特許第6905565号(P6905565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

特許6905565ポリイソシアネート混合物、塗料組成物及び塗膜
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905565
(24)【登録日】2021年6月29日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート混合物、塗料組成物及び塗膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/72 20060101AFI20210708BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20210708BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08G18/72 020
   C08G18/79 020
   C09D175/04
【請求項の数】4
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2019-196689(P2019-196689)
(22)【出願日】2019年10月29日
(62)【分割の表示】特願2018-545080(P2018-545080)の分割
【原出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2020-76085(P2020-76085A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2019年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-203085(P2016-203085)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-203086(P2016-203086)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-203109(P2016-203109)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-203110(P2016-203110)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】山内 理計
(72)【発明者】
【氏名】福地 崇史
(72)【発明者】
【氏名】竹野 聡志
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−179523(JP,A)
【文献】 国際公開第96/017881(WO,A1)
【文献】 特開2019−014777(JP,A)
【文献】 国際公開第02/042351(WO,A1)
【文献】 特開2002−080779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるトリイソシアネート化合物(A)と、脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート(B3)と、を含み、
前記ポリイソシアネート(B3)における、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造の各モル%をa、b、cとした場合のa/(a+b+c)が0.10以上であ
前記トリイソシアネート(A)と前記脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート(B3)の混合比率(A)/(B3)が、質量比で30/70以上70/30以下である、ポリイソシアネート混合物。
【化1】
(一般式(I)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記トリイソシアネート(A)が、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート又はリジントリイソシアネートである、請求項1に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリイソシアネート混合物と、活性水素を分子内に2個以上有する化合物と、を含む、塗料組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の塗料組成物を硬化した、塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート混合物、塗料組成物及び塗膜に関する。
本願は、2016年10月14日に日本に出願された、特願2016−203085号、特願2016−203110号、特願2016−203086号及び特願2016−203109に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートを硬化剤とするウレタン塗料は、耐久性及び耐薬品性に優れる塗膜を形成し、その需要は年々増えている。硬化剤であるポリイソシアネートが有するイソシアネート基は、主剤として多用されるポリオールの水酸基と常温で反応するため、それらを含む塗料は各種被塗物に塗装され、適用範囲も広い。このような塗料は、近年、省エネルギー及び生産性向上の観点から、塗膜形成までの時間の短縮、及び、低温での硬化性の向上が切望されている。
上記を満足させるために、イソシアネート平均官能基数(イソシアネート基平均数)の高いポリイソシアネートが提案されている。(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、従来、ポリウレタン塗料から形成されるウレタン塗膜は、常温で架橋反応が進行するとともに、非常に優れた可撓性、耐薬品性、耐汚染性を有しているため、塗料、フォーム等に幅広く使用されている。
その中でも、芳香族ジイソシアネートあるいは、芳香族由来のポリイソシアネートは、ポリイソシアネート骨格中に、芳香族環を有する。このため、ガラス転移温度(Tg)が高く、かつ、反応性に優れるに優れるため乾燥性に優れることが知られている。
また、脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネートは、それぞれ、ポリイソシアネート骨格中に、環状構造を有するため、ガラス転移温度(Tg)が高く、乾燥性に優れることが知られている。また、脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネートは、同様に環状構造を有する芳香族ジイソシアネート由来のポリイソシアネートと異なり、屋外で使用した場合にも、黄変しにくいため、屋外向けに多く使用されている。
しかし、上記ポリイソシアネートは、環状構造を有することから、Tgが高く、得られた塗膜は脆い傾向にあり、耐衝撃性が不足する場合があった。耐衝撃性を改善する手段として、トリイソシアネート化合物と芳香族ジイソシアネートから得られたポリイソシアネートを混合した技術(特許文献3〜4)が開示されている。
【0004】
また、従来、ポリウレタン塗料から形成されるウレタン塗膜は、非常に優れた可撓性、耐薬品性、耐汚染性を有している上に、特に1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下HDIとも言う)に代表される脂肪族ジイソシアネートから得られる無黄変ポリイソシアネートを硬化剤として用いた塗膜は更に耐候性に優れ、その需要は増加している。
【0005】
近年、地球環境保護の高まりから、硬化剤として使用されるポリイソシアネートの低粘度化に向けた技術開発が盛んに行われている。ポリイソシアネートを低粘度化することにより、塗料組成物に使用される有機溶剤の使用量を低減できるからである(特許文献5〜6)。
しかし、これらの技術では、イソシアネート基官能基数が低下することにより、乾燥性が低下する場合があった。
上記課題解決の為、イソシアネート基官能基数を維持し、低粘度化する技術が開示されている。(特許文献7)しかし、さらなる低粘度化が望まれる場合があった。
これらの課題を解決するものとして、低粘度のトリイソシアネート化合物単独(特許文献8〜10)、あるいは、これらのトリイソシアネート化合物と脂肪族ジイソシアネートから得られたポリイソシアネートを混合した技術(特許文献3、4、11〜12)が開示されており、これらを使用した場合、低粘度化と乾燥性は満足するものは得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−293878号公報
【特許文献2】特開平10−87782号公報
【特許文献3】特開昭57−198760号公報
【特許文献4】特開昭57−198761号公報
【特許文献5】特開平05−222007号公報
【特許文献6】特許第3055197号公報
【特許文献7】特許第5178200号公報
【特許文献8】特公昭63−15264号公報
【特許文献9】特開昭53−135931号公報
【特許文献10】特開昭60−44561号公報
【特許文献11】特開平9−216930号公報
【特許文献12】特許第4036750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたようなポリイソシアネートは、硬化性は良好であるものの、主剤であるポリオールなどのイソシアネート基と反応性を有する活性水素を分子内に2個以上有する化合物(以下、「活性水素化合物」ともいう。)との相溶性、得られた塗膜の耐溶剤性等の点でまだ改善の余地がある。また、ウレタン塗料の塗装において、塗膜表面の外観不良により、同一塗料を再度塗装し直す場合がある。その場合、初期塗膜と再塗装塗膜の密着性(以下、「リコート密着性」ともいう。)が必要とされるが、特許文献1及び2に記載されたようなポリイソシアネートは、リコート密着性の点でもさらなる課題を有していた。
【0008】
また、ウレタン塗料の塗装において、塗膜外観に問題(ブツ、ワキ等)が発生した場合の再塗装、あるいは、複数塗膜を積層する場合が多く、その場合、リコート密着性が必要とされる場合が出てきている。ここで、「ワキ」とは、塗膜を硬化又は乾燥した際に、泡状の小さな膨れや穴が生じる現象を意味する。また、塗り替え頻度低減のため耐候性の向上、さらに、垂直面塗装時の耐タレ性も塗装作業性としては重要項目であり、特許文献3〜4の技術を用いても、これらの課題を全て解決することが困難であり、乾燥性、耐衝撃性、耐溶剤性、リコート密着性、耐候性、耐タレ性等に優れるポリイソシアネートが切望されていた。
【0009】
また、塗料組成物として使用した場合、塗膜外観に問題(ブツ、ワキ等)が発生した場合の再塗装、あるいは、複数塗膜を積層する場合が多く、その場合の下地塗膜との密着性が課題となる場合が出てきている。下地塗膜との密着性に関しては、特許文献3、4、8〜12の技術を用いても、不足する場合があり、低粘度、かつ、乾燥性、下地塗膜との密着性に優れるポリイソシアネートが切望されていた。
【0010】
そこで、本発明は、塗膜物性に優れるポリイソシアネート混合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定構造を有するトリイソシアネートと特定のポリイソシアネートとのポリイソシアネート混合物が上記課題を達成できることを発見し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0012】
[1]下記一般式(I)で示されるトリイソシアネート化合物(A)と、脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート(B3)と、を含み、前記ポリイソシアネート(B3)における、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造の各モル%をa、b、cとした場合のa/(a+b+c)が0.10以上であ前記トリイソシアネート(A)と前記脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート(B3)の混合比率(A)/(B3)が、質量比で30/70以上70/30以下である、ポリイソシアネート混合物。
【0013】
【化1】
【0014】
(一般式(I)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。)
【0015】
[2]前記トリイソシアネート(A)が、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート又はリジントリイソシアネートである、[1]に記載のポリイソシアネート混合物。
[3][1]又は[2]に記載のポリイソシアネート混合物と、活性水素を分子内に2個以上有する化合物と、を含む、塗料組成物。
[4][3]に記載の塗料組成物を硬化した、塗膜。
【0016】
本発明の他の一つの態様は、以下の通りである。
[3−1]下記一般式(I)で示されるトリイソシアネート[A]と、脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート[B]と、を含み、
下記(i)及び/又は下記(ii)を満たす、ポリイソシアネート混合物。
(i)前記ポリイソシアネート[B]における、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造の各モル%をa、b、cとした場合のa/(a+b+c)が0.10以上であること
(ii)下記一般式(I)の複数存在するYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含むこと
【0017】
【化2】
【0018】
(一般式(I)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。
複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。)
【0019】
[3−2]前記トリイソシアネート[A]中の全てのYが、芳香環構造を含まない[3−1]に記載のポリイソシアネート混合物。
[3−3]前記トリイソシアネート[A]中の全てのYが、脂環構造を含まない[3−1]に記載のポリイソシアネート混合物。
[3−4]前記トリイソシアネート[A]中の全てのYが、エーテル構造を含まない[3−1]に記載のポリイソシアネート混合物。
[3−5][3−1]〜[3−4]のいずれか一つに記載のポリイソシアネート混合物と、活性水素を分子内に2個以上有する化合物と、を含む塗料組成物。
[3−6][3−5]に記載の塗料組成物を硬化した塗膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、塗膜物性に優れるポリイソシアネート混合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0022】
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(−NCO)を有するモノマーが複数結合した重合体をいう。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(−OH)を有する化合物をいう。
なお、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」はメタクリルとアクリルを包含し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートを包含するものとする。
【0023】
≪ポリイソシアネート混合物≫
本実施形態のポリイソシアネート混合物は、下記一般式(I)で示されるトリイソシアネート化合物(A)と、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートより得られるポリイソシアネート(B)とを含むポリイソシアネート混合物である。
【0024】
【化3】
【0025】
(一般式(I)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。)
【0026】
<トリイソシアネート化合物(A)>
本実施形態に用いるトリイソシアネート化合物(A)は、例えば、アミノ酸誘導体やエーテルアミン、アルキルトリアミンなどのアミンをイソシアネート化して得ることができる。
アミノ酸誘導体として、例えば2,5−ジアミノ吉草酸、2,6−ジアミノヘキサン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などを用いることができる。これらアミノ酸はジアミンモノカルボン酸又はモノアミンジカルボン酸であるので、カルボキシル基を、例えばエタノールアミンなどのアルカノールアミンでエステル化する。これにより得られるエステル基を有するトリアミンはホスゲン化などによりエステル構造を含むトリイソシアネート化合物(A)とすることができる。
【0027】
エーテルアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレントリアミンである三井化学ファイン社の商品名「D403」などが挙げられる。これはトリアミンであり、アミンのホスゲン化などによりエーテル構造を含むトリイソシアネート化合物(A)とすることができる。
アルキルトリアミンとしては、例えば、トリイソシアナトノナン(4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミンなどが挙げられる。これはトリアミンであり、アミンのホスゲン化などにより炭化水素のみを含むトリイソシアネート化合物(A)とすることができる。
【0028】
〔Y
前記一般式(I)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、或いは、エステル構造[−C(=O)−O−]及び/又はエーテル構造(−O−)を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、−(CHn1−X−(CHn2−で表される基(n1及びn2はそれぞれ独立して、0〜10の整数である。但し、n1及びn2の両方とも0になることはなく、n1、n2のうち、NCOと結合している側は1以上であることが好ましい。Xは、エステル基またはエーテル基である)が挙げられる。
反応速度を速めたい場合、Xがエステル基であることが好ましい。
n1及びn2は、好ましくは、0〜4であり、より好ましくは、0〜2である。n1及びn2の組み合わせとしては、例えば、n1=0、n2=2の組み合わせ、n1=2、n2=2の組み合わせが挙げられる。
【0029】
〔R
は、水素原子又は、炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。Rにおける炭化水素基としては、特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。Rとしては、水素原子が好ましい。
【0030】
本実施形態に用いるトリイソシアネート化合物は、低粘度とするため、前記一般式(I)における、複数存在するY中の炭化水素基が、好ましくは、脂肪族基、及び/又は、芳香族基を有する。
【0031】
また、塗料組成物の硬化剤として使用した際の耐候性を良好とするため、複数存在するY中の炭化水素基が、好ましくは、脂肪族基、及び/又は脂環族基を有する。
別途、耐熱性を保持するため、Yが、好ましくは、エステル基を含む炭化水素基を有する。
【0032】
これらの分類に該当する例としては、特許第1468856号公報、国際公開第1996/17881号公報等に開示されている4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(以下、NTIと言う、分子量251)、特開昭57−198760号公報に開示されている1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、HTIと言う、分子量209)、特公平4−1033号公報に開示されているビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート(以下、GTIと言う、分子量311)、特開昭53−135931号公報に開示されているリジントリイソシアネート(以下、LTIと言う、分子量267)などが挙げられる。
これらの中では、イソシアネート基の反応性をより向上できる観点から、NTI、GTI又はLTIが好ましく、NTI又はLTIがより好ましく、LTIが特に好ましい。
【0033】
別途、耐加水分解性を保持するためには、Yが、好ましくは、炭化水素基のみで構成されている。
この分類に該当する例としては、特許第1468856号公報に開示されている4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(以下、NTIと言う、分子量251)、特開昭57−198760号公報に開示されている1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、HTIと言う、分子量209)などが挙げられる。
【0034】
<ポリイソシアネート(B)>
本実施形態のポリイソシアネート混合物に含まれるポリイソシアネートの原料となるジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートである。
【0035】
本実施形態において「脂肪族ジイソシアネート」とは、分子中に2つのイソシアネート基と鎖状脂肪族炭化水素を有し、芳香族炭化水素を有しない化合物をいう。
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、好ましくは炭素数4以上30以下のものであり、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略す)、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。その中でも、工業的入手の容易さから、より好ましくはHDIが挙げられる。上記に示した脂肪族ジイソシアネートは、単独で使用しても2種以上を併用しても構わない。
【0036】
本実施形態において「脂環式ジイソシアネート」とは、分子中に2つのイソシアネート基と、芳香族性を有しない環状脂肪族炭化水素と、を有する化合物をいう。
脂環式ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、好ましくは炭素数8以上30以下のものであり、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略す)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。その中でも、耐候性及び工業的入手の容易さから、より好ましくはIPDIが挙げられる。上記に示した脂環式ジイソシアネートは、単独で使用しても2種以上を併用しても構わない。
【0037】
本実施形態において、芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下XDIと記載する)等が挙げられる。中でも、工業的入手の容易さから、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートが望ましく、耐候性の観点から、XDIが好ましい。芳香族ジイソシアネートは、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0038】
<その他の化合物>
本実施形態のポリイソシアネート混合物は、不飽和結合含有化合物、不活性化合物、金属原子 、塩基性アミノ化合物、二酸化炭素からなる群から選ばれる1種以上の化合物を、トリイソシアネート化合物(A)を基準に1.0質量ppm以上1.0×10質量ppm以下含むことが、長期保存時の着色防止および長期保存安定性向上の観点から好ましい。当該含有量の範囲の下限は、3.0質量ppm以上であることがより好ましく、5.0質量ppm以上であることがさらに好ましく、10質量ppm以上であることがよりさらに好ましく、含有量の範囲の上限は、5.0×10質量ppm以下であることがより好ましく、3.0×10質量ppm以下であることがさらに好ましく、1.0×10質量ppm以下であることがよりさらに好ましい。
【0039】
本実施形態の不飽和結合含有化合物は、好ましくは、その不飽和結合が、炭素−炭素間の不飽和結合、炭素−窒素間の不飽和結合又は炭素−酸素間の不飽和結合である化合物である。化合物の安定性の観点から、不飽和結合は、二重結合である化合物が好ましく、炭素−炭素間の二重結合(C=C)又は炭素−酸素間の二重結合(C=O)がより好ましい。また、該化合物を構成する炭素原子は3つ以上の原子と結合していることが好ましい。
一般的に、炭素−炭素間の二重結合は芳香環を構成する炭素−炭素間の二重結合である場合もあるが、本実施形態の不飽和結合含有化合物に含まれる不飽和結合は、芳香環を構成する炭素−炭素間の二重結合を含まない。
炭素−酸素間の二重結合を有する化合物としては、例えば、炭酸誘導体を挙げることができる。炭酸誘導体としては、例えば、尿素化合物、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステル、および、N−置換カルバミン酸エステルが挙げられる。
【0040】
本実施形態の不活性化合物は、下記化合物A〜化合物Gに分類される。
炭化水素化合物は化合物A及び化合物Bに、エーテル化合物及びスルフィド化合物は下記化合物C〜Eに、ハロゲン化炭化水素化合物は下記化合物Fに、含ケイ素炭化水素化合物、含ケイ素エーテル化合物及び含ケイ素スルフィド化合物は下記化合物Gにそれぞれ分類される。なお、ここに挙げる化合物A〜化合物Gは芳香族環以外に不飽和結合を含まず、上記した不飽和結合を有する化合物は含まれない。
化合物A:直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する脂肪族炭化水素化合物。
化合物B:脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい芳香族炭化水素化合物。
化合物C:エーテル結合又はスルフィド結合と、脂肪族炭化水素基とを有する化合物であり、同種又は異種の脂肪族炭化水素化合物が、エーテル結合又はスルフィド結合を介して結合した化合物。
化合物D:エーテル結合又はスルフィド結合と、芳香族炭化水素基とを有する化合物であり、同種又は異種の芳香族炭化水素化合物が、エーテル結合又はスルフィド結合を介して結合した化合物。
化合物E:エーテル結合又はスルフィド結合と、脂肪族炭化水素基と、芳香族炭化水素基とを有する化合物。
化合物F:脂肪族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子、又は、芳香族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化物。
化合物G:上記化合物A〜化合物Eの炭素原子の一部又は全部がケイ素原子に置換された化合物。
【0041】
本実施形態の金属原子は、金属イオンとして存在していても、金属原子単体として存在していてもよい。1種の金属原子であってもよいし、複数の種類の金属原子を組み合わせても構わない。金属原子としては、2価ないし4価の原子価をとりうる金属原子が好ましく、中でも、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、銅、チタンから選ばれる1種または複数種の金属がより好ましい。
【0042】
本実施形態の塩基性アミノ化合物は、アンモニアの誘導体で、アルキル基やアリール基でその水素が一つ置換された化合物(第一級)、二つ置換された化合物(第二級)、および三つとも置換された化合物(第三級)がある。本発明で好ましく使用できる塩基性アミノ化合物は、二級、三級のアミノ化合物であり、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、塩基性アミノ酸が好ましく使用できる。
【0043】
二酸化炭素は、常圧でのイソシアネート溶存分でも構わないし、圧力容器に入れて加圧状態で溶存させても構わない。水分を含んでいる二酸化炭素を使用するとイソシアネートの加水分解を引き起こす場合があるので、二酸化炭素に含有される水分量は必要に応じて管理することが好ましい。
【0044】
本実施形態のポリイソシアネート混合物のハロゲン原子含有量は、1.0×10質量ppm以下であることが着色防止の観点から好ましい。ハロゲン原子は、特に限定されないが、塩素および/または臭素が好ましく、塩素イオン、臭素イオン、加水分解性塩素、加水分解性臭素から選択される、少なくとも1種のイオンおよび/または化合物であることがより好ましい。加水分解塩素としては、イソシアネート基に塩化水素が付加したカルバモイルクロリド化合物、加水分解性臭素としては、イソシアネート基に臭化水素が付加したカルバモイルブロミド化合物が挙げられる。
【0045】
≪塗料組成物≫
本実施形態のポリイソシアネート混合物は、塗料組成物の硬化剤等として好適に用いることもできる。すなわち、本実施形態のポリイソシアネート混合物を含有する塗料組成物とすることができる。その塗料組成物の樹脂成分として好ましくは、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有する。活性水素を分子内に2個以上有する化合物として、例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、ポリオールである。ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール等が挙げられる。
【0046】
本実施形態の塗料組成物は、本実施形態のポリイソシアネート混合物と、活性水素を分子内に2個以上有する化合物と、を含む。
本実施形態の塗料組成物は、溶剤ベース、水系ベースどちらにも使用可能である。
溶剤ベースの塗料組成物とした場合には、活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有する樹脂、又はその溶剤希釈物に、必要に応じて他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加えたものに、本実施形態のポリイソシアネート混合物を硬化剤として添加し、必要に応じて、更に溶剤を添加して、粘度を調整した後、手攪拌、あるいはマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの塗料組成物を得ることができる。
水系ベースの塗料組成物とした場合には、活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有する樹脂の水分散体、又は水溶物に、必要に応じて他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加えたものに、本実施形態のポリイソシアネート混合物を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加した後、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの塗料組成物を得ることができる。
【0047】
ポリエステルポリオールは、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等の二塩基酸等の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独又は混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
例えば、上記の成分を一緒にし、そして約160〜220℃で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。さらに、例えば、ε−カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。これらのポリエステルポリオールは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネートを用いて変性させることができる。この場合、特に脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネートが、耐候性及び耐黄変性等の観点から好ましい。水系ベース塗料として用いる場合には、一部残した二塩基酸等の一部のカルボン酸を残存させておき、アミン、アンモニア等の塩基で中和することで、水溶性、あるいは水分散性の樹脂とすることができる。
【0048】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、例えば水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等を使用して、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等)の単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物にランダム又はブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類;ポリアミン化合物(エチレンジアミン類等)にアルキレンオキシドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;及びこれらポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が挙げられる。
【0049】
上記多価ヒドロキシ化合物としては、(i)例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、(ii)例えば、エリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、(iii)例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、(iv)例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、(v)例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、(vi)例えば、スタキオース等の四糖類、等が挙げられる。
【0050】
アクリルポリオールは、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得ることができる。
アクリルポリオールは、例えば、活性水素を有するアクリル酸エステル類(アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等)、又は活性水素を有するメタクリル酸エステル類(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等)、グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエーテルポリオール類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸との付加物;上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にラクトン類(ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン等)を開環重合させることにより得られる付加物からなる群より選ばれる1種以上を必須成分として、必用に応じて(メタ)アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等)、不飽和アミド類(アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、又は加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等)、その他の重合性モノマー(スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等)からなる群より選ばれる1種以上を、常法により共重合させて得ることができる。
【0051】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合などの公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性、あるいは水分散性を付与することができる。
【0052】
フッ素ポリオールとは、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば、特開昭57−34107号公報、特開昭61−215311号公報等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0053】
上記ポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、好ましくは、10〜200mgKOH/gである。その中でも、下限値は、より好ましくは、20mgKOH/gであり、さらに好ましくは、30mgKOH/gである。ポリオールの酸価は、好ましくは、0〜30mgKOH/gである。水酸基価及び酸価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
上記の中でも、ポリオールとして好ましくは、耐候性、耐薬品性、及び硬度の観点から、アクリルポリオールであり、機械強度、及び耐油性の観点から、好ましくは、ポリエステルポリオールである。
【0054】
上記活性水素を分子内に2個以上有する化合物の水酸基に対する、本実施形態のポリイソシアネート混合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH比)は、好ましくは0.2〜5.0であり、より好ましくは0.4〜3.0であり、更に好ましくは0.5〜2.0である。当該当量比が0.2以上であると、一層強靱な塗膜を得ることが可能となる。当該当量比が5.0以下であると、塗膜の平滑性を一層向上させることができる。
塗料組成物には、必要に応じて完全アルキル型、メチロール型アルキル、イミノ基型アルキル等のメラミン系硬化剤を添加することができる。
上記活性水素を分子内に2個以上有する化合物、本実施形態のポリイソシアネート混合物、及び本実施形態の塗料組成物は、いずれも、有機溶剤と混合して使用できる。有機溶剤として好ましくは、水酸基及びイソシアネート基と反応する官能基を有していないものが挙げられる。また、好ましくは、ポリイソシアネート混合物と相溶するものが挙げられる。このような有機溶剤としては、一般に塗料溶剤として用いられているエステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等が挙げられる。
上記活性水素を分子内に2個以上有する化合物、本実施形態のポリイソシアネート混合物、及び本実施形態の塗料組成物は、いずれも、その目的や用途に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
【0055】
硬化促進用の触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩、等の金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、等の3級アミン類等が挙げられる。
【0056】
本実施形態の塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として用いることができる。例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材に対するプライマーや上中塗り塗料として有用である。また、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装等に美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性等を付与するための塗料としても有用である。また、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。
【0057】
≪塗膜≫
本実施形態の塗膜は、本実施形態の塗料組成物を硬化したものである。
【0058】
以下、ポリイソシアネート混合物の好ましい実施形態について説明する。
【0059】
≪第1の実施形態≫
第1の実施形態では、前記ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートより得られる数平均分子量が850以上5000以下であるポリイソシアネート(B1)であることが好ましい。
第1の実施形態に用いるポリイソシアネート(B1)の数平均分子量の下限値は、900であることがより好ましく、さらに好ましくは950である。また、数平均分子量の上限値は、4000であることがより好ましく、さらに好ましくは2000であり、よりさらに好ましくは1500である。数平均分子量が850以上であることにより、耐溶剤性が十分となる傾向にあり、5000以下であることにより、低粘度を維持することができる。数平均分子量は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0060】
第1の実施形態のポリイソシアネート混合物のNCO含有量は、好ましくは5質量%以上50質量%以下である。NCO含有量の下限値は、10質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは15質量%である。NCO含有量の上限値は、45質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは、40質量%である。NCO含有量がこのような範囲にあることにより、硬化性が十分となる傾向にある。NCO含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0061】
第1の実施形態のポリイソシアネート混合物の25℃における粘度は、好ましくは200mPa.s以上15000mPa.s以下である。下限値は、300mPa.sであることがより好ましく、さらに好ましくは350mPa.sである。上限値は、12000mPa.sであることがより好ましく、さらに好ましくは10000mPa.sであり、さらにより好ましくは8000mPa.sである。
粘度がこのような範囲にあることにより、主剤である活性水素化合物との相溶性が良好となる傾向にある。粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0062】
第1の実施形態のポリイソシアネート混合物のイソシアネート基平均数は、好ましくは3.2以上8以下である。下限値は、3.3であることがより好ましく、さらに好ましくは3.4であり、よりさらに好ましくは3.5である。上限値は、6.0であることがより好ましく、さらに好ましくは5.0である。イソシアネート基平均数が3.2以上であることにより、耐溶剤性を維持する傾向があり、8以下であることにより、相溶性を維持する傾向にある。イソシアネート基平均数は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0063】
第1の実施形態のポリイソシアネート混合物は、前記一般式(I)で表されるトリイソシアネート化合物(A)を、好ましくは10質量%以上90質量%以下含む。下限値は、20質量%がより好ましく、さらに好ましくは30質量%である。上限値は、80質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは70質量%である。トリイソシアネート化合物(A)がこのような範囲にあることにより、活性水素化合物との相溶性及びリコート密着性と、硬化性、耐溶剤性とのバランスが良好となる傾向にある。
【0064】
<水酸基含有化合物成分>
第1の実施形態に用いるポリイソシアネート(B1)は、好ましくは、その一部に、水酸基含有化合物成分を有する。また、第1の実施形態のポリイソシアネート(B1)は、アロファネート構造を有することが好ましい。水酸基含有化合物成分とは、ポリイソシアネートの一部を構成する水酸基含有化合物に由来する部分をいう。ポリイソシアネート混合物中のアロファネート構造を構成する水酸基含有化合物としては、塗料組成物とした際の活性水素化合物との相溶性、及び硬化性を良好とする観点から、ジオール、トリオールであることが好ましい。ポリイソシアネートの製造時、ジオール、トリオールの水酸基はイソシアネート基と反応し、この反応の際、脱離物はない。したがって、原料として仕込まれたジオール、トリオールは質量の減少がなく、ジオール成分、トリオール成分としてポリイソシアネートの一部を構成する。
【0065】
第1の実施形態に用いるポリイソシアネート(B1)は、2官能基以上水酸基を有するポリオール、3官能基以上水酸基を有するポリオール、及び3官能基以上水酸基を有するポリエステルポリオールを原料とすることが好ましい。
【0066】
上記ジオールとしては、以下に限定されないが、例えば、直鎖状脂肪族ジオールであるエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールや、分枝状脂肪族ジオールである2−メチル1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、及び2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
結晶性抑制の観点から、好ましくは、分岐状脂肪族ジオールが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用でもよい。その中でも、ジオールの炭素数の下限としては、好ましくは、2であり、より好ましくは、3であり、さらに好ましくは4である。ジオールの炭素数が2以上であることで、イソシアネート基平均数が高くなり、硬化性、乾燥性がより良好となる傾向にある。一方、上限は好ましくは、10であり、より好ましくは8であり、さらに好ましくは、6であり、さらにより好ましくは、5である。ジオールの炭素数が10以下であることで、相溶性がより良好となり、塗膜の外観が一層向上する傾向にある。
【0067】
上記トリオールとしては、以下に特に限定されないが、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン及びそれらの誘導体が挙げられる。ポリイソシアネートがトリオール成分を有することにより、主剤である多価活性水素化合物との反応による硬化性が向上する傾向にある。
【0068】
別途、4個以上の水酸基を有するポリオール成分、1個の水酸基を有するモノアルコール成分をポリイソシアネート(B1)の一部に有してもよい。
【0069】
第1の実施形態に用いるポリイソシアネート(B1)を構成する水酸基含有化合物成分の濃度は、特に限定されないが、ポリイソシアネート(B1)に対して、好ましくは、1〜20質量%である。下限値としては、より好ましくは、2質量%であり、さらに好ましくは、3質量%であり、よりさらに好ましくは4質量%であり、さらにより好ましくは5質量%である。一方、上限値はより好ましくは、18質量%であり、さらに好ましくは16質量%であり、よりさらに好ましくは14質量%である。水酸基含有化合物成分の成分濃度が1質量%以上であることにより、主剤である多価活性水素化合物との相溶性がより良好となり、20質量%以下であることにより、より耐候性に優れる塗膜を得ることができる。
【0070】
≪ポリイソシアネート(B1)の製造方法≫
第1の実施形態に用いるポリイソシアネート(B1)は、好ましくは、少なくともイソシアヌレート結合を含み、その他に、特に限定されないが、例えば、ビウレット結合、尿素結合、ウレトジオン結合、ウレタン結合、アロファネート結合、イミノオキサジアジンジオン結合、オキサジアジントリオン結合等を有していてもよい。
イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネート(B1)は、例えば、触媒等により環状3量化反応を行い、転化率が約5〜約80質量%になった時に反応を停止し、未反応ジイソシアネートを除去精製して得られる。第1の実施形態においては、この際に、ポリカプロラクトンポリオールや、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン等の1〜6価のアルコール化合物を併用することができる。
【0071】
上記イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネート(B1)を製造する際の触媒として好ましくは、塩基性を有するものである。このような触媒の例としては、(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(2)トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(3)アルキルカルボン酸の例えば錫、亜鉛、鉛等のアルキル金属塩、(4)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、(5)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、(6)マンニッヒ塩基類、(7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、(8)トリブチルホスフィン等の燐系化合物が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記触媒が塗料又は塗膜物性に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、該触媒を酸性化合物等で中和することが好ましい。この場合の酸性化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等の無機酸;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル等のスルホン酸又はその誘導体;燐酸エチル、燐酸ジエチル、燐酸イソプロピル、燐酸ジイソプロピル、燐酸ブチル、燐酸ジブチル、燐酸2−エチルヘキシル、燐酸ジ(2−エチルヘキシル)、燐酸イソデシル、燐酸ジイソデシル、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、ピロリン酸ブチル、亜燐酸ブチルが挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
【0073】
第1の実施形態によれば、硬化性を保持しつつ、主剤である活性水素化合物との相溶性、リコート密着性、及び得られた塗膜の耐溶剤性に優れるポリイソシアネート混合物を提供することができる。
【0074】
≪第2の実施形態≫
第2の実施形態では、前記ポリイソシアネート(B)が、芳香族ジイソシアネート(B2−1)、又は芳香族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート(B2−2)(以下、「芳香族ジイソシアネート由来ポリイソシアネート(B2−2)」という場合がある)であって、前記ポリイソシアネート(B2−2)における、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造の各モル%をa、b、cとした場合のa/(a+b+c)が0.10以上であることが好ましい。
【0075】
・芳香族ジイソシアネート(B2−1)
第2の実施形態にポリイソシアネート(B)として用いる芳香族ジイソシアネート(B2−1)としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下XDIと記載する)等が挙げられる。中でも、工業的入手の容易さから、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートが望ましく、耐候性の観点から、XDIが好ましい。芳香族ジイソシアネート(B2−1)は、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0076】
第2の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)のうち、芳香族ジイソシアネート(B2−1)と芳香族ジイソシアネート由来ポリイソシアネート(B2−2)の比率は、特に制限を受けないが、芳香族ジイソシアネート由来ポリイソシアネート(B2−2)の比率が20質量%以上であることが好ましく、33質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましく、66質量%以上が殊更好ましい。芳香族ジイソシアネート由来ポリイソシアネート(B2−2)の比率が上記下限値以上とすることで、耐溶剤性を高めることができる。
【0077】
第2の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)のイソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造の各モル%をa、b、cとした場合のa/(a+b+c)が0.10以上であることが好ましい(条件(i−2))。
また、第2の実施形態に用いるトリイソシアネート化合物(A)は、前記一般式(I)中の複数あるYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含むことが好ましい(条件(ii−2))。
第2の実施形態のポリイソシアネート混合物は、係る条件(i−2)及び条件(ii−2)のいずれか一方、または、両方を満たすことが好ましい。
当該比率の下限値は、0.17であることが好ましく、0.25であることがより好ましく、0.30であることが特に好ましく、0.40であることが殊更好ましい。上記下限値以上であることで、リコート密着性がより良好となる傾向にある。
【0078】
第2の実施形態では、ポリイソシアネート(B)中のポリイソシアネートの構成成分として、イソシアヌレート構造を含むことが好ましい。イソシアヌレート構造は次式(II)で示される。
【0079】
【化4】
【0080】
第2の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)中のポリイソシアネートは、イソシアヌレート構造以外に、ウレタン構造、アロファネート構造が含まれていてもよい。
ウレタン構造は、アルコールの水酸基とイソシアネート基から形成され、アロファネート構造は、ウレタン構造とイソシアネート基から形成される。それぞれ、次式(III)、(IV)で示される。
【0081】
【化5】
【0082】
【化6】
【0083】
第2の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)中のポリイソシアネートに用いることのできるアルコールとは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましく、イソシアネート基平均数を高めるため、ジオール、あるいは、トリオールを使用することが好ましい。1分子中に3個以下の水酸基を有するポリオールを使用した場合、得られたポリイソシアネートの粘度を好適な範囲で調整可能であり、好ましい。
【0084】
第2の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の数平均分子量は、特に制限を受けないが、100〜2,000であることが好ましい。数平均分子量の下限値は、300がより好ましく、500が特に好ましい。数平均分子量の上限値は、1,800が好ましく、1,600がより好ましく、1,500が殊更好ましい。
数平均分子量を上記上限値以下とすることで、得られる塗膜の下地隠ぺい性が向上する傾向にある。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。具体的には実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0085】
第2の実施形態に用いるトリイソシアネート(A)とポリイソシアネート(B)の混合比率(A)/(B)は、特に制限されないが、質量比で95/5〜5/95であることが好ましい。
上限値としては、90/10がより好ましく、80/20がさらに好ましく、70/30が特に好ましい。下限値としては、10/90がより好ましく、20/80がより好ましく、30/70が特に好ましい。上記上限値以下であることによりと、乾燥性がより高くなる傾向にあり、上記下限値以上であると、リコート密着性がより良好になる傾向にある。
【0086】
第2の実施形態のポリイソシアネート混合物のイソシアネート基平均数は、特に制限はないが、2.5以上であることが好ましく、2.6以上がより好ましく、2.7以上が特に好ましく、2.8以上が殊更好ましい。上記下限値以上とすることで、耐溶剤性を保持することができる。
【0087】
≪第3の実施形態≫
第3の実施形態では、前記ポリイソシアネート(B)が、脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート(B3)であって、前記ポリイソシアネート(B3)における、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造の各モル%をa、b、cとした場合のa/(a+b+c)が0.10以上であることが好ましい。
【0088】
第2の実施形態によれば、乾燥性、耐衝撃性、耐溶剤性、リコート密着性、耐タレ性に優れるポリイソシアネート混合物を提供することができる。
【0089】
<ポリイソシアネート(B3)>
第3の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)は、脂環族ジイソシアネート由来のポリイソシアネート(B3)である。
係る脂環族ジイソシアネートとしては、好ましくは、炭素数8〜30のものが挙げられ、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと記載する)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどが例示される。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、好ましくは、IPDIが挙げられる。脂環族ジイソシアネートは単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
第3の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)のイソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造の各モル%をa、b、cとした場合のa/(a+b+c)は、好ましくは、0.10以上であることが好ましい(条件(i−3))。
また、第2の実施形態に用いるトリイソシアネート化合物(A)は、前記一般式(I)中の複数あるYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含むことが好ましい(条件(ii−3))。
第3の実施形態のポリイソシアネート混合物は、係る条件(i−3)及び前述した条件(ii−3)のいずれか一方、好ましくは両方を満たす。
当該比率の下限値は、好ましくは、0.17であり、さらに好ましくは0.25であり、よりさらに好ましくは0.30で、最も好ましくは0.40である。0.10以上であることで、リコート密着性がより良好となる傾向にある。
【0090】
第3の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の構成成分として、イソシアヌレート構造を含むことが好ましい。イソシアヌレート構造は、前記式(II)で示される。
【0091】
第3の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)は、イソシアヌレート構造以外に、ウレタン構造、アロファネート構造が含まれていてもよい。
ウレタン構造は、アルコールの水酸基とイソシアネート基から形成され、アロファネート構造は、ウレタン構造とイソシアネート基から形成される。それぞれ、前記式(III)、(IV)で示される。
【0092】
係るポリイソシアネート(B)に用いることのできるアルコールとは、好ましくは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールであり、より好ましくは、イソシアネート基平均数を高めるため、ジオール、又は、トリオールである。1分子中に3個以下の水酸基を有するポリオールを使用した場合、得られたポリイソシアネートの粘度を好適な範囲で調整可能である。
【0093】
第3の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の固形分の数平均分子量は、特に制限を受けないが、好ましくは、400〜2,000である。数平均分子量の下限値は、より好ましくは500であり、さらに好ましくは600である。数平均分子量の上限値は、より好ましくは1,800であり、さらに好ましくは1,600であり、一層好ましくは、1,500である。
数平均分子量を400以上とすることで、得られるポリイソシアネート混合物の収率が一層向上する傾向にある。数平均分子量を2,000以下とすることで、得られる塗膜の下地隠ぺい性が向上する傾向にある。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。具体的には実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0094】
第3の実施形態に用いるトリイソシアネート(A)とポリイソシアネート(B)の混合比率(A)/(B)は、特に制限されないが、好ましくは、質量比で95/5〜5/95である。
上限値としては、より好ましくは90/10であり、さらに好ましくは80/20であり、よりさらに好ましくは70/30である。
下限値としては、10/90がより好ましく、さらに好ましくは、20/80であり、よりさらに好ましくは30/70である。95/5以下であることによりと、乾燥性がより高くなる傾向にあり、5/95以上であると、リコート密着性がより良好になる傾向にある。
【0095】
第3の実施形態によれば、乾燥性、耐薬品性、リコート密着性、耐候性、耐タレ性に優れるポリイソシアネート混合物を提供することができる。
【0096】
≪第4の実施形態≫
第4の実施形態では、前記ポリイソシアネート(B)が、少なくとも1,6−ジイソシアナトヘキサンを含む脂肪族ジイソシアネートから得られ、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ウレタン構造、ビュレット構造の各モル%をa、b、c、d、e、fとした場合の(a+b)/(a+b+c+d+e+f)が0.02〜0.50であるポリイソシアネート(B4)であることが好ましい。
【0097】
第4の実施形態において、当該比率の下限値は、0.05であることが好ましく、0.08であることがより好ましく、0.10であることがさらに好ましい。上限値としては、0.40であることが好ましく、0.35であることがより好ましく、0.30であることがさらに好ましい。0.02未満であると、下地塗膜との密着性が低下する傾向にあり、0.50を超えると乾燥性が低下する傾向がある。
【0098】
第4の実施形態において、脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが好ましく、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、HDI、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。中でも、工業的入手のしやすさからHDIが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0099】
第4の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)には、脂環族ジイソシアネートを一部含んでも構わない。脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数8〜30のものが好ましく、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記載する)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどが例示される。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、IPDIが好ましい。脂環族ジイソシアネートは単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0100】
これらのジイソシアネートの中でも、工業的な入手のしやすさ、ポリイソシアネート製造時の反応性からHDIがより好ましい。
第4の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の構成成分として、ウレトジオン構造が含まれること好ましい。ウレトジオン構造とは、ジイソシアネートモノマー2分子からなるポリイソシアネートであり、次式(V)で示される。
【0101】
【化7】
【0102】
ウレトジオン構造を生成させる方法としては、ウレトジオン化反応触媒を用いる方法と加熱法の2種がある。ウレトジオン化反応触媒としては、第3ホスフィンである、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリス−(ジメチルアミノ)ホスフィンなどのトリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロヘキシル−ジ−n−ヘキシルホスフィンなどのシクロアルキルホスフィンなどがある。これらの化合物の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進し、ウレトジオン構造含有ポリイソシアネートに加えてイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネートを生成する。所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチルなどのウレトジオン化反応触媒の失活剤を添加してウレトジオン化反応を停止する。
【0103】
一方、加熱法は、140〜160℃の温度で、0.2時間〜6時間程度撹拌下反応させる方法である。この場合、反応時間は、0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また、4.0時間以下が好ましく、3.0時間以下がより好ましい。
反応時間を上記下限値以上とすることで、充分なウレトジオン構造を生成することが可能であり、上記上限値以下とすることで、ポリイソシアネートの着色を抑制することができる。
【0104】
第4の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の構成成分として、イミノオキサジアジンジオン構造が含まれること好ましい。イミノオキサジアジンジオン構造とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなるポリイソシアネートであり、次式(III)で示される。
【0105】
【化8】
【0106】
イミノオキサジアジンジオン構造を生成させる方法としては、例えば、一般にイミノオキサジアジンジオン化触媒として知られている下記(1)(2)が使用できる。
(1)テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等の、一般式M[F]、あるいは一般式M[F(HF)]で表される(ポリ)フッ化水素(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす整数であり、Mはn荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルを表す。)
(2)3,3,3−トリフルオロカルボン酸;4,4,4,3,3−ペンタフルオロブタン酸;5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオロペンタン酸;3,3−ジフルオロプロパ−2−エン酸等の一般式R−CR’−C(O)O−、又は、一般式R=CR’−C(O)O−(式中、R、及びRは、必要に応じて分岐状、環状、及び/又は不飽和の炭素数1〜30のパーフルオロアルキル基であり、R’は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、必要に応じてヘテロ原子を含有する。)と、第4級アンモニウムカチオン、又は第4級ホスホニウムカチオンからなる化合物。
【0107】
入手容易性の観点から上記(1)が好ましく、安全性の観点から(2)が好ましい。
これらの触媒量の使用量は、仕込んだジイソシアネート質量に対して10ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。下限値としては、20ppm以上が好ましく、40ppm以上がより好ましく、80ppm以上が特に好ましい。
上限値は、800ppm以下が好ましく、600ppm以下がより好ましく、500ppm以下が特に好ましい。
また、反応温度は、40〜120℃で行うことが好ましい。温度の下限値としては、50℃以上であることがより好ましく、55℃以上がより好ましい。
また、温度の上限値としては、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が特に好ましい。
反応温度が上記下限値以上であることで、反応速度を維持することが可能であり、上記上限値以下とすることで、ポリイソシアネートの着色を抑制することができる。
【0108】
第4の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の構成成分として、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ウレタン構造、ビュレット構造を含んでも構わない。イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ウレタン構造、ビュレット構造は、それぞれ、前記式(II)、(IV)、(III)、次式(VII)に示される。
【0109】
【化9】
【0110】
第4の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)中のジイソシアネートモノマー濃度は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が特に好ましく、0.2質量%以下が殊更好ましい。1質量%以下であると、架橋性が低下するおそれがない。
【0111】
第4の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の25℃における粘度は特に制限を受けないが、100から4000mPa・sであることが好ましい。
下限値としては、150mPa・s以上がより好ましく、200mPa・s以上が特に好ましい。
上限値は、3000mPa・s以下が好ましく、2000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下が特に好ましく、700mPa・s以下が殊更好ましい。
上記下限値以上であると、乾燥性が低下するおそれがなく、上記上限値以下であると、低粘度化が不足するおそれがない。粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0112】
第4の実施形態に用いるポリイソシアネート(B)の固形分の数平均分子量は、特に制限を受けないが、400〜1,200であることが好ましい。
数平均分子量の下限値は、440以上が好ましく、480以上がより好ましい。
数平均分子量の上限値は、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下が特に好ましい。
数平均分子量を上記下限値以上とすることで、得られるポリイソシアネートの収率が一層向上する。
数平均分子量を上記上限値以下とすることで、得られる塗膜の下地隠ぺい性が向上する。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。具体的には実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0113】
第4の実施形態に用いるトリイソシアネート(A)とポリイソシアネート(B)の混合比率(A)/(B)は、特に制限されないが、質量比で95/5〜5/95であることが好ましい。
上限値としては、90/10がより好ましく、80/20が特に好ましい。
下限値しては、10/90がより好ましく、20/80が特に好ましい。95/5以下の場合、下地塗膜との密着性が一層高く、5/95以上の場合、低粘度化の点で一層優れている。
【0114】
また、第4の実施形態のトリイソシアネート(A)とポリイソシアネート(B)を混合したポリイソシアネート混合物は、脂肪族ジイソシアネート由来のウレトジオン2量体の、ポリイソシアネート混合物中の絶対量が1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
当該下限値は、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上が特に好ましく、3.5質量%以上が殊更好ましく、5.0質量%以上が最も好ましい。
当該上限値は、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましく、15質量%以下が殊更好ましい。
上記下限値以上とすることで、下地塗膜との密着性を発現することができ、上記上限値以下とすることで、乾燥性を発現することができる。
【0115】
第4の実施形態のポリイソシアネート混合物の25℃における粘度は特に制限を受けないが、10mPa・s以上500mPa・s以下であることが好ましい。
下限値としては、20mPa・s以上であることがより好ましく、30mPa・s以上が特に好ましく、50mPa・s以上が最も好ましい。
上限値は、450mPa・s以下であることがより好ましく、400mPa・s以下が特に好ましく、350mPa・s以下が最も好ましい。
上記下限値以上の場合と、乾燥性と下地塗膜との密着性の両立しやすい傾向があり、上記上限値以下の場合、一層低粘度化に優れる。粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0116】
第4の実施形態によれば、低粘度であり、かつ、乾燥性、下地隠ぺい性、下地塗膜との密着性等の塗膜物性に優れるポリイソシアネート混合物を提供することができる。
【実施例】
【0117】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。実施例及び比較例における、ポリイソシアネート混合物の物性は、以下のとおり測定した。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。また、実施例1A〜12A、1B〜9B、2C〜4C、及び1D〜11Dは参考例である。
【0118】
≪第1の実施形態≫
[測定方法]
(物性1)NCO含有量(質量%)
実施例及び比較例で得られた、溶剤不含で、未反応のジイソシアネートを除去したポリイソシアネート混合物のNCO含有量(イソシアネート基含有量、質量%)は、次のように測定した。
三角フラスコに製造例で製造したポリイソシアネート混合物1〜3gを精秤(Wg)し、これにトルエン20mLを添加し、ポリイソシアネート混合物を完全に溶解した。その後、2規定のジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液10mLを添加し、完全に混合後、15分間室温放置した。さらに、この溶液にイソプロピルアルコール70mLを加えて、完全混合した。この溶液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬を用いて滴定して、滴定値VmLを得た。
同様の滴定操作を、ポリイソシアネート混合物を用いずに行ない、滴定値VmLを得た。
得られた滴定値VmLおよび滴定値VmLから、ポリイソシアネート混合物のNCO含有量を、下記式に基づいて算出した。
【0119】
NCO含有量=(V−V)×F×42/(W×1000)×100
【0120】
(物性2)粘度(mPa.s)
ポリイソシアネート混合物の25℃における粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通りであった。
100r.p.m.(128mPa.s未満の場合)
50r.p.m.(128mPa.s以上256mPa.s未満の場合)
20r.p.m.(256mPa.s以上640mPa.s未満の場合)
10r.p.m.(640mPa.s以上1280mPa.s未満の場合)
5r.p.m.(1280mPa.s以上2560mPa.s未満の場合)
2.5r.p.m.(2560mPa.s以上5120mPa.s未満の場合)
1.0r.p.m.(5120mPa.s以上10240mPa.s未満の場合)
0.5r.p.m.(10240mPa.s以上20480mPa.s未満の場合)
【0121】
(物性3)数平均分子量
ポリイソシアネート混合物及びジイソシアネートより誘導されたポリイソシアネートの数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、「GPC」と略す)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量で求めた。ポリイソシアネート混合物の分子量は、検出された全てのピークから算出し、ジイソシアネートより誘導されたポリイソシアネートの数平均分子量は、トリイソシアネート化合物のピークを除いたすべてのピークから算出した。
装置:東ソー社製「HLC−8120GPC」(商品名)
カラム:東ソー社製「TSKgel SuperH1000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH2000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH3000」(商品名)×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0122】
(物性4)イソシアネート基平均数
ポリイソシアネート混合物のイソシアネート基平均数は、前記(物性1)NCO含有量と(物性3)数平均分子量とから下記式に基づいて算出した。
【0123】
イソシアネート基平均数=数平均分子量×(NCO含有量/100)/42
【0124】
(評価1)硬化性
「Setalux1753」(アクリルポリオール、Nuplex Resins社製の商品名、水酸基価138.6mgKOH/樹脂g、固形分濃度70質量%)とポリイソシアネート混合物とを、NCO/OH=1.0になるように配合し、酢酸ブチルで固形分濃度50質量%に調整し、α塗料溶液を得た。
得られたα塗料溶液をガラス板に、アプリケーターで乾燥膜厚40μmになるように塗装し、23℃で30分間乾燥後、90℃で20分間焼付し、硬化塗膜を得た。
得られた硬化塗膜を23℃で1時間放置し、ケーニッヒ硬度をBYK Chemie社の振り子式硬度計により23℃で測定し、下記の基準で評価した。
A:ケーニッヒ硬度が80以上
B:ケーニッヒ硬度が70以上80未満、
C:ケーニッヒ硬度が60以上70未満
D:ケーニッヒ硬度が60未満
【0125】
(評価2)相溶性
「アクリディックA−801−P」(アクリルポリオール、DIC社製の商品名、水酸基価50.0mgKOH/樹脂g、固形分濃度50質量%)とポリイソシアネート混合物とを、NCO/OH=1.0になるように配合し、酢酸ブチルで固形分濃度50質量%に調整し、β塗料溶液を得た。
得られたβ塗料溶液をガラス板に、アプリケーターで乾燥膜厚40μmになるように塗装し、23℃で30分間乾燥後、90℃で20分間焼付し、硬化塗膜を得た。
得られた硬化塗膜を23℃で1時間放置し、塗膜の透明性を目視で確認した。
A:透明
B:やや白濁あり
C:不透明
【0126】
(評価3)リコート密着性
「ルミフロンLF−400」(フッ素ポリオール、旭硝子社製の商品名、水酸基価44mgKOH/樹脂g、固形分濃度50質量%)とポリイソシアネート混合物とを、NCO/OH=1.0になるように配合し、酢酸ブチルで固形分濃度50質量%に調整し、γ塗料溶液を得た。
得られたγ塗料溶液を軟鋼板に、アプリケーターで乾燥膜厚30μmになるように塗装し、23℃で30分間乾燥後、140℃で30分間焼付し硬化塗膜を得た。さらに、γ塗料溶液を得られた硬化塗膜に、アプリケーターで乾燥膜厚30μmになるように塗装し、23℃で30分間乾燥後、140℃で30分間焼付し、複層塗膜を得た。得られた複層塗膜の密着性試験をJIS K5600−5−6に準じて行った。下記の基準で評価した。
A:剥離塗膜、浮き無し
B:半分未満の剥離塗膜あり
C:半分以上の剥離塗膜あり
【0127】
(評価4)
(評価1)で得られたα塗料溶液をガラス板に、アプリケーターで乾燥膜厚40μmになるように塗装し、23℃で30分間乾燥後、140℃で30分間焼付し、硬化塗膜を得た。
得られた硬化塗膜を23℃で1時間放置し、キシレンを染込ませたコットンボールを塗膜の上に5分間置いた後の塗膜状態を目視で確認した。
A:塗膜状態変化なし
B:塗膜状態やや変化あり
C:塗膜状態変化あり
【0128】
(合成例1A)NTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内に4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン(以下トリアミンと称す)1060gをメタノール1500gに溶かし、これに35%濃塩酸1800mlを冷却しながら徐々に滴下した。減圧下にてメタノール及び水を除去して濃縮し、60℃/5mmHgにて24時間乾燥したところ、白色固体のトリアミン塩酸塩が得られた。得られたトリアミン塩酸塩650gを微粉末としてo−ジクロルベンゼン5000gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、100℃に達した時点でホスゲンを200g/Hrの速度にて吹込みはじめ、さらに昇温を続けて180℃に保持し、12時間ホスゲンを吹込み続けた。減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点161〜163℃/1.2mmHgの無色透明な4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(以下「NTI」という」420gが得られた。このもののNCO含有率50.0重量%であった。
【0129】
(合成例2A)LTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にエタノールアミン122.2g、o−ジクロロベンゼン100ml、トルエン420mlを入れ、氷冷化塩化水素ガスを導入し、エタノールアミンを塩酸塩に転換した。次に、リジン塩酸塩182.5gを添加し、反応液を80℃に加熱し、エタノールアミン塩酸塩を溶解させ、塩化水素ガスを導入してリジン二塩酸塩とした。さらに塩化水素ガスを20から30ml/分で通過させ、反応液を116℃に加熱し、水が留出しなくなるまでこの温度を維持した。生成した反応混合物をメタノールおよびエタノールの混合液中で再結晶してリジンβ−アミノエチルエステル三塩酸塩165gを得た。このリジンβ−アミノエチルエステル三塩酸塩100gを微粉末としてo−ジクロロベンゼン1200mlに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、120℃に達した時点でホスゲンを0.4モル/時間の速度にて吹込みはじめ、10時間保持し、その後150℃に昇温した。懸濁液はほとんど溶解した。冷却後ろ過し、減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点155〜157℃/0.022mmHgの無色透明なLTI80.4gが得られた。このもののNCO含有率は47.1重量%であった。
【0130】
(合成例3A)GTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にグルタミン酸塩酸塩275g、エタノールアミン塩酸塩800g、トルエン150mlを入れ、塩化水素ガスを吹き込みながら、水が共沸しなくなるまで110℃にて24時間加熱還流した。生成した反応混合物をメタノールおよびエタノールの混合液中で再結晶してビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩270gを得た。このビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩85gをo−ジクロロベンゼン680gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、135℃に達した時点でホスゲンを0.8モル/時間の速度にて吹込みはじめ、13時間保持し、反応生成物をろ過後、減圧濃縮し、さらに薄膜蒸発缶で精製することにより、GTI54gが得られた。NCO含有率は39.8重量%であった。
【0131】
(合成例4A)NTIオリゴマーの合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、モノマーとしてNTI100gを仕込み、温度を90℃、2時間保持した。その後、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタートを87.5質量%とメタノール7.5質量%含む触媒ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシサイドを5mg加え、反応を行い、転化率が90%になった時点でジブチルリン酸を添加し反応を停止した。NCO含有量34.9質量%、25℃における粘度5500mPa.s、数平均分子量590、イソシアネート基平均数4.9のNTIオリゴマーを得た。
【0132】
(実施例1A)P−1Aの合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、NTIを10質量部、デュラネートMFA−100を90質量部仕込み、50℃で1時間撹拌した。NCO含有量21.5質量%、25℃における粘度9120mPa.s、イソシアネート基平均数5.2のポリイソシアネート混合物P−1Aを得た。得られたポリイソシアネート混合物P−1について、上述した(評価1)〜(評価4)の評価を行なった。物性値及び評価結果を表1に示す。
【0133】
(実施例2A〜9A、比較例1A〜2A)
実施例2A〜9A、比較例1A〜2Aにおいて、表1で示した配合とする以外は、実施例1Aと同様にして、ポリイソシアネート混合物P−2A〜P−9A、P−10A〜P−11Aを得た。得られたポリイソシアネート混合物の物性値及び評価結果を表1に示す。
【0134】
(比較例3A)
合成例4Aで得られたNTIオリゴマーについて、上述した(評価1)〜(評価4)の評価を行なった。NTIオリゴマーの物性値及び評価結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
表1中、「MFA−100」、「TFD−100」、「TKA−100」はそれぞれ下記の材料を意味する。
※1 MFA−100: HDI系ポリイソシアネート「デュラネートMFA−100」(商品名:旭化成株式会社製、多官能イソシアヌレート型、数平均分子量1,230)
※2 TFD−100: HDI系ポリイソシアネート「デュラネートTFD−100」(商品名:旭化成株式会社製、多官能イソシアヌレート型、数平均分子量1,040)
※3 TKA−100: HDI系ポリイソシアネート「デュラネートTKA−100」(商品名:旭化成株式会社製、イソシアヌレート型、数平均分子量670)
【0137】
(実施例10A)
NTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。NTIに代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Aと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Aと同様であった。
(実施例11A)
NTI:300gにヘキサデカンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。NTIに代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Aと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Aと同様であった。
(合成例5A)C−1Aの合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、NTIを20g仕込み、60℃に加熱し、メタノールを7.7g添加し、撹拌しながら4時間保持し、N−置換カルバミン酸エステルC−1を得た。
(実施例12A)
NTI:300gにN−置換カルバミン酸エステルC−1を0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。NTIに代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Aと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Aと同様であった。
【0138】
≪第2の実施形態≫
[測定方法]
<粘度>
粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通り。
100rpm (128mPa・s未満の場合)
50rpm (128mPa・s〜256mPa・sの場合)
20rpm (256mPa・s〜640mPa・sの場合)
10rpm (640mPa・s〜1280mPa・sの場合)
5rpm (1280mPa・s〜2560mPa・sの場合)
【0139】
<NCO含有率>
NCO含有率(質量%)は、測定試料中のイソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
【0140】
<数平均分子量>
ポリイソシアネート混合物の数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、「GPC」という。)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量で求めた。
装置:東ソー社製「HLC−8120GPC」(商品名)
カラム:東ソー社製「TSKgel SuperH1000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH2000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH3000」(商品名)×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
試料濃度:5wt/vol%
流出量:0.6mL/min
カラム温度:30℃
【0141】
<イソシアネート基平均数>
ポリイソシアネート混合物のイソシアネート基平均数は、数平均分子量と、上記のNCO含有率(イソシアネート基質量%)とから下記式で算出した。
【0142】
【数1】
【0143】
<イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造のモル比率定量方法>
ポリイソシアネート(B)のイソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造のモル比率定量は、IR測定を実施することにより、定量した。
具体的な測定条件は以下の通りである。
機器名:FT/IR−4200typeA(日本分光(株))
光源:ハロゲンランプ
積算回数:16回
分解能:4cm−1
上記測定条件により、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造それぞれのC=O基の吸収が、1685〜1720cm−1に検出される。また、ウレタン構造、アロファネート構造は、N−H基の吸収が3000〜3600cm−1に検出される。イソシアヌレート構造比率は、(3000〜3600cm−1ピークの高さ比)/(1685〜1720cm−1ピークの高さ比)で算出される。
別途、Desmodur IL BA(Covestro(社)製、TDI由来イソシアヌレート体)のIRを測定した結果、上記比率は0.01であった。また、Desmodur L75(Covestro(社)製、TDI/トリメチロールプロパンウレタン体)のIRを測定した結果、上記比率は0.32であった。したがって、IR測定による上記比率が0.28以下である場合、イソシアヌレート構造/(イソシアネート構造+ウレタン構造+アロファネート構造)=0.10以上と判断した。
【0144】
<乾燥性評価方法>
アクリルポリオール(Nuplex Resin社の商品名「SETALUX1753」、樹脂分濃度70%、水酸基価138.6mgKOH/g)と、ポリイソシアネート混合物の各々を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、酢酸ブチルで固形分50質量%になるように調整した。調整した塗料組成物をガラス板上に膜厚40μmになるように塗装した後、23℃/50%RHで硬化させた。特定時間経過後、その塗膜上にコットンボール(直径2.5cm、高さ2.0cmの円柱型)を置き、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とコットンを取り除き、塗膜上に残ったコットン跡を観察した。跡が全く見えなくなった時間が3時間以内であった場合をA、3時間超〜4時間以内であった場合をB、4時間超〜6時間であった場合をC、6時間超であった場合をDとした。
【0145】
<耐衝撃性評価方法>
軟鋼鈑にアクリルポリオール(樹脂固形分濃度55%,水酸基価30mgKOH/樹脂g)ポリイソシアネート混合物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1:1になるように配合後、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した塗料組成物を樹脂膜厚30マイクロメーターになるように塗装した。23℃、湿度50%の条件で72時間放置し、試験塗膜を得た。
デュポン式衝撃試験器により、おもり(500g 、1/4インチ) を用いて、軟鋼板の塗膜の形成された面(表面)から衝撃を加え、塗膜に損傷が現れたときの、おもりの高さを測定した。50cmでも塗膜に損傷が見られなかった場合をA、50cmで塗膜が損傷した場合をB、40cm以下で塗膜が損傷した場合をCとした。
【0146】
<耐溶剤性評価方法>
軟鋼鈑にアクリルポリオール(樹脂固形分濃度55%,水酸基価30mgKOH/樹脂g)ポリイソシアネート混合物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1:1になるように配合後、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した塗料組成物を樹脂膜厚30マイクロメーターになるように塗装した。23℃、湿度50%の条件で72時間放置し、試験塗膜を得た。
得られた塗膜にガソホール液(イソオクタン40質量%、トルエン40質量%、エタノール20質量%を混合)を直径1cm程度スポットし、その上にカバーガラスをかぶせ、23℃、湿度50%の状態で24時間放置した。その後、ガソホール液をふき取り、塗膜外観を観察した結果、変化が見られない場合をA、液の輪郭がうっすらと見られた場合をB、液の輪郭がはっきりと見られた場合をC、輪郭以外にも一部劣化が見られた場合をDとした。
【0147】
<リコート密着性評価方法>
軟鋼鈑にアクリルポリオール(樹脂固形分濃度55%,水酸基価30mgKOH/樹脂g)ポリイソシアネート混合物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1:1になるように配合後、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した塗料組成物を樹脂膜厚30マイクロメーターになるように塗装した。23℃、湿度50%の条件で72時間放置後、アクリルポリオール(Nuplex Resin社の製品名、Setalux1903、樹脂固形分濃度75%、水酸基価150mgKOH/樹脂g)とポリイソシアネート混合物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1:1になるように配合後、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した塗料組成物を樹脂膜厚30マイクロメーターになるように塗装した。さらに、23℃、湿度50%の条件で72時間放置した。この塗膜の密着性試験をJIS K5600−5−6に準じて行った。剥離塗膜無しをA、カット部に一部浮きありをB、半分以下だが剥離ありをC、半分以上剥離塗膜ありをDとして示した。
【0148】
<耐タレ性評価方法>
軟鋼鈑にアクリルポリオール(樹脂固形分濃度55%,水酸基価30mgKOH/樹脂g)ポリイソシアネート混合物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1:1になるように配合後、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した。この塗液を使用し、TQC社製サグテスター標準を用いて、耐タレ性を評価した。
10℃下の評価で、全くタレが見られないものをA、若干タレが観測されたものをB、一部膜厚の異なるラインまで移行したものをC、膜厚の異なるラインが不明確となったものをDとした。
【0149】
(合成例1B) T−1(NTI)の合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内に4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン(以下トリアミンと称す)1060gをメタノール1500gに溶かし、これに35%濃塩酸1800mlを冷却しながら徐々に滴下した。減圧下にてメタノール及び水を除去して濃縮し、60℃/5mmHgにて 24時間乾燥したところ、白色固体のトリアミン塩酸塩が得られた。得られたトリアミン塩酸塩650gを微粉末としてo−ジクロルベンゼン5000gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、100℃に達した時点でホスゲンを200g/Hrの速度にて吹込みはじめ、さらに昇温を続けて180℃に保持し、12時間ホスゲンを吹込み続けた。減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点161〜163℃/1.2mmHgの無色透明な4−イソシアネートメチル−1,8−オクタンメチレンジイソシアネート(以下「NTI」という」420gが得られた。このもののNCO含有率50.0重量%であった。
【0150】
(合成例2B) T−2(LTI)の合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にエタノールアミン122.2g、o−ジクロロベンゼン100ml、トルエン420mlを入れ、氷冷化塩化水素ガスを導入し、エタノールアミンを塩酸塩に転換した。次に、リジン塩酸塩182.5gを添加し、反応液を80℃に加熱し、エタノールアミン塩酸塩を溶解させ、塩化水素ガスを導入してリジン二塩酸塩とした。さらに塩化水素ガスを20から30ml/分で通過させ、反応液を116℃に加熱し、水が留出しなくなるまでこの温度を維持した。生成した反応混合物をメタノールおよびエタノールの混合液中で再結晶してリジンβ−アミノエチルエステル三塩酸塩165gを得た。このリジンβ−アミノエチルエステル三塩酸塩100gを微粉末としてo−ジクロロベンゼン1200mlに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、120℃に達した時点でホスゲンを0.4モル/時間の速度にて吹込みはじめ、10時間保持し、その後150℃に昇温した。懸濁液はほとんど溶解した。冷却後ろ過し、減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点155〜157℃/0.022mmHgの無色透明なLTI80.4gが得られた。このもののNCO含有率は47.1重量%であった。
【0151】
(合成例3B) T−3(GTI)の合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にグルタミン酸塩酸塩275g、エタノールアミン塩酸塩800g、トルエン150mlを入れ、塩化水素ガスを吹き込みながら、水が共沸しなくなるまで110℃にて24時間加熱還流した。生成した反応混合物をメタノールおよびエタノールの混合液中で再結晶してビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩270gを得た。このビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩85gをo−ジクロロベンゼン680gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、135℃に達した時点でホスゲンを0.8モル/時間の速度にて吹込みはじめ、13時間保持し、反応生成物をろ過後、減圧濃縮し、さらに薄膜蒸発缶で精製することにより、GTI54gが得られた。NCO含有率は39.8重量%であった。
【0152】
(合成例4B) P−3B(XDI由来イソシアヌレート体)の合成
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、XDI:1000g、1,3ブタンジオール:0.5gを仕込み、75℃で2時間攪拌し、ウレタン化反応を実施した。その後、60℃に冷却し、触媒としてテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの37%メタノール溶液:0.08gを加えた。さらに、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの37%メタノール溶液:0.40gを追加し、継続的に添加し、4時間経過後、リン酸0.5gを添加して反応を停止した。
その後、反応液を濾過した後、未反応のXDIモノマーは薄膜蒸留により除去した。得られたポリイソシアネートのイソシアネート基含有量は20.6質量%、イソシアネート基平均数は3.3であった。
【0153】
(実施例1B)
T−2と下記P−2Bを樹脂成分の質量比50:50で撹拌下、室温で1時間かけて混合し、ポリイソシアネート混合物を得た。その後、塗料組成物を形成し、塗布、乾燥した後の乾燥性、耐衝撃性、耐溶剤性、リコート密着性、耐タレ性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0154】
(実施例2B−6B、比較例1B−3B)
表2、又は表3に記載のトリイソシアネート(A)、ポリイソシアネート(B)を、表2又は表3に記載の比率で混合した以外は実施例1Bと同様に実施した。その後、塗料組成物を形成し、塗布、乾燥した後の乾燥性、耐衝撃性、耐溶剤性、リコート密着性、耐タレ性を評価した。
得られた結果を表2又は表3に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
表2〜3中、「L75」、「ILBA」「T100」はそれぞれ下記の材料を意味する。
L75(P−1B): TDI/トリメチロールプロパンウレタン体「Desmodur L75」(商品名、Covestro社製、固形分:75%、溶剤:酢酸エチル)
ILBA(P−2B): TDIのイソシアヌレート体「Desmodur ILBA」(商品名、Covestro社製、固形分:51%、溶剤:酢酸ブチル)
T100: TDIモノマー「Desmodur T100」(商品名、Covestro社製、固形分:100%)
【0158】
(実施例7B)
LTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。T−2に代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Bと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Bと同様であった。
【0159】
(実施例8B)
LTI:300gにヘキサデカンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。T−2に代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Bと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Bと同様であった。
【0160】
(合成例5B)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、LTIを20g仕込み、60℃に加熱し、メタノールを7.7gを添加し、撹拌しながら4時間保持し、N−置換カルバミン酸エステルC−1を得た。
【0161】
(実施例9B)
LTI:300gにN−置換カルバミン酸エステルC−1を0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。T−2に代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Bと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Bと同様であった。
【0162】
以上より、本発明を適用した各実施例のポリイソシアネート混合物は、乾燥性、耐衝撃性、耐溶剤性、リコート密着性、耐タレ性に優れることが確認された。
【0163】
≪第3の実施形態≫
[測定方法]
<粘度>
第2の実施形態における「<粘度>」と同様にして測定した。
【0164】
<NCO含有率>
第2の実施形態における「<NCO含有率>」と同様にして測定した。
【0165】
<数平均分子量>
第2の実施形態における「<数平均分子量>」と同様にして測定した。
【0166】
<イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造のモル比率定量方法>
Bruker社製Biospin Avance600(商品名)を用いた、13C−NMRの測定により、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造のモル比率を求めた。各構造のピーク位置に関してはNTIの物を示したが、トリイソシアネートによりピーク位置が変わるため、適宜、標準物質等を用いて校正した。
具体的な測定条件は以下の通りであった。
【0167】
13C−NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製)
Cryo Probe
CPDUL
600S3−C/H−D−05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
シフト基準:CDCl(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
【0168】
以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除し、その値から各モル比を求めた。
【0169】
イソシアヌレート構造:148.5ppm付近:積分値÷3
ウレタン構造:156.3ppm付近:(積分値÷1−アロファネート構造積分値)
アロファネート構造:154ppm付近:積分値÷1
【0170】
<乾燥性評価方法>
第2の実施形態における「<乾燥性評価方法>」と同様にして評価した。
【0171】
<耐溶剤性評価方法>
第2の実施形態における「<耐溶剤性評価方法>」と同様にして評価した。
【0172】
<リコート密着性評価方法>
第2の実施形態における「<リコート密着性評価方法>」と同様にして評価した。
【0173】
<耐候性評価方法>
軟鋼鈑にアクリルポリオール(樹脂固形分濃度55%,水酸基価30mgKOH/樹脂g)ポリイソシアネート混合物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1:1になるように配合後、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した塗料組成物を樹脂膜厚30マイクロメーターになるように塗装した。23℃、湿度50%の条件で72時間放置し、試験塗膜を得た。
得られた塗膜をスガ試験機(株)製のスーパーキセノンウェザーメーターを用いて、評価した。試験条件を以下に記載する。
【0174】
・放射照度:180W/m
・運転サイクル:乾燥時/スプレー時=102/18分のサイクル運転
乾燥時:ブラックパネル温度63℃、湿度:50%
スプレー時:層内温度:28℃
500時間経過時の光沢保持率が85%以上の場合をA、80%以上85%未満の場合をB、70%以上80%未満の場合をC、70%未満の場合をDとした。
【0175】
<耐タレ性評価方法>
第2の実施形態における「<耐タレ性評価方法>」と同様にして評価した。
【0176】
<速乾性評価方法>
無溶剤アクリルポリオール(東亜合成社の商品名「ARUFON UH−2041」、樹脂分濃度97%以上、水酸基価120mgKOH/g)と、ポリイソシアネート組成物の各々を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、真空脱泡機を使用して、減圧化、室温で1時間、混合した後、さらに、減圧化、1時間放置した。
調整した塗料組成物をガラス板上に膜厚60μmになるようにローラー塗装した後、23℃/50%RHで硬化させた。特定時間経過後、その塗膜上にコットンボール(直径2.5cm、高さ2.0cmの円柱型)を置き、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とコットンを取り除き、塗膜上に残ったコットン跡を観察した。跡が全く見えなくなった時間が5時間以内であった場合を「A」、5時間超〜7時間以内であった場合を「B」、7時間超〜10時間であった場合を「C」、10時間超であった場合を「D」とした。
【0177】
<耐薬品性評価方法>
無溶剤アクリルポリオール(東亜合成社の商品名「ARUFON UH−2041」、樹脂分濃度97%以上、水酸基価120mgKOH/g)と、ポリイソシアネート組成物の各々を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、真空脱泡機を使用して、減圧化、室温で1時間、混合した後、さらに、減圧化、1時間放置した。
調整した塗料組成物をガラス板上に膜厚60μmになるようにローラー塗装した後、23℃/50%RHで7日間放置した。その後、得られた塗膜に5%水酸化ナトリウム水溶液を1cm程度スポットし、その上にカバーガラスをかぶせ、23℃、湿度50%の状態で24時間放置した。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液をふき取り、塗膜外観を観察した結果、変化が見られない場合を「A」、液の輪郭がうっすらと見られた場合を「B」、液の輪郭がはっきりと見られた場合を「C」、輪郭以外にも一部劣化が見られた場合を「D」とした。
【0178】
<耐ヒールマーク試験評価方法>
無溶剤アクリルポリオール(東亜合成社の商品名「ARUFON UH−2041」、樹脂分濃度97%以上、水酸基価120mgKOH/g)と、ポリイソシアネート組成物の各々を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、真空脱泡機を使用して、減圧化、室温で1時間、混合した後、さらに、減圧化、1時間放置した。
調整した塗料組成物をPタイル上に膜厚100μmになるようにローラー塗装した後、23℃/50%RHで7日間放置した。得られた塗膜を、JIS K3920「フロアーポリッシュ試験方法」に準じて試験を実施した。試験後の塗膜に関し、ほとんど汚れがついていない場合を「A」、若干汚れが付着している場合を「B」、汚れが目立つ場合を「C」とした。
【0179】
(合成例1C) T−1(NTI)の合成
合成例1Bと同様にして、沸点161〜163℃/1.2mmHgの無色透明な4−イソシアネートメチル−1,8−オクタンメチレンジイソシアネート(以下「NTI」という」420gが得られた。このもののNCO含有率50.0重量%であった。
【0180】
(合成例2C) T−2(LTI)の合成
合成例2Bと同様にして、沸点155〜157℃/0.022mmHgの無色透明なLTI80.4gが得られた。このもののNCO含有率は47.1重量%であった。
【0181】
(合成例3C) T−3(GTI)の合成
合成例3Bと同様にして、GTI54gが得られた。NCO含有率は39.8重量%であった。
【0182】
(合成例4C) T−4(HDI系ポリイソシアヌレート体)の合成
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI:1000gを仕込み、60℃で攪拌下、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート:0.1gを加えた。4時間後、反応液の屈折率が1.4680(転化率が38%)になった時点でリン酸0.2gを添加して反応を停止した。
その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーは薄膜蒸留により除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は2700mPa・s、イソシアネート基含有量は22.2質量%、数平均分子量は650、イソシアネート基平均数は3.4であった。その後、NMR測定により、イソシアヌレート結合の存在を確認した。
【0183】
(実施例1C)
T−2とP−1C(Evonik社製、VESTANAT T1890−70E、IPDIのイソシアヌレート体、固形分70%、溶剤:酢酸ブチル)とを樹脂成分の質量比5:5で撹拌下、室温で1Hrかけて混合した。その後、塗料組成物を作成し、塗布、乾燥した後の乾燥性、リコート密着性、耐溶剤性、耐候性、耐タレ性を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0184】
(実施例2C〜4C、比較例1C〜5C)
表4又は表5に記載のトリイソシアネート(A)、ポリイソシアネート(B)を、記載の比率で混合した以外は実施例1Cと同様に実施した。その後、塗料組成物を形成し、塗布、乾燥した後の乾燥性、リコート密着性、耐溶剤性、耐候性、耐タレ性を評価した。得られた結果を表4〜5に示す。表4及び表5中、(T1890−70E)は、Evonik社製、VESTANAT T1890−70E、IPDIのイソシアヌレート体(固形分:70%、溶剤:酢酸ブチル)を表し、(NY215A)は、三井化学ポリウレタン(株)製、マイテックNY215A、IPDI/トリメチロールプロパンウレタン体(固形分:75%、溶剤:酢酸エチル)を表す。
【0185】
【表4】
【0186】
【表5】
【0187】
(実施例5C)
LTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。T−2に代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Cと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Cと同様であった。
【0188】
(実施例6C)
LTI:300gにヘキサデカンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。T−2に代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Cと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Cと同様であった。
【0189】
(合成例5C)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、LTIを20g仕込み、60℃に加熱し、メタノールを7.2g添加し、撹拌しながら4時間保持し、N−置換カルバミン酸エステルC−1を得た。
【0190】
(実施例7C)
LTI:300gにN−置換カルバミン酸エステルC−1を0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。T−2に代えて、このイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例1Cと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Cと同様であった。
【0191】
(実施例8C)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、T−1:300gを仕込み、80℃に加熱した。そこに、ペレット状のP−3を300g添加し、撹拌下、80で2Hrかけて混合し、液状のポリイソシアネート組成物を得た。その後、無溶剤アクリルポリオールとこのポリイソシアネート組成物を真空脱泡機を用いて、混合し、乾燥した後の速乾性、耐薬品性、耐ヒールマーク性を評価した。得られた結果を表6に示す。
【0192】
(実施例9C、比較例6C−7C)
表6に記載のトリイソシアネート(A)、ポリイソシアネート(B)を記載の比率で混合した以外は実施例6と同様に実施した。その後、無溶剤アクリルポリオールとこのポリイソシアネート組成物を真空脱泡機を用いて、混合し、乾燥した後の速乾性、耐薬品性、耐ヒールマーク性を評価した。得られた結果を表6に示す。表6中、(N3400)は、Covestro社製、DesmodurN3400(HDIのウレトジオン体(固形分:100%)を表し、(T1890/100)は、Evonik社製、VESTANAT T1890/100、IPDIのイソシアヌレート体(固形分:100%)を表す。
【0193】
【表6】
【0194】
以上より、各実施例のポリイソシアネート混合物は、乾燥性、リコート密着性、耐溶剤性、耐候性、耐タレ性に優れることが確認された。
【0195】
≪第4の実施形態≫
[測定方法]
<粘度>
第2の実施形態における「<粘度>」と同様にして測定した。
なお、後述する各実施例及び各比較例で作製したポリイソシアネート混合物の不揮発分を以下に記載の方法によって調べ、その値が98質量%以上であったものは、そのまま測定した。
【0196】
<不揮発分>
不揮発分は、ポリイソシアネート混合物を105℃、3時間加熱した場合の残存量から求めた。
不揮発分(質量%)=(105℃、3時間加熱後のポリイソシアネート混合物の質量)/(加熱前のポリイソシアネート混合物の質量)×100
【0197】
<数平均分子量>
第2の実施形態における「<数平均分子量>」と同様にして測定した。
【0198】
<NCO含有率>
NCO含有率(質量%)は、測定試料中のイソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。なお、後述する実施例及び比較例で作製したポリイソシアネート混合物の不揮発分を上述した方法によって調べ、その値が98質量%以上であったものは、そのまま測定した。
【0199】
<イミノオキサジアジンジオン構造、ウレトジオン構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ウレタン構造、ビュレット構造のモル比率定量方法>
Bruker社製Biospin Avance600(商品名)を用いた、13C−NMRの測定により、イミノオキサジアジンジオン構造、ウレトジオン構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ウレタン構造、ビュレット構造、のモル比率を求めた。
具体的な測定条件は以下の通りであった。
13C−NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製)
Cryo Probe
CPDUL
600S3−C/H−D−05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
シフト基準:CDCl(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除し、その値から各モル比を求めた。
ウレトジオン構造:157.5ppm付近:積分値÷2
イミノオキサジアジンジオン構造:137.3ppm付近:積分値÷1
イソシアヌレート構造:148.6ppm付近:積分値÷3
ウレトジオン構造:157.5ppm付近:積分値÷2
アロファネート構造:154ppm付近:積分値÷1
ウレタン構造:156.3ppm付近:積分値÷1−アロファネート構造積分値
ビュレット構造:155.8ppm付近:積分値÷2
【0200】
<低粘度化度>
ポリイソシアネート混合物の粘度測定結果から、100mPa・s/25℃未満の場合をA、100mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満の場合をB、300mPa・s/25℃以上の場合をCとした。
【0201】
<乾燥性評価方法>
アクリルポリオール(Nuplex Resin社の商品名「SETALUX1753」、樹脂分濃度70%、水酸基価138.6mgKOH/g)と、ポリイソシアネート混合物の各々を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、酢酸ブチルで固形分50質量%になるように調整した。調整した塗料組成物をガラス板上に膜厚40μmになるように塗装した後、23℃/50%RHで硬化させた。特定時間経過後、その塗膜上にコットンボール(直径2.5cm、高さ2.0cmの円柱型)を置き、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とコットンを取り除き、塗膜上に残ったコットン跡を観察した。跡が全く見えなくなった時間が8時間以内であった場合をA、8時間超〜10時間以内であった場合をB、10時間超であった場合をCとした。
【0202】
<下地隠ぺい性評価方法>
アクリルポリオールであるDIC社製アクリディック(登録商標)A−801−P(樹脂分濃度50%、水酸基価50.0mgKOH/樹脂g)と、ポリイソシアネート混合物の各々を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、酢酸ブチルで固形分50%になるように調整後、株式会社スタンダートテストピース社のカチオン電着塗装板(黒色)上に、溶媒の加減によって樹脂固形分を50%に調整した以外は実施例、比較例と同様の組成を有する硬化性組成物を、樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーターによって塗布した。塗布後、室温で30分静置した後、120℃のオーブン内に30分静置した。その後、冷却して、塗膜が23℃になったことを確認した後に、下記装置を用いて下記条件により算術平均粗さRa値を測定した。このRa値が小さいほど、下地隠ぺい性が良好であることを示す。
測定装置:Zygo社製の走査型白色干渉顕微鏡、商品名「NewView600s」
倍率 :2.5倍
測定方法:Ra値を測定(センターラインからの算術偏差)
Ra値が0.025μm以下である場合は、下地隠ぺい性が良好であると判断して「A」と表し、0.025μm超0.04μm以下である場合は、下地隠ぺい性がほぼ良好であると判断して「B」と表し、0.04μm超である場合は、下地隠ぺい性が不良であると判断して「C」と表した。
【0203】
<下地塗膜への密着性評価方法>
軟鋼鈑にアクリルポリオール(樹脂固形分濃度55%,水酸基価30mgKOH/樹脂g)を樹脂膜厚40マイクロメーターになるように塗装し、室温30分放置後、アクリルポリオール(Nuplex Resin社の製品名、Setalux1903、樹脂固形分濃度75%、水酸基価150mgKOH/樹脂g)とポリイソシアネート混合物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1:1になるように配合後、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した塗料組成物を樹脂膜厚30マイクロメーターになるように塗装した。室温で15分放置後、120℃のオーブン内に30分硬化させた。この塗膜の密着性試験をJIS K5600−5−6に準じて行った。剥離塗膜無しをA、カット部に一部浮きありを○、半分以下だが剥離ありを△、半分以上剥離塗膜ありを×として示した。
【0204】
(合成例1D) T−1(NTI)の合成
合成例1Bと同様にして、沸点161〜163℃/1.2mmHgの無色透明な4−イソシアネートメチル−1,8−オクタンメチレンジイソシアネート(以下「NTI」という」420gが得られた。このもののNCO含有率50.0重量%であった。
【0205】
(合成例2D) T−2(LTI)の合成
合成例2Bと同様にして、沸点155〜157℃/0.022mmHgの無色透明なLTI80.4gが得られた。このもののNCO含有率は47.1重量%であった。
【0206】
(合成例3D) T−3(GTI)の合成
合成例3Bと同様にして、GTI54gが得られた。NCO含有率は39.8重量%であった。
【0207】
(合成例4D) P−1Dの合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 600g、イソブタノール0.6gを仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2Hr保持した。その後、イソシアヌレート化触媒トリメチル−2−メチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドを加え、イソシアヌレート化反応を行い、NCO含有率が44.7%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液を更に160℃、1Hr保持した。反応液を冷却後、ろ過後、薄膜蒸発缶にフィードし、未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートP−1を得た。得られたポリイソシアネートP−1Dの粘度は620mPa・s/25℃、ウレトジオン構造+イミノオキサジアジンジオン構造比率は0.22、ウレトジオン2量体は12質量%であった。
【0208】
(合成例5D) P−2Dの合成
先行文献(特許第4152026号公報)に記載の装置を用いて、以下の方法で合成した。第1反応器4に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート1000重量部、反応溶剤として酢酸メチルセロソルブと燐酸トリメチルの等重量混合溶媒500重量部よりなる原料液を1時間当たり1000重量部の速度で連続的に供給した。
一方、水を1時間当たり10.7重量部の割合で第1反応器に対して連続的に供給した。第1反応器4、第2反応器7及び第3反応器(リアクター)9,10及び11の温度は、夫々120℃、150℃、160℃になるように調整した。
この様にして得られた反応液(溶存ガス量0.25nml/ml)を掻き取り式蒸発缶と同じ真空度(5mmHg)に設定された脱気装置の上部気相部にフィードし、下部液相部から得た反応液を薄膜蒸発缶にフィードし、未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートP−2Dを得た。
得られたポリイソシアネートP−2Dの粘度1700mPa・s/25℃、ウレトジオン構造+イミノオキサジアジンジオン構造比率は0.14、ウレトジオン2量体は8質量%であった。
【0209】
(合成例6D) P−3Dの合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 600g、1,3ブタンジオール 21gを仕込み、その後昇温させ、撹拌下反応器内温度を160℃、1Hr保持した。反応液を冷却後、薄膜蒸発缶にフィードし、未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートP−3を得た。得られたポリイソシアネートP−3Dの粘度は650mPa・s/25℃、ウレトジオン構造+イミノオキサジアジンジオン構造比率は0.28、ウレトジオン2量体は16質量%であった。
【0210】
(実施例1D)
T−2(LTI)とP−1Dを質量比5:5で撹拌下、室温で1Hrかけて混合した。得られたポリイソシアネート混合物の粘度は90mPa・s/25℃、ウレトジオン2量体は6.0質量%であった。その後、塗料組成物を形成し、塗布、乾燥した後の乾燥性、下地隠ぺい性、下地密着性を評価した。得られた結果を表7に示す。
【0211】
(実施例2D〜8D、比較例1D〜6D)
表7又は表8に記載のトリイソシアネート(A)、ポリイソシアネート(B)を記載の比率で混合した以外は実施例1と同様に実施した。また、得られたポリイソシアネート混合物の粘度、ウレトジオン2量体質量%は表7又は表8に記載した。その後、塗料組成物を形成し、塗布、乾燥した後の乾燥性、下地隠ぺい性、下地密着性を評価した。得られた結果を表7又は表8に示す。
【0212】
【表7】
【0213】
【表8】
【0214】
表7〜8中、「TPA−100」、「TSA−100」はそれぞれ下記の材料を意味する。
TPA−100: HDI系イソシアヌレート型ポリイソシアネート「デュラネートTPA−100」(商品名、旭化成株式会社製、粘度:1350mPa・s/25℃)
TSA−100: HDI系ウレタン変成イソシアヌレート型ポリイソシアネート「デュラネートTSA−100」(商品名、旭化成株式会社製、粘度:550mPa・s/25℃)
【0215】
(実施例9D)
LTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これをT−2の代わりに用いて実施例1Dと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Dと同様であった。
【0216】
(実施例10D)
LTI:300gにヘキサデカンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これを用いて実施例1Dと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Dと同様であった。
【0217】
(合成例7D)C−1の合成
合成例5Cと同様にして、N−置換カルバミン酸エステルC−1を得た。
【0218】
(実施例11D)
LTI:300gにN−置換カルバミン酸エステルC−1を0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これをT−2の代わりに用いて実施例1Dと同様の操作によりポリイソシアネート混合物を得た。
このポリイソシアネート混合物の各評価結果は実施例1Dと同様であった。
【0219】
以上より、本発明を適用した各実施例のポリイソシアネート混合物は、低粘度であり、かつ、乾燥性、下地隠ぺい性、下地塗膜との密着性等の塗膜物性に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明のポリイソシアネート混合物を硬化剤として用いた塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として利用することができる。さらには、鋼板、表面処理鋼板等の金属、及びプラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材へのプライマーや上中塗り塗料として用いることができる。さらには、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装等に耐熱性、美粧性(表面平滑性、鮮鋭性)等を付与する塗料としても有用である。またさらに、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。