特許第6906054号(P6906054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906054樹脂安定性及び耐熱性が向上し、透明性を有するポリイミド前駆体樹脂組成物、これを用いたポリイミドフィルムの製造方法、及びこれによって製造されたポリイミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906054
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】樹脂安定性及び耐熱性が向上し、透明性を有するポリイミド前駆体樹脂組成物、これを用いたポリイミドフィルムの製造方法、及びこれによって製造されたポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20210708BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20210708BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08G73/10
   C08J5/18CFG
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-532897(P2019-532897)
(86)(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公表番号】特表2019-528368(P2019-528368A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】KR2016010435
(87)【国際公開番号】WO2018038309
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0107257
(32)【優先日】2016年8月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519065318
【氏名又は名称】デリム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】カン ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム ジン モ
(72)【発明者】
【氏名】アン ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】オウ キュン オク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ウン ギ
【審査官】 北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/147958(WO,A1)
【文献】 特開2016−098260(JP,A)
【文献】 特開2015−063658(JP,A)
【文献】 特表2010−538103(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0255221(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0021591(KR,A)
【文献】 国際公開第2015/122032(WO,A1)
【文献】 特開2016−027085(JP,A)
【文献】 特開2008−133410(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104151823(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08G
C08K
C08J
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン成分(A)、酸二無水物化合物(B)及び有機溶媒(C)を含む透明ポリイミド前駆体樹脂組成物であって、
前記芳香族ジアミン成分(A)は、フッ素化芳香族ジアミン単量体として2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)を含み、
前記酸二無水物化合物(B)は、フッ素化芳香族酸二無水物として4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、及び非フッ素化芳香族酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)又は3,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含む混合物であり、且つ
前記有機溶媒(C)は、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含む混合物であるか、或いはガンマ−ブチロラクトン(GBL)と3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)を含む混合物であり、
ここで、
前記芳香族ジアミン成分(A)中のTFMBの量は50〜100モル%であり、
前記酸二無水物化合物(B)中の前記フッ素化芳香族酸二無水物は、40〜70モル%の量であり且つ前記酸二無水物化合物(B)中の前記非フッ素化芳香族酸二無水物は、30〜60モル%の量であり、
前記有機溶媒(C)は、30〜70モル%のガンマ−ブチロラクトン(GBL)と70〜30モル%の3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)を含むか、或いは70モル%のガンマ−ブチロラクトン(GBL)と30モル%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含む、透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項2】
前記芳香族ジアミン成分(A)が、
(A−1)全ジアミン化合物に対して100モル%の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)を含むか、又は
(A−2)全ジアミン化合物に対して50〜95モル%の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)と、全ジアミン化合物に対して5〜50モル%のN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)とを含み、
前記(A−2)が、残量として非フッ素化芳香族ジアミンをさらに含んでいてもよい、
請求項1に記載の透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、トリメチルアミン(Trimethylamine)、キシレン(Xylene)、ピリジン(Pyridine)及びキノリン(Quinoline)からなる群から選択された1種以上の反応触媒(D)をさらに含む、請求項1に記載の透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物を用いて製造されたポリアミック酸溶液を熱処理してフィルムを製造することを含む、透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミック酸溶液は、固形分含量が10〜40wt%となるように有機溶媒を含み、且つ、前記芳香族ジアミン成分と前記酸二無水物化合物とを前記酸二無水物化合物100〜105モルに対して前記芳香族ジアミン成分95〜100モルのモル比で混合することによって調製される、請求項に記載の透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ポリアミック酸溶液は1000〜7000cPの粘度を有する、請求項に記載の透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物から形成されるポリイミド樹脂フィルムであって、前記ポリイミド樹脂フィルムが、10〜15μmのフィルムの厚さを基準として、300℃以上のガラス転移温度を有し、100〜300℃範囲で25ppm/℃以下の熱膨張係数を有し、550nmの波長で85%以上の透過率を有し、且つ550nm波長で7以下の黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)を有する、前記ポリイミド樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた機械的物性、高耐熱性及び低熱膨張係数を有しながらも溶液キャスティング時に白濁現象が発生しない、透明性を有するポリイミド前駆体樹脂組成物及びこれを用いたポリイミドフィルムの製造方法、及びこれによって製造されたポリイミドフィルムに関するもので、フレキシブルディスプレイ基板素材、半導体素材に有用に活用できる。
【背景技術】
【0002】
次世代ディスプレイ装置として脚光を浴びているフレキシブルディスプレイの基板素材としてフレキシブルな高分子材料が注目されている。
【0003】
フレキシブルデバイスは一般的に有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを使い、高い工程温度(300〜500℃)のTFT工程が用いられている。このような高い工程温度に耐える高分子材料は極めて制限的であり、そのうちでも耐熱性に優れた高分子であるポリイミド(PI)樹脂が主に使われている。
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、ガラス基板に樹脂を塗布し、熱硬化してフィルム化し、多くの段階の工程を経た後、ガラス基板から取り離す方法でディスプレイを製造する。このような製作過程において、ガラス基板に樹脂を塗布したとき、常温での樹脂安全性が重要である。樹脂安全性が確保されなければ、樹脂の固まり、白濁現象などによって硬化後に均一なフィルムが製膜できなく、結局製品欠陷が発生し得る。また、後工程中にTFT蒸着工程の高い温度による熱衝撃(thermal shock)によっても製品欠陷が発生し得る。したがって、常温での樹脂安全性、高耐熱性及び低熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion;CTE)を有するポリイミド樹脂(PI)が要求される。
【0005】
大韓民国特許公開第2015−108812号は低熱膨脹率と高熱分解温度の熱的特性に優れて表示素子の基材層又は保護層に適用可能なポリアミン酸溶液とこれを用いたフィルムを開示しているが、これは樹脂の安全性を確保することができなくて、樹脂の固まり、白濁現象などのため、硬化後に均一なフィルムが製膜できなく、結局製品欠陷が発生し得る。
【0006】
また、大韓民国特許公開第2013−35691号は共重合ポリアミド−イミドフィルムの製造のための組成物及び製造方法を開示しているが、これは副産物が発生し、除去工程を必ず経なければならないため、工程の経済性の部分に限界がある。
【0007】
それで、樹脂の安全性はもちろんのこと、高耐熱性、低熱膨張係数及び優れた機械的強度を有するポリイミド組成物及び製造工程が比較的簡単な製造方法の提起が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2015−108812号公報
【特許文献2】大韓民国特許公開第2013−35691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明者らは、前記問題を解決するために、耐熱性が向上し、最適の機械的特性を有するポリイミドフィルムの製造において、より効果的な芳香族ジアミン及び酸二無水物化合物の組成と、白濁現象が発生しない有機溶媒の組成を見つけ、従来のポリイミドフィルムより高い透明性及び樹脂安定性、高耐熱性及び低熱膨張係数を有するポリイミド前駆体樹脂組成物を見つけることによって本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明は、透明性、樹脂安定性、高耐熱性及び低熱膨張係数を有するフレキシブルディスプレイ基板素材として使うことができるポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することにその目的がある。
【0011】
また、本発明は前記組成物からポリイミド樹脂フィルムを製造する方法を提供することにその目的がある。
【0012】
また、本発明は前記製造方法で製造されたフィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、550nmの波長での透過率が85%以上、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下であるポリイミド樹脂フィルムを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、芳香族ジアミン成分、酸二無水物化合物及び有機溶媒を含むポリイミド前駆体樹脂組成物であって、前記芳香族ジアミン成分(A)はフッ素化芳香族ジアミン単量体である2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)、又はアミド基を有するジアミン単量体であるN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)、又はこれらの混合物を含み、前記酸二無水物化合物(B)はフッ素化芳香族酸二無水物である4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)と非フッ素化芳香族酸二無水物であるピロメリット酸二無水物(PMDA)、又は3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含む混合物であり、前記有機溶媒(C)はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の混合物、又はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及び3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)の混合物、又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)単独物であることを特徴とする、樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記組成物から製造されたポリアミン酸溶液を熱処理してフィルムに製造することを特徴とする、透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記製造方法で製造されたフィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、550nmの波長での透過率が85%以上、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下である透明ポリイミド樹脂フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来のポリアミン酸溶液に比べ、溶液キャスティング時に白濁現象が発生しない常温での樹脂安全性が優れ、熱硬化によるフィルムの製造時、透明でありながらも優れた機械的特性、光学特性及び耐熱特性を提供することにより、フレキシブルディスプレイ基板素材、半導体素材などに有用に活用可能である。
【0017】
また、本発明は、ポリアミン酸溶液の製造時、従来技術に比べ、副産物の発生及び除去工程がないので、工程競争性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】常温でガラス基板にポリアミン酸溶液をキャスティングするとき、実施例1の有機溶媒(GBL:NMP=70モル%:30モル%)による白濁現象(常温安全性)を示した図である。
図2】常温でガラス基板にポリアミン酸溶液をキャスティングするとき、実施例2の有機溶媒(GBL:DMPA=70モル%:30モル%)による白濁現象(常温安全性)を示した図である。
図3】常温でガラス基板にポリアミン酸溶液をキャスティングするとき、比較例3の有機溶媒(NMP単独物100モル%)による白濁現象(常温安全性)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物(以下‘ポリアミン酸組成物’という)は、耐熱性が向上し、最適の機械的特性を有する芳香族ジアミン及び酸二無水物化合物の組成と、白濁現象が発生しない有機溶媒の組成とこれらの使用量を最適化して高耐熱性、低熱膨張係数及び優れた機械的強度を有する透明ポリイミドフィルムを提供するという点にその特徴がある。本発明によるポリイミド前駆体組成物、言い換えれば‘ポリアミン酸組成物’はポリイミドフィルムの製造に使われるポリアミン酸溶液を製造するのに使われる組成物を意味する。
【0020】
具体的に、本発明によるポリアミン酸組成物は、フッ素化芳香族ジアミン又はアミド基を有するジアミン化合物又はこれらの混合物を含む芳香族ジアミン成分(A)、フッ素化芳香族酸二無水物と非フッ素化芳香族酸二無水物化合物を含む酸二無水物化合物(B)、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)を含む有機溶媒(C)、及び反応触媒(D)を含むポリアミン酸組成物を含む。各成分について具体的に説明すると下記のようである。
【0021】
(A)芳香族ジアミン成分
【0022】
本発明における芳香族ジアミン成分は、フッ素化芳香族ジアミン単量体である2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)、又はアミド基を有するジアミン単量体であるN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)、又はこれらの混合物を含む。
【0023】
具体的に、前記フッ素化芳香族ジアミン単量体である2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)は全体ジアミン化合物に対して30〜100モル%であり、N−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)は全体ジアミン化合物に対して5〜50モル%でり、残量の非フッ素化芳香族ジアミンをさらに含むことができる。
【0024】
前記芳香族ジアミン成分(A)にフッ素置換基が導入されたフッ素化芳香族ジアミンを含む場合、分子鎖間のフッ素置換基間の電荷移動効果(Charge Transfer effect)によって光学的特性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0025】
また、このようなフッ素化芳香族ジアミンとともにN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)を混合して使う場合、芳香族構造とアミド構造の強直性によって優れた耐熱性及び低い熱膨脹係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。
【0026】
芳香族ジアミン成分としてフッ素化芳香族ジアミンとN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミドを混用する場合、フッ素化芳香族ジアミンのみを使用する場合に比べ、光学的特性を維持しながらも熱的特性が同時に向上したポリイミドフィルムを製造することができる。
【0027】
フッ素化芳香族ジアミンはフッ素を含む芳香族ジアミンであれば特に限定されない。例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−4,4’−Diaminobiphenyl、TFMB)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(bisaminohydroxyphebyl hexafluoropropane、DBOH)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(bisaminophenoxyphenyl hexafluoropropane、4BDAF)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,3’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−4,3’−Diaminobiphenyl)、及び2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−5,5’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−5,5’−Diaminobiphenyl)からなる群から選択された1種以上を使うことができる。
【0028】
しかし、本発明では、透過度及び耐熱特性を同時に向上させることができる2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)を使うことが好ましい。
【0029】
ここで、前記TFMBは、全体ジアミン系化合物100モル%を基準に、30〜100モル%、好ましくは50〜90モル%であり、前記範囲内で使用する場合、分子間のフッ素置換基間の電荷移動効果(Charge Transfer effect)によってポリイミドフィルムの光学的特性がもっと向上することができる。
【0030】
また、本発明では、前記TFMBのようなフッ素化芳香族ジアミン単量体だけでなく、非フッ素化芳香族ジアミン単量体も含むことができる。ここで、前記フッ素化芳香族ジアミンと非フッ素化芳香族は総和が100モル%となるように使用する。
【0031】
一方、ポリイミド樹脂の優れた耐熱特性及び低い熱膨張係数のために、アミド構造を有するとか形成することができる化合物を含むことができる。このようなアミド構造を形成することができる化合物としては、酸ハロゲン化物(acid halide)、ジカルボン酸化合物(dicarboxylic acid)がある。例として、p−塩化テレフタロイル(p−terephthaloyl chloride、TPC)、二塩化イソフタロイル(isophthaloyl dichloride、IPC)、1,3−二塩化アダマンタンジカルボニル(1,3−Adamantanedicarbonyl dichloride、ADC)、5−ノルボネン−2,3−塩化ジカルボニル(5−Norbonene−2,3−dicarbonyl chloride、NDC)、4,4’−二塩化ベンゾイル(4,4’−benzoyl dichloride、BDC)、1,4−二塩化ナフタレンジカルボン酸(1,4−naphthalene dicarboxylic acid dichloride、1,4−NaDC)、2,6−二塩化ナフタレンジカルボン酸(2,6−naphthalene dicarboxylic acid dichloride、2,6−NaDC)、1,5−二塩化ナフタレンジカルボン酸(1,5−naphthalene dicarboxylic acid dichloride、1,5−NaDC)、テレフタル酸(Terephthalic acid、TPA)、イソフタル酸(Isophthalic acid、IPA)フタル酸(Phthalic acid、PA)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸(4,4’−biphenyl dicarboxylic acid、BDA)、及びナフタレンジカルボン酸(Naphthalene dicarboxylic acid、NaDA)からなる群から選択された1種以上である。
【0032】
しかし、このような前記化合物はアミド構造を形成しながら副産物であるHCl、H2Oなどが発生し、イミドフィルムの製造時、フィルム特性を低下させることがある。
【0033】
したがって、本発明では、アミド基を有するジアミン化合物であるN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(N−(4−aminophenyl)−4−aminobenzamide、DBA)を含めて使うことにより、副産物の発生なしに分子鎖にアミド基を導入して耐熱特性及び低熱膨張係数特性を具現することができる。N−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)の含量は特に限定されないが、ジアミン系化合物100モル%を基準に、5〜50モル%、好ましくは5〜20モル%である。
【0034】
(B)酸二無水物化合物
【0035】
本発明の芳香族酸二無水物化合物はフッ素化芳香族酸二無水物20〜80モル%及び非フッ素化芳香族酸二無水物化合物80〜20モル%を含む。
【0036】
本発明のようにフッ素化芳香族酸二無水物と非フッ素化芳香族酸二無水物化合物を混合して使う場合、ポリイミドフィルムの光学的特性及び耐熱特性が同時に向上することができる。前記フッ素化芳香族酸二無水物のフッ素置換基によってで光学的特性に優れたポリイミドフィルムを製造することができ、芳香族酸二無水物の強直な分子構造によってで耐熱特性に優れたポリイミドフィルムを製造することができる。
【0037】
フッ素化芳香族酸二無水物はフッ素置換基が導入された芳香族酸二無水物であり、例えば4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’−(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA))、及び4,4−(4,4−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノキシ)ビス−(無水フタル酸)(4,4’−(4,4’−Hexafluoroisopropylidenediphenoxy)bis−(phthalic anhydride)、6−FDPDA)からなる群から選択された1種以上を使うことができるが、本発明では好ましくはフッ素化芳香族酸二無水物として6FDAを使う。
【0038】
このようなフッ素化芳香族酸二無水物は、酸二無水物の和100モル%を基準に、20〜80モル%、好ましくは40〜70モル%であり、前記範囲内でポリイミドフィルムの高透過度及び低黄色度指数を具現することができる。
【0039】
次に、非フッ素化芳香族酸二無水物はフッ素置換基が導入されていない芳香族酸二無水物であり、ピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−biphenyltetracarboxylic acid dianhydride、BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(4,4’−oxydiphthalic anhydride、ODPA)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]二無水プロパン(2,2−Bis[4−(3、4−dicarboxyphenoxy)phenyl]propane dianhydride、BPADA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(3,3,4,4−Diphenyl sufone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、及びエチレングリコールビス(4−トリメリット酸無水物)(ethylene glycol bis(4−trimellitate anhydride)、TMEG)からなる群から選択された1種以上を使うことができるが、本発明では、好ましくは非フッ素化芳香族酸二無水物としてPMDA又はBPDA又はこれらの混合物を使う。
【0040】
ここで、非フッ素化芳香族酸二無水物は、酸二無水物の和100モル%を基準に、80〜20モル%、好ましくは30〜50モル%であり、ポリイミドフィルムの高透過度及び低黄色度指数を維持しながら耐熱特性をもっと低めることができる。
【0041】
(C)有機溶媒
【0042】
本発明における有機溶媒は、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルアセテート(DEA)、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)などの極性溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶媒又はガンマブチロラクトンとGBL)のような低吸水性溶媒がある。
【0043】
本発明で使用する有機溶媒は白濁現象改善に重要な役割をする。ここで、白濁現象は図1図3から確認することができる。図1は常温でガラス基板にポリアミン酸溶液をキャスティングするとき、GBL70モル%及びNMP30モル%の有機溶媒に対する常温安全性(白濁現象なし)を示した図、図2はGBL70モル%及びDMPA30モル%の有機溶媒に対する常温安全性(白濁現象なし)を示した図である。一方、図3はNMP単独物100モル%の有機溶媒に対する白濁現象を示した図である。
【0044】
したがって、本発明では、常温で溶液キャスティングするとき、白濁現象を改善するために、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の混合物、又はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及び3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)の混合物又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)単独物を使うことが好ましい。
【0045】
ここで、有機溶媒の使用量はガンマ−ブチロラクトン(GBL)30〜70モル%とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)70〜30モル%を使うことが好ましい。より好ましくは、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)50〜70モル%とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)30〜50モル%である。あるいはガンマ−ブチロラクトン(GBL)単独物100モル%を使うことができる。
【0046】
(D)反応触媒
【0047】
本発明の反応触媒は、反応性によってトリメチルアミン(Trimethylamine)、キシレン(Xylene)、ピリジン(Pyridine)及びキノリン(Quinoline)からなる群から選択された1種以上をさらに含むことができ、必ずしもこれに制限されない。また、ポリアミン酸組成物は本発明の目的及び効果を著しく損傷させない範囲内で、必要によって可塑剤、酸化防止剤、難燃化剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング剤などの添加剤を少量含むことができる。
【0048】
また、本発明によるポリアミン酸組成物である芳香族ジアミン成分、酸二無水物化合物、有機溶媒、及び反応触媒を重合して得たポリアミン酸溶液は、ポリアミン酸溶液の総重量に対し、固形分10〜40重量%、好ましくは10〜25重量%を含む。固形分が10重量%未満の場合、フィルムの製造時にフィルムの厚さを高めるのに限界があり、固形分が40重量%を超える場合、ポリアミン酸樹脂の粘度を調節するのに限界があるから、前記範囲内で形成する。
【0049】
具体的に、前記ポリアミン酸溶液は、固形分含量10〜40wt%の条件を基準に、有機溶媒含量を使い、芳香族ジアミン成分95〜100モル%及び酸二無水物化合物100〜105モル%を混合し、10〜70℃の温度条件で24〜48時間遂行することが好ましい。ここで、反応温度は使用単量体によって変わることができる。
【0050】
ここで、酸二無水物化合物は、芳香族ジアミン成分に対し、−5〜5モル%を過量で添加して目標粘度に到逹するようにすることが好ましい。これは適切な粘度調節及び保存安全性を確保するためである。
【0051】
このような反応によって生成されたポリアミン酸溶液は粘度が1,000〜7,000cPの範囲内が好ましい。粘度が1,000cP未満の場合、適正水準のフィルム厚さを得るのに問題があり、7,000cPを超える場合、均一なコーティング及び効果的な溶媒除去に問題があるから、前記範囲内が良い。
【0052】
また、本発明において、透明ポリイミドフィルム及びその製造方法は次のようである。本発明は前述したポリアミン酸組成物から製造したポリアミン酸溶液を熱イミド化して製造した透明ポリイミドフィルムを提供する。本発明によるポリアミン酸溶液は粘性を有するもので、フィルムの製造時にガラス基板に適切な方法でコーティングしてから熱処理することによって製造される。前記コーティング方法は公知の通常の方法を制限なしに使うことができる。例えば、スピンコーティング(Spincoating)、ディップコーティング(Dip coating)、溶媒キャスティング(Solvent casting)、スロットダイコーティング(Slot die coating)、スプレーコーティング(Spray coating)などがあるが、これに限定されない。
【0053】
本発明のポリアミン酸組成物は高温対流オーブンで熱処理してポリイミドフィルムに製造することができる。ここで、熱処理は窒素雰囲気で進め、100〜450℃の条件で30〜120分間遂行する。より好ましくは100℃/30min、220℃/30min、350℃/30mimの温度及び時間の条件の下でフィルムを獲得することが好ましい。これは適切な溶媒の除去及び特性の極大化が可能なイミド化のためである。
【0054】
本発明の透明ポリイミドフィルムは前記ポリアミン酸組成物から製造されるので、高い透明性を有するとともに低熱膨張係数を有する。
【0055】
本発明のポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、好ましく15ppm/℃以下と低く、550nmの波長での透過率が85%以上と高く、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下、好ましく5以下と低い。本発明のポリイミドフィルムは膨脹及び収縮による基板上素子の欠陷(defect)を抑制することができる。また、本発明のポリイミドフィルムは高い光透過度と低い黄色度指数を有するので、フレキシブルディスプレイに適用可能である。
【0056】
本発明のポリイミドフィルムは多様な分野に使うことができ、特に、高透明性及び耐熱性が要求されるOLED用ディスプレイ、液晶素子用ディスプレイ、TFT基板、フレキシブルプリント回路基板、フレキシブル(Flexible)OLED面照明基板、電子ペーパー用基板素材のようなフレキシブル(Flexible)ディスプレイ基板及び保護膜として提供されることができる。
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0058】
比較例1
【0059】
下記表1に示した組成物として、ジアミン系単量体であるPPD 2.547g(0.024mole)とTFMB 17.606g(0.055mole)を有機溶媒であるNMP 142.1g、GBL 58.5gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 24.798g(0.056mole)とPMDA 5.212g(0.024mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 83.6gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となる維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が5,700cPであった。
【0060】
比較例2〜3
【0061】
前記表1の有機溶媒の含量の割合を使ったことを除き、比較例1と同様な方法でポリアミン酸溶液を製造した。
【0062】
実施例1〜5
【0063】
前記表1の有機溶媒の含量の割合を使ったことを除き、比較例1と同様な方法でポリアミン酸溶液を製造した。
【0064】
実験例1:物性測定
【0065】
(1)常温白濁現象の評価
【0066】
実施例1〜5及び比較例1〜3で準備したポリアミン酸溶液をガラス板上に落とし、バーコーターを用いて一定の厚さ(固形分15%を基準に、溶液の厚さが100μmである場合、熱処理後15μm)にし、温度25℃、湿度>90%の雰囲気で30分間放置した後、白濁現象を観察した。白濁現象発生の水準を0〜5まで数値化して評価した(0:発生しない、5:ひどく発生)。
【0067】
(2)フィルム製造及び物性の評価
【0068】
ポリアミン酸溶液をガラス板上にバーコーターを用いてコーティングした後、高温対流オーブンで熱処理した。熱処理は窒素雰囲気で進め、100℃/30min、220℃/30min、350℃/30minの温度及び時間の条件で最終フィルムを得た。このように得たフィルムは下記の方法で物性を測定し、下記表2にその結果を示した。
【0069】
(a)透過度(Transmittance)及び位相差(Retardation)
【0070】
UV−Vis NIR Spectrophotometerを用いて550nmで透過度を測定し、複屈折測定装備(Retarder、オオツカRETs−100)を用いて面方向の位相差(Rο)、厚さ方向の位相差(Rυθ)を測定した。
【0071】
(b)黄色度指数(Yellowness Index、YI)
【0072】
色差計(LabScan XE)を用いて測定した。
【0073】
(c)濁度(haze)
【0074】
Haze meter(TOYOSEIKI社、HAZE−GARD)を用いて測定した。
【0075】
(d)熱的特性
【0076】
フィルムのガラス転移温度(Tη)、熱膨張係数(CTE)はNetzsch社のTMA 402 F3を用いて測定した。Tension modeの力(Force)は0.05Nに設定し、測定温度は30℃から5/minの速度で350℃まで昇温し、100〜300℃の範囲での平均値で線熱膨脹係数を測定した。熱分解温度(Tδ、1%)はNetzsch社のTG 209 F3を用いて測定した。
【0077】
(e)機械的特性
【0078】
フィルムの機械的物性を測定するために、Instron社のUTMを使った。フィルム試片の幅は10mm、グリップ間の間隔は100mmに設定し、50mm/minの速度で試片を引っ張りながら測定した。
【0079】
【表1】
【0080】
前記表1で示したように、有機溶媒であるGBLとNMPを所定のの割合である70:30(モル%)で使用した実施例1の場合、ガラス板に溶液キャスティングした後、常温で放置したとき、白濁現象が発生しなくて安全性を有することを確認することができる。
【0081】
また、実施例2〜4のようにGBLとDMPAを混合するとか、実施例5のようにDMPAを単独で使用する場合にも白濁現象が発生しないことが分かる。
【0082】
これはGBLの水分吸収率が低くてGBL含量が増加するほど白濁発生の制御に効果的である。そして、DMPAも同じ理由で白濁現象の抑制に効果的であることが分かる。また、フィルムの光学特性、熱特性及び機械的特性でも比較例1〜3と同等な水準の特性を示すことが分かる。
【0083】
このような結果から、本発明による有機溶媒としてGBLとNMP、GBLとDMPAを所定の含量で使用した場合、フィルム特性の低下なしに常温での樹脂安全性を確保することができることを確認することができる。
【0084】
比較例4
【0085】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるTFMB 21.186g(0.066mole)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 29.881g(0.067mole)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が4,200cPであった。
【0086】
実施例6
【0087】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるPPD 2.589g(0.024mole)とTFMB 17.899g(0.056mole)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 25.210g(0.057mole)とPMDA 5.299g(0.024mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が6,400cPであった。
【0088】
実施例7
【0089】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるTFMB 22.244g(0.069mole)、DBA 0.842g(0.004mol)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 23.063g(0.052mole)とPMDA 4.848g(0.022mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が4,800cPであった。
【0090】
実施例8
【0091】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるTFMB 24.320g(0.076mole)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 17.110g(0.038mole)とPMDA 5.035g(0.038mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が6,600cPであった。
【0092】
実施例9
【0093】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるPPD 2.094g(0.019mole)とTFMB 18.610g(0.058mole)、DBA 0.881g(0.004mol)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 24.298g(0.055mole)とPMDA 5.115g(0.023mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が6,800cPであった。
【0094】
実験例2:物性測定
【0095】
実施例6〜9及び比較例4で準備したポリアミン酸溶液を用いて実験例1と同様な方法で物性を測定して下記表2に示した。
【0096】
【表2】
【0097】
前記表2で示したように、実施例6〜8の場合、酸二無水物単量体であるPMDA、BPDAそしてジアミン単量体であるPPD、DBAの含量が増加するほど高い透過度を現しながらも熱特性が向上することを確認することができる。また、ジアミン単量体としてTFMB、PPD、DBAを同時に使用した実施例9の場合、DBAによって副産物発生なしに耐熱特性及び低熱膨張係数特性を具現することができることを確認することができる。
【0098】
これにより、本発明によって製造されたポリアミン酸溶液は、フィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、550nmの波長での透過率が85%以上、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下である透明ポリイミドフィルムに提供されることができる。
【0099】
したがって、本発明によって製造されたポリイミドフィルムは、透明性、樹脂安全性、高耐熱性、低熱膨張係数及び機械的物性を満たして、OLED用ディスプレイ、液晶素子用ディスプレイ、TFT基板、フレキシブルプリント回路基板、フレキシブル(Flexible)OLED面照明基板、電子ペーパー用基板素材のようなフレキシブル(Flexible)ディスプレイ基板及び保護膜に広く適用可能である。
なお、本発明としては、以下の態様も好ましい。
〔1〕 芳香族ジアミン成分、酸二無水物化合物及び有機溶媒を含むポリイミド前駆体樹脂組成物であって、
前記芳香族ジアミン成分(A)はフッ素化芳香族ジアミン単量体である2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)、又はアミド基を有するジアミン単量体であるN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)、又はこれらの混合物を含み、
前記酸二無水物化合物(B)はフッ素化芳香族酸二無水物である4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)と非フッ素化芳香族生酸二無水物であるピロメリット酸二無水物(PMDA)、又は3,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含む混合物であり、
前記有機溶媒(C)はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の混合物、又はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及び3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)の混合物、又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)単独物であることを特徴とする、樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔2〕 前記芳香族ジアミン成分(A)において、
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)は全体ジアミン化合物に対して30〜100モル%であり、
N−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)は全体ジアミン化合物に対して5〜50モル%であり、
残量の非フッ素化芳香族ジアミンをさらに含むことを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔3〕 前記酸二無水物化合物(B)において、
フッ素化芳香族酸二無水物は全体酸二無水物化合物に対して20〜80モル%であり、
非フッ素化芳香族酸二無水物は全体酸二無水物化合物に対して80〜20モル%であることを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔4〕 前記有機溶媒(C)は、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)30〜70モル%とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)70〜30モル%であることを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔5〕 前記ポリイミド組成物は、トリメチルアミン(Trimethylamine)、キシレン(Xylene)、ピリジン(Pyridine)及びキノリン(Quinoline)からなる群から選択された1種以上の反応触媒(D)をさらに含むことを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の組成物から製造されたポリアミン酸溶液を熱処理してフィルムに製造することを特徴とする、透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
〔7〕 前記ポリアミン酸溶液は、固形分含量10〜40wt%の条件を基準に、有機溶媒含量を使い、芳香族ジアミン成分95〜100モル%及び酸二無水物化合物100〜105モル%を混合して製造されたことを特徴とする、〔6〕に記載の透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
〔8〕 前記ポリアミン酸溶液は1000〜7000cPであることを特徴とする、〔6〕に記載の透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
〔9〕 〔6〕に記載の方法で製造されたフィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、550nmの波長での透過率が85%以上、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下であることを特徴とする、透明ポリイミド樹脂フィルム。
図1
図2
図3