特許第6906114号(P6906114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906114靴底用部材、靴、及び、靴底用部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906114
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】靴底用部材、靴、及び、靴底用部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/04 20060101AFI20210708BHJP
   B29D 35/12 20100101ALI20210708BHJP
【FI】
   A43B13/04 A
   B29D35/12
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-557041(P2020-557041)
(86)(22)【出願日】2018年11月19日
(86)【国際出願番号】JP2018042658
(87)【国際公開番号】WO2020105089
(87)【国際公開日】20200528
【審査請求日】2021年3月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田邊 竜朗
(72)【発明者】
【氏名】立石 純一郎
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−292667(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/039310(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/179455(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/051473(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105476172(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/04
B29D 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体で構成された靴底用部材であって、
前記発泡体は、透明性を有し、弾性率が0.02MPa以上1.4MPa以下で、発泡倍率が1倍を超え3倍以下であり、且つ、平均気泡径(D50)が0.8mm以上20mm以下である靴底用部材。
【請求項2】
前記発泡体を構成するポリマー組成物は、オレフィン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エステル系エラストマー、及び、スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる1種以上を含有する請求項1記載の靴底用部材。
【請求項3】
前記ポリマー組成物は、さらに可塑剤を含有する請求項2記載の靴底用部材。
【請求項4】
前記発泡体の表面に最も近くに存在する気泡と、発泡体表面との間の気泡膜の最小厚さは、50μm以上2.5mm以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載の靴底用部材。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の靴底用部材を備えた靴。
【請求項6】
上下方向に積層された第1ミッドソールと第2ミッドソールとを含む複数のミッドソールを備えた靴底を有し、
前記靴底用部材が前記第1ミッドソールと前記第2ミッドソールとの間に介挿されて前記靴底の外周面の一部を構成している請求項5記載の靴。
【請求項7】
前記靴底用部材が靴底に配されて、該靴底の外周面の一部を構成しており、該靴底用部材は、前記靴底の中央部から前記外周面に向けて厚さが増大する形状を有している請求項5又は6記載の靴。
【請求項8】
発泡体で構成された靴底用部材の製造方法であって、
発泡剤を含んだ加熱溶融状態のポリマー組成物を成形型の成形空間に射出する射出工程と、
射出された前記ポリマー組成物が収容されている前記成形空間の容積を拡大させるコアバック工程とを含み、
前記コアバック工程が、前記ポリマー組成物を発泡させて前記靴底用部材を構成する発泡体を作製することを含み、且つ、
前記コアバック工程では、前記発泡体として、透明性を有し、弾性率が0.02MPa以上1.4MPa以下で、発泡倍率が1倍を超え3倍以下であり、且つ、平均気泡径(D50)が0.8mm以上20mm以下の発泡体を作製する靴底用部材の製造方法。
【請求項9】
前記射出工程では、前記ポリマー組成物に最も多く含まれているポリマーの周波数10Hzでの複素粘度(η10)と、前記ポリマーの周波数600Hzでの複素粘度(η60)とが下記式(1)、(2)の両方を満たす温度条件で前記ポリマー組成物の前記射出を実施する請求項8記載の靴底用部材の製造方法。

500Pa・s ≦ η10 ≦ 8000Pa・s ・・・(1)
200Pa・s ≦ η600 ≦ 700Pa・s ・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底用部材、靴底用部材の製造方法、及び、このような靴底用部材を備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
各種競技等に使用される靴は、通常、アッパーと靴底とを備えている。
前記靴は、多くの部材から構成されており、例えば、インナーソール、ソックライナー、ミッドソール、アウトソール等の靴底用部材を使って構成されている。
この内、ミッドソールは、従来、軽量性や緩衝性能に優れることが強く要望されていることから樹脂発泡体によって構成されたりしている。
従来の靴では、緩衝パーツと称される靴底用部材を靴底の特定位置に配し、ミッドソールとは異なる緩衝性能を特定部位に発揮させることが行われている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2009−056007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
靴底の緩衝パーツは、通常、弾性変形性と変形からの復元性とが求められ、“ゲル”などと称される柔らかなポリマー組成物で構成されたりしている。
この種のポリマー組成物は、通常、オイルなどの可塑剤の含有量によって硬度が調整されて靴の形成材料として使用される。
近年、緩衝パーツなどの特別な靴底用部材が靴の外側から見える位置に配置されて機能的にも優れていることが外見上からも把握可能な靴が市販されている。
上記のようなポリマー組成物は、透明性も発揮させ易く、靴の美観を向上させるのにも有効である。
【0005】
ところで、この種の靴底用部材は、上記の通り可塑剤の割合などによって緩衝性の調整を行うことが容易であるが、密度については、可塑剤の割合などで調整することが難しい。
即ち、従来の靴底用部材は、靴の軽量化に十分有効であるとは言い難い。
【0006】
この種のポリマー組成物で構成される靴底用部材は、当該ポリマー組成物を発泡状態にさせることで緩衝性を調整しつつ軽量化を行うことが可能である。
しかしながら、その場合は、透明なポリマー組成物で構成させても靴底用部材に透明性が発揮され難くなる。
そのようなことから、従来、透明性を示しつつ軽量で緩衝性に優れた靴底用部材を得ることが困難になっており、優れた履き心地と優れた美観とを兼ね備えた靴を得ることが困難になっている。
そこで、本発明は、このような問題を解決することを課題としている。
即ち、本発明では、透明性を示しつつ軽量で緩衝性に優れた靴底用部材を提供し、美観に優れるとともに履き心地にも優れた靴の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明は、
発泡体で構成された靴底用部材であって、
前記発泡体は、透明性を有し、弾性率が0.02MPa以上1.4MPa以下で、発泡倍率が1倍を超え3倍以下であり、且つ、平均気泡径(D50)が0.8mm以上20mm以下である、靴底用部材を提供する。
【0008】
上記課題を解決すべく本発明は、上記のような靴底用部材を備えた靴を提供する。
【0009】
上記課題を解決すべく本発明は、発泡体で構成された靴底用部材の製造方法であって、
発泡剤を含んだ加熱溶融状態のポリマー組成物を成形型の成形空間に射出する射出工程と、
射出された前記ポリマー組成物が収容されている前記成形空間の容積を拡大させるコアバック工程とを含み、
前記コアバック工程が、前記ポリマー組成物を発泡させて前記靴底用部材を構成する発泡体を作製することを含み、且つ、
前記コアバック工程では、前記発泡体として、透明性を有し、弾性率が0.02MPa以上1.4MPa以下で、発泡倍率が1倍を超え3倍以下であり、且つ、平均気泡径(D50)が0.8mm以上20mm以下の発泡体を作製する、靴底用部材の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】靴底用部材を備えた靴を示した該略斜視図。
図2図1に示されている靴の靴底の分解図。
図3図2に示されている緩衝用部材(第2緩衝部材52)のIII-III線矢視断面図。
図4A】一実施形態の靴底用部材を作製するための成形型の概略正面図。
図4B】一実施形態の靴底用部材を作製するための成形型の概略平面図。
図4C】一実施形態の靴底用部材を作製するための成形型の概略側面図。
図5図4A図4Cに示した成形型を使った靴底用部材の成形方法を示した概略図(図4BにおけるV−V線矢視断面図)。
図6図4A図4Cに示した成形型を使った靴底用部材の成形方法を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の靴底用部材について、以下にその実施の形態を例示しつつ説明する。
以下においては、本発明の靴底用部材としてミッドソール部分に配される部材を例に説明する。
図1は、本実施形態の靴底用部材を用いて形成される靴を示したものである。
該靴1は、アッパー2と靴底とを有している。
前記靴底は、複数の靴底用部材によって構成されている。
該靴1は、前記靴底用部材として、ミッドソール3、及び、アウトソール4を有している。
尚、以下において図1に示した靴1について説明する際に、踵の中心HCと爪先の中心TCとを結ぶシューセンター軸CXに沿った方向のことを長さ方向Xと称することがある。
また、シューセンター軸CXに沿った方向の内、踵から爪先に向けた方向X1を前方などと称し、爪先から踵に向けた方向X2を後方などと称することがある。
さらに、シューセンター軸CXに直交する方向の内、水平面HPに平行する方向を幅方向Yと称することがある。
この幅方向Yの内、足の第1指側に向けた方向Y1を内方などと称し、第5指側に向けた方向Y2を外方などと称することがある。
そして、水平面HPに直交する垂直方向Zを厚さ方向や高さ方向と称することがある。
さらに、以下においては、この垂直方向Zにおいて上方に向かう方向Z1を上方向と称し、下方に向かう方向Z2を下方向と称することがある。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の靴1は最も下方にアウトソール4を備えている。
本実施形態のアウトソール4は、たとえばシート状であり、厚さ方向が垂直方向Zとなるように靴1の最下部に配されている。
前記靴1は、着用者の足を上側から覆うアッパー2と前記アウトソール4との間にミッドソール3を備えている。
本実施形態のミッドソール3は、図2に示すように、上下2層に分かれている。
具体的には、本実施形態の靴1は、2層の内の上層を為す第1ミッドソール31と、2層の内の下層を為す第2ミッドソール32とを備えている。
垂直方向視における前記第1ミッドソール31の輪郭形状は、前記第2ミッドソール32の輪郭形状に対応しており、これらは外周縁を揃えるように上下に積層されている。
前記第1ミッドソール31の上面31aは、前記アッパー2に対して下側から接し、前記第1ミッドソール31の下面31bは、前記第2ミッドソール32の上面に接している。
前記第2ミッドソール32の下面32bは、前記アウトソール4に対して上から接している。
本実施形態の靴1は、前記第1ミッドソール31と前記第2ミッドソール32との間に挟まれた靴底用部材として2つの緩衝用部材5を有している。
垂直方向視における前記緩衝用部材5の大きさは、前記第1ミッドソール31や前記第2ミッドソール32よりも小さい。
従って、前記第1ミッドソール31は、下面31bの一部を前記緩衝用部材5に接着させるとともに残部を前記第2ミッドソール32の上面32aに接着させている。
【0013】
2つの前記緩衝用部材5の内の一方の緩衝部材(以下「第1緩衝部材51」ともいう)は、靴の前足部11において前記第1ミッドソール31と前記第2ミッドソール32との間に挟まれている。
2つの緩衝用部材5の内の他方の緩衝部材(以下「第2緩衝部材52」ともいう)は、靴の後足部13において前記第1ミッドソール31と前記第2ミッドソール32との間に挟まれている。
【0014】
前記第1緩衝部材51と前記第2緩衝部材52とのそれぞれは、一部が露出した状態となるように靴底に配されており、靴底の外周面の一部を構成するように配されている。
前記第1緩衝部材51は、前記外周面を構成する側面51cと、該側面51cの上端縁から内向きに広がる上面51aと、前記側面51cの下端縁から内向きに広がる下面51bとを有している。
即ち、前記第1緩衝部材51は、前記第1ミッドソール31の下面31bに下方から接する上面51aと、前記第2ミッドソール32の上面32aに上方から接する下面51bとを有している。
前記第2緩衝部材52も前記第1緩衝部材51と同様に、前記外周面を構成する側面52cと、該側面52cの上端縁から内向きに広がる上面52aと、前記側面52cの下端縁から内向きに広がる下面52bとを有している。
即ち、前記第2緩衝部材52は、前記第1ミッドソール31の下面31bに下方から接する上面52aと、前記第2ミッドソール32の上面32aに上方から接する下面52bとを有している。
【0015】
前記第1緩衝部材51と前記第2緩衝部材52とのそれぞれは、図2図3に示すように内足側から外向きとなる方向Y2において厚さが増大する形状を有している。
言い換えると前記第1緩衝部材51と前記第2緩衝部材52とのそれぞれは、靴底の中央部から外周面に向けて厚さを増大する形状を有しており、逆に、靴1の外側の側面1aから靴1の中央部に向かうに従って厚さを減少させている。
本実施形態の前記第1緩衝部材51と前記第2緩衝部材52とのそれぞれは、靴1を幅方向に横断するような形では設けられておらず、靴1の内足側の側面1bではその存在が認められないように設けられている。
【0016】
本実施形態における前記第1緩衝部材51及び前記第2緩衝部材52は、図3に示されているように、複数の気泡fを内包した発泡体である。
本実施形態における前記第1緩衝部材51及び前記第2緩衝部材52は、たとえば同じポリマー組成物によって構成された発泡体である。
【0017】
前記発泡体は、透明性を有している。
尚、本明細書において「透明性を有する」とは、例えば、厚さ4mmでの全光透過率が40%以上であることを意味する。
前記発泡体の前記全光透過率は、50%以上であることがより好ましい。
前記発泡体の平均気泡径(D50)は、0.8mm以上20mm以下であることが好ましい。
また、本明細書において「発泡体が透明性を有する」とは、当該発泡体が無色透明である場合のみに限定する意味ではなく、発泡体が有色透明である場合をも包含する意味である。
これらの発泡体は、気泡の切断面が表面に現れた状態になっていても、最表面の気泡の気泡膜によって表面にスキン層が設けられた状態であっても良い。
スキン層を設けた場合、使用環境下における強度の向上が見込まれる(耐ひっかき性など)という利点がある。
前記発泡体が、例えば、より大きな発泡体から所定の形状となるように切り出すなどして作製された表面にスキン層が無い状態のものである場合、別の部材(例えば、樹脂フィルムなど)を表面に接着するなどしてスキン層を形成させてもよく、この場合も上記のような耐ひっかき性などに関する効果が期待できる。
【0018】
前記第1緩衝部材51は、その構成材料であるポリマー組成物が透明性を有し、しかも、内部の気泡が比較的大きいことで、発泡体の状態で内部を奥深くまで視認できるようになっている。
即ち、本実施形態の靴1での前記第1緩衝部材51は、外足側から内足側に向かって前記側面51cを通じて内部の様子が視認できるように配されており、その奥行きが感じ取れるようになっている。
前記第1ミッドソール31は、さらに、前記第1ミッドソール31と前記第2ミッドソール32との間に挟まれた状態において、該第1ミッドソール31の下面31bの様子や該第2ミッドソール32の上面32aの様子が前記側面51cを通じて視認できるように配されている。
これらの点については、前記第2緩衝部材52も同じである。
【0019】
上記のようなことから、本実施形態の靴1は、前記第1ミッドソール31の下面31bに側面31cとは異なる色調や模様を付与したり、前記第2ミッドソール32の上面32aに側面32cとは異なる色調や模様を付与したりすることで、これらの色調や模様を第1緩衝部材51や第2緩衝部材52を通じて外部から視認させることができる。
第1緩衝部材51や第2緩衝部材52を発泡状態にさせて軽量化を図りつつミッドソールの隠ぺい箇所のデザインを視認可能にさせることができるという効果をより顕著に発揮させる上において、前記第1緩衝部材51及び前記第2緩衝部材52は、靴底の外周面の一部となる第1の面と、ミッドソールの上面又は下面に接する第2の面とを有し、該第2の面と前記第1の面との間に30度以上120度以下の角度の角部が形成されていることが好ましく、45度以上90度以下の角度の角部が形成されていることがより好ましい。
この点について、第2緩衝部材52の長さ方向中央部において当該第2緩衝部材52を垂直面によって切断した断面の様子を示した図3を参照しつつ説明すると、前記第1の面に該当する側面52cと、前記第2の面に該当する前記上面52aや前記下面52bとが当該断面においてなす角度θ1,θ2を上記のような角度とすることで第2緩衝部材52が視認し易くなって靴の美観の向上に効果的となる。
尚、このような効果については第1緩衝部材51についても同様に発揮され得る。
【0020】
発泡体の透明性は、例えばJIS K7361−1に準拠した方法により測定できる。
より詳しくは、発泡体からスキン層を除いて作製した厚さ4mmのテストピースに対し、濁度計(例えば、日本電色工業製の型名「NDH2000」)のような装置で全光透過率を測定し、該全光透過率が40%以上であれば当該発泡体が透明であると確認できる。
【0021】
前記発泡体の全光透過率(厚さ4mm)は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
【0022】
尚、発泡体から4mmのテストピースを採取する際には、粗大な気泡によってテストピースを貫通する貫通孔が形成されないようにできるだけ注意し、もし、貫通孔が形成されてしまうようであれば、貫通孔を避けて全光透過率の測定を行うことが望ましい。
また、全光透過率は、測定箇所によるバラツキが大きい場合、無作為に選択した複数箇所(例えば、10箇所)での測定値の算術平均値として求められ得る。
【0023】
前記テストピースに多くの貫通孔が形成されてしまって貫通孔を避けての測定が難しい場合は、テストピースの厚さを厚くして測定を実施し、測定結果を4mmでの値に換算するようにしてもよい。
また、発泡体が薄くて4mmの厚さのテストピースを採取し難い場合も同様である。
4mm以外の厚さ(X:mm)のテストピースについて求めた全光透過率(I)を4mmでの全光透過率(I)に換算するには、例えば、下記式に基づいて計算を行えばよい。

= (I4/X
【0024】
全光透過率の測定は、前記発泡体の大きさが小さく、前記濁度計での測定範囲よりも小さなテストピースしか得られない場合は、複数のテストピースを作製してこれらを隙間ができないように並べ、これを測定対象としてもよい。
【0025】
発泡体に上記のような透光性を発揮させる上において、当該発泡体を構成するポリマー組成物は、非発泡状態での4mmでの全光透過率が、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0026】
該発泡体は、弾性率が0.02MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましい。
発泡体の弾性率は、1.4MPa以下であることが好ましく、1.3MPa以下であることがより好ましい。
即ち、前記弾性率は、0.02MPa〜1.4MPaであることが好ましく、0.1MPa〜1.3MPaであることがより好ましい。
【0027】
発泡体の弾性率は、例えば、JIS K7161に記載の方法で測定でき、インストロン社の型名「5960デュアルコラム卓上型試験機」のような装置によって2点のひずみ(ε=0.05%、ε=0.25%)の間での「応力/ひずみ曲線」の傾きを求めることで測定できる。
【0028】
発泡体に上記のような弾性率を発揮させる上において、当該発泡体を構成するポリマー組成物は、非発泡状態での弾性率が、0.02MPa以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがより好ましい。
該ポリマー組成物の弾性率は、10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることがより好ましい。
【0029】
前記発泡体を構成するポリマー組成物に含有させるポリマーは、例えば、オレフィン系エラストマーやオレフィン系樹脂などのオレフィン系ポリマーが挙げられる。
前記オレフィン系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE))、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、プロピレン−酢酸ビニル共重合体のポリオレフィンなどが挙げられる。
【0030】
前記ポリマーは、例えば、アミド系エラストマーやアミド系樹脂などのアミド系ポリマーであってもよい。
前記アミド系ポリマーとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610などが挙げられる。
前記ポリマーは、例えば、エステル系エラストマーやエステル系樹脂などのエステル系ポリマーであってもよい。
前記エステル系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
前記ポリマーとしては、例えば、ウレタン系エラストマーやウレタン系樹脂などのウレタン系ポリマーであってもよい。
前記ウレタン系ポリマーとしては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタンなどが挙げられる。
【0031】
前記ポリマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーやスチレン系樹脂などのスチレン系ポリマーであってもよい。
前記スチレン系エラストマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)などが挙げられる。
前記スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)などが挙げられる。
【0032】
前記ポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー;ポリ塩化ビニル系樹脂;シリコーン系エラストマー;ブタジエンゴム(BR);イソプレンゴム(IR);クロロプレン(CR);天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR);アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);ブチルゴム(IIR)などを用いてもよい。
【0033】
前記ポリマー組成物は、上記のようなポリマーを1種単独で含んでいてもよく、上記のようなポリマーを複数種類含んでいてもよい。
【0034】
前記ポリマー組成物は、前記ポリマーに対して可塑化効果を発揮する可塑剤をさらに含有してもよい。
可塑剤を含有させることで、ポリマー組成物は、弾性率や硬さの調整が容易になる。
可塑剤を含有させるとポリマーの結晶化を原因とした透明性の低下を抑制することができる。
【0035】
前記可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油などのエポキシ化オイル類;流動パラフィン、パラフィンワックス、ナフテンオイル、ポリブタジエン、ポリブテンなどの炭化水素類;カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステルなどのエステル類;オレイルアルコールやステアリルアルコール等の高級アルコール類等が挙げられる。
前記カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、マレイン酸エステルなどの芳香族エステル;アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、ドデカン酸エステル、フマル酸エステル、トリメリット酸エステル、クエン酸エステル、イタコン酸エステル、オレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、リシノール酸エステルなどの脂肪族エステル;が挙げられる。
【0036】
前記ポリマー組成物に含有させる前記ポリマーとしては、上記のような可塑剤との親和性が高いものが好ましい。
そのような観点から、前記ポリマー組成物は、オレフィン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、及び、スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
そして、前記ポリマー組成物は、含有する全てのポリマーの内、オレフィン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、及び、スチレン系熱可塑性エラストマーの何れかを最も多く(最も高い質量割合で)含有することが好ましい。
【0037】
前記ポリマー組成物は、必要に応じて前記ポリマーを架橋させるための架橋剤を含有させてもよい。
前記架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、マレイミド系架橋剤、硫黄、フェノール系架橋剤、オキシム類、ポリアミン等を採用することが可能である。
また、前記ポリマーの架橋は、電子線やX線を照射して行ってもよい。
【0038】
該有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
前記ポリマー組成物は、上記のような架橋剤を一種単独で含んでもよく、架橋剤を複数種類含有してもよい。
【0039】
前記ポリマー組成物には、クレー、タルク、シリカなどといった無機フィラーをさらに含有させてもよい。
前記ポリマー組成物に含有させる無機フィラーは、金属箔、ガラスフレーク、パールマイカなどといった光反射性を有するものであってもよい。
前記ポリマー組成物は、上記のような無機フィラーを一種単独で含んでもよく、無機フィラーを複数種類含有してもよい。
セルロースナノファイバー、アラミド繊維などの有機フィラーを含んでいても良い。
【0040】
前記ポリマー組成物に発泡を生じさせるための発泡剤としては、特に限定されず、有機系や無機系の化学発泡剤や物理発泡剤が挙げられる。
前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル−2,2’−アゾビスブチレート、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]等のアゾ化合物;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;p−トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物;トリヒドラジノトリアジンなどの有機系熱分解型発泡剤から選択される1種又は2種以上を採用することができる。
【0041】
前記発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、水素化合物などの無機系熱分解型発泡剤から選択される1種又は2種以上を採用することができる。
【0042】
前記発泡剤としては、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の各種脂肪族炭化水素類などの有機系発泡剤、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水などの無機系発泡剤を用いることができる。
該無機系発泡剤は、超臨界流体となるような条件下で用いられてもよい。
【0043】
前記ポリマー組成物には、例えば、加工助剤、耐侯剤、難燃剤、顔料、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤等から選択される1種又は2種以上をさらに含有させてもよい。
【0044】
上記のようなポリマー組成物によって形成される発泡体は、前記ポリマー組成物が透明性に優れていても、微細な気泡を大量に含むと透明性を示さない。
そこで、前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52となる発泡体は、発泡倍率が1倍を超え3倍以下であることが好ましい。
前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52に優れた軽量性を発揮させる上において、発泡体の発泡倍率は1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。
【0045】
前記発泡体の発泡倍率は、前記発泡体の見掛け密度と前記ポリマー組成物の密度とを測定することで求めることができる。
前記見掛け密度は、例えば、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方」に記載の方法に基づいて測定することができる。
前記ポリマー組成物の密度は、該ポリマー組成物で形成された非発泡な試料を作製して求めることができる。
前記試料の密度は、JIS K7112:1999「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のA法(水中置換法)によって測定することができる。
そして、前記発泡倍率は、下記の計算式より求めることができる。

発泡倍率 = ポリマー組成物の密度/発泡体の見掛け密度
【0046】
前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52として用いられる発泡体に優れた透明性を発揮させる上において、該発泡体の平均気泡径(D50)は、0.5mm以上であることが好ましい。
該平均気泡径(D50)は、0.8mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましく、1.2mm以上であることがとりわけ好ましい。
平均気泡径(D50)が過大であると前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52に所望の強度を発揮させ難くなるため、前記平均気泡径(D50)は、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましく、5mm以下であることがとりわけ好ましい。
【0047】
尚、前記発泡体の10%気泡径(D10)は、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.4mm以上であることがさらに好ましく、0.5mm以上であることがとりわけ好ましい。
また、前記発泡体の90%気泡径(D90)は、5.0mm以下であることが好ましく、4.0mm以下であることがより好ましく、3.5mm以下であることがさらに好ましく、3.0mm以下であることがとりわけ好ましい。
【0048】
本実施形態での気泡径とは、後述するように気泡に外接する円の直径を意味する。
従って、平均気泡径(D50)が0.8mm以上であるからといっても、前記発泡体は直径0.8mmの球形の気泡を内包可能な大きさである必要はない。
即ち、本実施形態の発泡体は、該発泡体の厚さ方向と直交する平面において該発泡体が最大寸法となる方向を該発泡体の“長さ”とし、前記平面において前記最大寸法となる方向に直交する方向を該発泡体の“幅”とした場合に、前記長さ、前記幅、及び、前記厚さの内の何れか1つの寸法が0.8mmを超えていれば、0.8mmの径の気泡を内包し得る。
同様に、本実施形態の発泡体は、前記長さ、前記幅、及び、前記厚さの内の何れかの寸法が20mmを超えていれば、20mmの径の気泡を内包し得る。
しかしながら、上記のような好ましい気泡径(D10、D50、D90)を備えさせる上において、本実施形態の発泡体は、前記長さ、前記幅、及び、前記厚さの3つの寸法の内の2つ以上が上記の平均気泡径(D50)や90%気泡径(D90)の値を超えていることが好ましく、3つの寸法の全てがこれらの気泡径(D50、D90)の値を超えていることが好ましい。
後述するように本実施形態での発泡体は、その表面に最も近い気泡と、該表面との間に所定以上の厚さ(t)で気泡膜が形成されていることが好ましい。
そのため、発泡体の前記長さ、前記幅、及び、前記厚さのそれぞれの寸法は、平均気泡径(D50)の値に前記気泡膜の厚さ(t)の2倍の値(2t)を加えた値(D50+2t)以上であることが好ましく。90%気泡径(D90)に2倍の値(2t)を加えた値(D90+2t)以上であることがより好ましい。
【0049】
10%気泡径(D10)、平均気泡径(D50)、及び、90%気泡径は、以下のようにして求めることができる。
まず、発泡体を断面が厚さ方向と平行となるように切断し、断面の画像を撮影する。
該画像を観察し、前記断面で切断されている各気泡について該気泡の断面形状に外接する円の直径を求める。
各気泡が前記直径を有する球体であると仮定し、全ての球体の体積の累積値を算出する。
そして、横軸を直径、縦軸を体積の百分率とした体積基準での累積分布曲線を作成し、累積値がそれぞれ10%、50%、90%となる時点での直径をそれぞれD10、D50、D90とする。
より具体的には、このD10、D50、D90については、デジタルマイクロクロスコープ(例えば、キーエンス製の型名「VHX−9000」)を用いて得られた発泡体断面画像に対し、画像解析ソフト「imagej」(商品名)(https://imagej.nih.gov/ij/)を用いて解析を行うことで求めることができる.
【0050】
前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52は、それぞれよりも大きな発泡体を一旦作製した後で、該発泡体から所定形状に切り出すようにして作製してもよいが、そのようにして作製されると表面の一部が気泡の切断面となってしまうことになる。
表面において気泡が開口している発泡体と表面に気泡が開口していない発泡体とでは、通常、後者の方が強度に優れる。
また、気泡の開口している部位は、前記第1ミッドソール31や前記第2ミッドソール32との接着に利用できないため、ミッドソールとの接着性を考慮すると後者の方が有利となる。
そのため、前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52は、表面に開口した気泡を有していないことが好ましい。
また、発泡体の表面に最も近くに存在する気泡(例えば、図3の気泡f’)と、発泡体表面との間において前記ポリマー組成物によって形成される気泡膜BFの最小厚さ(t)は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましく、200μm以上であることがとりわけ好ましい。
前記気泡膜の最小厚さ(t)は、通常、2.5mm以下であり、1.5mm以下であることが好ましい。
【0051】
上記のような好ましい態様の前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52は、それぞれの全体形状に対応した成形空間を有する成形型を使って作製することができる。
ポリマー組成物によって前記第1緩衝部材51や前記第2緩衝部材52となる発泡体を形成させる方法は、特に限定されるものではないが、前記気泡膜BFを所望の状態に形成させ易いとともに気泡fの大きさを調整し易い点において射出成形法を採用することが好ましく、なかでも加熱溶融状態のポリマー組成物を成形型の成形空間内に射出した後に成形空間の容積を拡大させることでポリマー組成物を発泡させるコアバック方式を採用することが好ましい。
【0052】
即ち、本実施形態における靴底用部材の製造方法は、発泡体で構成された靴底用部材の製造方法であって、発泡剤を含んだ加熱溶融状態のポリマー組成物を成形型の成形空間に射出する射出工程と、射出された前記ポリマー組成物が収容されている前記成形空間の容積を拡大させるコアバック工程とを含み、前記コアバック工程が、前記ポリマー組成物を発泡させて前記靴底用部材を構成する発泡体を作製することを含み、且つ、前記コアバック工程では、前記発泡体として、透明性を有し、弾性率が0.02MPa以上1.4MPa以下で、発泡倍率が1倍を超え3倍以下であり、且つ、平均気泡径(D50)が0.8mm以上20mm以下の発泡体を作製することが好ましい。
【0053】
コアバック方式での射出成形によって前記発泡体を作製するには、例えば、図4A図4B、及び、図4Cに示したような成形型Mが用いられる。
図に示す成形型Mは、前記第2緩衝部材52を作製するのに用いられる成形型である。
該成形型Mは、型閉め時に互いに接する型合わせ面Sf,Smを有する一対の型で構成されている。
前記成形型Mは、一対の前記型として雄型MMと雌型MFとを有している。
前記成形型Mは、前記雄型MMと前記雌型MFとを重ね合わせることで密閉状態の成形空間CVを内部に形成し得るように構成されている。
該成形型Mは、射出成形機で溶融混練されたポリマー組成物を前記射出成形機から前記成形空間CVに導入させるための注入口ILを有している。
【0054】
前記成形型Mは、平面視における形状が前記発泡体と同様の形状となり、且つ、側面子における形状が前記発泡体よりも薄い形状となる前記成形空間CVが型閉め時に内部に形成し得るように構成されている。
そして、前記成形型Mは、図5図6に示すように雄型MMの型合わせ面Smと雌型MFの型合わせ面Sfとの間に間隙を設けた状態において内部に形成される成形空間CV’が前記発泡体に対応した形状となるように形成されている。
即ち、本実施形態においては、作製する発泡体よりも容積の小さな成形空間CVを内部に形成する第1の状態と、該第1の状態よりも容積の大きな成形空間CV’を内部に形成する第2の状態とに切り替え可能な成形型Mが用いられる。
【0055】
前記雌型MFは、型合わせ面Sfを有する側において開口し、且つ、該雌型MFの厚さ方向に凹入した成形用凹部MFaを備えている。
該成形用凹部MFaは、発泡体の厚さ方向が深さ方向となるように形成されている。
前記雄型MMは、型合わせ面Smから突出し、且つ、雌型MFの成形用凹部MFaに突入可能な成形用凸部MMaを備えている。
【0056】
コアバック方式での射出成形によって前記第2緩衝部材52を構成する発泡体を作製するには、前記第1の状態(図5)となっている成形型Mの成形空間CVに対して熱溶融状態のポリマー組成物を射出し(射出工程)、次いで、成形型Mを前記第2の状態(図6)とする(コアバック工程)。
このとき、前記雌型MFと前記雄型MMとの間に所定の距離Dを設ける。
そして、第1の状態での成形空間CVよりも容積の大きな新たな成形空間CV’を型内に形成させることでポリマー組成物を減圧し、該ポリマー組成物を発泡させるとともに新たな成形空間CV’に充満させ前記第2緩衝部材52を構成する発泡体を作製する。
【0057】
上記の過程において、成形空間CVに射出されたポリマー組成物は、前記成形用凸部MMaの先端面や前記成形用凹部MFaの内壁面によって冷却されるため、成形空間CVに射出されてから前記第2の状態へと移行するまでの時間を長期化することで発泡体表面の前記気泡膜BFの厚さを厚くすることができる。
また、前記気泡膜BFの厚さは、雌型MFや雄型MMの温度条件(冷却条件)によっても調整可能である。
そして、このときに発泡体の内部に形成される気泡fを所定の状態にさせる上では、発泡剤が超臨界状態となる条件下でポリマー組成物を成形空間CVに射出することが好ましい。
このときに用いる発泡剤は、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどが好ましい。
【0058】
本実施形態では、前記の通り、発泡体の内部に比較的大きな気泡を形成させることが当該発泡体に透明性を発揮させるのに有利となる。
一般的な射出成形では、発泡剤を含んだ加熱溶融状態のポリマー組成物が成形空間に注入されると、その瞬間にポリマー組成物が大きく減圧されるため同時に多数の気泡がポリマー組成物中に発生する。
従って、一般的な射出成形では、微細な気泡を多数含む発泡体が形成され易い。
一方、コアバック方式で発泡体を形成させる際には、発泡剤を含んだ加熱溶融状態のポリマー組成物を第1の状態における成形空間CVに充満させた後に、雌型MFと雄型MMとを離して成形空間の容積を拡大する際に、その速度を比較的自由に調整できる。
即ち、コアバック方式では成形空間でのポリマー組成物の減圧速度を一般的な射出成形に比べて緩やかにすることができる。
言い換えると、ポリマー組成物中に拡散しているガス(発泡剤)の移動速度(Vm)に対するポリマー組成物の減圧速度(Vp)の比(Vp/Vm)は、一般的な射出成形に比べてコアバック方式の方が低くなる。
そのため、一般的な射出成形では、ポリマー組成物が発泡して成形空間に充満する過程においてポリマー組成物中に拡散しているガスによって次々と新たな気泡が生まれて細かな気泡が数多く形成され易いのに対し、コアバック方式では発泡開始時点で発生した気泡にガスを集めて当該気泡を大きく成長させ易い。
【0059】
発泡体中に比較的大きな気泡を形成させるには、射出成形時のポリマー組成物の溶融粘度を調整することも有効な手段となる。
射出成形時のポリマー組成物の溶融粘度は、ポリマー組成物の配合によって調整可能である。
射出成形時のポリマー組成物の溶融粘度は、射出成形の温度条件によっても調整可能である。
【0060】
前記のような大きな気泡を発泡体中に形成させ易くなる点において、コアバック方式での射出成形や一般的な射出成形は、ポリマー組成物に含有されるポリマーが特定の複素粘度を示す温度条件で実施されることが好ましい。
具体的には、前記ポリマーが一定以上の複素粘度を示す状態で射出成形が行われる方が、気泡の大きさにバラツキの少ない発泡体が得られ易い。
そこで、前記射出成形は、ポリマー組成物に最も多く含まれるポリマーについて周波数10Hzで複素粘度を測定した際に当該複素粘度が500Pa・s以上となる温度で実施することが好ましく、前記複素粘度が600Pa・s以上となる温度で実施することが好ましい。
尚、射出成形の際の温度における前記ポリマーの周波数10Hzでの複素粘度は、8000Pa・s以下であることが好ましく、7500Pa・s以下であることがより好ましい。
【0061】
前記射出成形は、前記ポリマーについて周波数600Hzで複素粘度を測定した際に、当該複素粘度が700Pa・s以下となる温度で実施することが好ましく、前記複素粘度が500Pa・s以下となる温度で実施することが好ましい。
尚、射出成形の際の温度における前記ポリマーの周波数600Hzでの複素粘度は、200Pa・s以上であることが好ましく、300Pa・s以上であることがより好ましい。
【0062】
このようなことから前記射出工程では、前記ポリマー組成物に最も多く含まれている(質量割合の最も高い)ポリマーの周波数10Hzでの複素粘度(η10)と、前記ポリマーの周波数600Hzでの複素粘度(η600)とが下記式(1)、(2)の両方を満たす温度条件で前記ポリマー組成物の前記射出を実施することが好ましい。

500Pa・s ≦ η10 ≦ 8000Pa・s ・・・(1)
200Pa・s ≦ η600 ≦ 700Pa・s ・・・(2)
【0063】
前記複素粘度は、JIS K 7244−6:1999(ISO 6721−1:1994)に基づいて測定することができる。
具体的には、動的粘弾性測定装置(例えば、アントンパール製、製品名「MCR―302」)を用いて測定することができる。
測定試料は、直径25mm、厚さ0.105mmのコーンプレート状とし、測定条件は、下記の通りとすることができる。
<測定条件>
測定モード :正弦波歪みのせん断モード
周波数 :10Hz、600Hz
荷重 :自動静荷重
動歪み :5%
測定温度 :各一定条件
【0064】
前記射出成形は、ポリマー組成物の主成分となるポリマーだけでなく、ポリマー組成物に複数のポリマーが含まれているような場合は、その全てのポリマーをポリマー組成物に含まれている割合で混合した混合ポリマーが上記のような複素粘度を示す温度条件で実施されることが好ましい。
前記射出成形は、発泡剤を除いた状態でポリマー組成物の複素粘度を測定した際に、上記のような複素粘度を示す温度条件で実施されることが好ましい。
【0065】
上記のような複素粘度を示す温度条件として、例えば、SEBSあるいはポリオレフィンがベースポリマーであった場合は155℃〜165℃、TPUあるいはエステル系エラストマー(TPEE)がベースポリマーである場合は205℃〜215℃が該当する。
【0066】
尚、本実施形態における記載は、あくまで例示的なものである。
例えば、本実施形態においては、上下方向に積層された第1ミッドソールと第2ミッドソールとを含む複数のミッドソールを備えた靴を例示しているが、本発明の靴は、靴底に設けられるミッドソールが1層であっても3層以上であってもよい。
そして、本実施形態においては、緩衝用部材が第1ミッドソールと第2ミッドソールとの間に介挿されている靴を例示しているが、緩衝用部材は、ミッドソールとアウトソールとの間に設けられても、ミッドソールとアッパーとの間に設けられてもよい。
さらには、緩衝用部材は、ミッドソールに設けた凹部に埋め込まれるように配されてもよい。
尚、本実施形態においては、2つの緩衝用部材を用いる場合を例示しているが、緩衝用部材の数は特に2つに限定されるわけではなく、1つであっても3つ以上であってもよい。
そして、本実施形態においては、同じポリマー組成物で形成された2つの発泡体をそれぞれ第1緩衝部材及び第2緩衝部材として用いる態様を例示しているが、複数の緩衝用部材を用いる場合、それぞれの緩衝部材を構成するポリマー組成物が異なっていてもよい。
また、1つの緩衝部材の形成に複数のポリマー組成物を用いてもよい。
即ち、本発明の靴底用部材は、一部位と他部位とが異なるポリマー組成物によって形成されていてもよい。
本実施形態においては、本発明の靴底用部材を緩衝用部材として利用する場合を例示しているが本発明の靴底用部材は、緩衝用部材に用途が限定されるものではない。
また、本実施形態においては、本発明の靴底用部材を靴の外足側に露出させて用いる場合を例示しているが本発明の靴底用部材は、例えば、内足側に露出するものであっても踵側に(後方に向けて)露出するものであっても、接地面側に向けて露出するものであってもよい。
さらに本発明の靴底用部材は、ミッドソールのように靴底の外周全てにおいて露出した状態でも用いられ得る。
即ち、本発明の靴底用部材や本発明の靴は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
次に試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
(実施例1〜3)
実施例1〜3に係る発泡体としてスチレン系エラストマーやエステル系エラストマー(TPEE)を使って発泡体を作製した。
実施例1、2では主ポリマーとしてスチレン系エラストマー(スチレン系ブロックコポリマー)を使用し,可塑剤としてパラフィンオイルをポリマー100質量部に対して10〜30質量部加えた原料をコアバック法を用いて射出発泡成形して発泡体を作製した。
この際、原料の射出温度は、複素粘度が、それぞれ式(1),(2)を満たすように120℃とした。
尚、120℃での前記複素粘度は、以下の通りである。
η10:7920Pa・s(実施例1)、657Pa・s(実施例2)
η600:459Pa・s(実施例1)、222Pa・s(実施例2)
【0069】
実施例3ではTPEEを用いて同様にコアバック法用いて射出発泡成形により発泡体を作製した。
この際、原料の射出温度は、複素粘度が、それぞれ式(1),(2)を満たすように190℃とした。
尚、実施例3の原料の190℃での前記複素粘度は、以下の通りである。
η10:1250Pa・s(実施例3)
η600:421Pa・s(実施例3)
【0070】
尚、非発泡状態での密度について実施例1、2は0.90g/cmであり,実施例3は1.12g/cmであった。
また、非発泡状態での全光透過率は、実施例1では79%、実施例2では85%であり、実施例3では73%であった。
【0071】
(従来例)
従来例では、実施例2と同じ原料を用い、一般的な化学発泡剤(ADCA)を用いて発泡体を作製した。
【0072】
これらの発泡体に関して、気泡径(D10、D50、D90)、見掛け密度、全光透過率、弾性率(引張弾性率)を測定した。
結果を、下記表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
上記の事例においては全ての発泡体の発泡倍率が1.22〜1.34倍と概ね同程度であったが、実施例1−3では気泡径が大きく、全光透過率が40%以上と高い結果となった。
一方、従来例は微細な泡を内包し、全光透過率が低く透明性が発揮されていない。
以上のことからも本発明によれば、透明性を示しつつ軽量で緩衝性に優れた靴底用部材が提供されることがわかる。
【符号の説明】
【0075】
1:靴、2:アッパー、3:ミッドソール、4:アウトソール、5:緩衝用部材(発泡体)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6