特許第6905907号(P6905907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905907
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】線状部材の最小径測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/08 20060101AFI20210708BHJP
   G01N 3/06 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   G01B11/08 H
   G01N3/06
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-186891(P2017-186891)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-60777(P2019-60777A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592244376
【氏名又は名称】日鉄テクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 英二
(72)【発明者】
【氏名】松永 大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昭行
【審査官】 佐々木 祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−146787(JP,A)
【文献】 特開2000−146789(JP,A)
【文献】 特開昭61−228329(JP,A)
【文献】 実開昭60−019948(JP,U)
【文献】 米国特許第05199304(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01N 3/00 − 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張試験によって破断した断面略円形の線状部材の破断面を含む所定部位における最小径を測定する装置であって、
前記線状部材が破断して得られた一方の線状部材片の破断面を含む部位を該一方の線状部材片の径方向から照明し、前記線状部材が破断して得られた他方の線状部材片の破断面を含む部位を該他方の線状部材片の径方向から照明する照明手段と、
前記一方の線状部材片を挟んで前記照明手段と反対側に配置され、前記一方の線状部材片の破断面を含む部位を撮像することで第1撮像画像を取得すると共に、前記他方の線状部材片を挟んで前記照明手段と反対側に配置され、前記他方の線状部材片の破断面を含む部位を撮像することで第2撮像画像を取得する撮像手段と、
前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像に画像処理を施すことで、前記線状部材の前記所定部位における最小径を算出する画像処理手段とを備え、
前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像は、一の方向が前記線状部材の径方向に相当し、他の方向が前記線状部材の軸方向に相当する直交座標系の画像であり、
前記画像処理手段は、
前記第1撮像画像に画像処理を施すことで、前記一方の線状部材片の径方向の両エッジに相当する画素群である第1エッジ及び第2エッジを抽出すると共に、前記第2撮像画像に画像処理を施すことで、前記他方の線状部材片の径方向の両エッジに相当する画素群であって、前記第1エッジに対応する第3エッジ、及び、前記第2エッジに対応する第4エッジを抽出するエッジ抽出手順と、
前記第1エッジ及び前記第2エッジをそれぞれ構成する画素のうち、前記破断面側の端に位置する端部画素と、前記一方の線状部材片の軸方向についての前記第1エッジ及び前記第2エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素とを、前記第1エッジ及び前記第2エッジの結合候補画素として抽出すると共に、前記第3エッジ及び前記第4エッジをそれぞれ構成する画素のうち、前記破断面側の端に位置する端部画素と、前記他方の線状部材片の軸方向についての前記第3エッジ及び前記第4エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素とを、前記第3エッジ及び前記第4エッジの結合候補画素として抽出する結合候補画素抽出手順と、
前記第1エッジ、前記第2エッジ、前記第3エッジ及び前記第4エッジの結合候補画素のうち、前記第1エッジの結合候補画素及び前記第2エッジの結合候補画素を結ぶ第1線分と、前記第3エッジの結合候補画素及び前記第4エッジの結合候補画素を結ぶ第2線分とが成す角度、及び、前記第1線分と前記第2線分との長さの差の絶対値が、それぞれ所定のしきい値未満となる組み合わせの結合候補画素を、前記第1エッジ、前記第2エッジ、前記第3エッジ及び前記第4エッジの結合画素として特定する結合画素特定手順と、
前記第1エッジの結合画素と前記第3エッジの結合画素との対、又は、前記第2エッジの結合画素と前記第4エッジの結合画素との対を、結合画素対として決定する結合画素対決定手順と、
前記結合画素対が結合するように、前記第3エッジ及び前記第4エッジに対して、前記第1エッジ及び前記第2エッジを一体的に相対移動させるエッジ結合手順と、
前記相対移動後の前記第1エッジ又は前記第3エッジと、前記相対移動後の前記第2エッジ又は前記第4エッジとの前記線状部材の径方向についての離間距離に基づき、前記線状部材の前記所定部位における最小径を算出する最小径算出手順と、
を実行することを特徴とする線状部材の最小径測定装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、
前記結合画素対決定手順において前記第1エッジの結合画素と前記第3エッジの結合画素との対を結合画素対として決定したときに、前記エッジ結合手順において相対移動させた後の前記第2エッジ及び前記第4エッジが前記線状部材の軸方向にオーバラップしない場合、又は、前記結合画素対決定手順において前記第2エッジの結合画素と前記第4エッジの結合画素との対を結合画素対として決定したときに、前記エッジ結合手順において相対移動させた後の前記第1エッジ及び前記第3エッジが前記線状部材の軸方向にオーバラップしない場合、前記結合画素対決定手順で決定した結合画素対を更新する結合画素対更新手順を実行した後に、再び前記結合手順を実行し、
前記結合画素対更新手順においては、前記結合候補画素抽出手順で抽出した前記第1エッジの結合候補画素と前記第3エッジの結合候補画素とを結合させた場合の前記第2エッジ及び前記第4エッジの前記線状部材の軸方向についてのオーバラップ量と、前記結合候補画素抽出手順で抽出した前記第2エッジの結合候補画素と前記第4エッジの結合候補画素とを結合させた場合の前記第1エッジ及び前記第3エッジの前記線状部材の軸方向についてのオーバラップ量とを算出し、該算出したオーバラップ量が最大となる、前記第1エッジの結合候補画素と前記第3エッジの結合候補画素との対、又は、前記第2エッジの結合候補画素と前記第4エッジの結合候補画素との対を、結合画素対として更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載の線状部材の最小径測定装置。
【請求項3】
前記一方の線状部材片及び前記他方の線状部材片を保持すると共に、前記一方の線状部材片及び前記他方の線状部材片をそれぞれ軸方向周りに回転させる保持手段を備え、
前記撮像手段は、前記保持手段によって回転する前記一方の線状部材片及び前記他方の線状部材片について所定ピッチ毎に前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像を取得し、
前記画像処理手段は、前記撮像手段によって取得された所定ピッチ毎の前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像にそれぞれ画像処理を施すことで、前記線状部材の軸方向周りの所定ピッチ毎の最小径を算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の線状部材の最小径測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張試験によって破断した断面略円形の線状部材の破断面を含む所定部位における最小径を精度良く測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線材や棒材などの断面略円形の線状部材には、その機械的特性を評価するために、引張試験が施される場合がある。引張試験で評価される機械的特性の一つとして、絞りが知られている。絞りは、引張試験によって発生した断面積の最大変化率である。破断後の最小断面積をA、原断面積をA0とすると、絞りφは、以下の式(1)で表される値となる。
φ=(A0−A)/A0×100[%] ・・・(1)
【0003】
従来、上記の絞りは、作業者がノギスやマイクロメータを用いた手作業で測定するのが一般的である。具体的には、絞りφを計算するのに用いる破断後の最小断面積Aを得るには、線状部材が破断して得られた一対の線状部材片の破断面同士を突き合わせて固定した状態で、直交する2方向からノギス等を用いて線状部材の軸方向における最小径(直径を測定する部位を軸方向に変化させた場合に最小となる直径)をそれぞれ測定する。そして、例えば、直交する2方向から測定した最小径の平均値を直径として算出される円の面積が、破断後の最小断面積Aとして用いられる。
【0004】
上記従来の絞り測定方法では、作業者が手作業で線状部材の最小径を測定するため、多大な労力と時間を要する。また、破断面が単純な平面とならない場合が多いこともあり、一対の線状部材片の破断面同士を精度良く突き合わせることができない(破断直前の線状部材の状態に戻すことができない)ことに起因した測定誤差が生じるおそれがある。さらに、ノギス等を用いて最小径を有する部位を特定する作業の精度は、作業者のスキルに依存するため、作業者によって測定値がばらつくおそれもある。
【0005】
上記のような手作業の問題を解決するため、特許文献1や2に記載のように、自動で絞りを測定するための装置が提案されている。
特許文献1、2に記載の装置は、線状部材の破断面を含む所定部位を撮像し、取得された撮像画像に画像処理を施すことで、線状部材の軸方向における最小径を自動で測定する装置である。
【0006】
特許文献1、2に記載の装置によれば、作業者が手作業で測定する場合と異なり、測定時間が長くなったり、測定値のばらつきが生じる問題は低減されると考えられる。
しかしながら、特許文献1、2に記載の装置は、実際の破断面と異なり、線状部材の破断面が単純な平面(撮像画像上では直線)である場合のみを前提としているため、破断面が平面でない場合に測定精度が悪化する問題がある。例えば、特許文献2に記載の装置では、撮像画像に画像処理を施すことで、線状部材が破断して得られた一対の線状部材片の輪郭に相当する領域をそれぞれ抽出し、一対の線状部材片の破断面に相当する領域同士を突き合わせた後に、突き合わさった破断面における線状部材の径を算出している(特許文献2の段落0045、0046、図11)。この際、破断面に相当する領域が直線であることを前提にしている(特許文献2の段落0033、図11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−228329号公報
【特許文献2】特許第3725714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、引張試験によって破断した断面略円形の線状部材の破断面を含む所定部位における最小径を精度良く測定する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行った。
まず、特許文献2と同様に、線状部材片を挟んで照明手段と撮像手段とを対向配置することで得られる撮像画像に画像処理を施すことを考えた。そして、撮像画像において、線状部材片の径方向の両エッジを抽出し、一方の線状部材片の両エッジと、他方の線状部材片の両エッジとを突き合わせて結合させた後、両エッジの径方向の離間距離に基づき、線状部材の最小径を算出することを考えた。
この際、一律に各線状部材片の両エッジの破断面側の端に位置する端部画素同士を結合させると、実際の破断面が平面でない場合があることに起因して、結合後の両エッジの径方向の離間距離に基づき線状部材の最小径を算出したのでは十分な精度が得られない場合のあることがわかった。
【0010】
そこで、本発明者らは更に鋭意検討を行った結果、結合させる候補となる画素として、破断面側の端に位置する端部画素のみならず、線状部材片の軸方向についての両エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素も含めることで、十分な精度が得られることを知見した。
本発明は、上記本発明者らの知見に基づき完成したものである。
【0011】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、引張試験によって破断した断面略円形の線状部材の破断面を含む所定部位における最小径を測定する装置であって、前記線状部材が破断して得られた一方の線状部材片の破断面を含む部位を該一方の線状部材片の径方向から照明し、前記線状部材が破断して得られた他方の線状部材片の破断面を含む部位を該他方の線状部材片の径方向から照明する照明手段と、前記一方の線状部材片を挟んで前記照明手段と反対側に配置され、前記一方の線状部材片の破断面を含む部位を撮像することで第1撮像画像を取得すると共に、前記他方の線状部材片を挟んで前記照明手段と反対側に配置され、前記他方の線状部材片の破断面を含む部位を撮像することで第2撮像画像を取得する撮像手段と、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像に画像処理を施すことで、前記線状部材の前記所定部位における最小径を算出する画像処理手段とを備え、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像は、一の方向が前記線状部材の径方向に相当し、他の方向が前記線状部材の軸方向に相当する直交座標系の画像であり、前記画像処理手段は、以下の各手順を実行することを特徴とする線状部材の最小径測定装置を提供する。
(1)エッジ抽出手順:前記第1撮像画像に画像処理を施すことで、前記一方の線状部材片の径方向の両エッジに相当する画素群である第1エッジ及び第2エッジを抽出すると共に、前記第2撮像画像に画像処理を施すことで、前記他方の線状部材片の径方向の両エッジに相当する画素群であって、前記第1エッジに対応する第3エッジ、及び、前記第2エッジに対応する第4エッジを抽出する。
(2)結合候補画素抽出手順:前記第1エッジ及び前記第2エッジをそれぞれ構成する画素のうち、前記破断面側の端に位置する端部画素と、前記一方の線状部材片の軸方向についての前記第1エッジ及び前記第2エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素とを、前記第1エッジ及び前記第2エッジの結合候補画素として抽出すると共に、前記第3エッジ及び前記第4エッジをそれぞれ構成する画素のうち、前記破断面側の端に位置する端部画素と、前記他方の線状部材片の軸方向についての前記第3エッジ及び前記第4エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素とを、前記第3エッジ及び前記第4エッジの結合候補画素として抽出する。
(3)結合画素特定手順:前記第1エッジ、前記第2エッジ、前記第3エッジ及び前記第4エッジの結合候補画素のうち、前記第1エッジの結合候補画素及び前記第2エッジの結合候補画素を結ぶ第1線分と、前記第3エッジの結合候補画素及び前記第4エッジの結合候補画素を結ぶ第2線分とが成す角度、及び、前記第1線分と前記第2線分との長さの差の絶対値が、それぞれ所定のしきい値未満となる組み合わせの結合候補画素を、前記第1エッジ、前記第2エッジ、前記第3エッジ及び前記第4エッジの結合画素として特定する。
(4)結合画素対決定手順:前記第1エッジの結合画素と前記第3エッジの結合画素との対、又は、前記第2エッジの結合画素と前記第4エッジの結合画素との対を、結合画素対として決定する。
(5)エッジ結合手順:前記結合画素対が結合するように、前記第3エッジ及び前記第4エッジに対して、前記第1エッジ及び前記第2エッジを一体的に相対移動させる。
(6)最小径算出手順:前記相対移動後の前記第1エッジ又は前記第3エッジと、前記相対移動後の前記第2エッジ又は前記第4エッジとの前記線状部材の径方向についての離間距離に基づき、前記線状部材の前記所定部位における最小径を算出する。
【0012】
本発明に係る線状部材の最小径測定装置によれば、画像処理手段がエッジ抽出手順を実行することで、一方の線状部材片の径方向の両エッジに相当する画素群である第1エッジ及び第2エッジが抽出され、他方の線状部材片の径方向の両エッジに相当する画素群である第3エッジ及び第4エッジが抽出される。ここで、第3エッジは第1エッジに対応し、第4エッジは第2エッジに対応する。すなわち、線状部材が破断する直前において、第1エッジ及び第3エッジは、線状部材の中心軸に対して径方向の同じ側に位置するエッジに相当する画素群であり、第2エッジ及び第4エッジは、線状部材の中心軸に対して径方向の同じ側(第1エッジ及び第3エッジと反対側)に位置するエッジに相当する画素群である。
【0013】
次いで、画像処理手段が結合候補画素抽出手順を実行することで、第1〜第4エッジをそれぞれ構成する画素のうち、破断面側の端に位置する端部画素と、各線状部材片の軸方向についての第1〜第4エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素とが、結合候補画素として抽出される。このように、本発明では、結合候補画素として、破断面側の端に位置する端部画素のみならず、各線状部材片の軸方向についての第1〜第4エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素も含めることで、後述のエッジ結合手順において第1〜第4エッジを適切に結合させることができ、後述の最小径算出手順において最小径を十分な精度で測定可能になる。
【0014】
次いで、画像処理手段が結合画素特定手順を実行することで、第1〜第4エッジの結合候補画素のうち、所定の条件を満足する組み合わせの結合候補画素が、第1〜第4エッジの結合画素として特定される。すなわち、第1エッジ及び第3エッジの結合画素は、第1エッジ及び第3エッジを突き合わせた場合(第3エッジに対して第1エッジを相対移動させた場合)に互いに結合させるべき画素として特定されることになる。同様に、第2エッジ及び第4エッジの結合画素は、第2エッジ及び第4エッジを突き合わせた場合(第4エッジに対して第2エッジを相対移動させた場合)に互いに結合させるべき画素として特定されることになる。
【0015】
次いで、画像処理手段が結合画素対決定手順を実行することで、第1エッジの結合画素と第3エッジの結合画素との対、又は、第2エッジの結合画素と第4エッジの結合画素との対が、結合画素対として決定される。すなわち、いずれか一方の結合画素の対が、後述のエッジ結合手順で実際に結合させる画素対として決定されることになる。
【0016】
次いで、画像処理手段がエッジ結合手順を実行することで、結合画素対(結合画素対決定手順で決定された何れか一方の結合画素の対)が結合するように、第3エッジ及び第4エッジに対して、第1エッジ及び第2エッジが一体的に相対移動する。
【0017】
最後に、画像処理手段が最小径算出手段を実行することで、線状部材の最小径が算出される。
本発明によれば、前述のように、結合候補画素抽出手順において、結合候補画素として、破断面側の端に位置する端部画素のみならず、各線状部材片の軸方向についての第1〜第4エッジの微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素も含めることで、エッジ結合手順において第1〜第4エッジを適切に結合させることができ、最後の最小径算出手順において最小径を十分な精度で測定可能になる。
【0018】
ここで、本発明者らが鋭意検討した結果によれば、エッジ結合手順において、結合画素対を結合させた場合に、結合画素対と反対側に位置するエッジ同士(結合画素対が第1エッジの結合画素と第3エッジの結合画素との対である場合、この反対側に位置する第2エッジ及び第4エッジを意味する。また、結合画素対が第2エッジの結合画素と第4エッジの結合画素との対である場合、この反対側に位置する第1エッジ及び第3エッジを意味する)が線状部材の軸方向にオーバラップしない場合が存在する。この場合には、結合候補画素抽出手順で抽出した第1〜第4エッジの結合候補画素のうちから、結合候補画素の対と反対側に位置するエッジ同士のオーバラップ量が最大となる結合候補画素の対を新たな結合画素対として決定し直した方が、最小径算出手段において最小径をより一層精度良く測定可能であることを知見した。
【0019】
上記本発明者らの知見に基づき、好ましくは、前記画像処理手段は、前記結合画素対決定手順において前記第1エッジの結合画素と前記第3エッジの結合画素との対を結合画素対として決定したときに、前記エッジ結合手順において相対移動させた後の前記第2エッジ及び前記第4エッジが前記線状部材の軸方向にオーバラップしない場合、又は、前記結合画素対決定手順において前記第2エッジの結合画素と前記第4エッジの結合画素との対を結合画素対として決定したときに、前記エッジ結合手順において相対移動させた後の前記第1エッジ及び前記第3エッジが前記線状部材の軸方向にオーバラップしない場合、前記結合画素対決定手順で決定した結合画素対を更新する結合画素対更新手順を実行した後に、再び前記結合手順を実行する。
前記結合画素対更新手順においては、前記結合候補画素抽出手順で抽出した前記第1エッジの結合候補画素と前記第3エッジの結合候補画素とを結合させた場合の前記第2エッジ及び前記第4エッジの前記線状部材の軸方向についてのオーバラップ量と、前記結合候補画素抽出手順で抽出した前記第2エッジの結合候補画素と前記第4エッジの結合候補画素とを結合させた場合の前記第1エッジ及び前記第3エッジの前記線状部材の軸方向についてのオーバラップ量とを算出し、該算出したオーバラップ量が最大となる、前記第1エッジの結合候補画素と前記第3エッジの結合候補画素との対、又は、前記第2エッジの結合候補画素と前記第4エッジの結合候補画素との対を、結合画素対として更新する。
【0020】
上記の好ましい構成によれば、最小径算出手段において最小径をより一層精度良く測定可能である。
【0021】
好ましくは、前記一方の線状部材片及び前記他方の線状部材片を保持すると共に、前記一方の線状部材片及び前記他方の線状部材片をそれぞれ軸方向周りに回転させる保持手段を備え、前記撮像手段は、前記保持手段によって回転する前記一方の線状部材片及び前記他方の線状部材片について所定ピッチ毎に前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像を取得し、前記画像処理手段は、前記撮像手段によって取得された所定ピッチ毎の前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像にそれぞれ画像処理を施すことで、前記線状部材の軸方向周りの所定ピッチ毎の最小径を算出する。
【0022】
上記の好ましい構成によれば、線状部材の軸方向周りの所定ピッチ毎の最小径、換言すれば、線状部材の周方向に沿って所定ピッチ毎の最小径を算出することができる。このため、例えば、所定ピッチ毎に線状部材の周方向一周分の最小径を算出し、算出した複数の最小径の中で最も小さい最小径を線状部材の最終的な最小径として用いると共に、最終的な最小径と直交する方向の最小径を用いることで、線状部材の絞りを精度良く評価可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、引張試験によって破断した断面略円形の線状部材の破断面を含む所定部位における最小径を精度良く測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る最小径測定装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示す画像処理手段が実行する手順を概略的に示すフロー図である。
図3図1に示す撮像手段によって取得される撮像画像例及びエッジの抽出例を示す図である。
図4図2に示す結合候補画素抽出手順の説明図である。
図5図2に示す結合画素特定手順の説明図である。
図6図2に示すエッジ結合手順の説明図である。
図7図2に示す最小径算出手順の説明図である。
図8】結合画素対と反対側に位置するエッジ同士が線状部材の軸方向にオーバラップしない場合の例を示す説明図である。
図9図2に示す結合画素対更新手順の説明図である。
図10図1に示す最小径測定装置及び比較例の最小径測定装置を用いて、線状部材の最小径を実際に測定した結果の一例を示す図である。
図11図1に示す最小径測定装置を用いて、線状部材の最小径を実際に測定した結果の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る線状部材の最小径測定装置(以下、適宜、単に「最小径測定装置」という)について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る最小径測定装置の概略構成を示す図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は正面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る最小径測定装置100は、引張試験によって破断した断面略円形の線状部材(一対の線状部材片Tから構成される)の破断面TSを含む所定部位における最小径を測定する装置であって、照明手段1と、撮像手段2と、画像処理手段3と、保持手段4とを備えている。
【0026】
本実施形態の保持手段4は、水平方向(図1に示すX方向)に並設された保持手段4a及び保持手段4bから構成されている。保持手段4aは、線状部材が破断して得られた一方の線状部材片T1を保持すると共に、一方の線状部材片T1を軸方向周りに回転させる。具体的には、例えば、一方の線状部材片T1の破断面TSと反対側の端部が保持手段4aが具備するチャック等によって取り付けられて保持され、そのチャック等が保持手段4aが具備するモータによって回転可能とされている。保持手段4bも同様に、線状部材が破断して得られた他方の線状部材片T2を保持すると共に、他方の線状部材片T2を軸方向周りに回転させる。
【0027】
本実施形態の照明手段1は、水平方向(図1に示すX方向)に並設された照明手段1a及び照明手段1bから構成されている。照明手段1aは、一方の線状部材片T1の破断面TSを含む部位を一方の線状部材片T1の径方向(図1のZ方向)から照明する。同様に、照明手段1bは、他方の線状部材片T2の破断面TSを含む部位を他方の線状部材片T2の径方向から照明する。照明手段1としては、例えば、青色LEDが好適に用いられる。
【0028】
本実施形態の撮像手段2は、照明手段1の並設方向(図1に示すX方向)に移動可能とされている。そして、撮像手段2は、一方の線状部材片T1を挟んで照明手段1aと反対側の位置(図1(a)の実線で示す位置)に移動した状態で、一方の線状部材片T1の破断面TSを含む部位を撮像することで第1撮像画像を取得する。また、撮像手段2は、他方の線状部材片T2を挟んで照明手段1bと反対側の位置(図1(a)の破線で示す位置)に移動した状態で、他方の線状部材片T2の破断面TSを含む部位を撮像することで第2撮像画像を取得する。撮像手段2としては、例えば、2次元のCCDカメラが好適に用いられる。
本実施形態の撮像手段2は、保持手段4によって回転する一方の線状部材片T1及び他方の線状部材片T2について所定ピッチ(本実施形態では周方向に沿って5°ピッチ)毎に第1撮像画像及び第2撮像画像を取得する。より具体的には、0°から175°まで5°ピッチ毎に第1撮像画像及び第2撮像画像を取得する。
【0029】
画像処理手段3は、第1撮像画像及び第2撮像画像に画像処理を施すことで、線状部材の所定部位における最小径を算出する。本実施形態では、撮像手段2によって取得された所定ピッチ(5°ピッチ)毎の第1撮像画像及び第2撮像画像にそれぞれ画像処理を施すことで、線状部材の軸方向周りの所定ピッチ毎の最小径を算出する。画像処理手段3は、例えば、最小径を算出するための所定の手順を実行するプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータから構成される。
【0030】
なお、線状部材片T1、T2は、互いの周方向の位相を揃えた状態で、それぞれ保持手段4a、4bに取り付けられる。すなわち、保持手段4a、4bによって回転する前の線状部材片T1、T2を撮像手段2で撮像した場合に、破断直後の線状部材片T1、T2を撮像する場合と同等の線状部材片T1、T2の周方向部位が撮像されるように取り付けられる。これは、例えば、破断直後に引張試験機(図示せず)に取り付けられた状態(線状部材片T1、T2の周方向の位相が揃った状態)から保持手段4a、4bまで線状部材片T1、T2を搬送する際に、各線状部材片T1、T2の周方向の位相が互いにずれないように搬送することで実現可能である。
また、本実施形態では、線状部材片T1、T2毎に照明手段1a、1bを設けているが、線状部材片T1、T2を一度に照明可能な大きさの照明手段を設けることも可能である。
さらに、本実施形態では、撮像手段2の位置を移動させることで、線状部材片T1、T2を撮像しているが、線状部材片T1、T2毎に異なる撮像手段を設けることも可能である。
【0031】
以下、画像処理手段3が実行する手順について説明する。
図2は、画像処理手段3が実行する手順を概略的に示すフロー図である。
図2に示すように、撮像手段2によって取得された第1撮像画像及び第2撮像画像が画像処理手段3に入力される(図2のS1)。図3(a)は、撮像手段2によって取得された撮像画像(第1撮像画像又は第2撮像画像)の一例を示す図である。第1撮像画像及び第2撮像画像は、一の方向(図3(a)に示すX方向)が線状部材(線状部材片T)の径方向に相当し、他の方向(図3(a)に示すY方向)が線状部材(線状部材片T)の軸方向に相当する直交座標系の画像である。図3(a)に示すように、第1撮像画像及び第2撮像画像においては、線状部材によって照明手段1からの照明光が遮られるため、線状部材(線状部材片T)に相当する画素領域が暗く撮像され、その周囲は明るく撮像されることになる。
【0032】
最初に、画像処理手段3は、エッジ抽出手順を実行する(図2のS2)。図3(b)は、エッジ抽出手段によって抽出された第1〜第4エッジの例を示す図である。図3(b)に示すように、エッジ抽出手順において、画像処理手段3は、第1撮像画像に画像処理を施すことで、一方の線状部材片T1の径方向(X方向)の両エッジに相当する画素群である第1エッジE1及び第2エッジE2を抽出する。同様に、画像処理手段3は、第2撮像画像に画像処理を施すことで、他方の線状部材片T2の径方向の両エッジに相当する画素群である第3エッジE3及び第4エッジE4を抽出する。第3エッジE3は第1エッジE1に対応し、第4エッジE4は第2エッジE2に対応する。すなわち、線状部材が破断する直前において、第1エッジE1及び第3エッジE3は、線状部材の中心軸に対して径方向の同じ側に位置するエッジに相当する画素群であり、第2エッジE2及び第4エッジE4は、線状部材の中心軸に対して径方向の同じ側(第1エッジE1及び第3エッジE3と反対側)に位置するエッジに相当する画素群である。第1エッジE1〜第4エッジE4を抽出するには、例えば、ソーベルフィルタなど、公知の画像処理フィルタを用いればよい。
【0033】
なお、本実施形態では、第1撮像画像及び第2撮像画像の双方が、線状部材片Tの破断面TSが上側に位置する状態で取得される(図3(a)参照)ため、第1撮像画像に画像処理を施すことで抽出される第1エッジE1及び第2エッジE2は破断面TS側が上側になり、第2撮像画像に画像処理を施すことで抽出される第3エッジE3及び第4エッジE4も破断面TS側が上側になる(図3(b)参照)。このため、画像処理手段3は、上記のようにして抽出された第1エッジE1及び第2エッジの破断面TS側と、第3エッジE3及び第4エッジE4の破断面TS側とが対向するように、第3エッジE3及び第4エッジE4に対して、第1エッジE1及び第2エッジE2を一体的に180°相対回転させる(図4参照)。例えば、線状部材片Tが引張試験機に取り付けられた状態で第1撮像画像及び第2撮像画像が取得される場合など、第1撮像画像及び第2撮像画像の何れか一方が、線状部材片Tの破断面TSが上側に位置する状態で取得され、何れか他方が、線状部材片Tの破断面TSが下側に位置する状態で取得されるのであれば、上記の相対回転は不要である。
【0034】
次に、画像処理手段3は、結合候補画素抽出手順を実行する(図2のS3)。図4は、結合候補画素抽出手順の説明図である。図4に示すように、結合候補画素抽出手順において、画像処理手段3は、第1エッジE1及び第2エッジE2をそれぞれ構成する画素のうち、破断面TS側の端に位置する端部画素E11、E21と、変化画素E12、E13、E22とを、第1エッジE1及び第2エッジE2の結合候補画素として抽出する。変化画素は、一方の線状部材片T1の軸方向(図4に示すY方向)についての第1エッジE1及び第2エッジE2の微分値ΔX/ΔYの絶対値が所定のしきい値Thを超える画素である。第1エッジE1の微分値ΔX/ΔYは、第1エッジE1を構成する一の画素と、この一の画素からY方向にΔYだけ離れた画素とのX方向の変位量ΔXによって算出される値である。ΔYは、例えば1画素に設定される。第2エッジE2の微分値ΔX/ΔYについても同様である。
また、画像処理手段3は、第3エッジE3及び第4エッジE4をそれぞれ構成する画素のうち、破断面TS側の端に位置する端部画素E31、E41と、変化画素とを、第3エッジE3及び第4エッジE4の結合候補画素として抽出する。変化画素は、他方の線状部材片T2の軸方向についての第3エッジE3及び第4エッジE4の微分値の絶対値が所定のしきい値を超える画素である。図4に示す例では、第3エッジE3及び第4エッジE4の微分値の絶対値が所定のしきい値を超える変化画素が存在しないため、破断面TS側の端に位置する端部画素E31、E41のみが結合候補画素として抽出されている。
【0035】
次に、画像処理手段3は、結合画素特定手順を実行する(図2のS4)。図5は、結合画素特定手順の説明図である。図5に示すように、結合画素特定手順において、画像処理手段3は、第1エッジE1、第2エッジE2、第3エッジE3及び第4エッジE4の結合候補画素のうち、第1エッジE1の結合候補画素E11〜E13及び第2エッジE2の結合候補画素E21、E22を結ぶ第1線分L1(図5では、結合候補画素E13及びE22を結ぶ第1線分のみを図示)と、第3エッジE3の結合候補画素E31及び第4エッジE4の結合候補画素E41を結ぶ第2線分L2とが成す角度、及び、第1線分L1と第2線分L2との長さの差の絶対値が、それぞれ所定のしきい値未満となる組み合わせの結合候補画素を、第1エッジE1、第2エッジE2、第3エッジE3及び第4エッジE4の結合画素として特定する。
具体的には、図5に示す例では、第1線分L1として、第1エッジE1の3つの結合候補画素E11〜E13の何れかと、第2エッジE2の2つの結合候補画素E21、E22の何れかとを結ぶ6つの線分が考えられる。第2線分L2としては、第3エッジE3の1つの結合候補画素E31と、第4エッジE4の1つの結合候補画素E41とを結ぶ1つの線分のみが考えられる。そして、画像処理手段3は、6つの第1線分L1と1つの第2線分L2とが成す角度と、6つの第1線分L1と1つの第2線分L2との長さの差の絶対値とを順次算出し、角度及び長さの差の絶対値の何れもが所定のしきい値未満となる(更に、本実施形態では、先に算出した角度及び長さの差の絶対値よりも小さくなる)第1線分L1と第2線分L2との組み合わせを特定し、特定された第1線分L1及び第2線分L2を形成する結合候補画素を、第1エッジE1、第2エッジE2、第3エッジE3及び第4エッジE4の結合画素として特定する。
図5に示す例では、第1エッジE1の結合画素はE13、第2エッジE2の結合画素はE22、第3エッジE3の結合画素はE31、第4エッジE4の結合画素はE41に特定される。
【0036】
次に、画像処理手段3は、結合画素対決定手順を実行する(図2のS5)。結合画素対決定手順において、画像処理手段3は、第1エッジE1の結合画素E13と第3エッジE3の結合画素E31との対、又は、第2エッジE2の結合画素E22と第4エッジE4の結合画素E41との対を、結合画素対として決定する。何れの結合画素の対を結合画素対として決定するのかは任意に選択可能である。以下では、第1エッジE1の結合画素E13と第3エッジE3の結合画素E31との対を結合画素対として決定した場合を例に挙げて説明する。
【0037】
次に、画像処理手段3は、エッジ結合手順を実行する(図2のS6)。図6は、エッジ結合手順の説明図である。図6(a)は全体図であり、図6(b)は図6(a)の部分拡大図である。図6に示すように、エッジ結合手順において、画像処理手段3は、結合画素対(第1エッジE1の結合画素E13と第3エッジE3の結合画素E31との対)が結合するように(両結合画素のXY座標が同一となるように)、図5に示す状態から、第3エッジE3及び第4エッジE4に対して、第1エッジE1及び第2エッジE2を一体的に相対移動させる。
【0038】
ここで、図6に示す例では、上記のエッジ結合手順において相対移動させた後の結合画素対と反対側に位置するエッジ同士(第2エッジE2及び第4エッジE4)が線状部材の軸方向(図6に示すY方向)にオーバラップしている(図2のS7で「Yes」に相当)。換言すれば、第2エッジE2の端部画素E21の方が、第4エッジE4の端部画素E41よりも、オーバラップ量OLだけ軸方向(図6(a)に示すY方向)下方に位置する状態となっている。この場合、画像処理手段3は、後述の最小径算出手順を実行する。
なお、図6(b)に示すように、画像処理手段3は、最小径算出手順を実行する前に、必要に応じて、結合画素対として選択しなかった方の結合画素の対である結合画素E22と結合画素E41との径方向(図6(b)に示すX方向)のズレ量δXを算出する。そして、このズレ量がδX/2となるように、第3エッジE3及び第4エッジE4に対して、第1エッジE1及び第2エッジE2を一体的に径方向(図6(b)に示すX方向)にδX/2だけ相対移動させる。
【0039】
最後に、画像処理手段3は、最小径算出手順を実行する(図2のS8)。図7は、最小径算出手順の説明図である。図7に示すように、最小径算出手順において、画像処理手段3は、相対移動後の第1エッジE1又は第3エッジE3と、相対移動後の第2エッジE2又は第4エッジE4との線状部材Tの径方向(図7に示すX方向)についての離間距離Dを算出し、この離間距離Dに基づき、線状部材の所定部位における最小径Dminを算出する。
具体的には、離間距離Dを算出する際、第1エッジE1及び第3エッジE3がオーバラップする領域については、径方向外側に位置する方のエッジ(図7に示す例では第3エッジE3)が用いられ、第2エッジE2及び第4エッジE4がオーバラップする領域についても、径方向外側に位置する方のエッジ(図7に示す例では第4エッジE4)が用いられる。そして、画像処理手段3は、離間距離Dを算出する軸方向(図7に示すY方向)座標を変化させて、最小となる離間距離Dを最小径Dminとして算出する。
【0040】
以上の説明では、エッジ結合手順(図2のS6)において相対移動させた後の結合画素対と反対側に位置するエッジ同士が線状部材Tの軸方向にオーバラップしている(図2のS7で「Yes」に相当)場合を例に挙げたが、結合画素対と反対側に位置するエッジ同士が線状部材Tの軸方向にオーバラップしない場合も生じる。
【0041】
図8は、結合画素対と反対側に位置するエッジ同士が線状部材の軸方向にオーバラップしない場合の例を示す説明図である。図8(a)は相対移動前の状態を示す図であり、図8(b)はエッジ結合手順において相対移動させた後の状態を示す図である。図8に示す例でも、図5に示す例と同様に、画像処理手段3は、結合画素特定手順(図2のS4)において、第1エッジE1の結合画素をE13、第2エッジE2の結合画素をE22、第3エッジE3の結合画素をE31、第4エッジE4の結合画素をE41に特定し、結合画素対決定手順(図2のS5)において、第1エッジE1の結合画素E13と第3エッジE3の結合画素E31との対を結合画素対として決定し、エッジ結合手順(図2のS6)において、結合画素対が結合するように、図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態へと、第3エッジE3及び第4エッジE4に対して、第1エッジE1及び第2エッジE2を一体的に相対移動させている。
図8(b)に示す例では、相対移動させた後の結合画素対(第1エッジE1の結合画素E13と第3エッジE3の結合画素E31との対)と反対側に位置するエッジ同士(第2エッジE2及び第4エッジE4)が線状部材の軸方向(図8(b)に示すY方向)にオーバラップしていない(図2のS7で「No」に相当)。換言すれば、第2エッジE2の端部画素E21の方が、第4エッジE4の端部画素E41よりも、軸方向(図8(b)に示すY方向)上方に位置する状態となっている。この場合、画像処理手段3は、結合画素対更新手順を実行する(図2のS9)。
【0042】
図9は、結合画素対更新手順の説明図である。結合画素対更新手順において、画像処理手段3は、結合候補画素抽出手順(図2のS3)で抽出した第1エッジE1の結合候補画素E11、E12、E13と第3エッジE3の結合候補画素E31とを結合させた場合の第2エッジE2及び第4エッジE4の線状部材の軸方向についてのオーバラップ量を算出する。すなわち、第1エッジE1の3つの結合候補画素E11〜E13の何れかと、第3エッジE3の1つの結合候補画素E31とを順次結合させた場合に得られる第2エッジE2及び第4エッジE4のオーバラップ量を順次算出する(オーバラップしない場合にはオーバラップ量=0とする)。
同様に、画像処理手段3は、結合候補画素抽出手順(図2のS3)で抽出した第2エッジE2の結合候補画素E21、E22と第4エッジE4の結合候補画素E41とを結合させた場合の第1エッジE1及び第3エッジE3の線状部材の軸方向についてのオーバラップ量を算出する。すなわち、図9(a)に示すように、第2エッジE2の結合候補画素E21と、第4エッジE4の結合候補画素E41とを結合させた場合に得られる第1エッジE1及び第3エッジE3のオーバラップ量OL1と、図9(b)に示すように、第2エッジE2の結合候補画素E22と、第4エッジE4の結合候補画素E41とを結合させた場合に得られる第1エッジE1及び第3エッジE3のオーバラップ量OL2とを算出する。
そして、画像処理手段3は、以上のようにして順次算出したオーバラップ量が最大となる第1エッジE1の結合候補画素と第3エッジE3の結合候補画素との対、又は、第2エッジE2の結合候補画素と第4エッジE4の結合候補画素との対を、結合画素対として更新する。図9に示す例では、図9(b)に示すオーバラップ量OL2が最大のオーバラップ量となり、このオーバラップ量OL2が得られる第2エッジE2の結合候補画素E22と第4エッジE4の結合候補画素E41との対が結合画素対として更新されることになる。
【0043】
画像処理手段3は、上記の結合画素対更新手順を実行した後、更新した結合画素対を用いて、前述と同様に、エッジ結合手順(図2のS6)を実行し、最小径算出手順(図2のS8)を実行する。
【0044】
本実施形態の画像処理手段3は、以上に説明した手順を、撮像手段2によって取得された所定ピッチ(5°ピッチ)毎の第1撮像画像及び第2撮像画像にそれぞれ実行することで、線状部材の軸方向周りの所定ピッチ毎の最小径を算出する。
【0045】
以下、本実施形態に係る最小径測定装置100及び比較例の最小径測定装置を用いて、線状部材の最小径を実際に測定した結果例について説明する。
図10(a)は、画像処理手段3が実行する結合候補画素抽出手順(図2のS3)において、第1エッジE1〜第4エッジE4の破断面側の端に位置する端部画素のみを結合候補画素として抽出するようにした点を除いて、本実施形態に係る最小径測定装置100と同じ構成である比較例の最小径測定装置を用いて所定の線状部材の最小径を測定した結果を示す。図10(b)は、本実施形態に係る最小径測定装置100を用いて図10(a)と同じ線状部材の最小径を測定した結果を示す。図10(a)及び(b)に示す結果は、双方共に、最小径算出手順(図2のS8)を実行する前に、径方向(X方向)にδX/2(δX:結合画素対として選択しなかった方の結合画素の対のX方向のズレ量)の相対移動を施して得られた結果である。また、図10(a)及び(b)に示す結果は、双方共に、オーバラップが生じているために、結合画素対更新手順(図2のS9)を実行せずに得られた結果である。
図10に示すように、熟練の作業者がノギスを用いて測定した最小径を真値とすると、比較例の最小径測定装置では誤差が−1.59mmと大きいのに対し、本実施形態に係る最小径測定装置100では+0.02mmと高精度に最小径を測定可能であることがわかった。
【0046】
図11は、本実施形態に係る最小径測定装置100を用いて、図10とは異なる線状部材の最小径を測定した結果を示す。図11(a)に示す結果は、オーバラップが生じていないが、結合画素対更新手順(図2のS9)を実行せずに得られた結果である。図11(b)に示す結果は、オーバラップが生じていないために、結合画素対更新手順(図2のS9)を実行して得られた結果である。
図11に示すように、熟練の作業者がノギスを用いて測定した最小径を真値とすると、図11(a)及び(b)に示す結果の何れも比較的精度良く最小径を測定可能であったが、特に、結合画素対更新手順を実行して得られた図11(b)に示す結果は+0.03mmと高精度に最小径を測定可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0047】
1,1a,1b・・・照明手段
2・・・撮像手段
3・・・画像処理手段
4,4a,4b・・・保持手段
T、T1、T2・・・線状部材片
100・・・最小径測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11