特許第6906017号(P6906017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906017
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】セル型コアに対するセプタムの形成
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20210708BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20210708BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20210708BHJP
   B64D 33/00 20060101ALI20210708BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20210708BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   G10K11/16 100
   G10K11/172
   G10K11/168
   B64D33/00 B
   F01D25/00 S
   F02C7/24 C
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-107640(P2019-107640)
(22)【出願日】2019年6月10日
(62)【分割の表示】特願2015-125532(P2015-125532)の分割
【原出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-207411(P2019-207411A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年7月2日
(31)【優先権主張番号】14/326,890
(32)【優先日】2014年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】ノエル ティモシー ガーケン
(72)【発明者】
【氏名】エリック エレーラ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジョン パッツ
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0224410(US,A1)
【文献】 特開2000−202928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B64B 1/00− 1/70
B64C 1/00−99/00
B64D 1/00−47/08
B64F 1/00− 5/60
B64G 1/00−99/00
F01D 25/00
F02C 7/24
G10K 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セプタムが形成されたセル型吸音コアを製作する方法であって、
複数のセプタムに複合シートを巻き付けて、各々がセル壁を有するとともに、複合セプタムを含む複数のセルを形成することと、
前記セルと前記セプタムとを共硬化することにより、前記複合セプタムを前記セル壁に接合することと、を含み、
前記複合セプタムは、各セルと同じ断面形状である第1部分と、当該第1部分から離れる方向に先細りとなる第2部分と、を有しており、
前記複合セプタムを前記セル壁に接合することは、共硬化により前記複合セプタムの前記第1部分のみを前記セル壁に接合するように実行される、方法。
【請求項2】
前記セプタムをそれぞれ複数のツールに設置することを更に含み、
前記複合シートを巻き付けることは、前記各ツールを、前記複合シートのうちの1枚で包みこむことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のツール上に前記セプタムを設置することは、前記セプタムのそれぞれを雄ツール部材と雌ツール部材との間で保持することを含み、更に、各セプタムの一部を露出させることを含み、
前記複合シートの巻き付けは、前記複合シートのうちの1枚を、前記セプタムの露出された前記一部に巻き付けることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のセルを形成することは、前記各ツールに対して前記複合シートを圧接させることを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
共硬化を行う前に、前記ツールの位置を調節することにより、各セプタムを前記複数のセルのうち1つのセル内で位置決めすることを更に含む、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記セルに対応するツールアレイとなるように前記ツールを配置することを更に含む、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記共硬化の後に、前記ツールを取り外すことを更に含む、請求項2〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
吸音ライナーを作製する方法であって、
複数のツールの各々にセプタムを設置することと、
前記ツールに複合シートを巻き付けて、前記複合シートを各セプタムの第1部分に接触させるとともに、各セプタムの第2部分を前記複合シートから離した状態を維持することにより、複数のセルを有するセル型コアを形成することと、
前記セル型コアと前記セプタムとを共硬化して、各セプタムの第1部分のみを前記複合シートに接合することと、
前記ツールを前記セル型コアから取り外すことと、
第1及び第2表面シートを、前記セル型コアの相互に反対の側面に取り付けることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してノイズを低減する吸音処理に関し、特にハニカムセル型コア(honeycomb cellular cores)に対するセプタムの形成(septumization)に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機のエンジンではノイズが発生するが、その主な原因は、回転翼(rotating blades)が空気流を圧縮することと、回転翼が、排気ノズルを介して、空気流及び高速空気流
からエネルギーを取り出すことにある。ノイズを低減し、民間旅客機に対するノイズ規制を満たすために、航空機のエンジンは、例えば、ナセルの吸気口(nacelle inlets)、後部バイパスダクト、及び、主要ノズルなどの、エンジンの様々な部分において、吸音パネルが組み込まれることがある。これらの吸音パネルは、吸音処理部(acoustic treatment)又は吸音ライナー(acoustic liner)と呼ばれることもあり、有孔内側スキンと無孔外側スキンとの間に挟まれたハニカムコアを含みうる。ハニカムコアは、多くの場合、セプタム(septum)と呼ばれる多孔質材料で形成された中間層を有しており、この層は、ライナーの吸音性能を高めるために用いられる。ハニカムコアのセル内部におけるセプタムの設計パラメーターは、通常、有孔内側スキン(perforated inner skin)に対する層の深
さ又は位置と、層の多孔率とを含む。セプタムにより形成されるキャビティは、エンジンのノイズを低減するヘルムホルツ共鳴器(Helmholtz resonators)としての役割を果たす。
【0003】
ハニカムコアにセプタムを形成する方法として、少なくとも3つの既知の方法があり、これらの方法では、それぞれ、ハニカムコアを製造した後の別のプロセスにおいて、当該コアにセプタムを設ける必要がある。第1の方法では、コアを分割してから、接着剤を用いて、分割したコアの間にセプタム層を接合する。しかしながら、この方法は、時間がかかり、多くの労働力を必要とする上、コアを分割しなければならないため、コアの機械的性能が低下する場合がある。第2の方法は、埋込セプタムを形成するロストワックス処理法であり、ハニカムコアが蝋に押し込まれる。液体樹脂の薄い層が蝋の上に浮かんだ状態で、この層を硬化することにより固体層を形成した後、ハニカムコアから、蝋を溶かし出す。この埋込セプタム処理は、レーザーを用いて、所望の多孔率になるように固体セプタム層に穿孔する追加ステップを要する。第3の方法は、自動ロボット処理を用いて、個々のタブ付セプタムを各ハニカムセルに挿入することを含む。ハニカムパネルをある深さまで液体接着剤に注意深く浸すことにより、個々のセプタムのタブがハニカムセルの壁に接合される。個々のセプタムを設けるプロセスは、時間とコストがかかる。従って、吸音サンドイッチ構造体に用いられるハニカムコアにセプタムを形成する方法であって、且つ、各コアセルに個々のセプタムを設けたり、コアを分割してセプタム層を設けたりする必要がない方法、又は、ロストワックス処理において、固体セプタム層を形成した後レーザーを用いて固体セプタム層に穿孔するための多くのステップを必要としない方法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
開示される実施形態では、吸音処理に用いられるサンドイッチパネルに利用可能な、セル型コアにセプタムを形成する方法が提供される。開示される方法では、セプタムを設ける時にコアを分割する必要がなく、ロストワックス処理を用いる場合や各ハニカムセルに個々のセプタムを挿入するための自動ロボット装置を用いる場合に必要な多くの製造ステップを必要としない。多くのハニカムコア用セルに対して、迅速且つ容易にセプタムを形成することができる。コアセルの製造中に、コアに対してセプタムを形成できるため、コアセル内にセプタムを設置及び固定する別個のステップを排除することができる。セプタムは、コアの不可欠な部分を形成している。
【0005】
開示される一実施形態によると、セプタムが形成された吸音コアを作製する方法が提供される。複数の個別セプタムが形成され、個別セプタムは、それぞれ複数のツール(tool)に設置される。セルは、ツールに複合シートを巻き付けることにより形成される。セル型コアとセプタムとを共硬化(co-curing)することにより、セプタムは、セル内の決め
られた位置(indexed positions)で固定される。共硬化が完了すると、ツールはセル型
コアから取り外される。個別セプタムは、雄ツール部材に、これらのセプタムを被せることにより設置され、この後、雌ツール部材がセプタムに被せられることにより、セプタムが雄ツール部材と雌ツール部材との間で保持される。複合シートの巻き付けは、シートでツールを包みこみ、複合シートが、セプタムの露出部分と接触するように行われる。セル型コアの形成は、ツールのアレイを組み立てることと、各ツールをシートに対して位置決め(index)することにより、コアのセル内部にセプタムを配置することと、を含む。コ
アの形成は、ツールに対してシートを圧接させることを更に含む。
【0006】
開示される別の実施形態によると、セプタムが形成されたセル型コアを作製する方法が提供される。複数のセルが形成され、各セルは、セル壁を有するとともに、複合セプタムを含む。セルの形成は、複数の複合セプタムのそれぞれに対して複合シートを巻き付けることにより行われる。セルとセプタムとを共硬化することにより、複合セプタムは、セル壁に接合される。上記方法は、複数のツール上にセプタムを設置することと、複合シートを各ツールに巻き付けることとを更に含む。複数のツール上にセプタムを設置することは、各セプタムを雄ツール部材と雌ツール部材との間で保持することと、各セプタムの一部を露出させることとを含む。複合シートの巻き付けは、複合シートを、各セプタムの露出部分に巻き付けることを含む。複数のセルを形成することは、各ツールに対して複合シートを圧接させることを含む。上記方法は、共硬化を行う前にツールの位置を調整して、各セプタムを、複数のセルのうち1つのセル内で位置決めすることと、セルに対応するツールアレイとなるようにツールを配置することとを更に含んでもよい。共硬化が完了すると、ツールは取り外される。
【0007】
更に他の実施形態によると、吸音ライナーを作製する方法が提供される。上記方法は、複数のツールのそれぞれにセプタムを設置することと、ツールに複合シートを巻き付けて、複合シートを各セプタムの一部に接触させることにより、複数のセルを有するセル型コアを形成することと、セル型コアとセプタムとを共硬化することと、セル型コアからツールを取り外すことと、第1及び第2表面シートをセル型コアの相互に反対の側面に取り付けることと、を含む。
【0008】
更なる実施形態によると、各々が複数の側面を有する複数のセルを含むコアにセプタムを形成する装置が提供される。上記装置は、間にセプタムが保持されるように適合された一対の雄ツール部材及び雌ツール部材を含む。雄ツール部材及び雌ツール部材は、それぞれセルの形状に実質的に一致する第1部分と、セプタムの形状に実質的に一致する第2部分とを含む。雄ツール部材及び雌ツール部材は、軸方向に整列している。雄ツール部材と雌ツール部材の各々の第1部分は、セルの側面の数と等しい複数の平面を含む。雄ツール部材の第2部分は、その上にセプタムが被せられるように適合されたヘッドを含み、雌ツール部材の第2部分は、ヘッドを受容するように適合されたキャビティである。
【0009】
上述する特徴、機能及び利点は、本発明の様々な実施形態において個々に実現可能であり、また、他の実施形態との組み合わせも可能である。詳細については、以下の説明と図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0010】
例示的な実施形態に特有のものと考えられる新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な実施形態、並びに、好ましい使用形態、更にその
目的及び利点は、以下に示す添付の図面と共に本開示の例示的な実施形態の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】吸音処理が施された吸気口を有するエンジンを示す、翼の一部の斜視図である。
図2】吸音ライナーの一部を示す、図1の線2−2に沿って切り取った断面図である。
図3図2に示される吸音ライナーの一部を形成するセル型コアの底面斜視図である。
図4】セプタムの底端を示す、セル型コアの一部を示す底面等角図である。
図5】セプタムを有するセル型コアをレイアップ及び共硬化するためのツールを示す分解斜視図である。
図6】雄ツール部材と雌ツール部材との間にセプタムを設置することを示す、図5と同様の図である。
図7】雄ツール部材と雌ツール部材との間で保持されるセプタムを示す斜視図である。
図8】コアのセルのうち1つのセル内における、ツールと位置決めされたセプタムとを示す断面図である。
図9】ツールに対する巻き付け中のレイアップツールのアセンブリを示す斜視図である。
図10】部分的に形成された個別のシートと、当該シートに形成された溝にセプタムを設けることを示す斜視図である。
図11】シートの巻き付け過程におけるツールを示す図である。
図12図9に示されるレイアップツールのアセンブリを形成する、巻き付けが完了したツールの嵌め合わせ状スタックを示す図である。
図13】吸音ライナーを製造する方法のステップを概括的に示すフロー図である。
図14】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
図15】航空機を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示される実施形態は、ノイズを低減するための様々な用途に使用可能な吸音処理手段の一部を形成する方法であって、ハニカムコアなどのセル型コアにセプタムを形成する方法に関する。例えば、限定するものではないが、図1を参照すると、高バイパスエンジン20が、パイロン24を介して航空機の翼22に搭載されている。エンジン20は、エア・インレット28を有するエンジンナセル26を含む。エア・インレット28は、エア・インレット28からエンジン20へと流れる空気量が大きいことにより生じるノイズについて、このノイズを低減するための吸音ライナー32形式の吸音処理領域30を含む。
【0013】
次に図2〜4に注目すると、同図は、セプタムが形成された吸音コアを含む、吸音ライナー32を更に詳しく示している。吸音ライナー32は、概してセル型ハニカムコア34を含むサンドイッチパネル構造体(図2参照)である。このセル型ハニカムコアは、セル型コア34とも呼ばれ、内側表面シート36と外側表面シート38との間に挟まれている。内側表面シート36は、多数の孔40を含み、これらの孔により、ノイズを含む音波が内側表面シート36を通ってセル型コア34へ入る。内側表面シート36は、接着などの任意の適切なプロセスにより、ハニカムコア34の頂部に取り付けられている。同様に、外側表面シート38は、接着により、セル型コア34の底部に取り付けることができる。
【0014】
例示的な実施形態では、内側表面シート36及び外側表面シート38は、それぞれ、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの複合積層体を含みうるが、これらの表面シー
トは、いずれも他の材料を含んでもよい。セル型コア34は、いくつかのセル壁44により画定された複数の個別多角形セル42により形成される。図示例では、セル42は、六角形であるが、他のセル形状であってもよい。ハニカムコア34には、当該コア34と一体化した複数の個別複合セプタム(individual composite septums)46が形成されている。セプタム46は、穿孔されているか、或は、メッシュ又は織布などの多孔質材料で形成されており、このような材料により、音波の一部がセプタム46を通って下方へ移動し、セル42を通った後に外側表面シート38へと移動することができる。
【0015】
個々のセプタム(septums)46は、まとめてセプタム集合体(septa)46とも呼ばれ、上部48と下部50とを有する。セプタム46の上部48は、セル42と実質的に同じ断面形状をしており(例示的な実施形態では、六角形)、セル壁44と接合されることにより、セル42内でセプタム46の位置を固定している。例示的な実施形態では、セル壁44及びセプタム46は、PEEK織布などの複合織布(織物又は編物)で形成することができるが、他の材料を用いることもできる。以下で明白になるが、複合セプタム46と複合セル壁44とを用いることにより、セル型コア34を組み立てた後に、セプタム46とセル壁44とを共硬化(co-curing)により接合して、セプタム46をセル型コア34
に組み込むことができる。
【0016】
セプタム46の下部50は、所望のセル42内において下方に所望の深さだけ延伸し、セル42内において、予め選択された体積、形状、及び表面積を有するキャビティ52を形成する。このキャビティは、選択された用途において所望の吸音性能を実現する。例えば、吸音ライナー32を航空機に用いた場合、セプタム46のサイズ、形状、及び表面積の選択は、共振キャビティ52を形成するように行い、この共振キャビティは、内側表面シート36の孔40を通ってセル型コア34に入り吸音ライナー32を流れる音波/ノイズの打ち消し又は緩衝を補助する。
【0017】
例示的な実施形態においては、セプタム46の下部50は、略円錐状形状をしているが、セプタム46は、セル型コア34の全体に亘って一定又は変化するような他の形状であってもよい。このような形状により、異なる周波数域のノイズなどの、異なるタイプのノイズを低減するように、吸音ライナー32を、その種々の領域に応じて、調整することができる。また、例示する実施形態では、セプタム46の上部48はセル42の頂部に位置するが、他の実施形態では、セプタム46は、セル42内の下方に位置することにより、上部48が、セル42の頂部から下方に離間していてもよい。
【0018】
次に図5〜7に注目すると、同図は、セル型コア34のレイアップ及び硬化に用いられるツール54を示している。ツール54は、長状の雄ツール部材56と長状の雌ツール部材58とを含む。これらのツール部材56、58は、軸方向に整列しており、一対のツールセットとして機能する。雄ツール部材56及び雌ツール部材58は、それぞれ、セル42の断面形状と実質的に一致する外表面60、62を有している。図示例では、外表面60、62は、セル42の側面の数と等しい数の平面を有する。以下でより詳しく説明するが、外表面60、62は、マンドレルのようなレイアップ面としての役割を果たす。
【0019】
雄ツール部材56は、円錐状ツールキャビティ66と係合し、且つ、当該キャビティに受容される円錐状ツールヘッド64を含む。ツールヘッド64は、その上に、複数のセプタム46のうちの1つが被せられるように構成されている。セプタム46は、ツールヘッド64よりも長い。セプタム46をツールヘッド64に被せた後、ツール部材56、58を互いに軸方向に近づけてから閉じる。ツール部材56、58を互いに近づけて、これらの部材の間にセプタム46を挟んだ時、セプタム46の下部50は、円錐状ツールキャビティ66の内部に閉じ込められているが、上部48は、露出しており、雄ツール部材56の外表面60上において下方に延びている。
【0020】
次に図8〜12を参照すると、図5〜7に示すツール54を用いて、セプタム46と共にセル型コア34をレイアップ、成形、及び硬化することができる。雄ツール部材56と雌ツール部材58との間に各セプタム46が挟持された状態で、複数のセプタム46を複数のツール54に装着する(図8)。任意の適切な技術、例えば、限定するものではないが、手作業の巻き付けや自動装置を用いた巻き付けにより、各ツール54に対して少なくとも1枚の複合プリプレグシート70を巻き付ける75(図11)。この巻き付けプロセスにおいて、シート70は、雄ツール部材56及び雌ツール部材58の六角形の外表面60、62にて成形される。表面60、62にてシート70を成形することにより、セル壁44を効率的に形成することができる。同時に、シート70をツール54の周りに巻き付けると、セプタム46の露出した上部48の全周が、巻き付けられたシート70と接触する。
【0021】
巻き付けが完了すると、各ツール54を、巻き付けが完了したツール54の嵌め合い状の列(nested rows)74からなるスタック85を構成するように載置する(図12)。
図9に示すように、ツール54に対する巻き付けと、スタックへの載置を行うプロセスは、完全なレイアップツールアセンブリ68が形成されるまで続けて行う。各ツール54を載置してスタック85を構成する時、その長手位置を調整してセプタム46の上部48を位置決めすることにより、セル42内のセプタム46の位置(長手位置)を固定するようにする。
【0022】
セル42の断面形状に応じて、ツール54の列74は、図12のように互いに嵌め合い状になっている。このようにすることで、圧縮プレス、真空バッグによる圧力、及び/又は、オートクレーブによる圧力を用いてツールアレイ68に対して圧縮用の圧力を加えた時に、外側のツール表面60、62によりシート70が圧縮される。圧縮用の圧力が、ツール54により成形されたシートに加えられると、複合セプタム46の露出された上部48が、周りを囲むセル壁44に対して圧接される。硬化サイクル中、圧縮用の圧力を熱と共に加えると、セプタム46の露出した上部48が、周囲のセル壁44と共硬化され、これにより、セル42内において、セプタム46が決定された位置で固定される。
【0023】
次に図13に注目すると、同図は、概して、吸音ライナー32を作製する方法の全体的なステップを示しており、この方法において、セル型コア34の製作中に、セプタム46がセル型コア34のセル42に設置される。ステップ76において、2つの複合織布層を互いに織ったり、編んだり、結合したりするような、任意の適切な技術を用いてセプタム46を作製する。ステップ78において、セプタム46をそれぞれ個々のツール54に設置して、各セプタム46を、雄ツール部材56と雌ツール部材58との対の間で保持する。ステップ80において、各ツール54に複合シート70を巻き付けることによりセル型コア34を形成する。この巻き付けプロセス中において、セプタム46は、セル42内において長手方向に位置決めされ、周縁に沿ってセル壁44と接触する。ステップ82において、セル型コア34とセプタム46とを共硬化することにより、セプタム46をセル壁44に接合して、セプタム46をセル型コア34に組み込む。
【0024】
硬化プロセス中において、ツール54は、セル42の形状を維持するとともに、セプタム46をセル壁44に対して押し付けるための圧縮用の圧力を加えるために膨張する硬化マンドレルとしての役割を果たす。硬化の後、ステップ84において、雄ツール部材56と雌ツール部材58とを分離して、これらのツールをセル42の両端から取り出す。ステップ86において、用途に応じて、セプタムが形成されたセル型コア34を、内側表面シート36と外側表面シート38との間で接合する。内側表面シート36に穿孔することにより、音波がセル42に入り、セプタム46を通ることができる。
【0025】
本開示における実施形態は、様々な用途に使用される可能性を有し、特に、航空宇宙、船舶、自動車、及びその他の用途を含む輸送業であって、吸音ライナーなどの吸音処理が用いられる分野に用途を見出すことができる。従って、図14及び15に示すように、本開示の実施形態は、図14に示されるような航空機の製造及び保守方法88、並びに、図15に示される航空機90に関連して用いることができる。開示される実施形態の航空機に関する用途としては、例えば、限定するものではないが、エンジンナセルの吸音ライナーがある。生産開始前の工程として、例示的な方法88は、航空機90の仕様及び設計92と、材料調達94とを含む。生産中の工程として、部品及び小組立品の製造96、並びに、航空機90のシステムインテグレーション98が行われる。その後、航空機90は、例えば認証及び納品100の工程を経て、就航102に入る。顧客による運航中は、航空機90は、定例の整備及び保守104のスケジュールに組み込まれ、これは調整、変更、改修なども含む場合もある。
【0026】
方法88の各処理は、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行または実施することができる。説明のために言及すると、システムインテグレーターは、航空機メーカー及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等であってもよい。
【0027】
図15に示すように、例示的方法88によって製造される航空機90は、複数のシステム108及び内装110を具備した機体106を含んでもよい。高水準システム108の例として、推進系112、電気系114、油圧系116、及び環境系118のうちの1つ又は複数が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでいてもよい。推進系112は、開示される実施形態に係る吸音ライナーを備えるエンジンナセルを含んでもよい。また、航空宇宙産業に用いた場合を例として説明したが、本開示の原理は、例えば船舶及び自動車産業等の他の産業に適用してもよい。
【0028】
本明細書において具現化されているシステム及び方法は、製造及び保守方法88における1つ又は複数のどの段階において採用してもよい。例えば、製造工程96に対応する部品又は小組立品は、航空機90が運航中に製造される部品又は小部品と同様に組み立て又は製造することができる。また、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせを、例えば、実質的に航空機90の組み立て速度を速めたりコストを削減したりすることによって、製造工程96、98で用いてもよい。同様に、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせを、航空機90の保守104中に用いてもよい。
【0029】
本明細書において、「少なくとも1つの」という語句がアイテムのリストについて用いられる時は、リストアップされたアイテムの1つまたは複数の様々な組み合わせを使用してもよいということであり、リストのアイテムの1つだけを必要とする場合もあることを意味する。例えば、「アイテムA、アイテムB、アイテムCの少なくとも1つ」は、限定するものではないが、アイテムA、アイテムAとアイテムB、又は、アイテムBを含む場合がある。また、この例では、アイテムAとアイテムBとアイテムC、又は、アイテムBとアイテムC、を含む場合もある。アイテムは、ある特定の対象、物、又はカテゴリーであってもよい。換言すると、「少なくとも1つの」は、あらゆる組み合わせのあらゆる数のアイテムをリストから使用してもよいが、リスト上の全てのアイテムを必要とするわけではないということを意味する。
【0030】
更に、本開示は、以下の付記に係る実施形態も含むものとする。
【0031】
付記1.セプタムが形成された吸音コアを作製する方法であって、
複数の個別複合セプタムを形成することと、
前記複数の個別セプタムを、それぞれ複数のツールに設置することと、
前記セプタムが設置されたツールに複合シートを巻き付けて、複数のセルを有するセル型コアを形成することと、
前記セル型コアと前記セプタムとを共硬化することと、
前記セル型コアと前記セプタムとが共硬化された後に前記ツールを取り外すことと、を含む方法。
【0032】
付記2.複数の個別セプタムを設置することは、前記セプタムを、それぞれ雄ツール部材に被せることを含む、付記1に記載の方法。
【0033】
付記3.複数の個別セプタムを設置することは、
前記セプタムの第2部分が露出するように、前記セプタムの第1部分に雌ツール部材を被せることを含む、付記2に記載の方法。
【0034】
付記4.複数の個別セプタムを設置することは、前記セプタムを、それぞれ雄ツール部材と雌ツール部材との間に保持することを含む、付記1に記載の方法。
【0035】
付記5.複合シートを巻き付けることは、
前記各ツールを、前記複合シートのうちの1枚で包みこむことと、
前記シートを、各セプタムの部分と接触させることと、を含む、付記1〜4のいずれかに記載の方法。
【0036】
付記6.前記セル型コアを形成することは、前記ツールのアセンブリを形成することと、
前記シートに対して前記ツールのそれぞれを位置決めすることにより、前記コアの前記セル内に前記セプタムを配置することと、を含む付記1〜4のいずれかに記載の方法。
【0037】
付記7.前記セル型コアを形成することは、前記ツールに対して前記シートを圧接させることを更に含む、付記6に記載の方法。
【0038】
付記8.セプタムが形成されたセル型コアを製作する方法であって、
複数のセプタムに複合シートを巻き付けて、各々がセル壁を有するとともに、複合セプタムを含む複数のセルを形成することと、
前記セルと前記セプタムとを共硬化することにより、前記複合セプタムを前記セル壁に接合することと、を含む方法。
【0039】
付記9.前記セプタムをそれぞれ複数のツールに設置することを更に含み、
前記複合シートを巻き付けることは、前記各ツールを、前記複合シートのうちの1枚で包みこむことを含む、付記8に記載の方法。
【0040】
付記10.前記複数のツール上に前記セプタムを設置することは、前記セプタムのそれぞれを雄ツール部材と雌ツール部材との間で保持することを含み、更に、各セプタムの一部を露出させることを含み、
前記複合シートの巻き付けは、前記複合シートのうちの1枚を、前記セプタムの前記露出部分に巻き付けることを含む、付記9に記載の方法。
【0041】
付記11.前記複数のセルを形成することは、前記各ツールに対して前記複合シートを圧接させることを含む、付記9又は10に記載の方法。
【0042】
付記12.共硬化を行う前に、前記ツールの位置を調節することにより、各セプタムを前記複数のセルのうち1つのセル内で位置決めすることを更に含む、付記9〜11のいずれかに記載の方法。
【0043】
付記13.前記セルに対応するツールアレイとなるように前記ツールを配置することを更に含む、付記9〜12のいずれかに記載の方法。
【0044】
付記14.前記共硬化の後に、前記ツールを取り外すことを更に含む、付記9〜13のいずれかを含む方法。
【0045】
付記15.吸音ライナーを作製する方法であって、
複数のツールの各々にセプタムを設置することと、
前記ツールに複合シートを巻き付けて、前記複合シートを各セプタムの一部に接触させることにより、複数のセルを有するセル型コアを形成することと、
前記セル型コアと前記セプタムとを共硬化することと、
前記ツールを前記セル型コアから取り外すことと、
第1及び第2表面シートを、前記セル型コアの相互に反対の側面に取り付けることと、を含む。
【0046】
付記16.各々が複数の側面を有する複数のセルを含むコアにセプタムを形成する装置であって、
間にセプタムが保持されるように適合された一対の雄ツール部材及び雌ツール部材を含み、
前記雄ツール部材及び雌ツール部材は、それぞれ前記セルの形状に実質的に一致する第1部分と、前記セプタムの形状に実質的に一致する第2部分とを含む、装置。
【0047】
付記17.前記雄ツール部材及び雌ツール部材は、軸方向に整列している、付記16に記載の装置。
【0048】
付記18.前記雄ツール部材と雌ツール部材の各々の第1部分は、前記セルの側面の数と等しい複数の平面を含む、付記16又は17に記載の装置。
【0049】
付記19.前記雄ツール部材の第2部分は、その上にセプタムが被せられるように適合されたヘッドであり、
前記雌ツール部材の前記第2部分は、前記ヘッドを受容するように適合されたキャビティである、付記16〜18のいずれかに記載の装置。
【0050】
付記20.前記セプタムは所定の長さを有しており、
前記ヘッドは、前記セプタムの前記長さよりも短い長さを有することにより、前記セプタムの一部が露出している、付記19に記載の装置。
【0051】
様々な例示的な実施形態の説明は、例示および説明のために提示したものであり、全てを網羅することや、開示した形態での実施に限定することを意図するものではない。多くの改変または変形が当業者には明らかであろう。また、例示的な実施形態は、他の例示的な実施形態とは異なる効果をもたらす場合がある。選択した実施形態は、実施形態の原理及び実際の用途を最も的確に説明するために、且つ、当業者が、想定した特定の用途に適した種々の改変を加えた様々な実施形態のための開示を理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15