(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、天井や壁面などの高い所(以下、「高所」と称する)で作業する場合、脚立や梯子などを使って作業することが多い。しかしながら、このように脚立や梯子に載って作業する場合、危険を伴うことが多いため、経験者などが同伴して作業を行うことが好ましい。
【0003】
しかしながら、近年では、人手不足の原因から単独で作業を行わなければならない場合もあり、事故を未然に防止する観点から、十分に教育指導を行った後、単独で作業を行うようにしている。しかしながら、仮に、十分な教育指導を行ったとしても、事故を完全に防ぐことが難しく、事故が発生した場合には、事後的に、人的ミスによって発生した事故なのか、あるいは、脚立の不具合のような設備的な問題によって発生した事故なのかを検証する必要があった。
【0004】
そこで、かかる検証を行えるように、カメラで作業状態を撮影して記録しておく方法も提案されているが(特許文献1)、家庭内で作業を行うような場合、プライベートゾーンを撮影することになるため、セキュリティ上好ましくはない。そこで、カメラに代わる方法で、作業状況を検証できるようにしたシステムが要望されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、カメラを用いることなく、高所作業を行う際の作業状態を事後的に検証できるようにした作業状態確認システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、脚立や梯子などの高所作業用具の脚部に取り付けられる荷重センサーと、当該高所作業用具に載って作業する人間の身体に取り付けられ、当該人間の姿勢を検出する姿勢検出センサーと、前記荷重センサーと姿勢検出センサーから、
荷重および姿勢状態を検出する作業状態検出部と、
当該作業状態検出部によって検出された荷重および姿勢状態に基づいて、動作パターンを記憶させる記憶部と、前記検出された荷重および姿勢状態に基づく危険状態を示す基準値を設定し、当該基準値を超えた場合に報知を行う報知手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
このように構成すれば、高所作業用具や身体に取り付けられたセンサーによって作業状態を把握することができるため、事故が発生した場合に、人間の作業時における姿勢による事故であるのか、あるいは、高所作業用具の不具合による事故であるのかなどを検証することができるようになる。また、危険な状態で作業を行っている場合、瞬時に警報などを鳴らすことで、事故を未然に防ぐこともできるようになる。
【0009】
また、このような発明において、前記荷重センサーを、3軸力覚センサーもしくは6軸力覚センサーで構成する。
【0010】
このように構成すれば、高所作業用具の脚部23にどのような荷重が掛かっているのかを判断することができ、不安定な作業を行っている状況などを判断することができるようになる。
【0011】
さらに、前記姿勢検出センサーを、人間の両脚に取り付けられる慣性センサーで構成する。
【0012】
このように構成すれば、例えば、脚立の片側の踏み桟に載って作業している場合や、あるいは、脚立に跨るように両側面の踏み桟に足を載せて作業している場合などの状態を判断することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、脚立や梯子などの高所作業用具の脚部に取り付けられる荷重センサーと、当該高所作業用具に載って作業する人間の身体に取り付けられ、当該人間の姿勢を検出する姿勢検出センサーと、前記荷重センサーと姿勢検出センサーから、
荷重および姿勢状態を検出する作業状態検出部と、
当該作業状態検出部によって検出された荷重および姿勢状態に基づいて、動作パターンを記憶させる記憶部と、前記検出された荷重および姿勢状態に基づく危険状態を示す基準値を設定し、当該基準値を超えた場合に報知を行う報知手段とを備えるようにしたので、高所作業用具や身体に取り付けられたセンサーによって作業状態を把握することができるようになる。これにより、事故が発生した場合に、人間の作業時における姿勢による事故であるのか、あるいは、高所作業用具の不具合による事故であるのかなどを検証することができるようになるとともに、危険な状態で作業を行っている場合に、瞬時に警報などを鳴らすことで、事故を未然に防ぐこともできるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
この実施の形態における作業状態確認システム1は、脚立2aや梯子などを始めとする高所作業用具2の脚部23の接地面側に取り付けられる荷重センサー3と、この高所作業用具2で作業する人間の身体に取り付けられ、人間の姿勢を検出する姿勢検出センサー5と、これらの荷重センサー3と姿勢検出センサー5から、荷重重心および姿勢状態を検出する作業状態検出部62とを備えるようにしたものである。そして、このように荷重センサー3や姿勢検出センサー5を設けることによって、高所作業用具2に載って作業する人間に対して、どのような作業を行っているかを事後的に検証できるようにするとともに、危険な作業を行っている際に、警報を鳴らすことで、事故を未然に防げるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態では、一般家庭の天井などで配線作業を行う場合などを想定して説明する。
【0017】
まず、この作業状態確認システム1で使用される高所作業用具2は、高所作業を行う際に人間が載れるようにしたものであって、例えば、脚立2aなどが用いられる。この脚立2aは、
図1に示すように、天板21の中央に設けられたヒンジ22を中心に左右の脚部23を三角形状に開脚できるようにしたものであって、その脚部23に設けられた開き止め具24を固定することで、開脚した状態を固定できるようにしたものである。なお、ここでは脚立2aを例に挙げて説明するが、壁面に立て掛けて使用する梯子や、踏み台、作業台、足場台なども使用することができる。
【0018】
このような高所作業用具2の脚部23の接地面側に取り付けられる荷重センサー3は、高所作業用具2に作用する荷重を検出できるようにしたものであって、荷重中心やモーメント、水平方向に掛かる力などを検出できるようにしたものが用いられる。このような荷重センサー3としては、例えば、直交するXYZ軸方向の荷重を検出する3軸ロードセルや、XYZ軸回りのモーメントも検出できるようにした6軸ロードセルなどが用いられる。
【0019】
このような荷重センサー3は、脚立2aの脚部23の接地面側に取り付けられる。なお、このような荷重センサー3を脚部23の接地面側に取り付けると、荷重によって床面に凹みを生じさせてしまい、また、床面との間に滑りを生じてしまうため、
図4に示すように、荷重センサー3と床面との間に金属プレート31を挟み込むとともに、その金属プレート31の表面に、ゴム32などの樹脂を取り付けることにより、床面への凹みを防止するとともに、床面との間の滑りを防止できるようにしている。
【0020】
また、この実施の形態では、脚立2aの開き止め具24に固定状態検出センサー4を設けるようにしている。この固定状態検出センサー4は、開き止め具24の固定状態を検出できるようにしたものであって、左右の脚部23が正確に開脚された状態でピンにロックされているか否かを検出できるようにしたものである。このような固定状態検出センサー4としては、開き止め具24の角度を検出できるようにした慣性センサーで構成してもよく、あるいは、開き止め具24が固定された状態を検出できるようにしたスイッチなどで構成してもよい。なお、この固定状態検出センサー4を慣性センサーで構成した場合は、開き止め具24の角度だけでなく、脚立2aの向きなども検出することができるようになる。
【0021】
このように構成された荷重センサー3や固定状態検出センサー4は、図示しないバッテリーで駆動するようになっており、それぞれ検出された値が、送信部20(
図2の機能ブロック図参照)を介してリアルタイムで情報処理端末6に送信され、その情報処理端末6の記憶部63に記憶される。
【0022】
一方、人間側には、
図1などに示すように、姿勢検出センサー5が設けられる。この姿勢検出センサー5は、脚立2aに載ってどのような姿勢で作業しているのかを検出できるようにしたものであって、身体の複数箇所に取り付けられる。この姿勢検出センサー5としては、慣性センサーが用いられ、取り付けられた場所の加速度や角速度などを検出することで、取り付けられた場所の変位などを検出できるようにしている。この慣性センサーの取付箇所としては、好ましくは、左右両脚部(大腿部や下肢部、足部など)、腰から肩部の間の胴部、頭部、左右両腕などに取り付けるのが好ましい。このとき、左右両脚部に慣性センサーを取り付けると、脚立2aの天板21や一つの踏み桟25に跨って作業しているのか、あるいは、天板21を跨って二つの踏み桟25に載って作業しているのかを判断することができる。また、腰から肩部の間の胴部に設ければ、上半身の反りや捻じれなどを検出することができ、また、頭部に設ければ、天井を仰ぐような仰け反り状態を検出することができる。このような慣性センサーは、ハーネスや衣服、ヘルメット、手袋、靴などに取り付けられ、バッテリーからの電源によって駆動して、送信部20を介して情報処理端末6に検出された値が送信される。
【0023】
このように脚立2aや人間に取り付けられたセンサーから出力された値は情報処理端末6の受信部61で受信され、その値を
図3に示すような形式で記憶部63に記憶させるとともに、作業状態検出部62によって人間の作業状態の動作パターンを検出する。ここで、情報処理端末6としては、例えば、作業者が所持するスマートフォンや、そのスマートフォンを介して送信されるパーソナルコンピューターなどが用いられる。
【0024】
この作業状態検出部62で姿勢を検出する場合、脚立2aに設けられた荷重センサー3による荷重重心の変位や、脚立2aに設けられた固定状態検出センサー4で検出された開脚状態、身体の姿勢検出センサー5によって検出された上体の反り、頭部の角度などデータを記憶させる他、脚立2aに載って作業を行う際に危険と判断される次の12のパターンに該当するか否かを判断して、そのパターンを記憶させる。
【0025】
<危険と判断されるパターン>
(1)開き止め具を掛けずに作業を行う行為
(2)頭の真上で作業を行う行為
(3)斜面や段差、軟弱地で作業を行う行為
(4)脚立から身を乗り出して作業を行う行為
(5)階段で作業を行う行為
(6)設置方向を誤って作業を行う行為
(7)天板上に載って作業を行う行為
(8)両手に物を持って作業を行う行為
(9)壁面角や壁面に凹凸を有する部分に脚立を立て掛けて作業を行う行為
(10)踏み桟を背にして作業を行う行為
(11)壁面を強く押して作業を行う行為
(12)つま先立ちなどの無理な姿勢で作業を行う行為
【0026】
これらの作業状態を検出する場合、具体的には、脚立2aに設けられた荷重センサー3や開き止め具24の固定状態検出センサー4、人間に取り付けられた姿勢検出センサー5などを用いて、次のようにして検出する。
【0027】
(1)開き止め具24を掛けずに作業を行う行為(
図5参照)
開き止め具24を掛けずに作業を行うと、急に脚部23が開いて落下してしまうことになる。そこで、開き止め具24に設けられた固定状態検出センサー4によって、開き止め具24が正確に固定されているか否かを判断する。この固定状態検出センサー4が慣性センサーで構成されている場合は、その慣性センサーによる開き止め具24に対する基準角度を設定しておき、開脚角度が基準角度の範囲内に収まっている場合に、開き止め具24が正確に固定されていると判断する。ただし、脚立2aの運搬時や非使用時には開き止め具24が固定されていない状態となっているため、脚立2aが設置された状態、すなわち、脚部23に設けられた荷重センサー3の値が所定の値よりも大きい場合に、「設置された」とみなし、開き止め具24の固定状態を判断する。そして、その固定状態検出センサー4により、開き止め具24が固定されたか否かを判断し、その旨の状態を記憶させる。また、脚立2aが設置された状態(すなわち、荷重センサー3の値が所定の値よりも大きい状態)で、開き止め具24が固定されていない状態が一定時間続いた場合は、報知部64(
図2参照)を介して警報を鳴らすなどの報知を行う。
【0028】
(2)頭の真上で作業を行う行為(
図6参照)
脚立2aに載って上を向いて作業する場合、平衡感覚がなくなるため、脚立2aから落下してしまう可能性がある。そこで、脚立2aに載っている状態(すなわち、脚立2aの荷重センサー3で荷重を検出している状態)であって、かつ、人間の頭部に取り付けられた固定状態検出センサー4が所定角度以上上を向いていることを検出した場合に、脚立2aに載って頭の真上で作業をしていると判断する。そして、このパターンの作業を行っている旨を記憶部63に記憶させるとともに、この状態の作業が所定時間以上継続した場合、報知部64を介して報知させる。
【0029】
(3)斜面や段差などで作業を行う行為(
図7参照)
脚立2aを設置した場所が、斜面や段差を有する場所である場合、脚立2aが不安定になってしまう。そこで、脚部23に取り付けられた荷重センサー3の検出値を用いて、このような場所に設置されているか否かを検出する。一般に、脚立2aを傾斜面や床面の段差部分などに設置している場合であって人間が載っていない状態の場合、傾斜面に沿った下側の脚部23に大きな荷重が集中することになる。そこで、このような検出値の違いや揺れによって斜面や段差に設置されたことを検出し、このパターンの設置状態である旨を記憶部63に記憶させる。また、所定の基準値以上の荷重差や所定周期以上の荷重の揺れが検出された場合、報知部64を介して報知させる。
【0030】
(4)脚立2aから身を乗り出して作業を行う行為(
図8参照)
脚立2aから身を乗り出して作業すると、上半身に重心が掛かるために、バランスを崩して脚立2aから落下する可能性がある。そこで、あらかじめ脚立2aに人間が載っていない状態での荷重中心(初期重心)を検出しておくとともに、人間が脚立2aに載った際におけるその荷重重心と初期重心の距離を算出し、所定値以上離れている場合に、身を大きく乗り出して作業していると判断する。そして、その重心距離などを記憶部63に記憶させるとともに、このパターンで作業をしていることを記憶する。また、荷重重心が一定以上離れた場合は、報知部64を介して報知を行う。なお、荷重重心と初期重心の距離だけでなく、例えば、人間の身体に取り付けられた姿勢検出センサー5から胴部や頭部の変位を検出し、胴部や頭部の位置が初期重心から大きく離れた場合に、大きく身を乗り出して作業していると判断することもできる。
【0031】
(5)階段で作業を行う行為(
図7参照)
脚立2aを階段に載せて作業を行うと、段差や傾斜面に設置する場合と同様に、脚立2aが傾いて危険な状態になる。そこで、脚部23に取り付けられた荷重センサー3の値から階段に設置されているか否かを検出する。一般に、階段に脚立2aを設置する場合、四本の脚部23のうち二本を上段に載せ、残りの二本を下段に載せることになるが、このとき、人間が載っていない状態では、下段側の脚部23の荷重が大きくなる。また、人間が載った状態では、上段側の脚部23の荷重が大きくなる。そこで、二本の脚部23の荷重と残りの二本の脚部23の荷重との差が、所定の基準値よりも大きい場合は、階段に設置していると判断して、そのパターンであることを記憶させ、報知部64で報知させる。
【0032】
(6)設置方向を誤って作業を行う行為(
図9参照)
脚立2aに載って作業する場合、踏み桟25と足の向きを直交させるようにして使用するのが好ましいが、踏み桟25と足の向きが平行となるように設置させる場合がある。このような場合、足を踏み桟25から踏み外してしまう可能性があるため、かかる状態を検知できるようにする。具体的には、脚立2aの方向を検出する場合、開き止め具24に設けられた固定状態検出センサー4である慣性センサーによって脚立2aの水平方向に対する向きを検出する。このとき、初期状態で、人間に取り付けられた慣性センサーと開き止め具24に設けられた慣性センサーの向きを統一しておく。そして、作業している人間の向きを検出する。具体的には、身体に取り付けられた慣性センサーから人間の向きを検出、例えば、大腿部などに取り付けられた二つの慣性センサーの位置や、腰や頭部に設けた慣性センサーの位置から人間の向きを検出する。そして、踏み桟25と足が平行となるように設置して作業していることを検知した場合は、その旨を記憶部63に記憶させ、報知部64から報知させる。
【0033】
(7)天板21上に載って作業を行う行為(
図10参照)
天板21は足場が狭いため、その天板21に載って作業をすると、バランスを崩して落下する可能性がある。そこで、天板21に載って作業しているか否かを検出できるようにしておく。一般に、天板21に載って作業する場合、両脚部が揃った状態となり、かつ、脚立2aの四本の脚部23の荷重センサー3にほぼ均等な荷重(各荷重の絶対値が基準値以下となる状態)が掛かることになる。そこで、まず、大腿部に取り付けられた慣性センサーによって、一定距離の範囲内にそれぞれの大腿部の慣性センサーが存在していると判断した場合に、両脚が揃っていると判断する。このとき、一枚の踏み桟25に両足を揃えて載せている場合も同様な状態が検出されるが、この場合、踏み桟25に載っている側の脚部23の荷重センサー3の値が極端に大きくなる。これに対して、天板21に載っている場合は、四本の脚部23の荷重センサー3にほぼ同じ荷重となることになるため、これらの条件が満たされた場合に、天板21に載って作業していると判断し、このパターンを記憶部63に記憶させる。また、天板21での作業を一定時間以上続いた場合は、報知部64を介して報知を行う。
【0034】
(8)両手に物を持って作業を行う行為(
図11参照)
両手に重い荷物を持って作業すると、荷物の重みによってバランスを崩してしまう可能性がある。そこで、腕に慣性センサーを取り付けておき、両腕を上げているとともに、脚立2aに人間が載った状態の荷重よりも重い荷重が検出された場合(各荷重の合計が基準値を超えた場合)に、両手で重い荷物を持っていると判断する。そして、その荷重や重心を記憶させるとともに、このパターンで作業していることを記憶部63に記憶させる。また、所定値以上の重い荷物を持っていると判断された場合(すなわち、脚立2aに登った際の荷重との差が所定値以上大きい場合)、重い荷物を持っていると判断して、報知する。
【0035】
(9)壁面角などに脚立2aを立て掛けて作業を行う行為(
図12参照)
脚立2aの開き止め具24を外して梯子の状態で使用する場合、天板21のヒンジ22の部分でガタツキを生じて、不安定になってしまうとともに、床面が滑りやすい場合、梯子が床面で滑ってしまう危険性もある。さらに、梯子の上端部分が壁面の角地などのように一点で支えられている場合に、不安定な状態となる。そこで、かかる作業状態を検出できるようにする。具体的には、開き止め具24が外されている状態を慣性センサーで検出するとともに、脚立2aの二本の脚部23にのみ荷重が掛かっている場合に、梯子として使用している状態であると判断する。また、上端の脚部23の先端が壁面の一点で支持されている場合、下側の荷重センサー3が不安定な状態で荷重が検出されることになる。そこで、上端側の荷重センサー3の値が極めて小さく、かつ、下端側の荷重センサー3の値が極めて大きく、かつ、揺れを生じている場合は、かかる状態で使用していると判断して、そのパターンを記憶部63に記憶させ、報知させる。
【0036】
(10)踏み桟25を背にして作業を行う行為(
図13参照)
踏み桟25を背にして作業を行うと、踏み桟25に足の踵のみが載った状態となるため、足を踏み外してしまう危険性がある。そこで、かかる使用状態を検出できるようにする。具体的には、二本の脚部23に大きな荷重が掛かった状態(すなわち、隣接する二つの荷重センサー3の荷重の差が所定値以上大きい状態)であり、かつ、大腿部に設けられた慣性センサーが所定値よりも近い位置に存在していると判断した場合は、一つの踏み桟25にのみ載っていると判断する。このとき、踏み桟25を背にしているのか、踏み桟25を前向きにしているのかを判断することができないため、腰や頭部に設けられた慣性センサーを用いて人間の前傾姿勢方向を判断し、前傾姿勢となっている方向を作業方向と判断する。そして、その作業方向の前方の脚立2aの荷重センサー3の値が大きければ、踏み桟25を背にして作業していると判断し、逆に作業方向の後方の脚立2aの荷重センサー3が大きければ、踏み桟25を前にして作業していると判断し、この状態を記憶部63に記憶させるとともに、報知を行う。
【0037】
(11)壁面を強く押して作業を行う行為(
図14参照)
壁面を強く押して作業すると、脚立2aが水平移動したり、もしくは、脚立2aが傾いて転倒したりする可能性がある。そこで、人間が壁面を強く押しているか否かを検出できるようにする。具体的には、脚部23に取り付けられた荷重センサー3における床面に沿った荷重を検出し、その合計値が所定値以上の場合は、強く壁面を押していると判断し、このパターンを記憶部63に記憶させる。もしくは、荷重センサー3によって水平方向の荷重を検出するのではなく、人間の腰や頭部に取り付けられた姿勢検出センサー5から、人間が過度に前傾姿勢をとっており、かつ、脚部23に取り付けられた荷重センサー3の後方のZ軸荷重が大きくなった場合は、大きなモーメントが働いていると判断して、この作業パターンであることを記憶部63に記憶させ、報知部64で報知させる。
【0038】
(12)つま先立ちなどの無理な姿勢で作業を行う行為(
図15参照)
つま先立ちで作業すると、踏み桟25を踏み外してバランスを崩す可能性がある。そこで、つま先立ちをしているか否かを判断できるようにする。一般に、つま先立ちをすると、一瞬大きな垂直荷重が掛かるとともに、つま先立ちをした後は、身体が震えるため、荷重センサー3の検出値も小刻みに振動する。また、つま先立ちをする場合、離れた高所で作業する場合が多いため、大腿部、腰、頭部がほぼ直線上に並ぶことが多い。そこで、荷重センサー3の検出値が所定周期よりも短い周期で振動しており、かつ、姿勢検出センサー5が、ほぼ直線上に並んでいる場合に、つま先立ちをしていると判断し、この作業パターンであると判断して記憶部63に記憶させる。また、この状態が所定時間以上続いている場合は、報知部64を介して報知を行う。
【0039】
そして、このように検出されたデータを
図3のようなフォーマットで記憶部63に記憶させ、ディスプレイやプリンターなどを介して閲覧可能に出力するとともに、その際に、危険な作業状態を判断しやすくするために、危険パターンに該当する作業状態を差別化して表示出力する。そして、このように出力された作業状態から、今後、その人間に対する指導教育などを行えるようにする。
【0040】
このように上記実施の形態によれば、脚立2aや梯子などの高所作業用具2の脚部23に取り付けられる荷重センサー3と、当該高所作業用具2に載って作業する人間の身体に取り付けられ、当該人間の姿勢を検出する姿勢検出センサー5と、前記荷重センサー3と姿勢検出センサー5から、
荷重および姿勢状態を検出する作業状態検出部62と、当該作業状態検出部62によって検出された
荷重及び姿勢状態に基づいて、動作パターンを記憶させる記憶部63と、前記検出された荷重および姿勢状態に基づく危険状態を示す基準値を設定し、当該基準値を超えた場合に報知を行う報知部64とを備えるようにしたので、事故が起きた際に、高所作業用具2の不具合による事故であるのか、あるいは、人間の作業時における姿勢による事故であるのかを事後的に判断することができるとともに、作業状態を客観的に把握することで、今後の教育に役立てることができるようになる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、脚立2aの脚部23の接地面側に荷重センサー3を設けるようにしたが、踏み桟25にも荷重センサー3を設けるようにしてもよい。この場合、各踏み桟25の左右両端に荷重センサー3を設け、その上に金属プレート31を取り付けることで、どの位置を踏んだかなどを検出できるようにするとよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、慣性センサーを人間に取り付けるようにしたが、カメラを用いることなく人間の姿勢を検出できるセンサーであれば、どのようなセンサーを用いても良い。
【0044】
さらに、上記実施の形態では、脚立2aに登って作業する場合について説明したが、例えば、木の剪定作業などを行うように、梯子を使って作業する場合にも同様の構成を用いることができる。この場合、危険パターンとして、梯子の角度、接地面に水平方向に作用する荷重、人間の重心位置の変位などを検出して危険パターンなどを検出できるようにするとよい。