(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転する工具を対象物に向かって油圧により押して推進させる推進機構と、前記工具を前記対象物に向かって打撃する打撃機構と、前記工具への打撃により前記対象物からの反射による衝撃を油圧によって緩衝するダンパ機構と、前記ダンパ機構に油圧を供給するダンパ油圧回路とを有する油圧削岩機において、
前記ダンパ油圧回路は、
油圧源に接続されるダンパ入力ポートと、
前記ダンパ機構に油圧を出力するダンパ出力ポートと、
前記ダンパ入力ポートと前記ダンパ出力ポートとの間に設けられた流量調整弁と、
前記流量調整弁の出力ポートの側に入力ポートが接続された直動形リリーフ弁と、
前記直動形リリーフ弁の出力ポートの側に入力ポートが接続され、タンクに接続される戻りポートの側に出力ポートが接続された、パイロット操作形リリーフ弁と、
前記パイロット操作形リリーフ弁のパイロットポートに前記推進機構に供給される油圧が供給されるよう接続するパイロット管路と、
を有することを特徴とする油圧削岩機。
回転する工具を対象物に向かって油圧により押して推進させる推進機構と、前記工具を前記対象物に向かって打撃する打撃機構と、前記工具への打撃により前記対象物からの反射による衝撃を油圧によって緩衝するダンパ機構とを有する油圧削岩機に用いられ、前記ダンパ機構に油圧を供給するためのダンパ油圧回路であって、
油圧源に接続されるダンパ入力ポートと、
前記ダンパ機構に油圧を出力するダンパ出力ポートと、
前記ダンパ入力ポートと前記ダンパ出力ポートとの間に設けられた流量調整弁と、
前記流量調整弁の出力ポートの側に入力ポートが接続された直動形リリーフ弁と、
前記直動形リリーフ弁の出力ポートの側に入力ポートが接続され、タンクに接続される戻りポートの側に出力ポートが接続された、パイロット操作形リリーフ弁と、
前記パイロット操作形リリーフ弁のパイロットポートに前記推進機構に供給される油圧が供給されるよう接続するパイロット管路と、
を有することを特徴とする油圧削岩機のためのダンパ油圧回路。
回転する工具を対象物に向かって油圧により押して推進させる推進機構と、前記工具を前記対象物に向かって打撃する打撃機構と、前記工具への打撃により前記対象物からの反射による衝撃を油圧によって緩衝するダンパ機構とを有する油圧削岩機において、前記ダンパ機構に供給する油圧の圧力を制御する方法であって、
油圧源に接続されるダンパ入力ポートと、
前記ダンパ機構に油圧を出力するダンパ出力ポートと、
前記ダンパ入力ポートと前記ダンパ出力ポートとの間に設けられた流量調整弁と、
前記流量調整弁の出力ポートの側に入力ポートが接続された直動形リリーフ弁と、
前記直動形リリーフ弁の出力ポートの側に入力ポートが接続され、タンクに接続される戻りポートの側に出力ポートが接続された、パイロット操作形リリーフ弁と、
前記パイロット操作形リリーフ弁のパイロットポートに前記推進機構に供給される油圧が供給されるよう接続するパイロット管路と、
を有するダンパ油圧回路を用い、
前記パイロット操作形リリーフ弁の前記入力ポートの圧力Prを、前記推進機構に供給される油圧の圧力Ppに対応させ、
前記ダンパ機構に、前記圧力Prに前記直動形リリーフ弁の設定圧Pαを加算した圧力(Pr+Pα)の油圧を出力する、
ことを特徴とする油圧削岩機におけるダンパの圧力制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の油圧削岩機1には、回転する工具を対象物に向かって油圧により押して推進させる推進機構と、工具を対象物に向かって打撃する打撃機構と、工具への打撃により対象物からの反射による衝撃を油圧によって緩衝するダンパ機構と、ダンパ機構に油圧を供給するダンパ油圧回路などを有する。以下、詳しく説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る油圧削岩機1の概略の構成が、
図2には、
図1の油圧削岩機1のドリルヘッド16の概略の構造が、それぞれ示されている。
【0019】
図1において、油圧削岩機1は、フレーム11、フレーム11の両端部に回転可能に取り付けられたスプロケット12a,12b、スプロケット12a,12bにわたって掛け渡されたチェーン13、スプロケット12aを回転駆動するフィード用の油圧モータ14、チェーン13に連結されフレーム11に沿って直線移動するキャリッジ15、キャリッジ15に取り付けられたドリルヘッド16などを有する。これらはドリルヘッド16を推進させるフィード機構(推進機構)FKの構成の例である。
【0020】
ドリルヘッド16の先端からはドリルロッド(シャンクロッド)18が延びている。ドリルロッド18は、その先端部分において、フレーム11に設けられたセントライザー19によって回転可能かつ摺動可能に支持される。ドリルロッド18は、ドリルヘッド16に設けられた油圧モータによって回転駆動されるとともに、ドリルヘッド16に内蔵された打撃機構によって打撃が与えられ、ドリルヘッド16の移動とともに移動し、ドリルロッド18の先端に設けられた工具であるビット20によって、対象物である岩盤などを破砕し穿孔する。
【0021】
図2には、
図1の油圧削岩機1のドリルヘッド16の概略の構造が示され、
図3および
図4には
図2のドリルヘッド16のダンパ機構PKが拡大して示されている。
図3において、ダンパピストン33は前進端に位置し、
図4において、ダンパピストン33は中間位置にある。
【0022】
図2において、ドリルヘッド16は、ハウジング31、打撃ピストン32などからなる打撃機構DK、ダンパピストン33などからなるダンパ機構PK、ブッシング34、ギヤ35、ギヤ36、スプライン37、油圧モータ17などからなる回転駆動機構KKを有する。
【0023】
ハウジング31の先端側からは、シャンクロッド18aが軸方向に摺動可能に突出している。シャンクロッド18aは、ドリルロッド18に接続され、打撃力および回転力を伝達するものであり、回転駆動機構KKにおいて、回転駆動用の油圧モータ17によって、ギヤ35,36およびスプライン37を介して回転駆動される。なお、スプライン37とシャンクロッド18aとの間はキーを介して回転方向に連結され、これらは一体に回転し、軸方向にはシャンクロッド18aが所定の距離(例えば25mm程度)だけ摺動することが可能である。
【0024】
打撃ピストン32は、中央部にピストン部321、その両側にロッド部322,323を有し、ハウジング31に設けられたピストン室311内を軸方向に摺動可能である。図示は省略したが、打撃ピストン32の周辺には、打撃ピストン32を前進方向および後進方向、つまり矢印M1方向に周期的に往復駆動してシャンクロッド18aに打撃を与えるための公知の打撃機構DKが設けられる。打撃機構DKの例として、特開平11−173063号公報に記載の油圧機構が挙げられる。打撃ピストン32とシャンクロッド18aとの境界部分に、ダンパピストン33を中心として構成されるダンパ機構PKが設けられる。
【0025】
油圧削岩機1において、フィード機構FKの油圧モータ14の回転によるチェーン13の走行によって、キャリッジ15を介してドリルヘッド16が往復移動する。穿孔のためにドリルヘッド16が前進移動つまりフィードされるときは、ドリルロッド18は回転しながら前進し、このとき打撃機構DKによって前方に向かう打撃が加えられる。これにより、ビット20によって岩盤などが破砕される。
【0026】
図3および
図4において、ダンパピストン33は、ハウジング31に設けられた大径室42内を摺動する大径部331、中径室43内を摺動するランド部332、小径室44内を摺動する径小部333を有する。
【0027】
また、ハウジング31には、中径室43に連通する孔46、大径室42に連通する孔47、および、大径室42に連通する孔48が設けられている。孔46,47には、後述するダンパ油圧回路YK4のダンパ出力ポートPD1からの油圧が供給され、孔48はタンクTに接続される。つまり孔48はドレンポートである。
【0028】
なお、室42、44はドレイン通路を介してタンクTに接続される。
【0029】
なお、ダンパ出力ポートPD1と孔46との間には、図に示すようにバランスピストン型バルブV11が挿入されることがある。図に示すバランスピストン型バルブV11は、ダンパ出力ポートPD1から孔46に向かう方向に自由流となるチェック弁と同様な作用をするが、開閉を切り替えるスプールの両端の有効面積が互いに異なっており、そのため孔46に連通する中径室43の圧力が低下したときにバランスピストン型バルブV11が開く。
【0030】
ダンパ出力ポートPD1から油圧が供給されると、ダンパピストン33は、大径室42および中径室43の油圧の圧力によって図の左方へ押され、この押圧力がブッシング34を介してシャンクロッド18a(つまりドリルロッド18)を前方へ押し出す力として作用する。
【0031】
ダンパピストン33が無負荷の状態、つまりダンパピストン33が
図3に示すように前進端にあるときは、油圧は中径室(第1油圧室)43のみに作用する。このとき、大径室(第2油圧室)42は孔48を介してタンクTに接続されるため、圧力は低下してほぼ無圧力状態であり、シャンクロッド18aを前方へ押し出そうとする力は、中径室(第1油圧室)43に作用している圧力に比例した力となる。
【0032】
ドリルヘッド16がフィードされると、それに応じてシャンクロッド18aがハウジング31に対して後退する。これにより、シャンクロッド18aは、ブッシング34を介してダンパピストン33を押し、ダンパピストン33は後退する。ダンパピストン33が後退すると、それにつれて大径部331によって孔48が塞がれて閉止され、これとともに中径室43は密閉状態となって圧力が上昇し、高圧化する。中径室43が高圧化することで、バランスピストン型バルブV11が閉状態に切り替わる。このとき、シャンクロッド18aを前方へ押し出そうとする力は、中径室(第1油圧室)43および大径室(第2油圧室)42に作用している圧力による力の合計となる。
【0033】
なお、中径室43が密閉状態になると、リークによって圧力が低下していくが、所定の圧力にまで低下すると、バランスピストン型バルブV11が開状態に切り替わり、中径室43に油圧が供給される。
【0034】
図5には油圧削岩機1の油圧回路YKが示されている。
【0035】
図5において、油圧回路YKは、フィード機構FKのためのフィード油圧回路YK1、回転駆動機構KKのための回転油圧回路YK2、打撃機構DKのための打撃油圧回路YK3、およびダンパ機構PKのためのダンパ油圧回路YK4を有する。
【0036】
各油圧回路YK1〜YK4には、所定の圧力P1〜P4の油圧源が供給されている。これらの油圧源を「油圧源P1」「油圧源P2」などと記載することがある。これらの油圧源P1〜P4は、それぞれ独立して設けてもよいが、後で述べるように共通化することも可能である。
【0037】
フィード油圧回路YK1は、切り替えバルブV1およびリリーフバルブ61を有する。制御弁である切り替えバルブV1が図示しない制御回路によって切り替えられることにより、フィード用の油圧モータ14が正転、逆転、または停止し、ドリルヘッド16は前進、後退、または停止する。前進ポート(推進用ポート)PF1に油圧が供給されると前進し、後退ポートPF2に油圧が供給されると後退する。前進ポートPF1の圧力Ppは、リリーフバルブ61によって調整される。前進ポートPF1の圧力Ppを「フィード圧Pp」と記載することがある。
【0038】
なお、リリーフバルブ61による圧力Ppの調整は、油圧技術者または現場担当者が、リリーフバルブ61のハンドルまたは調整ネジなどを手動で回転することによって容易に行うことができる。圧力の確認のためには適当な圧力計を取り付けておけばよい。
【0039】
フィード油圧回路YK1は、本発明における「圧力調整装置」の例である。前進ポートPF1は、本発明の「推進用ポート」の例であり、油圧モータ14の回転によって工具を対象物に向かって押す作用が生じる側の当該油圧モータ14のポートである。
【0040】
回転油圧回路YK2は、制御弁である切り替えバルブV2を有する。切り替えバルブV2が切り替わることにより、回転駆動用の油圧モータ17が正転、逆転、または停止し、シャンクロッド18aは正転、逆転、または停止する。
【0041】
打撃油圧回路YK3は、制御弁である切り替えバルブV3を有する。切り替えバルブV3が切り替わることにより、打撃機構DKへの油圧が供給されまたは停止される。油圧が供給されたときに、打撃機構DKが作動してシャンクロッド18aに打撃が周期的に加えられる。
【0042】
ダンパ油圧回路YK4は、制御弁である切り替えバルブV4を介して油圧源P4に接続されるダンパ入力ポートDN1と、ダンパ機構PKに油圧を出力するダンパ出力ポートPD1と、ダンパ入力ポートDN1とダンパ出力ポートPD1との間に設けられた流量調整弁51と、流量調整弁51の出力ポート51P2の側に入力ポート52P1が接続された直動形リリーフ弁52と、直動形リリーフ弁52の出力ポート52P2の側に入力ポート53P1が接続され、タンクTに接続される戻りポートの側に出力ポート53P2が接続された、パイロット操作形リリーフ弁53と、パイロット操作形リリーフ弁53のパイロットポート53P3にフィード用の油圧モータ14の前進ポートPF1に供給される油圧が供給されるよう接続するパイロット管路LP1と、を有する。
【0043】
なお、ダンパ出力ポートPD1の圧力(Pr+Pα)のことを「ダンパ圧力」と記載することがある。
【0044】
流量調整弁51は、ここを流れる油圧の流量Q1を調整するものであり、本実施形態においては圧力補償形のものが用いられる。また、流量調整弁51と並列に、ダンパ出力ポートPD1からダンパ入力ポートDN1に向かって自由流となるチェック弁54を設けてもよい。
【0045】
直動形リリーフ弁52は、その入力ポート52P1と出力ポート52P2との間に、差圧(設定圧)Pαを発生させる。差圧Pαの大きさは、例えば2〜4MPa程度、好ましくは2.5〜3.5MPa程度、中心値は例えば3MPa程度であり、手動で調整することができる。
【0046】
パイロット操作形リリーフ弁53は、パイロットポート53P3に加えられる圧力Ppに対応した圧力Prを、入力ポート53P1に発生させる。パイロットポート53P3は、パイロット管路LP1を介して油圧モータ14の前進ポートPF1に接続されており、したがって、前進ポートPF1の圧力が、圧力Ppとしてパイロットポート53P3に加えられることとなる。
【0047】
その結果、パイロット操作形リリーフ弁53の入力ポート53P1には、前進ポートPF1の圧力Ppとほぼ同じ圧力である圧力Prが発生する。
【0048】
直動形リリーフ弁52の入力ポート52P1には、パイロット操作形リリーフ弁53の入力ポート53P1の圧力Prに差圧Pαを加えた圧力(Pr+Pα)が発生し、これがダンパ出力ポートPD1に出力され、ダンパ機構PKに供給される。
【0049】
なお、ダンパ油圧回路YK4は、適当なハウジングまたは基板などに必要な油圧機器を取り付けて配管を行い、1つの油圧回路ユニットとして構成することが可能である。または、油圧源P4に設けられるタンクに隣接してそれらの機器を取り付けて構成してもよい。または、ドリルヘッド16の近傍にそれらの機器を配置してもよい。
【0050】
図6(A)(B)にはフィード油圧回路YK1の他の例が示されている。
【0051】
図6(A)において、フィード油圧回路YK1Bは、リリーフバルブ61に代えて、パイロット操作形バランシング弁62およびシーケンス弁63を有する。
【0052】
パイロット操作形バランシング弁62は、油圧源P1から前進ポート(推進用ポート)PF1に向かう管路に挿入される。シーケンス弁63は、その入力ポートが、パイロット操作形バランシング弁62のパイロットポートの側に接続され、その出力ポートがタンク側に接続され、そのパイロットポートが油圧モータ14の前進ポート(推進用ポート)PF1とは逆側のポートである後退ポートPF2に接続される。
【0053】
前進ポートPF1に圧力が発生して油圧モータ14が正転し、ドリルヘッド16が前進するときは、パイロット操作形バランシング弁62によって圧力P1が減圧され、前進ポートPF1の圧力が調整される。パイロット操作形バランシング弁62による圧力の調整は、パイロットポートに接続されたシーケンス弁63の設定圧の調整によってなされる。
【0054】
このようにして、圧力P1が大きい場合でも、パイロット操作形バランシング弁62によって油圧モータ14の駆動に必要な圧力Ppに減圧することができる。
【0055】
後退ポートPF2に圧力が発生して油圧モータ14が逆転し、ドリルヘッド16が後退するときは、シーケンス弁63の入力ポートの圧力が0の近辺に低下し、これによってパイロット操作形バランシング弁62の入力ポートと出力ポートとの間の圧力は0近辺に低下する(除圧される)。これにより、前進ポートPF1からの戻りの油はタンクTに流れ込む。
【0056】
なお、フィード油圧回路YK1Bにおいて、シーケンス弁63を設けることなく、パイロット操作形バランシング弁62の出力側(出力ポート)の圧力(つまり前進ポートPF1の圧力)が油圧モータ14の前進ポート(推進用ポート)PF1とは逆側のポートである後退ポートPF2の圧力により除圧されるように構成すればよい。
【0057】
例えば、シーケンス弁63に代えてパイロットチェック弁を接続し、後退ポートPF2の圧力により当該パイロットチェック弁が開いてパイロット操作形バランシング弁62の入力ポートと出力ポートとの間の圧力が0近辺に低下するようにしてもよい。また、前進ポートPF1とタンクTとの間にパイロットチェック弁を接続し、後退ポートPF2の圧力によって当該パイロットチェック弁が開いて前進ポートPF1の圧力が0近辺に低下するようにしてもよい。
【0058】
図6(B)において、フィード油圧回路YK1Cは、リリーフバルブ61に代えて、パイロット操作形減圧弁64およびチェック弁65を有する。
【0059】
パイロット操作形減圧弁64は、油圧源P1から前進ポート(推進用ポート)PF1に向かう管路に挿入される。チェック弁65は、パイロット操作形減圧弁64と並列にかつ前進ポートPF1から油圧源P1側へ向かって自由流となるように接続される。
【0060】
前進ポートPF1に圧力が発生して油圧モータ14が正転し、ドリルヘッド16が前進するときは、パイロット操作形減圧弁64によって圧力P1が減圧され、前進ポートPF1の圧力が調整される。つまり、圧力P1が大きい場合でも、パイロット操作形減圧弁64によって油圧モータ14の駆動に必要な圧力Ppに減圧することができる。
【0061】
後退ポートPF2に圧力が発生して油圧モータ14が逆転し、ドリルヘッド16が後退するときは、前進ポートPF1からの戻りの油はチェック弁65を経由してタンクTに流れ込む。
【0062】
フィード油圧回路YK1B,Cを用いた場合に、圧力Ppの調整は、油圧技術者または現場担当者が、シーケンス弁63またはパイロット操作形減圧弁64の調整ネジまたはハンドルなどを手動で回転することによって容易に行うことができる。
【0063】
また、フィード油圧回路YK1B,Cを用いる場合には、フィード機構FKの油圧源P1とダンパ機構PKの油圧源P4とは、共通の単一の油圧源によって兼用することができる。つまり、単一の油圧ポンプを用いて油圧を発生させ、これを油圧源P1、P4として共通に用いることができる。
【0064】
次に、
図5に示す油圧回路YKにおける圧力の設定例について説明する。
【0065】
フィード機構FKにおける油圧モータ14の前進ポートPF1の圧力(フィード圧)Ppを、例えば5MPaに設定する。このとき、ダンパ機構PKにおける直動形リリーフ弁52の圧力(差圧)Pαを、2.2〜3.0MPaに設定し、ダンパ出力ポートPD1の圧力つまりダンパ圧力(Pr+Pα)が7.2〜8.0MPaになるよう設定する。
【0066】
この場合に、流量調整弁51における流量Q1を、例えば10〜13L/minに設定する。
【0067】
また、前進ポートPF1の圧力(フィード圧)Ppを、例えば8MPaに設定する。このとき、直動形リリーフ弁52の圧力(差圧)Pαを、2.2〜3.0MPaに設定し、ダンパ圧力(Pr+Pα)が10.2〜11.0MPaになるよう設定する。
【0068】
図7(A)には、フィード圧Ppの変化とそれに対する差圧Pαおよび流量Q1の変化との関係が、
図7(B)には、フィード圧Ppの変化とそれに対するダンパ圧力(Pr+Pα)との関係が、それぞれ示されている。
【0069】
図7(A)は、フィード圧Ppを5MPa、差圧Pαを3MPa、流量Q1を12L/minのそれぞれ基準値に設定し、フィード圧Ppを変化させた場合の差圧Pαおよび流量Q1の変化を観察したものである。
【0070】
図7(A)に示すように、フィード圧Ppが2〜8MPaの範囲において、差圧Pαは3.4〜2.8MPaの範囲であり、流量Q1は15〜7.5L/minの範囲である。したがって、ダンパ機構PKに供給されるダンパ圧(Pr+Pα)は、フィード圧Ppに対して常に差圧Pαの3.4〜2.8MPaだけ高くなる。
【0071】
図7(B)においては、フィード圧Ppの変化とダンパ圧力(Pr+Pα)との基本的な関係が示されている。
【0072】
図7(B)に示すように、フィード圧Ppが所定の範囲において、フィード圧Ppの増大にほぼ比例してダンパ圧力(Pr+Pα)が増大する。
図7(A)に示すように差圧Pαは厳密には一定ではないが、その変動は小さな所定範囲に収まっており、ダンパ圧力(Pr+Pα)はフィード圧Ppにほぼ比例すると言える。
【0073】
より詳しくは、差圧Pαは、フィード圧Ppの増大に応じてやや減少する傾向がある。そのため、
図7(B)に直線の二点鎖線と曲線の実線とで比較されるように、フィード圧Ppの増大にともなって、ダンパ圧力(Pr+Pα)の増大の傾きが僅かに減少する傾向がある。
【0074】
この原因は、フィード圧Ppが増大するにともない、ダンパ圧力(Pr+Pα)と油圧源との圧力差が減少し、流量Q1が減少するため、リリーフ弁の特性により引き起こされる。これらの不具合は、流量調整弁を圧力補償形にすることにより防ぐことができる。
【0075】
なお、油圧削岩機1において、ダンパ圧力(Pr+Pα)はフィード圧Ppに必ずしも正確に比例しなくてもよい場合があり、油圧削岩機1およびドリルヘッド16の実際の構造などに応じ、使用する機器を選択することなどによって最適な動作となるよう調整することが可能である。
【0076】
このように、ダンパ油圧回路YK4を用いることによって、ダンパ圧力をフィード圧Ppよりも差圧Pαだけ常に大きい値とすることができる。ダンパ油圧回路YK4は、流量調整弁51、直動形リリーフ弁52、およびパイロット操作形リリーフ弁53によって構成され、電気−油圧変換を行うことなく、入手が比較的容易な油圧機器のみを用いた簡単な構成でダンパ圧力の制御を行うことができ、油圧削岩機1を効率良く作動させるための調整およびメンテナンスを容易にすることができる。
【0077】
ダンパ圧力を制御することにより、打撃時に岩盤などから反発力を受けて戻ろうとするシャンクロッド18aつまりドリルロッド18の動きをダンパ機構PKによって効果的に抑制することができる。これにより、ビット20の着岩性が確保され、衝撃波のエネルギーを岩盤に確実に伝達することができる。
【0078】
次に、油圧回路YKに用いる機器の具体例について説明する。
【0079】
図8にはダンパ油圧回路YK4に用いられるパイロット操作形リリーフ弁53の構造の例が断面図で示されている。
【0080】
図8において、パイロット操作形リリーフ弁53には、ボディ71の内部に、メイン流量を調整するピストン72、および圧力調整用のパイロット弁75が設けられる。
【0081】
入力ポート53P1から入った圧油は、ピストン72の下面に作用し、同時にオリフィス73aを通ってスプリング室74aに入り、さらに通路73b,73cを経てニードル弁75に作用する。ニードル弁75に作用する圧力がスプリング76の設定値を越えると、ニードル弁75が開き、スプリング室74aの圧油はニードル室74bに流出する。この動作によってスプリング室74aの圧力が低下すると、ピストン72が上昇し、入力ポート53P1から出力ポート53P2への流路が開く。
【0082】
なお、この場合に、スプリング76の設定値は、調整ネジ77を回転することによって任意に調整することができる。
【0083】
ニードル室74bに流出した圧油は、通路73dを経て出力ポート53P2に流出可能である。
【0084】
本実施形態では、パイロットポート(ベントポート)53P3にパイロット管路LP1が接続されている。したがって、パイロット管路LP1を介してパイロットポート53P3に圧力Ppが加えられることにより、スプリング室74aの圧力が圧力Ppとほぼ等しくなり、入力ポート53P1の圧力が圧力Ppとほぼ等しい状態に保たれる。つまり、入力ポート53P1の圧力が、パイロット管路LP1を介したパイロットポート53P3の圧力Ppによってリモートコントロールされる。
【0085】
図9には、ダンパ油圧回路YK4に用いられる直動形リリーフ弁52の構造の例が断面図で示されている。
【0086】
図9において、直動形リリーフ弁52には、ボディ81の内部に、ポペット弁82、スプリング83、および調整ネジ84などが設けられる。
【0087】
入力ポート52P1から入った圧油は、ポペット室85aに流入し、ポペット弁82に作用する。ポペット弁82に作用する圧力がスプリング83の設定値を越えると、ポペット弁82が開き、ポペット室85aの圧油はスプリング室85bに流入し、出力ポート52P2に至る。この動作によってポペット室85aの圧力が低下すると、スプリング83の力によってポペット弁82が閉じられる。これによって、入力ポート52P1の圧力が設定圧に保たれる。設定圧は、調整ネジ84をドライバなどで回転することによって任意に調整することができる。
【0088】
図10には、フィード油圧回路YK1Bの機器構成の例が示されている。
【0089】
図10において、パイロット操作形バランシング弁62には、ボディ91の内部に、弁体92、スプリング93、ニードル弁94、スプリング95、および調整ハンドル96などが設けられる。
【0090】
入力ポート62P1から入った圧油は、弁室97aに流入し、弁体92に作用する。弁体92に作用する圧力がスプリング93の設定値を越えると、弁体92が開き、弁室97aがドレンポート62PDに連通して圧油がタンクTに流出する。この動作によって弁室97aの圧力が低下すると、スプリング93およびパイロットポート62P3の圧力によって弁体92が閉じられる。
【0091】
これによって、入力ポート62P1の圧力が設定圧に保たれ、その圧力Ppは、前進ポートPF1のフィード圧として油圧モータ14に出力されるとともに、パイロット管路LP1を介してパイロット操作形リリーフ弁53のパイロットポート53P3に出力される。
【0092】
なお、パイロット操作形バランシング弁62により設定される圧力Ppは、シーケンス弁63の圧力設定によって容易にアンロードを行うことができる。
【0093】
図11には、フィード油圧回路YK1Cの機器構成の例が示されている。
【0094】
図11において、パイロット操作形減圧弁64には、ボディ101の内部に、弁体102、スプリング103、ニードル弁104、スプリング105、調整ハンドル106、およびチェック弁体107などが設けられる。
【0095】
入力ポート64P1から入った圧油は、出力ポート64P2に至るとともに、通路109a、オリフィス109bを経てスプリング室108bに入り、ニードル室108cに至ってニードル弁104に作用する。ニードル弁104に作用する圧力がスプリング105の設定値を越えると、ニードル弁104が開き、圧油はドレン孔109cを経てタンクTに流出する。これによって、スプリング室108bの圧力は、スプリング105で設定された設定圧となる。出力ポート64P2の圧力は、スプリング105で設定された設定圧に対応した圧力に維持される。
【0096】
出力ポート64P2の圧力Ppは、前進ポートPF1のフィード圧として油圧モータ14に出力されるとともに、パイロット管路LP1を介してパイロット操作形リリーフ弁53のパイロットポート53P3に出力される。
【0097】
なお、スプリング105の設定圧、つまりパイロット操作形減圧弁64により設定される圧力Ppは、調整ハンドル106で容易に調整することができる。
【0098】
これらの機器は、市場において容易に入手することができ、当業者であれば容易に組み立てて油圧回路YKとして使用することができる。
【0099】
上に述べた実施形態において、フィード機構FK、回転駆動機構KK、打撃機構DK、ダンパ機構PK、フィード油圧回路YK1、回転油圧回路YK2、打撃油圧回路YK3、ダンパ油圧回路YK4、油圧回路YK、ドリルヘッド16、油圧削岩機1の全体または各部の構成、構造、配置、個数、材質、組み合わせ、寸法、圧力値などは、上に述べた以外の種々のものとすることが可能である。