(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906103
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】低線量率低レベルの放射線が照射されたマウス胸腺リンパ腫細胞から発掘されたテロメア調節遺伝子群、及びその検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20210708BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20210708BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20210708BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20210708BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20210708BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20210708BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z
C12Q1/6851 Z
G01N33/50 Z
G01N33/53 M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-515003(P2020-515003)
(86)(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公表番号】特表2020-533007(P2020-533007A)
(43)【公表日】2020年11月19日
(86)【国際出願番号】KR2017011839
(87)【国際公開番号】WO2019066124
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2020年3月12日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0124184
(32)【優先日】2017年9月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518442000
【氏名又は名称】コリア ハイドロ アンド ニュークリアー パワー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒ ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,フン
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ユン−ミ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ピョルニム
(72)【発明者】
【氏名】シム,ヒ ヨン
【審査官】
関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】
American Journal of Pathology,2001年,Vol.159, No.2,p.711-719
【文献】
Frontiers in Oncology,2015年,Vol.5,Article 257,doi: 10.3389/fonc.2015.00257
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/06
C12N 15/09
C12Q 1/6844
C12Q 1/6851
C12Q 1/6876
G01N 33/50
G01N 33/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)リンパ腫細胞それぞれに23.22mGy/時間の低線量率の放射線と800mGy/分の高線量率の放射線を照射するステップと、
(2)前記(1)ステップで照射された細胞それぞれにおけるテロメア調節遺伝子として6つの遺伝子(TRF2、Tin2、Rap1、Pot1、Rtel1、CTC1)の発現量の変化を観察するステップと、
(3)前記(2)ステップによって前記6つの遺伝子の発現量の変化が観察されたものの中から、低線量率の放射線照射によって発現されるテロメア調節遺伝子を検出するステップと、
(4)前記(3)ステップによって検出された遺伝子を増幅し、発現量を測定するステップとを含む、低線量率の放射線に反応するテロメア調節遺伝子の検出方法。
【請求項2】
前記(1)ステップで、23.22mGy/時間の低線量率の放射線環境で総累積線量が557.28mGyとなるように培養することを特徴とする、請求項1に記載の低線量率の放射線に反応するテロメア調節遺伝子の検出方法。
【請求項3】
前記(4)ステップで、テロメア調節遺伝子はtert、wrap53、dkc1、ctc1、pot1、tpp1、tin2、trf1、trf2、rap1、rtel1及びtelo2遺伝子配列から選択される遺伝子配列を有するプライマーで増幅されることを特徴とする、請求項1に記載の低線量率の放射線に反応するテロメア調節遺伝子の検出方法。
【請求項4】
前記(4)ステップで定量的核酸増幅法と特殊タンパク質検出検査によって発現量を測定することを特徴とする、請求項1に記載の低線量率の放射線に反応するテロメア調節遺伝子の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低線量率低レベルの放射線に反応するテロメア調節遺伝子群の検出方法に係り、さらに詳細には、マウス胸腺リンパ腫細胞に低線量低レベルの放射線を照射した後、テロメア調節遺伝子に対して発現量を計測し、共通または単独で発現されるテロメア調節遺伝子を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、社会的問題となっている放射線の人体影響に関する科学的メカニズムを解析するために、オブジェクトだけでなく、細胞と分子レベルでの科学的根拠を設けようと努力しているが、100mSv以下の低線量放射線領域では現在まで再現性のある事実メカニズムを立証することができず、議論の対象となっている。
【0003】
放射線は、造血組織および腸管組織に損傷を与えて白血球減少症(leukopenia)を誘発し、腸粘膜から正常細菌叢(normal flora)の浸透性を増加させる。よって、特異または非特異的な免疫防御メカニズムが破損して感染性疾患に対する抵抗性が減少するなど、がんなどの病気との関連が多い因子として知られている。このような放射線による影響は、血液組織障壁(blood tissue barrier)の損傷、食細胞(phagocyte)数の減少、並びに摂食された生物を殺す能力及び血清補体価の減少および免疫反応の障害などとして示される。
【0004】
2乃至7Gyの放射線に被曝されると、リンパ球の数は著しく減少して、数時間以内に最小数になってから、時間経過に伴って徐々に増加するが、放射線被曝3〜4週後になってこそ正常レベルに回復できる。一方、0.25乃至1Gy程度の低線量放射線を照射すると、放射線を照射していない動物に比べて抗体形成が遅延し、一時的に非常に高い抗体力価(antibody peak titer)が観察される。しかし、0.25Gy以下の低線量の範囲では起こり得るメカニズムが明確ではないため、ホメシス理論と対立して現在まで議論の余地として残っている[Stebbing, 1982]。
【0005】
実際、低線量放射線は、個体の成長を促進させ、生体の免疫機能亢進及び寿命を延ばすという報告がある[Luckey TD et al., 1982]。ヒトにおいても、このような放射線ホメシスに対する研究報告があり、Bloomなど(1987)は、0.5Gy以下では人体の細胞性免疫が亢進すると報告し、NambiとSoman(1987)は、年間0.03uSv(0.3mrem)では、がんの発生率を減少させると報告した。しかし、放射線曝露に対する人体影響研究の際に、100mSv以下の低線量放射線の影響が人体の影響で表現されるまでに長い時間がかかり、これを検出するには多くの限界がある。結局、これに関連する研究は、現象学的効果を観察するレベルに過ぎず、具体的な影響メカニズムが解明されていないため、依然として議論の余地を残しておいている。
【0006】
テロメア(telomere)は、ギリシャ語の「テロス(端)」と「メロス(部分)」の合成語であって、6つのヌクレオチド(AATCCC、TTAGGGなど)が数千回繰り返し配列された染色体の末端をいう。すなわち、染色体末端の塩基配列部位をいう。この部分では、細胞分裂が進行するほど長さが益々短くなり、後では結び目だけ残され、細胞複製が止まって死んでしまうことが明らかにされることにより、これが老化及び寿命を決定する原因として推定されている。ところが、正常細胞で分裂することによりテロメアが短くなるのとは逆に、がん細胞ではテロメアの長さがもはや短くならずにそのまま維持されることが、がんの維持と発達において重要な役割を果たすというのが確認された。そのため、テロメアの長さを調節することが、がん治療の重要なターゲットとして考えられるにもかかわらず、低線量率低レベルの放射線によってテロメアの長さがどのように調節されるかは知られていない。
【0007】
本発明では、テロメアの長さ調節に関与すると知られている遺伝子がRNAとタンパク質レベルで低線量率低レベルの放射線によってどのように反応するかを確認した。本発明において、低線量率低レベルの放射線に敏感に反応すると発掘された遺伝子は、既にテロメアの長さ調節に重要な役割を果たすと知られている遺伝子群である。また、本発明で発掘された遺伝子は、従来の低線量率低レベルの放射線の照射に敏感な遺伝子と知られておらず、特にRNAとタンパク質レベルで低線量率低レベルの放射線によって異なる反応を示す遺伝子を発掘することにより、低線量率低レベルの放射線の照射がRNA発現調節によるタンパク質発現調節ではなく、RNA発現とは独立したタンパク質発現調節が可能であることを示した。結局、本発明者らは、0.25Gy以下領域の低線量低レベル放射線の刺激によって細胞のテロメア調節遺伝子群が異なる反応を示すようにすることを、測定方法を開発して確認することができ、RNAとタンパク質レベルで確認することにより、発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、放射線によるがん抑制の研究の際に、一般にマウスを用いた研究結果は、ヒト又は動物に直ちに適用することができるが、分子的レベルで解釈するのは難しいという限界があるので、このような欠点を補完するために、マウス胸腺リンパ腫細胞を用いて、分子的にどの変化が起こるかを確認することにより、本発明を完成した。
【0009】
1)マウス胸腺リンパ腫細胞に低線量率低レベルの放射線、高線量率低レベルの放射線及び高レベルの放射線を照射した後、テロメア調節遺伝子の変化を観察し、2)その中で低線量率低レベルの放射線の照射に敏感に反応するテロメア調節遺伝子を中心に検証した後、その機能を分析し、3)テロメアの長さ調節をターゲットとするがんの治療に低線量率低レベルの放射線の効用性を確認しようとした。
【0010】
結論として、本発明の目的は、(1)マウス胸腺リンパ腫細胞それぞれに低線量率低レベルの放射線、高線量率低レベルの放射線および高レベルの放射線を照射するステップと、(2)照射された細胞それぞれにおける、従来のテロメア調節遺伝子として知られている遺伝子の変化を観察するステップと、(3)テロメア調節遺伝子の変化が観察されたものの中から、低線量率低レベルの放射線の照射によって単独で発現されるテロメア調節遺伝子を検出するステップと、(4)検出された遺伝子を増幅し、発現量を測定するステップとを含む、低線量率低レベルの放射線に反応するテロメア調節遺伝子群の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題を達成するための本発明は、(1)リンパ腫細胞それぞれに低線量率低レベルの放射線と高線量率低レベルの放射線を照射するステップと、(2)前記(1)ステップで照射された細胞それぞれにおいて、従来のテロメア調節遺伝子として知られている遺伝子の変化を観察するステップと、(3)前記(2)ステップによってテロメア調節遺伝子の変化が観察されたものの中から、低線量率低レベルの放射線の照射によって単独で発現されるテロメア調節遺伝子を検出するステップと、(4)前記(3)ステップによって検出された遺伝子を増幅し、発現量を測定するステップとを含む、低線量率低レベルの放射線に反応するテロメア調節遺伝子の検出方法を提供する。
【0012】
前記(1)ステップで、低線量率低レベルの放射線量が23.22mGy/時間であり得る。
【0013】
前記(1)ステップで、23.22mGy/時間の低線量率低レベルの放射線環境で総累積線量が557.28mGyとなるように培養することができる。
【0014】
前記(4)ステップで、テロメア関連遺伝子はtert、wrap53、dkc1、ctc1、pot1、tpp1、tin2、trf1、trf2、rap1、rtel1及びtelo2遺伝子配列から選択されるプライマーで増幅できる。
【0015】
前記(4)ステップで、定量的核酸増幅法と特殊タンパク質検出検査によって発現量を測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
上述したような本発明によれば、低線量率低レベルの放射線に反応するテロメア調節遺伝子群の検出方法を提供することにより、産業及び医療従事者の放射線被ばくと発がんとの相関性を評価することができる低レベル放射線テロメア調節遺伝子として活用することができ、がん患者のがんの進行及び治療程度を評価することができる低レベル放射線テロメア調節遺伝子として活用することができるだけでなく、放射線とがん発生との因果関係を評価することができる低レベルテロメア調節遺伝子の回復指標として活用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実験例2の線量率と線量によるテロメア長さ調節がん抑制指標遺伝子の発現変化に対して、核酸増幅法を用いて相対的な発現量を確認したグラフである。
【
図2】実験例3の線量率と線量によるがん抑制関連テロメア調節タンパク質の変化分析結果を示すグラフである。6つの遺伝子(TRF2、Tin2、Rap1、Pot1、Rtel1、CTC1)のタンパク質発現量が変化したことが分かる。
【
図3】マウス胸腺リンパ腫細胞で低線量率低レベルの放射線の照射によるテロメア調節遺伝子の変化を図式化した図である。TRF2、Tin2、Rap1、Pot1は遺伝子の発現が増加し、Rtel1、CTC1は遺伝子の発現が減少し、これによりテロメアの長さが減少し、発がん可能性も減少する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
ある観点から、本発明は、(1)リンパ腫細胞それぞれに低線量率低レベルの放射線と高線量率低レベルの放射線を照射するステップと、(2)前記(1)ステップで照射された細胞それぞれにおける、従来のテロメア調節遺伝子として知られている遺伝子の変化を観察するステップと、(3)前記(2)ステップによってテロメア調節遺伝子の変化が観察されたものの中から、低線量率低レベルの放射線の照射によって単独で発現されるテロメア調節遺伝子を検出するステップと、(4)前記(3)ステップによって検出された遺伝子を増幅し、発現量を測定するステップとを含む、低線量率低レベルの放射線に反応するテロメア調節遺伝子の検出方法を提供する。ここで、リンパ腫細胞は、マウス胸腺リンパ腫細胞(EL4)であり得る。また、(1)ステップで、比較対象として、高レベルの放射線を照射する細胞を追加することができる。
【0019】
前記(1)ステップで、低線量率低レベルの放射線量が23.22mGy/時間であることを特徴とする。
【0020】
前記(1)ステップで、23.22mGy/時間の低線量率低レベルの放射線環境で総累積線量が557.28mGyになることを特徴とする。
【0021】
前記(4)ステップで、テロメア関連遺伝子は、tert、wrap53、dkc1、ctc1、pot1、tpp1、tin2、trf1、trf2、rap1、rtel1及びtelo2遺伝子配列から選択されるプライマーで増幅されることを特徴とする。
前記(4)ステップで、定量的核酸増幅法と特殊タンパク質検出検査によって発現量を測定することを特徴とする。
【0022】
マウス胸腺リンパ腫細胞で低線量率低レベルの放射線の照射によるテロメア調節遺伝子の変化をみると、TRF2、Tin2、Rap1、Pot1は遺伝子の発現が増加し、Rtel1、CTC1は遺伝子の発現が減少して、6つの遺伝子が変化したことを確認した。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例はひたすら本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解釈されないことは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0023】
本発明で発掘した低線量率低レベルの放射線によって敏感に反応する6つの遺伝子(TRF2、Tin2、Rap1、Pot1、Rtel1、CTC1)は、以前に発明されてはいないが、テロメアの長さ調節に関連する特性に対する発明報告はあった。TRF2は、テロメラーゼとは独立してテロメアの迅速な分解を誘導すると知られている(Munoa et al., 2006)。Tin2は、テロメラーゼによるテロメアの延長を抑制すると知られている(Kim et al., 1999)。Rap1が不足すると、テロメアの長さが延長されることからみて、Rap1は、テロメアの長さを抑える機能を持つと知られている(O’Connor et al., 2004)。Pot1は、テロメアの長さ延長を抑制することが報告された(Kendellen et al.,2009)。Rtel1は、テロメアの長さを維持するのに重要な役割を果たすと知られている(Uringa et al., 2010)。CTC1は、ヒトメラノーマ細胞でテロメアの長さが短くなること、及びアポトーシスを抑制することが知られている(Luo et al.,2014)。
【0024】
がん抑制のためにテロメアの長さを調節することが重要な治療方法になることができるというのは知られているが、実際にどのようにがん細胞でテロメアの長さ維持を抑制することができるかについては、依然として多くの研究が必要な状態である。本発明では、低線量率低レベルの放射線の照射によってがん細胞においてテロメアの長さ調節遺伝子の発現がどのように変化し、これによりがんの抑制がなされるかを分析しようとした。
【0025】
(実験例1.マウス胸腺リンパ腫細胞の準備と放射線の照射)
マウス胸腺リンパ腫細胞をATCCから購入し、37度、5%CO
2細胞培養室で安定化させた。マウス胸腺リンパ腫細胞に累積線量557.28mGyの低レベル放射線を照射した。これをさらに2つのグループに分け、低線量率低レベルの放射線の照射と高線量率低レベルの放射線の照射に分離した。低レベル放射線の効果と比較するために、2Gyの高レベル放射線を照射した細胞も用意した。
【0026】
(実験例2.テロメア調節遺伝子の発現量の計測とプライマー)
マウス胸腺リンパ腫細胞で低線量率低レベルの放射線に敏感に反応するテロメア調節遺伝子を発掘し、機能を解析するために必要な発現量の計測は、定量的核酸増幅法と特殊タンパク質検出検査を用いて分析した。
【0027】
一方、低線量率低レベル(23.22mGy/時間)の放射線が照射されたマウス胸腺リンパ腫細胞で敏感に反応するテロメア調節遺伝子に対して発現量を計測するために使用したプライマーの塩基配列は、表1に示した。
【0029】
低線量率低レベル(23.22mGy/時間)の放射線が照射されたマウス胸腺リンパ腫細胞でテロメアの長さ調節に関連していると知られている表1の12つの遺伝子に対して発現量を計測するために、核酸増幅法を用いた。その結果、
図1に示すように、低線量率低レベルの放射線が照射されたマウス胸腺リンパ腫細胞でtert、wrap53、dkc1、ctc1及びtrf1まで5つの遺伝子が特異的に放射線に敏感に反応して発現量が増加または減少した。
【0030】
(実験例3.低線量率低レベルの放射線が照射されたマウス胸腺リンパ腫細胞のタンパク質分析)
低線量率低レベル(23.22mGy/時間)の放射線が照射されたタンパク質と、対照群として高線量率低レベル(800mGy/分、総線量:557.28mGy)の放射線が照射されたタンパク質を分析した。その結果、
図2に示すように、低線量率低レベルの放射線が照射されたマウス胸腺リンパ腫細胞においてTRF2、Tin2、Rap1、Pot1、Rtel1及びCTC1タンパク質が特異的に敏感に反応して発現量が増加または減少したことを確認した。
【0031】
上述した結果をみると、最終的に低線量率低レベルの放射線の照射によって敏感に反応するテロメア長さ調節関連遺伝子として、6つの遺伝子(TRF2、Tin2、Rap1、Pot1、Rtel1、CTC1)を発掘して、RNAとタンパク質レベルで変化を確認した。これを
図3のように要約することができるが、マウス胸腺リンパ腫細胞で低線量率低レベルの放射線の照射によるテロメア調節遺伝子の変化を図式化した図である。TRF2、Tin2、Rap1、Pot1は遺伝子の発現が増加し、Rtel1、CTC1は遺伝子の発現が減少し、これによりテロメアの長さが減少し、発がん可能性も減少する。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したので、当業分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は、単に好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が限定されないことは明白である。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求の範囲とそれらの等価物によって定義される。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]