特許第6905877号(P6905877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許6905877-造形装置及び造形方法 図000002
  • 特許6905877-造形装置及び造形方法 図000003
  • 特許6905877-造形装置及び造形方法 図000004
  • 特許6905877-造形装置及び造形方法 図000005
  • 特許6905877-造形装置及び造形方法 図000006
  • 特許6905877-造形装置及び造形方法 図000007
  • 特許6905877-造形装置及び造形方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905877
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】造形装置及び造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/277 20170101AFI20210708BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20210708BHJP
   B29C 64/232 20170101ALI20210708BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20210708BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210708BHJP
【FI】
   B29C64/277
   B29C64/209
   B29C64/232
   B29C64/236
   B33Y30/00
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-114821(P2017-114821)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-988(P2019-988A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】越智 和浩
(72)【発明者】
【氏名】大川 将勝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 恭平
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−515937(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0209836(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0179656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/20,64/209,
64/232,64/236,64/277
B33Y 10/00,30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の照射により硬化する材料を用いて造形物を造形する造形装置であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドから吐出された前記材料に紫外線を照射する紫外線光源と、
前記紫外線光源を駆動する電力を供給する光源駆動部と
を備え、
前記紫外線光源は、UVLEDであり、
前記光源駆動部は、パルス状に変化する電力を前記紫外線光源へ供給することにより、前記紫外線光源をパルス駆動方式で駆動し、
前記UVLEDの定格における温度の上限を定格上限温度とし、
前記光源駆動部から供給される電力に応じて前記UVLEDに流れるパルス電流のピーク値を供給電流値と定義した場合、
前記供給電流値は、
前記光源駆動部から前記UVLEDへ前記パルス状に電力を供給する場合には前記UVLEDの温度が前記定格上限温度を超えず、
かつ、前記供給電流値の電流を連続的に前記UVLEDに供給すると前記UVLEDの温度が前記定格上限温度を超える値に設定されていることを特徴とする造形装置。
【請求項2】
紫外線の照射により硬化する材料を用いて造形物を造形する造形装置であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドから吐出された前記材料に紫外線を照射する紫外線光源と、
前記紫外線光源を駆動する電力を供給する光源駆動部と
を備え、
前記紫外線光源は、UVLEDであり、
前記光源駆動部は、パルス状に変化する電力を前記紫外線光源へ供給することにより、前記紫外線光源をパルス駆動方式で駆動し、
前記光源駆動部から供給される電力に応じて前記UVLEDに流れるパルス電流のピーク値を供給電流値と定義した場合、
前記供給電流値は、
前記光源駆動部から前記UVLEDへ前記パルス状に電力を供給する場合には前記UVLEDの温度が80℃を超えず、
かつ、前記供給電流値の電流を連続的に前記UVLEDに供給すると前記UVLEDの温度が80℃を超える値に設定されていることを特徴とする造形装置。
【請求項3】
前記造形装置は、前記紫外線光源から照射される紫外線により硬化した前記材料の層を複数層重ねることにより、積層造形法で前記造形物を造形することを特徴とする請求項1又は2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッドは、インクジェット方式で前記材料の液滴を吐出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の造形装置。
【請求項5】
予め設定された主走査方向へ移動しつつ前記材料の液滴を吐出する主走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる主走査駆動部を更に備え、
前記紫外線光源は、前記主走査動作時に前記吐出ヘッドと共に移動しつつ、前記吐出ヘッドにより吐出された前記材料へ紫外線を照射することを特徴とする請求項に記載の造形装置。
【請求項6】
複数の前記吐出ヘッドを備え、
前記複数の吐出ヘッドのそれぞれは、互いに異なる色の前記材料を吐出することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の造形装置。
【請求項7】
前記吐出ヘッドは、前記造形物の形状を示すデータに少なくとも基づいて前記材料を吐出し、
前記紫外線光源は、少なくとも、前記吐出ヘッドにより前記材料が吐出された領域の全
面に対して紫外線を照射することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の造形装置。
【請求項8】
前記光源駆動部は、パルス幅変調を行うパルス駆動方式で前記紫外線光源を駆動することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の造形装置。
【請求項9】
前記光源駆動部は、パルス数変調を行うパルス駆動方式で前記紫外線光源を駆動することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の造形装置。
【請求項10】
紫外線の照射により硬化する材料を用いて造形物を造形する造形方法であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドから吐出された前記材料に紫外線を照射する紫外線光源と、
前記紫外線光源を駆動する電力を供給する光源駆動部と
を用い、
前記紫外線光源は、UVLEDであり、
前記光源駆動部により、パルス状に変化する電力を前記紫外線光源へ供給することにより、前記紫外線光源をパルス駆動方式で駆動し、
前記UVLEDの定格における温度の上限を定格上限温度とし、
前記光源駆動部から供給される電力に応じて前記UVLEDに流れるパルス電流のピーク値を供給電流値と定義した場合、
前記供給電流値について、
前記光源駆動部から前記UVLEDへ前記パルス状に電力を供給する場合には前記UVLEDの温度が前記定格上限温度を超えず、
かつ、前記供給電流値の電流を連続的に前記UVLEDに供給すると前記UVLEDの温度が前記定格上限温度を超える値に設定することを特徴とする造形方法。
【請求項11】
紫外線の照射により硬化する材料を用いて造形物を造形する造形方法であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドから吐出された前記材料に紫外線を照射する紫外線光源と、
前記紫外線光源を駆動する電力を供給する光源駆動部と
を用い、
前記紫外線光源は、UVLEDであり、
前記光源駆動部により、パルス状に変化する電力を前記紫外線光源へ供給することにより、前記紫外線光源をパルス駆動方式で駆動し、
前記光源駆動部から供給される電力に応じて前記UVLEDに流れるパルス電流のピーク値を供給電流値と定義した場合、
前記供給電流値について、
前記光源駆動部から前記UVLEDへ前記パルス状に電力を供給する場合には前記UVLEDの温度が80℃を超えず、
かつ、前記供給電流値の電流を連続的に前記UVLEDに供給すると前記UVLEDの温度が80℃を超える値に設定することを特徴とする造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置及び造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。また、この場合、インクとしては、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いる。また、紫外線硬化型インクへ紫外線を照射する光源としては、例えば、UVLEDを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−71282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層造形法で造形物を造形する場合、多くのインクの層を重ねて形成する必要がある。そして、この場合、それぞれのインクの層について、上下の層との位置のズレ等が生じないように、高い精度で形成することが望まれる。また、紫外線硬化型インクを用いて造形を行う場合において、高い精度でインクの層を形成するためには、紫外線硬化型インクで形成するそれぞれのインクの層について、全体をより均一かつ適切に硬化させることが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形装置及び造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、造形物を構成するそれぞれのインクの層について、より均一かつ適切に硬化させる方法について、鋭意研究を行った。また、この研究において、先ず、硬化の状態が不均一になる場合について、着目した。
【0006】
より具体的に、本願の発明者は、例えば、造形物を構成するそれぞれのインクの層に対応するインクの層をシート状の媒体(メディア)上に形成して、様々な条件で紫外線を照射する実験等を行い、硬化の仕方の変化等を確認した。また、その他にも様々な実験や検討等を行い、紫外線の照射の条件によっては、硬化後のインクの層の表面にシワが発生する場合があることを見出した。インクの表面にこのようなシワが発生すると、例えば、インクの層の表面の平坦性が低下することになる。また、その結果、更に上に形成するインクの層に影響が生じ、造形の精度が低下するおそれがある。
【0007】
ここで、紫外線硬化型インクを硬化させるためには、インクの層の各位置に対し、所定の積算光量(総積算光量)以上の紫外線を照射することが必要である。一方で、紫外線を発生する光源(UVLED等)は、紫外線の発生に伴い、多くの熱を発生する。そして、この場合、光源の照度を高めるために光源への電力の供給量を多くすると、光源の過熱の問題が生じることになる。そのため、紫外線硬化型インクを用いる従来の構成においては、通常、所定の積算光量以上の紫外線を照射でき、かつ、光源の過熱が生じない範囲に光の照度を抑えるように、紫外線の光源への電力の供給量を設定する。
【0008】
これに対し、本願の発明者は、鋭意研究により、上記のようなシワの発生を防いでインクの層をより適切に硬化させるためには、紫外線の積算光量のみを考慮するのではなく、紫外線の光源による発光の強さ(例えば、照度)について、十分に強い紫外線を照射することが好ましいことを見出した。しかし、上記のように、UVLED等の光源は、発光時に多くの熱を発生する。そのため、光源に強い紫外線を照射させるために電力の供給量を増やすと、光源の動作範囲の温度(例えば定格上の上限温度)を超えて温度が上昇するおそれがある。
【0009】
これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、必ずしも強い紫外線を照射し続けなくても、パルス状に強い紫外線を照射することでシワの発生を防げることを見出した。すなわち、紫外線の強さについては、連続的な照度ではなく、ピーク照度を高めることが重要であることを見出した。また、パルス状に強い紫外線を照射する場合、ピーク照度での点灯時間が短くなるため、ピーク照度時の電力供給量が多くなっても、平均的な電力供給量を適切に抑えることができる。また、これにより、光源の温度の過熱を適切に防ぐことができる。
【0010】
そのため、このように構成すれば、例えば、光源の過熱を防ぎつつ、強い紫外線を適切に照射することができる。また、これにより、例えば、インクの層の表面にシワが発生することを適切に防ぐことができる。また、造形物の造形時において、積層するそれぞれのインクの層の全体をより均一かつ適切に硬化させて、より高い精度で形成することができる。
【0011】
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は、紫外線の照射により硬化する材料を用いて造形物を造形する造形装置であって、前記材料を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドから吐出された前記材料に紫外線を照射する紫外線光源と、前記紫外線光源を駆動する電力を供給する光源駆動部とを備え、前記紫外線光源は、UVLEDであり、前記光源駆動部は、パルス状に変化する電力を前記紫外線光源へ供給することにより、前記紫外線光源をパルス駆動方式で駆動する。
【0012】
また、この造形装置は、例えば、積層造形法で造形物を造形する。紫外線光源としては、UVLEDを好適に用いることができる。また、吐出ヘッドは、例えば、インクジェット方式で材料の液滴を吐出する。造形の材料としては、例えば紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。また、造形装置は、互いの異なる色の材料をそれぞれ吐出する複数の吐出ヘッドを備えてよい。
【0013】
このように構成すれば、例えば、パルス状に変化する電力を光源駆動部へ供給することにより、紫外線光源の過熱を抑えつつ、点灯するタイミングにおいて多くの電力を紫外線光源へ適切に供給できる。また、これにより、例えば、紫外線光源に強い紫外線を適切に照射させることができる。また、紫外線光源に強い紫外線を照射させることにより、例えば、表面にシワが発生すること等を防いで、造形の材料の層をより均一かつ適切に硬化させることができる。また、これにより、造形物を高い精度で適切に造形できる。
【0014】
尚、光源駆動部は、例えば、紫外線光源の温度が定格の上限温度を超えないように、紫外線光源に電力を供給する。この場合、より具体的に、例えば、紫外線光源の温度が80℃を超えないように、紫外線光源に電力を供給することが好ましい。
【0015】
また、この構成において、吐出ヘッドは、例えば、造形物の形状を示すデータに少なくとも基づいて材料を吐出する。そして、紫外線光源は、少なくとも、吐出ヘッドにより材料が吐出された領域の全面に対して紫外線を照射する。この場合、領域の全面に対して紫外線を照射するとは、例えば、領域の一部に対して紫外線を照射しつつ照射位置を変更する走査動作等を行うことで、領域の全面に対する各位置へ順次紫外線を照射することであってよい。また、光源駆動部は、例えば、パルス幅変調を行うパルス駆動方式(PWM方式)で紫外線光源を駆動する。また、光源駆動部は、例えば、パルス数変調を行うパルス駆動方式(PNM方式)で紫外線光源を駆動してもよい。
【0016】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形方法を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば、造形物の造形時において、造形の材料の層をより均一かつ適切に硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す図である。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、ヘッド部12のより詳細な構成の一例を示す。
図2】光源駆動部22により紫外線光源220を駆動する動作について説明をする図である。図2(a)は、光源駆動部22の詳細な構成の一例を示す。図2(b)は、光源駆動部22が紫外線光源220へ供給するパルス状の電力の一例を示す。
図3】紫外線光源に対応するUVLEDを連続点灯させた場合の実験結果を示す図である。図3(a)は、照度測定結果と積算光量の概算結果を示す。図3(b)は、UVLEDへ供給する電流と照度との関係を示す。図3(c)は、UVLEDへ供給する電流と1回あたりの積算光量との関係を示す。図3(d)は、紫外線を照射する条件とシワの発生の有無との対応を示す。
図4】パルス電流のピーク値を700mAにして紫外線を照射した場合の実験結果を示す図である。図4(a)は、パルス駆動のデューティや周波数を様々に変化させた場合について、照度の測定結果と、積算光量の概算結果とを示す。図4(b)は、デューティと照度との関係を示すグラフである。図4(c)は、周波数と照度との関係を示すグラフである。
図5】パルス電流のピーク値を500mAにして紫外線を照射した場合の実験結果を示す図である。図5(a)は、パルス駆動のデューティや周波数を様々に変化させた場合について、照度の測定結果と、積算光量の概算結果とを示す。図5(b)は、デューティと照度との関係を示すグラフである。図5(c)は、周波数と照度との関係を示すグラフである。
図6】紫外線を照射する条件とシワの発生の有無との対応を示す図である。図6(a)は、パルス電流のピーク値を700mAにした場合の実験結果を示す。図6(b)は、パルス電流のピーク値を500mAにした場合の実験結果を示す。
図7】積算光量の概算結果を揃えての比較が可能なように様々な条件での実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
【0020】
本例において、造形装置10は、紫外線の照射により硬化する材料を用いて積層造形法により造形物50を造形する装置である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。また、より具体的に、本例において、造形装置10は、例えば、紫外線光源から照射される紫外線により硬化した材料の層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。また、造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。
【0021】
尚、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、例えば、造形物50の材料となる液滴(インク滴)をインクジェットヘッドから吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0022】
本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、主走査駆動部16、副走査駆動部18、積層方向駆動部20、光源駆動部22、及び制御部30を備える。ヘッド部12は、造形物50の材料となる液滴を吐出する部分であり、所定の条件に応じて硬化するインクのインク滴を吐出し、硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いる。この場合、紫外線硬化型インクは、紫外線の照射により硬化する材料の一例である。また、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式で液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。また、本例において、ヘッド部12は、少なくとも、複数のインクジェットヘッドと、紫外線光源とを有する。ヘッド部12のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
【0023】
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、積層方向駆動部20に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、予め設定された主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0024】
主走査駆動部16は、ヘッド部12に主走査動作(Y走査)を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に主走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する動作のことである。
【0025】
尚、本例において、主走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。また、主走査駆動部16は、ヘッド部12に、往復の主走査動作を行わせる。この場合、ヘッド部12に往復の主走査動作を行わせるとは、例えば、主走査方向における一方の向きへヘッド部12を移動させる主走査動作と、他方の向きへヘッド部12を移動させる主走査動作とを行わせることである。また、主走査動作におけるヘッド部12の移動は、造形物50に対する相対的な移動であってよい。そのため、造形装置10の構成の変形例においては、例えば、ヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0026】
副走査駆動部18は、ヘッド部12に副走査動作(X走査)を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に副走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作のことである。副走査動作は、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作であってよい。
【0027】
また、本例において、副走査駆動部18は、主走査動作の合間に、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、より具体的に、副走査駆動部18は、例えば、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、副走査駆動部18は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。
【0028】
積層方向駆動部20は、積層方向(Z方向)へヘッド部12又は造形台14の少なくとも一方を移動させる駆動部である。この場合、積層方向へヘッド部12を移動させるとは、例えば、ヘッド部12における少なくともインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。また、積層方向へ造形台14を移動させるとは、例えば、造形台14における少なくとも上面の位置を移動させることである。また、積層方向駆動部20は、積層方向へヘッド部12又は造形台14の少なくとも一方を移動させることにより、Z方向への走査(Z走査)をインクジェットヘッドに行わせ、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと造形台14との間の距離であるヘッド台間距離を変化させる。ヘッド台間距離とは、例えば、インクジェットヘッドにおいてノズルが形成されているノズル面と、造形台14の上面との間の距離であってよい。
【0029】
また、より具体的に、本例において、積層方向駆動部20は、例えば、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。また、これにより、積層方向駆動部20は、例えば、造形中の造形物50における被造形面と、ヘッド部12との間の距離(ギャップ)を調整する。また、積層方向駆動部20は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
【0030】
光源駆動部22は、ヘッド部12における紫外線光源を駆動する電力を供給する駆動部である。光源駆動部22は、例えば、主走査動作時に紫外線光源を点灯させることにより、造形物50の被造形面に着弾したインクを硬化させる。造形物50の被造形面とは、例えば、ヘッド部12により次のインクの層が形成される面のことである。また、本例において、光源駆動部22は、パルス状に変化する電力を紫外線光源へ供給することにより、紫外線光源をパルス駆動方式で駆動する。光源駆動部22により紫外線光源を駆動する動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0031】
制御部30は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形装置10による造形の動作を制御する。制御部30は、例えば造形すべき造形物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、造形装置10の各部を制御することが好ましい。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0032】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。図1(b)は、ヘッド部12のより詳細な構成の一例を示す。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド202、複数の紫外線光源220、及び平坦化ローラユニット222を有する。
【0033】
複数のインクジェットヘッド202のそれぞれは、吐出ヘッドの一例であり、造形しようとする造形物50の形状を示すデータに少なくとも基づき、造形の材料である紫外線硬化型インクをインクジェット方式で吐出する。この場合、インクジェットヘッド202が紫外線硬化型インクを吐出するとは、例えば、インクジェットヘッド202におけるノズルから紫外線硬化型インクのインク滴を吐出することである。また、より具体的に、本例において、それぞれのインクジェットヘッド202は、制御部30の指示に応じて、造形物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、インク滴を吐出する。また、それぞれのインクジェットヘッド202は、造形台14と対向する面に、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を有する。また、これにより、それぞれのインクジェットヘッド202は、ノズル列における各ノズルから、造形台14へ向けてインク滴を吐出する。それぞれのインクジェットヘッド202としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。
【0034】
また、本例のヘッド部12において、複数のインクジェットヘッド202は、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並んで配設される。また、複数のインクジェットヘッド202は、互いに異なる色の紫外線硬化型インクを吐出する。また、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド202として、例えば、複数の着色用のインクジェットヘッド202と、造形材用のインクジェットヘッド202と、白インク用のインクジェットヘッド202と、クリアインク用のインクジェットヘッド202と、サポート材用のインクジェットヘッド202とを有する。
【0035】
また、より具体的に、本例において、インクジェットヘッド202は、複数の着色用のインクジェットヘッド202として、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のインク用のインクジェットヘッドを有する。造形材用のインクジェットヘッド202として、所定の色の造形用インク(モデル材MO)用のインクジェットヘッドを有する。また、白インク用及びクリアインク用のインクジェットヘッド202として、白色(W)のインク及び無色の透明色(T)であるクリア色のインク(クリアインク)用のインクジェットヘッドを有する。また、サポート材用のインクジェットヘッド202として、サポート層の材料となるインク(S)用のインクジェットヘッドを有する。
【0036】
尚、サポート層とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。サポート層の材料としては、造形物50の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を用いることが好ましい。また、この場合、造形物50を構成する材料よりも紫外線による硬化度が弱く、分解しやすいい材料を用いることが好ましい。
【0037】
また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド202の並び方や、ヘッド部12が有するインクジェットヘッド202の種類等については、図示した構成に限らず、様々に変更してもよい。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらして配設してもよい。また、ヘッド部12は、例えば、各色の淡色や、R(赤)G(緑)B(青)やオレンジ等の色用のインクジェットヘッド等を更に有してもよい。
【0038】
複数の紫外線光源220は、インクを硬化させるための硬化手段であり、インクジェットヘッド202から吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射することにより、紫外線硬化型インクを硬化させる。また、本例において、紫外線光源220は、UVLED(紫外LED)である。この場合、紫外線光源220がUVLEDであるとは、例えば、紫外線光源220において紫外線を発生する素子としてUVLEDを用いることである。
【0039】
また、本例において、複数の紫外線光源220のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。また、これにより、紫外線光源220は、主走査動作時に複数のインクジェットヘッド202と共に移動しつつ、それぞれのインクジェットヘッド202により吐出された紫外線照射型インクへ紫外線を照射する。
【0040】
また、この場合、各回の主走査動作において、例えば、主走査動作の移動の向きにおいて複数のインクジェットヘッド202よりも後方側に来る紫外線光源220により、その回の主走査動作で吐出された紫外線硬化型インクへ紫外線を照射する。また、これにより、紫外線光源220は、少なくとも、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド202により紫外線硬化型インクが吐出された領域の全面に対して、紫外線を照射する。この場合、領域の全面に対して紫外線を照射するとは、例えば、主走査動作時に主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射することにより、領域の一部に対して紫外線を照射しながら照射位置を変更して、領域の全面に対する各位置へ順次紫外線を照射することであってよい。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作で吐出された紫外線硬化型インクを適切に硬化させることができる。
【0041】
また、本例において、紫外線光源220は、光源駆動部22から供給されるパルス状の電力に応じて、紫外線を照射する。また、これにより、紫外線光源220は、強い紫外線の照射と消灯とを周期的に繰り返すパルス状の点灯により、紫外線を照射する。
【0042】
平坦化ローラユニット222は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。本例において、平坦化ローラユニット222は、インクジェットヘッドの並びと、紫外線光源220との間に配設される。これにより、平坦化ローラユニット222は、インクジェットヘッドの並びに対し、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、より具体的に、平坦化ローラユニット222は、例えば、少なくとも平坦化ローラを有する。この場合、平坦化ローラは、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
【0043】
また、図中に示すように、本例において、ヘッド部12は、1個の平坦化ローラユニット222のみを有する。この場合、平坦化ローラユニット222は、例えば、ヘッド部12における一方の端側の紫外線光源220と、インクジェットヘッドの並びとの間に配設される。そして、複数のインクジェットヘッド202よりも平坦化ローラユニット222が後方側になる向きでヘッド部12が移動する主走査動作時において、インクの層を平坦化する。
【0044】
続いて、光源駆動部22により紫外線光源220を駆動する動作について、更に詳しく説明をする。図2は、光源駆動部22により紫外線光源220を駆動する動作について説明をする図である。図2(a)は、光源駆動部22の詳細な構成の一例を示す。図2(b)は、光源駆動部22が紫外線光源220へ供給するパルス状の電力の一例を示す。
【0045】
本例において、光源駆動部22は、パルス幅変調を行うパルス駆動方式(PWM方式)で紫外線光源220を駆動する駆動部であり、基準パルス発生部302、パルス設定格納部304、パルス変調部306、及び駆動電力出力部308を有する。基準パルス発生部302は、紫外線光源220の駆動において基準として用いるパルス信号を発生する信号発生部である。基準パルス発生部302は、例えば、予め設定された周期で変化する矩形波状のパルス信号を発生して、パルス変調部306へ供給する。
【0046】
パルス設定格納部304は、パルス変調部306において行うパルス変調の設定を格納する格納部である。パルス設定格納部304は、例えば、造形時にユーザにより設定される各種のパラメータ等と対応付けて、パルス変調の設定を格納する。この場合、各種のパラメータ等とは、例えば、造形の動作の設定等を示すパラメータ等である。また、より具体的に、パルス設定格納部304は、パルス変調の設定として、例えば、パルス幅変調における変調後のパルス幅を格納する。
【0047】
パルス変調部306は、基準パルス発生部302から受け取る基準パルスを変調する信号変調部である。パルス変調部306は、例えば、制御部30の制御に応じてパルス設定格納部304からパルス変調の設定を読み出し、読み出した設定に基づき、基準パルスを変調する。この場合、パルス変調部306は、例えば、造形時にユーザにより設定される各種のパラメータ等を示す指示を制御部30から受け取り、この指示に対応する設定をパルス設定格納部304から読み出す。また、読み出した設定に合わせて基準パルスのパルス幅を変化させることにより、パルス幅変調を行う。また、パルス変調部306は、変調後のパルス信号を、駆動電力出力部308へ供給する。
【0048】
駆動電力出力部308は、紫外線光源220を駆動する電力を紫外線光源220へ供給する電力出力部である。本例において、駆動電力出力部308は、パルス変調部306から受け取るパルス幅変調後のパルス信号と同期して電流値が変化するパルス状の電力を紫外線光源220へ供給することにより、紫外線光源220をパルス駆動方式で駆動する。このように構成すれば、例えば、光源駆動部22によりパルス駆動方式で紫外線光源220を適切に駆動できる。
【0049】
また、より具体的に、紫外線光源220は、例えば、図2(b)に示すようにパルス状に変化する電力を紫外線光源220へ供給する。この場合、紫外線光源220へ供給される電流と時間との関係は、例えば図中に示すように、パルス信号の周期T0のうちの一部の期間T1にだけ電流値が大きくなるような関係になる。
【0050】
また、更に具体的に、本例において、光源駆動部22は、周期T0のうちの一部の期間T1において、予め設定された照度で紫外線光源220を点灯させる電流値の電流を紫外線光源220へ供給する。また、それ以外の期間において、紫外線光源220へ供給する電流値を0にして、紫外線光源220を消灯させる。また、この場合、例えば、パルス信号の周期T0に対する点灯の期間T1の割合であるデューティについて、例えば70%程度(例えば50〜80%程度)にすることが好ましい。
【0051】
ここで、紫外線硬化型インクを用いて造形を行う場合、例えば紫外線の照射量が不十分であると、インクの層において硬化の仕方が不均一になることが考えられる。そのため、紫外線硬化型インクを硬化させるためには、インクの層の各位置に対し、所定の積算光量以上の紫外線を照射することが必要である。
【0052】
また、造形装置において造形を行う場合、多数のインクの層を硬化させることが必要になる。そして、この場合、例えばそれぞれのインクの層の形成時に紫外線を照射するための時間を多く確保すると、造形に要する時間が大きく増大することになる。そのため、造形装置においては、例えば、光源の照度を十分に高めて、ある程度の短い時間内にインクの層を硬化させることが望まれる。
【0053】
但し、紫外線を発生する光源(UVLED等)は、紫外線の発生に伴い、多くの熱を発生する。そして、この場合、光源の照度を高めるために光源への電力の供給量を多くすると、光源の過熱の問題が生じることになる。そのため、従来の構成の造形装置において、光源の過熱の問題により、光源の照度を大幅に高めることは難しい。
【0054】
この点に関し、本願の発明者は、鋭意研究により、例えば、従来の構成の造形装置において造形を行う場合、紫外線を照射する条件によっては、インクの層において、硬化の仕方が不均一になりやすいことを見出した。また、その結果、硬化後のインクの層の表面にシワが発生する場合があることを見出した。このようなシワが発生した場合、例えば、インクの層の表面の平坦性が低下することや、インクの層の表面状態が不均一になること等が考えられる。また、これらの結果、造形の精度が低下するおそれもある。
【0055】
これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、上記のようなシワの発生を防いでインクの層をより適切に硬化させるためには、紫外線の積算光量のみを考慮するのではなく、紫外線の光源による発光の強さ(例えば、照度)について、十分に強い紫外線を照射することが好ましいことを見出した。また、この場合、必ずしも強い紫外線を照射し続けなくても、パルス状に強い紫外線を照射することでシワの発生を防げることを見出した。すなわち、紫外線の強さについては、連続的な照度ではなく、ピーク照度を高めることが重要であることを見出した。すなわち、点灯時のピーク照度を十分に高めれば、例えば、連続的に紫外線を照射するのではなく、パルス駆動により紫外線を照射した場合にも、シワの発生等を適切に防ぎ、インクの層を均一かつ適切に硬化させることができる。
【0056】
また、パルス駆動により紫外線を照射する場合、例えばピーク照度を高めたとしても、ピーク照度での点灯時間が短くなるため、平均的な電力供給量を適切に抑えることができる。そのため、このように構成した場合、例えば、光源の温度の過熱を適切に防ぐこともできる。従って、このように構成すれば、例えば、光源の過熱を防ぎつつ、強い紫外線を適切に照射することができる。また、これにより、例えば、インクの層の表面にシワが発生することを適切に防ぐことができる。
【0057】
すなわち、本例によれば、例えば、表面にシワが発生すること等を防いで、紫外線硬化型インクの層を均一かつ適切に硬化させることができる。また、これにより、造形物50を高い精度で適切に造形できる。
【0058】
また、本例において、紫外線光源220におけるUVLEDに流れる電流については、強い紫外線を照射可能であり、かつ、パルス駆動を行うことで光源の過熱を防ぐことが可能な値に設定することが好ましい。より具体的に、本例においては、連続的な電流によりUVLEDに紫外線の連続照射を行わせるのではなく、パルス駆動を大きくすることにより、点灯時にUVLEDに流す電流値を適切に大きくすることができる。また、この場合、例えば、紫外線光源220におけるUVLEDの定格上限温度と、UVLEDへの供給電流値との関係について、光源駆動部22からUVLEDへパルス状に電力を供給する場合にはUVLEDの温度が定格上限温度を超えず、かつ、供給電流値の電流を連続的にUVLEDに供給するとUVLEDの温度が定格上限温度を超えるような関係になるように、供給電流値を設定することが好ましい。この場合、UVLEDの定格上限温度とは、例えば、UVLEDの定格における温度の上限のことである。また、供給電流値とは、例えば、光源駆動部22から供給される電力に応じてUVLEDに流れるパルス電流のピーク値のことである。
【0059】
このように構成すれば、例えば、UVLEDに強い紫外線を照射させる大きな電流をUVLEDへ供給しつつ、UVLEDの過熱を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、紫外線光源220の温度が定格上の上限温度を超えて温度が上昇することを防ぎつつ、強い紫外線を適切に照射することができる。
【0060】
また、UVLEDへの供給電流値について、UVLEDの温度との関係で考えた場合、光源駆動部22からUVLEDへパルス状に電力を供給する場合にはUVLEDの温度が80℃を超えず、かつ、供給電流値の電流を連続的にUVLEDに供給するとUVLEDの温度が80℃を超える値に供給電流値を設定することが好ましい。この場合、UVLEDの温度とは、例えば、UVLEDにおいて最も高温になる部分の温度である。また、より具体的に、UVLEDの温度とは、例えば、UVLEDの接合温度(ジャンクション温度)であってよい。
【0061】
また、この場合、供給電流値については、光源駆動部22からUVLEDへパルス状に電力を供給する場合には70℃を超えず、かつ、供給電流値の電流を連続的にUVLEDに供給するとUVLEDの温度が70℃を超える値に設定することが好ましい。また、例えばUVLEDをより低温に保つことが好ましい場合には、この基準の温度について、例えば、60℃等にしてもよい。
【0062】
また、本願の発明者は、硬化の仕方が不均一になることで生じるインクの層のシワについて、シワの発生の仕方がインクの色によって異なることについても更に見出した。シワの発生の仕方がインクの色によって異なると、例えばインクの層の位置によってシワの発生の仕方に差が生じ、インクの層の表面状態がより不均一になるおそれがある。また、その結果、造形の精度がより低下するおそれがある。
【0063】
そのため、上記のようにパルス駆動で強い紫外線を照射する場合、例えば、最もシワが発生しやすい色のインクに合わせて、紫外線を照射する条件を決定することが好ましい。このように構成すれば、例えば、複数種類の色のインクを用いて造形を行う場合において、より高い精度で適切に造形物を造形できる。また、より具体的に、本願の発明者は、図1(b)等に関連して説明をしたように、YMCKの各色のインクやクリアインク等を含む様々な色のインクを用いて造形を行う場合、例えば、イエロー色のインクについて、特にシワが発生しやすいことを見出した。そのため、紫外線を照射する条件については、イエロー色のインクについてシワが発生しない条件に設定することが好ましい。また、紫外線光源220へ供給するパルス状の電力について、周期T0及び期間T1や、期間T1の間に紫外線光源220へ供給する電流値等については、例えば制御部30から受け取る指示や、パルス設定格納部304に格納されている設定等に基づき、使用する紫外線硬化型インクの特性等に応じて設定することが好ましい。
【0064】
また、上記のように、本例においては、紫外線光源220としてUVLEDを用いることにより、パルス駆動方式により適した構成を実現している。より具体的に、紫外線を発生する光源として、UVLED以外のランプ光源等(例えば、ハロゲンランプ等)を用いる場合、パルス駆動方式の制御を行うと、光源の寿命が著しく短縮されることになる。また、ハロゲンランプ等は、点灯及び消灯の動作における応答時間が長いため、PWM方式の制御等のようなオン・オフによる制御を行うことが難しい。そのため、ハロゲンランプ等を用いる場合において、例えばパルス駆動方式の制御を行おうとすると、制御機構の規模が大きく増大すると考えられる。
【0065】
これに対し、UVLEDの場合、材料等の特性上、パルス駆動方式での制御を行ったとしても、光源の寿命に対する影響はほとんどないと言える。そのため、例えば光源の交換等に伴うコストや、メンテナンス頻度を大きく低減できる。また、点灯及び消灯の動作における応答時間も十分に短いため、大規模な制御機構等を用いることなく、PWM方式の制御等をより適切に行うことができる。
【0066】
以上のように、本例においては、例えば、紫外線光源220をパルス駆動方式で適切に駆動することができる。また、これにより、例えば、点灯時の紫外線光源220の照度を適切かつ十分に高めることができる。そのため、本例によれば、例えば、硬化後のインクの層にシワ等が発生すること等を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高い精度でより適切に造形物を造形できる。
【0067】
続いて、本例の構成に対する補足説明や、変形例の説明等を行う。上記のように、本願の発明者は、様々な実験等により、紫外線の積算光量のみを考慮するのではなく、紫外線の光源による発光の強さ(例えば、照度)について、十分に強い紫外線を照射することで、シワの発生を防いでインクの層をより適切に硬化させ得ることを見出した。これは、強い紫外線を照射することにより、例えば、インクの層の奥までより適切に紫外線を到達させることが可能になり、インクの層の表面付近と内部との間で硬化の仕方の差が生じにくいこと等が影響していると考えられる。
【0068】
また、このような強い紫外線を照射する方法として、本例においては、上記のように、パルス駆動方式でUVLEDに電流を供給している。そして、この場合、インクの層において進行する硬化の様子についても、紫外線を連続照射する場合と異なることが考えられる。例えば、パルス駆動方式でUVLEDを点灯させる場合、インクの硬化の進行中において、インクが完全に硬化していない段階で紫外線が非照射になるタイミングが生じる。この場合、例えば紫外線が照射されているタイミングにおいてラジカル等がインク中に発生して硬化が進み、紫外線が照射されないタイミングではラジカル等の発生等も止まり、硬化の進行が一時的に止まると考えられる。そして、この場合、硬化が段階的に進むことになり、例えば、非照射のタイミングにおいて、硬化中のインクの歪みが緩和されること等も考えられる。また、その結果、硬化後にシワがより発生しにくくなることも考えられる。そのため、本例においては、例えば、パルス駆動方式を用いることで、シワの発生をより適切に抑えているとも考えられる。
【0069】
また、具体的なパルス駆動の仕方等については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変更することも可能である。例えば、上記においては、主に、紫外線光源220(UVLED)をPWM方式で駆動する場合について、説明をした。しかし、紫外線光源220に対するパルス駆動は、例えば、パルス数変調(PNM方式)等の方法で行ってもよい。この場合、パルス数変調とは、例えば、単位時間に出力するパルス数を変化させることでパルス駆動を行う方法のことである。
【0070】
また、上記においては、パルス駆動により紫外線光源220へ供給する電流について、主に、紫外線光源220を点灯させるオンの状態と紫外線光源220を消灯させるオフの状態とを繰り返すように変化させる場合について、説明をした。しかし、強い紫外線を照射する合間のタイミングにおいては、紫外線光源220を完全に消灯させるのではなく、電流値を少なくすることで、紫外線光源220を弱く点灯させること等も考えられる。この場合、光源駆動部22は、例えば、強い紫外線を照射させる大きな電流の供給と、弱い紫外線を照射させる小さな電流の供給とを繰り返すように、紫外線光源220へ電流を供給する。このように構成した場合も、過熱を防ぎつつ、強い紫外線を紫外線光源220に適切に照射させることができる。
【0071】
続いて、本願の発明者が行った実験の結果等について、説明をする。上記においても説明をしたように、本願の発明者は、様々な条件で紫外線を照射する実験を行い、インクの層の硬化の仕方の変化を確認した。また、実験結果に対して様々な検討を行い、得られた知見に基づき、パルス駆動方式で紫外線光源220を点灯させる本例の構成に至った。そこで、本願の発明者が行った実験の一部について、以下において、説明をする。
【0072】
尚、本願の発明者は、以下において説明をする実験以外にも、様々な実験を行った。また、それらの実験を含めて各種の検討を行うことにより、本例の構成に至った。そのため、以下において説明をする実験の結果については、本例の構成と関連する参考の実験の結果と考えることができる。
【0073】
図3〜7は、本願の発明者が行った実験の結果を示す。以下において説明をする実験においては、紫外線光源を様々な条件で点灯させてインクの硬化の仕方を確認する実験(パルス硬化試験)を行った。
【0074】
この実験では、造形物を構成するそれぞれのインクの層に対応するインクの層をシート状の媒体(メディア)上に形成して、様々な条件で紫外線の照射を行い、硬化の仕方の変化等を確認した。また、より具体的に、この実験においては、実験の便宜上、実際の造形装置ではなく、実験用の装置を用いて紫外線の照射を行った。また、この装置においては、媒体にインクを塗布した後、媒体を移動させるための装置であるスライダに媒体を載せ、位置を固定したUVLEDと対向する位置において媒体を移動させつつ、UVLEDから紫外線を照射した。そして、紫外線の照射後に、媒体上のインクが硬化したか否かの確認を行った。また、インクの硬化の確認は、測定中のサンプルに対し、綿棒で触れた場合にインクが伸びなくなった場合に硬化が完了したと判断することで行った。そして、紫外線の照射と硬化の確認とを繰り返すことにより、硬化が完了するまでに行う紫外線の照射の回数(照射回数)を測定した。
【0075】
また、この実験においては、ミマキエンジニアリング社製の紫外線硬化型インク用インクジェットプリンタで使用可能な公知の紫外線硬化型インクであるLF−140クリア型及びLF−140イエロー型のインクを用いた。これらのインクのうち、LF−140クリア型のインクとは、顔料を含まないLF−140型のインク(無色透明のクリアインク)である。また、この場合、LF−140クリア型とは、このようなインクを示す便宜上の名称である。また、LF−140イエローは、イエロー色(Y色)のLF−140型のインクである。また、媒体としては、白色のPETのシートを用いた。また、媒体へのインクの塗布は、インクジェットヘッドを用いてベタ印字を行うことで行った。
【0076】
また、媒体上に形成するインクの膜厚は、20μm、35μm、及び55μmの中で変化させた。UVLEDをパルス駆動で点灯させる場合のパルス電流のピーク値(供給電流値)は、100mA、200mA、及び300mA〜700mAの中で変化させた。また、パルスの周波数は、200Hz、400Hz、600Hz、800Hz、及び1000Hzの中で変化させた。パルスのデューティ(Duty)は、8%、10%、13%、17%、20%、25%、33%、40%、50%、60%、67%、80%の中で変化させた。更に、ランプのギャップ(Gap)は、2mmとした。スライダの移動速度(スライダ速度)は、296mm/s(98%設定)とした。また、照度を測定する照度測定機としては、浜松ホトニクス社製の照度計を用いた。
【0077】
また、この実験においては、UVLEDをパルス駆動する前に、UVLEDを連続点灯させた状態での測定を行った。図3は、紫外線光源に対応するUVLEDを連続点灯させた場合の実験結果である連続点灯結果(前結果)を示す。図3(a)は、照度測定結果と積算光量の概算結果を示す。図3(b)は、UVLEDへ供給する電流と照度との関係を示す。図3(c)は、UVLEDへ供給する電流と1回あたりの積算光量との関係を示す。図3(d)は、紫外線を照射する条件とシワの発生の有無との対応を示す。
【0078】
尚、上記においても説明をしたように、UVLEDを連続的点灯させる場合、過熱の問題が生じやすくなる。そのため、この実験において、UVLEDへ供給する電流は、500mA以下にした。
【0079】
図中に示す結果からわかるように、UVLEDへ供給する電流値が小さい場合、硬化が完了するまでの紫外線の照射回数が多くなる。これは、例えば、インクの硬化を完了させるためには、所定量以上の積算光量の紫外線を照射することが必要であるためである。
【0080】
また、硬化後の状態については、例えば、インクの膜厚が大きい場合において、シワが発生しやすくなる。これは、例えば、膜厚が大きい場合、インクの層の表面と内部との間で硬化の仕方(硬化の進行等)に差が生じること等の影響が生じやすいためであると考えられる。
【0081】
また、インクの色の違いに関しては、例えば、クリアインクを用いる場合と比べて、イエロー色のインクを用いる場合にシワが発生しやすい。また、図中に示した以外の色も含めて考えた場合、本願の発明者が行った実験の結果において、クリアインクを用いる場合に最もシワが発生しにくく、イエロー色のインクを用いる場合に最もシワが発生しやすかった。このような差が生じる理由としては、例えば、インクの色によって成分(特に、顔料等の着色剤)が異なるためであると考えられる。
【0082】
また、クリア色の場合に最もシワが発生しにくい理由については、例えば、インクの層の内部にまで紫外線が透過しやすいためであると考えられる。そのため、シワの発生を防ぐためには、例えば、インクの層の内部にまで紫外線がより適切に到達するように、強い紫外線を照射することが好ましいと考えられる。
【0083】
続いて、UVLEDをパルス駆動により点灯させた場合の実験の結果について、説明をする。図4〜7は、UVLEDをパルス駆動により点灯させた場合の実験の結果を示す。
【0084】
図4は、パルス電流のピーク値(供給電流値)を700mAにして紫外線を照射した場合の実験結果を示す。図4(a)は、パルス駆動のデューティ(Duty)や周波数を様々に変化させた場合について、照度の測定結果と、積算光量の概算結果とを示す。図4(b)は、デューティと照度との関係を示すグラフである。図4(c)は、周波数と照度との関係を示すグラフである。
【0085】
図5は、パルス電流のピーク値(供給電流値)を500mAにして紫外線を照射した場合の実験結果を示す。図5(a)は、パルス駆動のデューティ(Duty)や周波数を様々に変化させた場合について、照度の測定結果と、積算光量の概算結果とを示す。図5(b)は、デューティと照度との関係を示すグラフである。図5(c)は、周波数と照度との関係を示すグラフである。
【0086】
図6は、紫外線を照射する条件とシワの発生の有無との対応を示す。図6(a)は、パルス電流のピーク値を700mAにした場合の実験結果を示す。図6(b)は、パルス電流のピーク値を500mAにした場合の実験結果を示す。図7は、積算光量の概算結果を揃えての比較が可能なように様々な条件での実験結果を示す。
【0087】
以上の実験結果からわかるように、クリアインクを用いる場合においては、20μm〜55μmまで全ての膜厚において、シワを発生させずにインクの層を硬化できている。また、これらの結果から、電流値を大きくすることでシワの発生を抑え得ることが理解できる。
【0088】
尚、図中に実験結果として示した照度は、単位時間における平均の照度である。そのため、パルス駆動を行う場合において、デューティが小さい場合には、デューティに応じて低下している。しかし、シワの発生を抑えるためには、平均の照度ではなく、点灯時の照度を大きくすることが重要である。そのため、点灯時にUVLEDに供給する電流を大きくすることが望ましい。
【0089】
また、図中に示した実験結果の範囲において、イエロー色のインクを用いる場合、インクの膜厚を35μm以上にすると、UVLEDを連続点灯させた場合及びパルス駆動を行った場合のいずれの場合にも、シワが発生している。しかし、本願の発明者が行った更なる実験の結果や検討結果に基づいた場合、UVLEDの点灯時に供給する電流値をより大きくすれば、イエロー色のインクを用いる場合にも、シワの発生を適切に抑えることができる。また、この場合において、パルス駆動を行うことにより、UVLEDの過熱を防ぎつつ、大きな電流を適切にUVLEDへ供給できる。
【0090】
また、図中に示した実験結果のみを見た場合、積算光量が同じであれば、シワの発生の有無も同様であるようにも見える。しかし、上記においても説明をしたように、強い紫外線の連続照射をUVLEDに行わせると、UVLEDの過熱の問題等が生じることになる。また、弱い紫外線を用いて連続照射を行う場合、必要な積算光量に達するまでの時間が大きく増大することになる。また、その結果、造形物の造形速度が低下して、造形物の造形の効率が大幅に低下することになる。また、弱い紫外線を照射する場合、インクの層の内部にまで十分に紫外線が到達しないおそれもある。また、その結果、積算光量を大きくしても、インクの層を適切に硬化させることができない場合もある。これに対し、UVLEDをパルス駆動により点灯させる場合、これらの問題の発生を適切に防ぎつつ、インクの層をより適切に硬化させることができる。また、これにより、より高い精度で効率的に造形物を造形すること等が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、例えば造形装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0092】
10・・・造形装置、12・・・ヘッド部、14・・・造形台、16・・・主走査駆動部、18・・・副走査駆動部、20・・・積層方向駆動部、22・・・光源駆動部、30・・・制御部、50・・・造形物、202・・・インクジェットヘッド、220・・・紫外線光源、222・・・平坦化ローラユニット、302・・・基準パルス発生部、304・・・パルス設定格納部、306・・・パルス変調部、308・・・駆動電力出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7