(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906049
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】アルミニウム置換モレキュラーシーブCIT−13
(51)【国際特許分類】
C01B 39/04 20060101AFI20210708BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
C01B39/04
B01J29/70 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-519288(P2019-519288)
(86)(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公表番号】特表2019-534230(P2019-534230A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】US2017054232
(87)【国際公開番号】WO2018093469
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】62/423,232
(32)【優先日】2016年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー イアン
【審査官】
佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−512800(JP,A)
【文献】
特表2010−534185(JP,A)
【文献】
特開2016−128385(JP,A)
【文献】
特開昭60−122717(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/196533(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/152072(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104370296(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 − 39/54
B01J 20/18
B01J 21/00 − 38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIT−13の構造を有するアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブを合成する方法であって、
(a)以下を含む反応混合物を提供すること:
(1)アルミノケイ酸塩FAU骨格型ゼオライト;
(2)ゲルマニウムの源;
(3)1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上を含む構造指向剤(Q);
(4)フッ化物イオンの源;
(5)水;及び
(b)当該反応混合物を、アルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に、かけること:
を含む、前記の方法。
【請求項2】
反応混合物が、モル比に関して以下の組成を有する、請求項1に記載の方法:
【表1】
【請求項3】
反応混合物が、モル比に関して以下の組成を有する、請求項1に記載の方法:
【表2】
【請求項4】
反応混合物が、CIT−13の構造を有するモレキュラーシーブ材料の種をも含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物が、0.01重量ppm〜10,000重量ppmの種を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
結晶化条件が、125℃〜200℃の温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
CIT−13の骨格構造を有するアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブであって、その合成されたままの形態で、その細孔中に、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上を含む、前記のモレキュラーシーブ。
【請求項8】
モル比に関して以下の組成を有する、請求項
7に記載のアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブ:
【表3】
ここで、Qは、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上から選択される。
【請求項9】
モル比に関して以下の組成を有する、請求項
7に記載の結晶性モレキュラーシーブ:
【表4】
ここで、Qは、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上から選択される。
【請求項10】
有機化合物を含むフィードストックを転化生成物に転化する方法であって、当該方法が、有機化合物転化条件でフィードストックを触媒と接触させることを含み、触媒が、請求項1に記載の方法によって合成されるアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブの結晶性モレキュラーシーブの活性な形態を含む、前記の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月17日に提出された米国仮出願番号第62/423,232の利益を享受し、その開示の全体を参照によりここに組込む。
【0002】
技術分野
本開示は、モレキュラーシーブ骨格構造中に取り込まれたアルミニウムを持つモレキュラーシーブCIT−13、その合成、及び、触媒プロセス及び/又は収着プロセスでのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
モレキュラーシーブ材料は、天然のものも合成のものも共に、吸着剤として有用であり各種の炭化水素転化反応の触媒特性を有するとして、過去に例証されてきた。ゼオライト、シリコアルミノリン酸塩、アルミノリン酸塩、及びメソポーラス材料などのいくつかのモレキュラーシーブは、X線回折で決定して明確な結晶性構造を有する規則正しい多孔性結晶性材料である。結晶性モレキュラーシーブ材料の内部には、溝又は細孔によって相互接続されているかもしれない空隙がある。これらの空隙及び細孔は、特定のモレキュラーシーブ材料の内部ではサイズが均一である。これらの細孔の寸法は、いくつかの寸法の吸着分子を受け入れるなどし、一方で、より大きい寸法のものを拒絶するので、これらの材料は、「モレキュラーシーブ」として公知になってきており、種々の工業プロセスで利用されている。
【0004】
B.W. Boal et al. (Chem. Mater. 2016, 28, 2158-2164) and J.H. Kang et al. (Chem. Mater. 2016, 28, 6250-6259)は、ゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブCIT−13、及び、モノ第四級ベンジル−イミダゾリウム有機構造指向剤のファミリーを使用するその合成、を開示する。CIT−13は、交さしている14−及び10−員環細孔を持つ二次元の細孔システムを有する。
【0005】
触媒用途では、アルミニウム原子などの触媒活性部位の組込みは、モレキュラーシーブに酸性特性を与えるのに重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
それゆえ、モレキュラーシーブ骨格構造中に取り込まれたアルミニウムを持つモレキュラーシーブCIT−13が、アルミノケイ酸塩FAU骨格型ゼオライトから直接合成できるということが、ここに見出された。
【0007】
概要
一側面では、CIT−13の骨格構造を有するアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブが提供される。
【0008】
他の側面では、以下の方法が提供される:
CIT−13の構造を有するアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブを合成する方法であって、
(a)以下を含む反応混合物を提供すること:
(1)アルミノケイ酸塩FAU骨格型ゼオライト;
(2)ゲルマニウムの源;
(3)1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上を含む構造指向剤;
(4)フッ化物イオンの源;
(5)水;及び
(b)当該反応混合物を、アルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に、かけること:
を含む、前記の方法。
【0009】
更に他の側面では、以下のモレキュラーシーブが提供される:
CIT−13の構造を有するアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブであって、その合成されたままの形態で、その細孔中に、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上を含む、前記のモレキュラーシーブ。
【0010】
更なる側面では、有機化合物を含むフィードストックを転化生成物に転化する方法であって、当該方法が、有機化合物転化条件でフィードストックを、ここに記載のモレキュラーシーブの活性な形態を含む触媒と接触させることを含む前記の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な記述
【
図1】
図1は、実施例1で調製された合成されたままのモレキュラーシーブの粉末X線回折(XRD)パターンである。
【0012】
【
図2】
図2は、実施例1で調製された合成されたままのモレキュラーシーブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な記述
序文
用語「アルミノゲルマノケイ酸塩」とは、モレキュラーシーブの骨格構造中に取り込まれたアルミニウム、ゲルマニウム及びケイ素酸化物を含む結晶性モレキュラーシーブのことを言う。
【0014】
用語「骨格型」は、“Atlas of Zeolite Framework Types,” Sixth Revised Edition, Elsevier, 2007に記載された意味で使用される。
【0015】
用語「合成されたままの」とは、構造指向剤の除去前の結晶化後のその形態のモレキュラーシーブのことを言うために、ここで用いる。
【0016】
用語「無水」とは、物理的吸着水及び化学的吸着水が両方とも実質的に全くないモレキュラーシーブのことを言うために、ここで用いる。
【0017】
ここで使用される元素周期表の族のナンバリングスキームは、Chem. Eng. News 1985, 63(5), 26-27に開示されるとおりである。
【0018】
反応混合物
一般に、アルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブCIT−13(「Al−CIT−13」)は、以下の方法によって合成される:
(a)以下を含む反応混合物を提供すること:
(1)アルミノケイ酸塩FAU骨格型ゼオライト;
(2)ゲルマニウムの源;
(3)1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上を含む構造指向剤(Q);
(4)フッ化物イオンの源;
(5)水;及び
(b)当該反応混合物を、当該モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に、かけること:
を含む、方法。
【0019】
モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比に関して、下記の表1に確認される:
【表1】
ここで、Qは、上述の通りである。
【0020】
適切なアルミノケイ酸塩FAU骨格型ゼオライトは、例えば、Zeolyst International (Conshohocken, PA) and Tosoh Corporation (Tokyo, Japan)から入手可能である。
【0021】
アルミノケイ酸塩FAU骨格型ゼオライトは、5〜500(例えば、5〜100、10〜500、10〜100、25〜500、25〜100、50〜500、又は50〜100)の範囲のSiO
2/Al
2O
3モル比を有することができる。
【0022】
ゲルマニウムの適切な源は、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムアルコキシド(例えば、ゲルマニウムテトラエトキシド)、及びハロゲン化ゲルマニウム(例えば、GeCl
4)を含む。
【0023】
構造指向剤(Q)は、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上から選択できる。これらのカチオンは、それぞれ以下の構造(1)〜(4)で表される:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0024】
Qの適切な源は、第四級アンモニウム化合物の水酸化物、塩化物、臭化物、及び/又は、他の塩である。
【0025】
フッ化物イオンの適切な源は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、及び重フッ化アンモニウムを含む。
【0026】
反応混合物は、望ましくは反応混合物の0.01〜10,000重量ppm(例えば、100〜5000重量ppm)の量で、CIT−13などのモレキュラーシーブ材料の種(シード)を含有することができる。
【0027】
ここに記載の各形態では、反応混合物は、1つよりも多い源によって、供給できる。また、2つ以上の反応成分を、1つの源によって提供できる。
【0028】
反応混合物は、バッチ式又は連続式のいずれかで調製できる。ここのモレキュラーシーブの結晶サイズ、モルフォロジー及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件によって変化し得る。
【0029】
結晶化及び後合成処理
上記反応混合物からのモレキュラーシーブの結晶化は、使用される温度で結晶化が十分に起こる時間、例えば5日〜15日間、125℃〜200℃の温度で、例えばポリプロピレンビン又はテフロン(登録商標)ラインの又はステンレス鋼のオートクレーブなどの適切な反応容器において、静止、回転又は撹拌条件のいずれかの下に、実施することができる。結晶化は、通常、自生圧力下で閉鎖系中で実施される。
【0030】
当該モレキュラーシーブ結晶が一旦形成されると、固体生成物が、遠心分離又は濾過などの標準の機械的分離技術によって反応混合物から回収される。当該回収された結晶は水洗され、その後に乾燥されて、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶が得られる。乾燥工程は、200℃未満の温度で、典型的に実施される。
【0031】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性生成物は、その細孔構造の内部に、合成で使用された構造指向剤の少なくとも一部を含有する。
【0032】
その合成されたままの及び無水の形態で、アルミノゲルマノケイ酸塩CIT−13は、表2に記載されるモル関係を含む化学組成を有する:
【表2】
ここで、Qは、上述の通りである。
【0033】
結晶化の間のそれらの存在の結果として合成されたままの材料と関連するQ及びF成分は、従来の後結晶化方法によって容易に除去される。
【0034】
合成されたままのモレキュラーシーブは、その合成で使用される構造指向剤の一部又は全てを除去するための処理にかけることができる。これは、少なくとも1分間で一般には20時間以下で少なくとも約370℃の温度で合成されたままの材料を加熱する熱処理によって、都合よく達成される。熱処理は、925℃までの温度で実施できる。熱処理では減圧を用いることができる一方で、利便性の理由で大気圧が所望される。追加で又は代替で、構造指向剤は、オゾンでの処理によって除去できる(例えば、A.N. Parikh et al., Micropor. Mesopor. Mater. 2004, 76, 17-22を参照)。特にその金属、水素及びアンモニウムの形態の、有機物を含有しない生成物は、いくつかの有機(例えば、炭化水素)転化反応の触媒作用において特に有用である。本開示では、有機物を含有しない水素の形態のモレキュラーシーブは、金属機能が存在する又は存在しないモレキュラーシーブの「活性な形態」と言われる。
【0035】
Al−CIT−13は、その焼成された形態で、以下のモル関係を含む化学組成を有する:
Al
2O
3:(n)(SiO
2+GeO
2)
ここで、nは、35〜500(例えば、35〜250、35〜150、50〜500、50〜250、又は、50〜150)の範囲である。
【0036】
合成されたままのモレキュラーシーブ中のいかなるカチオンも、業界で公知の技術に従って他のカチオンに交換することができる。好ましい置き換えカチオンは、いくつかの有機化合物転化反応の触媒活性を調整するものである。これらは、水素、希土類金属、及び、元素の周期律表の2族〜15族の金属を含む。
【0037】
収着及び触媒作用
Al−CIT−13は、多くの現在の商業的な/工業的な重要性を含む様々な種類の有機化合物プロセスに触媒作用を及ぼすための触媒として又は吸着剤として、使用することができる。他の結晶性触媒を含む1つ以上の他の触媒活性な物質と組み合わせて又は単独でAl−CIT−13によって有効に触媒作用を及ぼされる有機化合物転化プロセスの例は、酸活性を持つ触媒を要求するものを含むことができる。Al−CIT−13によって触媒作用を及ぼされることができる有機転化プロセスの例は、アルキル化、(水素化)分解、不均化、異性化、及びオリゴマー化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0038】
多くの触媒の場合のように、有機転化プロセスで用いられる温度及び他の条件に抵抗力のある他の材料をAl−CIT−13に組込むことが所望され得る。そのような材料は、アルミナなどの金属酸化物及び/又はシリカ、クレーなどの無機材料と同様に、合成又は天然ゼオライト及び活性及び不活性の材料を含むことができる。前者は、金属酸化物及びシリカの混合物を含む、ゲル又はゲル状の沈殿の形態で、又は天然のいずれかであることができる。Al−CIT−13と一緒に材料を使用すること、すなわち、活性なモレキュラーシーブの合成の間に存在する及び/又はそれらとの組み合わせは、いくつかの有機転化プロセスにおいて触媒の転化及び/又は選択性を変える傾向にあることができる。不活性な材料は、所定のプロセスでの転化の量を制御するための希釈剤として好適に働くことができ、それにより、反応の速度を制御するための他の(より高価な)手段を用いることなく経済的に及び秩序あるやり方で、生成物を得ることができる。これらの材料は、(例えばベントナイト及びカオリンなどの)天然クレーの中に組込まれることができて、商業的な運転条件下で触媒の破砕強さを改善する。これらの材料(すなわち、クレー、酸化物など)は、触媒用のバインダーとして機能することができる。良好な破砕強さを有する触媒を提供することが所望され得る。なぜなら、商業的な使用では、触媒が粉末のような材料に破壊すること(摩耗)を妨げることが所望され得るからである。これらのクレー及び/又は酸化物バインダーは、触媒の破砕強さを改善するためだけの目的で普通は用いられてきた。
【0039】
Al−CIT−13と複合化されることができる天然クレーは、モンモリロナイト及びカオリンファミリーを含むことができ、当該ファミリーは、サブベントナイト、及び、Dixie, McNamee, Georgia, and Floridaクレー又は他のものとして一般に公知のカオリンを含み、そこでは、主要な鉱物構成要素は、ハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、又はアナウキサイトである。そのようなクレーは、焼成、酸処理又は化学変性に初期にかけたもの又は元々採鉱されたような生の状態で、使用されることができる。Al−CIT−13と複合化するのに有用なバインダーは、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、及びそれらの混合物などの無機酸化物を、追加で又は代替で含むことができる。
【0040】
前述の材料に加えて又は代替で、Al−CIT−13は、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア及びシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの1つ以上の三元組成物、及び/又は、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニアなどの多孔性マトリックス材料と複合化されることができる。
【0041】
Al−CIT−13及び無機酸化物マトリックスの相対比率は、複合体の1〜90重量%の範囲(例えば、2〜80重量%の範囲)のAl−CIT−13含有量で、広く変化できる。
【0042】
例
以下の例証例は、非限定的な意図である。
【0043】
実施例1
テフロン(登録商標)ライナーに、5mL溶液中の2.5mmolの1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウム水酸化物、0.24gのCBV−780 Y−ゼオライト(Zeolyst International、SiO
2/Al
2O
3モル比=80)、及び0.10gのGeO
2が投入された。混合物は、その後、ヒュームフード中にセットされ、そして、H
2O/(SiO
2+GeO
2)モル比10に対応する合計反応物質固体質量=2.0gまで水を蒸発させた。その後、(いかなるアルミニウムにも欠けている)ゲルマノケイ酸塩CIT−13の種が、その後に2.5mmolの濃縮HFが、混合物に添加された。ライナーは、ふたをかぶせ、そして、パースチールオートクレーブ反応器の内部に置かれた。オートクレーブは、オーブン中に置かれ、そして、サンプリングによって生成物が見えるようになるまで、8〜10日間、回転しながら(43rpm)170℃で加熱された。固体生成物が、冷却された反応器から濾過によって回収され、脱イオン水で洗浄され、そして、95℃で乾燥された。
【0044】
得られた合成されたままの生成物が、粉末XRD及びSEMによって分析された。
図1中の粉末X線回折パターンは、CIT−13である生成物と一致する。合成されたままの生成物のSEM画像は、CIT−13と一致する板状結晶モルフォロジーを有する結晶の一様なフィールドを示す。
【0045】
結晶中にアルミニウム及びゲルマニウムが組込まれた2つの別個の生成物サンプルが、エネルギー分散型X線(EDX)分析によって試験された。結果を、下記の表3に示す。
【表3】
【0046】
合成されたままの生成物は、1℃/分の速度で595℃に加熱された2%酸素/98%窒素の流れの下でマッフル炉の内部で焼成され、そして、595℃で5時間保持され、そして、周囲温度に冷却された。
【0047】
焼成されたモレキュラーシーブは、BET法を経て吸着物質としてN
2を使用するミクロ細孔容積分析にかけた。モレキュラーシーブは、0.145cm
3/gのミクロ細孔容積を示した。
【0048】
焼成されたモレキュラーシーブのブレンステッド酸性度は、T.J. Gricus Kofke et al. (J. Catal. 1988, 114, 34-45), T.J. Gricus Kofke et al. (J. Catal. 1989, 115, 265-272), and J.G. Tittensor et al. (J. Catal. 1992, 138, 714-720)による刊行された記述から適合されたイソプロピルアミン−温度−プログラム式脱着(IPam TPD)によって、決定された。サンプルは、乾燥H
2流の中で1時間400℃〜500℃で前処理された。脱水サンプルは、その後、乾燥ヘリウム流の中で120℃に冷却され、そして、吸着のためにイソプロピルアミンで飽和したヘリウム流の中で30分間120℃に保持された。イソプロピルアミン飽和サンプルは、その後、乾燥ヘリウム流の中で10℃/分の速度で500℃まで加熱された。ブレンステッド酸性度は、質量分光測定による流出NH
3及びプロペン及び熱重量分析(TGA)による減量対温度に基づき計算された。サンプルは、180μmol/gのブレンステッド酸性度を有した。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
CIT−13の構造を有するアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブを合成する方法であって、
(a)以下を含む反応混合物を提供すること:
(1)アルミノケイ酸塩FAU骨格型ゼオライト;
(2)ゲルマニウムの源;
(3)1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上を含む構造指向剤(Q);
(4)フッ化物イオンの源;
(5)水;及び
(b)当該反応混合物を、アルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に、かけること:
を含む、前記の方法。
[2]
反応混合物が、モル比に関して以下の組成を有する、[1]に記載の方法:
【表1】
[3]
反応混合物が、モル比に関して以下の組成を有する、[1]に記載の方法:
【表2】
[4]
反応混合物が、CIT−13の構造を有するモレキュラーシーブ材料の種をも含有する、[1]に記載の方法。
[5]
反応混合物が、0.01重量ppm〜10,000重量ppmの種を含む、[4]に記載の方法。
[6]
結晶化条件が、125℃〜200℃の温度を含む、[1]に記載の方法。
[7]
[1]に記載の方法によって合成されるアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブ。
[8]
CIT−13の骨格構造を有するアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブであって、その合成されたままの形態で、その細孔中に、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上を含む、前記のモレキュラーシーブ。
[9]
モル比に関して以下の組成を有する、[8]に記載のアルミノゲルマノケイ酸塩モレキュラーシーブ:
【表3】
ここで、Qは、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上から選択される。
[10]
モル比に関して以下の組成を有する、[8]に記載の結晶性モレキュラーシーブ:
【表4】
ここで、Qは、1−メチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(3−メチルベンジル)イミダゾリウムカチオン、及び1,2−ジメチル−3−(3,5−ジメチルベンジル)イミダゾリウムカチオンの1つ以上から選択される。
[11]
有機化合物を含むフィードストックを転化生成物に転化する方法であって、当該方法が、有機化合物転化条件でフィードストックを触媒と接触させることを含み、触媒が、[7]の結晶性モレキュラーシーブの活性な形態を含む、前記の方法。