(54)【発明の名称】樹脂安定性及び耐熱性が向上し、透明性を有するポリイミド前駆体樹脂組成物、これを用いたポリイミドフィルムの製造方法、及びこれによって製造されたポリイミドフィルム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、トリメチルアミン(Trimethylamine)、キシレン(Xylene)、ピリジン(Pyridine)及びキノリン(Quinoline)からなる群から選択された1種以上の反応触媒(D)をさらに含む、請求項1に記載の透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
次世代ディスプレイ装置として脚光を浴びているフレキシブルディスプレイの基板素材としてフレキシブルな高分子材料が注目されている。
【0003】
フレキシブルデバイスは一般的に有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを使い、高い工程温度(300〜500℃)のTFT工程が用いられている。このような高い工程温度に耐える高分子材料は極めて制限的であり、そのうちでも耐熱性に優れた高分子であるポリイミド(PI)樹脂が主に使われている。
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、ガラス基板に樹脂を塗布し、熱硬化してフィルム化し、多くの段階の工程を経た後、ガラス基板から取り離す方法でディスプレイを製造する。このような製作過程において、ガラス基板に樹脂を塗布したとき、常温での樹脂安全性が重要である。樹脂安全性が確保されなければ、樹脂の固まり、白濁現象などによって硬化後に均一なフィルムが製膜できなく、結局製品欠陷が発生し得る。また、後工程中にTFT蒸着工程の高い温度による熱衝撃(thermal shock)によっても製品欠陷が発生し得る。したがって、常温での樹脂安全性、高耐熱性及び低熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion;CTE)を有するポリイミド樹脂(PI)が要求される。
【0005】
大韓民国特許公開第2015−108812号は低熱膨脹率と高熱分解温度の熱的特性に優れて表示素子の基材層又は保護層に適用可能なポリアミン酸溶液とこれを用いたフィルムを開示しているが、これは樹脂の安全性を確保することができなくて、樹脂の固まり、白濁現象などのため、硬化後に均一なフィルムが製膜できなく、結局製品欠陷が発生し得る。
【0006】
また、大韓民国特許公開第2013−35691号は共重合ポリアミド−イミドフィルムの製造のための組成物及び製造方法を開示しているが、これは副産物が発生し、除去工程を必ず経なければならないため、工程の経済性の部分に限界がある。
【0007】
それで、樹脂の安全性はもちろんのこと、高耐熱性、低熱膨張係数及び優れた機械的強度を有するポリイミド組成物及び製造工程が比較的簡単な製造方法の提起が必要な実情である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物(以下‘ポリアミン酸組成物’という)は、耐熱性が向上し、最適の機械的特性を有する芳香族ジアミン及び酸二無水物化合物の組成と、白濁現象が発生しない有機溶媒の組成とこれらの使用量を最適化して高耐熱性、低熱膨張係数及び優れた機械的強度を有する透明ポリイミドフィルムを提供するという点にその特徴がある。本発明によるポリイミド前駆体組成物、言い換えれば‘ポリアミン酸組成物’はポリイミドフィルムの製造に使われるポリアミン酸溶液を製造するのに使われる組成物を意味する。
【0020】
具体的に、本発明によるポリアミン酸組成物は、フッ素化芳香族ジアミン又はアミド基を有するジアミン化合物又はこれらの混合物を含む芳香族ジアミン成分(A)、フッ素化芳香族酸二無水物と非フッ素化芳香族酸二無水物化合物を含む酸二無水物化合物(B)、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)を含む有機溶媒(C)、及び反応触媒(D)を含むポリアミン酸組成物を含む。各成分について具体的に説明すると下記のようである。
【0022】
本発明における芳香族ジアミン成分は、フッ素化芳香族ジアミン単量体である2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)、又はアミド基を有するジアミン単量体であるN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)、又はこれらの混合物を含む。
【0023】
具体的に、前記フッ素化芳香族ジアミン単量体である2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)は全体ジアミン化合物に対して30〜100モル%であり、N−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)は全体ジアミン化合物に対して5〜50モル%でり、残量の非フッ素化芳香族ジアミンをさらに含むことができる。
【0024】
前記芳香族ジアミン成分(A)にフッ素置換基が導入されたフッ素化芳香族ジアミンを含む場合、分子鎖間のフッ素置換基間の電荷移動効果(Charge Transfer effect)によって光学的特性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0025】
また、このようなフッ素化芳香族ジアミンとともにN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)を混合して使う場合、芳香族構造とアミド構造の強直性によって優れた耐熱性及び低い熱膨脹係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。
【0026】
芳香族ジアミン成分としてフッ素化芳香族ジアミンとN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミドを混用する場合、フッ素化芳香族ジアミンのみを使用する場合に比べ、光学的特性を維持しながらも熱的特性が同時に向上したポリイミドフィルムを製造することができる。
【0027】
フッ素化芳香族ジアミンはフッ素を含む芳香族ジアミンであれば特に限定されない。例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−4,4’−Diaminobiphenyl、TFMB)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(bisaminohydroxyphebyl hexafluoropropane、DBOH)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(bisaminophenoxyphenyl hexafluoropropane、4BDAF)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,3’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−4,3’−Diaminobiphenyl)、及び2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−5,5’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−5,5’−Diaminobiphenyl)からなる群から選択された1種以上を使うことができる。
【0028】
しかし、本発明では、透過度及び耐熱特性を同時に向上させることができる2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)を使うことが好ましい。
【0029】
ここで、前記TFMBは、全体ジアミン系化合物100モル%を基準に、30〜100モル%、好ましくは50〜90モル%であり、前記範囲内で使用する場合、分子間のフッ素置換基間の電荷移動効果(Charge Transfer effect)によってポリイミドフィルムの光学的特性がもっと向上することができる。
【0030】
また、本発明では、前記TFMBのようなフッ素化芳香族ジアミン単量体だけでなく、非フッ素化芳香族ジアミン単量体も含むことができる。ここで、前記フッ素化芳香族ジアミンと非フッ素化芳香族は総和が100モル%となるように使用する。
【0031】
一方、ポリイミド樹脂の優れた耐熱特性及び低い熱膨張係数のために、アミド構造を有するとか形成することができる化合物を含むことができる。このようなアミド構造を形成することができる化合物としては、酸ハロゲン化物(acid halide)、ジカルボン酸化合物(dicarboxylic acid)がある。例として、p−塩化テレフタロイル(p−terephthaloyl chloride、TPC)、二塩化イソフタロイル(isophthaloyl dichloride、IPC)、1,3−二塩化アダマンタンジカルボニル(1,3−Adamantanedicarbonyl dichloride、ADC)、5−ノルボネン−2,3−塩化ジカルボニル(5−Norbonene−2,3−dicarbonyl chloride、NDC)、4,4’−二塩化ベンゾイル(4,4’−benzoyl dichloride、BDC)、1,4−二塩化ナフタレンジカルボン酸(1,4−naphthalene dicarboxylic acid dichloride、1,4−NaDC)、2,6−二塩化ナフタレンジカルボン酸(2,6−naphthalene dicarboxylic acid dichloride、2,6−NaDC)、1,5−二塩化ナフタレンジカルボン酸(1,5−naphthalene dicarboxylic acid dichloride、1,5−NaDC)、テレフタル酸(Terephthalic acid、TPA)、イソフタル酸(Isophthalic acid、IPA)フタル酸(Phthalic acid、PA)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸(4,4’−biphenyl dicarboxylic acid、BDA)、及びナフタレンジカルボン酸(Naphthalene dicarboxylic acid、NaDA)からなる群から選択された1種以上である。
【0032】
しかし、このような前記化合物はアミド構造を形成しながら副産物であるHCl、H
2Oなどが発生し、イミドフィルムの製造時、フィルム特性を低下させることがある。
【0033】
したがって、本発明では、アミド基を有するジアミン化合物であるN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(N−(4−aminophenyl)−4−aminobenzamide、DBA)を含めて使うことにより、副産物の発生なしに分子鎖にアミド基を導入して耐熱特性及び低熱膨張係数特性を具現することができる。N−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)の含量は特に限定されないが、ジアミン系化合物100モル%を基準に、5〜50モル%、好ましくは5〜20モル%である。
【0035】
本発明の芳香族酸二無水物化合物はフッ素化芳香族酸二無水物20〜80モル%及び非フッ素化芳香族酸二無水物化合物80〜20モル%を含む。
【0036】
本発明のようにフッ素化芳香族酸二無水物と非フッ素化芳香族酸二無水物化合物を混合して使う場合、ポリイミドフィルムの光学的特性及び耐熱特性が同時に向上することができる。前記フッ素化芳香族酸二無水物のフッ素置換基によってで光学的特性に優れたポリイミドフィルムを製造することができ、芳香族酸二無水物の強直な分子構造によってで耐熱特性に優れたポリイミドフィルムを製造することができる。
【0037】
フッ素化芳香族酸二無水物はフッ素置換基が導入された芳香族酸二無水物であり、例えば4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’−(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA))、及び4,4−(4,4−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノキシ)ビス−(無水フタル酸)(4,4’−(4,4’−Hexafluoroisopropylidenediphenoxy)bis−(phthalic anhydride)、6−FDPDA)からなる群から選択された1種以上を使うことができるが、本発明では好ましくはフッ素化芳香族酸二無水物として6FDAを使う。
【0038】
このようなフッ素化芳香族酸二無水物は、酸二無水物の和100モル%を基準に、20〜80モル%、好ましくは40〜70モル%であり、前記範囲内でポリイミドフィルムの高透過度及び低黄色度指数を具現することができる。
【0039】
次に、非フッ素化芳香族酸二無水物はフッ素置換基が導入されていない芳香族酸二無水物であり、ピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−biphenyltetracarboxylic acid dianhydride、BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(4,4’−oxydiphthalic anhydride、ODPA)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]二無水プロパン(2,2−Bis[4−(3、4−dicarboxyphenoxy)phenyl]propane dianhydride、BPADA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(3,3,4,4−Diphenyl sufone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、及びエチレングリコールビス(4−トリメリット酸無水物)(ethylene glycol bis(4−trimellitate anhydride)、TMEG)からなる群から選択された1種以上を使うことができるが、本発明では、好ましくは非フッ素化芳香族酸二無水物としてPMDA又はBPDA又はこれらの混合物を使う。
【0040】
ここで、非フッ素化芳香族酸二無水物は、酸二無水物の和100モル%を基準に、80〜20モル%、好ましくは30〜50モル%であり、ポリイミドフィルムの高透過度及び低黄色度指数を維持しながら耐熱特性をもっと低めることができる。
【0042】
本発明における有機溶媒は、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルアセテート(DEA)、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)などの極性溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶媒又はガンマブチロラクトンとGBL)のような低吸水性溶媒がある。
【0043】
本発明で使用する有機溶媒は白濁現象改善に重要な役割をする。ここで、白濁現象は
図1〜
図3から確認することができる。
図1は常温でガラス基板にポリアミン酸溶液をキャスティングするとき、GBL70モル%及びNMP30モル%の有機溶媒に対する常温安全性(白濁現象なし)を示した図、
図2はGBL70モル%及びDMPA30モル%の有機溶媒に対する常温安全性(白濁現象なし)を示した図である。一方、
図3はNMP単独物100モル%の有機溶媒に対する白濁現象を示した図である。
【0044】
したがって、本発明では、常温で溶液キャスティングするとき、白濁現象を改善するために、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の混合物、又はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及び3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)の混合物又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)単独物を使うことが好ましい。
【0045】
ここで、有機溶媒の使用量はガンマ−ブチロラクトン(GBL)30〜70モル%とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)70〜30モル%を使うことが好ましい。より好ましくは、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)50〜70モル%とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)30〜50モル%である。あるいはガンマ−ブチロラクトン(GBL)単独物100モル%を使うことができる。
【0047】
本発明の反応触媒は、反応性によってトリメチルアミン(Trimethylamine)、キシレン(Xylene)、ピリジン(Pyridine)及びキノリン(Quinoline)からなる群から選択された1種以上をさらに含むことができ、必ずしもこれに制限されない。また、ポリアミン酸組成物は本発明の目的及び効果を著しく損傷させない範囲内で、必要によって可塑剤、酸化防止剤、難燃化剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング剤などの添加剤を少量含むことができる。
【0048】
また、本発明によるポリアミン酸組成物である芳香族ジアミン成分、酸二無水物化合物、有機溶媒、及び反応触媒を重合して得たポリアミン酸溶液は、ポリアミン酸溶液の総重量に対し、固形分10〜40重量%、好ましくは10〜25重量%を含む。固形分が10重量%未満の場合、フィルムの製造時にフィルムの厚さを高めるのに限界があり、固形分が40重量%を超える場合、ポリアミン酸樹脂の粘度を調節するのに限界があるから、前記範囲内で形成する。
【0049】
具体的に、前記ポリアミン酸溶液は、固形分含量10〜40wt%の条件を基準に、有機溶媒含量を使い、芳香族ジアミン成分95〜100モル%及び酸二無水物化合物100〜105モル%を混合し、10〜70℃の温度条件で24〜48時間遂行することが好ましい。ここで、反応温度は使用単量体によって変わることができる。
【0050】
ここで、酸二無水物化合物は、芳香族ジアミン成分に対し、−5〜5モル%を過量で添加して目標粘度に到逹するようにすることが好ましい。これは適切な粘度調節及び保存安全性を確保するためである。
【0051】
このような反応によって生成されたポリアミン酸溶液は粘度が1,000〜7,000cPの範囲内が好ましい。粘度が1,000cP未満の場合、適正水準のフィルム厚さを得るのに問題があり、7,000cPを超える場合、均一なコーティング及び効果的な溶媒除去に問題があるから、前記範囲内が良い。
【0052】
また、本発明において、透明ポリイミドフィルム及びその製造方法は次のようである。本発明は前述したポリアミン酸組成物から製造したポリアミン酸溶液を熱イミド化して製造した透明ポリイミドフィルムを提供する。本発明によるポリアミン酸溶液は粘性を有するもので、フィルムの製造時にガラス基板に適切な方法でコーティングしてから熱処理することによって製造される。前記コーティング方法は公知の通常の方法を制限なしに使うことができる。例えば、スピンコーティング(Spincoating)、ディップコーティング(Dip coating)、溶媒キャスティング(Solvent casting)、スロットダイコーティング(Slot die coating)、スプレーコーティング(Spray coating)などがあるが、これに限定されない。
【0053】
本発明のポリアミン酸組成物は高温対流オーブンで熱処理してポリイミドフィルムに製造することができる。ここで、熱処理は窒素雰囲気で進め、100〜450℃の条件で30〜120分間遂行する。より好ましくは100℃/30min、220℃/30min、350℃/30mimの温度及び時間の条件の下でフィルムを獲得することが好ましい。これは適切な溶媒の除去及び特性の極大化が可能なイミド化のためである。
【0054】
本発明の透明ポリイミドフィルムは前記ポリアミン酸組成物から製造されるので、高い透明性を有するとともに低熱膨張係数を有する。
【0055】
本発明のポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、好ましく15ppm/℃以下と低く、550nmの波長での透過率が85%以上と高く、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下、好ましく5以下と低い。本発明のポリイミドフィルムは膨脹及び収縮による基板上素子の欠陷(defect)を抑制することができる。また、本発明のポリイミドフィルムは高い光透過度と低い黄色度指数を有するので、フレキシブルディスプレイに適用可能である。
【0056】
本発明のポリイミドフィルムは多様な分野に使うことができ、特に、高透明性及び耐熱性が要求されるOLED用ディスプレイ、液晶素子用ディスプレイ、TFT基板、フレキシブルプリント回路基板、フレキシブル(Flexible)OLED面照明基板、電子ペーパー用基板素材のようなフレキシブル(Flexible)ディスプレイ基板及び保護膜として提供されることができる。
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0059】
下記表1に示した組成物として、ジアミン系単量体であるPPD 2.547g(0.024mole)とTFMB 17.606g(0.055mole)を有機溶媒であるNMP 142.1g、GBL 58.5gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 24.798g(0.056mole)とPMDA 5.212g(0.024mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 83.6gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となる維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が5,700cPであった。
【0061】
前記表1の有機溶媒の含量の割合を使ったことを除き、比較例1と同様な方法でポリアミン酸溶液を製造した。
【0063】
前記表1の有機溶媒の含量の割合を使ったことを除き、比較例1と同様な方法でポリアミン酸溶液を製造した。
【0066】
実施例1〜5及び比較例1〜3で準備したポリアミン酸溶液をガラス板上に落とし、バーコーターを用いて一定の厚さ(固形分15%を基準に、溶液の厚さが100μmである場合、熱処理後15μm)にし、温度25℃、湿度>90%の雰囲気で30分間放置した後、白濁現象を観察した。白濁現象発生の水準を0〜5まで数値化して評価した(0:発生しない、5:ひどく発生)。
【0068】
ポリアミン酸溶液をガラス板上にバーコーターを用いてコーティングした後、高温対流オーブンで熱処理した。熱処理は窒素雰囲気で進め、100℃/30min、220℃/30min、350℃/30minの温度及び時間の条件で最終フィルムを得た。このように得たフィルムは下記の方法で物性を測定し、下記表2にその結果を示した。
【0069】
(a)透過度(Transmittance)及び位相差(Retardation)
【0070】
UV−Vis NIR Spectrophotometerを用いて550nmで透過度を測定し、複屈折測定装備(Retarder、オオツカRETs−100)を用いて面方向の位相差(R
ο)、厚さ方向の位相差(R
υθ)を測定した。
【0071】
(b)黄色度指数(Yellowness Index、YI)
【0072】
色差計(LabScan XE)を用いて測定した。
【0074】
Haze meter(TOYOSEIKI社、HAZE−GARD)を用いて測定した。
【0076】
フィルムのガラス転移温度(T
η)、熱膨張係数(CTE)はNetzsch社のTMA 402 F3を用いて測定した。Tension modeの力(Force)は0.05Nに設定し、測定温度は30℃から5/minの速度で350℃まで昇温し、100〜300℃の範囲での平均値で線熱膨脹係数を測定した。熱分解温度(T
δ、1%)はNetzsch社のTG 209 F3を用いて測定した。
【0078】
フィルムの機械的物性を測定するために、Instron社のUTMを使った。フィルム試片の幅は10mm、グリップ間の間隔は100mmに設定し、50mm/minの速度で試片を引っ張りながら測定した。
【0080】
前記表1で示したように、有機溶媒であるGBLとNMPを所定のの割合である70:30(モル%)で使用した実施例1の場合、ガラス板に溶液キャスティングした後、常温で放置したとき、白濁現象が発生しなくて安全性を有することを確認することができる。
【0081】
また、実施例2〜4のようにGBLとDMPAを混合するとか、実施例5のようにDMPAを単独で使用する場合にも白濁現象が発生しないことが分かる。
【0082】
これはGBLの水分吸収率が低くてGBL含量が増加するほど白濁発生の制御に効果的である。そして、DMPAも同じ理由で白濁現象の抑制に効果的であることが分かる。また、フィルムの光学特性、熱特性及び機械的特性でも比較例1〜3と同等な水準の特性を示すことが分かる。
【0083】
このような結果から、本発明による有機溶媒としてGBLとNMP、GBLとDMPAを所定の含量で使用した場合、フィルム特性の低下なしに常温での樹脂安全性を確保することができることを確認することができる。
【0085】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるTFMB 21.186g(0.066mole)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 29.881g(0.067mole)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が4,200cPであった。
【0087】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるPPD 2.589g(0.024mole)とTFMB 17.899g(0.056mole)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 25.210g(0.057mole)とPMDA 5.299g(0.024mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が6,400cPであった。
【0089】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるTFMB 22.244g(0.069mole)、DBA 0.842g(0.004mol)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 23.063g(0.052mole)とPMDA 4.848g(0.022mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が4,800cPであった。
【0091】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるTFMB 24.320g(0.076mole)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 17.110g(0.038mole)とPMDA 5.035g(0.038mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が6,600cPであった。
【0093】
下記表2に示した組成物として、ジアミン系単量体であるPPD 2.094g(0.019mole)とTFMB 18.610g(0.058mole)、DBA 0.881g(0.004mol)を有機溶媒であるNMP 86.7g、GBL 117.3gに溶かし、窒素雰囲気及び常温で30分〜1時間溶解させた。その後、二無水物系単量体である6FDA 24.298g(0.055mole)とPMDA 5.115g(0.023mol)を添加し、24時間重合した後、GBL 85.0gをもっと入れ、24時間撹拌することによってポリアミン酸溶液を製造した(反応温度:30℃、ここで、固形分は反応溶媒の総重量に対して15重量%となるように維持する)。粘度測定装備(Brookfield DV2T、SC4−27)で測定した結果、粘度が6,800cPであった。
【0095】
実施例6〜9及び比較例4で準備したポリアミン酸溶液を用いて実験例1と同様な方法で物性を測定して下記表2に示した。
【0097】
前記表2で示したように、実施例6〜8の場合、酸二無水物単量体であるPMDA、BPDAそしてジアミン単量体であるPPD、DBAの含量が増加するほど高い透過度を現しながらも熱特性が向上することを確認することができる。また、ジアミン単量体としてTFMB、PPD、DBAを同時に使用した実施例9の場合、DBAによって副産物発生なしに耐熱特性及び低熱膨張係数特性を具現することができることを確認することができる。
【0098】
これにより、本発明によって製造されたポリアミン酸溶液は、フィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、550nmの波長での透過率が85%以上、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下である透明ポリイミドフィルムに提供されることができる。
【0099】
したがって、本発明によって製造されたポリイミドフィルムは、透明性、樹脂安全性、高耐熱性、低熱膨張係数及び機械的物性を満たして、OLED用ディスプレイ、液晶素子用ディスプレイ、TFT基板、フレキシブルプリント回路基板、フレキシブル(Flexible)OLED面照明基板、電子ペーパー用基板素材のようなフレキシブル(Flexible)ディスプレイ基板及び保護膜に広く適用可能である。
なお、本発明としては、以下の態様も好ましい。
〔1〕 芳香族ジアミン成分、酸二無水物化合物及び有機溶媒を含むポリイミド前駆体樹脂組成物であって、
前記芳香族ジアミン成分(A)はフッ素化芳香族ジアミン単量体である2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)、又はアミド基を有するジアミン単量体であるN−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)、又はこれらの混合物を含み、
前記酸二無水物化合物(B)はフッ素化芳香族酸二無水物である4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)と非フッ素化芳香族生酸二無水物であるピロメリット酸二無水物(PMDA)、又は3,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含む混合物であり、
前記有機溶媒(C)はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の混合物、又はガンマ−ブチロラクトン(GBL)及び3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)の混合物、又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)単独物であることを特徴とする、樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔2〕 前記芳香族ジアミン成分(A)において、
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)は全体ジアミン化合物に対して30〜100モル%であり、
N−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド(DBA)は全体ジアミン化合物に対して5〜50モル%であり、
残量の非フッ素化芳香族ジアミンをさらに含むことを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔3〕 前記酸二無水物化合物(B)において、
フッ素化芳香族酸二無水物は全体酸二無水物化合物に対して20〜80モル%であり、
非フッ素化芳香族酸二無水物は全体酸二無水物化合物に対して80〜20モル%であることを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔4〕 前記有機溶媒(C)は、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)30〜70モル%とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又は3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(DMPA)70〜30モル%であることを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔5〕 前記ポリイミド組成物は、トリメチルアミン(Trimethylamine)、キシレン(Xylene)、ピリジン(Pyridine)及びキノリン(Quinoline)からなる群から選択された1種以上の反応触媒(D)をさらに含むことを特徴とする、〔1〕に記載の樹脂安定性及び高耐熱性が向上した透明ポリイミド前駆体樹脂組成物。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の組成物から製造されたポリアミン酸溶液を熱処理してフィルムに製造することを特徴とする、透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
〔7〕 前記ポリアミン酸溶液は、固形分含量10〜40wt%の条件を基準に、有機溶媒含量を使い、芳香族ジアミン成分95〜100モル%及び酸二無水物化合物100〜105モル%を混合して製造されたことを特徴とする、〔6〕に記載の透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
〔8〕 前記ポリアミン酸溶液は1000〜7000cPであることを特徴とする、〔6〕に記載の透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法。
〔9〕 〔6〕に記載の方法で製造されたフィルムの厚さ10〜15μmを基準に、ガラス転移温度が300℃以上、100〜300℃範囲での熱膨張係数が25ppm/℃以下、550nmの波長での透過率が85%以上、550nm波長での黄色度指数(Yellow Index、Y.I.)が7以下であることを特徴とする、透明ポリイミド樹脂フィルム。