特許第6905855号(P6905855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905855
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】着座具
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/00 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   A47C27/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-92197(P2017-92197)
(22)【出願日】2017年5月8日
(65)【公開番号】特開2018-187101(P2018-187101A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−060626(JP,A)
【文献】 特開平09−248233(JP,A)
【文献】 特開2015−077192(JP,A)
【文献】 特開2014−124446(JP,A)
【文献】 米国特許第04780921(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0198961(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00,27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する着座具であり、
中空で可撓性を有する本体部を有し、
前記本体部が、後上がりに傾斜する着座面と、
前記本体部の後部に設けられ、上方に隆起する隆起部と、
を備えており、
前記隆起部は幅方向における中央部に窪み部が形成されている着座具。
【請求項2】
前記隆起部が中空であり、
前記本体部及び前記隆起部の内部に、流体が密閉されている請求項1に記載の着座具。
【請求項3】
前記本体部が、底面と前記着座面との相対的な位置ずれを規制する規制手段を有している請求項1または請求項2に記載の着座具。
【請求項4】
前記規制手段が、
前記着座面の外周縁と前記底面の外周縁とを連結する周面と、
前記周面とは別に前記着座面と前記底面とを連結する連結部と、を有している請求項3に記載の着座具。
【請求項5】
前記本体部が、平面視において前記着座面よりも大きい面積を有した底面を備えている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の着座具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者が着座する着座具の一種として、柔らかく変形しやすい中空のクッションが知られている。例えば下記特許文献1に記載されている中空クッションは、水平な座面と、座面を囲むように配された隆起部とを備えている。中空クッションに着座した状態では、使用者の臀部が隆起部の内側に収まり、使用者の姿勢が安定する。このため、例えば腰部の揺動運動やひねり運動等を行うことに適したクッションとなっている。
【0003】
しかしながら、このような構成の着座具は、骨盤の歪みを矯正したい場合や、背筋が伸びた正しい姿勢で着座したい場合などには不向きであった。なぜなら、水平な座面に、正しい姿勢(骨盤を立たせた姿勢)で着座した状態では、着座者の骨盤と大腿骨との間の角度が狭くなって内臓や神経が圧迫されるため、着座者は楽ではなく、楽な姿勢になろうとすると、骨盤を後ろに倒しがちになるからである。
【0004】
そこで、下記非特許文献1に記載の中空クッションが知られている。この中空クッションは、着座面が後上がりに傾斜しているから、骨盤と大腿骨との間に適度な角度を保ちつつ骨盤を立たせることができる。すなわちこの中空クッションは、骨盤の歪みを矯正したい場合や、背筋が伸びた正しい姿勢で着座したい場合などに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−124446号公報
【非特許文献1】(有)ラッキーウエスト、[送料無料]スロープクッションエアー!オフィスにお家に!耐荷重100kg!/骨盤矯正/腰痛/ダイエットクッション/lw-vg-351pk/bl/cg、〔online〕、〔平成29年4月26日検索〕、インターネット<URL:http://www.luckywest.co.jp/SHOP/lw-vg351pk-bl.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような構成の着座具は、長時間にわたり着座し続けると、立った状態の骨盤が次第に後ろに倒れてくる虞がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、長時間にわたり無理なく骨盤を立った状態に保持することが可能な着座具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の着座具は、使用者が着座する着座具であり、中空で可撓性を有する本体部を有し、前記本体部が、後上がりに傾斜する着座面と、前記本体部の後部に設けられ、上方に隆起する隆起部と、を備えており、前記隆起部は幅方向における中央部に窪み部が形成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着座面の傾斜によって骨盤と大腿骨との間に適度な角度を保ちつつ骨盤を立たせることができる。また、着座者が着座することによって着座面が沈むと、その沈んだ部位より後側の部位は相対的に盛り上がるから、本体部の後部に設けられた隆起部が前方に倒れるようにして骨盤の後側を支持する。したがって、長時間にわたり無理なく骨盤を立った状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例における着座具を示す斜視図
図2】着座具を示す平面図
図3】着座具を示す正面図
図4】着座具を示す背面図
図5】着座具を示す側面図
図6】着座具を示す断面図であって、図2のA−A位置における断面に相当する断面図
図7】着座具を示す断面図であって、図2のB−B位置における断面に相当する断面図
図8】着座具を示す断面図であって、図2のC−C位置における断面に相当する断面図
図9】使用者が着座した状態の着座具を示す断面図であって、図2のD−D位置における断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明の着座具は、前記隆起部が中空であり、前記本体部及び前記隆起部の内部に、流体が密閉されているものとしてもよい。このような構成によれば、使用者の着座により本体部の前部が沈むと、内部の流体が後方に移動して隆起部の内部に流入し、隆起部が膨らんで骨盤が前側に押圧されるから、より確実に骨盤を立った状態に保持することができる。
【0012】
また、本発明の着座具は、前記本体部が、底面と前記着座面との相対的な位置ずれを規制する規制手段を有しているものとしてもよい。
また、本発明の着座具は、前記規制手段が、前記着座面の外周縁と前記底面の外周縁とを連結する周面と、前記周面とは別に前記着座面と前記底面とを連結する連結部と、を有しているものとしてもよい。このような構成によれば、規制手段によって着座面と底面との相対的な位置ずれが規制されるから、着座面の過度の揺動を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の着座具は、前記本体部が、平面視において前記着座面よりも大きい面積を有した底面を備えているものとしてもよい。このような構成によれば、本体部が、着座面を支持して踏ん張る形態をなすから、安定性を増すことができる。
【0014】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1図9を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例における着座具Sは、椅子の座面や床面等、任意の場所に設置し、使用者がその上に着座して使用するものである。以下、各構成部材において、使用者が着座する側(図1の上側)を上方、その反対側(図1の下側)を下方とし、また、着座具Sに着座した状態の使用者の正面側(図2の下側)を前方、背面側(図2の上側)を後方、右側(図2の左側)を右方、左側(図2の右側)を左方として説明する。
【0015】
着座具Sは、中空で可撓性を有する本体部10を備えている。本体部10は、全体として座布団のような扁平な形状をなしている。本体部10は、幅方向の中心を基準に左右対称な形状とされている。
【0016】
本体部10は、図6に示すように、座面壁11、底面壁12及び周面壁13を有し、これらに囲まれた内部空間が中空に形成されている。内部空間には、流体(本実施例では気体)が密閉されている。
【0017】
本体部10は、可撓性を有する合成樹脂(例えば軟質ポリ塩化ビニル樹脂)やゴム弾性を有する材料(エラストマー等)により形成されている。本体部10は、回転成形により成形されている。座面壁11、底面壁12及び周面壁13の厚さ寸法は概ね一定(4mm〜5mm程度)とされている。本体部10の重さは、1600gとされている。
【0018】
座面壁11の上面(表面)は、使用者が着座する着座面14とされている。着座面14は、全体として、使用者の臀部の外形に沿うように、緩やかに湾曲した形状をなして浅く窪んでいる。着座面14の外縁部15は、着座面14の窪みに沿って上方に突出している(図3参照)。周面壁13が垂直に近い角度で立ち上がっていることにより、外縁部15は先端に向かって次第に幅(着座面14の内外方向の寸法)が狭まっている。外縁部15の先端は、エッジ状になっている。
【0019】
着座面14は、図7に示すように、全体として、後上がりに傾斜している。すなわち、着座面14の前端側が相対的に低く、後端側が相対的に高くなっている。着座面14は、前部(以後、着座面前部14Fと称する)と後部(以後、着座面後部14Rと称する)とで傾斜角度が異なっている。着座面前部14Fは、相対的に傾斜角度が緩く、着座面後部14Rは、相対的に傾斜角度がきつくなっている。着座面前部14Fと着座面後部14Rとの境界は、着座面14の前後方向における後端寄りに位置している。
【0020】
着座面14には、凹凸形状が施されている。これにより、着座した使用者の臀部の蒸れを防止でき、また臀部を滑り止めすることができる。凹凸形状は、底面28を除く本体部10の全体に施されている。
【0021】
本実施例の着座具Sは、凹凸形状として複数の筋状をなす凹凸(以後、筋状凹凸部16と称する)が形成されている(図1参照)。筋状凹凸部16は、複数の細長い突条17及び隣接する突条17の間に形成された細長い溝18であり、着座面14の中心側から外縁側に向かって放射状に延びている。筋状凹凸部16の突条17及び溝18は、中央側において細く、外縁部15に向かって次第に太くなっている。
【0022】
本体部10の前部には、上方に膨出した膨出部19が形成されている。膨出部19は、図3に示すように、着座面14の幅方向における中央部に設けられ、前方から見ると山状をなしている。膨出部19は、図7に示すように、着座面前部14Fに形成されている。膨出部19の頂部は、後端(着座面後部14Rとの境界)から前端まで概ね水平(底面28と平行)とされている。
【0023】
膨出部19の左右両側には、着座した使用者の大腿の付け根が載置される大腿載置部21が設けられている。大腿載置部21は、図3に示すように、着座面14の外縁部15と膨出部19との間に形成された凹部であり、一般的な人の大腿の付け根に沿うように湾曲している。また、大腿載置部21は、図7に示すように、概ね一定の勾配で前方に向かって下がる傾斜をなしている。大腿載置部21が前下がりに傾斜していることにより、膨出部19の突出寸法が後端から前端に向かって相対的に増している。着座面14を平面視すると、図2に示すように、膨出部19の前端よりも左右の大腿載置部21の前端が前方に位置しており、着座面14の前縁中央部は浅く凹んでいる。
【0024】
筋状凹凸部16は、膨出部19の頂部においては、前後方向に略平行に延び、大腿載置部21においては、前後方向に対して斜めに延びている。筋状凹凸部16は、膨出部19から着座面前部14Fの後端(着座面後部14Rとの境界)に向かって次第に横向きになっている。
【0025】
本体部10の後部には、図5に示すように、上方に隆起する隆起部22が形成されている。隆起部22は、着座面14の後部に盛り上がった形態で設けられている。隆起部22の前面は、着座面後部14Rを構成している。隆起部22の後面は、概ね垂直(底面28に対して直角)に近い角度で立ち、周面23(周面壁13の外周面)の一部を構成している。隆起部22の前面は後面と比べて倒れており、隆起部22の頂部は、本体部10の外縁側に寄っている。
【0026】
隆起部22は、図3に示すように、幅方向における中央部に窪み部24が形成されることにより、左右にわかれた形態をなしている。また、隆起部22は、図2に示すように、前端部に縊れ部25が形成されることにより、前側の部分とわかれた形態をなしている。
【0027】
窪み部24は、図3に示すように、本体部10の幅方向における中央に浅く窪んで設けられている。窪み部24は、左右両端から中央に向かって次第に窪み寸法が増し、幅方向における中央が最も低い位置に配されている。言い換えると、窪み部24の左右両側縁は、中央に向かって次第に下がる傾斜をなしている。
【0028】
縊れ部25は、図2に示すように、本体部10の左右両側に設けられ、着座面前部14Fと着座面後部14Rとの境目部分に位置している。縊れ部25が設けられていることにより、着座面14の左右両側縁部には、縊れ部25の前側と後側とに大きさの異なる湾曲部が形成されている。言い換えると、着座面前部14Fの左右両側縁部と着座面後部14Rの左右両側縁部とは、平面視において大きさが異なる湾曲形状をなしている。
【0029】
隆起部22は、窪み部24の左右両側に立つ一対の独立隆起部26を備えている。独立隆起部26は、平面視においては、それぞれの外縁が独立した湾曲した形状をなしている。独立隆起部26の外縁のうち着座面14の中心から最も離れている部分(以後、最外端部27と称する)は、着座面14の幅方向における端に寄っている。また、独立隆起部26の最外端部27は、着座面14の前後方向における後端に寄っている。
【0030】
独立隆起部26は、窪み部24から最外端部27に向かって、また縊れ部25から最外端部27に向かって次第に突出寸法が増す山状をなしている。すなわち、独立隆起部26において最外端部27の位置が最も高くなっている。独立隆起部26の前面(着座面後部14R)は、それぞれの最外端部27から後述する連結部31に向かって下がる傾斜をなしている。一対の独立隆起部26の前面は、幅方向の中央側(内側)を向くように、言い換えると、本体部10の幅方向における両端から中央に向かって下がるように傾斜している。
筋状凹凸部16は、窪み部24の中央から連結部31に向かって前後方向に略平行に延び、縊れ部25に向かって次第に横向きになっている。
【0031】
本体部10は、平面視において着座面14よりも大きい面積を有した底面28(底面壁12の下面)を備えている。底面28の外周縁は、全周にわたり着座面14の外周縁より外側に配されている。底面28は、水平で平坦な面であり、椅子の座面や床面等、任意の設置場所に設置される。底面28には、内部空間に流体を注入または排出するための孔(図示せず)が設けられている。底面28の外縁のうち左右両側縁は、全体が一続きに湾曲している。すなわち底面28の外縁のうち着座面14の窪み部24及び縊れ部25に対応する部位には凹みが形成されていない。底面28の前縁には、着座面14と同様、緩やかな凹みが形成されている。
【0032】
本体部10は、図7に示すように、着座面14の外周縁と底面28の外周縁とを連結する周面23(周面壁13の外周面)を備えている。着座面14より底面28の面積が大きいことにより、周面23の上端は、周面23の下端に比して若干内側(着座面14の中央側)に位置している。特に、周面23のうち着座面14の窪み部24及び縊れ部25に対応する部分(以後、周面凹部29と称する)は、図6または図8に示すように、着座面14が窪んでいる分だけ、他の部分に比して周面23の傾きが大きくなっている。周面凹部29の下側の部分は周面23の他の部分と概ね同じ角度で立ち、上側の部分は下側の部分に比して傾きを増している。
【0033】
周面23には、全周に筋状凹凸部16が付されている。周面23の筋状凹凸部16は、上下方向に延びている。周面23の筋状凹凸部16は、着座面14から連続している。
【0034】
本体部10は、図6に示すように、周面23とは別に着座面14と底面28とを連結する連結部31を有している。連結部31は、本体部10の前後方向における中央よりも後側に寄った位置、本実施例では着座面前部14Fと着座面後部14Rとの境界部に設けられている。
【0035】
また、連結部31は、図2に示すように、本体部10の幅方向中央部に配されている。連結部31は、窪み部24と左右方向の位置が揃っており、縊れ部25と前後方向の位置が揃っている。連結部31は、使用者が正しい位置で着座したときには、使用者の骨盤の真下に配され、腸骨の下端部が連結部31の左右両側に配される。
【0036】
連結部31は、図6に示すように、筒状をなして垂直に立つ壁であり、連結部31の上端が全周にわたり着座面14(座面壁11)に連なり、連結部31の下端が全周にわたり底面28(底面壁12)に連なっている。連結部31の内側の孔は上下方向に開放され、本体部10を上下方向に(着座面14から底面28にわたり)貫通した貫通孔32となっている。貫通孔32は、図2に示すように、平面視、横長の形状をなしている。
筋状凹凸部16は、着座面14から貫通孔32の内周面にわたって延びている。貫通孔32の内周面に形成された筋状凹凸部16は垂直に延びている。
【0037】
次に、本実施例の着座具Sを使用する場合の一例について説明する。
まず、使用者は、着座具Sを任意の場所に運んで設置する。このとき、使用者は、連結部31の貫通孔32に手を入れることで、着座具Sを容易に持ち運びすることができる。
【0038】
次いで、使用者は、着座具Sに着座する。このとき、着座面14に隆起部22及び膨出部19が設けられているから、適切な着座位置が視覚的にわかりやすくなっている。また、使用者が、適切な着座位置よりも後側にずれた位置に着座した場合には、隆起部22の頂部が臀部に局所的に当たることで座りにくく感じる。このため、使用者は正しい位置に着座することを促される。
【0039】
使用者が正しい位置に着座すると、着座面14が使用者の臀部を包み込むように変形する。これにより、使用者は柔らかな体感を得ることができるとともに、臀部と着座面14との接触面積が増えて接触圧が低くなる(体圧が分散される)。また、着座面14が使用者の臀部を包み込むように変形することにより、使用者の臀部は固定されるから姿勢を崩しにくくなる。このため、使用者は、長時間にわたり苦痛なく使用し続けることができる。
【0040】
使用者が、正しい位置に着座した状態では、使用者の大腿部の付け根が大腿載置部21に載置される。大腿載置部21の間に膨出部19が設けられていることで、使用者の大腿は左右方向に正しい位置に定まり、左右の膝が適度に広がった自然な姿勢で着座することができる。さらに、膨出部19が設けられていることにより、使用者の臀部が前方に滑り落ちて姿勢が崩れることを防ぐことができる。そして、大腿載置部21(着座面14)が前下がりに傾斜しているから、骨盤と大腿骨との間に適度な角度を保ちつつ骨盤を立たせることができる。
【0041】
また、使用者が正しい位置に着座した状態では、骨盤が連結部31の真上に位置する。このため、連結部31の周囲には最も大きな力が作用する。ここで、着座面に大きな力が作用すると、着座面が横ずれして使用者の着座位置が変わる虞がある。しかしながら、本実施例の着座具Sは、最も大きな力が作用する部分に連結部31が設けられているから、着座面14の横ずれが効果的に防止され、使用者の着座位置が変わることを防ぐことができる。また、連結部31によって着座面14の大きな(過度の)沈み込みが防止され、着座面14の傾斜が維持される。
【0042】
使用者の着座により着座面14が沈むと、内部の流体が移動し、着座面14の外縁部15が膨らんで使用者の臀部に密着する。使用者の着座による荷重は、着座面14の後部に比して前部に大きく作用するため、内部の流体は本体部10の前部から後部へ移動する。本体部10の後部に流体が移動することにより、使用者の臀部の背面において隆起部22が膨らんで臀部に密着し、骨盤を後側から支持する。このとき、本体部10の幅方向における中央に連結部31が設けられているから、内部の流体は連結部31の左右両側にわかれて後方へ移動する。さらに、窪み部24及び縊れ部25によって隆起部22が左右の独立隆起部26にわかれた形態をなしているから、流体は、左右の独立隆起部26の内部に集中的に流れ込む。これにより、左右の独立隆起部26が膨らんで使用者の骨盤(腸骨の下部)を後側から前側に押圧し、使用者の骨盤を立たせるように作用する。また、独立隆起部26の前面が幅方向の中央側を向いているから、独立隆起部26は左右の腸骨の下部を、斜め後方(左右方向における両外側の後方)から斜め前方に押圧する。これにより、使用者の腸骨が左右方向に振れたり後側に倒れることが規制され、骨盤が立った状態に保持される。
【0043】
なお、長時間にわたる使用の際、使用者の姿勢が悪くなる(猫背姿勢になって骨盤が後ろに倒れてくる)と、隆起部22の頂部が臀部に局所的に当たることで使用者は座りにくく感じる。このため、使用者は良い姿勢で着座するように促される。
【0044】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例の着座具Sは、使用者が着座するものであり、中空で可撓性を有する本体部10を有し、本体部10が、後上がりに傾斜する着座面14を備え、本体部10の後部には、上方に隆起する隆起部22が設けられている。この構成によれば、着座面14の傾斜によって骨盤と大腿骨との間に適度な角度を保ちつつ骨盤を立たせることができる。また、着座者が着座することによって着座面14が沈むと、その沈んだ部位より後側の部位は相対的に盛り上がるから、本体部10の後部に設けられた隆起部22が前方に倒れるようにして骨盤の後側を支持する。したがって、長時間にわたり無理なく骨盤を立った状態に保持することができる。
【0045】
また、隆起部22が中空であり、本体部10及び隆起部22の内部に、流体が密閉されている。この構成によれば、使用者の着座により本体部10の前部が沈むと、内部の流体が後方に移動して隆起部22の内部に流入し、隆起部22が膨らんで骨盤が前側に押圧されるから、より確実に骨盤を立った状態に保持することができる。
【0046】
また、本体部10が、底面28と、着座面14の外周縁と底面28の外周縁とを連結する周面23と、周面23とは別に着座面14と底面28とを連結する連結部31と、を有している。この構成によれば、連結部31において着座面14と底面28との相対的な位置ずれが抑制されるから、着座面14の過度の揺動を抑制することができる。
【0047】
また、本体部10が、平面視において着座面14よりも大きい面積を有した底面28を備えている。この構成によれば、本体部10が、着座面14を支持して踏ん張る形態をなすから、安定性を増すことができる。
【0048】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、本体部10が底面28を備えているが、これに限らず、本体部は、下面が開放されたものであってもよい。
(2)上記実施例では、連結部31が筒状をなしているが、これに限らず、連結部は着座面と底面とを連結するものであればどのような形状であってもよく、例えば柱状等であってもよい。
(3)上記実施例では、連結部31に貫通孔32が形成されているが、これに限らず、貫通孔は塞がれていても良い。また、このような場合には、本体部よりも硬い(弾性変形しにくい)材料よりなる芯材によって貫通孔を塞いでもよい。
(4)上記実施例では、本体部10の厚さ寸法は概ね一定とされているが、これに限らず、本体部の厚さ寸法を変化させることで、例えば使用者の体感を変化させるようにしてもよい。
(5)上記実施例では、本体部10の全体が中空とされているが、これに限らず、本体部の一部を中実としてもよく、例えば隆起部の内部を中実としてもよい。
(6)上記実施例では、隆起部22が、窪み部24を間にして一対の独立隆起部26を備えた形態をなしているが、これに限らず、隆起部は、本体部の後端部に沿って概ね一定の突出高さを有するものであってもよい。
(7)上記実施例では、着座面の凹凸形状を具体的に例示したが、これに限らず、着座面の凹凸形状は任意に変更でき、また必ずしも凹凸形状を付さなくてもよい。
(8)上記実施例では、規制手段の一例として本体部10に連結部31を設けた場合を示したが、これに限らず、規制手段は、例えば周面壁の一部であって、着座面の外周縁から周面壁または底面壁にわたり他の部分よりも硬い材料によって形成された部分によって構成してもよく、またこのような周面壁の一部からなる規制手段を、連結部に替えて、もしくは連結部に加えて設けてもよい。
(9)上記実施例では、連結部31を含む本体部10の全体が同一の材料で形成されているが、これに限らず、例えば連結部を、他の部分よりも弾性変形しにくい材料で形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
S…着座具
10…本体部
14…着座面
22…隆起部
23…周面
28…底面
31…連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9