(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、前記カルボキシ基を有する単量体が、アクリル酸である請求項1に記載のフッ素系樹脂基材用粘着剤組成物。
前記(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、前記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して、5質量%以上15質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のフッ素系樹脂基材用粘着剤組成物。
前記(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂基材用粘着剤組成物。
フッ素系樹脂基材と、前記フッ素系樹脂基材上に設けられ、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂基材用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える粘着フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
本明細書において「粘着剤組成物」とは、(メタ)アクリル系重合体と系架橋剤とを混合した後から、架橋反応が終了する前の、液状又はペースト状の物質を意味する。
本明細書において「粘着剤層」とは、粘着剤組成物における架橋反応が終了した後の物質からなる層を意味する。粘着剤層は、例えば、固形状又はゲル状の層である。
【0012】
本明細書において「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位(即ち、(メタ)アクリル系重合体を構成する全構成単位)の50質量%以上である重合体を意味する。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0014】
本明細書では、「高湿環境下で白化し難い」ことを「耐湿性に優れる」という場合がある。
本明細書において、「フッ素系樹脂基材」とは、フッ素原子を有する樹脂を含む基材を意味する。
【0015】
[フッ素系樹脂基材用粘着剤組成物]
本発明のフッ素系樹脂基材用粘着剤組成物(以下、適宜「粘着剤組成物」と称する。)は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(以下、「特定(メタ)アクリル系重合体」ともいう。)と、イソシアネート系架橋剤と、分子量が300以上650以下であるヒンダードアミン系光安定剤(以下、「特定光安定剤」ともいう。)と、を含む。
【0016】
ヒンダードアミン系光安定剤は、耐候性に優れる粘着剤層を形成できる光安定剤として多用されている。しかし、ヒンダードアミン系光安定剤を含む粘着剤層を備える保護フィルムを、高湿環境下(例えば、降雨量の多い地域)で使用すると、粘着剤層が白化することがある。保護フィルムが備える粘着剤層が白化すると、表示板に表示された情報の視認性が低下するため、特に、道路標識では、深刻な問題となり得る。
本発明者らが鋭意検討したところ、ヒンダードアミン系光安定剤に水分が作用することで粘着剤層が白化すること、また、分子量の低いヒンダードアミン系光安定剤を使用することで粘着剤層の白化を抑制できることを見出した。しかし、発明者らが更に検討を進めたところ、分子量の低いヒンダードアミン系光安定剤を含む粘着剤層では、ヒンダードアミン系光安定剤が、粘着剤層の被着体との界面付近に局在化し、被着体に対する粘着力が低くなる傾向があることがわかった。
ところで、表示板の保護フィルムに用いられる基材には、フッ素系樹脂フィルムが多用されている。本発明者らの更なる検討によれば、分子量の低いヒンダードアミン系光安定剤を含む粘着剤層では、ヒンダードアミン系光安定剤が、粘着剤層の基材との界面付近にも局在化し、粘着剤層と基材との密着性が経時で低下する傾向があること、また、このような傾向は、フッ素系樹脂基材において顕著であることがわかった。
【0017】
これに対し、本発明の粘着剤組成物によれば、ヒンダードアミン系光安定剤を含みながらも、高湿環境下で白化し難く、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、フッ素系樹脂基材との密着性に優れる粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物の効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、分子量が300以上650以下である比較的低い分子量のヒンダードアミン系光安定剤(即ち、特定光安定剤)を含むことで、高湿環境下で白化し難い粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、特定光安定剤が粘着剤層の被着体との界面付近に局在化し得る。特定光安定剤が粘着剤層の被着体との界面付近に局在化した粘着剤層は、被着体に対する粘着力が低くなるため、被着体から剥がれやすい。本発明の粘着剤組成物は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(即ち、特定(メタ)アクリル系重合体)を含むため、被着体への濡れ性に優れる。これにより、本発明の粘着剤組成物は、比較的低い分子量のヒンダードアミン系光安定剤を含みながらも、形成される粘着剤層が被着体に対して高い粘着力を示すと考えられる。
また、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、特定光安定剤が粘着剤層のフッ素系樹脂基材との界面付近に局在化し得る。特定光安定剤が粘着剤層の基材との界面付近に局在化した粘着剤層は、基材との密着性が低く、基材との間で剥離しやすい。本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤とを含み、特定(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤との架橋に特定光安定剤が作用することで、架橋が適度になるとともに、粘着剤層の基材との界面付近への特定光安定剤の局在化が抑制される。これにより、本発明の粘着剤組成物は、比較的低い分子量のヒンダードアミン系光安定剤を含みながらも、形成される粘着剤層がフッ素系樹脂基材との密着性に優れると考えられる。
なお、フッ素系樹脂は、溶融加工温度が高いため、フッ素系樹脂基材に対して、ヒンダードアミン系光安定剤を配合することは、困難である。
【0019】
本発明の粘着剤組成物に対し、特許文献1(特開2012−17407号公報)及び特許文献2(国際公開第97/22098号)に記載のアクリル系粘着剤は、いずれも分子量が650を超えるヒンダードアミン系光安定剤を含むため、形成される粘着剤層は、高湿環境下で白化すると考えられる。
【0020】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について説明する。
【0021】
〔特定(メタ)アクリル系重合体〕
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体(即ち、特定(メタ)アクリル系重合体)は、カルボキシ基を有する。
本発明において、特定(メタ)アクリル系重合体は、特定光安定剤が粘着剤層の表面近傍(即ち、被着体との界面付近及び基材との界面付近)に局在化することに起因する、粘着剤層の被着体に対する粘着力の低下及び粘着剤層のフッ素系樹脂基材との密着性の低下の改善に寄与する
【0022】
特定(メタ)アクリル系重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、カルボキシ基を有する単量体の単独重合体であってもよく、カルボキシ基を有さない単量体の単独重合体に、置換によりカルボキシ基を導入したものであってもよく、カルボキシ基を有する単量体とカルボキシ基を有さない単量体との共重合体であってもよい。
特定(メタ)アクリル系重合体が有するカルボキシ基は、特定(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤との架橋構造の形成に寄与する。この特定(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤との架橋に特定光安定剤が作用することで、架橋が適度となり、粘着剤層とフッ素系樹脂基材との密着性が向上し得る。
【0023】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0024】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(例えば、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート)、コハク酸エステル(例えば、2−アクリロイルオキシエチル−コハク酸)等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、架橋剤との反応性の観点から、アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、及びコハク酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましく、粘着剤組成物の被着体への濡れ性が向上し、粘着剤層がより高い粘着力を示し得るとの観点から、アクリル酸がより好ましい。
【0025】
特定(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、特に制限されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位(即ち、特定(メタ)アクリル系重合体を構成する全構成単位;以下、同じ)に対して、5質量%以上15質量%以下が好ましく、6質量%以上12質量%以下がより好ましく、8質量%以上12質量%以下が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して5質量%以上であると、粘着剤層の凝集力がより向上するため、粘着剤層が被着体に対してより高い粘着力を示し得る。
特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して15質量%以下であると、粘着剤層の凝集力が高い状態で、被着体に対して十分な濡れ性を示すため、粘着剤層の被着体への粘着力の低下をより良好に抑制し得る。
【0027】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0028】
本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、無置換のアクリル酸アルキルエステル単量体がより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
また、アルキル基の炭素数は、形成される粘着剤層の、被着体に対する粘着力及び基材との密着性の観点から、1〜18の範囲が好ましく、1〜12の範囲がより好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、粘着剤層の粘着力を調整しやすいとの観点から、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)及びn−ブチルアクリレート(n−BA)から選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、粘着剤組成物の被着体(特に、アクリル樹脂を含む被着体)への濡れ性を向上し得るとの観点から、メチルアクリレート(MA)及びエチルアクリレート(EA)から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0032】
特定(メタ)アクリル系重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、粘着剤層の粘着力を調整しやすいとの観点から、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率(割合)の上限は、特に制限されず、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して、90質量%以下が好ましい。
【0033】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、本発明の効果が発揮される範囲内において、既述の構成単位、即ち、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0034】
その他の構成単位を構成する単量体の種類は、特に制限されない。
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、水酸基を有する単量体が挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
また、その他の構成単位を構成する単量体としては、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される環状基を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステル、並びに、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0036】
−特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量−
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、30万以上200万以下が好ましく、40万以上150万以下がより好ましく、40万以上120万以下が更に好ましく、50万以上120万以下が特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が30万以上であると、凝集力がより向上し、より高い粘着力を発現し得る。
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が200万以下であると、被着体への濡れ性がより向上し、より高い粘着力を発現し得る。
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0037】
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0038】
〜条件〜
測定装置:高速GPC(型番:HLC−8220 GPC、東ソー(株))
検出器:示差屈折率計(RI)(HLC−8220に組込、東ソー(株))
カラム:TSK−GEL GMHXL(東ソー(株))を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
注入量:100μL
流量:0.6mL/分
【0039】
−特定(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度−
特定(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、例えば、−50℃以上−10℃以下が好ましく、−45℃以上−15℃以下がより好ましく、−40℃以上−20℃以下が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が−50℃以上であると、凝集力がより向上し、より高い粘着力を発現し得る。
特定(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であると、被着体への濡れ性がより向上し、より高い粘着力を発現し得る。
【0040】
特定(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k−1)/Tg(k−1)+mk/Tgk (式1)
【0041】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k−1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系重合体を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度(Tg)をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k−1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系重合体を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k−1)+mk=1である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算でき、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算できる。
【0042】
「単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度(Tg)をいう。
単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(DSC)(型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株))を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度(Tg)としたものである。
【0043】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度(Tg)」は、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が−76℃、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が−10℃、n−ブチルアクリレート(n−BA)が−57℃、n−ブチルメタクリレートが21℃、t−ブチルアクリレート(t−BA)が41℃、t−ブチルメタクリレートが107℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBMX)が155℃、エチルアクリレート(EA)が−27℃、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が−76℃、メタクリル酸が185℃、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が−39℃、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が−15℃、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、アクリル酸(AA)が163℃、イソオクチルアクリレート(i−OA)が−75℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、メタクリル酸トリフルオロエチルが72℃、アクリル酸トリフルオロエチルが−5℃、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが−30℃、2−アクリロイルオキシエチル−コハク酸が−40℃である。
【0044】
特定(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を用いることで、適宜調整できる。
【0045】
−特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法−
特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法は、特に制限されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合に代表される公知の重合方法で、単量体を重合して製造できる。
これらの中でも、重合方法としては、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体の製造後に粘着剤組成物を調製するに際し、処理が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合が好ましい。
【0046】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0047】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時には、これらの有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
重合反応時に用いられる有機溶媒のより具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪系又は脂環族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル類、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、及びt−ブチルアルコールに代表されるアルコール類が挙げられる。
【0049】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、エステル類、ケトン類等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0050】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ−i−プロピルペルオキシジカルボナート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン等が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ABVN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等が挙げられる。
【0051】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾビス系の重合開始剤の使用が好ましい。
【0052】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0053】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、α−メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9−フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物類、p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、及びp−ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物類、ベンゾキノン及び2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体類、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3−クロロ−1−プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素類、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド類、炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン類、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類、炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類、並びに、ビネン及びターピノレンに代表されるテルペン類が挙げられる。
【0054】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0055】
重合温度は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0056】
〔イソシアネート系架橋剤〕
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を含む。
イソシアネート系架橋剤は、特定光安定剤が粘着剤層の表面近傍(即ち、被着体との界面付近及び基材との界面付近)に局在化することに起因する、粘着剤層の被着体に対する粘着力の低下及び粘着剤層のフッ素系樹脂基材との密着性の低下の改善に寄与する。
【0057】
イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネート(TDI)に代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート、及び上記の芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビウレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体などのイソシアネート化合物が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、イソシアネート系架橋剤としては、例えば、粘着剤層を備える粘着フィルムを屋外で使用した場合、イソシアネート系架橋剤に起因する粘着剤層の着色(所謂、黄変)が生じ難いとの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体又は5量体であるイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等の各種ヘキサメチレンジイソシアネートに由来するヘキサメチレンジイソシアネート化合物が好ましい。
【0059】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、東ソー(株)の「コロネート(登録商標)HX」、「コロネート(登録商標)HL−S」、「コロネート(登録商標)L」、「コロネート(登録商標)L−45E」、「コロネート(登録商標)2031」、「コロネート(登録商標)2030」、「コロネート(登録商標)2234」、「コロネート(登録商標)2785」、「アクアネート(登録商標)200」、及び「アクアネート(登録商標)210」、住化コベストロウレタン(株)の「スミジュール(登録商標)N3300」、「デスモジュール(登録商標)N3400」、及び「スミジュール(登録商標)N−75」、旭化成(株)の「デュラネート(登録商標)E−405−80T」、「デュラネート(登録商標)24A−100」、及び「デュラネート(登録商標)TSE−100」、並びに、三井武田ケミカル(株)の「タケネート(登録商標)D−110N」、「タケネート(登録商標)D−120N」、「タケネート(登録商標)M−631N」及び「MT−オレスター(登録商標)NP1200」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0060】
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0061】
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、粘着剤層の被着体に対する粘着力がより向上し得るとの観点から、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.1質量部〜0.6質量部が好ましく、0.1質量部〜0.4質量部が更に好ましい。
【0062】
〔特定光安定剤〕
本発明の粘着剤組成物は、分子量が300以上650以下であるヒンダードアミン系光安定剤(即ち、特定光安定剤)を含む。
ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が300以上650以下であるため、本発明の粘着剤組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含みながらも、高湿環境下で白化し難い粘着剤層を形成できる。
また、本発明の粘着剤組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含むため、耐候性に優れる粘着剤層を形成できる。
【0063】
ヒンダードアミン系光安定剤の分子量は、300以上650以下であり、350以上600以下が好ましく、400以上600以下がより好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が300以上であると、入手が容易である。
ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が650以下であると、高湿環境下で白化し難い粘着剤層を形成できる。
【0064】
特定光安定剤としては、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔商品名:Tinuvin(登録商標) 765、BASF社〕、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)〔商品名:Tinuvin(登録商標) 770DF、BASF社〕等が挙げられる。
【0065】
本発明の粘着剤組成物は、特定光安定剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0066】
本発明の粘着剤組成物における特定光安定剤の含有量は、特に制限されず、例えば、粘着力の観点から、適宜設定される。
本発明の粘着剤組成物における特定光安定剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましく、1質量部〜4質量部が更に好ましい。
【0067】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の粘着剤組成物は、例えば、耐候性向上の観点から、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤は、特に制限されない。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの中でも、紫外線吸収剤としては、粘着剤層の着色及び耐候性の観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0068】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール〔商品名:Tinuvin(登録商標) 328、BASF社〕、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール〔商品名:Tinuvin(登録商標) 329、BASF社〕、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール〔商品名:Tinuvin(登録商標) 234、BASF社〕、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール〔商品名:Tinuvin(登録商標) PS、BASF社〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール〔商品名:Tinuvin(登録商標) 900、BASF社〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〔商品名:Tinuvin(登録商標) 928、BASF社〕、2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール〔商品名:Tinuvin(登録商標) 326、BASF社〕、2−2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)フェノール〕〔商品名:Tinuvin(登録商標) 360、BASF社〕等が挙げられる。
【0069】
本発明の粘着剤組成物は、紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0070】
本発明の粘着剤組成物における紫外線吸収剤の含有量としては、特に制限はない。
本発明の粘着剤組成物が紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、1質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0071】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、例えば、塗布性向上の観点から、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0072】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0073】
本発明の粘着剤組成物における有機溶媒の含有量としては、特に制限はなく、適宜設定できる。
【0074】
〔他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、特定(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0075】
〔架橋後のゲル分率〕
本発明の粘着剤組成物は、架橋後のゲル分率が5質量%〜90質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜90質量%の範囲であることがより好ましく、20質量%〜80質量%の範囲であることが更に好ましい。
架橋後のゲル分率が上記範囲内であると、粘着剤層への水分浸透がより抑制されるため、粘着剤層がより白化し難い。
【0076】
本明細書において、「粘着剤組成物の架橋後のゲル分率」は、下記(1)〜(17)の手順に従い、測定される値である。
(1)粘着剤組成物を100μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムセパレーター(剥離紙)上に塗布し、室温(23℃)で30分間風乾した後、雰囲気温度100℃で5分間本乾燥させ、粘着剤層を形成し、セパレーター付き粘着剤層を得る。
(2)得られたセパレーター付き粘着剤層を雰囲気温度23℃、65%RHの条件にて10日間養生する。その後、セパレーター付き粘着剤層を75mm×75mmの大きさに切り出す。切り出されたサンプルの粘着剤層の重さは、概ね0.2g程度となる。
【0077】
(3)250メッシュ(線径:0.03mm、目開き:72μm、ステンレス製)の金属金網を用意し、金属金網を100mm×100mmの大きさに切り出す。
(4)上記金属金網は酢酸エチルで脱脂した後、乾燥させる。脱脂及び乾燥後の金属金網は、デシケーター内に保管する。また、金属金網の端部の解れは、測定誤差の原因となるため、予め取り除く。
(5)金属金網の質量を正確に測定する。この質量をAとする。
【0078】
(6)金属金網の中央に、75mm×75mmの大きさに切り出した(2)のセパレーター付き粘着剤層を貼り付けた後、粘着剤層からPETフィルムセパレーターを剥がし取る。なお、粘着剤層の金属金網への貼付は、後述の(7)〜(9)の工程により金属金網を折り畳んだ後の面内において粘着剤層が配置される位置となるように行う。
(7)金属金網は、フィルム状の粘着剤層を貼り付けた面を内側にして、奥側の辺から手前側に半分に折り畳む。
(8)半分に折った金属金網(手前側に端部が2辺ある)の手前側3分の1を奥側に折りたたみ、さらに奥側3分の1を手前側に折り畳む(縦方向を100mmの6分の1に折り畳み、横方向は折り畳んでいない状態)。
(9)上記金網を左から3分の1の部位で右側に折り畳み、同様にして右から3分の1の部位で左側に折り畳む。これを試料1とする。試料1では、元の金属金網の大きさから、縦方向が6分の1に折り畳まれ、横方向が3分の1に折り畳まれている。
(10)上記の試料1の質量を正確に測定する。この質量をBとする。
【0079】
(11)試料1の折り目が開かないようにホッチキスで留める。これを試料2とする。試料2の質量を測定する。この質量をCとする。
(12)粘着剤組成物の1種類につき、ゲル分率測定用の試料2を2個作製する。
【0080】
(13)試料2を、酢酸エチル80gを入れたガラス瓶に入れ、蓋をする。
(14)試料2を入れたガラス瓶を雰囲気温度23℃、65%RHの条件にて3日間放置する。
(15)試料2をガラス瓶から取り出し、酢酸エチルで簡単に洗浄する。
(16)試料2を120℃で24時間乾燥した後、質量を正確に測定する。これをDとする。
【0081】
(17)下式によりゲル分率を計算する。
ゲル分率[質量%] = (D−(A+(C−B)))/(B−A)×100
【0082】
[粘着フィルム]
本発明の粘着フィルムは、フッ素系樹脂基材と、上記フッ素系樹脂基材上に設けられ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。すなわち、本発明の粘着フィルムでは、フッ素系樹脂基材と、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、が積層されている。
一般に、ヒンダードアミン系光安定剤を含む粘着剤層は、耐候性に優れる。しかし、ヒンダードアミン系光安定剤を含む粘着剤層を備える粘着フィルムを、高湿環境下で使用すると、ヒンダードアミン系光安定剤に水分が作用し、粘着剤層が白化することがある。これに対し、本発明の粘着フィルムが備える粘着剤層は、比較的低い分子量のヒンダードアミン系光安定剤を含むことで、粘着剤層の白化が抑制される。そのため、本発明の粘着フィルムは、高湿環境下で使用しても白化し難い。
また、分子量の低いヒンダードアミン系光安定剤を含む粘着剤層では、ヒンダードアミン系光安定剤が、粘着剤層の被着体との界面付近に局在化し、被着体に対する粘着力が低くなる傾向がある。これに対し、本発明の粘着フィルムは、特定(メタ)アクリル系重合体を含み、被着体に対する濡れ性に優れる粘着剤組成物により形成される粘着剤層を備えるため、被着体に対して高い粘着力を示す。
さらに、分子量の低いヒンダードアミン系光安定剤を含む粘着剤層では、ヒンダードアミン系光安定剤が粘着剤層の基材との界面付近に局在化し、フッ素系樹脂基材との密着性が経時で低下する傾向がある。これに対し、本発明の粘着フィルムが備える粘着剤層では、特定(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤との架橋に特定光安定剤が作用することで、架橋が適度になるとともに、粘着剤層の基材との界面付近への特定光安定剤の局在化が抑制される。そのため、本発明の粘着フィルムは、フッ素系樹脂基材との密着性に優れる。
【0083】
本発明の粘着フィルムは、反射シート(「再帰反射シート」又は「再帰反射性シート」とも称する。)の表面保護フィルムとして好適に用いられる。
標識(例えば、道路標識及び公共標識)、広告(例えば、屋外広告及び屋内広告)等の表示板の表面には、反射シートが貼着されていることが多い。反射シートは、入射した光が再び入射方向へ帰る反射現象(所謂、再帰反射)により、光源方向からの標識、広告等の視認性を高めることを目的として使用される。また、一般に、反射シートの最表面は、アクリル樹脂を含む層である。
本発明の粘着フィルムは、被着体(特に、アクリル樹脂を含む被着体)に対する粘着力が高く、かつ、高湿環境下で白化し難い粘着剤層を備えるため、太陽光、降雪、降雨等に曝される屋外に設置される標識、広告等に貼着される反射シートの表面保護フィルムとして使用しても、使用中に剥離したり、標識及び広告の視認性が低下したりする等の不具合が生じ難い。
ところで、反射シートの表面保護フィルムの基材には、フッ素系樹脂フィルムが用いられることが多い。本発明の粘着フィルムは、フッ素系樹脂基材との密着性に優れる粘着剤層を備えるため、反射シートの表面保護フィルムとして使用しても、使用中に基材と粘着剤層とが剥離する不具合が生じ難い。
【0084】
フッ素系樹脂基材は、特に制限されない。
フッ素系樹脂基材としては、例えば、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン/ポリビニリデンフルオロエチレン共重合体(PVdF)、フッ化エチレンプロピレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフロライド共重合体(THV)等が挙げられる。
【0085】
フッ素系樹脂基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、充填材、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、フッ素系樹脂基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0086】
フッ素系樹脂基材の厚さは、一般的には500μm以下であり、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
フッ素系樹脂基材の厚さの下限は、例えば、粘着フィルムの強度の観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0087】
粘着剤層の形成方法は、特に制限されず、通常用いられる方法を採用できる。
フッ素系樹脂基材上に粘着剤層を形成する方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、剥離フィルム上に塗布し、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥して溶媒を除去した後、フッ素系樹脂基材と貼り合わせ、養生を行うことにより、フッ素系樹脂基材上に粘着剤層を形成する。
剥離フィルムとしては、粘着剤層の表面からの剥離を容易に行えるものであれば、特に制限されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による易剥離処理が施された紙、樹脂フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着フィルムを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0088】
フッ素系樹脂基材上に粘着剤層を形成する別の方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、剥離処理剤による易剥離処理が施された紙、樹脂フィルム等の剥離フィルム上に塗布し、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥して溶媒を除去する。次いで、剥離フィルムの粘着剤層が形成された側の面をフッ素系樹脂基材に接触させて加圧し、粘着剤層をフッ素系樹脂基材に転写することにより、フッ素系樹脂基材上に粘着剤層を形成する。次いで、養生を行う。
【0089】
フッ素系樹脂基材上又は剥離フィルム上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
フッ素系樹脂基材上又は剥離フィルム上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0090】
フッ素系樹脂基材上又は剥離フィルム上に形成された塗布膜を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限されず、形成する粘着剤層の厚さ、粘着剤組成物中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。
【0091】
養生の条件は、特に制限されず、例えば、23℃、50%RHの環境下で1日間〜10日間行う。
養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【0092】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、粘着フィルムの用途、要求される性能等に応じて、適宜設定できる。
例えば、粘着フィルムを反射シートの表面保護フィルムとして用いる場合には、粘着剤層の厚さは、10μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下が更に好ましい。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
[(メタ)アクリル系重合体の製造]
〔製造例1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、エチルアクリレート(EA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)24質量部と、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)10質量部と、n−ブチルアクリレート(n−BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)66質量部と、酢酸エチル(EAc)150質量部と、を仕込んだ後、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;アゾ化合物)を0.05質量部添加した。AIBNの添加後、反応器の内容物を撹拌しながら加熱し、還流が発生するまで上昇させ、温度を20分間保った。以下、還流が発生した温度を「還流温度」という。
次いで、この反応器内に、更に、EA(75.6質量部)、AA(31質量部)、n−BA(206.3質量部)、及びAIBN(0.5質量部)を、EAc(100質量部)に溶解させた溶液Aを90分間かけて逐次滴下した。溶液Aの滴下終了後、更に、反応器内の内容物の温度を還流温度で60分間保った。次いで、AIBN(1.0質量部)をEAc(100質量部)に溶解させた溶液Bを60分間かけて逐次滴下した後、更に、反応器内の内容物の温度を還流温度で120分間保ち、反応を完結させた。反応完結後、固形分が35質量%となるように、EAcを用いて希釈後、冷却し、(メタ)アクリル系重合体の溶液を得た。
なお、(メタ)アクリル系重合体の溶液における「固形分」とは、(メタ)アクリル系重合体の溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する(以下、同じ)。
【0095】
(メタ)アクリル系重合体の単量体組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万(表1中では、「×10
4」と表記))、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表1に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
ガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
【0096】
〔製造例2〜製造例13、及び製造例16〜製造例18〕
製造例2〜製造例13、及び製造例16〜製造例18では、製造例1における単量体組成を表1に示すように変更するとともに、溶媒の量、重合開始剤の量等を調整することで、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を表1に示す値に調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により、固形分が35質量%の(メタ)アクリル系重合体の溶液を調製した。
(メタ)アクリル系重合体の単量体組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万(表1中では、「×10
4」と表記))、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表1に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
ガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
【0097】
〔製造例14及び製造例15〕
製造例14及び製造例15では、製造例1における溶媒の量、重合開始剤の量等を調整することで、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を表1に示す値に調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により、固形分が35質量%の(メタ)アクリル系重合体の溶液を調製した。
(メタ)アクリル系重合体の単量体組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万(表1中では、「×10
4」と表記))、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表1に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
ガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「AA」:アクリル酸
「M−5300」:アロニックス(登録商標) M−5300〔商品名;ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、東亞合成(株)〕
「HOA−MS」:HOA−MS〔商品名;2−アクリロイルオキシエチル−コハク酸、コハク酸エステル、共栄社化学(株)〕
「2HEA]:2−ヒドロキシエチルアクリレート
「2EHA]:2−エチルヘキシルアクリレート
「n−BA」:n−ブチルアクリレート
「EA」:エチルアクリレート
「MA」:メチルアクリレート
表1中、「−」は、該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0100】
〔実施例1〕
−粘着剤組成物の調製−
製造例1で調製した(メタ)アクリル系重合体〔特定(メタ)アクリル系重合体〕の溶液100質量部(固形分換算値)と、架橋剤であるイソシアネート化合物〔商品名:コロネート(登録商標) HX、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート体、固形分:100質量%、東ソー(株)〕0.30質量部と、光安定剤〔商品名:Tinuvin(登録商標) 765、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ヒンダードアミン系光安定剤、分子量:509、BASF社;特定光安定剤〕2.0質量部と、紫外線吸収剤〔商品名:Tinuvin(登録商標) 329、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社〕3.0質量部と、を混合し、十分に撹拌して、粘着剤組成物を得た。
なお、粘着剤組成物の架橋後のゲル分率を既述の方法により測定したところ、30質量%であった。
【0101】
−粘着フィルムの作製−
上記にて得られた粘着剤組成物を用い、以下のようにして、粘着フィルムを作製した。
シリコーン系剥離処理剤により易剥離処理された剥離フィルム(商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E、藤森工業(株))の剥離処理面上に、グラビアコーターを用いて、乾燥後の厚み(即ち、粘着剤層の厚さ;以下、「膜厚」という。)が40μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。次いで、剥離フィルム上に形成された塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃、1分間の条件で乾燥させた。次いで、乾燥後の塗布膜の露出した面と、基材(商品名:アフレックス(登録商標) 40NS、厚さ:40μm、フッ素系樹脂フィルム、旭硝子(株))と、を加圧ニップロールで圧着して貼り合わせた。その後、23℃、50%RHの環境下にて168時間養生を行い、粘着フィルム(基材/粘着剤層/剥離フィルム)を作製した。
【0102】
〔実施例2及び実施例3〕
実施例2及び実施例3では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、架橋剤の種類及び配合量を表2に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0103】
〔実施例4〜実施例15、実施例22、実施例23、実施例27、及び実施例28〕
実施例4〜実施例15、実施例22、実施例23、実施例27、及び実施例28では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、(メタ)アクリル系重合体の種類を表2に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0104】
〔実施例16〜実施例19〕
実施例16〜実施例19では、実施例1の「−粘着フィルムの作製−」において、基材上に、表2に示す膜厚となるように粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0105】
〔実施例20及び実施例21〕
実施例20及び実施例21では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、架橋剤の配合量を表2に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0106】
〔実施例24〕
実施例24では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、紫外線吸収剤の種類を表2に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0107】
〔実施例25〕
実施例25では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、光安定剤の種類を表2に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0108】
〔実施例26〕
実施例26では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、紫外線吸収剤を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0109】
〔比較例1〕
比較例1では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、架橋剤の種類及び配合量を表3に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0110】
〔比較例2及び比較例3〕
比較例2及び比較例3では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、(メタ)アクリル系重合体の種類、並びに、架橋剤の種類及び配合量を表3に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0111】
〔比較例4〕
比較例4では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、(メタ)アクリル系重合体の種類、光安定剤の種類、及び紫外線吸収剤の種類を表3に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
なお、粘着剤組成物の架橋後のゲル分率を既述の方法により測定したところ、44質量%であった。
【0112】
〔比較例5〕
比較例5では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、(メタ)アクリル系重合体の種類及び光安定剤の種類を表3に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0113】
〔比較例6〜比較例9〕
比較例6〜比較例9では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、光安定剤の種類を表3に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0114】
〔比較例10〕
比較例10では、実施例1の「−粘着剤組成物の調製−」において、(メタ)アクリル系重合体の種類を表3に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着フィルムを作製した。
【0115】
[評価]
1.耐湿性
粘着剤層の耐湿性を評価するため、温水試験を行った。
上記にて作製した粘着フィルムを40mm×50mmの大きさにカッター刃を用いて切断し、粘着フィルム片を1枚準備した。
雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、準備した粘着フィルム片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、再帰反射シート〔商品名:ニッカライト ULS、カプセルレンズ型高輝度再帰反射シート、日本カーバイド工業(株)〕の表面(アクリル樹脂)に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを2往復させて圧着し、評価用サンプル〔再帰反射シート/粘着フィルム(粘着剤層/基材)片〕を作製した。
まず、作製した評価用サンプルについて、分光色差計〔型式:SE 2000、日本電色工業(株)〕を用い、Y値(試験前)を測定した。次いで、Y値(試験前)を測定した評価用サンプルを、50℃の温水中に投入し、温度を保持した状態で7日間放置した後、取り出した。そして、取り出し直後の評価用サンプルについて、分光色差計〔型式:SE 2000、日本電色工業(株)〕を用い、Y値(試験後)を測定した。
評価用サンプルのY値(試験前)とY値(試験後)の差(ΔY)を算出し、下記の評価基準に従って、粘着剤層の耐湿性を評価した。
評価結果が「A」であれば、耐湿性に優れる(即ち、高湿環境下で白化し難い)と判断した。
【0116】
−評価基準−
A:ΔYが5未満である。
B:ΔYが5以上である。
【0117】
2.密着性
上記にて作製した粘着フィルムを25mm×150mmの大きさにカッター刃を用いて切断し、粘着フィルム片を1枚準備した。
雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、準備した粘着フィルム片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、再帰反射シート〔商品名:ニッカライト ULS、カプセルレンズ型高輝度再帰反射シート、日本カーバイド工業(株)〕の表面(アクリル樹脂)に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを2往復させて圧着し、評価用サンプル〔再帰反射シート/粘着フィルム(粘着剤層/基材)片〕を作製した。
次いで、作製した評価サンプルを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下にて24時間放置した後、(株)エー・アンド・デイのシングルコラム型材料試験機(型番:STA−1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で、再帰反射シートから粘着フィルム(粘着剤層/基材)片を長辺(150mm)方向に180°剥離した。剥離した粘着フィルム片を再度、2kgのローラーを2往復させて再帰反射シートの貼付していた部分に圧着し、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下にて5分間放置した後、(株)エー・アンド・デイのシングルコラム型材料試験機(型番:STA−1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で、再帰反射シートから粘着フィルム(粘着剤層/基材)片を長辺(150mm)方向に180°剥離した。剥離後、再帰反射シート表面を目視にて観察し、下記の評価基準に従って、粘着剤層の基材との密着性を評価した。
評価結果が「A」であれば、粘着フィルム片が備える粘着剤層が基材との密着性に優れると判断した。
【0118】
−評価基準−
A:糊残り及び曇りのいずれも確認されない。
B:貼合面の一部分に糊残りが確認される、又は薄い曇りが貼合面のエッジ部にのみ確認される。
C:貼合面の全面に糊残りが確認される。
【0119】
3.粘着力
粘着剤層の被着体に対する粘着力を評価するため、定荷重剥離試験の1つである90°剥離強度試験を行った。
上記にて作製した粘着フィルムを25mm×100mmの大きさにカッター刃を用いて切断し、粘着フィルム片を1枚準備した。
準備した粘着フィルム片の剥離フィルムを剥離し、粘着剤層の面を25mm×50mm露出させた。次いで、露出した粘着剤層の表面を、再帰反射シート〔商品名:ニッカライト ULS、カプセルレンズ型高輝度再帰反射シート、日本カーバイド工業(株)〕の表面(アクリル樹脂)に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを2往復させて圧着することにより、再帰反射シートの表面に粘着フィルム片の粘着剤層の面が貼着した評価サンプル〔再帰反射シート/粘着フィルム(粘着剤層/基材)片、貼着面積:25mm×50mm〕を作製した。なお、粘着剤層の面の露出から圧着までの操作は、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下にて行った。
次いで、作製した評価サンプルを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下にて24時間放置した後、再帰反射シートに貼着した粘着フィルム片の長辺(100mm)方向の一端側であって、再帰反射シートに貼着していない側の端部に、90°方向に800gの荷重を加えた状態で10分間放置した。そして、放置後、粘着フィルム片の長辺(100mm)方向における剥がれ距離(単位:mm)を測定した。
粘着フィルム片の剥がれ距離が短いほど、粘着フィルム片が備える粘着剤層の被着体に対する粘着力が高いことを意味する。
【0120】
粘着剤組成物の組成、膜厚、測定結果、及び評価結果を表2及び表3に示す。
表2中、「−」は、該当する成分を使用していないことを意味する。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
表2及び表3に記載の各成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<架橋剤>
−イソシアネート系架橋剤−
「コロネート HX」:コロネート(登録商標) HX〔商品名;ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート体、固形分:100質量%、東ソー(株)〕
「コロネート L」:コロネート(登録商標) L〔商品名;トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体、固形分:75質量%、東ソー(株)〕
「タケネート D110N」:タケネート(登録商標)D−110N〔商品名;キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体、固形分:75質量%、三井化学(株)〕
−エポキシ系架橋剤−
「TETRAD−C」:TETRAD(登録商標)−C〔商品名;1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、固形分:100質量%、三菱ガス化学(株)〕
−金属キレート系架橋剤−
「アルミキレートA」:アルミキレートA〔商品名;アルミニウムトリスアセチルアセトネート、川研ファインケミカル(株)〕
<光安定剤>
「Tinuvin 765」:Tinuvin(登録商標) 765〔商品名;セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、分子量:509、ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社〕
「Tinuvin 770DF」:Tinuvin(登録商標) 770DF〔商品名;セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、分子量:481、ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社〕
「Tinuvin 622LD」:Tinuvin(登録商標) 622LD〔商品名;コハク酸ジメチル・1−(2ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン重縮合物、分子量:3550、ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社〕
「LA−52」:アデカスタブ(登録商標) LA−52〔商品名;ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)、分子量:847、ヒンダードアミン系光安定剤、(株)ADEKA〕
「Tinuvin 123」:Tinuvin(登録商標) 123〔商品名;デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル]、分子量:737、ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社〕
「Tinuvin 144」:Tinuvin(登録商標) 144〔商品名;2−[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−2−ブチルプロパン二酸ビス[1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル]、分子量:685、ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社〕
<紫外線吸収剤>
「Tinuvin 328」:Tinuvin(登録商標) 328〔商品名;2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社〕
「Tinuvin 329」:Tinuvin(登録商標) 329〔商品名;2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社〕
【0124】
表2に示すように、実施例1〜実施例28の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヒンダードアミン系光安定剤を含みながらも、高湿環境下で白化し難く、耐湿性に優れることがわかった。また、実施例1〜実施例28の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、フッ素系樹脂基材との密着性に優れることがわかった。さらに、実施例1〜実施例28の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して高い粘着力を示すことがわかった。
【0125】
一方、表3に示すように、イソシアネート系架橋剤の代わりに、エポキシ系架橋剤を含む比較例1及び比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、フッ素系樹脂基材との密着性に劣り、かつ、被着体に対する粘着力が低いことがわかった。
イソシアネート系架橋剤の代わりに、金属キレート系架橋剤を含む比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、フッ素系樹脂基材との密着性に劣り、かつ、被着体に対する粘着力が低いことがわかった。
分子量が300以上650以下であるヒンダードアミン系光安定剤(特定光安定剤)の代わりに、分子量が650を超えるヒンダードアミン系光安定剤を含む比較例4〜比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高湿環境下で白化し、耐湿性に劣ることがわかった。
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を含まない比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対する粘着力が顕著に低いことがわかった。