(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905586
(24)【登録日】2021年6月29日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】嫌気性浄化装置用の脱ガス装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20060101AFI20210708BHJP
B04C 5/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
C02F3/28 A
B04C5/02
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-512257(P2019-512257)
(86)(22)【出願日】2017年9月4日
(65)【公表番号】特表2019-529082(P2019-529082A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017072123
(87)【国際公開番号】WO2018042039
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年4月23日
(31)【優先権主張番号】16187135.5
(32)【優先日】2016年9月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518004266
【氏名又は名称】パクエス イー.ペー. ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ブル, イェレ ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリンヒャ, アントーニウス ベルナルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】フロート コルメリンク, フェロニカ ヘンリカ ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ハベツ, レオナルト ヒューベルテュス アルフォンスス
(72)【発明者】
【氏名】フォイェラール, ヤーコプ コルネリス テオドルス
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0319935(US,A1)
【文献】
米国特許第04053291(US,A)
【文献】
特開2012−250159(JP,A)
【文献】
特表平07−507233(JP,A)
【文献】
特表2002−510551(JP,A)
【文献】
特表2012−525967(JP,A)
【文献】
特開昭61−071896(JP,A)
【文献】
特表2008−543534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28
B04C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水の浄化のための嫌気性浄化装置用のガス液分離装置(30)であって、
前記嫌気性浄化装置と組み立てられた場合に垂直配向を有するガス液ライザーパイプ(32)と、
前記ガス液ライザーパイプ(32)に取り付けられ、前記ガス液ライザーパイプに対して垂直な面と−45度〜+45度の角度を画定し、動作時に、前記ガス液ライザーパイプ(32)から流体を受けるように構成された分離パイプ(34)と、
嫌気性浄化装置と組み立てられた場合に、接地面と反対方向にかつ該嫌気性浄化装置の上側に向かって配向されるように分離パイプに沿った面に配置され、動作時に、前記分離パイプ(34)内のガスの少なくとも一部が上昇することによって自然に前記ガス液分離装置から出るように、該ガスの少なくとも一部を前記ガス液分離装置の外部に導くように構成された少なくとも1つのパイプガス排出口(35)と、
前記分離パイプ(34)に取り付けられ、動作時に、前記分離パイプから流体を受けるように構成された液体サイクロン(36)と、
動作時に、前記液体サイクロン(36)に進入するガスを前記液体サイクロンの外部に導くように構成された少なくとも1つのサイクロンガス排出口(37)と、
動作時に、脱ガス済みの流体を前記液体サイクロンの外部に導くように構成された1つの液体排出口(38)とを備えたガス液分離装置。
【請求項2】
前記分離パイプ(34)が、複数の前記パイプガス排出口(35)を備えている請求項1に記載のガス液分離装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのパイプガス排出口(35)が、100ミリメートルから400ミリメートルの間の直径を有する、請求項1または2に記載のガス液分離装置。
【請求項4】
前記分離パイプ(34)の直径が、前記ガス液ライザーパイプ(32)の直径以上である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のガス液分離装置。
【請求項5】
前記液体サイクロン(36)の直径が、前記分離パイプ(34)の直径以上である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のガス液分離装置。
【請求項6】
ポリプロピレンであるプラスチック材料から製造されている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガス液分離装置。
【請求項7】
複数のガス液ライザーパイプ(32)と複数の分離パイプ(34)とを備え、各ガス液ライザーパイプ(32)が各分離パイプ(34)に接続され、前記複数の分離パイプ(34)が前記液体サイクロン(36)に接続されている請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガス液分離装置。
【請求項8】
(a)反応槽(10)と、
(b)前記反応槽(10)の上部に配置された流体回収部(18)と、
(c)動作時に、前記反応槽(10)に収容された流体からガスを回収するための、前記流体回収部(18)の下のレベルに配置された少なくとも1つのガス回収システム(14)と、
(d)請求項1ないし7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのガス液分離装置(30)と、
(e)少なくとも1つのガス回収システム(14)に接続され、前記少なくとも1つのガス液分離装置(30)のガス液ライザーパイプ(32)に排出する少なくとも1つのライザーパイプ(22)と、
(f)前記少なくとも1つのガス液分離装置(30)の液体排出口(38)に接続され、前記反応槽(10)の底に排出するダウナーパイプ(24)と、
を備えた嫌気性浄化装置。
【請求項9】
前記反応槽(10)が少なくとも2つのガス回収システムを備え、そのうち少なくとも1つの回収システム(14)が下部ガス回収システムとされ、上部ガス回収システム(16)が前記流体回収部(18)と前記下部ガス回収システム(14)との間に配置されている、請求項8に記載の嫌気性浄化装置。
【請求項10】
前記ライザーパイプ(22)が、前記反応槽(10)内に収容された液体を、前記少なくとも1つのガス回収システム(14)内に回収されたガスによって引き起こされたガス引き上げ動作によって引き上げるように構成されている、請求項8または9に記載の嫌気性浄化装置。
【請求項11】
前記ダウナーパイプ(24)が、前記少なくとも1つのガス液分離装置(30)からの液体を前記反応槽(10)の底部に戻すように構成されている請求項8ないし10のいずれか一項に記載の嫌気性浄化装置。
【請求項12】
前記ガス液分離装置(30)の前記液体サイクロン(36)の前記液体排出口(38)が前記ダウナーパイプ(24)に接続され、前記液体排出口が、前記ガス液分離装置からの液体を前記嫌気性浄化装置の前記反応槽(10)の底部に案内するように構成されている、請求項11に記載の嫌気性浄化装置。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか一項に記載の嫌気性浄化装置を用いて排水などの流体を浄化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性浄化装置用の脱ガス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水などの流体の浄化用の嫌気性浄化装置は従来技術から知られている。特許文献1は、有機物を含有する排水が、溶存有機物が嫌気性条件下で分解される処理を受ける嫌気性浄化装置を開示している。流体は浄化装置の反応槽に進入する。溶存物を含む流体が、反応槽内に位置するバイオマスと接触すると、ガスが、より具体的にはバイオガスが発生する。流体の循環サイクルが作られ、そのサイクルで流体は、生じたガスとともにライザーパイプを通って上に押し上げられ、反応器の上に位置する脱ガス装置に達し、そこでガスは流体から分離され、ガスは装置から出るが、流体はサイクルで再び使用されるために反応器の底部へとダウナーパイプ内を下方に流れる。
【0003】
脱ガス装置において効率良い脱ガスが行なわれることが重要である。ガスがシステムから効率良く放出されないと、ダウナーパイプ内を反応器の底部に向けて下方に流れる流体は依然としてガスを含有し、それはダウナーパイプ内を上昇する傾向となり、流体の流れに変動を引き起こし、大きな衝撃につながる。これらの衝撃は装置に物理的な損害を引き起こし得る。
【0004】
特許文献1または特許文献2のような、当技術分野で知られる脱ガス装置はいくつかの欠点を有する:それらは大型であり、そのため、ステンレス鋼から構築される。それらはさらに、複雑な形状を有し、槽の頂部に構築され気候条件に耐える必要がある。結果として、それらは高い製造および組み立てコストを要する。
【0005】
特許文献3は、ガス油混合物が取入管から分離筒に導入されるガス油分離器を開示しており、取入管の前に、混合物は、側壁に穴を有するエントランス管を通ることができる。
【0006】
特許文献4は、スラッジの混合物、水およびガスを分離するための、装置の上部に配置された分離器を備え、分離器がサイクロンを備えている、水の嫌気性浄化装置を開示している。
【0007】
したがって、脱ガス装置が単純な構造を有し、同時にシステムからのガスの効率良い放出を可能にする、嫌気性浄化装置用の脱ガス装置があることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第170332号明細書
【特許文献2】欧州特許第1888471号明細書
【特許文献3】米国特許第4053291号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/319935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記に言及した不都合のうち少なくとも1つを克服することを目指した新規の脱ガス装置を提供することである。本発明では、ガスがいくつかの経路を通って反応器から出ることが可能になるとともに、脱ガス装置の形状が効率良い流体の流れを可能にするため、優れた脱ガス特性を有する脱ガス装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明を通して、水、より詳細には排水の例が開示される。しかしながら、任意の他の適切な流体も用いられ得る。
【0011】
本発明は、排水の浄化用の嫌気性浄化装置のためのガス液分離装置を提供し、ガス液分離装置は、
ガス液ライザーパイプと、
ガス液ライザーパイプに取り付けられ、ガス液ライザーパイプに対して垂直な平面と−45度〜+45度の角度を画定し、動作時に、ガス液ライザーパイプから流体を受けるように構成された分離パイプと、
嫌気性浄化装置と組み立てられた場合に、接地面と反対方向に、分離パイプに沿った面に配置されて、動作時に、分離パイプ内のガスの少なくとも一部をガス液分離装置の外部に導くように構成された少なくとも1つのパイプガス排出口と、
分離パイプに取り付けられ、動作時に、分離パイプから流体を受けるように構成された液体サイクロンと、
動作時に、液体サイクロンに進入するガスを液体サイクロンの外部に導くように構成された少なくとも1つのサイクロンガス排出口と、
動作時に、脱ガス済みの流体を液体サイクロンの外部に導くように構成された1つの液体排出口を備えている。
【0012】
少なくとも1つのサイクロンガス排出口は液体サイクロンの上部側に配置されてよい。液体排出口は液体サイクロンの底部に取り付けられてよい。
【0013】
本発明は、流体の流れと、流体からのガスの分離とを促進する脱ガス装置の設計を有利に提供する。分離パイプがガス液に接続される角度が、流体の引き上げと流れの変動を確定する。角度は、流体汚染物質濃度によってケースバイケースで変更でき、−45度〜+45度の許容範囲を有する。
【0014】
本発明の一実施形態は、嫌気性浄化装置と組み立てられたときに、嫌気性浄化装置と反対方向を向く分離パイプの面に少なくとも1つのパイプガス排出口が配置されたガス液分離装置を提供する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、分離パイプが、複数の、好ましくは2〜10箇所の、より好ましくは少なくとも3箇所の、さらに好ましくは4〜6または5箇所の、さらに好ましくは3〜6箇所のパイプガス排出口を備えているガス液分離装置を提供する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、ガスが流体とともに分離パイプを通って流れるにつれガスが脱ガスパイプから排出され得るように、複数の排出口が分離パイプの表面上に配置されている。分離パイプ中に存在する排出口の数は、1以上、好ましくは2以上、好ましくは5以上であってよい。
【0017】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのパイプガス排出口が、10ミリメートルから150ミリメートルの間、より好ましくは50ミリメートルから150ミリメートルの間の直径を有するガス液分離装置を提供する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのパイプガス排出口が、100ミリメートルから400ミリメートルの間、より好ましくは150ミリメートルから300ミリメートルの間の直径を有するガス液分離装置を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態は、ガス液ライザーパイプが、嫌気性浄化装置と組み立てられた場合に垂直な配向を有するガス液分離装置を提供する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、分離パイプの直径がライザーパイプの直径以上であるガス液分離装置を提供する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、液体サイクロンの直径が分離パイプの直径以上であるガス液分離装置を提供する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、プラスチック材料、好ましくはポリプロピレンで製造されたガス液分離装置を提供する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、複数のライザーパイプと複数の分離パイプを備え、各ライザーパイプが各分離パイプに接続され、複数の分離パイプが液体サイクロンに接続されているガス液分離装置を提供する。
【0024】
本発明の有利な実施形態は、ガス液分離装置に達するガスと流体の量を増加させ、脱ガス操作を最適化するために複数のライザーパイプと分離パイプを提供する。
【0025】
本発明はさらに、
−反応槽と、
−反応槽の上部に配置された流体回収部と、
−動作時に、反応槽に収容された流体からガスを回収するための、流体回収部の下のレベルに配置された少なくとも1つのガス回収システムと、
−上記請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つのガス液分離装置と、
−少なくとも1つのガス回収システムに接続され、少なくとも1つのガス液分離装置に排出する少なくとも1つのライザーパイプと、
−少なくとも1つのガス液分離装置に接続され、反応槽の底に排出する1つのダウナーパイプと、を備えた嫌気性浄化装置を提供する。
【0026】
本発明のさらなる実施形態は、反応槽が少なくとも2つのガス回収システムを備えている嫌気性浄化装置を提供し、そのうち少なくとも1つの回収システムは下部ガス回収システムであり、上部ガス回収システムは、液体回収部と下部ガス回収システムの間に配置され、槽内に収容された液体からガスを除去するように構成される。
【0027】
本発明のさらなる実施形態は、ライザーパイプが、反応槽内に収容された液体を、少なくとも1つのガス回収システム内に回収されたガスによって引き起こされたガス引き上げ動作によって引き上げるように構成されている嫌気性浄化装置を提供する。
【0028】
本発明のさらなる実施形態は、ダウナーパイプが、ガス液分離装置からの液体を反応槽の底部に戻すように構成された嫌気性浄化装置を提供する。
【0029】
本発明のさらなる実施形態は、ガス液分離装置の液体サイクロンの液体排出口がダウナーパイプに接続され、液体排出口が、ガス液分離装置からの液体を反応槽の底部に案内するように構成された嫌気性浄化装置を提供する。
【0030】
本発明のさらなる実施形態は、複数のガス液分離装置を備えた嫌気性浄化装置を提供する。
【0031】
本発明はさらに、嫌気性浄化装置を用いた排水などの流体の浄化の方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
添付の図面シートにおいて、
【
図1】本発明の一実施形態によるガス液分離装置を備えた嫌気性浄化装置の模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるガス液分離装置を備えた嫌気性浄化装置の上部の図である。
【
図3】本発明の一実施形態による嫌気性浄化装置内のガス液分離装置の上面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態によるガス液分離装置を備えた嫌気性浄化装置の上部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の一実施形態によるガス液分離装置を備えた嫌気性浄化装置を模式的に示す。
【0034】
図1の嫌気性浄化装置は3つの部分:反応槽10、移送システム20およびガス液分離装置30を備える。反応槽は、例えば排水である浄化対象の流体が、動作条件下でそこを介して嫌気性浄化装置に流入する流体取入口12を備えている。この流体は、特定レベルのCOD(化学的酸素要求量として測定された溶解性有機炭素)、言い換えると特定量の不純物を有する有機物を含む。不純物は、反応槽内部のバイオマスを通過するにつれバイオガスに変換される。槽の上部において、流体回収部18は浄化済みの流体を回収してそれを嫌気性浄化装置の外に導く。
【0035】
流体が流体取入口12から槽10に流入すると、流体に溶解している不純物が槽内に存在するバイオマスと接触してバイオガスが生成される。流体は上昇の途上で、ガスが保持される複数のフードをそれぞれが備えた複数のガス回収システムを横切る。
【0036】
本明細書を通して、ガスとバイオガスは互換的に用いられ得るが、それは、ガスに言及するとき、それは、バイオマスが、流体と溶解した不純物に接触するときに生成されるガスであるからである。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、下部ガス回収システム14は、反応槽内を通って上昇する流体に含まれたガスを回収し、下部ガス回収システム14は保持されたガスを移送システム20に案内する。より具体的には、下部ガス回収システム14はガスをライザーパイプ22に案内し、ライザーパイプ22を介してガスは、ガス液分離装置30に達するまで上昇する。このガスは流体を含んでおり、ガス液分離装置30内でガスと流体が分離され、ガスは放出され、流体はダウナーパイプ24を介して反応槽10の底部に戻される。この流体はこうして再生されて浄化サイクル内で再利用され得る。
【0038】
反応槽10を通って上昇し続ける流体は次に上部ガス回収システム16に達する。ここで、下部ガス回収システム14で回収されなかったガスが回収され、反応器の上部に配置されたガスヘッドスペース40に導かれる。浄化済みの流体が、反応槽10の上部に達し、流体回収部11を介して槽から出て、ガスヘッドスペース40まで上昇したガスはシステムガス排出口39を介して槽から出る。
【0039】
移送システムのライザーパイプ22はガス液分離装置のガス液ライザーパイプ32で終結する。両パイプは同じパイプであってもよく、したがって、ライザーパイプとガス液ライザーパイプ32は本明細書中で互換的に用いられる。
【0040】
ライザーパイプ32は分離パイプ34に接続されている。ライザーパイプ32と分離パイプ34は、本発明の一実施形態によれば−45度〜+45度の範囲であり得る角度αを形成する。角度αは−45度〜+30度の範囲であってもよい。前記角度αは、
図2を参照して詳述するように、分離パイプ34と、ライザーパイプ32の方向に対して垂直な平面との間の角度として定義される。流体の汚染物濃度によっては、ライザーパイプ32と分離パイプ34との間に異なる角度を持たせることが望ましくあり得る。
【0041】
ライザーパイプ32は、嫌気性浄化装置と組み立てられた場合に、垂直な配向、または実質的に垂直な配向で配置されてよい。
【0042】
少なくとも1つのパイプガス排出口35は、分離パイプ34の表面に沿って、より具体的には、ガス液分離装置が嫌気性浄化装置に取り付けられたときに浄化装置と反対方向を向く分離パイプの表面に沿って配置されている。好ましくは、本発明の実施形態は、2〜10個などの複数のパイプガス排出口35を含む。より小径でより多数のパイプガス排出口か、より大径でより少数のパイプガス排出口が選択され得るように、パイプガス排出口に異なる直径が用いられてよい。パイプガス排出口の分量は変動してよく、ケースバイケースで選択されてよいことを理解されたい。ガス液分離装置が、大量のガスが生成されアプリケーションで用いられることになっている場合、分離パイプ34を通過するにつれてより大量のガスが放出され得るために、より多数のパイプガス排出口35が望ましくあり得る。
【0043】
分離パイプ34は、パイプガス排出口35を通って分離パイプから出なかった液体とガスが、最後の脱ガスステップのために液体サイクロン36に進入するように、液体サイクロン36に接続される。当技術分野で知られるように、液体サイクロン36は、動作時に、粒子を、高密度粒子では高く、軽粒子では低い向心力に基づいて分離するように構成される。流体とガスの混合物がサイクロン36に進入すると、より低い密度を有するガスは、サイクロンの上部に配置されたサイクロンガス排出口37を介してサイクロンから出てゆき、流体はサイクロンの下部に配置された液体排出口38を介してサイクロンから出る。この排出口はダウナーパイプ24の取入口であり、脱ガス済みの流体は取入口を介して下方に流れて槽10の底部に達し、再循環システム内で再利用される準備が整う。
【0044】
本発明実施形態による反応槽は、流体の浄化が嫌気状態で行なわれ得るように完全に密封された閉鎖空間であり、反応器内部に位置するガスは特定の圧力下にある。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、ガス液分離装置30と反応槽10は同じ閉鎖された構造または反応器内で組み立てられ、ガス液分離装置30は反応槽10の上に配置されている。ガス液分離装置30と反応槽10を覆う反応器の上部に、ガスヘッドスペース40とシステムガス排出口39が配置されている。パイプガス排出口35とサイクロンガス 排出口37を介してガス液分離装置30から出るガスは、ガスヘッドスペース40まで上昇して、そこからシステムガス排出口39を介してシステムから出る。
図1に示した実施形態において、システムガス排出口は閉構造のルーフの中央領域に配置されるが、本発明はそれに限定されず、システムガス排出口は、ガスがシステムから自然に流出することを可能にする閉構造の上部の任意の位置に配置されてよい。
【0046】
ガス液分離装置30が外部環境から隔離されているという事実は、大気条件に耐える必要がないため、ガス液分離装置30がプラスチックまたは任意の他の同等な適切な材料で製造されることを可能にして製造コストを下げる。
【0047】
図1に示した実施形態においてガス液分離装置30は反応器10の上に配置されているが、本発明の実施形態により、ガス液分離装置30は、装置が取り付けられることになっている場所の空間と特性によって異なる位置に配置されることが可能である。別の実施形態として、ガス液分離装置は閉構造の外部に、より具体的には反応器の隣に配置されてもよく、パイプガス排出口35およびサイクロンガス排出口37を介して出るガスは、システムガス排出口39を介してシステムから出られるように、ガスヘッドスペース40への付加的なパイプを通って導かれてよい。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態によるガス液分離装置を備えた嫌気性浄化装置の上部を示す。
【0049】
図2において、ライザーパイプ32は、嫌気性浄化装置内に取り付けられたときに垂直な配向を有する。ライザーパイプは別の配向を有してもよいが、配向が垂直に近いほど、パイプの壁によって妨げられずにガスの自然な経路を辿ることができるため、流体とガスはライザーパイプ内をより円滑に上昇可能となる。
【0050】
ライザーパイプ32に対して垂直な平面と分離パイプ34の間に形成された角度αが示されている。この角度は、−45度〜+45度の範囲から選択されてよい。こうして、αが0度であった場合、分離パイプはライザーパイプに対して垂直に配向しているということを意味する。αが−45度であった場合、ライザーパイプと分離パイプは45度の角度をなすということを意味し、αが+45度であった場合、ライザーパイプと分離パイプは135度の角度をなすということを意味する。本発明の実施形態によるαの計算は、1つの実施のオプションであるが、別の基準システムも用いられてよいことを理解されたい。
【0051】
分離パイプの傾斜角は、反応漕内の流体レベルとともに、流体引き上げと流れの変動を確定する。角度αが−45度から乖離するほど、分離パイプ内で流体の流れが有するエネルギーが小さくなり、したがって、液体サイクロンに進入するときのエネルギーがより低くなる。
【0052】
ライザーパイプ32の直径d1は好ましくは分離パイプ34の直径d2よりも小さい。こうして、流体とガスの両方がライザーパイプを通って上昇するが、それらが分離パイプに流入すると、混合物はパイプの上面には到達せず、そのためガスのみがパイプガス排出口35を通って分離パイプから出てゆき、他方で流体は分離パイプから出ずに流れ続けて液体サイクロン36に達する。
【0053】
液体サイクロン36の直径d3は好ましくは分離パイプ34の直径d2よりも大きい。
【0054】
図3は、本発明の一実施形態による嫌気性浄化装置内の、ガス液分離装置を覆う閉構造のルーフを含まないガス液分離装置の上面図を示す。
【0055】
図3で見られるように、パイプガス排出口35とサイクロンガス排出口37はそれぞれ分離パイプ34とサイクロン36の表面に配置されており、浄化装置と反対方向を向いて、つまり、接地面と反対方向を向いており、それはガスが上昇することによって自然に装置から出るために便利な位置である。
【0056】
図3の斜視図から、分離パイプ34が液体サイクロン36に中心から外れた位置で接続されていることが見て取れる。これは、液体サイクロン36内に必要な回転を得るために必要である。
【0057】
図4は、本発明の別の一実施形態によるガス液分離装置を備えた嫌気性浄化装置の上部を示す。
【0058】
本発明のこの有利な実施形態において、反応槽10内の液体レベルは所定範囲内で効率良く変えられてよい。これは、所定範囲の下境界の下に、反応槽10の上部に配置された付加的な流体排出口15によって達成され得る。この流体排出口15は、反応槽10の上部に達する流体が装置から出ることを可能にしてよい。流体排出口を介して装置から出てよい流体の量は、流体レベル制御手段によって制御されてよい。流体排出口15を介した液体の流れを、例えば、ガス生成測定および/または流体レベル測定に基づいて弁を制御することによって制御することで、反応器内の流体レベルが制御され得る。流体レベルを制御することによって、ガス分離装置30内の流体と流体レベルでの圧力との相対圧力が制御され得る。するとこれは、液体とガスの混合物がライザーパイプ32を通って上昇する速度に影響を与える。出願者は、ガス生成が比較的高い場合、ガス成分が豊富な流体が、望ましくない変動なしにガス液分離装置に達するために十分に長い経路を通過できるように、流体レベルを減少させることが推奨されることを見出した。他方で、ガス生成が比較的低い場合、ガスと液体がライザーパイプ32を通って分離パイプ34のほうに辿らなければならない経路を縮小するために、流体レベルが増加されてよい。
【0059】
本発明の実施形態によるガス液分離装置は、従来技術のガス液分離装置より小型のサイズと、より単純な形状を有する。さらに、装置が外部環境から隔離されているという事実は、ポリプロピレンなどのプラスチックから装置が構築されることを可能にし、結果としてより低い製造コストと、外部位置に配置された場合に気象条件に対する改良された耐性をもたらす。
【0060】
本発明のガス液分離装置の特定の設計は、分離パイプ34内を流れる流体のエネルギーが、角度α、分離パイプの直径および分離パイプの長さの値を確定することによって制御されることを可能にする。
【0061】
分離パイプ34内の流体の力の粗調整は、上述のパラメータの調節で達成される。微調整は、システム内で生成されるガスの量に基づいて、流体のより高いまたはより低いレベルが維持されるように反応槽内の流体レベルを変動させることによって達成でき、したがって、ガス液分離装置に達するガスと流体が、乱流を生じさせる大きすぎる力でガス液分離装置に達して、または流体に十分なエネルギーを与えない少な過ぎる力でガス液分離装置に達して次に反応器の底に流下することが回避される。
【0062】
本発明のさらなる実施形態によれば、添付の図面に開示されてはいないが、ガス液分離装置は、下部ガス回収システムに保持されたガスと流体用に2以上の循環経路が形成されるように、2以上のガス液ライザーパイプ32と2以上の分離パイプ34を備えてよい。本発明の一実施形態によれば、1つの液体サイクロン36にそれぞれ複数の分離パイプ34が接続されてよい。本発明の別の好ましい実施形態によれば、多数の分離パイプ34がすべて1つの同じ液体サイクロン36に接続されてよい。嫌気性浄化装置に最も適したガス液ライザーパイプ32および分離パイプ34の分量は、浄化装置内で浄化されることになっている流体の量に依存して選択されてよい。
【0063】
上記の図の説明において、本発明を、その特定の実施形態を参照して説明してきた。しかしながら、添付の特許請求の範囲に要約される本発明の範囲から逸脱せずに、実施形態に種々の変形および変更がなされてよいことも明白である。
【0064】
特に、本発明の種々の態様の特定の特徴の組み合わせがなされてよい。本発明の態様はさらに、本発明の別の態様に関連して説明された特徴を追加することによってさらに有利に増強され得る。
【0065】
本発明は添付の特許請求の範囲およびその技術的等価物によってのみ限定されることを理解されたい。本明細書およびその請求の範囲において、動詞「備える」およびその活用形は、「備える」の後のアイテムが含まれることを非限定的な意味合いで意味し、特に言及されていないアイテムを除外するわけではない。さらに、不定冠詞「1つの((a)または(an))」による1つの要素への言及は、その要素が1つであり唯一であるということを文脈が明白に要求しない限り、2つ以上のその要素が存在するという可能性を除外するものではない。よって、不定冠詞「1つの((a)または(an))」は、通常「少なくとも1つの」を意味する。
【符号の説明】
【0066】
類似した要素を示すために説明において使用されてきた類似した参照符号(百の位のみが異なる)は以下のリストからは省略されているが、暗示的に含まれると見なされるべきである。
10 反応槽
11 流体回収装置
12 流体取入口
14 下部ガス回収システム
15 流体排出口
16 上部ガス回収システム
18 流体回収部
19 流体レベル
20 移送システム
22 ライザーパイプ
24 ダウナーパイプ
25 ダウナーパイプ排出口
30 ガス液分離装置
32 ガス液ライザーパイプ
34 分離パイプ
35 パイプガス排出口
36 液体サイクロン
37 サイクロンガス排出口
38 液体排出口
39 システムガス排出口
40 ガスヘッドスペース
α 傾斜角
d1 ライザーパイプ直径
d2 分離パイプ直径
d3 液体サイクロン直径