特許第6906031号(P6906031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デュール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906031
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】塗布方法および塗布システム
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20210708BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210708BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20210708BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B05D1/02 Z
   B05D7/24 301N
   B05D7/24 301P
   B05D7/24 301Z
   B05D7/14 L
   B05D3/00 D
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-193414(P2019-193414)
(22)【出願日】2019年10月24日
(62)【分割の表示】特願2015-556416(P2015-556416)の分割
【原出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2020-22965(P2020-22965A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2019年11月25日
(31)【優先権主張番号】102013002412.9
(32)【優先日】2013年2月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、ハンス−ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェール、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】クライナー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バイル、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルレ、フランク
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−061987(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/138048(WO,A1)
【文献】 特表2013−530816(JP,A)
【文献】 特開平07−246362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00− 7/26
B05C1/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング剤を、部品(6、9)に、塗布するための塗布方法であって、
a)塗布装置(2、12)から前記コーティング剤のジェット(5、13)を放出するステップであって、前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記コーティング剤の前記ジェットが分裂距離(LZERFALL)に達するまで、最初、噴射方向に連続した領域を有する、ステップと、
b)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記部品(6、9)に衝突して前記部品(6、9)をコーティングするよう、前記塗布装置(2、12)の位置を、前記部品(6、9)を基準に、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、所定の塗布距離(d)に合わせるステップと、
を備え
c)前記塗布装置(2、12)は実質的に互いに平行な複数のコーティング剤のジェット(5、13)を塗布し、
d)直接に隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の間の距離は、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、前記隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が結合しないよう、十分に大きく、
e)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の放出のため、所定のノズル内径と所定のノズル間隔とを有する複数の塗布ノズル(4)が設けられており、
f)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記連続した領域で前記部品(6、9)に衝突するよう、前記塗布距離(d)は前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の前記分裂距離(LZERFALL)より小さく、
g)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、一回毎に前記コーティング剤のストリップが塗布されるよう、前記部品(6、9)上を複数回移動させられ、
h)塗布後、隣接する複数の前記コーティング剤の前記ストリップが互いに結合して単一のストライプを形成し、
i)前記ノズル間隔は、前記ノズル内径の少なくとも3倍である、
ことを特徴とする、塗布方法。
【請求項2】
前記ストライプは、所定の縁形状から、3mm以下の最大誤差(a)を有し、前記ストライプの外部への前記コーティング剤の飛沫を伴わない、鮮明な縁の模様である、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
a)前記ストライプは、1mm以上の幅を有し、および、
b)前記ストライプは、10cm以下の幅を有する、請求項1又は2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記ノズル間隔は、前記ノズル内径の少なくとも4倍である、請求項1から3のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
a)前記塗布装置(2、12)は複数の塗布ノズル(4)を含み、少なくともその中のいくつかは互いに独立に制御可能であり、および、
b)互いに独立に制御可能な前記塗布ノズル(4)の場合、処理変数の少なくとも1つが独立に制御可能であり、
前記処理変数は、
b1)前記塗布ノズル(4)からの前記コーティング剤の放出速度、
b2)前記コーティング剤の種類、
b3)前記塗布ノズル(4)からの前記コーティング剤の体積流量率、
である、請求項1から4のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項6】
前記コーティング剤の塗布中、前記塗布装置(2、12)及び前記部品(6、9)は互いに対して相対的に移動させられる、請求項1から5のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項7】
a)前記塗布装置(2、12)は固定されており、かつ、前記部品(6、9)は移動させられ、および、
b)前記コーティング剤の塗布中、前記部品(6、9)は、10cm/s以上の速さで移動させられ、および、
c)前記コーティング剤の塗布中、前記部品(6、9)は、10m/s以下の速さで移動させられる、請求項6に記載の塗布方法。
【請求項8】
a)前記部品(6、9)は固定されており、かつ、前記塗布装置(2、12)は移動させられ、および、
b)前記コーティング剤の塗布中、前記塗布装置(2、12)は、10cm/s以上の速さで移動させられ、および、
c)前記コーティング剤の塗布中、前記塗布装置(2、12)は、250cm/s以下の速さで移動させられる、請求項6に記載の塗布方法。
【請求項9】
a)前記部品の表面に前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が衝突する位置が、ストリップに沿って移動するよう、前記塗布装置(2、12)は前記部品(6、9)を基準に前記部品の前記表面に亘って移動させられ、
b)この移動の間、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、スイッチを切られた後、再びスイッチを入れられ、
c)前記部品(6、9)上で5mmより微細な空間分解能となるよう、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記部品の前記表面に亘ってゆっくり移動させられ、かつ、迅速にスイッチを切ったり入れたりされる、請求項1から8のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項10】
a)前記塗布装置(2、12)を、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを切った状態で、コーティング対象の前記部品(6、9)の縁(10)に向かって移動させるステップ、
b)前記塗布装置(2、12)が前記部品(6、9)の上方に存在するとき、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを入れるステップ、
c)前記塗布装置(2、12)を、コーティング対象の前記部品の表面に沿って、コーティング対象の前記部品(6、9)に亘って移動させるステップ、
d)前記塗布装置(2、12)がコーティング対象の前記部品の前記表面の上方にもはや存在しなくなったとき、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを切るステップ、
をさらに備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項11】
a)コーティング対象の前記部品(6、9)の空間上の位置を検出するステップ、および/または、b)前記塗布装置(2、12)の空間上の位置を検出するステップ、および、
c)前記部品(6、9)および/または前記塗布装置(2、12)の検出された前記位置に応じて、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを入れるステップ、および/または、d)前記部品(6、9)および/または前記塗布装置(2、12)の検出された前記位置に応じて、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを切るステップ、
をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項12】
前記位置は、
a)カメラ(14)、
b)超音波センサ、
c)誘導センサ、
d)容量センサ、
e)レーザセンサ、または、
f)前記位置が読み取られるロボット制御システム、
を使用して検出される、請求項11に記載の塗布方法。
【請求項13】
a)塗布された前記コーティング剤の実質的に全部がオーバースプレーなしで前記部品(6、9)上全体に積層されるよう、前記塗布方法は99%以上の高い塗布効率を有し、および、
b)前記塗布方法は、0.5m/min以上の領域コーティング出力を有し、および、
c)塗布された前記コーティング剤の体積流量率、および、ひいては、前記コーティング剤の放出速度は、前記コーティング剤が前記部品(6、9)への衝突の後に前記部品(6、9)から跳ね返らないよう、設定されており、および、
d)前記塗布装置(2、12)からの前記コーティング剤の前記放出速度は、5m/s以上であり、および、
e)前記塗布装置(2;12)からの前記コーティング剤の前記放出速度は、30m/s以下であり、および、
f)前記塗布距離(d)は、4mm以上であり、および、
g)前記塗布距離(d)は、200mm以下であり、および、
h)前記塗布装置(2、12)は、機械を使用して移動させられ、および、
i)前記コーティング剤は、塗料であり、および、
j)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、50ミリ秒より短いスイッチ切替間隔で、スイッチを入れたり切ったりされる、
請求項1から12のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項14】
コーティング剤を、部品(6、9)に、塗布するための塗布システムであって、
a)コーティング剤のジェット(5、13)を放出するための塗布装置(2、12)であって、前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記コーティング剤の前記ジェットが分裂距離(LZERFALL)に達するまで、最初、噴射方向に連続した領域を有する、塗布装置(2、12)と、
b)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記部品(6、9)に衝突して前記部品(6、9)をコーティングするよう、前記塗布装置(2、12)の位置を、前記部品(6、9)を基準に、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、所定の塗布距離(d)に合わせるための位置合わせ装置と、
を備え、
c)前記塗布装置(2、12)は実質的に互いに平行な複数のコーティング剤のジェット(5、13)を塗布し、
d)直接に隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の間の距離は、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、前記隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が結合しないよう、十分に大きく、
e)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の放出のため、所定のノズル内径と所定のノズル間隔とを有する複数の塗布ノズル(4)が設けられており、
f)前記位置合わせ装置は、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記連続した領域で前記部品(6、9)に衝突するようにするため、前記塗布距離(d)が前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の前記分裂距離(LZERFALL)よりも小さくなるよう、前記部品(6、9)を基準にして前記塗布装置(2、12)の位置を合わせ、
g)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、一回毎に前記コーティング剤のストリップが塗布されるよう、前記部品(6、9)上を複数回移動させられ、
h)塗布後、隣接する複数の前記コーティング剤の前記ストリップが互いに結合して単一のストライプを形成し、
i)前記ノズル間隔は、前記ノズル内径の少なくとも3倍である、
ことを特徴とする、塗布システム。
【請求項15】
a)前記塗布装置(2、12)は、複数の塗布ノズルが配置されているノズル板を有し、および、
b)前記塗布装置(2、12)は、それぞれが1つのコーティング剤のジェットを放出する複数の塗布ノズルを有し、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は前記部品(6、9)上にストライプを作り、および、
c)前記ストライプは、1mm以上の幅を有し、および、
d)前記ストライプは、1cm以下の幅を有する、請求項14に記載の塗布システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品(例えば、自動車車体部品)上にコーティング剤(例えば、塗料、封止剤、離型剤、接着剤、機能層)を塗布するための、塗布方法および塗布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コーティング対象の部品表面に衝突する、コーティング剤の液滴ジェットが作られるコーティング方法を開示する。コーティング剤のジェットの分裂距離が、塗装距離、すなわち、塗布装置と部品表面との間の距離より小さくなるよう、特に、振動の結合により、最初は連続的であるコーティング剤のジェットを液滴へと分裂させる。
【0003】
しかし、液滴ジェットによる、この周知の塗布方法は完全に満足なものではない。
【0004】
従来技術について、特許文献2および特許文献3も参照する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010019612号明細書
【特許文献2】独国特許発明第3835078号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009004878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上を鑑み、本発明は、適切に改善された塗布方法および対応する塗布システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
独立請求項に記載されている、本発明に係る塗布方法および対応する塗布システムを使用することにより、上記目的は達成される。
【0008】
本発明は、特許文献1とは異なり、特に、振動の結合を通して液滴を生じさせるのではなく、むしろ、コーティングのためにコーティング剤のジェットの連続した領域を用いて、液滴へと分裂させるという共通の技術的教示を含む。従って、本発明の文脈において、塗布距離(すなわち、一方の塗布装置の噴射口と他方のコーティング対象の部品表面との間の距離)は、コーティング剤のジェットの分裂距離(すなわち、塗布装置の噴射口と、液滴への分裂に移行する連続した領域の端との間の、コーティング剤のジェットの連続した領域の長さ)よりも小さくなるよう選択される。この結果、コーティング剤のジェットが、その連続した領域で、部品に衝突することとなり、より良いコーティング結果が得られる。
【0009】
本発明に係る塗布方法では、上述した従来技術に従って、コーティング剤のジェットが塗布装置から放出され、塗布装置から出た後、コーティング剤のジェットは、該ジェットが分裂距離に達するまで、最初、噴射方向内に連続した領域を有し、塗布装置からの放出後、分裂距離以降、コーティング剤のジェットは、自然法則(レイリーによる自然分裂)に従い、噴射方向に互いから離散した液滴へと分裂する。
【0010】
本発明の文脈において用いられるコーティング剤のジェットの概念は、単数と複数のコーティング剤のジェットを含むが、本明細書では、簡明にするため、単数の形式のみを用いる。コーティング剤のジェットは、例えば、従来の回転式噴霧器から放出されるような、コーティングミストとは区別すべきである。従って、本発明に係るコーティング剤のジェットは、密着する断面と、噴霧されたミストと比較して小さい広がり角と、特に細部の塗装では重要な、とても小さい側方への広がりとにより区別される。
【0011】
さらに、本発明に係る塗布方法では、上記先行技術に従って、コーティング剤のジェットが部品に衝突して部品の表面をコーティングするよう、塗布装置の位置が、塗布対象の部品(例えば、自動車車体部品)を基準に、塗布装置と部品との間で、所定の塗布距離に合わされる。
【0012】
コーティング剤のジェットの断面は比較的小さく明瞭であるため、部品を基準に塗布装置の位置を適切に合わせることにより、細部の塗布が可能である。それゆえ、ただ1箇所の相応に小さい部品の表面の領域を選択的にコーティングすることもできる。
【0013】
しかし、代わりに、コーティング剤のジェットが隣接または重複する複数のストリップ状に部品表面上を移動することで、部品が領域的にコーティング剤で塗布されてもよい。
【0014】
本発明に係る塗布方法では、上記先行技術とは異なり、コーティング剤のジェットが連続した領域で部品に衝突するよう、塗布距離をコーティング剤のジェットの分裂距離より小さく選択する。そのため、冒頭に記載の周知先行技術では、コーティング剤の個々の液滴が部品表面に衝突するが、本発明によれば、連続的なコーティング剤のジェットが部品に衝突する。
【0015】
本発明の文脈において使用されるコーティング剤の概念は、広義に理解されるべきであり、例えば、塗料(例えば、下地塗料、クリアラッカー)、封止剤、離型剤、機能層、および接着剤を含む。しかし、本発明の好ましい例示的実施形態では、塗料を用いて、細部の塗布を行う。機能層のカテゴリーは、接着促進、プライマ、石片保護層、または透過抑制層などの、表面の機能化をもたらす全てのコーティングを含む。
【0016】
例えば、コーティング剤のジェットは部品上に模様、例えばストライプ(例えば、デザインストライプ、装飾的ストライプ)、を塗布することもできる。しかしながら、本発明の文脈において使用される模様の概念は、広義に理解されるべきであり、ストライプに限定されない。例えば、模様は、グラフィックデザイン、例えば、自動車のボンネット上で跳躍する馬のシルエットや車体屋根上のチェッカーフラッグ、もまたあり得る。
【0017】
回転式噴霧器を使用する従来の噴霧方法とは対照的に、本発明に係る塗布方法を使用し、高級感を出すために重要な鮮明な縁の模様を作ることができる。まず、本発明の文脈において使用される鮮明な縁の模様の概念は、模様の端が、予め定められた端の形と比較して、非常に誤差が小さく、好ましくは、3mm、1mm、0.5mm、0.2mm、または、さらに0.1mmよりも小さいことを意味する。また、本発明の文脈において使用される「鮮明な縁の模様」の表現は、コーティングされる模様の外側において、部品表面に衝突するコーティング剤の飛沫のないことも意味する。
【0018】
既に上で簡単に触れたように、本発明に係る塗布方法は領域的な部品コーティングにも適している。こうした目的のため、コーティング剤のジェットは、一回毎にコーティング剤のストリップが塗布されるよう、部品上を複数回移動させられ得る。このように、コーティング剤のジェットを蛇行して誘導することにより、多数の平行なコーティング剤のストリップが塗布され得る。
【0019】
本発明の一変形例では、塗布後に、個々のコーティング剤のストリップは、互いに結合し、単一のストライプ、または単一のコーティング剤層を形成する。
【0020】
しかし、本発明の別の変形例では、個々のコーティング剤のストリップは、互いに結合せず、むしろ最終状態では、2以上の別個のストライプを形成する。
【0021】
上で簡単に触れたように、本発明の文脈において使用される「模様」という表現は、好ましくは部品表面に塗布されるストライプを意味する。本発明に係る塗布方法を使用して、1m、10cm、5cm、2cm、1cm、5mm、2mm、1mm、400μm未満または、さらに200μm未満の幅を有する極めて狭いストリップが有利に塗布されることができる。しかしながら、個々のストリップは、好ましくは、100μm、200μm、400μm、1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、5cm、10cm以上、または、さらに1m以上の幅を有する。
【0022】
本発明の好ましい例示的実施形態において、塗布装置は、単一のコーティング剤のジェットのみではなく、実質的に互いに平行な複数のコーティング剤のジェットをも放出する。直接に隣接するコーティング剤のジェット間の距離は、好ましくは、直接に隣接するコーティング剤のジェットが、塗布装置と部品との間で結合せず、別々のコーティング剤のジェットとして部品表面に衝突し、さらに、部品上で一領域へと結合するよう、十分に大きい。
【0023】
好ましくは、所定のノズルの内径を有し、所定のノズルの間隔で配置された複数の塗布ノズルが、個々のコーティング剤のジェットを放出するために設けられている。塗布ノズルと部品表面との間の隣接するコーティング剤のジェットの結合を防止するため、隣接する塗布ノズル間のノズル間隔は、好ましくは、ノズルの内径の、3倍、4倍、または6倍に少なくとも等しい。
【0024】
個々の塗布ノズルは、好ましくは、有孔板として共に設けられ、経済的に生産可能である。
【0025】
さらに、個々の塗布ノズルから放出されるコーティング剤のジェットが異なる処理変数を有するよう、個々の塗布ノズル、または、複数のノズルを有する領域は、互いに独立に制御可能とすることも本発明の範囲において可能である。例えば、塗布ノズルからのコーティング剤の放出速度、コーティング剤の種類、または放出されるコーティング剤の体積流量率は、個々の塗布ノズルまたは領域のために、個々に設定され得る。
【0026】
上述の通り、コーティング剤の塗布中、部品を基準に塗布装置が動かされることにより、コーティング剤のジェットは、部品表面上でのその衝突位置と共に、対応するストリップに沿って移動する。
【0027】
本発明の変形例では、塗布装置が固定位置に配置される一方、部品が移動させられるとすることができる。移動の速さは、好ましくは、10cm/s、50cm/s、1m/s、1.5m/s以上であり、かつ10m/s、5m/s以下、または1m/s以下である。この変形例自体は、欧州特許出願公開第1745858号明細書から周知であり、この特許出願の内容は、塗布装置と部品の相対的な移動の観点にて、本記述に完全に組み込まれる。
【0028】
しかし、本発明の別の変形例では、部品が固定位置に配置される一方、塗布装置が移動させられるとすることもできる。この点について、移動の速さは、好ましくは、10cm/s、20cm/s、30cm/s、50cm/s、1m/s以上、または2m/s以上であり、かつ、250cm/s、700mm/s、500mm/s以下、または100mm/s以下である。
【0029】
さらに、塗布装置とコーティング対象の部品の間の相対移動は、塗布装置とコーティング対象の部品との両方が動かされることによりなし得る。
【0030】
塗布装置が部品を基準に部品表面上を移動させられることにより、部品表面上のコーティング剤のジェットの衝突位置は、コーティング剤により塗布されるストリップに沿って移動することを上で簡単に触れた。この点については、カバーされる経路が、部品表面上でコーティング剤でコーティングされない隙間を有するよう、部品表面上のストリップに沿って移動している間、コーティング剤のジェットは、一時的にスイッチを切られるかまたは中断され、その後、再びスイッチを入れられまたは続行されてもよい。部品上で5mm、2mm、または1mmより微細な空間分解能となるよう、コーティング剤のジェットは、部品表面に亘って、ゆっくり移動させられ、かつ迅速にスイッチを切ったり入れたりされることとすることも本発明の範囲において可能である。これは特に、模様の細部を塗布することに有利である。
【0031】
本発明に係る塗布方法は、オーバースプレーを回避する点、および/または、塗布効率、すなわち、部品表面上に実際に積層される塗布済みのコーティング剤の比率、を増進する点で有利である。好ましくは、コーティング剤のジェットがまた実際に部品表面に衝突するときのみ、コーティング剤のジェットはスイッチを入れられる。好ましくは、側縁部を有する部品をコーティングする際、塗布装置は、コーティング剤のジェットのスイッチを切った状態で、縁へ向けて側方向に動かされる。その後、コーティング剤のジェットは、塗布装置が縁の上方に存在するときのみ、スイッチを入れられ、これにより、スイッチの入ったコーティング剤のジェットは実際に部品に衝突する。続いて、塗布装置は、コーティング剤の対応するストリップを塗布するために、コーティング対象の部品表面に沿って、コーティング対象の部品に亘って移動させられる。塗布装置がコーティング対象の部品の側縁の向こう側へ移動させられると、コーティング剤のジェットがもはや部品表面に衝突しなくなることから、コーティング剤のジェットは再びスイッチを切られる。
【0032】
コーティング剤のジェットのスイッチを適切に入れ、および/または、切ることを可能にするため、好ましくは、コーティング対象の部品と塗布装置の空間的位置が検出され、コーティング剤のジェットが部品表面に衝突するか否かを予測できるようになる。好ましくは、部品と塗布装置の検出位置から、コーティング剤のジェットは部品表面に衝突しないと結論できるとき、コーティング剤のジェットはスイッチを切られる。しかし、部品と塗布装置の検出位置から、コーティング剤のジェットは実際に部品表面に衝突すると結論できるときのみ、コーティング剤のジェットはスイッチを入れられ得る。
【0033】
上述した位置検出は、例えば、カメラ、超音波センサ、誘導または容量センサを使用し、またはレーザセンサを使用し、実行できる。しかし、部品と塗布装置が機械またはロボットに配置されているならば、部品と塗布装置の位置は、機械またはロボットの制御システムから読み取ることも可能である。
【0034】
上で触れたように、本発明に係る塗布方法は高い塗布効率を可能とするが、塗布されたコーティング剤の実質的に全部が、顕著なオーバースプレーを起こすことなく、部品上全体に積層されるよう、塗布効率は、例えば、80%、90%、95%よりも高く、または、さらに99%より高くできる。
【0035】
さらに、本発明に係る塗布方法は、0.5m/min、1m/min、または3m/min以上の比較的高い領域コーティング出力を可能にする。塗布装置の塗布ノズルの数が増やされるに応じて、領域コーティング出力はほとんど要望通り増加させられることができる。
【0036】
鮮明な縁の塗装を妨げる厄介なコーティング剤の飛沫を生じさせることから、部品衝突後の部品からのコーティング剤のジェットの跳ね返りを抑えるべきことも特筆に値する。塗布されるコーティング剤の体積流量とそのようなコーティング剤の放出速度は、それゆえに好ましく設定され、それにより、コーティング剤は、部品上への衝突後、部品から跳ね返ることがない。
【0037】
コーティング剤の放出速度はここでは、好ましくは、5m/s、7m/s、または10m/s以上であり、30m/s、20m/s、または10m/s以下である。
【0038】
しかし、塗布装置の放出口と部品表面との間の塗布距離は、好ましくは、4mm、10mm以上、または40mm以上であり、かつ、好ましくは、200mmまたは100mm以下である。
【0039】
塗布装置は、好ましくは、直列または並列運動学を有する多軸ロボットを使用して、移動させられることも特筆に値する。そのようなロボット自体は、従来技術から周知なので、詳細には述べない。
【0040】
さらに、既に上で触れたように、コーティング剤は、例えば、下地塗料、クリアラッカー、効果塗料、雲母塗料、または金属塗料などの塗料であってもよい。この観点において、コーティング剤は、任意に水性塗料または溶媒系塗料とできることもまた特筆に値する。
【0041】
本発明の文脈において、50ms、20ms、10ms、5ms、または1msより短い切替間隔で、コーティング剤のジェットのスイッチを入れたり切ったりできるということも特筆に値する。本願明細書では、切替間隔は、コーティング剤のジェットのスイッチを切ってから、次いで再びそれを入れるまで、またはそのスイッチ入れてから、次いで再び切るまでに、必要な最小の間隔として定義される。
【0042】
本発明が、上述した塗布方法とは別に、それに対応する塗布システムも包含するものであることは、上述の記載から明らかなので、塗布システムについての別個の記述は必要ではないだろう。
【0043】
本発明の他の有利な発展例が、従属項に開示されており、また、以下でも、図面を参照しつつ、本発明の好ましい例示的実施形態の記載とともに、より詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】従来の塗布システムの概略図を示す。
図2】本発明に係る塗布システムの代表的実施形態の概略図を示す。
図3A】コーティング剤の、鮮明に縁取られるストリップと、不鮮明に縁取られるストリップと、の異なる代表例を示す。
図3B】コーティング剤の、鮮明に縁取られるストリップと、不鮮明に縁取られるストリップと、の異なる代表例を示す。
図3C】コーティング剤の、鮮明に縁取られるストリップと、不鮮明に縁取られるストリップと、の異なる代表例を示す。
図4A】コーティング剤の、鮮明に縁取られるストリップと、不鮮明に縁取られるストリップと、の異なる代表例を示す。
図4B】コーティング剤の、鮮明に縁取られるストリップと、不鮮明に縁取られるストリップと、の異なる代表例を示す。
図4C】コーティング剤の、鮮明に縁取られるストリップと、不鮮明に縁取られるストリップと、の異なる代表例を示す。
図5】縁の鮮明さを説明するためのコーティング剤のストリップの代表例を示す。
図6A】部品コーティング中にコーティング剤のジェットのスイッチを入れたり切ったりする場合の概略図を示す。
図6B】部品コーティング中にコーティング剤のジェットのスイッチを入れたり切ったりする場合の概略図を示す。
図6C】部品コーティング中にコーティング剤のジェットのスイッチを入れたり切ったりする場合の概略図を示す。
図6D】部品コーティング中にコーティング剤のジェットのスイッチを入れたり切ったりする場合の概略図を示す。
図7図6Aから図6Dに対応する流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、例えば特許文献1などで周知の、従来の塗布システムを示す。塗布機構1は塗布装置2に必要な媒体、例えば、塗料などの塗布対象のコーティング剤を供給する。
【0046】
塗布装置2は、中に多数の塗布ノズル4が形成されている有孔板3を備える。有孔板3のそれぞれの塗布ノズル4はコーティング剤のジェット5を放出し、その塗布ノズル4からの放出の直後、コーティング剤のジェット5は、最初、噴射方向の分裂距離LZERFALL内では結合しており、その後、液滴へと分裂する。従来の塗布システムでは、特に、液滴への分裂は、振動を結合することにより、起こされる。
【0047】
塗布装置2は、コーティング対象の部品6を基準に塗布距離dに位置合わせされている。位置合わせは、塗布距離dが分裂距離LZERFALLより大きくなるように行われる。このことは、コーティング剤のジェット5は連続した領域で部品6に衝突せず、液滴の連続として衝突することを意味する。
【0048】
図2は、本発明に係る、図1による従来の塗布システムの変形例を示す。図2の本発明に係る塗布システムは、部分的に上記の従来の塗布システムと一致することから、繰り返しの回避のため、上記記述を参照し、対応する記載には同じ参照符号を用いた。
【0049】
本発明に係る塗布システムの特色は、塗布距離dが分裂距離LZERFALLより小さくなるように、塗布装置2が部品6に対し配置されることにある。これは、コーティング剤のジェット5が部品6の表面に対し、噴射方向に連続した領域で衝突することを意味し、よりよい塗装結果をもたらす。
【0050】
さらに、発明の範囲内において液滴分裂は特に抑制すべきであるため、振動の結合によるコーティング剤のジェット5の液滴分裂はここでは特に強制されない。
【0051】
本発明に係る塗布システムは、図3Aから図3Cおよび図4Aから図4Cに示されるような鮮明な縁の模様の塗布を可能にするものであり、それについて以下に説明する。
【0052】
まず、図3Aは、図2による塗布システムで部品6へ塗布することのできる鮮明な縁のストリップを示す。
【0053】
一方、図3Bおよび図3Cは、多少凹凸した縁を有する従来のストリップの例示的実施形態を示す。
【0054】
図4Aから図4Cもまた鮮明な縁取られたストリップではなく、実際のストライプに接する側方のコーティング剤の飛沫を有する不適切なストライプを示す。
【0055】
ストライプ7の縁の鮮明さを説明するため、図5に、1つのストライプ7の概略図を示す。ストライプ7は、所望の縁の形状と比較し、最大誤差aを有し、本発明の範囲内においての、上記誤差は、好ましくは、3mm、1mm、または0.5mmより小さい。このようにして、例えば、高い品質の外観を有する装飾的ストライプは、自動車車体上に生成されることができる。
【0056】
概要的な形状において、図6Aから6Dは、部品9上への塗装ストリップの塗布を示し、ここで部品9は2つの縁10、11により側方に区切られる。
【0057】
コーティング剤のストリップはここでは塗布装置12を使用して塗布され、塗布装置12は上述のようにコーティング剤のジェット13を放出する。
【0058】
塗布装置12は、図6Aに示すように、最初に部品9の方へ動かされ、塗布装置12がまだ、部品9の縁10の側方に隣接して位置する場合には、コーティング剤のジェット13は部品9に衝突しないので、コーティング剤のジェット13は最初まだスイッチを切られている。
【0059】
コーティング剤のジェット13は、図6Bに示すように、部品9の縁10を通過すると、その時点でスイッチが入れられる。
【0060】
続いて、図6Cに示すように、塗布装置12は、コーティング剤のジェット13のスイッチが入った状態で、部品9の表面上を案内される。
【0061】
図6Dに示すように、部品9の反対の縁11を通過すると、部品9の縁11を越える塗布装置12の続く更なる移動により、コーティング剤のジェット13はもはや部品9の表面に衝突しなくなることから、コーティング剤のジェット13はその時点で再びスイッチを切られる。
【0062】
コーティング剤のジェット13のスイッチを入れたり切ったりすることで、非常に高い塗布効率水準がほとんどオーバースプレーなしに達成される。
【0063】
コーティング剤のジェット13のスイッチを正確に入れたり切ったりすることは、塗布装置12と部品9との位置が、カメラセンサ14の使用により検出されることで可能となる。
【0064】
上述したようなカメラセンサの代わりに、超音波センサ、誘導または容量センサ、またはレーザセンサであって、塗布装置と部品との環境においてしっかり配置されるだけでなく、塗布装置とともに移動可能なものも、また使用されることができる。
【0065】
図7は、図6Aから6Dの異なるステージを対応する流れ図で示した、本発明に係る塗布システムの処理方法を示す。
【0066】
本発明は、上記の好ましい代表的実施形態に限定されない。発明の概念を利用し、それゆえ保護の範囲内にある、多数の変形と派生が可能である。特に、発明はまた、従属項の内容および特徴のための保護を、それらが言及する要求事項により、別に請求する。
【0067】
[付記]
[付記1]
コーティング剤、特に、塗料、封止剤、離型剤、機能層、または接着剤を、部品(6、9)、特に自動車車体部品に、塗布するための塗布方法であって、
a)塗布装置(2、12)から前記コーティング剤のジェット(5、13)を放出するステップであって、
a1)前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記コーティング剤の前記ジェットが分裂距離(LZERFALL)に達するまで、最初、噴射方向に連続した領域を有し、
a2)前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記分裂距離(LZERFALL)以降、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記噴射方向に互いに離散した複数の液滴へと分裂する、
ステップと、
b)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記部品(6、9)に衝突して前記部品(6、9)をコーティングするよう、前記塗布装置(2、12)の位置を、前記部品(6、9)を基準に、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、所定の塗布距離(d)に合わせるステップと、
を備え
c)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記連続した領域で前記部品(6、9)に衝突するよう、前記塗布距離(d)は前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の前記分裂距離(LZERFALL)より小さい、
ことを特徴とする、塗布方法。
【0068】
[付記2]
a)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記部品(6、9)上に、模様、特にストライプ、を塗布し、かつ
b)前記模様は、所定の縁形状から、3mm、1mm、0.5mm以下、もしくは0.2mm以下、または0.1mm以下の最大誤差(a)を有し、前記模様の外部への前記コーティング剤の飛沫を伴わない、鮮明な縁の模様である、付記1に記載の塗布方法。
【0069】
[付記3]
a)前記模様を作るため、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、一回毎に前記コーティング剤のストリップが塗布されるよう、前記部品(6、9)上を複数回移動させられ、かつ、
b)塗布後、隣接する複数の前記コーティング剤の前記ストリップが互いに結合して単一のストライプを形成する、または、
c)塗布後、隣接する複数の前記コーティング剤の前記ストリップが互いに結合せず、2以上の別々のストライプを形成する、付記2に記載の塗布方法。
【0070】
[付記4]
a)前記模様は、前記コーティング剤のストライプを含み、および/または、
b)前記ストライプは、100μm、200μm、400μm、1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、5cm、10cm以上、または1m以上の幅を有し、および/または、
c)前記ストライプは、1m、10cm、5cm、2cm、1cm、5mm、2mm、1mm、400μm以下、または200μm以下の幅を有する、付記1から3のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0071】
[付記5]
a)実質的に互いに平行な複数のコーティング剤のジェット(5、13)が、前記塗布装置(2、12)から放出され、および/または、
b)直接に隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の間の距離は、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、前記隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が結合しないよう、十分に大きく、および/または、
c)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の放出のため、所定のノズル内径と所定のノズル間隔とを有する複数の塗布ノズル(4)が設けられており、前記ノズル間隔は、前記ノズル内径の、3倍、4倍、または6倍に少なくとも等しい、付記1から4のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0072】
[付記6]
a)前記塗布装置(2、12)は複数の塗布ノズル(4)を含み、少なくともその中のいくつかは互いに独立に制御可能であり、および/または、
b)互いに独立に制御可能な前記塗布ノズル(4)の場合、処理変数の少なくとも1つが独立に制御可能であり、
前記処理変数は、
b1)前記塗布ノズル(4)からの前記コーティング剤の放出速度、
b2)前記コーティング剤の種類、
b3)前記塗布ノズル(4)からの前記コーティング剤の体積流量率、
である、付記1から5のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0073】
[付記7]
前記コーティング剤の塗布中、前記塗布装置(2、12)は前記部品(6、9)を基準に移動させられる、付記1から6のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0074】
[付記8]
a)前記塗布装置(2、12)は固定されており、かつ、前記部品(6、9)は移動させられ、および/または、
b)前記コーティング剤の塗布中、前記部品(6、9)は、10cm/s、50cm/s、1m/s以上、または1.5m/s以上の速さで移動させられ、および/または、
c)前記コーティング剤の塗布中、前記部品(6、9)は、10m/s、5m/s以下、または1m/s以下の速さで移動させられる、付記7に記載の方法。
【0075】
[付記9]
a)前記部品(6、9)は固定されており、かつ、前記塗布装置(2、12)は移動させられ、および/または、
b)前記コーティング剤の塗布中、前記塗布装置(2、12)は、10cm/s、20cm/s、30cm/s、50cm/s、1m/s以上、または2m/s以上の速さで移動させられ、および/または、
c)前記コーティング剤の塗布中、前記塗布装置(2、12)は、250cm/s、700mm/s、500mm/s以下、または100mm/s以下の速さで移動させられる、付記7に記載の塗布方法。
【0076】
[付記10]
a)前記部品の表面に前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が衝突する位置が、ストリップに沿って移動するよう、前記塗布装置(2、12)は前記部品(6、9)を基準に前記部品の前記表面に亘って移動させられ、かつ、
b)前記部品の前記表面上を前記ストリップに沿って移動している間、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、スイッチを切られた後、再びスイッチを入れられ、および/または、
c)前記部品(6、9)上で5mm、2mm、または1mmより微細な空間分解能となるよう、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記部品の前記表面に亘ってゆっくり移動させられ、かつ、迅速にスイッチを切ったり入れたりされる、付記1から9のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0077】
[付記11]
a)前記塗布装置(2、12)を、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを切った状態で、コーティング対象の前記部品(6、9)の縁(10)に向かって、特に、コーティング対象の前記部品の前記表面に対し側方向に、移動させるステップ、
b)前記塗布装置(2、12)が前記部品(6、9)の上方に存在するとき、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを入れるステップ、
c)前記塗布装置(2、12)を、コーティング対象の前記部品の前記表面に沿って、コーティング対象の前記部品(6、9)に亘って移動させるステップ、
d)前記塗布装置(2、12)がコーティング対象の前記部品の前記表面の上方にもはや存在しなくなったとき、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを切るステップ、
をさらに備える、付記1から10のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0078】
[付記12]
a)コーティング対象の前記部品(6、9)の空間上の位置を検出するステップ、および/または、
b)前記塗布装置(2、12)の空間上の位置を検出するステップ、および/または、
c)前記部品(6、9)および/または前記塗布装置(2、12)の検出された前記位置に応じて、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)のスイッチを入れるステップ、および/または、
c)前記部品(6、9)および/または前記塗布装置(2、12)の検出された前記位置に応じて、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)をスイッチを切るステップ、
をさらに備える、付記1から11のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0079】
[付記13]
前記位置は、
a)カメラ(14)、
b)超音波センサ、
c)誘導センサ、
d)容量センサ、
e)レーザセンサ、および/または、
f)前記位置が読み取られるロボット制御システム、
を使用して検出される、付記12に記載の塗布方法。
【0080】
[付記14]
a)塗布された前記コーティング剤の実質的に全部がオーバースプレーなしで前記部品(6、9)上全体に積層されるよう、前記塗布方法は80%、90%、95%以上、または99%以上の高い塗布効率を有し、および/または、
b)前記塗布方法は、0.5m/min、1m/min以上、または3m/min以上の領域コーティング出力を有し、および/または、
c)塗布された前記コーティング剤の体積流量率、および、ひいては、前記コーティング剤の放出速度は、前記コーティング剤が前記部品(6、9)への衝突の後に前記部品(6、9)から跳ね返らないよう、設定されており、および/または、
d)前記塗布装置(2、12)からの前記コーティング剤の前記放出速度は、5m/s、7m/s以上、または10m/s以上であり、および/または、
e)前記塗布装置(2;12)からの前記コーティング剤の前記放出速度は、30m/s、20m/s以下、または10m/s以下であり、および/または、
f)前記塗布距離(d)は、4mm、10mm以上、または40mm以上であり、および/または、
g)前記塗布距離(d)は、200mm以下または100mm以下であり、および/または、
h)前記塗布装置(2、12)は、機械、特に、多軸ロボット、を使用して移動させられ、および/または、
i)前記コーティング剤は、塗料、特に、下地塗料、クリアラッカー、効果塗料、雲母塗料、または金属塗料であり、および/または、
j)前記コーティング剤は、水性塗料または溶媒系塗料であり、および/または、
k)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、50ms、20ms、10ms、5ms、または1msより短いスイッチ切替間隔で、スイッチを入れたり切ったりされる、付記1から13のいずれか1つに記載の塗布方法。
【0081】
[付記15]
コーティング剤、特に、塗料、封止剤、離型剤、機能層、または接着剤を、部品(6、9)、特に自動車車体部品に、塗布するための塗布システムであって、
a)コーティング剤のジェット(5、13)を放出するための塗布装置(2、12)であって、
a1)前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記コーティング剤の前記ジェットが分裂距離(LZERFALL)に達するまで、最初、噴射方向に連続した領域を有し、
a2)前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記分裂距離(LZERFALL)以降、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記噴射方向に互いに離散した複数の液滴へと分裂する、
塗布装置(2、12)と、
b)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記部品(6、9)に衝突して前記部品(6、9)をコーティングするよう、前記塗布装置(2、12)の位置を、前記部品(6、9)を基準に、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、所定の塗布距離(d)に合わせるための位置合わせ装置と、
を備え、
c)前記位置合わせ装置は、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記連続した領域で前記部品(6、9)に衝突するようにするため、前記塗布距離(d)が前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の前記分裂距離(LZERFALL)よりも小さくなるよう、前記部品(6、9)を基準にして前記塗布装置(2、12)の位置を合わせる、
ことを特徴とする、塗布システム。
【0082】
[付記16]
a)前記塗布装置(2、12)は、複数の塗布ノズルが配置されているノズル板を有し、および/または、
b)前記塗布装置(2、12)は、それぞれが1つのコーティング剤のジェットを放出する複数の塗布ノズルを有し、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は前記部品(6、9)上にストライプを作り、および/または、
c)前記ストライプは、100μm、200μm、400μm、1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、5cm、10cm以上、または1m以上の幅を有し、および/または、
d)前記ストライプは、1m、10cm、5cm、2cm、1cm、5mm、2mm、1mm、400μm以下、または200μm以下の幅を有する、付記15に記載の塗布システム。
【0083】
[付記17]
a)前記塗布装置(2、12)は、実質的に互いに平行な複数のコーティング剤のジェット(5、13)を放出し、および/または、
b)直接に隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)間の距離は、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)の間で、前記隣接する前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が結合しないよう、十分に大きく、および/または、
c)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の放出のため、前記塗布装置(2、12)は、所定のノズル内径と所定のノズル間隔とを有する複数の塗布ノズルを有し、前記ノズル間隔は、前記ノズル内径の、3倍、4倍、または6倍に少なくとも等しい、付記1から16のいずれか1つに記載の塗布装置(2、12)。
【符号の説明】
【0084】
1 塗布機構
2 塗布装置
3 有孔板
4 塗布ノズル
5 コーティング剤のジェット
6 部品
7 ストライプ
8 所定の縁形状
9 部品
10 縁
11 縁
12 塗布装置
13 コーティング剤のジェット
14 カメラセンサ
15 非コーティング基板
a 所定の縁形状からの誤差
b 塗布距離
ZERFALL 分裂距離
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7