(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
洗浄対象物がセットされる洗浄空間と、前記洗浄空間内で洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを移動させるノズル移動機構と、前記洗浄ノズルに洗浄液を加圧供給して噴射させるポンプと、前記ノズル移動機構及び前記ポンプを数値制御する制御手段と、を有する洗浄機を管理する洗浄機管理装置であって、
前記洗浄空間内の前記洗浄ノズルの原点位置と前記ノズル移動機構により前記洗浄ノズルが移動される移動位置とにそれぞれ設置され、複数の圧力測定点を有する受圧板と、
前記ノズル移動機構を作動させて前記洗浄ノズルを前記受圧板に対して所定位置で且つ所定姿勢に配置させる位置制御手段と、
前記ポンプを作動させて前記所定位置で且つ前記所定姿勢に配置された前記洗浄ノズルから前記受圧板に向けて洗浄液を噴射させる噴射制御手段と、
前記噴射制御手段によって前記洗浄ノズルから前記受圧板に洗浄液が噴射される際の前記受圧板の出力から、前記複数の圧力測定点の測定値からなる受圧特性データを取得し、前記受圧特性データを基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの噴射特性を評価し、この評価結果に基づいて前記洗浄ノズルの性能及び前記ノズル移動機構の性能を総合評価する評価手段と、を有する
ことを特徴とする洗浄機管理装置。
前記ノズル移動機構は、前記洗浄ノズルを、原点位置からそれぞれが互いに直交するX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の三方向にそれぞれ移動させるX軸方向移動系統,Y軸方向移動系統及びZ軸方向移動系統を有し、
前記受圧板は、
前記原点位置に設置された原点受圧板と、
前記原点位置から前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向にそれぞれ所定距離だけ移動させた総合診断位置に設置された診断点受圧板と、
前記原点位置から前記X軸方向にのみ所定距離だけ移動させたX軸方向診断位置に設置されたX軸受圧板と、
前記原点位置から前記Y軸方向にのみ所定距離だけ移動させたY軸方向診断位置に設置されたY軸受圧板と、
前記原点位置から前記Z軸方向にのみ所定距離だけ移動させたZ軸方向診断位置に設置されたZ軸受圧板と、を備え、
前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板及び前記Z軸受圧板は何れも、前記洗浄ノズルを前記所定位置に配置可能な姿勢に設置され、
前記評価手段は、前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板及び前記Z軸受圧板から得られる受圧特性データを前記基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの前記噴射特性の評価を実施する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載された洗浄機管理装置。
前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向にかかるそれぞれの前記所定距離は、前記ノズル移動機構によって前記原点位置から移動可能な前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向のそれぞれの最大移動距離である
ことを特徴とする請求項4に記載された洗浄機管理装置。
前記洗浄機は、前記洗浄空間内に前記洗浄対象物を固定する固定台と、前記固定台を初期姿勢から所定軸の周りに回転させる回転駆動機構と、をさらに備えると共に、前記制御手段は、前記回転駆動機構を含めて数値制御を行い、
前記受圧板は、
前記原点位置に前記固定台の前記初期姿勢に応じて設置された原点受圧板と、
前記原点位置から前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向にそれぞれ所定距離だけ移動させると共に、前記固定台を前記初期姿勢から前記所定軸の軸周りに所定角度だけ回転させた状態に応じた総合診断位置に設置された診断点受圧板と、
前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記X軸方向にのみ前記所定距離だけ移動させたX軸方向診断位置に設置されたX軸受圧板と、
前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記Y軸方向にのみ前記所定距離だけ移動させたY軸方向診断位置に設置されたY軸受圧板と、
前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記固定台の前記Z軸方向にのみ前記所定距離だけ移動させたZ軸方向診断位置に設置されたZ軸受圧板と、
前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記固定台を前記所定軸の周りに前記所定角度だけ回転させた位置に設置された回転対応受圧板と、
前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板,前記Z軸受圧板及び前記回転対応受圧板は何れも、前記洗浄ノズルを前記所定位置に配置可能な姿勢に設置され、
前記評価手段は、前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板,前記Z軸受圧板及び前記回転対応受圧板から得られる受圧特性データを前記基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの前記噴射特性を評価する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載された洗浄機管理装置。
洗浄対象物がセットされる洗浄空間と、前記洗浄空間内で洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを移動させるノズル移動機構と、前記洗浄ノズルに洗浄液を加圧供給して噴射させるポンプと、前記ノズル移動機構及び前記ポンプを数値制御する制御手段と、を有する洗浄機を管理する洗浄機管理方法であって、
前記洗浄空間内の前記洗浄ノズルの原点位置と前記ノズル移動機構により前記洗浄ノズルが移動される移動位置とにそれぞれ、複数の圧力測定点を有する受圧板を設置し、
前記ノズル移動機構を作動させて前記洗浄ノズルを前記受圧板に対して所定位置で且つ所定姿勢に配置させるノズル移動工程と、
前記ポンプを作動させて前記所定位置で且つ所定姿勢に配置された前記洗浄ノズルから前記受圧板に向けて洗浄液を噴射させる噴射工程と、
前記洗浄ノズルから前記受圧板に洗浄液が噴射される際の前記受圧板の出力から、前記複数の圧力測定点の測定値からなる受圧特性データを取得し、前記受圧特性データを基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの噴射特性を評価する噴射特性評価工程と、
前記噴射特性評価工程の評価結果に基づいて前記洗浄ノズルの性能及び前記ノズル移動機構の性能を評価する総合評価工程と、を実施する
ことを特徴とする洗浄機管理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、NC洗浄機の要因系管理項目として現状で行われている洗浄液の吐出圧力や狙い目検査では、以下の課題がある。
つまり、吐出圧力に関しては高圧ポンプの元圧管理によるものが一般的であるが、元圧管理では実際の洗浄部品に加わっている圧力はわからない。また使用する洗浄機によっては、高圧ポンプ容量が同一でも使用する洗浄ノズルによって穴径や穴数などの仕様も異なるため詳細の管理は困難である。
【0007】
また、ノズルの狙い目検査では、実際にNC洗浄機をワークに合わせて作動させて洗浄検査するため、ノズルの様々な動作に対応して洗浄状態を検査できるが、カラースプレーを用いると、洗浄ノズルの当たり検査を全て限度見本による比較を行う必要があり洗浄機の劣化等の異常が発見しづらく、また、判断する作業者にもバラツキが生じる。また、ワークに着色する塗料が機内へ飛散して付着するため、これに対する対策も必要になる。
【0008】
特許文献1の技術は、洗浄機がNC洗浄機であるかは不明であるが、ノズルから吐出される洗浄液の流量や圧力を測定するため、ワークに加わる圧力を把握することができる。しかし、単に歪みゲージを用いてノズルから吐出される洗浄液の圧力を測定すると記載されているだけであり、ノズルの性能を適切に評価するには十分でない。また、上記の狙い目検査のように、NC制御に応じて検査するものではないので、ノズルの様々な動作に対応して洗浄状態を検査することは困難と考えられる。
【0009】
本発明は、このような課題に着目して創案されたもので、数値制御によって制御される洗浄機において洗浄ノズルの性能を適切に評価し、洗浄ノズルを移動させる機構の性能をも評価することができるようにした洗浄機管理装置及び洗浄機管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するために、本発明の洗浄機管理装置は、洗浄対象物がセットされる洗浄空間と、前記洗浄空間内で洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを移動させるノズル移動機構と、前記洗浄ノズルに洗浄液を加圧供給して噴射させるポンプと、前記ノズル移動機構及び前記ポンプを数値制御する制御手段と、を有する洗浄機を管理する洗浄機管理装置であって、前記洗浄空間内の前記洗浄ノズルの原点位置と前記ノズル移動機構により前記洗浄ノズルが移動される移動位置とにそれぞれ設置され、複数の圧力測定点を有する受圧板と、前記ノズル移動機構を作動させて前記洗浄ノズルを前記受圧板に対して所定位置で且つ所定姿勢に配置させる位置制御手段と、前記ポンプを作動させて前記所定位置で且つ前記所定姿勢に配置された前記洗浄ノズルから前記受圧板に向けて洗浄液を噴射させる噴射制御手段と、前記噴射制御手段によって前記洗浄ノズルから前記受圧板に洗浄液が噴射される際の前記受圧板の出力から、前記複数の圧力測定点の測定値からなる受圧特性データを取得し、前記受圧特性データを基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの噴射特性を評価し、この評価結果に基づいて前記洗浄ノズルの性能及び前記ノズル移動機構の性能を総合評価する評価手段と、を有することを特徴としている。
【0011】
(2)前記所定位置は前記洗浄ノズルが前記受圧板に対して所定距離だけ離隔した位置であり、前記所定姿勢は前記受圧板に正対する姿勢であって、前記受圧板の前記複数の圧力測定点は、前記所定位置で且つ前記所定姿勢に配置された前記洗浄ノズルからの洗浄液の噴射領域のうち少なくとも一直径の全域を含むように配置され、前記評価手段は、前記受圧特性データを、前記一直径上の各検出点位置と前記各検出点位置に対する測定値とから形成される波形パターンに処理し、この測定値に対応した測定波形パターンを前記基準受圧特性としての基準波形パターンと比較して前記洗浄ノズルの前記噴射特性を評価することが好ましい。
(3)前記評価手段は、前記測定波形パターンが前記基準波形パターンを中心に設定される基準波形領域内にあるか否かによって前記洗浄ノズルの前記噴射特性を評価することが好ましい。
【0012】
(4)前記ノズル移動機構は、前記洗浄ノズルを、原点位置からそれぞれが互いに直交するX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の三方向にそれぞれ移動させるX軸方向移動系統,Y軸方向移動系統及びZ軸方向移動系統を有し、前記受圧板は、前記原点位置に設置された原点受圧板と、前記原点位置から前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向にそれぞれ所定距離だけ移動させた総合診断位置に設置された診断点受圧板と、前記原点位置から前記X軸方向にのみ所定距離だけ移動させたX軸方向診断位置に設置されたX軸受圧板と、前記原点位置から前記Y軸方向にのみ所定距離だけ移動させたY軸方向診断位置に設置されたY軸受圧板と、前記原点位置から前記Z軸方向にのみ所定距離だけ移動させたZ軸方向診断位置に設置されたZ軸受圧板と、を備え、前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板及び前記Z軸受圧板は何れも、前記洗浄ノズルを前記所定位置に配置可能な姿勢に設置され、前記評価手段は、前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板及び前記Z軸受圧板から得られる受圧特性データを前記基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの前記噴射特性の評価を実施することが好ましい。
(5)前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向にかかるそれぞれの前記所定距離は、前記ノズル移動機構によって前記原点位置から移動可能な前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向のそれぞれの最大移動距離であることが好ましい。
【0013】
(6)前記評価手段は、前記診断点受圧板から得られる前記受圧特性データに基づいて前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であるか否かを判定する第1判定を実施し、前記第1判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であると判定した場合には、前記洗浄ノズル及び前記ポンプの洗浄液噴射系統の各性能が何れも正常であって、且つ、前記X軸方向移動系統,前記Y軸方向移動系統,前記Z軸方向移動系統の各性能が何れも正常であると判断し、前記第1判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常でないと判定した場合には、前記原点受圧板から得られる前記受圧特性データに基づいて前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であるか否かを判定する第2判定を実施し、前記第2判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常でないと判定した場合には、前記洗浄液噴射系統が正常でないと判定し、前記第2判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であると判定した場合には、前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板及び前記Z軸受圧板の何れかから得られる前記受圧特性データに基づいて前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であるか否かを判定する第3判定を実施し、前記第3判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常でないと判定した場合には、前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板及び前記Z軸受圧板のうちの該当する受圧板に対応した前記軸方向移動系統の性能が正常でないと判定することが好ましい。
【0014】
(7)前記洗浄機は、前記洗浄空間内に前記洗浄対象物を固定する固定台と、前記固定台を初期姿勢から所定軸の周りに回転させる回転駆動機構と、をさらに備えると共に、前記制御手段は、前記回転駆動機構を含めて数値制御を行い、前記受圧板は、前記原点位置に前記固定台の前記初期姿勢に応じて設置された原点受圧板と、前記原点位置から前記X軸方向,前記Y軸方向及び前記Z軸方向にそれぞれ所定距離だけ移動させると共に、前記固定台を前記初期姿勢から前記所定軸の軸周りに所定角度だけ回転させた状態に応じた総合診断位置に設置された診断点受圧板と、前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記X軸方向にのみ前記所定距離だけ移動させたX軸方向診断位置に設置されたX軸受圧板と、前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記Y軸方向にのみ前記所定距離だけ移動させたY軸方向診断位置に設置されたY軸受圧板と、前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記固定台の前記Z軸方向にのみ前記所定距離だけ移動させたZ軸方向診断位置に設置されたZ軸受圧板と、前記原点位置且つ前記固定台の前記初期姿勢から前記固定台を前記所定軸の周りに前記所定角度だけ回転させた位置に設置された回転対応受圧板と、前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板,前記Z軸受圧板
及び前記回転対応受圧板は何れも、前記洗浄ノズルを前記所定位置に配置可能な姿勢に設置され、前記評価手段は、前記原点受圧板,前記診断点受圧板,前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板,前記Z軸受圧板及び前記回転対応受圧板から得られる受圧特性データを前記基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの前記噴射特性を評価することが好ましい。
(8)前記所定軸の周りの回転の回転にかかる前記所定角度は、前記回転駆動機構により駆動される最大回転角度であることが好ましい。
【0015】
(9)前記評価手段は、前記診断点受圧板から得られる前記受圧特性データに基づいて前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であるか否かを判定する第1判定を実施し、前記第1判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であると判定した場合には、前記洗浄ノズル及び前記ポンプの洗浄液噴射系統の各性能が何れも正常であって、且つ、前記X軸方向移動系統,前記Y軸方向移動系統,前記Z軸方向移動系統,前記回転駆動機構の性能が正常であると判断し、前記第1判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常でないと判定した場合には、前記原点受圧板から得られる前記受圧特性データに基づいて前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であるか否かを判定する第2判定を実施し、前記第2判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常でないと判定した場合には、前記洗浄液噴射系統が正常でないと判定し、前記第2判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であると判定した場合には、前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板,前記Z軸受圧板
及び前記回転対応受圧板の何れかから得られる前記受圧特性データに基づいて前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常であるか否かを判定する第3判定を実施し、前記第3判定により前記洗浄ノズルの前記噴射特性が正常でないと判定した場合には、前記X軸受圧板,前記Y軸受圧板,前記Z軸受圧板及び前記回転対応受圧板のうちの該当する受圧板に対応した前記ノズル移動機構又は前記回転駆動機構の性能が正常でないと判定することが好ましい。
【0016】
(10)本発明の洗浄機管理方法は、洗浄対象物がセットされる洗浄空間と、前記洗浄空間内で洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを移動させるノズル移動機構と、前記洗浄ノズルに洗浄液を加圧供給して噴射させるポンプと、前記ノズル移動機構及び前記ポンプを数値制御する制御手段と、を有する洗浄機を管理する洗浄機管理方法であって、前記洗浄空間内の前記洗浄ノズルの原点位置と前記ノズル移動機構により前記洗浄ノズルが移動される移動位置とにそれぞれ、複数の圧力測定点を有する受圧板を設置し、前記ノズル移動機構を作動させて前記洗浄ノズルを前記受圧板に対して所定位置で且つ所定姿勢に配置させるノズル移動工程と、前記ポンプを作動させて前記所定位置で且つ所定姿勢に配置された前記洗浄ノズルから前記受圧板に向けて洗浄液を噴射させる噴射工程と、前記洗浄ノズルから前記受圧板に洗浄液が噴射される際の前記受圧板の出力から、前記複数の圧力測定点の測定値からなる受圧特性データを取得し、前記受圧特性データを基準受圧特性と比較して前記洗浄ノズルの噴射特性を評価する噴射特性評価工程と、前記
噴射特性評価工程の評価結果に基づいて前記洗浄ノズルの性能及び前記ノズル移動機構の性能を評価する総合評価工程と、を実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、受圧板の複数の圧力測定点の測定値からなる受圧特性データを取得し、この受圧特性データを基準受圧特性と比較して洗浄ノズルの性能を評価するので、洗浄ノズルの性能を適切に評価することができるようになる。
また、洗浄空間内の洗浄ノズルの原点位置とノズル移動機構により洗浄ノズルが移動される移動位置とにそれぞれ設置された各受圧板における洗浄ノズルの性能評価の結果から総合的に評価することにより、洗浄ノズルの性能と移動機構の性能とを切り分けて評価することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明にかかる洗浄機管理装置及び洗浄機管理方法の実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。かかる実施形態を部分的に用いて実施したり、一部を変更して実施したり、同等の機能を有する他の機構や装置に置き換えて実施したりすることができるものである。
【0020】
〔洗浄機の構成〕
まず、本実施形態に係る洗浄機を説明する。
本洗浄機には、NC制御(数値制御)を用いて各部を制御されるNC洗浄機が用いられている。
図1はNC洗浄機及び洗浄機管理装置の構成を示すブロック図であり、
図2はNC洗浄機の基本構成を説明する斜視図である。
図1,2に示すように、NC洗浄機10は、図示しない壁部で囲繞される洗浄空間11と、洗浄空間内で洗浄液を噴射する洗浄ノズル12と、洗浄空間11内に洗浄対象物14を固定する固定台13と、を備えている。
【0021】
洗浄ノズル12には、洗浄液噴射ポンプ(以下、単にポンプという)40が接続されている。ポンプ40は、図示しないタンク内の洗浄液を吸引加圧して洗浄ノズル12に加圧供給する。これによって、洗浄ノズル12の図示しないノズル開口から洗浄液が噴射される。
【0022】
また、洗浄ノズル12は、ノズル移動機構20によって移動されるようになっている。本実施形態では、ノズル移動機構20は、洗浄ノズル12を、X方向に移動させるX方向移動系統21と、Y方向に移動させるY方向移動系統22と、Z方向に移動させるZ方向移動系統23とを備え、洗浄ノズル12は、X方向,Y方向,Z方向の三方向に三次元的に移動されるようになっている。なお、ここでは、Z方向は鉛直方向であり、X方向,Y方向は何れも水平方向でありX方向,Y方向は互いに直交し、洗浄ノズル12の位置は、X,Y,Z座標系の座標(X,Y,Z)としてあらわすことができる。
【0023】
固定台13は、回転駆動機構30によって所定軸の周りに回転されるようになっている。本実施形態では、回転駆動機構30は、固定台13を水平な軸線(以下、A軸という)31cを中心として回転させるA軸周り回転系統31と、鉛直な軸線(以下、C軸という)32cを中心として回転させるC軸周り回転系統32と、とを備え、固定台13は、これらの二軸周りに回転することで姿勢や位置を変更されるようになっている。なお、ここでは、A軸は水平方向に設定され、C軸は鉛直方向に設定される。ただし、C軸はZ軸とは異なっている。
【0024】
なお、洗浄ノズル12の位置(ここでは、洗浄ノズル12のノズル開口の位置)として、座標(X,Y,Z)が(0,0,0)の原点位置があり、本実施形態では、NC洗浄機10の始動時には、洗浄ノズル12のノズル開口は、この原点位置から移動し、NC洗浄機10の停止時にはこの原点位置に戻るようになっている。
また、固定台13は、洗浄対象物14を固定する固定面13aを備え、固定面13aが水平で且つC軸周りに所定方向を向いた状態を初期姿勢とし、回転駆動機構30によって、この初期姿勢からA軸周り及びC軸周りに適宜回転駆動される。
【0025】
NC洗浄機10は、このようなポンプ40,ノズル移動機構20,回転駆動機構30を数値制御するNC制御装置(制御手段)50を備えている。
NC制御装置50は、CPU,ROM,RAM等からなるコンピュータによって構成されており、洗浄ノズル12の位置を数値制御する位置制御部(位置制御手段)51と、固定台13の回転方向の姿勢を数値制御する回転制御部(回転制御手段)52と、ポンプ40の作動を制御する噴射制御部(噴射制御手段)53とを備えている。
【0026】
ノズル移動機構20のX方向移動系統21,Y方向移動系統22,Z方向移動系統23、及び回転駆動機構30のA軸周り回転系統31,C軸周り回転系統32にはそれぞれサーボ機構が装備され、洗浄ノズル12は数値により指示された位置に移動制御され、固定台13は数値によって指示された方向に姿勢制御される。
【0027】
〔洗浄機管理装置の構成〕
次に、本実施形態に係る洗浄機管理装置を説明する。
本洗浄機管理装置は、NC制御装置50を利用して構成されており、受圧板60と、受圧板60からの出力信号に対応して洗浄ノズル12の位置や固定台13の姿勢を数値制御する位置制御部51及び回転制御部52と、ポンプ40の作動を制御する噴射制御部53と、洗浄ノズル12の噴射特性を評価し、この評価結果に基づいて洗浄ノズル12自体の性能やノズル移動機構20や回転駆動機構30の性能を評価する評価部(評価手段)54とを備えている。なお、本実施形態では、NC制御装置50内に評価部54を備えているが、評価部54はNC制御装置50とは別のハードウェアに装備してもよい。
【0028】
受圧板60は、
図4(a)に示すように、洗浄ノズル12から噴射される洗浄液を受ける受圧面60Fを備え、受圧面60Fには複数の圧力測定点(図示略)が備えられている。これらの複数の圧力測定点は、洗浄ノズル12が受圧面60Fに対して所定位置に所定姿勢で位置すれば、洗浄ノズル12からの洗浄液の噴射領域のうち少なくとも一直径の全域を含むように配置されている。
【0029】
つまり、洗浄ノズル12が受圧面60Fに対して所定距離だけ離れた位置(所定位置)に中心線CLを一致するように配置され且つ受圧面60Fに対して正対する姿勢(所定姿勢)とされて洗浄液を噴射した場合に、受圧面60Fには円形に圧力が加わる。受圧面60Fには、圧力測定点がこの円形の中心上の直線(円形の一直径(何れか1つの直径)の全域を含む)に均等に多数配置されている。
【0030】
したがって、
図4(b)に示すように、受圧板60の圧力測定点の位置を横軸とし、受圧面60Fで受ける圧力(衝撃力)を縦軸とすると、各形状のドットで示すように、受圧面60Fの中心線CL箇所(径方向位置に0.0と表示する)を中心に一定の範囲で高圧となって、受圧縁部で圧力が低下する特性の波形パターンを示す。なお、
図4(b)には、洗浄ノズル12が正常に洗浄液を噴射した場合であって、ノズル開口から受圧面60Fまでの距離Lが僅かずつ異なる3つのパターン(L=L
1,L
2,L
3、ただし、L
1<L
2<L
3)を例示する。
【0031】
洗浄液の噴射が正常に行われた場合に受圧板60で検出される波形パターンは、
図4(b)に示すように、特定の大きさ及び形状のハット型を示しており、このような正常な波形パターンを、測定波形パターンを評価するための基準波形パターンに設定することができる。ここでは、ノズル開口から受圧面60Fまでの距離の誤差などを含む測定誤差を考慮して、
図4(b)に破線で囲む領域として示すように、基準波形パターンを中心として幅を持った基準波形領域を設定し、評価部54では、測定波形パターンがこの基準波形領域内にあるか否かによって洗浄ノズル12の噴射特性を評価する。
【0032】
受圧板60は、
図3に示すように、洗浄空間11内の各位置P1〜P7に応じてそれぞれ配置される。
総合診断位置(診断点)P1に対しては、診断点受圧板61が設置されている。総合診断位置P1は、洗浄ノズル12のノズル開口が、原点位置(原点)P2からX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向にそれぞれ所定距離(ここでは、各移動系統21〜23の最大移動距離)だけ移動させると共に、固定台13を初期姿勢からA軸周り及びC軸周りに、それぞれ所定角度(ここでは、各回転系統31,32の最大回転角度)だけ回転させた状態に応じた位置である。
【0033】
原点位置P2に対しては、原点受圧板62が設置されている。
X軸方向診断位置P3に対しては、X軸受圧板63が設置されている。X軸方向診断位置P3は、原点位置P2且つ固定台13の初期姿勢からX軸方向にのみ所定距離(ここでは、移動系統21の最大移動距離)だけ移動させた位置である。
【0034】
Y軸方向診断位置P4に対しては、Y軸受圧板64が設置されている。Y軸方向診断位置P4は、原点位置P2且つ固定台13の初期姿勢からY軸方向にのみ所定距離(ここでは、移動系統22の最大移動距離)だけ移動させた位置である。
Z軸方向診断位置P5に対しては、Z軸受圧板65が設置されている。Z軸方向診断位置P5は、原点位置P2且つ固定台13の初期姿勢からZ軸方向にのみ所定距離(ここでは、移動系統23の最大移動距離)だけ移動させた位置である。
【0035】
A軸回転位置P6に対しては、A軸回転対応受圧板66が設置されている。A軸回転位置P6は、原点位置P2且つ固定台13の初期姿勢から固定台13をA軸の周りにのみ所定角度(ここでは、回転系統31の最大回転角度)だけ回転させた位置であり、A軸回転対応受圧板66は固定台13に設置されている。
C軸回転位置P7に対しては、C軸回転対応受圧板67が設置されている。C軸回転位置P7は、原点位置P2且つ固定台13の初期姿勢から固定台13をC軸の周りにのみ所定角度(ここでは、回転系統32の最大回転角度)だけ回転させた位置であり、C軸回転対応受圧板67は固定台13に設置されている。
【0036】
各受圧板61〜67は、それぞれの位置P1〜P7において、受圧面60Fを洗浄ノズル12の洗浄液の噴射方向に対して正対させた姿勢で且つ受圧面60Fの中心が各位置P1〜P7から所定距離Lだけ離隔した箇所に設置される。本実施形態では、洗浄ノズル12は洗浄液の噴射方向を鉛直下方に設定されているので、各受圧板61〜67は、それぞれの受圧面60Fを鉛直上方に向けて設置される。
【0037】
評価部54は、このような原点受圧板62,診断点受圧板61,X軸受圧板63,Y軸受圧板64,Z軸受圧板65,A軸回転対応受圧板66及びC軸回転対応受圧板67から得られる受圧特性データを基準受圧特性と比較して洗浄ノズル12の噴射特性を評価する。特に、各受圧板61〜67の評価結果に基づいて洗浄ノズル12の性能及びノズル移動機構20並びに回転駆動機構30の性能を評価する。この性能評価にかかる処理内容は後述する。
【0038】
〔洗浄機の管理方法〕
次に、洗浄機管理装置による洗浄機の管理方法及びこれに用いられる評価部54の処理内容を
図5,
図6のフローチャート及び表1を参照しながら説明する。
なお、原点受圧板62,診断点受圧板61,X軸受圧板63,Y軸受圧板64,Z軸受圧板65,A軸回転対応受圧板66及びC軸回転対応受圧板67をそれぞれ洗浄空間11内の所定の位置(位置P1〜P7に応じた位置)に所定の姿勢で設置されている。
【0039】
図5は受圧板60(受圧板61〜67の何れか)による測定及び測定結果による評価の手順を説明するフローチャートである。
図5に示すように、まず、洗浄ノズル12を所定の位置(位置P1〜P7の何れか)へ移動させて(ステップS10、ノズル移動工程)、移動後に、洗浄液を噴射する(ステップS20、噴射工程)。このときの噴射時間は、受圧板60で噴射圧を適正に検出できるだけの時間、即ち、噴射圧が安定するまでの時間であればよい。そして、噴射圧が安定したところで、受圧板60の出力(受圧データ)を取り込む。
【0040】
この受圧板60の出力として得られる、複数の圧力測定点の測定値からなる受圧特性データを、
図4(b)に示すような波形パターンに処理して、この測定波形パターンを予め登録された基準波形パターンと比較するパターン照合を実施して洗浄ノズルの噴射特性を評価する(ステップS30、噴射特性評価工程(第1評価工程))。
【0041】
ここでは、
図4(b)に破線で囲む領域として示すように、基準波形パターンを中心として幅を持った基準波形領域を設定し、測定波形パターンがこの基準波形領域内にあるか否かによって洗浄ノズル12の噴射特性を評価する。つまり、測定波形パターンがこの基準波形領域内にあれば洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定し、測定波形パターンがこの基準波形領域から少しでも外れれば洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定する。
【0042】
そして、洗浄ノズル12の噴射特性の評価結果に基づいて、噴射系統,ノズル移動機構20及び回転駆動機構30の性能を評価する(ステップS40、総合評価工程(第2評価工程))。この第2評価工程では、検出に用いた受圧板60の個別の特性に応じて、及び、洗浄ノズル12の噴射特性の評価結果の組み合わせに応じて、各性能を評価する。
この第2評価工程の結果に応じて、他の受圧板60の測定データが必要であるか否かを判断し、測定データが必要であれば、再びステップS20に進んで洗浄液を噴射し、所要の受圧板60に対応した位置のデータを取得して各性能を評価する(ステップS30,S40)。
【0043】
ここで、表1を参照して、各受圧板60のデータに基づいた各位置P1〜P7での洗浄ノズル12の噴射特性の評価結果の組み合わせに応じた、洗浄ノズル12、ノズル移動機構20、及び回転駆動機構30の各性能の評価内容を説明する。
【表1】
表1に示すパターン1〜パターン8は、洗浄ノズル12の噴射特性の各位置P1〜P7での評価結果の組み合わせを表している。○は洗浄ノズル12の噴射特性が正常であること(OK)を、×は洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないこと(NG)を、それぞれ示す。
【0044】
パターン1は、診断点(総合診断位置)P1,原点(原点位置)P2,X軸診断点(X軸診断位置)P3,Y軸診断点(Y軸診断位置)P4,Z軸診断点(Z軸診断位置)P5,A軸診断点(A軸回転位置)P6,C軸診断点(C軸回転位置)P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常であると評価された場合である。
【0045】
パターン2は、診断点P1,原点P2の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常でないと評価され、X軸診断点P3,Y軸診断点P4,Z軸診断点P5,A軸診断点P6,C軸診断点P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常であると評価された場合である。
【0046】
パターン3は、診断点P1,X軸診断点P3の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常でないと評価され、原点P2,Y軸診断点P4,Z軸診断点P5,A軸診断点P6,C軸診断点P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常であると評価された場合である。
【0047】
パターン4は、診断点P1,Y軸診断点P4の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常でないと評価され、X軸診断点P3,原点P2,Z軸診断点P5,A軸診断点P6,C軸診断点P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常であると評価された場合である。
【0048】
パターン5は、診断点P1,Z軸診断点P5の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常でないと評価され、X軸診断点P3,Y軸診断点P4,原点P2,A軸診断点P6,C軸診断点P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常であると評価された場合である。
【0049】
パターン6は、診断点P1,A軸診断点P6の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常でないと評価され、X軸診断点P3,Y軸診断点P4,Z軸診断点P5,原点P2,C軸診断点P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常であると評価された場合である。
【0050】
パターン7は、診断点P1,C軸診断点P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常でないと評価され、X軸診断点P3,Y軸診断点P4,Z軸診断点P5,原点P2,A軸診断点P6の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常であると評価された場合である。
【0051】
パターン8は、診断点(総合診断位置)P1,原点(原点位置)P2,X軸診断点(X軸診断位置)P3,Y軸診断点(Y軸診断位置)P4,Z軸診断点(Z軸診断位置)P5,A軸診断点(A軸回転位置)P6,C軸診断点(C軸回転位置)P7の各位置で、洗浄ノズル12の噴射特性が何れも正常でないと評価された場合である。
【0052】
診断点P1で洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると評価されるには、噴射系統の性能が正常であることと、洗浄ノズル12がX軸方向,Y軸方向,Z軸方向の何れの方向にも可動限界まで(最大移動距離)適切に移動し、固定台13がA軸周り,B軸周りの何れの方向にも可動限界まで(最大回転角度)適切に回転していることが必要である。したがって、総合診断位置P1で洗浄ノズル12の噴射特性が正常とされた場合には、パターン1のように、他の各位置P2〜P7でも洗浄ノズル12の噴射特性が正常とされる。したがって、診断点P1で洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると評価されたら、噴射系統,ノズル移動機構20及び回転駆動機構30の各性能が何れも正常であると判定することができる。
【0053】
一方、診断点P1で洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価される場合は、噴射系統,ノズル移動機構20及び回転駆動機構30の何れか1つまたは複数の性能が正常でないためである。この場合には、原点P2での洗浄ノズル12の噴射特性を評価することで、噴射系統の異常であるか、ノズル移動機構20や回転駆動機構30の異常であるかを絞り込むことができる。
【0054】
つまり、原点P2での洗浄ノズル12の噴射特性が正常であれば、ノズル移動機構20や回転駆動機構30の何れかが異常であると絞り込むことができる。また、原点P2での洗浄ノズル12の噴射特性が正常でなければ、噴射系統に異常があるか又は原点P2への移動に異常があると推測することができる。この場合に、他の位置P3〜P7で何れも洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると評価されると(パターン2)、ノズル移動機構20や回転駆動機構30は正常であると判定することができる。
【0055】
噴射系統に異常があれば、位置P1〜P7で何れも洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価されることになる(パターン8)が、逆に、位置P1〜P7で何れも洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価されたからといって、噴射系統に異常があると特定することはできない。つまり、各位置P1〜P7への移動等の系統に複合的に異常がある場合も、パターン8となる。したがって、パターン8の場合は、何れに異常があるかを特定するには、別途検査を実施することが必要になる。
【0056】
診断点P1で洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないが、原点P2での洗浄ノズル12の噴射特性が正常であれば、ノズル移動機構20や回転駆動機構30の何れかが異常であると絞り込むことができるため、各位置P3〜P7において洗浄ノズル12の噴射特性を評価すれば、対応する移動系統21〜23や回転系統31,32の何れに異常があるかを特定することができる。
【0057】
つまり、X方向移動系統21の性能に異常があれば、X軸診断点P3で洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価される(パターン3)。Y方向移動系統22の性能に異常があれば、Y軸診断点P4で洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価される(パターン4)。Z方向移動系統23の性能に異常があれば、Z軸診断点P5で洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価される(パターン5)。また、A軸周り回転系統31の性能に異常があれば、A軸診断点P6で洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価される(パターン6)。C軸周り回転系統32の性能に異常があれば、C軸診断点P7で洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと評価される(パターン7)。
【0058】
本装置では、上記のように、各位置P1〜P7での洗浄ノズル12の噴射特性の評価(第1評価工程)に基づく第2評価工程による評価を実施する。以下、
図6を参照して第2評価工程を説明する。
図6に示すように、まず、洗浄ノズル12を総合診断位置(診断点)P1に移動させて、診断点受圧板61による測定で取得した測定波形パターンを基準波形パターンとパターン照合して判定(第1判定)し、その結果を判断する(ステップA10)。
【0059】
診断点受圧板61の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定された場合には、表1のパターン1に相当し、噴射系統(洗浄ノズル12の噴射性能)の性能とノズル移動機構20の性能と回転駆動機構30の性能とが、何れも正常であると判定する(ステップA12)。
【0060】
一方、診断点受圧板61の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定された場合には、噴射系統,ノズル移動機構20,回転駆動機構30のうち少なくとも何れかの性能が正常でないと判定することができる。
【0061】
この場合には、本実施形態の場合、洗浄ノズル12を原点位置(原点)P2に移動させて、原点受圧板62による測定で取得した測定波形パターンを基準波形パターンとパターン照合して判定(第2判定)し、その結果を判断する(ステップA20)。
【0062】
原点受圧板62の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定された場合には、洗浄ノズル12をX軸方向診断位置P3に移動させて、X軸受圧板63の測定によって測定波形パターンを基準波形パターンとパターン照合して判定(第3判定)し、その結果を判断する(ステップA30)。
一方、原点受圧板62の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定された場合には、噴射系統の性能が正常でないと判定して(ステップA22)、ステップA30に進む。
【0063】
X軸方向診断位置P3の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定された場合には、洗浄ノズル12をY軸方向診断位置P4に移動させて、Y軸受圧板64による測定で取得した測定波形パターンを基準波形パターンとパターン照合して判定(第3判定)し、その結果を判断する(ステップA40)。一方、X軸方向診断位置P3の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定された場合には、X方向移動系統21の性能が正常でないと判定して(ステップA32)、ステップA40に進む。
【0064】
Y軸方向診断位置P4の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定された場合には、洗浄ノズル12をZ軸方向診断位置P5に移動させて、Z軸受圧板65による測定で取得した測定波形パターンを基準波形パターンとパターン照合して判定(第3判定)し、その結果を判断する(ステップA50)。一方、Y軸方向診断位置P4の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定された場合には、Y方向移動系統22の性能が正常でないと判定して(ステップA42)、ステップA50に進む。
【0065】
Z軸方向診断位置P5の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定された場合には、洗浄ノズル12をA軸回転位置P6に移動させて、A軸回転対応受圧板66による測定で取得した測定波形パターンを基準波形パターンとパターン照合して判定(第3判定)し、その結果を判断する(ステップA60)。一方、Z軸方向診断位置P5の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定された場合には、Z方向移動系統23の性能が正常でないと判定して(ステップA52)、ステップA60に進む。
【0066】
A軸回転位置P6の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定された場合には、洗浄ノズル12をC軸回転位置P7に移動させて、C軸回転対応受圧板67による測定で取得した測定波形パターンを基準波形パターンとパターン照合して判定(第3判定)し、その結果を判断する(ステップA70)。一方、A軸回転位置P6の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定された場合には、A軸周り回転系統31の性能が正常でないと判定して(ステップA62)、ステップA70に進む。
【0067】
C軸回転位置P7の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常であると判定された場合には、他部の異常をチェックする(ステップA80)。一方、C軸回転位置P7の測定によるパターン照合の結果、洗浄ノズル12の噴射特性が正常でないと判定された場合には、C軸周り回転系統32の性能が正常でないと判定して(ステップA72)、ステップA80に進む。
【0068】
他部の異常をチェックしたら、各評価結果に基づいて以上と評価された部分を修理するよう案内(例えば案内表示)する(ステップA90)。
なお、ステップA12で、噴射系統(洗浄ノズル12の噴射性能)の性能とノズル移動機構20の性能と回転駆動機構30の性能とが、何れも正常であると判定された場合には、評価処理終了後に、洗浄サイクルに移行する。
また、上記の第3判定に係るステップA30,A40,A50,A60,A70についての順序は限定されない。
【0069】
〔作用及び効果〕
本実施形態に係る洗浄機管理装置及び洗浄機管理方法によれば、上記のように、受圧板60の複数の圧力測定点の測定値からなる受圧特性データを取得し、この受圧特性データから測定波形パターンを生成して、この測定波形パターンを、基準波形パターンを基準受圧特性と比較して洗浄ノズル12の性能を評価するので、洗浄ノズル12の性能を適切に評価することができるようになる。
【0070】
つまり、洗浄ノズル12からの噴射圧力を複数の圧力測定点によって評価するので、噴射圧力を単一の圧力測定点によって評価する場合に見落とされる可能性のある異常をも検出して評価することができ、評価能力が向上する。
特に、波形パターンを用いて、測定波形パターンを基準波形パターンと比較照合することで洗浄ノズル12の噴射性能を評価するので容易に評価を行うことができる。
【0071】
また、洗浄空間11内の洗浄ノズル12の原点位置P2とノズル移動機構により洗浄ノズルが移動される移動位置P1,P3〜P7とにそれぞれ設置された各受圧板61〜67における洗浄ノズル12の噴射性能を評価結果から、噴射系統(洗浄ノズル12の噴射性能)の性能とノズル移動機構20の性能と回転駆動機構30の性能とを切り分けて評価し、異常を特定することができるので、メンテナンス性能を向上させることができる。
特に、診断点受圧板61を設けることによって、異常のない場合に速やかに評価結果を得ることができ、洗浄サイクルへの移行を速やかに実施することができる。
【0072】
〔その他〕
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲でかかる実施形態を種々変更して実施することができる。
例えば、上記の実施形態では、移動位置P1,P3〜P7として、移動機構20や回転駆動機構30の可動限界まで(最大移動距離,最大回転角度)移動した位置としているが、これに替えて或いは加えて、ノズル移動機構20や回転駆動機構30の可動限界まではいかない移動距離,回転角度を移動位置に設定してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、回転駆動機構30についても評価対象としたが、洗浄ノズル12の噴射系統とノズル移動機構20のみを評価対象にしてもよい。
さらに、修理個所を修理した後に、本装置や方法を適用して、修理によって正常になったかを確認することも好ましく、また、受圧板60による測定で取得した測定波形パターンを、対応する洗浄対象と紐付して記録し、部品の管理や洗浄機10の管理に利用することも好ましい。