(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6906082
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】内視鏡保持装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
A61B1/00 654
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-65971(P2020-65971)
(22)【出願日】2020年4月1日
【審査請求日】2020年5月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年4月27〜29日名古屋国際会議場イベントホールにおいて開催された第5回メディカルメッセで発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和之
【審査官】
高松 大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−168820(JP,A)
【文献】
特開2000−279368(JP,A)
【文献】
特開平06−022901(JP,A)
【文献】
特開2002−165804(JP,A)
【文献】
特開2000−316793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が体内に挿入される挿入部と、当該挿入部の基端側に連設される軟性管と、当該軟性管を介して挿入部と電気的および機械的に連結され挿入部の先端を操作する操作部とを備えた内視鏡における前記挿入部を術部に対して位置決めするために前記軟性管を保持する内視鏡保持装置であって、
手術台に着脱自在に取付けられ当該手術台の上面に対して垂直に延びる固定パイプと、基端側において前記固定パイプに軸回り位置及び上下位置を調節固定自在に取り付けられる接続部材と、基端側において前記接続部材に枢支され前記手術台の上面に対する起伏角度を調節固定自在に設けられるレール支持部材と、基端側において前記レール支持部材に支持されるリニアガイドレールと、当該リニアガイドレールに移動固定自在に支持される移動ブロックと、基端側において当該移動ブロック上に取り付けられる自在多関節アームと、当該多関節アームの先端側に取り付けられ前記軟性管を把持解放自在のクランプ部材とを具備し、
前記多関節アームは、前記移動ブロックに固定される第1の取り付け部と、基端側において第1の自在関節を介して前記第1の取り付け部に対して自在接続される第1アームと、基端側において枢支関節を介して前記第1アームの先端側に接続される第2アームと、基端側において第2の自在関節を介して前記第2アームの先端側に自在接続され先端側において前記クランプ部材に接続される第2の取り付け部と、前記枢支関節、第1及び第2の自在関節を固定、半固定、固定解除する制御機構とを具備することを特徴とする内視鏡保持装置。
【請求項2】
前記クランプ部材は、基端側において前記多関節アームの第2の取り付け部に接続される連結軸部材と、中間部において前記連結軸部材に枢着され係合位置と非係合位置との間を揺動自在で係合位置に付勢されるフック部材と、前記連結軸部材の先端側を軸線方向に嵌合させる嵌合凹部を有するクランプベースと、基端側において前記クランプベースに所定角度揺動自在に枢支されるねじ棒と、基端側において前記ねじ棒を自在に貫通させ当該ねじ棒に螺合するナットにより前記クランプベースとの間隔を開閉自在で開方向に付勢されるクランプ片とを具備し、
前記クランプベースの嵌合凹部内には、前記連結軸部材の嵌合操作により前記フック部材を非係合位置に押動させた後ばね力で自動係合させる係合部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡保持装置。
【請求項3】
前記連結軸部材は、軸線方向のスリットを備えた円柱状接続部を具備し、当該円柱状接続部を前記嵌合凹部に嵌合させて前記クランプベースに接続され、
前記フック部材は、中間部において前記円柱状接続部のスリット内で軸線直交方向の枢ピンにより枢支され、基端側において前記連結軸部材との間のばねにより係合位置へ回転付勢され、先端側に前記嵌合凹部内の係合部に係脱自在のラッチ部を具備し、係合位置において前記ラッチ部が前記スリットから前記円柱状接続部の外周へ突出して前記係合部に係合し、非係合位置において前記スリット内へ没入して前記係合部から離脱するように構成され、
前記クランプベースの係合部は、前記円柱状接続部の前記嵌合凹部への嵌合過程で前記ラッチ部に摺接して前記フック部材を非係合位置へ揺動させる摺接部を具備することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部を術部に対して位置決めするために軟性管を手術台上の適宜位置に保持する内視鏡保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一人の術者が片手で挿入部を持ち、もう一方の片手で操作部を持ったまま挿入量、方向の操作に加えて内視鏡全体の軸周りの回転操作を行う必要がある外科手術において、操作性向上や術者の疲労軽減、内視鏡操作の正確性の向上を測る内視鏡保持装置が特許文献1に記載されている。
この内視鏡保持装置は、先端が術部に挿入される挿入部と、この挿入部の基端側に連設される柔軟性を有する中間部と、この中間部を介して挿入部と連結され挿入部先端を操作する操作部とを備えた内視鏡を保持する装置であり、挿入部を術部に対して位置決め保持する第1の保持手段と、操作部を術空間から外れた位置に位置決め保持する第2の保持手段を具備する。第1の保持手段は、挿入部を軸方向に沿ってスライド自在とする自由度および挿入部を軸回りに回転自在とする自由度との2自由度に対して固定保持しもしくは固定保持を解除する第1の制御手段と、挿入部を空間の所望の位置に保持する保持装置の固定もしくは固定を解除する第2の制御手段とを具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−168820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の内視鏡保持装置における第1の保持手段より内視鏡の移動操作範囲が大きく、構造簡易で安価に得られる内視鏡保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の内視鏡保持装置1は、先端が体内に挿入される挿入部103と、それの基端側に連設される軟性管102と、当該軟性管102を介して挿入部103と電気的および機械的に連結され、挿入部103の先端を操作する操作部104とを備えた内視鏡101を支持する装置である。内視鏡保持装置1は、挿入部103を術部に対して位置決めするために軟性管102を手術台B上の所定位置に保持するもので、手術台Bに着脱自在に取付けられそれの上面に対して垂直に延びる固定パイプ2と、基端側において固定パイプ2に軸回り位置及び上下位置を調節固定自在に取り付けられる接続部材3と、基端側において接続部材3に枢支され手術台Bの上面に対する起伏角度を調節固定自在に設けられるレール支持部材4と、基端側においてレール支持部材4に支持されるリニアガイドレール5と、これに移動固定自在に支持される移動ブロック6と、基端側において当該移動ブロック上に取り付けられる自在多関節アーム7と、当該自在多関節アームの先端側に取り付けられ軟性管102を把持解放自在のクランプ部材8とを具備する。
自在多関節アーム7は、移動ブロック6に固定される第1の取り付け部71と、基端側において第1の自在関節75を介して第1の取り付け部71に対して自在接続される第1アーム73と、基端側において枢支関節76を介して第1アーム73の先端側に枢着される第2アーム74と、基端側において第2の自在関節77を介して第2アーム74の先端側に自在接続され、先端側においてクランプ部材8に接続される第2の取り付け部72と、枢支関節76、第1及び第2の自在関節75,77を固定、半固定、固定解除する制御機構78とを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の内視鏡保持装置1は、以下のような効果を有する。固定パイプ2と接続部材3により、手術台Bの上面の高さ位置に応じて容易に装置の固定高さを調整できる。リニアガイドレール5と移動ブロック6とにより、患者に対する装置の配置を手術台Bに沿って大きく移動調整できると共に、装置の使用前後には、レール支持部材を直立させることにより、手術台B上を広く空けることができる。自在関節アーム7により、軟性管102を把持するクランプ部材8の向きを自在に変更し、固定、半固定、固定解除を行うことことにより、的確な位置に容易に軟性管102を保持し、これにより術者の手を空け、施術を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る内視鏡保持装置の正面図である。
【
図3】
図1の内視鏡保持装置におけるクランプ部材の一部を切欠した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
内視鏡保持装置1は、手術台Bに着脱自在に取付けられ手術台Bの上面に対して垂直に延びる固定パイプ2と、基端側において固定パイプ2に軸回り位置及び上下位置を調節固定自在に取り付けられる接続部材3と、基端側において接続部材に枢支され手術台Bの上面に対する起伏角度を調節固定自在に設けられるレール支持部材4と、基端側においてレール支持部材4に支持されるリニアガイドレール5と、このリニアガイドレール5に移動固定自在に支持される移動ブロック6と、基端側において当該移動ブロック6上に取り付けられる自在多関節アーム7と、当該自在多関節アーム7の先端側に取り付けられ内視鏡101の軟性管102を把持解放自在のクランプ部材8とを具備する。
【0009】
固定パイプ2は、下部においてパイプクランプ金具9により手術台Bに垂直に固定される。
【0010】
接続部材3は、基端側において固定パイプ2を把持し前端側が手術台B側へ延出ように設けられる。接続部材3は、ボルト31の調整により、固定パイプ2に対して、所望の軸回り位置及び上下位置に固定される。
【0011】
レール支持部材4は、基端側において接続部材3の先端側に、水平方向のノブ付きボルト41により枢支され、手術台Bの上面に対して起伏角度を調節固定自在に設けられる。
【0012】
リニアガイドレール5は、基端側においてレール支持部材4の先端側に固着され、レール支持部材4と共に手術台Bの上面に対して起伏角度を調節固定自在に設けられる。
【0013】
移動ブロック6は、リニアガイドレール5上に移動固定自在に支持され、固定ノブ61の調整により所望位置に固定される。
【0014】
自在多関節アーム7は、両端の第1及び第2の取り付け部71,72と、それらの間の第1及び第2のアーム73,74とを具備する。第1の取り付け部71は、移動ブロック6に固定される。第1のアーム73は、基端側において第1の自在関節75を介して第1の取り付け部71に対して自在接続される。第2のアーム74は、基端側において枢支関節76を介して第1アーム73の先端側に枢着され、先端側において第2の自在関節77を介して第2の取り付け部72の基端側に自在接続される。第2の取り付け部72は、先端側においてクランプ部材8に接続される。第1、第2の自在関節75,77および枢支関節76は、公知の制御機構の操作ノブ78で固定、半固定、固定解除が制御される。
【0015】
クランプ部材8は、連結軸部材81、フック部材82、クランプベース83、ねじ棒84、クランプ片85を具備する。
【0016】
図3に示すように、連結軸部材81は、先端側に軸線方向のスリット81bを備えた円柱状接続部81aを具備し、基端側において多関節アーム7の第2の取り付け部72に接続され、先端側においてクランプベース83の嵌合凹部83aに嵌合させてこれに接続される。
【0017】
フック部材82は、中間部においてスリット81b内で軸線直交方向の枢ピン82aにより、係合位置と非係合位置との間を揺動自在に連結軸部材81に枢支され、基端側においてばね82bにより係合位置へ回転付勢される。フック部材82は、先端側にクランプベース83に係脱するラッチ部82cを具備する。ラッチ部82cは、フック部材が係合合位置にあるときスリット81bから外周側へ突出し、非係合位置にあるときスリット81b内へ没入する。
【0018】
クランプベース83は、連結軸部材81の先端側を軸線方向に嵌合させる嵌合凹部83aを具備する。嵌合凹部83a内には、連結軸部材81の嵌合操作によりフック部材82を非係合位置に押動させてラッチ部82cを没入させた後、ばね力で自動係合させる係合部83bが設けられる。係合部83bは、円柱状接続部81aを嵌合凹部83aへ嵌合させる過程でラッチ部82cの斜面82dに摺接してフック部材82を非係合位置へ揺動させる摺接部83cを具備する。
【0019】
ねじ棒84は、基端側においてクランプベース83に所定角度揺動自在に枢支され上部においてクランプ片85を自在に貫通し、ナット84aによりクランプ片85に係合する。ねじ棒84の外周にクランプベース83とクランプ片85との間を押し開くばね84bが挿入される。
【0020】
クランプ片85は、基端側の貫通孔85aにねじ棒を自在に貫通させ、ねじ棒84に螺合するナット84aにより、クランプベース83との間隔を開閉自在で、ばね84bにより開方向に付勢される。
【0021】
内視鏡保持装置1を使用する場合には、パイプクランプ金具9により、固定パイプ2の下部を手術台Bに垂直に固定する。接続部材3を固定パイプ2に軸回り位置及び上下位置を調節して手術台B上に固定する。接続部材3に枢支されているレール支持部材4は、不使用時にはリニアガイドレール5、自在関節アーム7と共に起立させて手術台B上を空けておき、使用時には、手術台B上に倒して固定する。なお、自在関節アーム7の先端部からクランプ金具9までを汚染防止のためにビニルカバー10で被覆しておく。カバー10からは、クランプ部材8のみを露出させる。
【0022】
術者が内視鏡の挿入部103を患者の体内へ挿入し術部に到達したら、補助者が保持装置1を用いて軟性管102を保持する。保持操作に当たっては、カバー10の外側から各部を操作し、クランプ部材8の位置を軟性管102の所要の保持位置に適合させ、クランプベース83とクランプ片85との間に軟性管102を挟持させ、移動ブロック6、自在関節アーム7を固定する。これで軟性管102が固定されるので、術者は軟性管102の保持を自ら行わずに、一方の手で挿入部103の微細な操作を行うと共に、他方の手で操作部104を操作し、施術に集中することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 保持装置
2 固定パイプ
3 接続部材
4 レール支持部材
5 リニアガイドレール
6 移動ブロック
61 操作ノブ
7 自在関節アーム
71 第1の取り付け部
72 第2の取り付け部
73 第1アーム
74 第2アーム
75 第1自在関節
76 枢支関節
77 第2自在関節
78 制御機構(操作ノブ)
8 クランプ部材
81 連結軸部材
81a 円柱状接続部
81b スリット
82 フック部材
82a 枢ピン
82b ばね
82c ラッチ部
82d 斜面
83 クランプベース
83a 嵌合凹部
83b 係合部
83c 摺接部
84 ねじ棒
84a ナット
84b ばね
85 クランプ片
85a 貫通孔
9 クランプ金具
10 カバー
101 内視鏡
102 軟性管
103 挿入部
104 操作部
【要約】
【課題】内視鏡の位置決めに当たって、保持部の移動操作範囲が大きく、構造簡易で安価に得られる内視鏡保持装置を提供する。
【解決手段】内視鏡保持装置1は、挿入部103を術部に対して位置決めするために軟性管102を手術台B上の所定位置に保持する。手術台Bに着脱自在に垂直に取付けられる固定パイプ2と、これに軸回り位置及び上下位置を調節固定自在に取り付けられる接続部材3と、これに枢支され手術台Bに対する起伏角度を調節固定自在に設けられるレール支持部材4と、これに沿って移動固定自在の移動ブロック6と、これに取り付けられる自在多関節アーム7と、これに取り付けられ、軟性管102を把持解放自在のクランプ部材8とを具備する。
【選択図】
図1