特許第6906069号(P6906069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6906069
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】搬送治具
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   G02B6/255
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-1873(P2020-1873)
(22)【出願日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000143422
【氏名又は名称】株式会社タカコム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】兜森 悠太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 建人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伎一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕行
(72)【発明者】
【氏名】石川 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 基樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 信男
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−337247(JP,A)
【文献】 特開2008−064858(JP,A)
【文献】 特開2008−197622(JP,A)
【文献】 特開2008−225461(JP,A)
【文献】 特開2005−215513(JP,A)
【文献】 特開2010−243702(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0196566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24−6/255
6/36−6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融着接続機を用いて第1の光ファイバと第2の光ファイバを融着接続する際に前記融着接続機に設置し、融着接続した後、融着接続した光ファイバを搬送するための搬送治具であって、
第1の光ファイバを固定可能な第1把持部と、
第2の光ファイバを固定可能な第2把持部と、
前記第1把持部と前記第2把持部とを所定の間隔を保持して連結する連結部を備え、
前記第1把持部または前記第2把持部の少なくとも一方は、融着接続時にファイバ保護スリーブを載置するための載置部を備える
ことを特徴とする搬送治具。
【請求項2】
前記載置部は、前記光ファイバの延伸方向の端に前記光ファイバの径よりも広く、前記ファイバ保護スリーブの径より狭い幅の溝を形成したファイバ保持部を備え、
前記融着接続時に前記光ファイバを前記溝に通し、前記ファイバ保持部により前記ファイバ保護スリーブの移動を抑制する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送治具。
【請求項3】
前記融着接続機は側面に前記第1把持部と前記第2把持部を取り付けるための2つのスリットを有し、
前記第1把持部と前記第2把持部は前記スリットに差し込み可能な差込部を有し、
前記第2把持部の差込部を取り付け可能な穴と前記スリットに差し込み可能な差込部を有する離間部材を備え、
前記離間部材の差込部を前記融着接続機の一方のスリットに差し込み、前記第1把持部の差込部を前記融着接続機の他方のスリットに差し込み、前記第2把持部の差込部を前記離間部材の穴に差し込む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送治具に関する。
【背景技術】
【0002】
光サービスをユーザに提供する設備では、架空光クロージャからユーザ宅のキャビネットにドロップケーブルが引き落とされる。
【0003】
ドロップケーブルが切断したり、故障したりした場合、一部区間の張り替えを行うため、融着接続機(非特許文献1参照)を現場に持参し、現場で光ファイバを融着接続する。融着接続作業では、被覆を除去した光ファイバを融着接続機にセットして融着接続する。ファイバ保護スリーブを光ファイバの融着接続点に被せ、ファイバ保護スリーブを加熱収縮して融着接続点を補強する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“ドロップ融着接続機(単心〜4心) TYPE-201e-M4-D/TYPE-201e-VS-D”、[online]、カワミツ産業株式会社、[令和1年12月10日検索]、インターネット〈 URL:http:www.kawamitu.co.jp/it/o-comm/01/type-201em4d.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
融着接続後、作業者は、融着接続した光ファイバのテンションを維持しながら、ファイバ保護スリーブを被せた光ファイバをヒータに移動する必要がある。このとき、力のコントロールが上手くいかずに、光ファイバが撓んだり、光ファイバに力が強くかかったりすると光ファイバが断線してしまう。
【0006】
非特許文献1には、融着接続した光ファイバをヒータへの搬送するときに用いる搬送治具が開示されている。この従来の搬送治具は、融着接続機の側面にセット可能で、光ファイバを通す溝と溝に通した光ファイバを固定して把持するための蓋を備える。搬送治具を融着接続機にセットし、光ファイバを溝に通した状態で融着接続する。融着接続後、蓋を閉めて光ファイバを搬送治具に固定し、ファイバ保護スリーブを融着接続点に被せ、一方の手で搬送治具を持ち、他方の手で光ファイバを軽く引っ張りながらファイバ保護スリーブをヒータに移動する。非特許文献1の搬送治具を用いると、一方の手で搬送治具を持ち、他方の手で光ファイバのテンションを維持する力を加えればよいので、ヒータへの搬送が容易になる。
【0007】
しかしながら、融着接続作業は、梯子の上での作業であったり、高所作業車の狭いバケット内での作業であったりと、不安定な姿勢で行わなければならないこともある。その結果、力のコントロールが上手くいかずに断線してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、光ファイバの融着接続作業の作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の搬送治具は、融着接続機を用いて第1の光ファイバと第2の光ファイバを融着接続する際に前記融着接続機に設置し、融着接続した後、融着接続した光ファイバを搬送するための搬送治具であって、第1の光ファイバを固定可能な第1把持部と、第2の光ファイバを固定可能な第2把持部と、前記第1把持部と前記第2把持部とを所定の間隔を保持して連結する連結部を備え、前記第1把持部または前記第2把持部の少なくとも一方は、融着接続時にファイバ保護スリーブを載置するための載置部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光ファイバの融着接続作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態の搬送治具の斜視図である。
図2】第1の実施形態の搬送治具を融着接続機に接続する様子を示す図である。
図3】光ファイバを融着接続機にセットし、ファイバ保護スリーブを搬送治具に載せた様子を示す図である。
図4】光ファイバを融着接続している様子を示す図である。
図5】ファイバ保護スリーブを融着接続点に被せた様子を示す図である。
図6】光ファイバとファイバ保護スリーブをヒータ部に移動した様子を示す図である。
図7】第2の実施形態の搬送治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1,2を参照し、第1の実施形態の搬送治具について説明する。
【0014】
本実施形態の搬送治具1は、2つの把持部10と連結部20を備える。以下では、把持部10側を前方、連結部20側を後方、把持部10の並ぶ方向を左右方向、図の上を上方向、図の下を下方向として説明する。
【0015】
把持部10のそれぞれは、U字型の連結部20の先端に接続される。連結部20は、融着接続機50の幅と同じ間隔を保つように2つの把持部10を連結する。連結部20は、把持部10間の間隔が保たれるように、撓みにくい材料を用いたり、撓みにくい構造にしたりするとよい。連結部20は、作業時に邪魔にならないように、搬送治具1を融着接続機50に取り付けたときに融着接続機50の側面および後方を通るU字型とするとよい。作業時に邪魔にならなければ、連結部20を融着接続機50の上部を通るようにしてもよい。また、連結部20の形状はU字型に限るものではなく、把持部10間の間隔を保つことができる形状であればよい。
【0016】
本実施形態の搬送治具1では、把持部10の上面に横長の穴を設けて、横長の穴に連結部20をネジ16で固定し、把持部10間の間隔が融着接続機50の幅と同じになるように微調整できるようにした。把持部10と連結部20との接続方法は、これに限るものではない。連結部20を把持部10の後面や側面に接続してもよいし、把持部10の下面に接続してもよい。把持部10と連結部20とを溶接してもよいし、把持部10と連結部20とを着脱可能にしてもよい。
【0017】
把持部10は、載置部11、ファイバ保持部12、固定部13、および差込部14を備える。把持部10を融着接続機50に取り付けた後、把持部10それぞれの上面に融着接続する光ファイバを載置する。把持部10のいずれか一方にファイバ保護スリーブを載置する。
【0018】
載置部11は、光ファイバを融着接続する際に光ファイバおよびファイバ保護スリーブを一時的に載置する面である。図1の例では、把持部10の本体の上面にゴムを配置して載置部11としている。把持部10の上面にゴムを配置して載置部11とすることで摩擦力が高まり、載置部11とファイバ保護スリーブとの間で生じる摩擦力によってファイバ保護スリーブの移動を抑制できる。また、載置部11と後述の固定部13で光ファイバを挟んだときに、光ファイバを強固に把持することができる。ゴムを配置せずに、把持部10の上面を載置部11として利用してもよい。
【0019】
ファイバ保護スリーブは、内部に鋼芯を備え、光ファイバの融着接続点を補強する熱収縮チューブである。光ファイバを融着接続後に、ファイバ保護スリーブを光ファイバの融着接続点に被せて加熱収縮させて融着接続点を補強する。ファイバ保護スリーブは筒状であって、融着接続後は光ファイバにファイバ保護スリーブを通すことができなくなるので、光ファイバを融着接続する前に、融着接続する光ファイバのどちらかにファイバ保護スリーブを通しておく。把持部10にファイバ保護スリーブを載置できるようにすることで、ファイバ保護スリーブが動くことを気にせずに融着接続を行うことができる。
【0020】
ファイバ保持部12は、光ファイバの延伸方向の端、つまり把持部10の左右方向の端に配置された部材である。ファイバ保持部12は、光ファイバを通す溝を備えて光ファイバが把持部10の上面からずれ落ちないように光ファイバを保持するとともに、ファイバ保護スリーブの把持部10外への移動を抑制する。溝は、光ファイバの径よりも大きく、ファイバ保護スリーブの径よりも小さい幅とする。
【0021】
ファイバ保持部12から把持部10の他方の辺(融着接続機50側の辺)までの長さ、つまり把持部10の左右方向の長さは、把持部10の上面にファイバ保護スリーブが収納できる長さとする。把持部10の上面がファイバ保護スリーブを収納するための収納空間となる。一般的なファイバ保護スリーブは60mm程度の長さであるので、把持部10の左右方向の長さを60mmより長くする。本実施形態の把持部10は、左右方向の長さを80mm、前後方向の長さを15mmとしたが、把持部10のサイズをこれに限るものではない。
【0022】
固定部13は、光ファイバを融着接続後、光ファイバを融着接続機50のヒータ部に搬送する際に、光ファイバをしっかりと把持するための部材である。本実施形態の固定部13は、前方を折り曲げたL字型であり、内側(光ファイバを把持する位置)にゴム13Aを備える。図1の状態から固定部13を前方に回転させると固定部13が閉じた状態となる。載置部11とゴム13Aで光ファイバを挟むことで、光ファイバは強固に把持される。固定部13を前方に回転させたときに、固定部13が光ファイバを挟む方向に付勢されるようにすると、光ファイバをより強固に把持できる。なお、固定部13は、光ファイバをしっかりと把持できれば、L字型以外の形状であってもよい。
【0023】
差込部14は、図2に示すように、融着接続機50に取り付けた搬送治具固定台60の備えるスリット61,62に差し込まれる部分である。スリット61,62は、融着接続機50の両側に形成されている。差込部14をスリット61,62に差し込むことで、把持部10のそれぞれを融着接続機50の両側に固定できる。
【0024】
ここで、融着接続機50について簡単に説明する。同図に示す融着接続機50は、光ファイバを融着接続する融着接続部51、ファイバ保護スリーブを加熱収縮するヒータ部52、および操作を受け付けて作業状況を表示するタッチパネル53を備える。光ファイバを融着接続するときは、把持部10のそれぞれをスリット61に差し込み、融着接続部51のカバーを開いて光ファイバをセットする。ファイバ保護スリーブを加熱収縮するときは、ヒータ部52のカバーを開いてファイバ保護スリーブをヒータ部52に移動する。このとき、把持部10のそれぞれをスリット62に差し込む。
【0025】
図3ないし図6を参照し、本実施形態の搬送治具1を使用して光ファイバを融着接続する工程について説明する。
【0026】
融着接続機50に光ファイバ100A,100Bをセットする前、融着接続する光ファイバ100A,100Bの一方にファイバ保護スリーブ110を通しておく。そして、光ファイバ100A,100Bのそれぞれをファイバホルダ120にセットし、先端部の被覆を除去して、光ファイバの先端を垂直にカットする。
【0027】
光ファイバ100A,100Bを融着接続機50にセットする前に、把持部10のそれぞれを融着接続部51側の左右のスリット61に差し込んでおく。
【0028】
図3に示すように、融着接続部51のカバー51Bを開いて、光ファイバ100A,100Bをセットしたファイバホルダ120を融着接続部51にセットし、光ファイバ100A,100Bの先端を電極部51Aに配置する。
【0029】
光ファイバ100A,100Bは、載置部11に載せて、ファイバ保持部12の溝に通す。ファイバ保護スリーブ110も、載置部11に載せておく。このときは、両方の固定部13を開いたままにして、光ファイバ100A,100Bを固定しない。
【0030】
光ファイバ100A,100Bを融着接続部51にセットした後、図4に示すように、カバー51Bを閉じて、光ファイバ100A,100Bを融着接続する。融着接続部51では、放電による熱で光ファイバ100A,100Bの先端が溶かされて、光ファイバ100A,100Bが融着接続される。
【0031】
融着接続後、カバー51Bを開き、光ファイバ100Bを保持する右側の固定部13を回転させて閉じ、光ファイバ100Bを把持部10に固定する。ファイバホルダ120を開いた後、ファイバ保護スリーブ110を移動して融着接続点に被せる。光ファイバ100Aを保持する左側の固定部13を回転させて閉じ、光ファイバ100Aを把持部10に固定する。これで、図5に示すように、ファイバ保護スリーブ110が融着接続点に被せられて、光ファイバ100A,100Bが搬送治具1に固定された状態となる。
【0032】
図5のように、光ファイバ100A,100Bを把持部10に固定した状態にすると、光ファイバ100A,100Bの被覆が除去された部分が撓んだり、力が強くかかったりすることを防止できる。従来の搬送治具では、搬送治具で固定していない側の光ファイバを持って光ファイバにかかるテンションを維持する必要があったが、本実施形態の搬送治具1では、把持部10間で光ファイバ100A,100Bにかかるテンションが維持されるので、両手を離すことができる。
【0033】
融着接続後は、ヒータ部52のカバー52Bを開き、左右の把持部10をスリット61から抜いて、搬送治具1とともに光ファイバ100A,100Bとファイバ保護スリーブ110を後方に移動する。図6に示すように、把持部10のそれぞれをヒータ部52側の左右のスリット62に差し込んで、ファイバ保護スリーブ110をヒータ52Aに載せる。その後、カバー52Bを閉じてファイバ保護スリーブ110を加熱収縮させる。カバー52Bを開けて、左右の固定部13を開いて融着接続した光ファイバ100A,100Bを取り出す。
【0034】
光ファイバ100A,100Bのそれぞれは把持部10に固定され、把持部10は連結部20によって間隔を保って連結されているので、光ファイバ100A,100Bの搬送時、片手で搬送治具1を持って搬送することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の搬送治具1は、融着接続機50を用いて光ファイバ100Aと光ファイバ100Bを融着接続した後、融着接続した光ファイバ100A,100Bを搬送するための搬送治具1であって、光ファイバ100A,100Bを固定可能な2つの把持部10と、2つの把持部10を所定の間隔を保持して連結する連結部20を備える。融着接続時に、把持部10の上面をファイバ保護スリーブ110を載置するスペースとして利用する。これにより、融着接続時に、ファイバ保護スリーブ110を搬送治具1上に置くことができ、さらに、融着接続後に、所定の間隔を保持した把持部10のそれぞれに光ファイバ100A,100Bを固定できる。光ファイバ100A,100Bの搬送が片手で可能となり、光ファイバの融着接続作業の作業性を向上できる。
【0036】
本実施形態の搬送治具1は、左右両方の把持部10を同じ構造とし、左右の把持部10のどちらにもファイバ保護スリーブ110を載置できるようにしたが、左右のいずれか一方の把持部10だけにファイバ保護スリーブ110を載置できるようにしてもよい。例えば、右側の把持部10の代わりに従来の搬送治具を取り付けてもよい。いずれか一方の把持部10にファイバ保護スリーブ110を載置できれば、他方の把持部10は搬送時に光ファイバを固定可能な構造であればよい。なお、左右の把持部10のどちらにもファイバ保護スリーブ110を載置できるようにすることで、ファイバ保護スリーブ110を通しておく光ファイバ100A,100Bを気にする必要がない。
【0037】
[第2の実施形態]
図7を参照し、第2の実施形態の搬送治具1について説明する。第1の実施形態と同じ部分についての説明は省略する。第2の実施形態の搬送治具1は、第1の実施形態の搬送治具1よりも把持部10間の間隔を広くするとともに、どちらか一方の把持部10と融着接続機50との間に取り付ける離間部材30を備える。離間部材30により離間された把持部10と融着接続機50との間、つまり離間部材30の上方にファイバ保護スリーブ110を収納する。離間部材30は、把持部10の差込部14を差し込むための穴31と融着接続機50のスリット61,62に離間部材30を差し込むための差込部32を備える。図7の離間部材30は、左右に幅広い穴31を備えているが、これに限定するものではない。穴31は、把持部10の差込部14を差し込めればよい。
【0038】
離間部材30は着脱可能である。図7では、左側の把持部10の差込部14を離間部材30の穴31に差し込んだ。離間部材30の差込部32は、融着接続機50の左側のスリット61に差し込む。現場の状況や作業のしやすさに応じて、右側の把持部10と融着接続機50との間に離間部材30を配置してもよい。つまり、離間部材30を融着接続機50の右側のスリット61に差し込み、右側の把持部10を離間部材30に差し込んでもよい。
【0039】
離間部材30の上方をファイバ保護スリーブ110を収納するための収納空間として利用するので、把持部10は搬送時に光ファイバ100A,100Bにかかる力を保って固定可能であればよい。つまり、把持部10の左右方向の長さを短くしてもよいし、把持部10として従来の搬送治具を連結部20の両端に取り付けてもよい。
【0040】
ここで、第2の実施形態の搬送治具1の取り付け方法を簡単に説明する。まず、離間部材30の差込部32を融着接続機50の一方のスリット61に差し込む。そして、一方の把持部10の差込部14を離間部材30の穴31に差し込み、他方の把持部10の差込部14を反対側のスリット61に差し込む。ファイバ保護スリーブ110は、離間部材30を取り付けた側の光ファイバに通しておく。
【0041】
その後、図3ないし図5を用いて説明したように、光ファイバ100A,100Bを融着接続機50にセットし、光ファイバ100A,100Bを融着接続する。ファイバ保護スリーブ110を融着接続点に被せて、光ファイバ100A,100Bを両方の把持部10に固定する。
【0042】
左右の把持部10を融着接続機50および離間部材30の両方から抜き、融着接続した光ファイバ100A,100Bをヒータ部52に搬送する。このとき、融着接続機50のスリット61に直接差し込んでいたほうの把持部10の差込部14をヒータ部52側のスリット62に差し込む。なお、反対側の把持部10は融着接続機50に取り付けなくてもよい。一方の把持部10のみを融着接続機50に差し込めばよいので、作業性の向上が見込まれる。反対側の把持部10を融着接続機50に取り付けたいときは、離間部材30をスリット62に差し直し、把持部10の差込部14を離間部材30の穴31に差し込む。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の搬送治具1は、融着接続機50と把持部10のいずれか一方との間に離間部材30を備え、離間部材30の上方をファイバ保護スリーブ110を収納するための収納空間とする。これにより、融着接続時に、ファイバ保護スリーブ110を融着接続機50と把持部10の間に収納することができ、さらに、融着接続後に、所定の間隔を保持した把持部10のそれぞれに光ファイバ100A,100Bを固定できる。光ファイバ100A,100Bの搬送が片手で可能となり、光ファイバの融着接続作業の作業性を向上できる。
【符号の説明】
【0044】
1…搬送治具
10…把持部
11…載置部
12…ファイバ保持部
13…固定部
13A…ゴム
14…差込部
16…ネジ
20…連結部
30…離間部材
31…穴
32…差込部
【要約】      (修正有)
【課題】光ファイバの融着接続作業の作業性を向上する。
【解決手段】融着接続機を用いて光ファイバと光ファイバを融着接続した後、融着接続した光ファイバを搬送するための搬送治具1であって、2つの光ファイバを固定可能な2つの把持部10と、2つの把持部10を所定の間隔を保持して連結する連結部20を備える。把持部10は、融着接続時にファイバ保護スリーブを収納するための収納空間を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7