(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機、膨張機構、蒸発器及び凝縮器を備え、少なくとも冷凍機油を含む冷媒が循環する冷凍サイクルのガス流路に接続され、液状態の冷媒と冷凍機油との混合物または液状態の冷凍機油を貯留する、凹状の貯留部と、
前記貯留部に収容され、前記液状態の冷媒と冷凍機油との混合物または前記液状態の冷凍機油に含まれる、液体状の異物を捕捉する、固体状の捕捉材と、
前記圧縮機の流入側に設けられたアキュムレータと、
前記圧縮機の吐出側と接続され、かつ前記アキュムレータへの流入経路に接続されたオイルセパレータと、
を備え、
前記貯留部は、前記アキュムレータ内に設けられ、
前記冷媒は、トリフルオロヨードメタンを含む、空気調和機。
【背景技術】
【0002】
近年空気調和機の低GWP化の中でトリフルオロヨードメタン(CF
3I)が注目されている。トリフルオロヨードメタンを含む冷媒は低GWP且つ、不燃性という特徴を有する。このため、R32やR125とトリフルオロヨードメタンを一定割合混合した冷媒においては、多室型空気調和機などによく使用されるR410Aと圧力が近く、かつ不燃でGWPが低いため環境適合性の高い空気調和機を提供できる可能性がある。すなわち、.低GWP化を図りつつ、据え付けの煩雑さを回避可能で環境適合性の高い空気調和機を提供することができる。
【0003】
一方で、トリフルオロヨードメタンを含む冷媒は、圧縮機などの高温環境において冷媒自身が劣化しやすく、従来の冷媒R32やR410Aと比較し安定性が悪い。そのためヨウ化水素やトリフルオロメタンなどの劣化物が生成する。劣化生成物が冷媒や冷凍機油に混ざり、冷凍サイクル内を循環することで、空気調和機の各要素を接続する銅配管などと反応しヨウ化銅を生成しその粉体が冷凍サイクル中のキャピラリなど細径管を閉塞し空気調和機の性能低下や制御性悪化を招く恐れがある。また、ヨウ化水素などの酸性物質の発生により、摺動部潤滑面の腐食を招く。その結果圧縮機の摺動部潤滑を阻害し、圧縮機の電気入力が増加し、最悪の場合、圧縮機の故障に至る。このため、使用者の快適性低下や電気入力増加による経済的負担の増加が問題となる。そこで、劣化生成した物質を冷凍機油中及び冷媒中から効率よく除去することが望まれる。
【0004】
劣化物を除去する技術としては、特許文献1には、利用側熱交換器とアキュムレータの間に異物捕捉手段を設け、異物捕捉手段のフィルタにより、異物を捕捉する技術が開示されている。また、特許文献2、3には、冷媒配管の経路に接続された容器内に沈殿させることで固形異物を回収する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る空気調和機1の冷媒回路の概略図である。空気調和機1は、室外機10と、2台の室内機20a,20bとを備えている。室外機10と室内機20a,20bは、液配管31及びガス配管32で接続されている。なお、一台の室内機に対し複数台の室外機を接続しても良いし、一台の室外機に対し複数台の室内機を接続しても良い。
図1に示す実線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。また、
図2に示す破線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。
【0012】
図1に示すように、室外機10は、四方弁11、アキュムレータ12、圧縮機13、オイルセパレータ14、室外熱交換器15及び室外膨張弁16を備えている。室内機20a,20bは、それぞれ室内熱交換器21a,21b及び室内膨張弁22a,22bを備えている。
【0013】
四方弁11は、空気調和機1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える。四方弁11の切り替えにより、冷房運転時には、実線矢印で示すように、アキュムレータ12、圧縮機13、オイルセパレータ14、室外熱交換器15(凝縮器)、室外膨張弁16、室内膨張弁22a,22b及び室内熱交換器21a,21b(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。また、四方弁11の切り替えにより、暖房運転時には、破線矢印で示すように、アキュムレータ12、圧縮機13、オイルセパレータ14、室内熱交換器21a,21a(凝縮器)、室内膨張弁22a,22b、室外膨張弁16、及び室外熱交換器15(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。
【0014】
アキュムレータ12は、蒸発器から出た冷媒を所定の冷媒乾き度に調整し圧縮機吸入配管へ排出する容器である。空気調和機運転時に過度な液冷媒の流入があっても圧縮に対し所定の乾き度の冷媒を供給し、圧縮機の液圧縮を回避し圧縮機信頼性を確保する。また、オイルセパレータ14は、圧縮機13からガス冷媒と共に吐出された冷凍機油とガス冷媒を分離する。これは蒸発器や凝縮器、過冷却熱交換器(図示せず)の伝熱において冷凍機油が伝熱面に存在することで熱伝達率の低下を回避し各熱交換器の効率低下を回避させる効果がある。実施形態では、オイルセパレータ14の流出側は油戻し管33を介してアキュムレータ12に接続され、冷凍機油は、アキュムレータ12を介して圧縮機13に戻される構成としているが、油戻し管の位置はこの位置に限らず、アキュムレータと圧縮機間に接続してもかまわない。
【0015】
本実施形態の空気調和機1では、冷媒としてトリフルオロヨードメタン(CF
3I)を含む冷媒を用いる。トリフルオロヨードメタンは、冷媒分子の安定性が低く高温環境で劣化しやすい。トリフルオロヨードメタンの劣化生成物としては、ヨウ化水素、トリフルオロメタンが例示される。これらの劣化生成物は、冷凍機油との組み合わせにより、その一部または全部が冷凍機油に溶け込む。本実施形態の空気調和機1は、このように冷凍機油に溶け込んだ、劣化生成物を効率的に除去する。
【0016】
図2は、アキュムレータ12の断面図である。アキュムレータ12の容器40の上部には、冷媒の流入管41と流出管42とが設けられている。流入管41は四方弁11と接続する配管44に接続される。流出管42の出口側は、圧縮機13の吸入側の配管35に接続される。
【0017】
アキュムレータ12の下部には、液状態の冷凍機油、又は液状態の冷媒と冷凍機油との混合物として、冷凍機油Aが貯留しており、流出管42に設けられた開口部43から、冷凍機油Aが吸い上げられて、圧縮機13に送られる。流出管42部にはさらにオーバーフロー防止及び乾き度調整のための開口部が設けられてもよい。なお、開口部の数や穴径及び位置は、設計された乾き度によるため制限はない。ただし、捕捉剤の効果をより発揮させるためには、アキュムレータ内に冷凍機油ないし冷媒が溶けた冷媒と冷凍機油の混合物が空気調和機の定常運転状態には一定量貯留されるように、開口部の数や穴径及び位置と、返油回路上に設置されるキャピラリ(図示せず)の長さおよび内径が設計されていることが望ましい。流出管42の下側には、フィルタ状の仕切り板45が設けられ、仕切り板45の下には、異物捕捉材46が収容されている。異物捕捉材46は、異物を吸着する吸着剤である。以上の構成により、貯留部としてのアキュムレータ12に貯留された冷凍機油Aに溶け込んだ異物は、貯留部において異物捕捉材46と接触し、異物捕捉材46に吸着される。
【0018】
空気調和機の運転中には圧縮機周波数により冷媒循環量や圧縮機から吐き出される冷凍機油量も変動するため、過渡的にアキュムレータの液面高さが低下する、あるいは、流出管に設けた最上部の開口部まで液面高さが上昇することがある。そのため、有効に冷媒劣化生成物を除去するには、少なくとも最上部の開口部より下方に異物捕捉剤を設けることが望ましい。さらに液面低下が発生した場合にも確実にアキュムレータ内部に存在する冷凍機油と冷媒からなる混合物から冷媒劣化生成物を除去するためには、アキュムレータの下方、より望ましくは流出管の乾き度調整用の最下部の開口部より下方に異物捕捉剤を設けることが望ましい。
【0019】
異物捕捉材46としては、0.5mm−3mm程度の径の粒状のものを用いる。これにより、表面積を大きくし、異物との接触回数が増え、捕捉機会を増加させることができる。なお、粒径については、反応効率と、充填効率の観点から定めるのが好ましい。さらに、異物捕捉材46の上部は仕切り板45で閉じられているので、異物捕捉材46が開口部43から流出するのを防ぐことができる。
【0020】
また、粒状の異物捕捉材46を用いた場合には、粒同士のこすれ合いにより、摩耗粉が発生する可能性がある。摩耗紛が圧縮機13に流れ込むと、圧縮機13の故障や冷凍サイクル中にあるキャピラリなどの細径管の閉塞に繋がる。そこで、より好ましくは、異物捕捉材46は、100メッシュ程度の開口部の径の小さい金属メッシュ状を用いることで冷凍サイクル中に摩耗粉が流出、循環するのを防ぐことが望ましい。より具体的には前述の金属メッシュでできた袋に収めた上で、仕切り板45の下部に収容するものとする。
【0021】
さらにメッシュ状の袋をアキュムレータ12内に固定する場合には、冷凍機油と異物捕捉材との接触確率を下げないようにするため、仕切り板は開口部を設けることが必要である。より具体的にはアートメタルなどの開口部の大きい金属材料にて、異物捕捉剤を収容した金属メッシュでできた袋を固定するものとする。これにより、強度を維持しつつ、仕切り板内外の冷凍機油と冷媒の混合物の流動を確保でき、冷媒劣化生成物を効率的に捕捉、除去することができる。さらには、冷凍サイクル中への冷媒劣化生成物の流出及び循環を防ぎ、圧縮機や配管の腐食や摺動面の障害を回避し、低GWP冷媒を使用した空気調和機1の信頼性が確保される。
【0022】
トリフルオロヨードメタンは高温環境で劣化しやすい。冷凍機油に溶け込んだ異物を除去するには冷凍サイクル中で冷凍機油が多く循環、または貯留される場所に異物捕捉材を収容させることが望ましい。
【0023】
例えば、冷房運転時、冷房発生能力が28kW時の冷媒の総循環量Grは640kg/hである。圧縮機から吐き出される冷凍機油の比率が総循環量の4wt%、オイルセパレータ14の分離効率ηoilを95%とするとオイルセパレータ14より凝縮器へと流れる冷凍サイクル中を循環する冷凍機油Goilは1.28kg/hである。一方で、オイルセパレータ14よりアキュムレータ12への油戻し管33を流れる冷凍機油量は24.32kg/hとなる。このように冷凍サイクル中の主管部を循環する冷凍機油量よりもオイルセパレータからアキュムレータへ戻される冷凍機油量のほうが多いような冷凍サイクル運転状態とすることで、油上がりによる各熱交換器の性能低下を回避し、かつ冷媒劣化生成物が発生した場合でも効率的に劣化生成物を捕捉することが可能である。
【0024】
さらに、圧縮機13の吐出側の配管36では圧縮された高温高圧の冷媒が流れ高温になるため、劣化生成物が発生しやすい。そこで、本実施形態においては、油戻し管33から冷凍機油が流れ込むアキュムレータ12内部に異物捕捉材46を収容させ、異物を吸着させることとした。これにより、劣化生成物の発生後、速やかに吸着させることができる。
【0025】
特にアキュムレータ12内は、冷凍機油に冷媒が溶解し、冷媒と冷凍機油の混合物になっている。このため、冷凍機油中及び冷媒中に存在する冷媒劣化物どちらも捕捉することができる。このように、アキュムレータ12において、効果的に異物を捕捉することができる。さらに、貯留部としてのアキュムレータ12は、冷媒の主流部よりも重力方向下側に設けられている。すなわち、貯留される冷凍機油と冷媒の混合液の液面は、冷媒の主流部よりも下側に位置する。このため、従来技術のように、冷媒の主流となる流路上にフィルタが設けられたことに起因した圧力損失の増加の問題も解消することができる。したがって、空気調和機1の運転効率を低下させることなく、冷凍機油中に溶け込んだ異物を除去することができる。
【0026】
また、アキュムレータ12の下部に異物捕捉材46と仕切り板47とを設ければよく、流出管42等、冷媒配管の長さを変える必要がない。このため、乾き度設計を改めて行う必要がなく、容易に異物を捕捉することができる。
【0027】
実施形態の第1の変形例について説明する。捕捉効率の観点からは、異物捕捉材と冷凍機油の接触回数を増加させることが望ましい。このことから、第1の変形例としては、アキュムレータ12に替えて、圧縮機を冷凍機油の貯留部として利用し、異物捕捉材を収容させてもよい。
【0028】
図3は、第1の変形例に係る圧縮機50の断面図である。圧縮機50は、スクロール圧縮機である。圧縮機50の上部に吸入管51が設けられ、側面には吐出管52が設けられている。圧縮機50の下側には、貯留部53が設けられている。さらに、貯留部53には、冷凍機油Aが貯留されている。さらに、貯留部53には、異物捕捉材46が収容されている。冷凍機油Aは、クランクシャフト54内の給油路55にてクランクシャフト54の上部に送られる。このように、圧縮機50内に貯留部がある構成の場合には、圧縮機50内の貯留部に異物捕捉材46を収容し、圧縮機50内で異物を捕捉してもよい。さらに、トリフルオロヨードメタンの分解によって生成されたヨウ化水素を効果的に捕捉可能な異物捕捉材は耐熱温度が低い場合がある。そのため、圧縮機50の内部の圧縮室近傍に捕捉材料を設けるのではなく圧縮室から離れた圧縮機チャンバー内部の下方に設け、圧縮室から距離を置くことによりなるべく高温環境を避け、異物捕捉剤を設けることが望ましい。
【0029】
第2の変形例としては、配管34、35、36及び油戻し管33の冷凍機油が巡回する回路内に貯留部を設けてもよい。ここで、貯留部の構成は、
図2を参照しつつ説明したアキュムレータ12の構成と同様である。さらに好ましくは、配管34のうち油戻し管33と合流する位置よりもアキュムレータ12側の管又は配管35に貯留部を設けるものとする。
図4に太線で示す配管35,36及び油戻し管33の冷媒回路は、上述の通り、流れる冷凍機油量が他の配管に比べて多い。さらに、トリフルオロヨードメタンの分解によって生成されたヨウ化水素を効果的に捕捉可能な異物捕捉材は耐熱温度が低い場合がある。したがって、耐熱温度の低い材料を異物捕捉材46として用いる場合には、冷凍サイクルにおいて、高温にならない流路に貯留部を設けるのが好ましい。異物捕捉材46の耐熱温度以上になると、異物捕捉材46の劣化を招き、劣化生成物の捕捉効果が減少するためである。もしくは高温環境の場合異物捕捉剤自身が触媒となり、冷凍機油に添加される酸捕捉剤などの安定化剤を無効化させてしまうことを回避するためである。
図5に太線で示す配管31、34、35は、比較的低温の冷媒が流れる配管である。
【0030】
以上より、冷凍機油の流量が多く、かつ異物捕捉材46の耐熱温度よりも低い配管に、凹み状の貯留部を設けるのが好ましく、
図4において太線で示す部分と、
図5において太線で示す部分と、の重なる部分、すなわち、配管34のうち、油戻し管33と合流する位置よりもアキュムレータ12側の管及び配管35のいずれかの位置に貯留部を設けるのが好ましい。これにより、冷凍機油及び冷媒のいずれに混合された異物も効率的に捕捉、無害化できる。したがって、長期にわたり空気調和機の信頼性を確保できる。
【0031】
さらに、他の例としては、液冷媒中の冷媒劣化生成物に重点的に捕捉するために、液配管31に異物捕捉材46を設置する方法を併用してもよい。
【0032】
また、第3の変形例としては、上記構成に加えて、配管34のうち、油戻し管33と合流する位置よりもアキュムレータ12側の管及び配管35の管の内壁に、異物捕捉材を塗布してもよい。これにより、さらに効果的に異物と異物捕捉材との接触機会を増加させ、吸着させることができる。また、この場合も、冷媒の流れに影響を与えないため、圧縮損失が大きくなるのを防ぐことができる。
【0033】
第4の変形例としては、冷媒として、トリフルオロヨードメタンと他の冷媒とを含む混合冷媒を用いてもよい。他の冷媒としては、CO
2、炭化水素、エーテル、フルオロエーテル、フルオロアルケン、HFC、HFO、HClFO、HClFO、およびHBrFOなどが例示される。なお、「HFC」は、ハイドロフルオロカーボンを示す。「HFO」は、炭素原子、フッ素原子、および水素原子からなるハイドロフルオロオレフィンであり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。「HClFO」は、炭素、塩素、フッ素、および水素原子からなり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。「HBrFO」は、炭素、臭素、フッ素、および水素原子からなり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。
【0034】
HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、トリフルオロエタン(HFC143a)、ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)が例示される。
【0035】
フルオロアルケンとしては、フルオロエテン、フルオロプロペン、フルオロブテン、クロロフルオロエテン、クロロフルオロプロペン、およびクロロフルオロブテンが例示される。フルオロプロペンとしては、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1243zf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、およびHFO1225が例示される。フルオロブテンとしては、C
4H
4F
4、C
4H
3F
5(HFO1345)、およびC
4H
2F
6(HFO1336)が例示される。クロロフルオロエテンとしては、C
2F
3Cl(CTFE)が例示される。クロロフルオロプロペンとしては、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO1233xf)、および1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO1233zd)が例示される。
【0036】
地球温暖化係数(Global Warming Potential:GWP)、蒸気圧、および難燃化パラメータを調整するため、冷媒として、トリフルオロヨードメタン、ジフルオロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC125)、およびヘキサフルオロプロペン(FO1216)の1種以上を用いることが好ましい。また、機器の能力に合う蒸気圧を得るために、冷媒にHFO1234yf、HFO1234ze、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、HFO1123などを含め、能力に関係する蒸気圧や効率に影響する温度勾配度合いを混合濃度により調整することが好ましい。
【0037】
混合冷媒中のトリフルオロヨードメタンの配合量は、質量ベースで、10%以上100%以下、好ましくは20%以上80%以下、より好ましくは30%以上50%以下である。
【0038】
冷媒のGWPは、750以下であり、好ましくは500以下であり、より好ましくは150以下であり、更に好ましくは100以下であり、特に好ましくは75以下である。GWPは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)の値が用いられる。
【0039】
冷媒の25℃の蒸気圧は、好ましくは1.4MPaから1.8MPaの範囲である。また式(1)で示される冷媒の難燃化パラメーターは、好ましくは0.46以下である。
Fmix=ΣiFixi ・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
なお、Fmixは混合冷媒の難燃化パラメーター、Fiは各冷媒成分の難燃化パラメーター、xiは各冷媒成分のモル分率を示す。
【0040】
また、第5の変形例としては、冷凍機油としては、40℃における動粘度が30〜100mm
2/sのポリオールエステル油又はポリビニルエーテル油が好ましい。動粘度は、ISO(International Organization for Standardization,国際標準化機構)3104、ASTM(American Society for Testing and Materials,米国材料試験協会)D445、D7042等の規格に基づいて測定される。冷媒と冷凍機油との低温側臨界溶解温度は、+10℃以下であることが好ましい。この範囲にすることでアキュムレータ内部での二層分離を回避し、圧縮機への油戻し量不足による圧縮機潤滑不良などの不具合を回避することができる。また、冷凍機油には酸化防止剤や酸捕捉剤、極圧剤などが適時選択され添加されていてもかまわない。
【0041】
上記特性を有する冷凍機油としては、化学式(1)、(2)で表わされるポリオールエステル油、化学式(3)で表されるポリビニルエーテル油が例示される。式(1)、(2)中、R
1〜R
10は、炭素数4〜9のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なってもよい。また、式(3)中、OR
11は、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基又はブチルオキシ基であり、nは、5〜15である。
【化1】
【0042】
なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【解決手段】圧縮機、膨張機構、蒸発器及び凝縮器を備え、少なくとも冷凍機油を含む冷媒が循環する冷凍サイクルのガス流路に接続され、液状態の冷媒と冷凍機油との混合物または液状態の冷凍機油 を貯留する、凹状の貯留部と、前記貯留部に収容され、前記液状態の冷媒と冷凍機油との混合物または前記液状態の冷凍機油に含まれる異物を捕捉する捕捉材とを備える。