特許第6905980号(P6905980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905980
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】縫製システム
(51)【国際特許分類】
   D05B 55/14 20060101AFI20210708BHJP
   D05B 57/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   D05B55/14 A
   D05B57/02
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-521304(P2018-521304)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公表番号】特表2018-531119(P2018-531119A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】EP2016074922
(87)【国際公開番号】WO2017067900
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】102015220332.8
(32)【優先日】2015年10月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518137944
【氏名又は名称】パフ インドゥストリージステーメ ウント マシーネン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】カレンバッハ ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】カイルマン ローベルト
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−125043(JP,A)
【文献】 特開平04−026439(JP,A)
【文献】 特開平02−060687(JP,A)
【文献】 特開2000−308784(JP,A)
【文献】 特開2013−048716(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3025356(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 55/14
D05B 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に多次元的に存在する縫い目を縫製する縫製システム(1)であって、
−針棒(11)がその長手方向軸(13)に沿って上下に駆動されるように取り付けられた針棒上部(12)と、前記針棒(11)に縫い目形成工具として保持された少なくとも1つの縫い針(9、10)と、
−前記針棒上部(12)が、前記針棒(11)の前記長手方向軸(13)の周りを駆動方式で旋回可能に取り付けられた縫製ヘッド上部(14)と、
−前記縫い針(9、10)に同期して駆動される、縫い目形成工具としての少なくとも1つのグリッパ(15、16)が取り付けられたグリッパ下部(17)と、
−前記グリッパ下部(17)が、前記針棒上部(12)に同期して前記針棒(11)の前記長手方向軸(13)の周りを駆動方式で旋回可能に取り付けられた縫製ヘッド下部(18)と、
押え足(62)であって、前記針棒上部(12)内で、前記押え足(62)の長手方向軸に沿って駆動されて往復運動の可能な前記押え足(62)と
を具備する縫製ヘッドを有し、
モータ部品(19、69)は、
−前記針棒(11)の上下運動を駆動し、
−前記針棒上部(12)を旋回し、
−前記グリッパ(15、16)を前記針棒(11)に同期して駆動し、
−前記グリッパ下部(17)を旋回するために、
前記針棒上部(12)の外側で、かつ、前記グリッパ下部(17)の外側に配置され、
前記針棒上部(12)は、凹溝又は凸条を具備する環状部材(67)を有する少なくとも1つのさねはぎ継ぎ部(53)を介して、前記押え足(62)の往復運動を駆動するためにモータ部品(19)に動作可能に接続され、
前記環状部材(67)の環状対称軸は、前記針棒の前記長手方向軸(13)と一致するか、又は前記長手方向軸(13)と平行であることを特徴とする縫製システム。
【請求項2】
前記針棒上部(12)と前記グリッパ下部(17)とが、一方は前記縫製ヘッド上部(14)に取り付けられ、他方は前記縫製ヘッド下部(18)に取り付けられ、360°回転できることを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記針棒上部(12)が、凹溝又は凸条を具備する環状部材(46)を有する少なくとも1つのさねはぎ継ぎ部(45)を介して、前記針棒(11)の上下運動を駆動するために、モータ部品(19)に動作可能に接続され、
前記環状部材(46)の環状対称軸は、前記針棒の長手方向軸(13)と一致するか、又は前記長手方向軸(13)と平行であることを特徴とする請求項1又は2に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記針棒上部(12)が、凹溝又は凸条を具備する環状部材(54)を有する少なくとも1つのさねはぎ継ぎ部(53)を介して、前記針棒(11)の縫製物搬送運動(16)を駆動するために、モータ部品(19)に動作可能に接続され、
前記環状部材(54)の環状対称軸は、前記針棒(11)の長手方向軸と一致するか、又は前記長手方向軸と平行であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の縫製システム。
【請求項5】
駆動シャフト(47)の回転を前記針棒(11)の搬送運動及び/又は前記押え足(62)の往復運動に変換するための少なくとも1つのタペット(48、49)であって、
前記タペット(48、49)は、前記少なくとも1つのさねはぎ継ぎ部(53)を介して環状部材(54、67)と相互作用する、タペット(48、49)を特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の縫製システム。
【請求項6】
前記グリッパ下部(17)に、前記グリッパ下部(17)の旋回軸(13)と平行に少なくとも1つの摺動シャフト(25、35)が配置され、
前記摺動シャフト(25、35)は、グリッパ運動を駆動するために関節接続部(26)を介して前記グリッパ(15、16)と相互作用することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の縫製システム。
【請求項7】
グリッパ駆動部(25、29、35、36)が、2つの相互に垂直な運動成分(32、40)に沿って前記グリッパ(15、16)を駆動することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の縫製システム。
【請求項8】
前記グリッパ下部(17)が、凹溝又は凸条を具備する環状部材(28)を有する少なくとも1つのさねはぎ継ぎ部(27)を介して、前記グリッパ(15、16)を駆動するためのモータ部品(19)に動作可能に接続されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の縫製システム。
【請求項9】
前記グリッパ(15、16)を駆動するために、駆動シャフト(22)の回転を少なくとも1つの摺動シャフト(25、35)の上下運動に変換するための少なくとも1つのタペット(23、24)であって、
前記タペット(23、24)は、少なくとも1つのさねはぎ継ぎ部(27)を介して環状部材(28)と相互作用する、タペット(23、24)を特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の縫製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に多次元的に存在する縫い目を縫製する縫製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の縫製システムは、本出願人の縫製システムRS570の明らかな事前の使用によって知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、最初に述べたタイプの縫製システムを改良することであり、トポグラフィ的(topographically)に不均一な縫製部品もまた、この目的のために複雑で特別な構造を必要とすることなく、縫製可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する縫製システムによって本発明により達成される。
【0005】
複数のモータ部品を回転させる複数の部品の外側、したがって縫製ヘッドの針棒上部とグリッパ下部の外側に移動することで、回転させる複数の部品を非常にコンパクトに設計できる。この場合、縫製ヘッドは、自由にアクセス可能な縫い目形成領域を有するように設計でき、針棒上部及びグリッパ下部のそれぞれの、旋回可能な又は回転可能な設計のために、縫製システムの邪魔になる他の構成要素は、縫い目領域から任意に旋回させることができる。トポグラフィ的に要求の厳しい縫製作業もまた解決される。縫製システムは、縫製ヘッドを有するミシンとは別に、ミシンを空間内で多次元に配置するためのロボットを有することもできる。複数のモータは、縫製ヘッド内の針棒上部及びグリッパ下部の旋回において共同して旋回されない。タイミングベルト駆動を使用して、縫製ヘッドの針棒上部及び/又はグリッパ下部を旋回させることができる。縫製ヘッドの針棒上部とグリッパ下部を旋回する旋回駆動は、縫い目形成工具を駆動する縫製駆動とは独立して設計可能である。ミシンは二本針ミシンとすることができる。そのミシンは、チェーンステッチミシンであってもよく、特にダブルチェーンステッチミシンであってもよい。縫製システムのミシンは、ポストベッドミシンとすることができる。生成される縫い目は、空間的に非平面であるように多次元的に存在できる。針棒の上下運動を駆動する駆動構成要素、特に針棒の上下運動を駆動するモータ部品は、針棒上部と共同して回転しない構成要素として具体化することができる。
【0006】
請求項2に記載の針棒上部及びグリッパ下部の回転可能性は、縫製システムの特に柔軟な使用を可能にする。原理的には、針棒上部及びグリッパ下部は、縫製ヘッド内で自由に回転可能に取り付けでき、したがって縫製ヘッド内で360°以上回転可能である。
【0007】
請求項1、3、4のいずれか一項に記載の環状部材を有するさねはぎ継ぎ部は、旋回可能又は回転可能な構成要素のそれぞれ、すなわち、針棒上部とグリッパ下部に共同して旋回されないモータ部品の動作上信頼できる結合を可能にする。
【0008】
請求項5に記載の少なくとも1つのタペットは、それぞれの駆動運動の信頼できる生成を可能にする。
【0009】
一方では押え足の往復運動の駆動が、他方では針棒の搬送運動の駆動が、特にそれぞれのタペットを介して同一の駆動シャフトから派生させることができる。
【0010】
請求項6に記載の摺動シャフトは、グリッパ運動を確実に駆動できる。摺動シャフトの摺動軸は、グリッパ下部の旋回軸と一致できる。
【0011】
請求項7に記載のグリッパ駆動部は、少なくとも1つのグリッパが、特に割り当てられた針の針搬送動作に従うことを保証する。請求項6に記載の摺動シャフトを用いて、運動成分の1つがその都度生成される場合、その2つの運動成分に沿ってグリッパを駆動するために2つの摺動シャフトを用いることができる。2つの摺動シャフトの一方は中空シャフトとして、他の1つはその中を移動するとして具体化できる。
【0012】
グリッパに関して、請求項8に記載の環状部材を有するさねはぎ継ぎ部の利点、及び請求項9に記載のタペット変換は、針棒駆動の文脈において既に上記説明したものに対応する。
【0013】
本発明の例示的な実施形態が、図面を用いてより詳細に以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、空間に多次元的に存在する縫い目を縫製する縫製システムにおけるミシンの側面図であり、この側面図は内部詳細を示している。
図2図2は、縫製ヘッドにおけるミシンの機能群、具体的には、縫製ヘッド上部(その内部に回転可能に取り付けられた針棒上部を有する)を拡大して示している。
図3図3は、図1の視線方向IIIから見たミシンの縫製ヘッドの断片図を示し、この図は内部詳細を再度示している。
図4図4は、ミシンの縫い目形成要素を遠近法で拡大して示し、特に、裁縫ヘッド下部の構成要素(そこへ、グリッパを有するグリッパ下部が旋回可能に、かつ、針棒上部と同期して駆動されるように取り付けられている)を示している。
図5図5は、図1の視線方向Vから見た縫製ヘッド下部の図を示し、この図は内部詳細を再度示している。
図6図6は、図4と同様の図において、図4の視線方向とほぼ逆の方向から見た、グリッパ下部の関節接続部の構成要素を示し、それを経由して2次元のグリッパ運動が駆動される。
図7図7は、図4及び図6と同様の図において、図4及び図6の視線方向に関して約90°回転された視線方向から見た、グリッパ下部の関節接続部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
縫製システム1は、空間に多次元的に存在し、特に非平面的に3次元的に存在する縫い目を縫製するのに役立つ。縫製システム1の例示的な用途は、装飾シームを車両内部(例えば、ダッシュボード、ドア側クラッド又はアームレスト)に取り付けることである。図1に詳細に示すように、縫製システム1は、ロボット4のアーム3(概略的にのみ図示される)に支持されるミシン2を含む。ミシン2は、ロボット4のアーム3を経由して任意に制御され、空間上に5又は6の自由度で方向づけられる。
【0016】
位置相関を容易にするために、デカルトxyz座標系がいずれの場合にも図に示されている。x軸(それに沿ってシームが生成される)は、以下でさらに詳細に説明される縫い目形成工具の初期位置において、図1の図面平面に対して垂直であり、そこから突き出ている。図1のy方向は右に延び、図1のz方向は上方に延びる。
【0017】
ミシン2は、C字状の基本構成(筐体上部6と、筐体下部7と、これら2部分を連結してC字状に形成する支柱8とを具備する)を有する筐体5を備える。筐体上部6及び筐体下部7は、y方向に沿って延びている。支柱8は、z方向に沿って延びている。
【0018】
ミシン2は、共通の針棒11(図3参照)によって支持される、縫い目形成要素としての2つの縫い針9、10(図2参照)を有する。針棒11は針棒上部12に取り付けられ、その長手方向軸13に沿って上下に駆動される。
【0019】
次に針棒上部12は、旋回可能であるように、具体的には、針棒の長手方向軸13の周りを駆動方式で360°回転可能であるように、縫製ヘッド上部14に取り付けられている。針棒の長手方向軸13はz軸と平行に延びている。
【0020】
縫製ヘッド上部14は、筐体上部6の端部側部分を形成している。
【0021】
2つのグリッパ15、16は、さらなる縫い目形成要素として機能し、それらグリッパ15、16は、ステッチを形成するために縫い針9、10と同期して駆動されるように、グリッパ下部17に取り付けられている。グリッパ下部17は、ミシン2のカラム(円柱形状)を形成している。そしてグリッパ下部17は、縫製ヘッド下部18に取り付けられ、駆動されて針棒の長手方向軸13の周りを針棒上部12に同期して旋回可能である。縫製ヘッド下部18は、筐体下部7の端部側部分を示している。
【0022】
グリッパ下部17と縫製ヘッド下部18のカラム設計により、ミシン2によってシームが生成される縫い目形成領域は、あらゆる面から非常に自由にアクセス可能である。
【0023】
縫い目の形成において、2つの縫い針9、10は、針棒の長手方向軸13に沿って上下に駆動され、さらに、針を搬送するため、+/−x方向に往復するように駆動される。これに同期して、グリッパ15、16の旋回運動は、x−y平面にほぼ平行な楕円形の移動経路を有するように駆動される。グリッパ15、16のこの移動楕円のx成分は、y成分よりも大きい。
【0024】
縫い針9、10及びグリッパ15、16のこれら縫い目形成移動の駆動は、筐体5の支柱8に収容された縫製駆動モータ19によって駆動されるように行われる。縫製駆動モータ19は、その下に取り付けられたマイターギア20及びタイミングベルト21を介して、筐体下部7内にy軸と平行に縫製ヘッド下部18まで延びている縫製駆動下部シャフト22を駆動する。縫製ヘッド下部18に収容され、同期駆動のために駆動技術での観点からタイミングベルト接続を介して相互接続されている2つのタペット23、24は、下部シャフト22を介して駆動される。
【0025】
テークオフ側では、タペット23は、縫製ヘッド下部18を通って関節接続部26(図4図7参照)までz軸と平行に延びる摺動内部シャフト25に接続され、関節接続部26を介してグリッパ15、16が回転可能なグリッパ下部17に接続されている。タペット23と摺動内部シャフト25との間の作動連結は、環状フォロア27を介して行われる。摺動シャフトの長手方向軸と一致する針棒の長手方向軸13の周りで、縫製ヘッド下部18に関するグリッパ下部17の回転において、摺動内部シャフト25がタペット23の摺動小孔28内で回転する。
【0026】
摺動内部シャフト25には、環状フォロア27からみて外方を向くグリッパ側端部に、送り制御レバー29が固定されている。旋回レバー機能群30は、送り制御レバー29のz方向揺動運動(図7の二重矢印31参照)を、y軸に平行なグリッパ主旋回軸33の周りの回転揺動運動(図7の二重矢印32参照)に変換する。旋回レバー機能群30は、送り制御レバー29に組み付けられている。
【0027】
旋回レバー機能群30には、2つのグリッパ15、16が組み付けられたグリッパキャリア34が接続され、回転可能に固定されている。
【0028】
縫製ヘッド下部18内の第2タペット24は、それぞれの環状フォロア27と摺動小孔28とを介して摺動外部シャフト35に接続されている。第2タペット24は、下部シャフト22の回転運動を摺動外部シャフト35のz軸揺動運動に変換する。摺動外部シャフト35は、摺動内部シャフト25を取り囲み、摺動内部シャフト25と共に、縫製ヘッド下部18内に回転可能に取り付けられている。
【0029】
次に、旋回レバー37が関節接続される送り制御レバー36が、環状フォロア27から見て外方を向くグリッパ側端部において摺動外部シャフト35に固定される。旋回レバー37は、関節接続部26の本体38に関節接続されており、本体38はグリッパキャリア34に固定して接続されている。旋回レバー37は、送り制御レバー36のz軸揺動運動(図7の二重矢印39参照)を、グリッパ副旋回軸41周りに、本体38の回転/揺動運動(図7の二重矢印40参照)に変換する。
【0030】
本体38を有するグリッパキャリア34の旋回の組み合わせ(一方でグリッパ主旋回軸33周り、他方でグリッパ副旋回軸41周り)は、既に上記した通り、x−y平面内でグリッパ15、16の楕円形移動経路を提供する。この移動経路は、針棒11の移動と同期するように行われ、その針棒11の駆動は以下に説明される。
【0031】
更なるタイミングベルト42を介して、下部シャフト22の回転運動は、筐体上部6内でy方向と平行に延びる上部シャフト43の回転運動に変換される。上部シャフト43はクランク44を駆動し、このクランク44は環状フォロア45を介して針棒11に接続され、z軸に沿った針棒11の上下運動を駆動する。針棒上部12が縫製ヘッド上部14内で回転されると、環状フォロア45は、針棒11に回転可能に固定されて接続された環状部材46と、これと相互作用し、かつクランク44に固定されて接続された分岐部材とに、さねはぎ継ぎ部(tongue-and-groove connection)を形成する。環状部材46の環状対称軸は、針棒の長手方向軸13と一致する。
【0032】
カップリングを介した上部シャフト43の回転運動は、針送り/押え足駆動シャフト47の回転運動に変換される。図1及び図2に示すように、針送り/押え足駆動シャフト47は、上部シャフト43の前方に配置され、それを部分的に覆い隠している。
【0033】
針送り/押え足駆動シャフト47は、針送りタペット48及び押え足タペット49を駆動する。
【0034】
針送りタペット48のz方向(図2の二重矢印50参照)に揺動する送り制御レバー51が、分岐形の関節式レバー52とさねはぎ継ぎ部53を介して環状部材54に接続されている。環状部材54の環状対称軸は、針棒の長手方向軸13と一致する。ここでは、関節式レバー52の分岐部の互いに対向する2つのばねが、環状部材54の環状溝に係合する。環状部材54は、針棒上部12に回転可能に固定されて接続されている。関節式レバー52を介した駆動に対応して、環状部材54は、針棒上部12の本体に対して軸方向に移動可能である(図3の二重矢印55参照)。さらなる関節接続部58を介して、針棒上部12の本体に接続された針送りレバー57(図3参照)は、関節接続部56を介して環状部材54に関節接合されている。針送りレバー57は、ボルト59を介して針棒11のガイド60に接続され、ガイド60は同時に押え足62の押え足棒61のためのガイドにもなる。
【0035】
したがって、環状部材54の往復運動55は、縫い針9、10の針送り往復運動(図3の二重矢印63参照)をもたらし、この運動は、x−z平面内の押え足62の運動と連動する。
【0036】
押え足タペット49は、z方向(図2の二重矢印65を参照)に駆動されて揺動する別の送り制御レバー64を介して、別の分岐形状の関節式レバー66と相互作用する。また関節式レバー66は、同様にさねはぎ継ぎ部53を介して、針棒上部12の環状部材67と相互作用する。環状部材67の環状対称軸は、針棒の長手方向軸13と一致する。そのため、環状部材67のz方向の往復運動が引き起こされる(図3の二重矢印68参照)。環状部材67は、推力で押え足棒61に接続されている。したがって、環状部材67の往復運動68は、押え足62の対応する往復運動に変換される。
【0037】
縫製駆動モータ19を介する縫い目形成要素の駆動とは無関係に、一方では針棒上部12の駆動が、他方ではグリッパ下部17の駆動が、針棒の長手方向軸13の周りに旋回又は回転するようにそれぞれ行われる。
【0038】
この駆動は、タイミングベルト70を介して、回転駆動シャフト71を駆動する回転モータ69によって達成される。その回転駆動シャフト71は、筐体上部6と筐体下部7との間の支柱8内をz軸と平行に延びている。回転駆動シャフト71には、第1上部歯車72が筐体上部6と同じ高さになるように、回転可能に固定され接続されており、第2下部歯車73が筐体下部7と同じ高さになるように、回転可能に固定され接続されている。
【0039】
上部歯車72は、筐体上部6内に延びるタイミングベルト74を介して、針棒上部12の本体に回転可能に固定され接続された歯車75を駆動する。それと平行に、下部歯車73は、筐体下部7内に延びるタイミングベルト76を介して、グリッパ下部17の本体に回転可能に固定され接続された歯車77を駆動する。縫製ヘッド上部14の針棒上部12と、縫製ヘッド下部18のグリッパ下部17の旋回動作又は回転動作は、それぞれ回転駆動シャフト71を介して互いに同期している。
【0040】
空間に多次元的に存在する縫い目を縫製するためのミシン2は、図1に概略的に示されているように、中央制御部78を用いて位置決めされる。中央制御部78は、対応する方法でロボット4を作動することで、(図示されない)信号リンクの点で縫製システム1の駆動構成要素に接続されている。縫い目形成工具9、10、15、及び16は、続いて所定の縫い目プロファイルに従う。縫製される部品のトポグラフィに応じて、及び縫い目プロファイルに応じて、針棒上部12と、それに同期してグリッパ下部17とが、筐体5に関して針棒の長手方向軸13の周りに相互に同期して旋回される。このようにして、アクセスが困難な縫製位置にも到達可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 縫製システム
2 ミシン
3 アーム
4 ロボット
5 筐体
6 筐体上部
7 筐体下部
8 支柱
9、10 縫い針(縫い目形成工具)
11 針棒
12 針棒上部
13 長手方向軸
14 縫製ヘッド上部
15、16 グリッパ(縫い目形成工具)
17 グリッパ下部
18 縫製ヘッド下部
19 縫製駆動モータ
20 マイターギア
21、42、70、74、76 タイミングベルト
22 下部シャフト
23、24 タペット
25 摺動内部シャフト
26 関節接続部
27 環状フォロア
28 摺動小孔
29 送り制御レバー
30 旋回レバー機能群
31、32、39、40、50、55、63、65、68 二重矢印
33 グリッパ主旋回軸
34 グリッパキャリア
35 摺動外部シャフト
36 送り制御レバー
37 旋回レバー
38 本体
41 グリッパ副旋回軸
43 上部シャフト
44 クランク
45 環状フォロア
46、54、67 環状部材
47 押え足駆動シャフト
48 針送りタペット
49 押え足タペット
51 送り制御レバー
52 関節式レバー
53 さねはぎ継ぎ部
55、68 往復運動
56 関節接続部
57 針送りレバー
58 関節接続部
59 ボルト
60 ガイド
61 押え足棒
62 押え足
64 送り制御レバー
66 関節式レバー
69 回転モータ
71 回転駆動シャフト
72 上部歯車
73 下部歯車
75、77 歯車
78 中央制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7