、把持具133で最上位の壁面ボードWBを把持する(ステップS108)。つまり真空発生器138を作動させ、吸着パッド137で壁面ボードWBを吸着する。このときCPU231は、撮像画像中に含まれる特徴点Fから最上位の壁面ボードWBの位置を判定し、壁面ボードWBの中心位置を求めてこの中心位置を把持する。
【0075】
これによってロボット装置101は、図10中の中段図に示すような姿勢となる。
【0076】
(4)一枚目の壁面ボードの特徴点の認識工程
この工程では、把持具133に把持させた一枚目の壁面ボードWBをカメラ134で撮像し、撮像画像から特徴点Fの位置を認識する。
【0077】
本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、駆動系241を制御し、把持した最上位の壁面ボードWBをピックアップして垂直にし、再度カメラ134で撮像する(ステップS109)。そして撮像データから特徴点Fの位置を認識し、その位置データをメモリに記憶する(ステップS110)。こうして記憶された位置データをM12とする。
【0078】
このときロボット装置101は、図10中の下段図に示すような姿勢となる。
【0079】
(5)一枚目の壁面ボードの配置工程
この工程では、一枚目の壁面ボードWBを把持するロボットハンド131を施工領域Aに移動させ、記憶する目印Mの座標点に認識した特徴点Fの位置を合わせ、一枚目の壁面ボードWBを施工領域Aに配置する。
【0080】
本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、駆動系241を制御し、壁面ボードWBを把持しているロボットハンド131を施工領域Aに移動させる(ステップS111)。
【0081】
そして把持する壁面ボードWBを施工領域Aに配置するに際して、特徴点Fを施工領域A中の目印Mの位置に合わせることができるように、CPU231は、メモリに記憶している目印Mの座標点のデータM11(ステップS105参照)と特徴点Fの位置データM12(ステップS110参照)とを合致させる空間移動のための計算を実行する(ステップS112)。
【0082】
CPU231は続いて、ステップS112での計算結果によって得た施工領域A中の位置に壁面ボードWBを配置する(ステップS113)。そしてこの位置を保ったままロボットハンド131で壁面ボードWBに押圧力を加える(ステップS114)。このとき壁面ボードWBに加えられる圧力は、圧力センサ136の出力値によってモニタされている。そこでCPU231は、壁面ボードWBに加えられる圧力があらかじめ定められた規定値に達したかどうかを判定し(ステップS115)、規定値に達したと判定した場合(ステップS115のYES)、壁面ボードWBに対する押圧を停止する(ステップS116)。これによって壁面ボードWBは、ボード取付枠1に位置ずれすることなく正しく配置される。
【0083】
(6)一枚目の壁面ボードの固定工程
この工程では、施工領域Aに配置された一枚目の壁面ボードWBをロボットハンド131に設けた固定具としてのビス打ち機135で施工領域Aに固定する。
【0084】
本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、ビス打ち機135を駆動する(ステップS117)。これによってボード取付枠1に壁面ボードWBがビス止めされる。
【0085】
図11に示すように、ボード取付枠1に対する壁面ボードWBのビス止めに際しては、最初に仮止めをする。仮止めは、ロボットハンド131によってボード取付枠1の施工領域Aに壁面ボードWBを押し付けて配置した状態(ステップS113〜S116参照)で行われる。仮止め後CPU231はロボットハンド131を移動させ、ビス打ち機135に外側の列OLをビス止めさせる。そしてCPU231はさらにロボットハンド131を移動させ、ビス打ち機135に内側の列ILをビス止めさせる。
【0086】
(7)目印座標点の取得工程
この工程では、二枚目の壁面ボードWBを貼り付ける施工領域Aをロボットハンド131に設けたカメラ134で撮像し、その施工領域Aに正しく配置されたと想定される壁面ボードWBの三カ所の特徴点Fに対応付けられる施工領域A中の目印Mの座標点を推定してメモリに記憶する。
【0087】
本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、図8中のステップS101〜S105と同様の処理を実行し、既に固定されている壁面ボードWBの隣接位置に配置したときに想定される目印Mの位置を座標データM11として取得している。
【0088】
(8)二枚目の壁面ボードの把持工程
この工程では、ロボットハンド131をストック領域Bに移動させ、最上位の壁面ボードWBを二枚目以降の壁面ボードWBとして把持具133で把持する。
【0089】
図9に示すように、本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、駆動系241を制御し、ロボットハンド131をストック領域Bの上方に移動させる(ステップS201)。
【0090】
ストック領域Bでは、ワークパレット2に壁面ボードWBが収納されている。そこでCPU231は、壁面ボードWBをカメラ134で撮像し(ステップS202)、把持具133で最上位の壁面ボードWBを把持する(ステップS203)。つまり真空発生器138を作動させ、吸着パッド137で壁面ボードWBを吸着する。このときCPU231は、撮像画像を参照して、一枚目の壁面ボードWBについて判定した位置を基準として、二枚目以降となる最上位の壁面ボードWBの位置を推定し、壁面ボードWBの中心位置を求めてこの中心位置を把持する。
【0091】
これによってロボット装置101は、図10中の中段図に示すような姿勢となる。
【0092】
(9)二枚目の壁面ボードの特徴点の認識工程
この工程では、把持具133に把持させた二枚目以降の壁面ボードWBをカメラ134で撮像し、撮像画像からその特徴点Fの位置を認識する。
【0093】
本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、駆動系241を制御し、把持した最上位の壁面ボードWBをピックアップして垂直にし、再度カメラ134で撮像する(ステップS204)。そして撮像データから特徴点Fの位置を認識し、その位置データをメモリに記憶する(ステップS205)。こうして記憶された位置データをM13とする。
【0094】
このときロボット装置101は、図10中の下段図に示すような姿勢となる。
【0095】
(10)二枚目の壁面ボードの配置工程
この工程では、二枚目以降の壁面ボードWBを把持するロボットハンド131を施工領域Aに移動させ、既に固定されている壁面ボードWBの隣接位置に配置したときに想定される目印Mの座標点に認識した特徴点Fの位置を合わせ、二枚目以降の壁面ボードWBを施工領域Aに配置する。
【0096】
本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、駆動系241を制御し、壁面ボードWBを把持しているロボットハンド131を施工領域Aに移動させる(ステップS206)。
【0097】
そして把持する壁面ボードWBを施工領域Aに配置するに際して、既に固定されている壁面ボードWBの隣接位置に配置したときに想定される目印Mの位置に、把持している壁面ボードWBの特徴点Fの位置を合わせることができるようにする。そのためにCPU231は、メモリに記憶している目印Mの座標点のデータM11と特徴点Fの位置データM13(ステップS205参照)とを合致させる空間移動のための計算を実行する(ステップS207)。
【0098】
CPU231は続いて、ステップS207での計算結果によって得た施工領域A中の位置に壁面ボードWBを配置する(ステップS208)。このとき既に施工されている一枚目の壁面ボードWBとの間のずれをなくすために、ロボットハンド131で把持している二枚目の壁面ボードWBを一枚目の壁面ボードWBの方にスライド移動させても良い。そしてこの位置を保ったままロボットハンド131で壁面ボードWBに押圧力を加える(ステップS209)。このとき壁面ボードWBに加えられる圧力は、圧力センサ136の出力値によってモニタされている。そこでCPU231は、壁面ボードWBに加えられる圧力があらかじめ定められた規定値に達したかどうかを判定し(ステップS210)、規定値に達したと判定した場合(ステップS210のYES)、壁面ボードWBに対する押圧を停止する(ステップS211)。これによって壁面ボードWBは、ボード取付枠1に位置ずれすることなく正しく配置される。
【0099】
(11)二枚目の壁面ボードの固定工程
この工程では、施工領域Aに配置された二枚目以降の壁面ボードWBをビス打ち機135で施工領域Aに固定する。
【0100】
本工程を実行するために情報処理部232のCPU231は、ビス打ち機135を駆動する(ステップS212)。これによってボード取付枠1に壁面ボードWBがビス止めされる。
【0101】
図11に示すように、ボード取付枠1に対する壁面ボードWBのビス止めに際しては、最初に仮止めをする。仮止めは、ロボットハンド131によってボード取付枠1の施工領域Aに壁面ボードWBを押し付けて配置した状態(ステップS208〜S211参照)で行われる。仮止め後CPU231はロボットハンド131を移動させ、ビス打ち機135に外側の列OLをビス止めさせる。そしてCPU231はさらにロボットハンド131を移動させ、ビス打ち機135に内側の列ILをビス止めさせる。
【0102】
三枚目以降の壁面ボードWBをボード取付枠1の施工領域Aに貼り付けるには、ステップS201〜ステップS212の処理を繰り返せばよい。このとき既に施工が済んでいる施工領域Aの上段の施工領域Aに移行するには、一例として、再び左側の施工領域Aから施工をするようにしてもよく、あるいは最後に施工をした施工領域Aのすぐ上の施工領域Aから施工をするようにしてもよい。
【0103】
5.効果
本実施の形態によれば、施工領域Aに壁面ボードWBを貼り付けるに際して、人手を要する作業が大幅に減少するので、その作業負担を減少させ、作業効率を向上させることができる。
【0104】
また高所での作業が不要となるため、作業の安全性を向上させることができる。
【0105】
また施工領域Aに壁面ボードWBを位置決めする作業に人手を介さないため、施工精度を向上させることができる。
【0106】
本実施の形態によれば、壁面ボードWBの少なくとも三カ所の隅部を特徴点Fとして扱うようにしたので、特徴点Fの形状が明確で誤認識を生じにくくすることができ、また別途意図的な特徴点を設けるような手間をなくすことができる。
【0107】
また施工領域Aに設けられているボード取付枠1の形状を目印Mとして認識するようにした場合には、別途意図的な目印を設けるような手間をなくすことができる。
【0108】
また施工領域Aに付したマークを目印Mとして認識するようにした場合には、目印Mが明確で誤認識を生じにくくすることができる。
【0109】
本実施の形態によれば、ストック領域Bに積み重ねられた壁面ボードWBをカメラ134で撮像し、撮像画像中に含まれる特徴点Fから最上位の壁面ボードWBの位置を判定して把持具133で把持するようにしたので、壁面ボードWBを所望の位置で正確に把持することができる。
【0110】
また一枚目の壁面ボードWBについて判定した位置を基準として、二枚目以降となる最上位の壁面ボードWBの位置を推定して把持具133で把持するようにしたので、処理の高速化を図ることができる。
【0111】
本実施の形態によれば、施工領域Aに対する壁面ボードWBの押し当て圧力をロボットハンド131に設けた圧力センサ136によって検出し、予め決められた検出圧力となるように施工領域Aに壁面ボードWBを押し当てて配置するようにしたので、壁面ボードWBを位置ずれなく確実に配置することができる。
【0112】
6.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が許容される。
【符号の説明】
【0113】
1 ボード取付枠
101 ロボット装置
131 ロボットハンド
133 把持具
134 カメラ
135 ビス打ち機(固定具)
136 圧力センサ
A 施工領域
B ストック領域
F 特徴点
M 目印
W 壁面
WB 壁面ボード
WS 施工空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11